資料1-5 科学技術・学術審議会(第36回)における意見の概要

野依会長

 文部科学省が中心となるSやTについても大きな課題があってしかるべきであり、その多くは従来の個人的な分野別、分散型の研究だけでは解決できないのではないかというのが私の認識です。従来おおむね、Sは個人戦、Tは団体戦、Iは社会の総力戦という色彩が強かったと思いますし、今後も同じ傾向になると考えています。

 しかし、近年の世界の動向を見ますと、Sといえども、団体戦の様相が非常に強くなっていると思います。そこには国の関与、あるいは絶大な支援があるということです。

 これからの自然科学の研究、あるいは技術開発には総合的な研究、あるいは社会科学も含めた学際的な共同研究の必要性は明確です。そして、これらを通じて日本の存在感がやや薄いことを私は大変憂慮しております。

 もちろん現行の科研費を中心とする個人の自律的な分野別、分散型の研究は極めて重要でありますが、果たしてこれだけにゆだねておいていいのであろうかと。

 第4期科学技術基本計画が始まるに際して、SやTについても目標をはっきりと同定した課題研究が、私はあるべきと思います。課題解決型の研究ですから、それは特殊であっても、あるいは普遍的であってもその重要性の検証がしっかりと行われなければならない。個々の研究者に丸投げするのではなく、国と研究者社会が一体となって検証する必要がある。断じて分野別でなく、広く英知を結集して、政策として課題を決定していく必要があるのではないか。

 その上で、責任者がしっかりと組織をつくって、工程に沿って目標管理をしながら、課題解決にむけて研究を遂行する。これが大事だと思います。従来の個人研究に加えて統合的な研究なくして多くのこれからの学術、科学技術の重要課題は解決しないのではないかと私は憂慮してます。

 これに対しておそらく古典的な考えの研究者は拒否感、あるいは嫌悪感を表されるかもしれません。しかし、私は、アカデミアはもう一度社会と契約を結び直す必要があるのではないかと思います。先ほどから何度も出ております社会の中の科学、社会のための科学という観点もございます。前に行われました行政刷新会議を見ましても、今回の震災後の様々な科学社会に対する反応を見ましても、これをしっかりやらないとアカデミアの信頼は失墜していくのではないか、こんなふうに危機感をもっております。重要課題をしっかりと検証していく必要があるのではないでしょうか。

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