資料1-2 学術振興上の重要な取組について(これまでの意見のまとめ(案))(反映版)(5)

 復興への提言

~ 悲惨のなかの希望 ~ (平成23年6月25日東日本大震災復興構想会議) -抜粋-

  復興構想7原則

 原則1:失われたおびただしい「いのち」への追悼と鎮魂こそ、私たち生き残った者にとって復興の起点である。この観点から、鎮魂の森やモニュメントを含め、大震災の記録を永遠に残し、広く学術関係者により科学的に分析し、その教訓を次世代に伝承し、国内外に発信する。

2.本論

第2章 くらしとしごとの再生

(5)地域経済活動の再生

1.企業・イノベーション 

産業・技術集積とイノベーション
 東北大学をはじめとして、多くの大学・大学病院、高専、研究機関、民間企業等が、地域における重要な知的基盤・人材育成機関として共存している。このような東北の強みを生かし、知と技術革新(イノベーション)の拠点機能を形成することが重要である。このため、被災した大学・大学病院、研究機関等の施設・設備をはじめ、教育研究基盤の早期回復を図り、より一層の強化をする必要がある。また、産学官の連携により、スピード感のある技術革新を可能にするため、中長期的、継続的、弾力的な支援スキームを構築せねばならない。さらに被災地の大学を中心に地域復興のセンター的機能を整備し、様々な地域ニーズに応えることが求められる。

 これまでの実績を踏まえ、研究開発の促進による技術革新を通じて、「成長の核」となる新産業および雇用を創出するとともに、地域産業の再生をもたらし、東北に産業と技術が集積する地域を創り出すことが期待される。

 東北における技術革新を通じた新産業・雇用の創出の具体例としては、以下が考えられる。

  • 三陸沿岸域を拠点とする大学、研究機関、民間企業等によるネットワークを形成し、震災により激変した海洋生態系を解明し、漁場を復興させるほか、関連産業の創出にも役立たせる。
  • 東北の製造業が強みを有する電子部品、デバイス・電子回路などの分野と、東北の大学が強みを有する材料、光やナノテク分野等の協働により、世界レベルの新規事業を興す。すでに、材料開発や情報技術分野等においては、高専における産学連携も進んでおり、より一層優秀な技術者が育成されることが期待される。
  • 地域医療を復興するため、大学病院を核とする医療人材育成システムを構築するとともに、医療・健康情報の電子化・ネットワーク化とそれを活用した次世代医療体系を構築する。また、地元企業と連携して創薬・橋渡し研究等を実施し、新たな医療産業の創出に努める。
  • 先端的な農業技術を駆使した大規模な実証研究を行い、成長産業としての新たな農業を日本全国に提案する。 
第4章 開かれた復興

(5)災害に強い国づくり

 1.震災に関する学術調査
 今回の大震災は、わが国の歴史においても、また、世界史的にも稀な巨大災害であった。したがって、今後の防災対策を検討するため、東日本大震災について、各分野において詳細な調査研究を行うことが極めて重要である。

 その際、地震・津波の発生メカニズムの分析や、防潮堤等構造物の効果、防災教育・訓練等ソフト対策の効果など、これまでの防災対策の長短あわせた再検証等が必要である。これに加え、避難行動など被災者が有する情報は、今後の教訓として重要である。さらに、被災者の心情や調査回数、個人情報保護の観点等に十分配慮しながら、被災者に対する聞き取りなどを実施することが重要である。

 また、現在、各機関が様々な調査研究を実施・予定しているが、それらを有機的に連携し、総合的な調査となるような配慮が必要である。その調査結果については、研究者をはじめ広く一般にもアクセス可能で海外にも開かれたデータベース等を構築することが求められる。

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研究振興局振興企画課学術企画室

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