参考資料1 文部科学省における研究及び開発に関する評価指針(平成21年2月17日)関連部分抜粋

2.2 研究開発課題の評価

2.2.1 競争的資金による研究開発課題

2.2.1.4 評価の実施時期

 評価実施主体は、研究開発課題の開始前に、競争的資金制度等の目的に照らした実施の必要性、目標や計画の妥当性等を把握し、予算等の資源配分の意思決定等を行うため、事前評価(審査)を実施する。
 また、研究開発課題の終了時に、目標の達成状況や成果等を把握し、その後の課題発展への活用等を行うため、事後評価を実施する。
 優れた成果が期待され、かつ研究開発の発展が見込まれる研究開発課題については、次の競争的資金(異なる競争的資金制度によるものを含む)等により、切れ目なく研究開発が継続できることが重要である。そのため、事後評価は、研究開発の特性や発展段階に応じて、研究開発終了前の適切な時期に前倒しで評価を行い、その評価結果を次の申請時の事前評価に活用する。(以下略)

2.2.1.5 評価方法

2.2.1.5.3 評価の観点

 評価は、当該研究開発課題の重要性、緊急性等(「必要性」)、当該課題の成果の有効性(「有効性」)、当該課題の実施方法、体制の効率性(「効率性」)等の観点から行う。
 また、評価は、研究開発の特性や規模に応じて、対象となる研究開発の世界的水準を踏まえて行う。
 さらに、研究者が、社会とのかかわりについて常に高い関心を持ちながら研究開発に取り組むことが重要であることから、研究開発によっては、人文・社会科学の視点も評価に十分に盛り込まれるよう留意すること(社会との接点で生ずる倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に対する適切な配慮を含む)、評価を通じて研究開発の前進や質の向上が図られることが重要であることから、評価が必要以上に管理的にならないようにすることや研究者の挑戦意欲を萎縮させないためにも研究者が挑戦した課題の困難性も勘案することが重要である。

2.2.1.5.4 評価項目の抽出

 評価実施主体は、研究開発課題の性格、内容、規模等に応じて、「必要性」、「有効性」、「効率性」等の観点の下に適切な評価項目を設定する。
 なお、評価項目としては以下のものが考えられる。

ア.「必要性」の観点
 科学的・技術的意義(独創性、革新性、先導性、発展性等)、社会的・経済的意義(産業・経済活動の活性化・高度化、国際競争力の向上、知的財産権の取得・活用、社会的価値(安全・安心で心豊かな社会等)の創出等)、国費を用いた研究開発としての意義(国や社会のニーズへの適合性、機関の設置目的や研究目的への適合性、国の関与の必要性・緊急性、他国の先進研究開発との比較における妥当性等)等

イ.「有効性」の観点
 新しい知の創出への貢献、研究開発の質の向上への貢献、実用化・事業化への貢献、国際標準化への貢献、行政施策への貢献、人材の養成、知的基盤の整備への貢献、(見込まれる)直接の成果の内容、(見込まれる)効果や波及効果の内容等

ウ.「効率性」の観点
 計画・実施体制の妥当性、目標・達成管理の妥当性、費用構造や費用対効果向上方策の妥当性、研究開発の手段やアプローチの妥当性等

2.2.1.6 評価に当たり留意すべき事項

2.2.1.6.3 基礎研究等の評価

 基礎研究については、その成果は必ずしも短期間のうちに目に見えるような形で現れてくるとは限らず、長い年月を経て予想外の発展を導くものも少なからずある。このため、評価実施主体は、画一的・短期的な観点から性急に成果を期待するような評価に陥ることのないよう留意する。
 また、試験調査等の研究開発の基盤整備的な役割を担うものについては、個々の性格を踏まえた適切な評価方法を用いる。

2.2.1.7 評価結果の取り扱い

(前略)
 競争的資金制度等による研究開発課題の評価については、あらかじめ評価目的及び活用方法を具体的に明確化し、評価結果を資源配分等に適切に反映して、研究開発の質の向上や資源の有効活用を図ることが重要である。評価結果の具体的な活用の例としては、評価時期別に、
 事前評価(審査)では、課題の採否、計画変更、優れた研究開発体制の構築、研究者又は研究代表者の責任の明確化等
 中間評価では、進捗度の点検と目標管理、継続、中止、方向転換、研究開発の質の向上、機関運営の改善、研究者の意欲喚起
 事後評価では、計画の目的や目標の達成状況の確認、研究者又は研究代表者の責任の明確化、国民への説明、評価結果のデータベース化や以後の評価での活用、次の段階の研究開発の企画・実施、次の政策・施策形成の活用、研究開発マネジメントの高度化、機関運営の改善
 追跡評価では、効果・効用(アウトカム)や波及効果(インパクト)の確認、国民への説明、次の政策・施策形成への活用、研究開発マネジメントの高度化等
が挙げられる。(以下略)

2.4 研究者等の業績評価

 第3期科学技術基本計画においては、科学技術システム改革の一環として、研究者の処遇に関して、能力や業績の公正な評価の上、優れた努力に積極的に報いることなどによる公正で透明性の高い人事システムの徹底が掲げられている。
 このため、評価実施主体である研究開発機関等の長は、研究者等の業績評価の実施に当たっては、評価の目的(注15)を明確にするとともに、機関の設置目的等に照らして、評価時期も含め適切かつ効率的な評価の体制や方法を整備し、責任をもって実施する。
 研究者の多様な能力や適性に配慮し、研究開発活動に加え、研究開発の企画・管理、評価活動、また、産業界との連携、知的基盤整備への貢献、国際標準化への寄与、アウトリーチ活動(注16)等の関連する活動にも着目するとともに、質を重視した評価を行う。例えば、評価の領域を「研究」「人材育成」「社会貢献」「運営管理」等に切り分け、個人の能力が最大限に発揮されるとともに、組織力の向上も目指した評価となるように評価される領域の比重を適宜変え、一律的な評価を避ける必要がある。この際、評価項目全体を平均的に判断するばかりではなく、場合によっては、優れている点を積極的に取り上げる。このほか、各研究開発機関等においては、公正でかつ透明性の高い採用選考・人事システムが徹底され、女性研究者や海外の研究者の能力や業務が適切に評価されることが期待される。(以下略)
 (注15)研究者等の業績評価の目的には、自己点検による意識改革、研究の質の向上、教育の質の向上、社会貢献の推進、組織運営の評価・改善のための資料収集、社会に対する説明責任等が挙げられる。
 (注16)「アウトリーチ活動」とは、国民の研究活動・科学技術への興味や関心を高め、かつ国民との双方向的な対話を通じて国民のニーズを研究者が共有するため、研究者自身が国民一般に対して行う双方向的なコミュニケーション活動のことをいう。

第3章 機関や研究開発の特性に応じた配慮事項

3.2 大学等における学術研究の評価における配慮事項

3.2.1.2 学術研究における評価の基本的理念

 学術研究においては、自律的な環境の中で研究活動が行われることが極めて重要である。その評価に当たっては、専門家集団における学問的意義についての評価を基本とする。その際、公正さと透明性の確保に努める。
 また、優れた研究を積極的に評価するなど、評価を通じて研究活動を鼓舞・奨励し、その活性化を図るという積極的・発展的な観点を重視する。画一的・形式的な評価や安易な結果責任の追及が研究者を萎縮させ、独創的・萌芽的な研究や達成困難な課題に挑戦しようとする意欲を削ぎ、研究活動が均質化することのないようにする。

3.2.1.4 評価の際の留意点

3.2.1.4.2 評価の方法

 定量的指標による評価方法には限界があり、ピアレビューによる研究内容の質の面での評価を基本とする。その際、数量的な情報・データ等を評価指標として用いる場合には、前述(2.2.1.5.6及び2.2.2.5.2 評価の実施)に述べた観点を踏まえ、慎重な態度が求められる。
 人文・社会科学の研究は、人類の精神文化や人類・社会に生起する諸々の現象や問題を対象とし、これを解釈し、意味付けていくという特性を持った学問であり、個人の価値観が評価に反映される部分が大きいという点に配慮する。

3.2.1.4.3 研究と教育の有機的関係

 大学等は教育機能を有する機関でもあることから、大学等の機関評価や大学等の研究者の業績評価については、教育、研究、社会貢献といった大学等の諸機能全体の適切な発展を目指すことが必要であり、研究と教育の有機的関係に配慮する。

3.2.2.3 研究者の業績評価

 各大学等においては、例えば、学会等を通じた研究者間の相互評価や競争的資金の獲得実績も活用して個々の研究者の業績を評価し、その結果を大学等の組織運営に活かす。なお、研究者の業績評価については、大学等における自己点検・評価の一環として実施することも考慮する。
 研究者の業績評価に当たっては、研究者の創意を尊重し、優れた研究活動を推奨し、支援するという積極的視点が重要である。一方、研究者は、大学等がその使命を全うするために自由な研究環境の保障が必要とされていることを自覚し、自らを厳しく律して研究を推進することが望まれる。
 大学等にとっては、教育機能も極めて重要な要素であり、教員の評価に当たって研究面での業績のみが重視されることによって、大学等における教育面での機能の低下をもたらすことのないよう留意する。

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