資料4-2 諮問第11号「科学技術に関する基本政策について」に対する答申(平成22年12月24日総合科学技術会議)―抜粋―

1.基本認識

4.第4期科学技術基本計画の理念

(1)目指すべき国の姿

 (前略)

 5 「知」の資産を創出し続け、科学技術を文化として育む国

  多様で独創的な最先端の「知」の資産を創出し続けるとともに、そうした研究活動、それに携わる人々、研究機関、さらには研究基盤や研究環境など、我が国の科学技術それ自体を文化として育む国となる。

(2)今後の科学技術政策の基本方針

  (前略)

  1  「科学技術イノベーション政策」の一体的展開

 イノベーションの重要性は第3期基本計画でも掲げられた。しかし、科学技術の成果を、イノベーションを通じ、新たな価値創造に結びつける取組は、なお途上にある。我が国としては、新たな価値の創造に向けて、我が国や世界が直面する課題を特定した上で、課題達成のために科学技術を戦略的に活用し、その成果の社会への還元を一層促進するとともに、イノベーションの源泉となる科学技術を着実に振興していく必要がある。

 そのためには、自然科学のみならず人文科学や社会科学の視点も取り入れ、科学技術政策に加えて、関連するイノベーション政策も幅広く対象に含めて、その一体的な推進を図っていくことが不可欠である。このため、第4期基本計画では、これを「科学技術イノベーション政策」と位置付け、強力に展開する。

 科学技術イノベーション政策の推進においては、我が国が取り組むべき課題を予め設定し、その達成に向けて、関連する科学技術を総合的に推進する方法と、独創的な研究成果を生み出し、それを発展させて新たな価値創造に繋げるという方法の2つがある。

 したがって、第4期基本計画では、前者に該当するものとして、我が国が喫緊の課題として取り組むべき環境・エネルギー、医療・介護・健康への対応を2.に、我が国が直面する多様な重要課題への対応を3.に、また、後者に該当するものとして、基礎研究の強化を4.に整理し、それぞれ具体的取組を掲げる。

3.我が国が直面する重要課題への対応

1.基本方針

 我が国が、科学技術で優れた成果を創出し、成果の社会への還元を進めていくためには、国として、より一層効果的、効率的な研究開発の推進を図る必要がある。このような観点から、第2期及び第3期基本計画では、特に重点を置き、優先的に資源配分を行う研究開発の分野として、重点推進4分野及び推進4分野を指定し、研究開発の重点化を図ってきた。しかし、これについては、基本計画で掲げた理念や政策目標との関連が不明確であること、分野の設定において、社会的な課題に対応するという視点とシーズを生み出し伸ばすという視点が混在していること、分野の縦割りにより必ずしも課題達成型の総合的な研究開発となっていないことなどの問題点が指摘されている。

 これを踏まえ、今後、国として重点的に推進する研究開発については、取り組むべき課題を明確に設定し、これに資する研究開発に資源配分を重点化していく必要がある。

 2.で、成長の2つの柱と位置付けたグリーンイノベーションとライフイノベーションは、我が国が抱える制約を克服し、経済成長につなげる重要課題達成のための取組である。しかし、我が国は、環境・エネルギーと医療・介護・健康以外にも、深刻かつ多様な課題に直面しており、これらの課題の克服に向け、産学官の多様な機関の参画を得て、分野横断的に、かつ各機関で進められている基礎から応用、開発、さらに事業化、実用化の各段階に至るまでの活動を相互に連携させ、新たな価値創造に結びつくよう、研究開発等の取組を総合的かつ計画的に推進していく必要がある。

 このため、本章では、1.で掲げた5つの国の姿の実現に対応する形で、2.における環境・エネルギー及び医療・介護・健康と同等に、国として取り組むべき重要課題を設定し、その達成に向けて重点的に推進すべき研究開発をはじめとする関連施策の基本的方向性を提示する。したがって、第4期基本計画では、これまでの重点推進4分野及び推進4分野に基づく研究開発の重点化から、重要課題の達成に向けた施策の重点化へ、方針を大きく転換する。ただし、この方針に基づく具体的な研究開発課題の抽出に当たっては、これまでの分野別の重点化による研究開発の実績と成果を適切に活用することとする。さらに、重要課題達成のための施策の推進においては、社会システムの改革も含めて、科学技術イノベーション政策を総合的に展開していく必要があり、これらの取組も一体的に推進する。

(以下略)

4.基礎研究及び人材育成の強化

1.基本方針

 基礎研究の振興は、人類の新たな知の資産を創出するとともに、世界共通の課題を克服する鍵となる。また、基礎研究は、我が国の国力の源泉となる高い科学技術水準の維持、発展や、イノベーションによる新たな産業の創出や安全で豊かな国民生活を実現していくための基盤を成すものでもある。さらに、これらの基礎研究によって知のフロンティアを開拓するとともに、課題達成を進めていくのは、それに携わる人である。

 このような観点から、2.及び3.で掲げた国として取り組むべき重要課題への対応とともに、「車の両輪」として、長期的視野に立った基礎研究の推進と科学技術を担う人材の育成を一層強化していく必要がある。

 研究者の自由な発想に基づいて行われる基礎研究は、近年、イノベーションの源泉たるシーズを生み出すもの(多様性の苗床)として、また、広く新しい知的・文化的価値を創造し、直接的あるいは間接的に社会の発展に寄与するものとして、ますますその意義や重要性が高まっている。我が国の科学技術イノベーションの礎を確たるものとするためには、国として、独創的で多様な基礎研究を重視し、これを一層強力に推進していくことが不可欠であり、基礎研究の抜本的強化に向けた取組を進める。

 また、我が国としては、科学技術イノベーションの推進を担う多様な人材を、中長期的な視点から、戦略的に育成、支援していく必要がある。特に、近年、あらゆる活動がグローバルに展開される中、人材の国際的な獲得競争は一層激化しており、国をあげて科学技術イノベーションを強力に推進する観点から、優れた人材の育成及び確保に関する取組を強化する。

 さらに、我が国が世界トップクラスの人材を国内外から惹き付け、世界の活力と一体となった研究開発を推進していくためには、優れた研究施設や設備、研究開発環境の整備を進める必要がある。このため、国際水準の研究環境及び基盤の形成を一層促進する。

2.基礎研究の抜本的強化

(1)独創的で多様な基礎研究の強化

 基礎研究は、研究者の知的好奇心や探究心に根ざし、その自発性、独創性に基づいて行われるものである。その成果は、人類共通の知的資産の創造や重厚な知の蓄積の形成につながり、ひいては我が国の豊かさや国力の源泉ともなるものである。このような独創的で多様な研究を広範かつ継続的に推進するための取組を強化する。

<推進方策>

 (中略)

  • 国は、これらの研究から生まれたシーズを発展させ、課題達成等につなげていくため、多様な研究資金制度の整備、充実を図るとともに、科学研究費補助金との連携を強化する。特に、基礎的、基盤的な研究を戦略的、重点的に支援するための研究資金を一層拡充する。
  • 国は、基礎研究の性格を踏まえ、研究者の独創性や研究の発展可能性を考慮し、研究課題の柔軟な選定、国際的基準などの多様な指標に基づく評価の実施など、ピアレビューを含めた審査や評価の在り方について改善を図る。

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