人文学・社会科学の振興を図るため、平成15年度以降、様々な課題設定型の研究推進事業が行われてきた。
しかしながら、競争的資金と非競争的資金の事業が混在する中で、新規公募が1回限りの状況が続くなど、人文学、社会科学の振興を進める枠組みが必ずしも定着していない状況にある。
行政刷新会議の「事業仕分け」(平成22年11月)を受け、文部科学省においては、平成24年度以降の競争的資金制度の在り方を検討することとしており、人文学・社会科学分野の課題設定型の研究推進の在り方について検討する必要がある。
人文学・社会科学分野においても、科学研究費補助金による学術研究の多様性の確保を補完する仕組みとして、課題設定型の研究推進の枠組みが必要。
その上で、「学術研究の推進について」(第5期学術分科会審議経過報告)において、全地球的な課題をはじめとした学融合的協働が必要な政策的・社会的課題への対応など目的の明確化や実施手法の工夫も含めた改善・充実等が指摘されていることなども踏まえ、以下のような事業の改善を図る必要がある。
競争的資金制度の見直しにあたり、課題設定型事業の持続的な実施・定着を図るとともに、幅広い観点での課題設定等が可能になるよう、文部科学省の「政策や社会の要請に対応した人文・社会科学研究推進事業」について、日本学術振興会の「異分野融合による方法的革新を目指した人文・社会科学研究推進事業」に統合し、各事業のメニュー化を図る。
上記(1)の事業統合にあたっては、政策や社会の要請に応えることを目的とした課題設定型事業の趣旨をより一層明確にする観点から改善充実を図る。
課題を設定する研究者の自主性を尊重した公募のスキームを基本としつつ、科学技術・学術審議会等における学術振興上の課題等の検討も踏まえた、課題設定の仕組みについて検討する。
政策や社会の要請に応えることを目的とした課題設定型事業においては、研究の細分化の克服や国際化の推進を図ることが必要であると考えられる。
このため、事業の目的を明確にする観点から、学融合的な研究体制の整備、異分野間の研究方法の融合、研究者と実務者との協働、国際共同研究、新たな研究手法の導入等、目的を踏まえた応募要件や審査基準の設定について検討する。
政策や社会への貢献という課題設定型事業の趣旨を踏まえ、中間評価等における研究者以外の実務者等の積極的な参画や、メディアを含めた社会への成果発信の取組を評価する仕組みの構築を検討する。
社会への提言をはじめとする人文学・社会科学に期待されている機能を発揮するため、ステークホルダーが参画した事業報告会の実施等、事業成果の発信手法の充実について検討する。
研究振興局振興企画課学術企画室