資料2 『東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点』に基づく本委員会の検討状況

『東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点』(※)及び『基本論点』に基づく本委員会の検討状況【(※)平成23年5月31日科学技術・学術審議会決定】

視点1:東日本大震災についての科学技術・学術の観点からの検証

社会の要請を十分に認識する必要性

  • 政策立案からそれの批判的検討に至るまで、研究者が多様な社会的活動に参画するとともに、社会に研究への参加を求めることで、社会的要請への積極的な応答を試みる必要がある。なかでも、深刻な事態を迎える社会的リスクへの対処のために、みずから研究課題を探索し発見する行動が必要。

日本の科学技術のシステム化の必要性

  • 様々な観点から実社会のあり様を捉えていく目標・ターゲットの設定が関係者に対し強く求められる。NPO、NGO、行政、司法、シンクタンク、企業等における実務の専門家やジャーナリストなど研究と実務の間を橋渡しできる研究者以外の者も含めた共同研究も必要。これまでの共同研究事業の実績を踏まえて、評価結果に基づいて延長を可能とする支援の枠組を構築することが必要。
  • 研究の推進から成果の発信までの連携を確保するなど、社会的貢献に向けた実効的な体制作りが必要であり、市民の参加を得ることについての検討も求められる。関連分野の知見や実社会での経験を有する実務者を含めた審査・評価を試行することも重要。
  • 知識の共同生産のすそ野を広げていく観点からは、小規模でもよいので若手研究者が、横断的なプロジェクトを推進できるような支援枠の導入を検討することも必要。

視点2:課題解決のための学際研究や分野間連携

課題解決のための政策誘導

  • 科学技術・学術審議会における基本的な方針や議論を踏まえて、推進すべき共同研究の課題を定めることにより、政策の実現性を高めていく課題設定プロセスも必要。その際、日本学術振興会の調査機能を活用するなどして、海外における諸分野の学術動向を継続的に把握することも重要。
    (分野間の連携や社会とともに進めることが求められる研究領域の例)
    ◎非常時における適切な対応を可能とするための社会システムの在り方
    ◎社会的背景や文化的土壌等から発想する新たな科学技術や制度の創出・普及
    ◎アジアの協調的な発展を目指した科学技術の制度設計
  • 基礎的な共同研究を社会実装のレベルにまで引き上げて行くには、自然科学中心のプロジェクトの中にも人文学・社会科学の研究者の参画を要件として取り入れることが必要。
  • 人文学・社会科学が中心となった小規模な共同研究プロジェクトを適正に評価した上で、自然科学と人文学・社会科学の双方にわたる知見等を活用して、より実装段階に近い共同研究事業として展開できるよう、事業・制度間の橋渡しを進めていくことも必要。

学際研究や分野間連携を支える人材育成

  • 分野間連携の意義について理解し行動できる人材を育成するためには、大学等において、学部・研究科横断的な履修や実社会と学術の関連性を追求する教育プログラムの実施とともに、広く社会の人々と対話し、分野間連携の実践を重ねコミュニケーション技術を習得する意欲ある若手研究者をきちんと評価することが重要である。
  • 大学や研究機関においては、キャリア開発のための講義やセミナー、長期インターンシップ等の機会の提供等、若手の研究員の多様なキャリアパスの確立に向けた支援が必要。 

視点3:研究開発の成果の適切かつ効果的な活用

社会的ニーズの把握と研究課題への反映

  • 分野間連携の研究は、研究者間の接触と追求によって自律的に成長しているものを評価して、安定的・継続的に支援するという観点が重要。
  • 目標・ターゲットの設定には多様な考え方があることに留意しつつ、様々な観点から実社会のあり様を捉えていく目標・ターゲットの設定が関係者に対し強く求められる。
  • 課題解決を目指す上では、エビデンスに基づく研究をさらに推進していく必要がある。その際、エビデンスや研究成果を一面的にとらえすぎると本来の社会貢献の目的や内容を狭めてしまう危険性もあることに留意が必要。

視点4:社会への発信と対話

科学的助言の在り方

  • 社会的貢献を目指す研究を行うにあたっては、目標・ターゲットの設定に際しては、個々の実証研究の積み重ねにより、政府や自治体等の政策形成や実施のために選択肢を提供することを研究の本務ととらえ、価値選択は政治の役割とする考え方や、政策形成・実施に係る価値判断にまで踏み込むという考え方など、多様な考え方があることに留意しつつ、様々な観点から実社会のあり様を捉えていく目標・ターゲットの設定が関係者に対し強く求められる。

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