人文学及び社会科学の振興に関する委員会(第6期)(第8回) 議事録

1.日時

平成24年5月17日(木曜日)

2.場所

文部科学省3F1会議室

3.出席者

委員

樺山主査、鈴村委員、田代委員、金田委員、瀧澤委員、伊井委員、鶴間委員

<科学官>
池田科学官、河野科学官、中島科学官

文部科学省

田中総括審議官、吉田研究振興局長、森本研究振興局担当審議官、菱山振興企画課長、伊藤学術企画室長、高見沢学術企画室長補佐

4.議事録

【樺山主査】
それでは、ただいま13時でございます。予定の時間でございますので、ただいまから科学技術・学術審議会学術分科会人文学及び社会科学の振興に関する委員会第6期の第8回を開催いたします。
それではまず、事務局から配付資料の確認等をよろしくお願いします。

【伊藤学術企画室長】
失礼いたします。お手元にお配りしております資料に関しまして、資料2点、参考資料2点の計4点をお配りしております。まず、資料1点目としましては、本委員会報告書の案でございます。資料2に関しては、今後のスケジュール。そして参考資料1といたしまして、これまでご審議をしていただく際に活用していただきました関連データを参考資料ということでまとめさせていただいております。また、参考資料2に関しましては、学術研究の大型プロジェクトの推進ということで、ロードマップと呼んでおりますけれども、このロードマップの改訂作業が現在進んでおりまして、お配りしております資料は4月にパブリックコメントを行った際の資料でございます。こちらの資料の14ページに、今現在パブリックコメントで基本的な要件が満たされており、一定の優先度が認められる大型研究ということで、17計画ございますが、そのうち人文・社会科学関係の計画案が3点記載ございますので、こちらにつきましてもあわせて本日のご審議の際に参考資料として活用していただければと思います。また、あと、机上に今委員会の報告書案に盛り込むべきご意見ということで、また、この委員会終了後にご意見賜る際の意見用紙もあわせてお配りさせていただいておりますので、過不足等ございましたらお申しつけください。よろしくお願いします。

【樺山主査】
はい、ありがとうございました。
それでは、これから議事に入らせていただきます。ここまでの経緯をごく簡単に繰り返し復唱させていただきますが、前回でございますけれども、とりあえずは報告書に関する素案を作成していただきまして、ここで一通りお諮り申し上げました。その際、ご出席の方々、あるいはご欠席であった方々も含めましてさまざまなご意見をその場あるいは事後にいただきました。大変数多くございまして、それらを事務局で取りまとめていただき、できる限りその素案の中に組み込みながら、第2案とでもいいますか、次なる案を作成していただいたという次第でございます。
後ほどご覧いただくとわかりますとおり、黒い線が引いてある部分が修正もしくは訂正が入った部分でございますが、ご覧いただきましてわかりますとおり、ほとんど真っ黒になっているところ等々がありまして、大変な努力をしていただきました。事務局の方々、本当にありがとうございました。
今日もこれを前提にしながら、なおさまざまなご意見をいただきまして、できるだけ最終案に近いものにまで仕上げていくことができればと考えておりますので、どうか委員の方々、その他、皆様方、よろしくお願い申し上げます。
それではですが、本日は前回までの議論を踏まえまして本委員会の報告案について検討いたしたいと思います。まず、資料1、報告案でございます。この目次をご覧くださいませ。全体が大きく三つの節に区切られておりますが、まず、事務局から修正部分を中心として本報告案の全体についての概略をご説明いただきます。その上で、その後に、「1、人文学・社会科学の振興を図る上での視点」「2、制度・組織上の課題」「3、当面講ずべき推進方策」の3項目ございますが、各項目ごとに区切ってご説明いただき、議論を行いたいと存じます。そのように進めたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。なお、本日は、1時から午後3時までの時間をたっぷりととってございますので、さまざまな形でもってご意見をいただくことができれば、これらを取りまとめまして、事務局でさらにこの案をブラッシュアップしていくことができればと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
それではまず、事務局から先ほど申し上げましたような順序でご説明お願い申し上げます。よろしく。

【伊藤学術企画室長】
では、失礼いたします。資料1に基づきましてご説明申し上げたいと思います。
まず、この資料1の作成の基本的な考え方でございますが、こちらに関しましては、前回の委員の意見で配付いたしました報告の基本的な方向性と、そして各論の原案、そして先生方から委員会時、またその後にいただきましたご意見をもとにしまして修正させていただいたというものでございます。本日ご意見いただく際にはこの柱立ても含めてご意見の個々の具体的内容につきまして、改めて全体的なご審議をいただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
では、少しお時間をいただきましてご説明申し上げたいと思います。
まず、1ページ目の目次の部分でございます。こちらに関しましては、前回ご提案させていただきました報告の基本的な方向性という部分のうち、振興を図る上での視点、3点を1の(1)から(3)までに置きかえさせていただいておりますのと、あわせて、その際にその視点をもって改善を取り組むべき制度・組織上の課題ということで、その際も4点示させていただいております。それを2の(1)から(4)ということで整理させていただいております。また、前回の基本的な方向性及び各論の原案では、当面講ずべき推進の方策ということで、(1)の先導的な共同研究の推進の部分だけでございましたけれども、いただきましたご意見等を踏まえまして、この当面講ずべき推進の方策についてということで(1)から(4)という形で少し充実を図っております。こういった柱立てで報告書の原案を作成しております。よろしくお願いします。
では、具体的に次のページ以降、修正点を中心にご説明申し上げたいと思います。
まず、1ページ目でございますが、はじめにという部分でございます。これはこの局面におきまして、人文・社会科学の振興をなぜ今特に図る必要があるのかという部分につきまして、前回ご提案させていただいた基本的方向性を中心に、いただきましたご意見を加筆しております。基本的な考え方の部分を確認的にご紹介いたしますけれども、東日本大震災が起こった後、また、この地震を契機としまして科学、学術に対しても反省と衝撃ということがもたらされるものであった、下線部分のところでございますが、そういうさなかにおきまして、人文学・社会科学というのは、本来において知的社会の推進に向けて注力すべきものであり、そこに重大な責任を負っているというような学問であるといった基本的認識に立ち返って、ここで新たに提起された課題と、そしてそれに対応する研究というのはどのようなものであろうかという、具体的には第2パラグラフ目の修正点でございますが、どのような性格を持つものであろうかという部分でございますが、前回この局面に当たって、社会のリスクの増大と社会のシステムをどのようにとらえていくのかという人文・社会科学の学問的特性としっかり整理したほうがよろしいのではないかというようなご意見もちょうだいしておりますので、こちらにございますような下線のように、リスクの増大に直面する現代社会にあっての社会のシステムにどのような問題が内包されているのか、根本的な解明を求められるであろう。そういった観点で人文・社会科学はどのような対応策を提示できるのかという部分を加筆させていただいております。
次に、修正点のほうでございますが、2ページ目のところでございます。人文学・社会科学の振興を図る上での視点というところでございますが、前回の修正点というところにつきましては、(1)、(2)、(3)ということで、特に1点目と2点目を文言の適正化ということで修正を図らせていただいております。前回はこちらの1番目は「諸学の融合的連携と総合性」ではなく、「学の融合と総合性」という形でございましたけれども、「学」という部分に関しましては、もう少しそれぞれの学問のディシプリンというものを持ち寄って、融合というよりも、より大胆な連携を図っていくべきではないかといった方向性について体現できるような文言に整理したほうがよろしいというようなご意見もいただいたものでございますので、「連携」という言葉に変えたということと、そして、その連携を強めるために、より各学問、ディシプリンが寄り添ってということで「融合的連携」というような文言に修正案は変えさせていただいております。
また、2点目のところでございますが、「学術への要請と社会的貢献」という形にしておりますけれども、前回は「学術への社会的要請とアウトリーチ」というような言葉でございました。この「アウトリーチ」という部分がわかりにくいというご指摘もいただきましたので、「社会的貢献」ということで整理させていただいております。
次の修正点、3ページ目のほうに移らせていただきたいと思います。視点の1点目の諸学の融合的連携と総合性の部分でございます。こちらに関しましては、基本的に内容は前回と同様で、表現の修正の適正化ということで図らせていただいている部分でございます。内容の確認ということで簡単にあわせて申し上げたいと思いますが、一番最初の前提のところの最初のパラグラフでございます。人文・社会科学にあっては、従来ややもすれば急速に進む専門化を優先させて細分化に陥り、総合性への視点を欠落させているという反省。この結果として、本来人文・社会科学に求められている人間社会の全体的理解というところに課題があるのではないかといった観点からより一歩踏み込んで寄り添った融合的連携の方法というのを導入することによって、学術への広範な要請、社会的要請に対応していくという流れをつくるべきではないかというところでご意見をいただいているところでございます。
その観点から、その重要性と、そして研究継続という二つの部分について、これまでも柱を整理しているわけですが、まず1点目の研究者の交流・相互理解の重要性の部分というところでございます。こちらにつきましては、新たな領域開拓を目指す分野間連携の研究という部分につきましては、日米比較という観点から行きますと、日本はいろいろな研究をすることの寛容性があるということから、こういった日本の研究の特性システムというところの強みを生かす研究という効果があるのではないかというようなご指摘もいただいたところでございます。一方、課題といたしまして、次のパラグラフでございますが、研究分野のタコつぼ化により、専門の外に出て交流することが非常に難しい状況という部分がある。また、実際に新たな領域開拓を目指すという部分についても、こちらはいただいたご意見で、より趣旨を明確化したほうがいいということもございましたので、領域開拓を目指すときの課題という部分でございますが、時間をかけて他分野への文法も理解し、分野間の接点になる事例を見出すというような具体的な課題という部分を加筆させていただいております。
また、この分野間連携を図る際の、あわせて課題の2点目ということでいただきましたご意見は、理工系は人文系に比べると、組織的研究が多いということから、分野間連携といったときに、文理連携の際に、結果として理工系中心の研究になってしまうというような傾向がややもしてある。そこは連携にあたって留意しなければいけないというご意見もいただきましたので、3ページの後段のところの下線でございますが、加筆させていただいております。
以上が視点の1点目の主な修正点でございます。

 次に、視点の2点目、1ページの5ページ、6ページに移らせていただきたいと思います。視点の2点目の学術への要請と社会的貢献についてという部分でございます。こちらの修正という部分に関しましては、主に留意点の加筆というところが中心でございますが、改めて簡単にここの部分の主な趣旨についてご説明申し上げたいと思います。まず、5ページの上段でございますけれども、学術への要請と社会的貢献という部分でございますが、まずは人文・社会科学の従来のものの考え方という部分の基本のところでございますけれども、研究者の側の契機、研究への契機、モチベーションというところは極めて重要視されてきたという部分と、一方、今般の災害に直面した後、また、社会の高度な複雑化というような課題が生起しているという現状におきまして、そういった研究者の内在的な課題意識ということとともに、研究の社会的機能への真剣の認識の高まりというところが期待されているという部分がございます。ここを基本的な現状認識ということで書かせていただいております。
そういった基本的な現状認識に対応するという一つの仕掛けという部分につきまして、第1パラグラフの下から7行目、「多様な」で始まりますが、一つの仕掛けとして多様な社会的活動に参画することで社会的要請への積極的な応答を試みる。それが一つの手法として、次の行でございますが、いわゆる課題設定型の研究推進というのは今後の一つの方向性を示しているという形で書かせていただいております。この視点の中の課題として2点設定させていただいていますが、目標・ターゲットの設定と研究と社会実践の関係という二つでございますが、目標・ターゲットの設定の部分というところに関しましては、前回と同様大きな修正はございません。ただ、6ページの上段の部分でございますけれども、目標・ターゲットを設定する際の留意点という部分で、前回ご意見いただきましたけれども、分野間連携の研究という目標を設定して、それに取り進むということによって、かえって当該分野間連携の研究課題というところにどんどん細分化してしまうということで、結局各分野間の研究というのと研究スタイルを変えない限りは殻にこもってしまうという懸念もあるということで、その具体的な例示ということで、「例えば」でございますような都市計画や防災等の分野間連携の際の課題ということをご意見でいただいておりますので、留意点を明確化するということで例示で書き足しております。
また、2点目の研究と社会実践の関係の部分でございます。前回、実務家という部分に関しては、どの者を想定して書かれている文言かという点で非常にわかりにくいというご意見もいただきましたので、下線のとおり書き下し、想定される関係者を書かせていただいておるところでございます。
主な修正点はこの点に関しましては以上でございます。

引き続き、3点目の視点のグローバル化と国際学術空間につきましてご説明申し上げたいと思います。こちらにつきましては前回かなりご意見をいろいろいただきまして、日本由来の学問領域と国際的な交流の場というところで、積極的にそういったものを引き出して日本がリーダーシップをとっていくというような貢献・寄与というものが期待されるのではないか、その観点も加筆すべしということをご意見としていただいておりますので、それを中心に書かせていただいています。具体的には、その手法の一つという部分でございますが、国際的な成果発信というところの重要性という部分と、そして、次の8ページの柱でございますが、国際的な研究活動を評価していくということの評価の重要性ということで、二つに分けてそれぞれご意見を加筆させていただいております。
主な修正点の部分でございますけれども、まず、前半の国際的な成果発信の重要性の部分というところでございますけれども、こちらの修正点のうち、主なポイントといたしましては、一番下のパラグラフで「また、海外に向けて」で始まるような部分でございますけれども、海外の研究者との対話の促進ということを進めていく際にも日本の文学とか芸能などの日本研究といったものや日本特有の経済社会に関するデータを積極的に提供していく、発信していくということがまずあって、それによって海外の研究者との対話が促進され、日本研究がさらに発展していくという循環につながるのではないかというようなご意見もいただいておりまして、その観点で加筆させていただいております。
また、8ページ上段になりますけれども、こういった発信をしていく。我が国の人文学・社会科学が国際的に存在感を高めていくためには、一方海外における人文学・社会科学の諸分野の学術動向といったものもしっかり押さえた上で発信、そして研究支援というものに努めていくべきではないかというようなご意見もいただきました。その観点でその趣旨を加筆させていただいているとともに、独立行政法人日本学術振興会の調査機能の活用というのも具体的例示として入れさせていただいております。
2点目の評価の重要性という部分でございますが、前回のご意見でも人文学・社会科学はそもそも研究対象が海外の事象にあるというような場合も多いということで、本来的な国際的な研究活動を進める素地があるというような学問的特性についてもご指摘いただいているところでございます。その観点を加筆させていただいているのと、併せて、国際的な研究活動の促進という部分につきましては、研究者として具体的に研究活動を始める前の研究教育段階からも積極的に留学等も通じた国際的な研究動向へ関心を持つ視野を高めていくというような観点も必要ということから、留学の目的意識を専門的な教育研究を通じて質的に高めていくことが重要という観点も加筆させていただいているところでございます。
以上、主な修正点等でございます。
次に、制度・組織上の課題という部分でございますが。

【樺山主査】
ちょっと済みません。ここで一度切りましょうか。

【伊藤学術企画室長】
はい、わかりました。

【樺山主査】
長くなりますので、とりあえずはここで切らせていただきまして、その後に第2、第3以下ということにさせていただきます。ちょっとご理解いただけたと思うんですが、したがって、現在の1ページから8ページまでということになりますか。そこまで今ご紹介いただきました。
ちょっと1点、誤植ではないかと思いますので、そこからお諮りさせていただきますが、7ページをお開きいただけますでしょうか。グローバル化と国際学術空間というところで始まる頭の大きなパラグラフがありますが、そのパラグラフの下から4行目、「日本由来の学問領域と」とありますが、「領域を」ではないかな。「領域を国際的な交流の場に引き出し」ですね。

【伊藤学術企画室長】
はい。

【樺山主査】
ここは「と」ではなくて「を」に訂正していただければと思います。
とりあえずここまでをご意見いただきましょうか。もちろん後ほどまとめて総括的ご意見、ご質問等をいただくことが可能でありますけれども、とりあえず今お読みいただいた点につきまして、文言その他も含めて、ご質問、ご意見等ございましたらご自由にご発言くださいませ。

【鈴村主査代理】
よろしいでしょうか。

【樺山主査】
はい、鈴村委員、どうぞ。

【鈴村主査代理】
何点かお尋ねしたい点と、私の理解を確認をさせていただきたい点があります。
最初に、(1)の融合的連携と総合性という箇所ですが、この表現についてはいろいろ議論があったところであり、むしろ統合的、補完的という表現の使用が支持されていたように記憶しています。融合的という表現は、学術の統合や補完的な機能を超えて、学問領域を文字通り融合して新しく作るというイメージがこもることが懸念されたのだと思います。その点はどうなったのかという点をご確認いただきたいと思います。
もう一つ、ささいな点ですが、同じ場所の下から3行目、下線を引いた部分ですが、挿入句みたいになっている部分は、前後の文章と論理的につながらないと思います。

【樺山主査】
ちょっともう一度、どの場所ですか。

【鈴村主査代理】
(1)の第1パラグラフの下から3行目、「隣接する理工学や生命学の適切な」というところがありますね。一番冒頭のところです。この箇所で、挿入句を省略してみると、「理工学や生命学の適切な戦略的に挑戦することを目指したい」となって、文章として意味が通じなくなります。後で検討されて修正をお願いしたいと思います。
5ページにも2か所、ちょっと気にかかる点があります。(2)の最初のパラグラフの文章ですが、例えば6行目から7行目にかけて「断じて許されない」とか、下から3行目のところで「いかにしても許容することはできない」と書かれていますが,不必要に強圧的で強制的に読める表現ですので,もう少しマイルドな表現を工夫していただければ幸いです。目標・ターゲットの設定というそのすぐ下の括弧つきの表現の第2パラグラフには、非常に重要なことが書いてあります。ここでは価値の問題を人文・社会科学の中にどう位置づけるかという問題に関して、いろいろな考え方が併記されています。私の疑問の1点目は、3行目に出てくる「データ」という表現です。「データ」というと、コンパイルされた分析結果で数値的なものをイメージしがちです。ここではむしろ、「データ」ではなくて「選択肢」とすることが、この文章の意味を通すためにも適切ではないかと思います。
それから、ここに書いてある第1の考え方は、非常に古典的な価値と事実の二分法をそのまま維持する考え方です。この価値と事実の二分法を巡っては、現代の人文・社会科学でここまで古典的な考え方は、多分維持が難しくなっているのではないかと思います。この書きぶりでよいのかを、念のために確認したいと思います。
もう1点だけですが、8ページの全文下線になっている箇所は、ご苦心があらわれているところだと思いますが、「研究上のアンビションを持ち」というのは意味が伝わりにくいと思います。これは「アンビション」なんでしょうね。「アンビジョン」と書いてあるけれども。

【伊藤学術企画室長】
はい。

【鈴村主査代理】
この箇所は、おそらく国際的なプレゼンスを意識した研究活動を強調するために書かれているのだと思いますが、もう少し表現上の工夫があり得るのではないかと思います。

【樺山主査】
はい、ただいまのようなご指摘、ご意見等ございます。これらのうちお答えいただけるのが必要なところだけありましたらお願いできるでしょうか。

【伊藤学術企画室長】
修正点ということでご指摘いただきました3ページ目の上段、(1)、第1パラグラフのところの融合的連携の部分というところに関しましては、前回の議論どおり、完全に学問が溶けてなくなってしまうという趣旨で書かせていただいているわけではございませんで、ただ、大胆な連携を進めていくといったときに、異なる学問がより寄り添って協力していくというような趣旨を短いキーワードでまとめるときにどういう文言が適切なのかということで、融合的という言葉であらわせていただいた形でのより密接な連携ということで「融合的連携」という形で事務局としては加筆させていただいております。これは先生方に改めてこういった文言でよろしいかはご確認いただければと思います。
また、事務局のほうで修正いたしますのは、先ほど同じパラグラフの中でご指摘いただきました「隣接する理工学や生命学の適切な」以降の文章のつながりという部分に関しましては、ご指摘のとおり、趣旨が少し不明確な部分もございますので、ここは適正な表現に修正させていただきたいと思っています。
以上です。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。今の鈴村委員からのご指摘、ご質問等々につきましては、できる限りその趣旨を適正に反映できるように事務局にもお願いしたいと思っています。ほかに、では、瀧澤委員からお願いします。

【瀧澤委員】
ありがとうございます。審議の内容をできるだけ盛り込んでいただくという事務局の意志が反映されているものだと思いますので、それを踏まえてよく書いていただいたと思うんですが、幾つか気になる点がありましたので。
例えば3ページの(1)、1項目目、研究者の交流・相互理解の重要性の最初の頭のところです。表現ぶりの問題なんですけれども、「日米の研究の進め方を比較すると」という言葉で始まっていますと、このパラグラフがそういう趣旨のパラグラフなのかというような第一印象を持ってしまうものですから、アメリカの話が出てきたのかというのがちょっと唐突感があるかと思いますので、前段に何かワンクッション置いていただけるといいのかと思います。
それから、同じ項目の一番下のワンセンテンスなんですが、下線の加えていただいた「なお、理工系は人文系に比べると組織的な研究が多く、論文の作法も定まっている場合もあるため、分野間の連携が、結果として理工系中心の研究となってしまわないように留意しなければならない」というところの、その途中の「論文の作法も定まっている場合もあるため」というところが、前回先生からご指摘あったところを入れていただいたんだということはわかるんですが、多分この文章を初めて見られた方は何を言っているのかわからないと思いますので、「論文の作法も定まっている場合もあるため」というのはもしかしたら要らないのかという感じもいたしますが、いかがでしょうか。
それから、6ページ目の一番上の、加えていただいたところです。分野間連携の研究自体が目的化し、完結してしまって本来の目的・役割を果たしていないというようなことを言っているんだと思うんですが、これも結果的に理工系の既存の研究手法が中心となってしまうこともあるということと、少しまた別の話が入っているのかという気がして、ちょっと違和感を持ちましたので、少し整理していただいたほうがいいのかという感じがします。
それから、そのパラグラフの前半です。5ページの一番下のところ、「短期的な観点と未来志向の人類史的貢献という長期的観点の間で緊張関係がある」という、たしかヒアリングのときに先生からご指摘があった点だとは思うんですが、ここもちょっと初めてこの文章を読まれた方にはわかりにくいかと思うんです。この辺もう少し整理したほうがいいのかと思うんですが、抽象的な指摘で申しわけないんですが、そのように今のところ感じていますので、ちょっと私も検討いたしますが、よろしくお願いいたします。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。今のようなご指摘、ご意見でございますので、ちょっとこれは事務局でお預かりいただきまして、より適正な方法をお考えいただけますでしょうか。鶴間委員からどうぞ。

【鶴間委員】
もうまとめの段階ですので、大変よくまとまっていますので、あまり細かなことは申し上げませんが、一つだけ、7ページにグローバル化と国際学術空間という「学術空間」という言葉が出てきまして、これは非常に重要な言葉としてここでは使っているわけです。ただ、本文の中では真ん中あたりに「国際学術空間にあっては」と既定の言葉として使われていますので、初めて接した方はちょっとわかりにくいかという感じがしますので、何か説明の言葉を添えた方がよいでしょう。おそらく国際的に通用する言語で業績を発表していく場という意味が一つあるでしょうか。いろいろな意味で使っているのでしょうが、いきなり「国際学術空間にあっては」という表現よりは何かもう少し初めて接した人にもわかる言葉を添えていただいたほうがいいかと思います。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。今の最後の点ですけれども、通常は国際学界会とかという言葉で表現される。国際学界会という言葉がこういう場合に適正かどうか疑問だったものですから、あえて使い変えましたけれども、今ご指摘なような事情があろうかと思いますので、事務局とご相談して検討させていただきます。ありがとうございます。金田委員どうぞ。

【金田委員】
先ほどの鈴村先生のご指摘にもかかわるんですけれども、融合的というところに私は引っかかっておりまして、大胆な連携ということでどうかというご提案をしました。私だけではないかもしれませんが。3ページの上のほうですが、「既に試みとして進行しつつある融合的連携」というのはまだちょっと気になってはいるんですが、試みとして、つまり、これだと、融合的連携の方法という、融合的連携そのものが目的のような印象を文章として受けてしまうんですが、実際にもしそういうことが行われているとしたら、ごく一部ですけれども、目的を共有した試みとしてそういう融合的な試みが一部で行われるということはあり得るとは思うんですけれども、そのあたりのニュアンスがもう少し気になるところなんです。しつこく申し上げて恐縮ですが。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。いろいろな表現の形について選択肢も幾つか用意しながら考えていました。もちろんこれは皆さんのご意見に従って、いろいろな訂正の方法があり得ると思いますけれども、「分野間連携」ですとか、いろいろな言葉が既に使われておりますし、中でも、実はかなりの部分が「分野間連携」のほうが本文の中ではよく使われておりますので、そちらに統一するということも含めてもう少し事務局でご検討いただきたいと思っています。ありがとうございます。はい、伊井委員、どうぞ。

【伊井委員】  
文言なども先ほどから読ませていただきながら拝見しておりました。ご存じのように、ここにも書いてありますが、平成21年に一度出しております。そのときには「対話と実証」というキーワードを用いて、多方面の視点からまとめ上げました。今回の報告書はどういうキーワードで総括できるのかと思いました。
それと、前回出したときも、意想外に広く読まれておりまして、後で言えばいいんでしょうが、「それでは、これを出してどういう人文学とか社会科学の支援をしてくれるのだ、具体的にどうなんだ」というようなことも問われました。それによって予算化の方向もあるだろうと思います。この委員会としては、これをどのように発表するか、精神的ではなく、具体的に人文学への支援策は何かというのが今後の大きな課題ではなかろうかと思います。そして、そういう目で見ますと、例えば7ページ目のところの、国際的な成果発信の重要性というところで、一等下から3行目の「例えば、特色ある文学研究の翻訳を助成して」というのは、では、誰が助成するんだというような突っ込みたくなるようなところもあります。提案だけではなく、具体的な指針も必要になってくることでしょう。そして、その前の留学のことも国際的な研究活動という人文学からの広い視点も必要になってきます。8ページ目の、下から3行目のところで、「留学後の国内ポストが少ない現状などは」とあり、とてもそれが問題なのでありますけれども、それでは留学の意義をいくら強調して唱えたところで、内向きになっている現状を打破するほどの主張ができるのか、憂慮するだけでは実効性はなかなかないだろうと思います。それではこの委員会としてどのようにフォローしていくのか、そのスタンスも気になってくるところです。 

【樺山主査】
ありがとうございます。事務局からお答えいただけばいいんですけれども、今のご趣旨ですが、基本的には全体を統合するようなキーワード、もしくはイメージ用語はどうするかということについては、事務局といろいろ議論いたしました。現段階は決めておりません。ただ、幾つか候補もあり得ますので、最終的にはこの報告書のタイトルが実はついていないので、単なる報告としかついておりませんので、最終段階でもってご提案させていただくことになるかと思います。
それから、留学その他につきましては、ここでは一般論を挙げ、後に三段階に分かれておりますので、当面する課題、当面するというところでももう少し具体的に踏み込むという仕組みになっておりまして、それがうまくいっているかどうか、実は難しいところではありますけれども、仕組みとしては後ろのほうでもって具体的な提言をするという形になっているのかと思います。

【伊井委員】
ありがとうございました。

【樺山主査】
田代委員、それから池田科学官とご発言いただいた後、次に行かせていただきますが、まずはどうぞ。

【田代委員】
一点だけ申し上げます。3ページですが、研究者の交流・相互理解の重要性の中の真ん中あたり。言葉の、分野が違うと同じ概念、言葉でも全く違うということで「文法」という言葉が出てきます。認識、枠組みや「文法」を相互に理解するということですが、この「文法」という言葉に違和感があります。文法というのは言葉の用法や使用についての国語学的な問題です。おそらくここは用語の理解とか用語認識とか、そういうことではないかと思いますので、言葉を変えたほうがわかりやすいのかと思います。以上です。

【樺山主査】
ありがとうございます。続きまして、池田科学官、どうぞ。

【池田科学官】
3ページの下から二つ目のパラグラフの「なお」という下線部の部分でが、ここの議論は、いろいろ研究成果の発表の仕方に差があって、その結果として理工系中心の研究になってしまわないようにということなんですけれども、どうも理工系が中心なのか、人文・社会科学系が中心なのかという観点はあまり望ましい書きぶりではないのかというふうに思いました。分野ごとの方法論の違いを相互に理解しながら、その上でお互いに補完していくというような書きぶりのほうが自然かというふうに思いました。
もう一つは、8ページの2つ目のパラグラフです。人文学・社会科学においては、研究対象が海外の事象というふうにありますが、海外の事象である場合も多く。この海外の事象というのは、例えば英文学であれば英語を使うというようなことを念頭に置いていらっしゃる。例えば社会科学であれば、経済現象という各国共通の対象になっているので、そういうことも含めて、内外共通の事象とか、そういうふうなことも併記するか、書きかえるかのほうがよいのではないかと思いました。以上です。

【樺山主査】
二つご指摘ありましたけれども、いずれも大変もっともなご指摘でございますので、適正な表現について事務局でご検討ください。ありがとうございます。
それでは、一通りご意見いただきましたが、後ほどまた時間の許す限りいろいろ総括的なご意見もいただくことにいたしまして、少し先へ進めさせていただければと思います。次にまいりまして、2の制度・組織上の課題というところに入らせていただきます。これらにつき、ご説明と後に意見交換等々をお願い申し上げたいと思います。それではよろしく。

【伊藤学術企画室長】
失礼いたします。制度・組織上の課題、9ページからご説明申し上げたいと思います。こちらにつきましては4点課題を整理させていただいております。1点目の(1)共同研究のシステム化の部分でございますけれども、こちらについての加筆の部分というのが、人文学・社会科学に関する研究推進事業のこれまでの実施に当たっての考え方という点で、伊井委員が先ほどご指摘いただきました人文・社会科学に係るその研究推進という部分に関しましては、他者との対話という研究方法の特性を踏まえた共同研究を人・社の中では位置づけて、9ページ中段にありますような、これまで五つの観点の事業というのを各々推進してきたということで、推進に当たっての基本的な考え方という部分を他者との対話という部分で加筆させていただいております。また、こちらについては、併せて課題という部分も加筆させていただいていますのが、この白の五つの丸の後の新しく加わりましたパラグラフ、「これらは」で始まる部分でございます。こちらについてはそれぞれの趣旨、目的に沿って実施されてきてはおりますけれども、継続的な募集という部分には必ずしも確立していないということから、またそれぞれの目的ごとに各々されているということもあり、人文学・社会科学の体系的な支援というところまでは至っていないという課題を加筆させていただいております。そういった観点からその課題を乗り越えてという部分につきましては、新しく一つ加筆させていただいているのが、大きく総合性等の視点を持った枠組の構築ということで、記述を少し分けさせていただいております。ここの部分についての加筆という部分でございますが、下線部分、同じ9ページの下段のところでございますけれども、これまで実施されてきた事業の特色を生かしつつ、総合性、実社会対応、グローバル化への視点を持った枠組みを構築して制度を安定的・継続的に運営していくというところについて加筆させていただいているところでございます。
次ページ、10ページに関しましては、前回分野間連携による共同研究についての課題という部分でご指摘いただきました時間と手間がかかるというようなこと、そして、継続的に交流する、意思疎通を図るための場を設けることが必要というようなご指摘もいただきました。また、その基礎研究を政策貢献へつなげる役割を果たしていく、例えばシンクタンクとの実効的な連携というような一つの方策もあるのではないかというようなご意見もいただいているところでございます。そういった部分を中心に具体的事例ということで加筆させていただいているところでございます。
10ページの主な修正は以上でございます。
次ページの11ページ、2点目の課題の研究拠点形成と大学等の役割について修正部分のご説明を申し上げたいと思います。こちらに関しましては、研究の機能強化のあり方ということで、前回資料にも出させていただきました具体的な一つの拠点を果たす主体といたしまして、大学共同利用機関法人人間文化研究機構の取り組みの例という部分というのを出させていただいているところでございますので、そこを地域研究にかかわる複数の大学との組織的な連携というような部分であるとか、次のパラグラフ、「また」で始める部分でございますが、人文・社会科学系の共同利用・共同研究拠点ということで、これまでも地域研究や経済等において18機関が認定されており、共同研究を推進する機能ということで役割を果たしているという取り組みの内容についてご紹介させていただいたところでございますが、そちらの紹介事例というのをあわせてこちらのほうに記述として盛り込ませていただいております。こういったものが今後どのような形でより求められるかという部分の課題につきましても、次のパラグラフでございますが、我が国の人文学・社会科学の魅力を高め、海外へすそ野を広げていくためには従来の枠を超えた新たな学問分野の創生機能を強化していくというようなことが必要なのではないかということで課題を加筆させていただいているところでございます。
次に、12ページの3点目の課題でございます。次世代育成と新しい知性への展望という部分でございます。こちらに関しまして、人材育成のあり方ということで、教育プログラムについての改善ということもご指摘いただいております。その観点から12ページの中段の第1番目の下線でございますが、こちらも加筆させていただいてございます。また、前回もご指摘いただきました人材育成といったことと分野間連携の研究の推進といったときに、業績の捉え方ということで博士論文の取り扱いについてということでご意見があったかと思います。そちらに関しましては、下から二つ目の第2パラグラフの部分でございます。下線のように修正させていただいております。論文より単著の研究書が業績として高く評価される分野もある。このような分野の学問的特性を踏まえれば、査読つき論文雑誌への掲載を奨励するというのではなく、将来学術書となり得る大きな主題の博士論文への挑戦というところに専念させて、そして、そこをしっかり評価していくという部分の改善につきまして、例えば、その際に外部のレビューやレフェリーを行うというような形での評価というものの導入もあるのではないかということをご意見いただきましたので、その旨加筆させていただいているところでございます。
また、人材育成のあり方といった部分につきましては、博士課程を修了した後の人材のキャリアパスについてという部分でございますが、12ページから13ページのような形で、国内外において多様なキャリアパスを描くということもできるようにすることが必要であるということから、多様なキャリアの形成に資するキャリア開発の講義やセミナー、長期インターンシップ等の機会の提供など、様々な取り組みの推進が必要という旨加筆させていただいているところでございます。
最後に、4点目の課題でございます。研究評価の戦略と視点の部分でございます。こちらに関しましては、研究評価における留意点という部分で、前回いただきましたご意見のうち、下から2番目のパラグラフ、「分野間連携により」で始まる部分でございますが、下線のとおり、人文学などの研究においては認識枠組みの提示が評価されることが多く、具体的な技術水準の達成等による評価は難しいことが多いということで、人・社の評価の特性ということで認識枠組みの提示というところの評価が、評価されることが観点としては重要であるという部分を加筆させていただいているとともに、次の「また」で始まるパラグラフでございますけれども、人文学の研究におきましては、対話的な方法や科学的・実証的な方法を通じて、さまざまな視点からの分析というところが評価の観点の中でも重要であるという人文・社会科学の評価の特性を併せて加筆させていただいているところでございます。
制度と組織上の課題、4点につきまして、修正点は以上でございます。よろしくお願いします。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。
今ざっとご説明いただきました2の部分、つまり、制度・組織上の課題という点でございます。中が四つの部分に分かれておりますが、それぞれ以上ご説明いただいたような内容を持っているということでございます。それでは、これらにつきまして、お気づきの点、ご意見、ご質問等ございましたらご自由にご発言ください。いかがでしょうか。では、鈴村委員からお願いします。

【鈴村主査代理】
また幾つか質問させていただきたいと思います。まず、最初の9ページの(1)の共同研究のシステム化という箇所です。この冒頭の文章の中には、二度ほど財務的な支援という話が出てきます。最初は6行目から7行目にかけて、「財務的にも効率的な研究が訴求されるという側面もあって」と書かれています。次に下から2行目のところでは、「そのための財政的・人的な支援も行われてよかろう」と書かれています。これらの表現は、何らかの理由で研究助成について財務的な観点からの判断がウエートの高い考慮事項になっている印象を、ほとんど確実に与えると思います。また、財務的にも効率的な研究というのは具体的に何を意味しているかということは、かなり論争的な問題ではないかと思います。それだけに、なぜ財務的な側面を冒頭で強調する理由があるのかということを、お尋ねしたいと思います。それが第1点です。
その下の「人文学云々」というところでは、丸で列挙してあるものの中に、やや比例を失するまでに「日本と」とか「日本に関係する」とか「日本研究の」という表現が目立ちます。日本研究というエリアがあることはだれもが認めるわけですが、学術そのものは国境を越えているわけであり、日本における日本研究が国際的に重要なインパクトを持っていれば、日本から国境を越えて浸透していくというのが自然の理です。日本研究が人文学・社会科学に対する研究推進の中で殊さらに強調されるのは、かえって妙な気がするというのが私の印象です。もっと普遍的に共有される学術への日本からの貢献こそ、真っ先にうたわれるべき事柄であって、おそらく日本人の研究者ならではという特色は、そういう活動の中におのずから滲み出るものだと私は思います。それが第2点です。
細かいことながら、12ページでは経済統計学という表現が非常に浮いた感じで登場しています。もし何か例が必要であるならば、経済統計学を抜き出して挙げるのは例として適切ではないと思います。あえて必要だということになれば、理論経済学、計量経済学という例を挙げる方が、実態に近いと私は思います。
以上です。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。それぞれ事務局でもってご検討いただきたいと思いますが、今ご指摘がありました9ページの冒頭の部分ですが、財務的あるいは財政的という言葉がありますが、ご指摘の趣旨のような、あまり深い意味合いを込めて使っているというわけでは必ずしもありませんので、むしろ効率的なと言って済む文章でございますので、どのような訂正もしくは修正するかはもう少しご相談させていただきますが、今のご指摘ということでお預かりさせていただきます。ありがとうございます。
それから、事務局からちょっとご意見いただきたいのですが、今の丸が五つあるところ。9ページの真ん中に丸が五つがありますが、ここの点について、「日本」という言葉を含めてお考えのところがありましたら、お答えいただけますでしょうか。

【伊藤学術企画室長】
はい、失礼いたします。9ページ中段の五つの丸の部分につきましては、これからというよりもこれまでこういう五つの観点で、上段で行けば学際的、学融合的な取り組みということとか、共同研究、そして三つ目の丸でございますが、日本とかかわりが深い研究対象地域ということを意識して地域研究を進めていくというのが三つめの観点。そして四つ目は、近未来の我が国において抱える諸課題の課題解決型の研究。そして五つ目に関しましては、海外に点在している日本に関する資源を活用した日本研究の国際共同研究という五つの観点で研究支援が進められてきたというこれまでの観点でございます。ですので、今鈴村先生のほうからご指摘いただきました今後進んでいくべき人文・社会科学の支援という部分に関しましては、ご指摘のような趣旨も含めてもう少し修正を、後段の進めていくべき当面の方向性であるとか、この制度を組織上の課題の、実際この後の総合性の視点を持った枠組みの構築の部分、今後の進むべき方向性、こちらのほうでその趣旨をきちんと書いていくという形での修正を図っていきたいと思いますので、そのような方向性でよろしいかどうかご確認いただければと思います。よろしくお願いします。

【樺山主査】
はい。ここの部分は共同研究のこれまでの実施状況についてという論点で議論されているところで、必ずしも日本研究及びそれにかかわる日本の研究者のかかわり方を論じている部分ではないものですから、ちょっと全体の話の筋道が違う方向へ向かっているかという気がかりがありますので、それも含めてご検討いただけますでしょうか。
はい、ほかにどうぞございました。それでは、田代委員からお願いします。

【田代委員】
11の(2)大学拠点形成と大学等の役割の、下のほうの(研究の機能強化のあり方)のところに、大分修正していただきました。おそらくこれは参考資料として出ている大学共同利用機関法人や、共同利用共同研究拠点の一団と関係していると思います。ここに日本関連資料の調査分析に関して、国際共同研究の推進などをやっている、あるいはチームを組んで共同研究を推進する機能を発揮しているというふうに書かれていますが、実は私が問題にしたいことは、これはこの機関がそれぞれ個々にやっていること、つまりどちらかというとそれがタコつぼ化している状態が見えていることです。互いに同じようなことを対象に研究しているにもかかわらず情報交換があまりなされていない。このため、相互間の利用や情報の蓄積がお互いになされていないという現状があります。一つの例として、科学研究費にデータベース予算の申請があります。そこの審査員を私は何年かやらせていただいたことがありますが、そのとき気がついたことは、大学利用機関法人国文学研究資料館に大名家などのたくさんの古文書があります。同じように、東京大学史料編纂所にも大名家関係の古文書がある。日本の古文書は、それが公家・大名家・農家であろうと、いずれにせよ整理してデータベース化するにはいくつかの共通性と相違点をクリアする必要があります。しかしながらそうした協議をすることなく、これらの機関は単にデータベース予算を競合してとりあっている現状にあります。データベース構築のあり方、目的、進め方、それらが全部違います。そして、それぞれが別の機関と共同研究をしているということです。したがってこれら機関は、相互的に共同研究をやっているわけではないと考えられます。このような形が、表や文言の中でどのように言及されているのかという点を問題にしたいところです。共同研究は、チームを組んでそれぞれの機関で個々にやっているのですが、研究機関相互間の連携や、同じテーマに関する情報の蓄積がもう少し密に連絡や協議をしあい、それを社会へ発信していただきたいところです。そうしないと、非常に小出しの情報発信になってしまいます。我々、例えば歴史研究者は、その中のどれに依拠すればよいのかわかりません。古文書のデータベースのあり方一つとっても、国文学研究資料館型がいいのか、東大史料編纂所型がいいのかわからない状態です。関連分野の機関における相互の共同研究がまだ不足している部分がありますので、そういった共同利用機関同士の連携をとって欲しいといった文言を、どこかに盛り込んでいただけるとありがたいと思います。

【樺山主査】
どういうふうにお考えになります? ちょっとコメントいただけます?

【伊井委員】
私も責任があるのかもしれませんけれども、これは発足した時点が早く、昭和二十六年に文部省史料館として設置されたことだとか、文書の性格にもよるんだろうと思うんです。今おっしゃった国文学研究資料館の歴史の史料館にあるのは地方文書がもっぱら中核をなしていると思うのですが、東大史料編纂所はまた違った資料ではないかと予測しますけれども、そうではないんですか。
人文学における各研究分野の資料収集とかデータ整理拠点の出発の時点が違っていますので、そうなりますと、例えば美術史の資料だとか、いろいろな文学研究の資料なども資料整理の方法、データ検索のキーワードなども共有性がない場合もあります。だから、これはまさにおっしゃったように、今から、人間文化研究機構でまとめていただいてもいいし、どこか拠点をつくり、国内外の情報について連携していく大きな方向をやはり持っていかないとだめなのではないかと私も痛感いたしております。

【樺山主査】
この件、はい。

【金田委員】
今の件について伊井先生の話の延長の釈明みたいになりまして恐縮ですが、人間文化研究機構の中だけでも個別にできたデータベースが200以上あって、それを今資源共有化と言いまして、我々としてはポータルサイトを使って統一いたしまして、アクセスが1本でできるようにしております。それから、その資源共有化のサイトを国立国会図書館とかも今くっつけまして一緒にできるようにしております。ただ、今ご指摘のように、どれがいいとか悪いとか、そういうことの検討のことは非常に難しいんですけれども、同時に、今ご指摘の史料編纂所も含めましてずっと研究会をやって、続けております。既に何回も実績はあるんですけれども、全部一体化して統一できるという種類のことには至っておりません。そういう方向ではやっております。ちょっと釈明でございます。
釈明のついでに申し上げるのは恐縮なんですが、一つだけ小さいことが気になりまして。12ページの下から7行目ですが、「査読つき論文雑誌への掲載を奨励するのではなく」と書いてありますが、これは奨励すると悪いことのように印象を与えかねないというふうにちょっと思いますので、これ自体はいいのですから、奨励するだけではなくてとか、細かいことですけれども、何か少しニュアンスをご配慮いただけたらと思います。

【樺山主査】
今のは本来「するだけではなく」という趣旨だったんじゃないかな。そうですね。そのことを否定しているのではなくて、そればかりではなくてさらにという意味だったと思うので、今のご指摘のとおりかと思います。
先ほどの田代委員から問題提起されたここの点ですけれども、要するに、現状からするとまだまだ改良、解決すべきところがたくさんあるが、期待されていることは間違いがないので、推進する機能を発揮しているというよりは発揮することが期待されているとか、そういう表現のほうがより適正かということかもしれませんので、ちょっとこれは今少しほかの方法も含めて表現につきご検討下さい。よろしくお願いします。
ほかにございませんでしょうか。はい、どうぞ、池田科学官。

【池田科学官】
今、金田先生からご指摘のあった部分ですが、注意深く読めばそのとおりだと思うんですけれども、どうもさっと読んだ感じでは、本、学術書を評価すべきであって、論文、査読論文よりも本なんだというような傾きがあるように思いました。それで、人文系の中でも、例えば経済統計学などの分野では論文が評価されている分野もあるので、後段の部分ですけれども、分野によってはということを一言加えていただくとはっきりするのではないかと思います。このような分野の学問的特性を踏まえれば、分野によっては査読つき論文雑誌への投稿のみを奨励するのではなくなど、そういう形のほうが正確ではないかと思いました。それから、若い世代への正しい動機づけとなることも考えられる。正しいという書き方ももう少し何か修飾語句があってもいいのかと思いました。学問的な性質に合致したとか、そのような修飾語句、制限があってもいいのかと思いました。
以上です。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。いずれも大変ごもっともなご指摘でございますので、ご検討ください。ほかにいかがでしょうか。それでは、またご質問等がありましたら、後ほど時間の許す限り後段でお願い申し上げることにしまして、次へ行かせていただきます。3の当面講ずべき推進方策の部分でございます。これについてご説明ください。

【伊藤学術企画室長】
失礼いたします。15ページをごらんいただければと思います。15ページに当面講ずべき推進方策ということで書かせていただいております。当面講ずべき推進方策というのはどういったものなのかという、その考え方につきまして第1パラグラフのところで記載させていただいております。基本的には今までご審議いただきました1番目の人文学・社会科学の振興を図る上での視点というのは中長期的な視点ということで全体を通ずる視点である。こういった視点を踏まえて、2番目は制度・組織上の課題ということで、中短期的な課題ということで整理させていただいているところでございます。その中短期的な課題である制度・組織上の課題の中でもとりわけ早急に当面講ずべき方策という部分につきまして、この三つ目の当面講ずべき推進方策ということで全体として4点、案としてはまとめさせていただいております。
まず、1点目の先導的共同研究の推進という部分でございますが、こちらに関しましては、まず下線が15ページにかなりありますけれども、その修正の趣旨としては、この共同研究の目的として大きく三つを整理させていただいておりまして、その三つごとに各々の特徴を整理させていただいております。まず、その三つという部分でございますが、具体的には第2パラグラフのところでございますけれども、大別してブレイクスルーを目指して研究方法の革新を目指す領域開拓というものが1点目の目的。そして、2点目といたしまして、現実の人間社会における様々な問題に係る解決策の創出を目指す実社会対応が2点目。そして、3点目といたしまして、国際的な研究の場に参画し、リードしていくグローバル展開ということで三つの目的というので整理させていただいているところでございます。
そして、各々につきましては、以下、それぞれパラグラフを設けておりますが、それぞれの特徴といたしまして、例えば領域開拓という部分に関しましては、新たな異なる学問分野の研究者の参画を得て、新たな研究領域への予想外の飛躍をもたらすという観点や方法論の継続的な改良というようなことがもたらされるということが特徴であろうかと思います。2点目の実社会対応という部分でございますけれども、こちらに関しましては、実務者の研究への参画を得て、推進から成果の発信までの連携の確保によって社会的貢献に向けた実効的な体制づくりというような部分が成果として期待される部分かと思います。3点目のグローバル展開を目指す研究という部分でございますけれども、こちらに関しましては、国際共同研究の推進、また、国際的なネットワークの構築というようなものが期待されるということで書かせていただいているところでございます。
こういった三つの目的に大きく整理される共同研究の推進という部分に関しての課題という部分、以下加筆で整理させていただいておりますけれども、15ページの最後のパラグラフの部分は課題の1点目でございます。こちらに関しましては、いずれもこの三つの目的を進めるのに当たりまして、主要分野を一つに絞ることなく様々な分野の知見を持ち寄って課題解決をする、またはその領域を新しく開拓していくというのが効果的という共通の特徴という部分とともに、こういった取り組みをしっかり実らせていくというような部分ということにつきましては、16ページにつながりますけれども、短期的なプロジェクトという部分でなく長期的な視点をもって継続させるようなことが必要だろうということで、今後共同研究事業というのを推進していくに当たりましては、例えば日本学術振興会の事業におきましても評価結果に基づいて延長可能とするような支援の枠組みというのを新しく検討していくべきなのではないかというようなことも書かせていただいております。また、そのアジェンダ設定という部分に関しましては、本審議会の議論等のように科学技術・学術審議会等における基本的な方針や議論を踏まえて推進すべき共同研究の課題というのも示して、そしてそれで公募を募って、より多様な研究者の参画を得て研究を進めていくという方法論の導入もあろうではないかということで、その点加筆させていただいています。
また、3点目の改善という部分でございますけれども、16ページの第3パラグラフの「なお」で始まる部分でございますが、知識の共同生産のすそ野を広げていくという観点から、若手研究者という部分に関しましては、小規模でもいいので研究支援枠の導入という部分に関しては検討していくべきではないかという点も加筆させていただいているところでございます。
次に、設定すべき課題の例。今申し上げました見直しを図っていくべき観点というところで、審議会等によるアジェンダ設定という部分でございますが、設定すべき課題の例というところにつきまして加筆を加えさせていただいております。まず、そもそも論としてというところでございますけれども、平成21年1月の学術分科会報告ということで、その際も方向性ということで共同研究を図るのに当たりまして進めていくべき方向性ということを大きく2点ご提案いただいております。
一つは、近未来における全地球的な課題の例ということ、また、近未来において我が国が直面する課題の例という形で具体的例示が掲げられておりますが、これらにつきましてはなお重要な課題であるという基本認識を明記させていただいております。また、これらに加え、今後現時点において、今日本の社会との、そして世界的な課題に取り組んで、人文・社会科学の知見を活用して取り組んでいくという観点からどういった研究課題の研究推進が求められるかという部分でございますけれども、それに関しましては、前回ご提示させていただいた16ページの1点目の非常時における適切な対応を可能とするための社会システムのあり方、そして、次のページの上段になりますが、社会的背景や文化的土壌等を加味した新技術・新制度の普及というこの2点に加えまして、ご意見いただきました中で、3点目でございます。アジアの協調的な発展を目指した科学技術の制度設計というような課題もアジェンダ設定という部分の中に課題として盛り込んでいくべきではないかというご意見もいただいておりますので、加筆させていただいているところでございます。
2点目の当面講ずべき推進方策につきましては、18ページ(2)で、大規模な研究基盤の構築という部分で加筆させていただいております。こちらにつきましては、先ほど参考資料2ということでロードマップについてのご説明を簡単にさせていただきましたが、こちらのように大規模な研究計画の実現に当たっての留意点というところについて主に記載させていただいております。こちらの内容につきましては、さらに大規模な研究基盤、人文・社会科学の研究を進めていくに当たっての研究基盤の構築というところで、その他記載すべき点等ございましたら、加筆等のご意見をいただければと思います。よろしくお願いします。
次に、19ページでございますが、3点目の当面講ずべき方策ということで、(3)デジタル手法等を活用した成果発信の強化ということで、大きく2点、機関リポジトリの利活用による教育研究と成果の発信と、もう一つ、2点目、国際情報発信力強化のための科学研究費助成事業の改善ということで、大きく二つ書かせていただいております。こちらに関しまして、そもそも機関リポジトリというものはどういうものなのかという定義的な記述に関しましては、第1パラグラフに簡単に記載させていただいておりますが、これは大学等において教育研究など、さまざまな知見により生産される成果を電子的に収集し、原則として無償で配信する保存書庫としての機関、位置づけということで、こちらを活用していく際の学術上の効果、メリットという部分につきましては、3行目以下に書かせていただいておりますけれども、学術情報流通の改革ということ、また、次の5行目になりますが、社会に対する教育研究活動に対する説明責任の保証、3点目としまして、知的生産物の長期保存などの役割があるということで、位置づけとして書かせていただいております。具体的にどのようなコンテンツが収納されているかという部分は第2パラグラフに簡単に加筆させていただいております。ここをとりわけ活用ということで期待されるという部分につきましては、第3パラグラフに、とりわけ若手研究者にあってはということで書かせていただいております。また、どういった支援策、取り組みが期待されるかという部分に関しましては、第4パラグラフでまず大学という観点と、そして国立情報学研究所におきまして、供用のリポジトリシステムの構築ということで、大学における取り組みの支援というものを取り進めておりますので、そのさらなる充実という部分についての必要性を記載させていただいているところでございます。
2点目の国際情報発進力強化のための科学研究費助成事業の改善という部分でございますが、先ほど来国際情報発信という部分についての重要性をご審議いただいているところでございますが、その観点から、最後のパラグラフ、「そのためには」で始まる文でございますけれども、学協会等のジャーナル発行を支援する科学研究費補助金の学術定期刊行物の取り組みに関しまして、この助成のあり方というものを見直しまして、オープンアクセス誌の刊行支援を行うなどの制度改善が求められるというような改善事項についても書かせていただいております。
最後に、4点目の研究評価の部分、20ページになります。こちらについて加筆させていただいております。先ほど伊井先生のほうからも留学に当たって、結局それを推奨した後、どう後押しをしていくのか、保障していくのかという部分につながる部分でございますけれども、この研究評価という部分で、国の国立大学法人評価等の研究評価との観点であるとか、また、大学における教員採用等の評価というような部分も含めて、評価に当たっての人文・社会科学における学問上の特性を踏まえた留意事項という部分を打ち出していくという部分が一つの解決策になるかと思っております。その観点で、前回等ご意見いただきました内容で具体的な人文・社会科学の特性を踏まえた評価すべき活動例ということで、例えば主に第3パラグラフ及び第4パラグラフのところでございますが、その活動例の加筆というような部分を加筆させていただいております。データベースの構築というような部分への貢献ということも含めまして、主に評価すべき活動例ということで加筆させていただいているところでございます。
主な修正に関しましては以上でございます。よろしくお願いします。

【樺山主査】
はい、ありがとうございました。ただいま当面講ずべき推進方策ということでございますが、大きく申しますと、1番のいわゆる人文学・社会科学の振興を図る上での視点という部分は長期的な問題に対する視点ということであって、基本的には5年、10年という長期を一応の前提と考え、次いで、制度・組織上の課題というのは、基本的には長中期的ではあるけれども、いうなれば中期的、3年もしくは5年ということを一応の念頭に置いているということもご理解いただければと思います。3年とか5年とか何年とか書き込んでございませんけれども、常識的にはそんなタイムスパンで考えている。他方、3番目の当面講ずべき推進方策については1年、2年といった年度の中でもってできれば解決したい、あるいは克服してほしいという、そういう趣旨のことで書き込んでございますので、何年という数字は書いておりませんけれども、そんな趣旨だというふうにご理解の上でもってお読みいただければと思います。
ただいまのご説明でございますので、これらにつきましてもご質問、ご意見等伺いたいと存じます。よろしく。いかがでしょうか。

【鈴村主査代理】
よろしければ。いつも最初にしゃべらせていただいて恐縮ですが。

【樺山主査】
よろしくお願いします、鈴村委員。

【鈴村主査代理】
重要な点が多いと思いますが、2点に絞って発言させていただきます。第1点は、実務者を評価の中に取り入れるという15ページの記述です。(1)の先導的な共同研究の推進の最初の項目の第3パラグラフです。ここには「実社会対応により社会的貢献を目指す研究においては、実務者の研究への参画を得て」という表現があります。一見、非常に常識的で、賢明な措置のように思われるかもしれませんが、具体的な論脈で考えるときには、一体誰が評価者として適切な実務者であるかといえば、簡単に判断できる問題ではないと思います。先導的な共同研究の論脈でいう実務者は、往々にして評価の対象とされる研究のステークホルダーです。研究評価の仕組みの中に,一部のステークホールダーを組み込むことに踏み切るのであれば、その選択のあり方について、もう一歩踏み込んだ書き方をしておく必要があるのではないかと思います。それが第1点です。
第2点は、事実関係に関して私は確信を持てないでいる点です。20ページの第2パラグラフに、人文学・社会科学の学問的特性を踏まえた研究評価という箇所があります。気になる点とは、国立大学法人及び大学共同利用機関法人における教育研究の状況についての評価という文章です。この箇所の脚注を見ますと、総合科学技術会議における方針の見直しを踏まえ、文部科学省において研究及び開発に関する評価指針を見直して取りまとめたと書かれています。
私の理解が間違っていなければ、総合科学技術会議は人文学・社会科学に固有な問題は取り扱わないということで議論をしてきたのではないでしょうか。そこで決まった大綱的方針の見直しが、人文・社会科学を除外しない文科省の研究及び開発に関する評価指針に拡大して位置付けられているように読み取れます。私が受けるこの印象が大きく間違っていなければ、議論のテーブルが正しく設定されていないのではないだろうかという懸念が私には拭えません。人文学・社会科学の学問的特性を踏まえたというのであれば、議論のこの流れは気にかかります。事実の確認も含めて、教えていただけるとありがたいと思います。

【樺山主査】
はい、ありがとうございました。今のご指摘のうち、前者のほうですが、15ページの先導的な共同研究の推進の三つ目のパラグラフで問題にされましたけれども、実はここの部分は先導的な共同研究についての部分ですので、本来ここの部分よりはむしろ少し後の部分、すなわち20ページの最後のパラグラフの最後の文章に「実際に研究成果を共有し活用する実務者等からの評価も重要である」とむしろこちらのほうに力点があって、これでもってより適切な表現を検討する方がいいのではないかという感じがいたしましたけれども、それも含めまして、事務局からこれにつき現段階でのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

【伊藤学術企画室長】
はい。まず実務家を実施に当たってのその実施段階から、そして成果の評価、そして発信まで組み込んでいくという部分の先導的共同研究の推進の部分でございますが、実社会の課題についてより課題の当事者についても研究の実施に当たって共同研究者、例えばそういった形で組み込んでいくというのも一つの実社会対応への方策かということもありましたので、案としては入れさせていただいております。ただ、実際に研究推進に当たっての実務家等の活用の仕方ないし共同の仕方の課題というような部分について、先生から今ご指摘あったような点がございましたら、その点につきましてはどのような表現が適切かも含めまして、ちょっとご相談しながら研究実施上の課題というところは加筆する必要があるかもしれませんので、そこはご指導いただければと思います。
2点目の総合科学技術会議の部分でございますけれども、基本的に総合科学技術会議につきましては、鈴村先生のご指摘のとおり、専ら人文学等に係るようなものという部分については対象ではございませんけれども、科学技術・学術全般という部分につきまして、そこに人文学に関するものも連携という観点から、ないし科学技術・学術という全体的な観点から共通的な部分につきましては方針策定という部分に加味して今までも研究評価の方針であるとか、様々な研究開発課題の推進にあたっての取り組みというのをしてきたわけでございます。ですので、ここの部分というのは専ら人文学に関するものというのは含まれていないという前提でお考えいただければと思っております。その人文学との関連のある共同研究とか、分野横断的な文理融合という観点での人文学というのも関わりあるような部分ということで、そして20ページの第1パラグラフの部分に関わりますけれども総合科学技術会議の全体大綱的な方針を踏まえての文部科学省における研究及び開発に関する評価指針というのはそういった文理融合研究と関連ある部分においての人文学・社会科学の研究上の配慮ということで、これまでに平成21年の評価指針においては書かれてきたという経緯と位置づけでございます。そういった観点で書かれているということをご承知おきいただければと思います。以上です。

【樺山主査】
よろしいでしょうか。いま少し、どうぞ。

【鈴村主査代理】
ごく手短に。ただいまのご説明は、この文章を見ただけではわからないと思います。総合科学技術会議が与えた位置づけを、人文学・社会科学に固有の問題を検討するこの会議でもエンドースしたとしか読まれない可能性があることを、それでよいのかと気遣いつつ、私は発言しているのです。
実務者を評価システムに組み入れるという点についても補足します。20ページの一番下の下線部に、ステークホルダーという表現があります。この文章の冒頭には震災研究のことが書いてありますので、この例に即して申しあげます。この論脈で科学技術あるいは学術は何を貢献できるのかを問うステークホルダーの関心は、しばしば特定地域における救済措置とか、補償措置の在り方に向かいがちです。この傾きは当然理解可能ではありますが,社会科学的に過酷震災に対処する制度設計の問題を考える際には、研究の視点はこの意味でのステークホルダーの観点を包摂しつつも、当然もっと包括的であるべきです。それだけに、無限定で実務者の視点をステークホルダーという形で評価システムに取り入れるという書きぶりは、この文章の全体的な性格を誤解させる可能性があることを、私は気遣っているのです。以上です。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。今のご指摘の趣旨はよく理解できるかと思います。より適正な表現あり得るかどうかということにつきましては、ご相談申し上げながら、最終的な結論を得たいと思います。よろしくお願い申し上げます。
ほかにご意見等ございませんでしょうか。あちらからまいりましょうか。中島科学官から。

【中島科学官】  
私は新任の科学官で科学史・科学技術社会科学論とか科学社会学のことをやっております。東京工業大学では、人文社会の担当をしております中島です。
それで、ただいまのお話、ステークホルダーを取り入れるかどうかというのは非常に重要な問題だと思いますので、ここは改めて検討していただきたいんですが、それと関係しまして、ちょっと前のほうにさかのぼってよろしいでしょうか。

【樺山主査】  
はい、どうぞ。

【中島科学官】  
今、文理融合の話が出たんですけれども、実は最初の融合的連携に触れたところで、私は理工系に大学にいる文科系の人間として非常に危惧を持っております。融合という言葉が、おそらく震災対応で、とりわけ文理融合という文脈で今後非常に期待されることになると思われる。私自身の工業大学における文理融合の体験を申しますと、例えば文科系と理科系の評価は非常に違うことをひどく思い知らされた。私も理工系の出身だからわかりますけれども、理工系は論文中心の評価になりまして、例えば共同研究を始めて何で3カ月で論文が出ないんだ。文理融合でやっているのに3カ月でなぜ論文か出ない。6カ月もたって業績が出ないのは、おまえ、ばかじゃないかというようなことから研究が始まりました。次に文理融合の研究のテーマとして省エネルギーを検討した。具体的には東工大で省エネルギーをやろうということになった。電力をやらせるんだったら、電気の使用量をおまえが自分で計って見える化して、心理学でどうやれば電気が減るかを見せればそれで文理融合は終わりである。こんな簡単なことがなぜできないと非難された。こういう乱暴なことが現実には行われているんです。
したがって、融合と言った瞬間に非常に危険だ。科学論でトランスディシプリナリーという言葉が海外で出てきまして、トランスディシプリナリーという言葉を導入するに当たっての日本での犯人の1人だった私としましては一言いいたい。トランスディシプリナリーとインターディシプリナリー(融合)では甚だ違う。インターディシプリナリーというのは、例えば生物と化学が融合して生物化学となって極めて生産的なものが出てきた。例えば社会科学と工学が融合しますと社会工学だから社会のことを数量化して測定する。これは極めて重要な学問だと思います。ところが、社会工学では査読つき論文は書けるんです。数量で統計的に扱える分野ですから。ところが、そこの議論にどういう価値観が入っていますかとかという分析に進むと、非常に論文が書きにくいんです。そうすると、我々のような科学論とか科学哲学の人間が書いたものは排除されるし、結論が出てくるのは3年も5年も経つ。だから、理工系の人たちからはあなたたち来なくていい。もっとつまらない論文でいいじゃないか。そういうものが理工系から期待されることになる。「理工系は人文系に比べると組織的な研究が多く」というようなところの書き方は工夫が要るかもしれませんが、文理融合の研究がこれから推進されることを念頭におきますと、もちろん経済学や社会学などの社会科学の分野で査読つき論文が高く評価されるのは甚だよく理解できますし、それはその属性に応じてやればいいと思うんですが、私自身の意見では、人文・社会科学の多くの分野においては査読つき論文が評価されることによって、ここ10年から20年ほどどうも大規模な著書が出にくくなって、学問的な貢献ができていないんじゃないかという気がどうしてもしてしょうがないんです。そこはお互いの分野の考え方を折り合わせて、どう書けばいいかというのは甚だ難しいと思うんですけれども、文理融合で特に期待されそうな分野の人間としては、ちょっと理工系の圧力から私たちを守っていただきたいというのが正直なところです。もちろん経済学の先生、それから社会科学の統計とかをやられている先生が学問を客観化し科学化することについて努力されてきて、それを実際制度化されてきたことの意味は理解できます。一方で、科学論の観点から行くと、そういう分野においても論文で評価するのが全部いいのかどうかというのは私はちょっと疑問があると本などにも書いたことがあります。
したがって、ここはちょっとご検討いただいて、別にけんかしてもしょうがないので、折り合いをつけていただきたい。特に震災後の文理融合で都市計画あるいは社会制度設計のことなどになりますと、都市計画の方は工学系の方ですので、お金の使い方に慣れている、申請書の書き方に慣れている、論文誌もたくさんある、評価も基準がはっきりしている。というような特殊な事態をちょっとご考慮いただきまして、何らかの妥協をいただければ。これは理工系大学の文科系の人間の叫びと思ってちょっとご評価いただければ幸いです。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。大変有用なサジェスチョンをいただきまして、それぞれ私たちも同じような経験を各所でやっているかと思いますので、圧力から自分を守るという、自分のことだけではなく学問領域全体に関して今のようなご指摘は大変重要かと思います。ありがとうございます。
その後は、河野科学官、どうぞ。

【河野科学官】
河野でございます。先ほど鈴村先生がおっしゃったことの屋上屋を重ねることになりますが、私も15ページの実務者の関わりというのがちょっと気になりましたのでつけ加えさせていただきます。
私の専門は法学でございまして、どちらかというと学問的な分野の中では実社会対応といいますか、実社会との関連が強い分野ですが、中には、研究者は実務家のできないことをしなければならないということをおっしゃる方もあります。
こういう15ページの、鈴村先生がまさにおっしゃったこのパラグラフがここまま生き残りますと、私は大変大きな誤解を社会に与えるのではないかと思いまして、この三つ目のパラグラフにつきましては全文削除も含めてぜひご検討いただければと思う次第でございます。
以上です。

【樺山主査】
はい、ありがとうございます。私も実は先ほど同じことを申し上げたのですが、このパラグラフそのものは削除するほうが適正か。その趣旨の事柄は、先ほど申し上げました20ページの一番最後のところで、さまざまな留保を設けた上でもって適正な趣旨のことを表現するほうが適正かという感じが私もしました。今のご指摘ありがとうございます。
それでは、金田委員。

【金田委員】  
最後の20ページのところでちょっとお聞きしたいんですが、この全体のトーンなんですけれども、私がこういうことを言うので解決策があるから言っているというわけではないんですが、今研究評価をするなとか何とかということはどう考えても社会的な趨勢としては言えないんですけれども、これはいろいろなところを評価しろというふうに書いてあるように見えてしまいます。そうすると、悪い深読みかもしれないんですけれども、できるだけ人文学・社会科学の活動の全体を評価に持っていけというトーンの印象を受けてしまいます。先ほどのレフェリーのある雑誌への論文云々という話からして、学問に寄与するようなきちんとした著書があまり出ないのではないかという話も含めましてなんですが、つまり、人文学や社会科学は、特に人文学だと思いますが、現状とか社会とか現在での評価というもので評価し切れないものがいろいろあるので、もちろん全体を評価するなということも申し上げることはできないと思うんですけれども、こういう評価が全能ではないというニュアンスが少し残るような表現をお考えいただけたらありがたい。
つまり、これだと何でもかんでも評価することによって人文学・社会科学も全部評価のレベルでいけるんだという話になりますと、現状での評価ができるようなことでしか評価されないわけですから、ほんとうに意味のあるというか、将来意味を持つかもしれない人文学の新しい方向性とかにかかわるものは全部評価の段階で落ちてしまうんです。そういうことになると、これは芽をつぶすような形になってしまいかねないと思いますので、少しそういうところのスタンスというかニュアンスをお聞きして、またそれをちょっとお考えいただきたいというのが希望でございます。

【樺山主査】  
はい、ありがとうございます。気分的には全くそのとおりかと思うんですが、ここも学問的特性を踏まえた研究評価と表題はなっておりまして、その割には中はあまり踏まえていないというご指摘の意味かもしれないと思いますが、できるだけ今のご趣旨の事柄を生かすことができるような表現等々、発想等々考えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
それでは、まだほかにいろいろご意見あろうかと思うのですが、こんなふうにこの後取り計らわせていただきたいと存じます。本日ここまで事前にいろいろなものをお配りいたしまして、様々なご意見をメールその他でもっていただきました。その結果として、本日ここでご覧いただきましたとおりにかなりの部分に黒い線がつきまして修正いたしました。まだまだ修正すべきところを本日もたくさんお預かりいたしました。しかし、本日ご欠席の方もおいでになるということもありますので、これらを全体を取りまとめまして、必要とあれば、より適正な表現方法を考えた上でもって、個々の委員に個別に電話等々でまたご相談するかもしれませんが、そのようにいたしまして、最終的な案文を作成してみたいと思います。これは事務局にお願い申し上げたいのですが、そのようなことが可能であれば、できるだけ早目にお作りいただきまして、実は5月31日を一応予備日としてとってございますけれども、本日多様なご意見もいただきましたし、また、ご欠席の方々からもご意見いただくことが可能でございますので、31日につきましては、当面開催の必要がないというふうに考えさせていただきたいと思います。キャンセルさせていただきます。ただし、これでおしまいというわけではもちろんございませんので、恐縮ですけれども、本日発言し損なった部分、あるいはこの後にお送りしますものについての新たなご意見等、あるいは事務局でお考えいただいたものについての更なるご意見等、様々にあろうかと思いますので、それらにつきましては、メール、電話、お手紙、その他、さまざまな手段で結構でございますので、事務局にお寄せいただきまして、場合によっては一度、二度と往復があるかもしれませんけれども、そのようにして最終的な案文をお届けさせていただく。そういう手はずにさせていただきたいと思うのですが、そんなことでよろしいでしょうか。事務局、そんなことでよろしいでしょうか。

【伊藤学術企画室長】
はい。

【樺山主査】
それで、この後31日をキャンセルいたします。当初の予定をキャンセルさせていただきますが、その次の会議は6月の何日でしたっけ。

【伊藤学術企画室長】
6月22日金曜日になります。会議室としましては、同じこの3階の第1会議室になります。

【樺山主査】
はい。それでは6月22日、そこまでの間に事によると、一度もしくは二度の往復があろうかと思いますが、案文等々ができましたらメールその他の方法でお届け申し上げます。それにつきましては、前回も大変いろいろなご意見を詳細にわたっていただきまして、それは大変事務局としても役に立ったということがございますので、ぜひとも細かい点、大きな点を含めましてお寄せいただきまして、それをもとにして改定案の1、2というふうに作成していただきたいと思います。6月22日はどういう形になるかわかりませんけれども、そこの段階での最終案を提示させていただく、そこでご検討いただく、そんなふうに考えたいと思いますが、事務局から何かそれらにつきましてご指示ありますでしょうか。

【伊藤学術企画室長】
ありがとうございます。本日さまざまなご意見いただきましてありがとうございました。事務局でもまた最終案の取りまとめに向けまして、修正作業を進めたいと思いますが、まず、本日の資料をベースに追加でご意見等がございます場合は、今月末、5月31日までにメール、ファックスでも構いません、ご意見をお寄せいただければと思います。また、それを踏まえまして修正案を作成しまして、6月22日、次回よりも前に先生方に一度修正案のご提示をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【樺山主査】  
意見提出用紙とちょっとかたい表現ですけれども、意見提出用紙というのがお手元にありますけれども。

【伊藤学術企画室長】  
お手元に意見提出用紙をお配りさせていただいておりますが、電子的にお送りしたほうがよろしい部分もあるかと思いますので、併せてメールでも意見提出用紙ということでお出ししたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

【樺山主査】  
そうです、はい。わかりました。それでは、以上のように取り計らわせていただきたいと存じますので、次回は6月22日ということでございます。本日ご欠席の方々にも遺漏なくご連絡申し上げ、今後いろいろな形でのご意見をお寄せいただきたいという趣旨でございますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
それでは、これをもちまして本日の会議を終了させていただきます。ご協力ありがとうございました。

【伊藤学術企画室長】  
ありがとうございました。

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