欧米の学者の研究成果の学習や紹介が研究活動の中心となったという歴史的経緯のためか、日本の人文学・社会科学においては、日本の歴史や社会に根ざした研究活動は必ずしも十分とは言えない。
(1) 欧米の学問の成果の受容にとどまることなく、日本の人文学者・社会科学者が自ら置かれた歴史や社会と直接向き合った上で学問を展開していくことが必要。
(2) 人文学や社会科学が、「人間とはなにか。」「正義とは何か。」といった「認識枠組み」の創造という役割・機能を果たしていくためには、研究分野や研究課題の細分化と固定化の克服が必要。
日本の社会的な現実を欧米の学説の適用によって説明するにとどまらず、独自の学説によりこれを理解していくことへの社会からの期待は大きい。また、自然科学に比して、「最先端」の課題は、アカデミズムの側というよりも社会の側にあるという場合がしばしばある。
さらに、東日本大震災の現状を踏まえ、「社会のための、社会の中の学術」という観点からも、人文学・社会科学の社会への貢献が求められている。
(1) 政策的課題や社会への貢献を視野に入れた人文学・社会科学の機能の強化が必要。
(2) 社会が抱える様々な課題の解決のために、個々の専門分野を越えて、様々な領域にまたがる学際研究や分野間の連携、特に、自然科学者と人文学者・社会科学者との連携が必要。
(3) 人文学・社会科学の成果等について、情報を受け取る立場に立った適切な表現や方法で、海外を含めた社会へ発信し、対話することが必要。
(4) 様々な研究成果が、適切かつ効果的に結集され、社会が抱える様々な課題の解決に結びつくことが必要。
我が国の人文学・社会科学の個々の研究成果及びレベルは諸外国に比べて決して劣るものではないと考えられるが、英文学術雑誌の刊行、論文投稿など成果の国際発信といった点を含め、国際的な取組は必ずしも十分とは言えない。
(1) 自国や他国・他地域の文化的・社会的基盤の理解のための人文学・社会科学そのものの振興が必要。
(2) 諸外国における日本社会への理解増進や誤解を回避する観点などからも、人文学・社会科学の国際発信が必要。
研究振興局振興企画課学術企画室