人文学及び社会科学の振興に関する委員会(第6期)(第7回) 議事録

1.日時

平成24年4月19日(水曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

樺山主査、鈴村主査代理、鎌田委員、田代委員、岡本委員、金田委員、小安委員、瀧澤委員、伊井委員、加藤委員、鶴間委員

(科学官)
羽田科学官、池田科学官、河野科学官

文部科学省

田中総括審議官、吉田研究振興局長、森本研究振興局担当審議官、菱山振興企画課長、伊藤学術企画室長、高見沢学術企画室長補佐

オブザーバー

(発表者)
森総括主任研究官(科学技術政策研究所)

4.議事録

【樺山主査】
それでは、予定の時間、午後1時になりましたので、始めさせていただきます。まだご出席予定でおいでになっていない方、おいでになりますが、おいおいということでございますので、始めさせていただきます。ただいまから科学技術・学術審議会学術分科会人文学及び社会科学の振興に関する委員会、第6期第7回ということになりますが、開催させていただきます。では、まず、事務局に異動があったようでございますので、異動者の紹介と配付資料の確認等をあわせ、よろしくお願い申し上げます。

【伊藤学術企画室長】
失礼いたします。4月1日付で事務局に異動がございましたので、ご紹介申し上げます。まずは、事務局の担当課長でございます振興企画課長に菱山豊が着任いたしました。

【菱山振興企画課長】
よろしくお願いします。

【伊藤学術企画室長】
次に、科学官につきまして、二人異動がございます。お一人は羽田正東京大学教授でいらっしゃいます。

【羽田科学官】
羽田です。よろしくお願いします。

【伊藤学術企画室長】
もう一方は河野俊行九州大学教授でいらっしゃいます。

【河野科学官】
河野でございます。よろしくお願いいたします。

【伊藤学術企画室長】
異動に関しましては以上でございます。
引き続き、資料について確認させていただきたいと思います。お手元にお配りしております議事次第をごらんいただければと思います。配付資料につきましては5点、参考資料2点を、議事次第のとおり、お配りしているところでございます。また、あわせて、机上配布資料といたしまして、本日ご発表の科学技術政策研究所の中間報告の素案につきましてお配りしているのが1点と、加えて、また、本日ご審議いただきます報告書の骨子案につきまして、また、事後、ご意見等をいただく場合の提出用紙、こちらも机上に置かせていただいておりますので、また、事後、ご説明申し上げたいと思います。よろしくお願いします。

【樺山主査】
ありがとうございます。それでは、これより議事に入らせていただきます。
本日でございますけれども、前半におきましては、科学技術政策研究所総括主任研究官、上席フェローの森壮一様より、文理連携・融合に関して国内外の研究者の取り組み状況や、あるいは、実際に成果を上げている事例などにつきましてご報告をいただくことと伺っております。そして、そのご発表の後に意見交換を行わせていただきます。それが前半でございます。他方、後半につきましては、本委員会の報告の骨子案についてでございますが、検討したいと思います。その旨、ご理解いただきたいと思います。
それでは、発表に入らせていただきます。まず、森フェロー、20分程度でご発表いただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。お忙しいところ、大変恐縮でございます。森フェロー、よろしくお願い申し上げます。どうぞ。

【森フェロー】
科学技術政策研究所の森と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
お手元の資料1というのが、今日ご報告に使わせていただきますメーンの資料でございますが、先生方のご質問にぱっとお答えできるかなという意味で、机上配付資料をあわせてお配りしてございますので、両方が使われることになるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。本件、タイトルの説明を申し上げることをしなければいけませんが、文理連携政策、これは昨年の8月時点で日本学術会議、総合科学技術会議、当審議会の総会、そのほか、各委員会に対する審議要請の中に、自然科学と人文・社会科学の連携がとても大事だということを書いていただいていて、そのことを称して文理連携政策というふうにご理解いただきたいと思います。それについて、研究現場の意見を、昨年の10月、この件は、まず、3.11の直後、昨年の4月1日から始まった調査研究でございますが、予備調査を経て、10月には国内の23の総合大学、大学共同利用機関、それから、関係の研究開発独法の部局長、それから、主だったプロジェクトについてのリーダーの先生方に、自由記述で10問の質問に答えていただいている。それを私どもの研究所のほうで、なるたけそれに忠実にまとめをさせていただいたというのがこの中間報告の趣旨でございます。一番多かったことだけ、ちょっと後で詳しく申し上げますが、政府の文理連携政策には半分ぐらいの方が理解できると、残りの半分ぐらいの方は条件つきで、具体の政策が見えないのでなかなか動きがちょっとしにくいと、具体策がないとなかなか実際的に実質化しないんじゃないですかという意味で、タイトルは、これは3.11の直後に設定した言葉でございますが、「政策の実質化に関する調査」ということで、今年度23年度は中間報告ということですので、文理融合、文理連携ということを調査の眼目にいたしました。一応、3月の時点で一旦所内でセットしておったのですが、欧州の調査、アメリカの動向ということを踏まえますと、様子の違う部分がちょっと出てまいりまして、これをすぐオープンにするというのはいかがなものかという議論もあったものですから、ちょっと今日先生方にもご報告申し上げるんですけれども、所としての公開はちょっと時間がかかるかもしらんということをご理解いただきたいと思います。
来年度は、文理連携から、むしろ、文・理・社会の連携と、23年度の言葉でいきますと、インターディシプリナリティ、もしくは、マルタイディシプリナリティの現状がどうなっているか、平成24年度は、そこからトランスディシプリナリティのことについて、北米と欧州の動向も踏まえて、国内で社会との関係性についてどのように認識をされて取り組まれているかと、あるいは、どうしなければいけないかということについて、基礎的な調査をやらせていただきたいというふうに思ってございます。事務局のほうからもちょっと過分の命題をいただいておりまして、冒頭に書いておりますのは、一応中間報告についてご報告をしたいと思うんですが、そこの白丸が5つありますようなことも含めて、欧州の調査をインテグレートした形で発表させていただくということをお許しいただきたいと思います。1でそこの中間報告、サブタイトルには「環境・エネルギー関連領域の課題について」ということで、要は「今後における文理連携の方法論の共有・展開を図るとともに、国として文理連携・融合を促進する実効的な施策の具体的検討に資する」というのが私どもの目的でございます。一応、サブタイトルで「環境・エネルギー関連領域」としていますのは、今、国際社会で気候変動問題を典型とするような環境・エネルギー問題、それから、東日本大震災の教訓としてという文脈の中でも、国内で人文学や社会科学の先生方も含まった形で、さらに言えば、社会セクターの当事者の方々もインボルブされる形で、相当のご議論が最近展開されているということで、こういう環境・エネルギー問題領域を事例として、国内のアカデミア、研究機関の動向を調べさせていただいたということですが、私どものほうとしては、それは生命倫理の問題ですとか、遺伝子組み換えの問題そのほかでも、文理融合というのが社会セクターがインボルブされる形で新たな関係性を顕在化しておりますので、これは一つの事例調査ということで、必ずしも本委員会の人文学、社会科学の全域をカバーするようなレポートにはなっておりませんけれども、ご参考になればということでございます。めくっていただきますと、第2ページに、23の総合大学、それから、大学共同利用機関、研究開発独法にご協力をお願いしましたと。欧州調査もやりましたと。ご回答は192の文理連携プロジェクト、もしくは、文理融合プロジェクトを頂戴をいたしましたということでございます。3ページ目でございますが、先ほどもちょっと申し上げたんですが、国の、行政庁の文理連携政策、あるいは、日本学術会議におけるご議論、そういう、それを政策というのであれば、大学の部局で各個人個人の先生方が、いろいろな研究者の自由な発想に基づく研究も含めて、多様なご活動をなさっておられる、その研究現場の意見を集約するというのはなかなか難しいんですけども、後でご説明いたします自由の、自由記述式の設問に答えていただいたものですから、それを拝見いたしますと、やはり具体的にどうするのかと、特にロンガータームプログラム、つまり、5年で終わるようにこの国のシステムは競争的資金のシステムはなっていて、終わると、運営費交付金に溶け込ませるというふうな前提といいますかロジックもあるのですが、それがなかなか難しいという状況がありますのと、それから、知の統合と、この学術分科会の主要命題の一つだと思うんですが、知の統合というのは一体何をすることが知の統合で、知の統合だと主宰者が言って出てきたレポートを、どういうふうにそれを学問的な意味、あるいは、社会的な意味があるかないかということについて検証するのか、その検証の手段と評価の手段、言ってみれば、研究サイクルのトップストリームだけではなくて、ダウンストリームの問題が研究現場でなかなか悩みの種で、そこについての基軸がはっきりしないというのが文理融合の一つのディスインセンティブになっているということが明らかになってきております。そのことを、3ページの下のほうでは、研究開発課題のトリレンマという、この言葉が適切かどうかはわかりませんが、評価の問題、それから、いい評価をいただいたときにどうやって継続するのかという問題、それから、知の統合を目指しているんですけども、現実的には最終年度というのは統合の「かき入れどき」なんですけれども、ちょっといろいろ問題があって、知の統合に逆向をするというものが共存した形になっているので、なかなか成果物を見たときに、インテグレーションが思うようにはいかないという現場の悩みというのがプロジェクトリーダーからたくさん聞かれております。それから、めくっていただきますと、4ページでございますが、同じ、本質的には同じ問題が書かれているような話ですが、研究者にもトリレンマがありまして、特に若いポスドクなんかの方も含めて、現場の研究者にはトリレンマがあります。どういうことですかというアンケートの回答を拝見いたしますと、やはり、そこにも総合的な研究をやることの業績について、どういう基軸で人物評価、業績評価をするのか、その評価の考え方といいますか、基軸というものが今ひとつアーティキュレートされていないというのが一つの問題として抱えられておりますのと、それから、若い研究者は特にそうですが、雇用の形態にもなかなか安定して取り組めるということについては難しいところがあるんですが、プロジェクトに参加したとして、それから後はどうするのかという問題を抱えているということで、やはり、本質的には同じ、同根だと思いますが、研究者にもトリレンマがあるということです。二つ束ねて、4ページの真ん中あたりに文理複合研究の循環過程という言葉を設定しておりますが、これは研究現場の状況を見ますと、的確な融合領域の課題を定立すると、まずそこから難しいということを現場の方々はおっしゃられています。一旦課題を定立して、メソドロジーについてディシプリンの違う方々が一つの混成チームの中でおやりになる、なかなか大変だということを、異口同音に答えていただいております。下流のほうでその成果について適正な評価を受けて、その評価結果を媒介にして次の研究段階に行くというのは、循環過程というのを、こういう言葉で皆さんがお答えになるわけじゃありませんが、回答を集約するとこういうことかなと。そこに正のスパイラルといいますか、PDCAサイクルが意味のある形で回っていくということがこの国ではまだなかなか難しい。それは自然科学のほうについてもそうなんですが、とりわけ、人文・社会科学と自然科学が混成する、ディシプリンが交わるところに、かねてからの問題が顕在化しているというふうに私どもとしては捉えさせていただいております。しからば、その回答の中から何が見えてくるのかということを、4ページの下、フェーズ1から、これはフェーズ1といいますのは、研究サイクルのトップストリームから、2、3、4とだんだんダウンストリームのほうに移っていくんですが、こういう分け方をしてご回答を解釈させていただいております。一つには、融合課題の定立について国が何をするべきかということについて、やはり国で社会的な問題に対応するということに関して、東日本大震災の教訓を経てというご議論、大分いただいているんですが、それを現実に具体的なプログラムとしてやってほしいと、そこに制度面での支援とか、あるいは、財政的な支援とか、やはりそういうものがついてこないと、政策が標題音楽のようなことになって、なかなか実質化しないと、そういうことが回答の中から読み取れるわけでございます。5ページはフェーズ2という、今度は実際に課題が提示されて、研究リーダーの方が、学際肌の方がよくリーダーになられるんですけども、その中でディシプリンの違う方々が、人文・社会科学の方も入ってやられる。そのときの研究環境の問題として、そこはなかなかうまくいきませんよというのはかねてから私どもでも伺っていたんですが、今回の調査で、成功したものについて申し上げれば75、これ、分け方、整理の方はいろいろなんですが、75の成功要因が見つかりましたと。それから、ディスインセンティブ、言葉をかえますと文理融合の阻害要因ということですが、100をアイデンティファイさせていただきましたということですので、前者を付与し、後者を緩和するというふうな措置を政策としても考えていただく必要があるんじゃないでしょうかということが、回答の中から割り出されてきたということでございます。それから、フェーズ3は知の統合についての、先ほど来ちょっとしつこく申し上げておりますが、知の統合の「適正な評価」ということについて、知の統合を検証する、バリデートするということも大事なんですが、やはり国として、何か精神条項だけではなくて、その評価の現場の評価コミュニティの指針になるような、何か評価指針の具体化に資するようなことがつくっていただけないものでしょうかということを、部局長とか研究リーダーの方々が、言葉をたがえて同じ趣旨のことをおっしゃられているということでございます。それから、6ページでございますが、ちょっと今日の議題に適するかどうかわかりませんが、適切な評価指標の開発の必要性ということについて、これは評価を、このアンケート調査をした者の立場から少し申し述べておりますが、この注記の1の下のほう、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」や、各省ごとに定める評価指針はありますけれども、しかし、現場からのご回答をいただきますと、融合研究、もしくは、融合研究者の現場の評価指針に具体化する、転化するということに、実際にはなかなか大綱的指針、そのほかの各省の指針が直接役に立っていないと。要するに、精神的にはわかるんだけれど、じゃあ、具体のプロジェクトの例えば事後の評価をするときとか、実際、人を採用する、じゃあ、この人の総合的な実績、必ずしも英語のペーパーになっていないことも、特に人文・社会科学の局面で多く出てくる。そういうことについて悩みがありますということでございます。そういうふうに解釈をいたしました。それから、研究者、注記の2のほうでございますが、研究評価とその活用の重要性と、これは先生方はよくご承知のことで、釈迦に説法なんですが、特に若手の研究者に対するヒアリングの過程で、人文・社会科学と自然科学の混成、非常に近時、重要な領域だというふうにいろんな意味で言われるんですが、そういうことに専心する、身を投じる、例えばポスドクの方がそういうことで身を立てたいといったようなときに、どうですかというふうにお伺いをすると、なかなかインセンティブ、志はあるんだけれども、そこに身を投じて、じゃあ、論文が書けるかと、あるいは、学会で、主流の学会、つまりディシプリンがエスタブリッシュされた主要な学会といいますか、そういうところで論文を投稿してレフェリーにちゃんと認めていただくということを片一方でやらないと身が立たないということで、そういう意味で、今の評価基軸が必ずしもはっきりしない状況で、大学研究機関の人事採用というのがやられているということが一つのディスインセンティブになっていて、身を投じるのはリスキーだと、この片仮名はよく聞きました、ヒアリング過程で。それから、労多くして報われないという意味のことをおっしゃられて、とりわけ、若手の研究者にとっては、それは生きていく上で死活的に重要だということを非公式に伺っております。それから、7ページに参りますが、フェーズ4、ここは日本の、こういうことを言うと怒られるかもしれませんが、競争的資金制度ということで、国の科学技術基本計画で申し上げれば、第2期、第3期と非常に鮮明にそういう特質が出てきたと思うんですけれども、我が国の競争的資金制度について、諸外国のものと比べますと、トップストリームのほうについては課題が採択されるときはそれは競争的であって、事前評価、採択審査、これは科研費もそうだと思いますが、人文学も含めて、トップストリームのところについては相当競争的で浸透をしているということだと思うんですが、それでは、ダウンストリームのほうについてはどうかというときに、いい成果を出そうが出すまいが、そのことが、例えば次のファンディングにつながっていくというような意味でいうと、必ずしも、そこにちょっと書かせていただいていますのは、事後評価以降においては、必ずしも競争的システムとして十分機能していない面があるのではないでしょうかということが、このあたりはちょっともう少しベリファイしないといけませんが、いろんなご意見があろうかと思います。それから、フェーズ5のことですが、次世代人材の育成と活用ということで、これは百論、既にいろんなご議論を審議会等でやっていただいているんですが、今回の調査では、特に1999年の科学と知識の利用に関するいわゆるブダペスト宣言の中でも、科学者の社会的責任というのは、その社会との意思の疎通を図って、若い世代を教育する、そういうことを要求するものだというふうにディクレアされているわけですが、それでは、我が国で文理融合領域でそれが具体的な施策を伴って実践されているかということになるというと、やはり、なおご議論の余地があるのではないかということで、課題の5-1と5-2ということを書いております。ちょっともう時間もほとんどないと思いますけど。そういうことで、23の大学と大学共同利用機関とその5つの独法の意見の総和として、10の課題を3月初めにまとめたところでございますけれども、欧州の調査をやらせていただきました。
IPCCという国際的なパネルの元共同議長さんとか、ロジック管理を実態上なさっておられるような文理複合領域のところについてのご意見を頂戴したんですが、欧州の彼らは一番日本の文理融合領域について着目しているのは何かといいますと、ちょっとこういうことを言うと怒られるかもしれませんが、日本における文理融合のアウトプット、彼らは英語の形で特に知るほかないということがあるかもしれませんが、それよりも、むしろ、東日本大震災の、そこにちょっとアンダーラインを引っ張っております、8ページの真ん中あたり、福島第一原子力発電所については、特に事故後の首相官邸と科学者との関係ですとか、原発停止・再稼働などの意思決定過程、それから、それに対する社会各層の反応というのがあって、これはメディアで、アカデミアから知るというよりは、メディアで相当アベイラブルになっているということなんですが、その問題というのが単に日本の問題ではなくて、今、国際社会で気候変動問題等にかかる、要するに、エビデンスが客体的に十分そろってない段階において、社会の当事者が差し迫って、間に合う形で意思決定しなければいけないという、そういうのが今日的に言うと、ヨーロッパのアカデミアでも、北米のアカデミアでも、中心課題の一つになっているということで、そういう国際社会の問題の文脈から、日本の文理融合研究で、あるいはこれからなされるプログラムも含めて、東日本大震災のその後の問題としてどういう議論が展開をされ、どういうプログラム、あるいは、実践がなされるのかということを非常に注視して関心を持っておられるということでございます。最後に申し上げたいのは、8ページの一番下に書いてありますが、彼らから見て、日本の文理融合研究について、これはちょっと先生方に怒られるかもしれませんが、Heavy dominance of natural sciences、Minority contents of social sciences、アンド、Absence of the humanities、これは、じゃあ、おたくはどうなんですかと私のほうから、英独仏アメリカの有識者にお返しの質問をさせていただいたんですが、相対的な関係でいうと、現在の段階で国際社会が抱えている差し迫った問題については、やはりこの順番、これは変わりません。ただ、順番は変わらないけれども、それにしても、どれほど際立っているのかと。社会のニーズに対して、実践でやられているプログラムはどうかということについて言えば、日本で相当に目立って、人文社会の先生が主導する文理融合プロジェクトについては、大学共同利用機関でやられているものが英文化されたりして少しは知っているんだけれども、ちょっとなかなかプレゼンスを論ずる以前の問題で、何かアベイラブルでは必ずしもないということを述べられたと。あとは、9ページから、評価の問題で、レオナルド・ダ・ヴィンチが言ったような話とか、第2部で日本発の文理融合研究の世界における存在感と、これは事務局からもこういうことも含めてということを伺ったので、一応エビデンスがある範囲で申し上げ、ここに書かせていただいておりますが、ちょっと時間があまりありませんので、なかなかあれですが、12ページのことだけちょっと申し上げたいと思います。ここに、今、欧州では、特に欧州ではと申し上げるべきだと思いますが、インター、マルタイ・ディシプリナリティは学問の問題、科学のドメインの問題であると。で、社会セクターのin vivo、in vitro、後、ご質問があればお答えしますが、in vivoの社会、要するに実社会といいますか、現実社会の問題を解くということと学問のための学問というのは両方大事だと。後者のほうについていうと、部局、今度訪問させていただいた、そこに例えば書いてございますのは、ロンドンのインペリアル・カレッジとか、ドイツの戦略的な研究所で、部局の名前、プロジェクトの名前に画然として、“inter-disciplinarity”と“trans-disciplinarity”、インターの中にはマルタイを含んでもいいんですけど、これは使い分けています。これはプダペスト宣言以降のここ10年の間に、ヨーロッパに関する限りはかなり鮮明にアーティキュレーションができていて、日本におけるいろんな多様な意見とちょっとずれが生じているということがあって、日本でインター、マルタイ、トランスというと、研究所によって、セクターによって違うのはもちろんのことですけど、同じ研究所の中でもコンセプトが違うということが、例えば大学の中、大学共同利用機関の中にありまして、このあたりは戦略、計画を考える以前の問題として、人文学者の先生や社会科学者の先生の中に内在する評価の問題を、外在化するということを試みる過程でこういうことが出てきたということなんですが、このあたりが日本でご審議いただくときの一つのご参考になるかなということで、ちょっと僣越ながら書かせていただいております。ちょっと時間を超過いたしました。恐縮でございます。

【樺山主査】
大変ありがとうございます。とりわけ、諸外国におけるケーススタディ等々もあわせまして、ただいまの現段階での中間報告の限りではございますけれども、大変サジェスチョンの多いご報告、ご説明をいただいたと思います。ただいまのご発表の内容等々につきまして、多少の時間がございますので、質疑応答、あるいは、意見交換を行いたいと存じます。どんなご意見でも結構でございます。まずは挙手の上でもってご発言いただければと思います。いかがでしょうか。

【鈴村主査代理】
それじゃあ。

【樺山主査】
では、鈴村委員、どうぞ。

【鈴村主査代理】
大変整ったご報告、ありがとうございました。最初にちょっと私のほうでもやや混乱を来したんですが、3つの用語が交代的にあらわれていまして、一つは文理融合ですね。それから、知の統合という表現もありましたし、文理複合という表現もありました。なぜこれを取り上げてお尋ねするかというと、学術会議でかつて議論をしていた際に、やはり融合のイメージなのか、統合のイメージなのかということに関してかなり議論をして、融合のようにほんとにディシプリンがいわば文字どおり、融ですから溶け合って一つのものにアマルガムになっていくというようなイメージを持って何かを始めようというのはそれは土台無理だと、統合でいこうということが議論の焦点になっていたような記憶があります。最初のご報告の出発点で、学術会議もインボルブされるような形でこの議論が開始されたということがございましたので、その点、ちょっと言葉の使い分け、どういう意味で使い分けておられるのか、あるいは、これをなぜ選んでおられるのか、教えていただけるとありがたい、それが一つです。
もう一つだけ。欧州調査をなさったということでありますが、そういう際に、例えば融合とか統合とか複合というのは、どういう表現を使って先方との意見のすり合わせをされたのか、それが2点目です。

【樺山主査】
とりあえず、じゃあ、今のご質問にお答えください。

【森フェロー】
私のほうからは、アンケートに対する部局長、プロジェクトリーダーのお答えの総和の範囲を逸脱しないように。クエスチョネアをつくりました。キーワードは、ちょっと恐縮でございますが、机上配付の第11ページをごらんいただきたいと思います。このときに、これは昨年の10月に科学技術政策研究所のほうでつくりました部局長あての文書の中に出てくると、11ページをちょっと見ていただきたいんですが、まず、アンケートのほうから先に申し上げたいと思うんですが、私どもとしては、文理連携とか文理融合と、その前から、10ページから見たいただいたほうがいいんですが、10ページの下のところに、文理連携、文理融合、そのほか、たくさんの言葉が、日本学術会議も、期をたがえて、それから、総合科学技術会議のターミノロジーと、当審議会でも変遷もありますし、委員会によって使われ方が違うということで、ちょっと私どものほうではそれを統合する立場にも、なかなかそういう見識もありませんので、実態に即してということで、10ページに、一応こういう使われ方をされていますと。本件アンケートでは、11ページの中ほどから、事例を教えてくださいということを部局長にお願いをしたわけでございますが、例を4つ出しております。一つは、知の発見、知の文理融合の領域の創生など、新たな学問的価値をもたらした、すべてプロジェクトの事例ということで、第二は、社会問題の統合的な解決に寄与した事例、そのほか四例挙げまして、これに該当するもの、もしくは、必ずしも人文学者の先生や社会科学者の先生でなくても、それに準ずる視点を持っていられる方が研究チームの中に入っていられるものも含めて、幅広に教えてくださいということでまとめさせていただいたんですが。その過程でも、11ページのボトムのところに書いてある、これは大学共同利用機関の所長さんからのご回答の中に、科学技術政策研究所ではこういう問題設定、理解をしてアンケートをしているけれども、自分たちの研究所では文理融合というのはそういうふうに理解しておりませんと、自分たちのところではトランスディシプリナリティの実践だと、これは地球研のことでございますが、それは要覧の第1ページにもはっきりとアーティキュレートされているんですが、「当研究所のミッションはトランスディシプリナリティの実践である」と。それをもって替えて、科学技術政策研究所のアンケートに答えるというようなストーリーでした。それから、中には大学によってもインター、マルタイ、トランス、クロス・ディシプリナリティと、非常に現場ではなかなかいろいろあると。
外国に対してはもうこのとおりで、学の中の融合について、インター、マルタイ・ディシプリナリティを中心にしてトランスをおっしゃる方もあると。それと向こうと比べましたら、ヨーロッパに関する限りでは、インター、マルタイは学問のドメインの話で、社会セクターの人がin vivoで入ってくる場合には使わないようにしているというのが2005年以降の傾向で、それはもう戦略的に、ブラッセルのテクノクラートもそうですし、ナショナルなファンディング・エージェンシーもそれは明瞭に出てきて、それは附属文書のほうで見ていただくと、第109ページでございます。これはインター・ディシプリナリティとマルタイ・ディシプリナリティと、それを学際性の科学のドメインの中で使って、社会の当事者を意識的にインボルブするときにはそれは使わず、トランス・ディシプリナリティ、これはトランス・ディシプリナリティの概念規定についてはブダペスト宣言直後から、外交の当事者、それから、行政庁、ファンディング・エージェンシー、それから、各大学・研究機関と、それと一緒になって議論する場が、オープンで、クローズドで様々ございまして、OECDのほうでも、この言葉が最初に出てきたのは1969年なんですが、私がおりました1980年代、チェルノブイリの原子力発電所の大事故があった直後なんですけれども、そのころから、オーラルでトランス・ディシプリナリティと使ったけれども、はっきりしてなかったのが、2000年を越えてからかなりはっきりして、公文書の中では使い分けるようになっているというのが欧州社会であるんですが、北米のほうはちょっと、必ずしもそんなにシャープではなくて、実問題オリエンテッドで、実問題ドリブンで言葉を使うということで、今度、ロンドンで三千人の科学者会議がリオデジャネイロの会議の前哨戦であったんですけども、それは大陸間で非常にややこしい調整をして、非常に微妙な表現をしておりますので、後でごらんいただきますと、附属文書の中に書いてございます。

【樺山主査】
鈴村委員、今のようなお答えでございますけど、いかがでしょう。もう少し……。

【鈴村主査代理】
いや、今で、これ以上この話をやるよりも、もう少しサブスタンスのお話を伺います。ありがとうございました。

【樺山主査】
こういう問題があると、今のようなご説明をいただいたということで、これはこの後もまた幾度か問題になる事柄でございますので、一応、私たちとしては、このご説明を念頭に置いて、今後議論を進めたいというふうに考えたいと思います。それでは、ほかにご質問、ご意見等ございませんでしょうか。ございませんでしょうか。
森先生、一点、今のご質問と、鈴村委員のご質問とかかわって伺いたいんですけども、このトランスディシプリナリティその他、四つ、もしくは、五つの用語等々がありますけれども、こういう問題は私どもにとっては大変シビアな問題だと思ってはおりますけれども、とりわけ、ヨーロッパの当事者の方々にとって、こうした問題、こうした用語法の問題が現在でも重要な問題として議論されているか、あるいは、逆にほぼこの問題は問題としては決着がついた、あるいは、処理済みだというふうに考えられているか、ちょっとその辺の状況についてご説明いただけますでしょうか。

【森フェロー】
エビデンスでお答えできる範囲のことにとどめたいと思うんですが、附属資料の109ページ、今の樺山先生のお答えに短く最初にお答えするならば、これはヨーロッパの人文・社会科学者にとっても、文理融合領域のリーダーたちにとっても、お金がもらえるかどうか、いい評価がしてもらえるかどうかの死活的な問題でありまして、そこの経緯は109ページから110、111、12という、112ページまでのところに書いております。要は、ファンディング・エージェンシー、例えばヨーロッパには全欧的なファンディング・エージェンシーとナショナルなものとございますけれども、彼らは特に2000年以降、つまりブダペスト宣言以降のことですけれども、このファンドはどういう性質の文理融合、もしくは、文・理・社会の融合をやるのかということで区分けてプログラムをつくる、もうすべてがそうなっているというふうには申し上げません、調べさせていただいた限り、混交しているものもあります。一番見ていただきたいのは111ページでございますが、これは訪問いたしました、ベルリンの郊外ポツダムにございます、111ページ、よろしいでしょうか、(3)というところがあって、欧州の研究機関におけるトランス・ディシプリナリティの組織化ということに書かせていただいております。ここで、例えばPotsdam Institute for Climate Changeという、これも今、世界のメッカの一つなんですが、Research Domainの2というのがございます。表現はClimate Impacts and Vulnerabilities、ここはインター、マルタイを中心に取り組んでいます。それとは画然としてResearch Domain 4というのがあって、これはもうトランスディシプリナリティの実践なんですね。言葉をかえますと、社会の母胎の中に問題があって、その社会のin vivoの人たち、当事者を、一番最初のプログラミングの段階、問題の定立の段階、それから、評価の局面を含めて、社会の人をインボルブするというための実験的なドメインで。その下のInstitute for Advanced Sustainability Studies、IASSというのがございますが、そこでもやっぱりそれは2つが違うんだと、学問の世界の中における学融合と社会のためのプロジェクトとは違うんだということをさんざん意識した上で、その2行にわたる文章ですが、inter- and trans-disciplinary、こういうふうに書き分ける習慣が非常に明瞭に出てきていて、これは評価の局面でも必ずそこは確認した上で、事前評価の、ピアレビューでもいいんですけども、事前評価の段階における当事者と評価者との共通認識、事後評価の段階における双方の共通認識に移っていきますので、最近はこのことを、「あなたの研究はin vitroの社会を相手にした社会貢献型なんですか、それとも、実問題を解くための問題なんですか」ということが、今の国際社会、ヨーロッパ社会の差し迫った問題の意思決定、合意形成にもかからしめて、非常に先鋭に、ターミノロジーのアーティキュレーションよろしく、議論されているというのが、やはり勉強をするべき点の一つかなというふうに思いました。

【樺山主査】
ありがとうございます。今ご説明いただきましたし、また、冒頭でもご説明いただきましたけれども、とりわけ、欧米もしくはヨーロッパ世界では、融合もしくは統合等々の言葉を使うときに、文系と、理系の間の融合もしくは統合等々の問題と、それから、学術と実社会との間、社会との間の関係、融合もしくは統合等々の問題と、この二つの文脈が分かれて議論、かつ、統合、両方ともあわせて並行的に議論されているというところが大変強い印象を受けたのですけれども、これはいかがでしょう。今の段階で、欧米及び日本のケースを考えてみるときに、随分とその辺の性格、色彩が違うなというご印象をお持ちになりますか。

【森フェロー】
エビデンスになる範囲でしか申し上げられませんけど。それでは北米はどうなのかという問題があって、今の気候変動問題に関する環境外交で、彼らがどういう言葉、概念規定を使って外交をやっているかということと、それから、各大陸のアカデミアがどういうロジック管理をして、どういう説明をして、その国の、その地域の国益にも整合するような形で活動するのかということと、最近は非常にリンクをしてきて、それがオープンの場とクローズドの場で使い分けるということまで私に言っていました。北米のほうは、必ずしもEU標準に恭順ではありません。ロンドンの科学者三千人会議のときに、事前には英国が主宰をしました、やりたかったことは、リオデジャネイロの前哨戦としての科学者のメッセージを宣言の形でアーティキュレーションしましょうということで、事前はお触れ文の中では、本件会議の一つのポイントはウェル・ビーイング、日本語で言ったら幸福とか安寧とかということだと思いますが、それと、差し迫った意思決定ということで、そのときに、TRと、トランス・ディシプリナリティがキーワードですよということで英国はやったんです。しかし、宣言文の中では、トランス・ディシプリナリティと書いてしまうと、ヨーロッパでかなり概念規定が進化した、それを意味するおそれがあるので、まだこなれてないじゃないかという認識を、NASAとかNSFとかの方々がおっしゃって、宣言文はちょっと後で見ていただければと思うんですが、既に国際社会で使われたインターディシプリナリティという定着した言葉を基礎にして、そこからアクロスとかボーダーとかという形で、学融合の大事さ加減、それから、社会との新しい関係性の大事さ加減、それから、ポリティクスとかエコノミクスとかの関係性を含めて、書き下す、ロンドンのプラネット・アンダー・プレッシャーの宣言文としては、趣旨については大西洋を挟んでさほど違いがないんですけども、ターミノロジーでさえ、やっぱりそこは戦略性がございますので、使い分ける、どの言葉を使う。そのことはOECDの社会では1970年から、先鋭化したのはチェルノブイリの原子力発電所の大事故の後に人文科学、社会科学の専門家の方が入っていくときに、じゃあ、これをどう報告書にプリントするのかということでもめたようなのとちょっと似たところがございます。

【樺山主査】
ありがとうございます。ほかに何かご質問、ご意見等ございますか。どうぞ、伊井委員、お願いします。

【伊井委員】
問題が非常に大きくなっておりますので、私もどのようにお聞きしてよいか困ってはおります。一つだけお尋ねします。私も以前に、人文学社会科学の振興についていろいろ担当したこともありますが、そこでも文理融合という言葉が出まして、どのように実践をしていくのかというときに、一番問題になったのは、ここにもお書きになっております、評価者をどのように育成していくかということでした。日本における評価者の位置づけを館がけなければなりませんし、評価者なる存在が社会的にも認知されて権威を持たなければならない性格も持っていると思います。評価という問題を考えたとき、その方法のあり方、評価者についても具体的にどのように考えていくのがよいのか、森さんの立場として、そこだけを少しお教えいただくとありがたく思います。

【森フェロー】
これも欧州調査で聞いた範囲のことを申し上げたいのですが、一番最初、英国に入りましたときに、ロンドンのインペリアル・カレッジの世界的に有名な方、どういう意味でかというと、環境外交にかかわっている、あるいは、IPCCのキーパーソンですね。その人たちに、ロジック管理をなさって、事実上、ロジック管理者だというふうにヨーロッパ人から認めているような方に伺ったんですが。今、先生の、じゃあ、その評価者というのはどういうことなのかということで、学術分科会で既に平成21年の夏頃にお書きになられた、これは私の英語で、つたない英語で、しかし、朴訥ながら一生懸命説明しました。そこで知の巨人、あるいは、名伯楽、あるいは、この場合でいうところの知の巨人というのは実在のシングルパーソンを意味しないと、いわば仮想の存在であるということで止めてくださっているんですが、それについても説明をしました。そこについては、ヨーロッパ人で違和感のある人は一人もいませんでした。それを、じゃあ、現実局面でどうするのというときに、ちょっと私はそれ以上答える能力がなくて、私のほうからの答えは止めたんですが、彼らはそれを、今、伊井先生のお答えをまず最初に申し上げると、「信用されている」、「トラスト」、あるいは、「リライアビリティ」というので、シングルパーソンもいるんです。それは気候変動の問題領域でしたら、例えばプロフェッサー・ヒュームというのがイーストアングリア大学ですが、日本でいったら大学共同利用機関の権威者みたいなものです。で、ヒュームがこの論文はいいと言うとジャーナルに載るんです。でないと載らないと。みんなが、僕はそのヒューム先生に、それでコンプレインツは出ませんかというふうにぬけぬけと質問したんですけれども、いや、それはないと、少なくとも自分は自覚してないと。このあたりが、日本はピアレビュー方式ということですし、集団的なジャッジメントということで、科研費のコミュニティもそうだと思うんですが、それが果たしてほんとうにいいのかというときに、ご質問、意見のやりとりの中に、要するに「レオナルド・ダ・ヴィンチをどう具象化するかということが問題で、それは実践過程で帰納法と演繹法のミックスの中で進化していくものだ」と。「日本に何かアドバイスがありますか」というふうに僕が伺いましたら、まず一つは、「EUの研究ではもう常識化していることなんだけれど、こういう国際社会の問題を取り扱うようなプログラムのときには、インターナショナル・レビューにするのは当たり前の話だ」と。カルチュラルな意味での多様性のないような、文理融合領域のことですけど、そういうのは、無用なばかりか有害でさえあるというような言い方をされまして、そこはやはり彼らは、「じゃあ、ユニバーサルに何かいいのがあれば、日本に帰ってから先生方に説明しますよ」ということを申し上げたんですが、「そんな固定した途端にその価値が損なわれる」というので、それは絶えず動いて、課題ごとに、問題領域ごとに変えるんだけど、やっぱりそこのところは帰納法と演繹法と両方あるので、この10年の過程でもその変遷をちょっとこの附属のほうに書き始めていますけれども、ちょっとこのあたりは平成24年度にベリファイしなきゃいけないところもあるんですが、なかなかそれを実践しているというところがすごいというふうに思います。

【伊井委員】
どうもありがとうございました。

【樺山主査】
よろしいでしょうか。それでは、どうぞ。

【小安委員】
小安です。私も評価のことでお伺いしたいのですが、資料の6ページに、比較的若手の人たちがそういう分野に入っていくときに、身を投じるのはリスキーだとか、労多くして報われないというような言葉が返ってくるというお話が書いてあります。これは、文理といったときに、どちらの分野の方の方から強くこういう意見が出てくるのでしょうか。

【森フェロー】
一番強いのは、文でもなく理でもなく、何といいますか、融合領域のところ、すなわち、例えば日本経済学会に対して環境経済政策学会というのがあります。民法学会や国際法学会に対して環境法政策学会というのがあります。社会学会に対して環境社会学会というのがあります。何を申し上げたいかというと、今の大学の先生方は、指導教官もそうですし、プロジェクトリーダーもそうなんですが、こういう若い方を積極的にインボルブさせたいというふうに皆さんおっしゃるんですね。そのときに、身を投じるのはリスキーだとか、労多くして報われないということの意味は、じゃあ、それで総合的な経験とか新しい、要するにディシプリンの確立してないような領域でフロンティア領域に入っていこうとするときに、ものすごく苦労されるわけですね。経済的にも苦労される。それに対して報いるということをどういうことでやるのかということで、現場の大学の、西暦2000年過ぎから、各大学に総合的なディシプリンの研究科ができたり、典型的には環境学研究科というのが全国で、ここにも入っています、あるんですが、現場の先生はとても悩んでいらっしゃるんです。短い時間の中で、限られた情報で、しかし、差し迫って「あなたを採用するかどうか」ということを判断しなきゃいかんと。それがなかなか現場の研究者がどういうやり方で評価をしているのかということを、最近は上のほうに説明しなきゃいけないという、評価者がアカウンタビリティを持たなきゃいかんということがあります。例えば、大学共同利用機関法人でも四つのグループに分けてございましたけれども、例えば地球研なら地球研で所長さんがやっておられることを、上の法人のほうで説明しなきゃいけなくて、それを外部評価委員会でまた説明しなきゃいけない。そうすると、勢い、従来型の、「ペーパーは書かなきゃいけませんよ」と、「英文のやつもちゃんと書いてね」ということを外すわけにはいかない。新しい評価手法というものがなかなかアカウンタビリティをもって正当なものだというふうになかなか説明するのは……。

【小安委員】
そのときに、逆にこういう不安を持っていらっしゃる方が、どういう評価軸を求めるかというような調査はあるのでしょうか。それこそ、先ほどおっしゃったような「知の巨人」というような形で評価がなされることが、融合領域にとってこれから先必要だというふうに、現場の方が思っていらっしゃるのかどうかというところに興味があるのですが。

【森フェロー】
ヒアリングは去年の4月1日から、約12か月させてもらった範囲の中で申し上げますと、まず、大学の部局長さんとか担当教授で、ここに書いております「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、これは1997年にできて、5年置きぐらいでリニューアルをしていただいているものだと思うんですが、この存在をまずご存じの方は多数ではありません。なおかつ、例えば文科省の評価指針の中でこういうことになっていますよということも、私はヒアリング過程で持っていったりもするんですけど、それは必ずしも認知度が高くないのと、そこに書いてあることが実際問題として現場の評価のクライテリアに転化するということが容易でないということをおっしゃられているので、実態的にはやはり古典的なクライテリアで人を評価し採用しというようなことからなかなか新クライテリアに行ってないということが実態だと思います。ヒアリングの範囲でのことですが。

【小安委員】
ありがとうございます。

【樺山主査】
ありがとうございます。実はまだいろいろ伺いたいことがあるんですが、時間的な制約もございますので、差し当たり、ここまでにさせていただきますけども、初めにご報告、ご説明いただきましたとおり、これは中間報告ということで、まだなお、さまざまな作業の結果として最終的に報告、バージョンアップされた報告ができるというふうに伺っておりますので、今後も何か機会がございましたらば、それもあわせまして、ご説明やご報告をいただくことができればと思っております。よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。時間の制約がございますものですから、議題、次に行かせていただきます。
それでは、次にでございますけれども、本委員会の報告書についてでございますが、骨子案について議論を行いたいと存じます。言うまでもなく、この委員会、時間的には一定の限られた範囲内でもって報告を行うようにというこれまでの慣習等もございますので、報告書の作成の方向に向かって皆様のご意見を伺いたいと思います。まずは、私のほうでこれまでの検討を踏まえまして、報告書の基本的な方向性の案をまとめてみました。それをご説明申し上げました後、事務局から、それに基づきまして骨子案を説明していただくという、こういう順番でお諮り申し上げたいと思います。今申し上げましたとおり、いま少し時間をかけてゆっくりと議論をしたいところでございますが、何分にも時間的にも制約がございます。また、議論の進め方もゆっくりと時間的に積み上げていくということも可能でありますけれども、私自身も気が短いものですから、それを待っているわけにいかないということでございますので、とりあえず、差し当たり、私のほうでもって基本的な方向性に関する案をまとめてみました。それを今簡単にご説明、私からご説明申し上げました後、事務局からそれをかみ砕いてご説明いただくという、そんな形でもってお諮りを申し上げたいと思います。
それではですが、まず、お手元にあります資料2をごらんいただければと思います。報告書の基本的な方向性について、案でございまして、「人文学及び社会科学の振興に関する委員会 報告(案、第1稿a)」とありますが、aとありますのは、最初にあるいはお配りしたものは誤植が多少あったものだったかと思いますが、誤植を訂正いたしましたものが第1aになっております。これをもとにして、まずは簡単にご説明、趣旨を簡単にご説明を申し上げることにいたします。申し上げましたとおりに、基本的にはこの委員会の報告ということでございますけれども、一定の時間的な範囲内でもって報告を行うということが条件でございますので、以下の形でもって案を、第1案を作成したということでございます。なお、この中に、研究者あるいは研究者等とありますが、ご承知のとおり、この委員会は研究者を主体としてお集まりいただき、議論を進めておりますけれども、研究者だけではなく、研究にかかわって関心や、あるいは、興味をお持ちになる方々もあわせて議論を行っておりますので、研究者等と、などという字をつけておりますけれども、研究者としての個別的な関心事や、あるいは、また同時に、社会的な主体として責任感や実務性を念頭に置いた提言である必要があると。そういう意味では、いわゆる例えば日本学術会議のようなところと多少の性格の違いがあるということも念頭に置きまして、以下の案を作成してみたというふうにご理解いただければと思います。
お手元にあります、このあわせまして資料2、A4で6枚、6ページですか、6ページ弱ということになっておりますけれども、これでございますけれども、全体の構成は以下に申し上げるような形になっております。まず第一に、ここでは「1、震災に立ち向かって:人文学・社会科学からのメッセージ」とございますけれども、この平成24年度、あるいは25年にかけてかもしれませんが、現段階でもって、私ども人文学及び社会科学からの研究にかかわる問題提起は、基本的には、言うまでもなく、3月11日、3.11の大震災にかかわって、これを念頭に置きながら、これに対する私どもの対応という、回答という、そういう性格を持たざるを得ないだろうと。これ抜きに、日本国民に対して、私どものスタンスを説明することは難しいであろうという趣旨から、まずは、震災に立ち向かって、当委員会が、人文学、社会科学からのいかなるメッセージを発するかという、そうした問題を多少とでも真剣に議論したいという、それが第一の部分でありまして、ここでは1で特に書いてございます。これにつきましては、人文学及び社会科学が、自然科学だけではなく、また、むしろそれとは違った角度から、私どものメッセージ発信を行いたいという趣旨のこと、それらが第一に書かれております。後ほど具体的には事務局からご説明いただくことになります。第2にでありますけれども、基本的には長期的な視野から、現状認識、現状に対する認識、あるいは、それに基づく総括と、及び、それに対する中長期的な分析、あるいは、提言等々を冒頭に三つ掲げることにいたします。これにつきましては、当委員会が発足するときに既に一応の前提としてご説明申し上げたところでございますけれども、それにつきまして、多少の用語法を改訂しながら、次の2、3、失礼しました、この案ですと3、4、5と、この三つの観点からご説明を申し上げております。まず第一であります、ここでは3ということになりますけれども、「学の融合と総合性」と題した部分であります。この学の融合もしくは統合等々、この用語法につきましては、先ほども議論になりましたし、現在なお、いろいろ問題があることを承知しておりますが、これまで、当委員会、あるいは、当審議会の従来の用語法を引き継いでこう書いておりますけれども、これらについてはご議論、後ほどまたご議論いただくことにいたしたいと思いますが、いずれにいたしましても、学の融合性、あるいは、連携性、及び、それに対する、それをもとにした総合性という、この問題が第一。それから、続きまして、4にあります「学術への社会的要請とそのアウトリーチ」という、この問題が第二と。つまり、学術に対して、差し当たり、ここでは人文学及び社会科学に対して、学問、この学術に対し、社会的な要請、あるいは、要請をどのように理解するかということを、さらにそれを社会に対してその成果をアウトリーチすることによって、社会的な認知、あるいは、ご理解をいただくという、そういう側面が第二。それから、第三には、通常、グローバル化、グローバリゼーションと言われているそのグローバル化と、その結果として成立する、生じている国際学術空間という、あえてこの言葉を使いましたけれども、用語法につきましては検討の余地があると思っておりますが、そうした国際学術空間の形成というその問題、その3つ、つまり、ここでは3、4、5と、この部分が、いずれにいたしましても、当委員会としては、差し当たり、引き取った重要な問題の枠組みであると、こう考えます。したがって、これにつきましては、現状認識及び今後の中長期的な見通しのもとでの分析及び提言を行う必要があるだろうと。したがって、この言論、及び、それに伴うさまざまな各論をこの部分に書き込むことにしたいと、そういう構成になっております。続きまして、さらにこれらにつき、これらが、これらの問題に関する制度あるいはシステムの確立の方向、現状の分析に基づいて、今後、何らかの形でもって提言を行いたいという、その部分が、ここにございますとおりに、6、7、8、9、つまり、「6、共同研究のシステム化」、「7、研究拠点形成と大学の役割」、「8、次世代育成と新しい知性への展望」、「9、研究評価の戦略と視点」と、あわせてこの4点、4件につきましては、それぞれがシステムあるいは制度等々の問題ではありますけれども、これらにつきましては、これまで当委員会が扱ってきた問題、あるいはまた、現実に、当委員会ばかりではなく、多様な角度から既に現実に人文科学、人文学及び社会科学の分野において検討され、また、作業が行われている問題を四つに区分して整理して掲げました。これらにつきましては、いずれかといえば、中長期的というよりは、むしろ中短期的な視野からこの問題を扱う必要があると考えますので、この四つを掲げた上でもってそれについての各論をそれぞれの角度からご議論いただきたいと、それを報告書として整理し、まとめたいと考えます。それが中長期的な観点からする制度、システムの確立の問題であります。以上、この初めの三つ、及び、次の四つと、これだけで完結するかとは思われますけれども、しかし、当時に、それ以上に、さらに緊急の問題、緊急性を持って具体的に定義を提起されなければならない問題があるやもしれずということで、これは現段階では流動的ではありますけれども、さらに緊急性を持つ具体的な提起、問題の提起というものがさらに最終的にはあるかもしれないということで、ここでは「10、短中期的な戦略の在り方」ということを掲げてあります。これらは、作業いたしまして現実にそのような議論が成立しなかった場合には、10というのはないということもあり得ると、なしということもあり得ると考えまして。以上、このほぼこうした形でもって報告書の骨子を作成したいと、こんなふうに考えた次第でございます。もちろん、これは私として、主査と仮のレポートでありますので、いろいろご議論いただきまして、この構造、それ自体に対する組みかえも当然あり得るというふうに考えておりますけれども、以上、こういうふうに考え、今後の作業を進めていきたいと考えます。なお、ここにございます資料2でありますけれども、資料2の部分は私が個人的に執筆いたしましたけれども、基本的には、この本論部分、本体部分をつなげれば、一応のA4、5枚、5ページもしくは6ページ程度になっておりますので、これだけをまとめて切り離して公表することもあり得ると、もちろんこれはこれに十分な手を入れた上でありますけれども、そうした形にもなり得るということでもって、そうしたものとして執筆、作成いたしました。
以上が差し当たりの私からのご提案でございますけれども、これはあくまでごく骨子部分でございますので、これらの具体的なあり方につきましては、事務局のほうから、これまでの当委員会での議論も踏まえながら、これからご説明いただきたいと思います。いろいろご質問あろうかと思いますけど、それらも、後ほどのこのご説明があった後にまとめてお話をいただくということにいたしまして、この後、事務局のほうに、まずはこの骨子案のあり方にということでもってご説明いただけますでしょうか。

【伊藤学術企画室長】
失礼いたします。資料の3と4をご覧いただけますでしょうか。こちらに基づきまして、ご説明を申し上げたいと思います。このまず資料3のつくり、及び、4のつくりについてという点につきまして先に申し上げますと、樺山主査からただいまご説明いただきました資料2でお示しいただきました基本的方向性、これと、あと、大きな構造的枠組みというのをベースとしまして、資料3は骨子の構成について、構成及び項目の立て方についてご審議いただくために作成をいたしました。また、こちらの、今、主査のほうからお話がありました各論という部分に関しましては主に資料4ということで、こちらにつきましては、これまで当委員会で先生方にいただきましたご意見、及び、事務局から提示させていただいた資料等をもとに、提言案のということで作成させていただいているものでございます。あわせてご説明をいたしたいと思います。まず、資料3に基づきましてご説明申し上げたいと思います。
先ほど、主査のほうから、まず、この局面におきまして、震災に立ち向かって、人文社会、人文学・社会科学からのメッセージということでスタンスを明確にする必要があるのではないかというご意見をいただきました。そちらにつきまして、ここの「はじめに」というところで、資料2でお示しいただきましたポイントを簡単に3点にまとめております。一つは、1番目の丸でございますけれども、この東日本大震災、これを踏まえて、科学や学術に対して未曽有の衝撃と反省をもたらすものであったというその認識と、そして、2番目の丸でございますけれども、人文学や社会科学にあっても、多様な問題設定、これに今後向かわなければいけないと、向かわざるを得ないというような方向性を取り得る必要があるのではないかという問題提起が1点です。具体的な問題提起としては、黒ポツで、主査のほうの資料2でおまとめいただいたポイントを3点ほど整理しております。こういった震災に立ち向かってということで最初にその基本的なスタンスということでまとめさせていただいた上で、この具体的にそういった課題認識に基づいて、今後、人文学・社会科学の振興を図る上で、どのような視点及び論点で臨むべきかという点で、お示しいただきました7点を、(1)の学の融合と総合性から、そして、(7)の研究評価の戦略と視点まで、それぞれ、視点及び、振興を図る上での視点及び論点ということで柱立てにさせていただいているものでございます。個々、簡単にご説明を申し上げたいと思います。まず、1点目の(1)学の融合と総合性という部分でございますが、主査の資料2でもお示しいただいているポイントを簡単に3点にまとめさせていただいております。1点目という部分に関しましては、ややもすると、人文学・社会科学においてはということで、従来からの自己認識という部分についてでございますが、専門性の探求という部分を優先させて、総合性への視点の欠落ということがあるのではないかという観点と、加えて、結果として、人間社会の全体的理解をなおざりにしがちじゃないかというようなご指摘という部分をまとめさせていただいております。そういった認識に立った上で、では、どうこの融合、先ほど来お話に出ています融合ないし統合という部分のとらえ方を考えるかという部分でございますが、2番目の丸でございます。融合という言葉をここの柱立てに使わせていただいているのは、それは固有の方法や成果というのを放棄するということではなく、融合的統合によって、方針、方法の学術の探求方法、ディシプリンの革新と、そして、研究者、及び、先ほどお話ありました課題を実際に抱えている実務者も含めた共同を実現するよう努力するという観点から、この融合的統合、融合という言葉を使わせていただいているという案にさせていただいております。次、ページをめくっていただければと思いますが、こういった基本的観点に立ちまして、各論の部分でございますが、どういった実際の課題があるかというところで、これまでいただきましたご意見の中で、特に研究者、異分野間の研究者の交流、相互理解という点に関しまして、まず、この学の融合というのを進めるのに当たりまして問題があるというご意見をちょうだいしておりますので、資料4の1ページ目ですね、そこに具体的に今までいただきましたご意見を主に4点にまとめさせていただいております。
まず、ポイントで、1点ごと、ご説明しますと、1点目のところでございますが、これまでいただいたご発表の中でも、一方、日本においてはというところで1番目の丸の2行目でございますが、日本では他国、特に英国をその例にとったご発表もございましたけれども、いろいろな研究をすることに寛容性というのが日本はあると。そういった観点から、この異分野融合の研究は、この1ポツの最後の段落になりますけれども、「異分野融合の研究は、このような日本の研究システムの強みを生かす」というとらえ方ができるのではないかというような、異分野融合の研究の日本発信という部分の意義というところを1点目で定義させていただいております。また、2点目のポツのところでございますが、ただし、一方でということで、実際進める上での困難性という部分でございますけれども、やはり、専門の外に出て交流するということが難しいと。それは具体的にどういう点かというところがこの2ポツ目の4行目のところでございますが、互いに分野間での認識枠組み、文法、その言葉、この理解をするのに時間を要するという課題等もございます。3番目のポツですが、それを乗り越えるという部分に関してということで、これまでいただいたご意見という部分に関しましては、違う分野の研究が、研究全体のストーリーの中にどう位置づけるのかというところを研究プロジェクトの中でも非常に重要という位置づけにして、それをお互いに伝え合うという部分をその能力としては研究者は持つ必要があるのではないかというようなご指摘とともに、最後のポツでございますが、こちらは、また、異分野融合の研究というのをある程度分野として、また、領域として確立するまでは、その専門分野の中での位置づけというのも不明確であるし、また、時間もかかるということから、こういった研究を継続する機会の確保というのも、こういう取り組みを定着していくのには必要なのではないかというご意見をいただきました。その点をまとめさせていただいております。次に、2点目の学術への社会的要請とアウトリーチについてという部分でございます。こちらの柱につきましては、主に、これから進めるべき方向性という部分に関しましては、災害に直面したり、高度な複雑化に伴って、資料3のほうの2ページ目の柱書き、丸のところでございますが、1点目の丸でございます。災害に直面したり、社会の高度な複雑化といった観点から、より学術、それに求められる機能ということで、この社会的機能への認識の整理、枠組みと課題の整理という部分も研究者への要求ということで高まっているという部分でございます。一方、その各論のところで2点、これまでいただいた意見として整理させていただいていますが、じゃあ、どのような目標、実際に社会的要請等を受けて、それを研究課題として整理し、また、社会に返していくというアウトリーチをするために、目標、ターゲットの設定をどのようにしていくのか、また、研究と社会実践との関係というのをどうとらえていくのかという部分の各論ということで2点、大きく、これまでのいただいたご意見を整理しております。1点目の資料4のほうの2ページのほうを見ていただければと思いますが、目標・ターゲット設定の問題という部分でございますけれども、こちらに関しましては、これは意義という部分が1点目の黒ポツでございますけれども、この課題設定型のプロジェクトという部分に関しては、個別の専門分野の研究というよりも、課題設定が先にあって、そこにいろんなアプローチでどう取り組んでいくということになりますので、これまでの分野での従来の研究では気づかない研究対象や視点というそのメリットがあって、そういった結果、その分野、個々のそれぞれ違う分野の研究者に関しては、お互い、その当該、それぞれ出身分野の発展にもその研究成果というのを帰することができるという意義があるという点が1点目と。そして、その2点目のここの課題の部分でございますけれども、どのような目的設定をするのかという部分でいただいたご意見でございますが、2点目の部分でございますけれども、実際にその3行目でございますが、何を目標・ターゲットにするかといったときに、政策形成・実施のためのデータや考え方の提示という部分を科学の本務ととらえて、そこまでにするのか、次に4行目のところでございますが、政策形成・実施に係るその価値判断にまで踏み込むのかという、その目標・ターゲットのとらえ方というのをしっかり整理しておく必要があるだろうというご意見もいただいております。基本的には、このときには、政策形成・実施のためのデータ、ないし、ものの見方というところは一義的な科学、学術の貢献の目標であるということでご意見はいただいておりましたが、ただ、その中でも、ご意見としていただいておりましたのは、遠い目標として、実際に課題解決まで目指すというところはしっかり持っていく必要があるだろうというようなご意見でありました。また、研究とその社会実践との関係という部分でございますけれども、これは留意点という部分でいただいたご意見でございますが、2ポツ目のところでございますけれども、実務家を含めた研究、共同研究という部分を推進していくのに当たりましては、研究者の研究サイクルというところと実際に実務家の需要のサイクルというところは必ずしも一致しないということから、最初にプロジェクトをマネジメントするときに、どういう目標設定を最初にしっかりして、タイムスパンでやるのかというところをしっかり整理しておく必要があるというようなご意見も、実際に課題を実施していく際の留意点としてご意見をいただいたところでございます。次に、(3)のグローバル化と国際学術空間という点につきましてでございます。こちらにつきまして、各論としていただいているその部分でございますけれど、資料3の部分の基本的なスタンスというところでいただいているポイントでございますが、白丸で大きく3つ整理しておりますけれども、主な点としまして2点紹介させていただきます。2番目の白丸の部分でございますが、まずは意義という部分で、必要性という部分でございますけれども、この人文社会と社会科学のみならず、人文学・社会科学におきましても、国際学術空間にあって、いわば世界標準のもとでの競争や研究の共同というのが一般化しつつあると。こういった流れの中にきちんと日本の人文学・社会科学も持っていかなければいけないのではないかという、今のときの認識と事実認識とともに、3番目の丸でございますが、そういった中で、単に受け身ではなく、国際的な交流の場を生み出したりとかリードしたりというような取り組みというのも今後必要なのではないかというようなご意見等もいただいているところでございます。各論ということで、その点、その際にその国際的な活動というのをどう意義としてとらえ、評価するのかという部分でいただいているところを、資料4の点におきましては、3ページで4点ほどにこれまでのご意見をまとめさせていただいております。こちらの中では、特にご紹介を、その3ポツのところをさせていただきたいと思いますが、日本の研究の国際発信、こういったものも引き続き継続的に進めていく必要があるということで、日本語による、必ずしも英語という形になっていなくても、日本語による論文と、学会誌等でも積極的に発信をしていく必要があるのではないかということ、また、国際的な活動という部分では、論文投稿という部分だけではなく、国際学会の組織化など、こういった活動も積極的に教員の評価等におきましてとらえていく必要があるのではないかというようなご意見もいただいているところでございます。引き続き、4点目の論点の共同研究のシステム化というところについてご説明申し上げたいと思います。まず、資料3の基本的なスタンスの部分でございますけれども、こちらについてでございますが、なぜ共同研究のシステム化が必要かという部分のところでございますが、1点目の白丸の部分でございます。人文学・社会科学という部分の学問の基本的な研究スタイルという部分につきましては、すぐれて個人的モチーフに即して展開されてきたということがございます。ただ、その社会課題への対応、ないし、より研究水準を向上していくといった観点からは、多数の研究者や機構の参画による大規模な共同研究の必要性というのもあるであろうという点で、このような提案の部分を意義として整理させていただいております。具体的な各論の部分ということでいきますと、資料4の4ページでございます。大きく2つの柱ということで整理させていただいております。まずは1つ目の柱としましては、人文・社会科学研究推進事業と、施策におけますこれまでの実施の状況についてということでまとめさせていただいております。1点目でございますが、独立行政法人日本学術振興会におきましては、ここの白丸に5点ほど整理しておりますけれども、これまでも、学際的、学融合的な取り組みであるとか、地域研究であるとか、また、社会的な課題解決のための研究、日本研究の国際共同研究というのを、個々のプロジェクトということで展開してきたということがございます。ただ、これまで、個々に展開して、それぞれの事業間の接続・連携という部分という点は確かに課題でございました。そういった観点から、こちらの黒ポツの最後の2行のところでございますが、これまで個別に実施されてきた事業の特性を生かしつつ、今回、社会課題への対応、そして、異分野融合というところをあわせて進めていくという意味におきまして、事業の統合を図り、その際に改善を図っていくということが必要なのではないかというところを観点として書かせていただいております。また、共同研究のシステム化に当たっての課題ということで、今までいただきましたご意見を3点ほど整理しております。こちらに関しましては、特にご紹介を差し上げて、2点目、3点目をご紹介申し上げますが、課題設定型プロジェクトの研究には、先ほども科政研のご発表の中でもありましたけれども、時間と手間がかかるというようなこと、そして、こういったプロジェクトを進めるのに当たっては、最後から3行目のところでございますけれども、共同研究、社会連携の共同研究という部分においては、若手研究者や実務経験のある研究者がこのこういう研究にコミットして相互交流できるような場をつくっていくということが必要なのではないかというようなことと。あと、やはり、振興をしていくという点で必要な観点というのでいただきましたご意見として、最後の黒ポツの最後2行でございますが、やはり、こういうような共同研究を志向するという意欲的な研究者が一定比率いるようになるという部分が全体の変化をもたらすということで、一定量の支援というのも必要なのではないかというようなご意見もいただいているところでございます。これはこれまでいただいたご意見をまとめたという部分でございますので、事務局といたしましては、特にこの点につきましてはさらに深めるべき論点ということで書かせていただいておりますけれども、この関係者の交流の活性化ということをするためにはどのような具体的な取り組みがさらに必要なのかという点は、特にご意見を賜りたいと思っております。引き続きまして、5点目の研究拠点形成と大学の役割という部分でございますが、時間の関係もございますので、各論の資料4の5ページのほうに言及させていただきたいと思います。こちらに関しましては、拠点の機能強化のあり方というところでこれまでもご意見をいただいておりますが、特に1番目の黒ポツの部分でございます。国際化の推進という観点でいきますと、日本の顔が見えるという点の、日本の研究の顔が見えるという点からも、拠点化ということも必要なのではないかというような声もいただいております。その際に、地域バランスも加味した拠点の形成とか、また、既に形成支援を受けてきたところをもっと育てていくということも必要なのではないかというようなご意見もいただいているところでございます。点線の四角に囲っておりますけれども、さらにこの点につきましても深めるべき論点ということで、どういった取り組みというのが今後必要になるかという点を、その研究拠点形成の促進という観点で特にいただきたいということと、特に必要な分野というのはどういったものがあるかという点もご意見賜りたいと思います。引き続き、6ページに移らせていただきたいと思います。次世代育成と新しい知性への展開、展望という部分でございますけれども、こちらにつきましては、人材育成といったことにまつわる現状と課題ということで、これは本日、前半のご発表におけます意見交換の中でも出てまいりましたけれども、若手がこういったプロジェクト、特に学際的なプログラムといったところに参画していくということは必要だけれども、2つ目のポツの最後の行でございますけれども、意欲ある若手研究者がきちんとこういった課題設定型のプロジェクトに参画し、異分野融合に取り組むというところをきちんと評価していくということは重要であると。その際に、3ポツの部分の最後でございますが、どういった、人文・社会科学の観点から見たどういった評価のあり方というのがあるか、そこはきちんときめ細かく見ていく必要があるのではないかというようなご意見もいただいております。こちらにつきましても、さらにご審議を深めていただきたいと思っております。引き続きまして、残り2点でございます。研究評価の戦略と視点という部分でございますが、こちらにつきましても、今、若手の支援という部分につきまして申し上げたところとかなり重複する部分がございますが、1点だけ、参考資料の紹介とともにご説明を申し上げたいと思いますが、1番目の上のポツでございます。文部科学省におきまして、全体の大綱的指針というようなお話がございましたけれども、実際の研究評価の基本的な指針ではどのようにとらえられているのかという部分でございますが、参考資料1のほうにお配りしております。こちらに関しましても、こちら、参考資料1の関係部分抜粋でございますが、評価に当たってということで、1枚目の上段のほうに下線を引かせていただいておりますけれども、すぐれた成果が期待され、かつ、研究開発の発展が見込まれる研究開発課題に関しましては、「切れ目なく研究開発が継続できることが重要である」というような観点であるとか、また、具体的な評価方法、評価の観点というのが1ページ後段の下線のところにございますが、「社会とのかかわりについて常に高い関心を持ちながら研究開発に取り組む」ということが必要であるというような点も、大綱的な指針というところでは既に取り上げられている部分でございます。これをいかに実際の個々のプロジェクトの評価であるとか、実際の大学の現場における教員評価とその採用に当たっての評価、こういったものにどう具体化していくのかというところが課題かと思います。そういった観点から、これまでいただいたご意見で、この7ページの、資料4のほうに戻っていただきまして、7ページの最後の黒ポツでございますが、例えば、研究活動の実施状況に関する評価ということでいただきました意見として、この黒ポツの3行目、後段からでございますが、今後、人文・社会科学の特性を踏まえた評価を充実していくということにつきましては、上に紹介してあるような研究活動のみならず、ここの日本語希少原典の外国語への翻訳をはじめとして、こういった研究活動を広くとらえて、よりその評価の中に取り込んでいく必要があるのではないかというようなご意見もいただいております。この点につきましても、本日、ご審議を深めていただきたいと思っております。以上が、主査のほうから資料2でお示しいただきました7つの観点を、これまでのご意見を、委員会におきますご意見を踏まえて整理したものでございます。そして、最後にでございますが、主査のほうからも、こういった7つの観点の中で、特に当面講ずべし、中短期というお話がございましたけれども、講ずべき点というのは特出しをして整理をしていく必要があるのではないかというようなご示唆もございましたので、この資料4の8ページ、9ページにあるような形で、主に先導的な共同研究の推進というところで1点、まず取り上げさせていただいております。こちらにつきましては、本日のご意見等も踏まえて、より、当面、早急に講ずべきところというところが単にございましたら、充実を図っていきたいと思いますので、ご意見の充実のほうをよろしくお願いしたいと思います。簡単にこの1点目の(1)にある先導的な共同研究の部分の趣旨をご説明申し上げたいと思いますが、先ほど、これまでの取り組みということで申し上げました、日本学術振興会の個々に行ってきました人文・社会科学の推進事業についてという部分でございますけれども、ここにおいて、例えばということでございますけれども、3番目のポツでございますが、例えば、科研費では応募に当たっては主要分野を一つ決めなければいけないということがありますが、この事業を推進していくのに当たりましては、分野連携を前提とする審査・評価ということを、主要分野を絞らないということで、関連分野を広く指定できるようにしたりとか、それにふさわしいレビューアーということで、複数分野の関係者による評価システムというのを当事業の中では考えていったほうがいいのではないかというようなご意見がありましたので、これまでいただいたものを入れさせていただいております。また、若手や実務経験者というところに、こういう研究推進の場を積極的に割くということで、小規模でもいいので、こういった枠というものを一つ考えていったらいいのではないかというようなこと等もご意見をいただいておりますので、ここに素案として入れさせていただいております。このほかに、どのような改善に取り組むべきかという点につきまして、積極的にご意見いただきたいと思っております。また、設定すべき課題の例ということで、前回の3月22日の際にお示しした課題ということで、例えば課題例としてどういったものがあるのかというところを9ページ目に再掲ということで載せさせていただいております。大きく研究領域では二つ、例として掲げさせていただいておりますが、研究領域丸1と丸2という部分でございます。こちらに関しましても、事業を展開していくという際に、この当社会状況を踏まえて、よりこういう課題に取り組むべきではないかというような領域、課題例というものがございましたら、ぜひご意見を深めていただきたいと思っております。説明に関しましては以上です。よろしくお願いします。

【樺山主査】
ありがとうございます。本来から申しますと、幾つか部分、部分に区切って、そのたびごとにご意見をいただくという進め方も考えたのでございますけれども、とりあえずは、全体の構想、構成等々につきまして、全体的なご説明を申し上げましたので、これらにつき、どの部分からでも結構でございます、お気付きの点をまずご意見いただきまして、そうしたご意見を集約した形でもってお預かりし、次回に改めてそれらの修正等も含めて、改めてお諮りをするという、そのほうが議論としてはやりやすいかと思いましたので、こんなふうな形で進めさせていただきました。今いただきましたように、基本的には、原論に当たります人文学及び社会科学の振興に関する委員会報告案という、ここから始まりまして、中短期的な問題に至るまで、大変幅の広い議論をしたつもりでございますので、どうか、どの観点からでも結構でございます。差し当たりは今日、お気づきの点をご発言いただきました上で、なお、最終、最後に申し上げますけれども、その後のご意見をいただくためのペーパーも用意いたしましたので、今日お話しいただきました、今日ご報告いただきましたこと以外につきましてもご意見をいただきまして、その後の処理に任せていただきたいと思います。ということで、今ご報告、ご説明がございましたので、これらにつきまして、ご意見なりご質問なりございましたらば、時間の許す限り、遠慮なくご発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。どの点からでも結構です。それでは、どうぞ、金田さんからお願いします。

【金田委員】
冒頭に申し上げるのもはばかられますけれども、お許しいただきたいと思いますが。既に前回の委員会で申し上げていたことの延長なので申しわけないのですが、例えば、今日、森先生のほうからご報告いただきました中間報告のペーパーのタイトルも、文理連携という表現が使ってございますが、もちろん、いろんな融合とか、要するにインターとかマルチとかトランスとかと、いろんなことの実態の背景もご説明いただきまして、大変参考になりましたが。このペーパーに項目として連携という言葉が入っていないんですが、それが一つ気になることと、それとの関連で、特に主査、樺山先生のほうからご指摘がありましたように、この報告、もちろん案でございますが、これが単独ででも読まれるようにというか、意味を持つようにという方向の可能性をご検討だとすれば、この樺山先生のペーパーの2ページ目の3の「学の融合と総合性」というところは、例えば、ここで融合というのは、「その固有の方法や成果を放棄することなく」というふうな説明をなされておりますが、何か私はちょっとこう説明しても、つまり、融合という言葉の意味を変えることにはならないんではないのかというおそれを感じます。先ほどの森先生のご報告にもありましたが、例えばトランスディシプリナリーというときには、例えば総合地球環境学研究所ですと、あれは地球環境学という新しいディシプリンの構築を目指しているので、そこに向けてトランスであるわけですので、一つのターゲットが明確になっているわけですね。それから、同時に、別のところでご報告がありましたけれども、例えばウェル・ビーイングとか、それから、地球温暖化とかといったような共通の、社会的にも認知された共通のターゲットがあって、そこに向けてのトランスであるとかということはあり得るというふうに思うんですけれども、ただ、大変申しわけない表現で恐縮ですが、何かそういった共通認識というか、ターゲットの議論がなくて、ただ融合とかというような方法論的な、テクニカルなと言ったら悪いんですけど、そこが表に出てくるというのはちょっといかがなものかというふうに、個人的な感想になるかもしれませんが、感じました。ちょっと失礼なことを申し上げたかもしれませんが。

【樺山主査】
ありがとうございます。今のご意見、大変もっともなご意見でございますし、また、先ほどの最初のご報告の中にも、いろいろこの問題をめぐってさまざまな論点があるということもよく理解いたしましたので、これをお預かりいたしまして、今後、適正な方法でもって、誤解を生まないような表現も考えさせていただきたいと思います。また、ご相談もさせていただきます。ありがとうございます。では、ほかにいかがでしょうか。では、瀧澤委員からお願いします。

【瀧澤委員】
ありがとうございます。今の金田先生の後半のご意見と多分重なることだと思うんですけれども、抽象論的なことにどうしてもなってしまいがちだというふうに印象を持っておりまして、具体的に、どういった問題、社会的な課題ですね、があるのかというのを、もう少し明確に例示して、で、例えばこういうものがターゲットとして考えられるんではないかというような部分があってもいいのかなと思います。どういった社会的課題にこれまでの学問が融合して新しい学問になっていくのかという、そのこと自身が新しい展開なんだとは思うんですけれども。先ほど、森先生にご紹介いただいた机上資料のほうの、今回のアンケートの対象になった内容を見てみますと、22ページくらいから、具体的ないろいろな施策がありますけれども、今のところ、環境問題ですとか、偏ったところが対象にはなっていると思うんですけれども、もう少し、例えば高齢化問題ですとか、現在の社会で既に起こってしまっているけれども、学問のほうがまだ十分についていっていない問題、例えば孤独死の問題ですとか、いろんな問題があって、そういったことに、ここまで広げていかれるのか、私自身もわかりませんけれども、もう少し例示するような部分があってもいいのかなというふうに感じました。

【樺山主査】
ありがとうございます。この各論部分は、この委員会でご発言があったものをもとにして列挙していただいたものですから、発言がなかった部分まで書きにくかったという、この事情はご理解いただきたいと思いますが、今ご指摘がありましたので、はい、ありがとうございます、これをいただきまして、扱い方についてはいろいろと検討していきます。どうぞ。

【伊藤学術企画室長】
主査、よろしいでしょうか。今、瀧澤先生からいただきましたご意見の部分でございますけれども、例えば資料4の9ページでございますけれども、当面講ずべき推進方策ということで、先導的な共同研究を事業として進めていく際の例えば課題の例ということで、今は研究領域1と2ということで、非常時における適切な対応を可能とする社会システムのあり方ということで、例として3点、そして、研究領域2として、社会的背景や文化的土壌を加味した新技術・新制度が社会的にどう定着していくかという点で、次のページ、10ページ目まで至りますが、例として2点、こういったものを実際に文理の知を結集して取り組むべき課題ということで例で挙げさせていただいておりますけれども、先生、今いただいたようなご意見も踏まえて、含めて、さらにこの委員会でどういう課題を文理、ないし、人文・社会科学の中での複数分野の取り組みということも含めて、どういう課題を優先的に取り組むべきかというところはご意見を積極的にいただければと思っております。どうぞよろしくお願いします。

【樺山主査】
それでは、順番から参りましょう。鈴村委員、そして、その後、鶴間委員という順番でお願いします。

【鈴村主査代理】
よろしいですか。

【樺山主査】
どうぞ。

【鈴村主査代理】
これは報告書を取りまとめるという課題がありますので、最初にこの報告書の構成のことについて、今ご説明いただいた入り口のところについて、ちょっとだけまずコメントさせていただきます。これ、震災を機縁としてというイントロダクションはよくわかるし、現状で言えば多分適切だろうと思うんですが、今、この書き方でとどめておきますと、例えば一番最後に出てくる、この課題に取り組む覚悟という、この課題というのはかなり震災研究とか、それから、震災に対応する今後の制度設計とか、そういう意味に何か限られてしてしまうような印象がどうしても否めないんですね。だから、多分、入り口でこれを取り上げた上で、しかし、このような研究に関しては、やっぱりその研究をソリッドに進めるために、蓄積されてきた人文社会の学そのもののあり方に関して、もう一歩踏み込んだ方針を検討する必要があると。その中に位置づけてこそというような書きぶりを、最後にほんの一節つけ加えていただくと、多分この報告書の中での入り口の話題の位置づけがよく理解されるんではないかというふうに思います。それが1点目です。それから、2点目は、どうもキーワードはやっぱり評価だと思うんですね。この中にも時々あらわれましたし、先ほどご説明いただいた際にも議論が入ってきていましたけれども、どうも人文社会科学と、それから、自然科学での表現の方法が違うということが、絶えず問題になります。ただ、ちょっと疑問がなくはないんですね。一つは、人文社会科学は評価をしてないわけではなくて、そのような評価がなかなか外部の人にわからないのみならず、また、その分野で事実評価をしている人たちが、どういう評価基準で自分たちが考えているかを公開してこなかった、そのことが多分問題の中にあって、そこに踏み込まないとなかなか、とりわけ融合とか分野が連携していく際の評価と、こういうのが問題になったときに、必ずつまずくことになると思うんですね。そこで、論点が二つありまして、一つは、まず、やっぱり人文社会科学も、別に引用回数とか、論文の点数とか、そういうことにこだわらないということで結構なんだけれども、やっぱり自分たちの科学に即していうと、こういう評価の角度がどうしても必要なんだということをきちんと情報を発信すべきであると、そういうことは少なくともここで書くべきではないかという気が、私はかねてより思っております。それが一つですね。
もう一つは、実は、国際的に見た際に、人文社会科学の基準がそんなに自然科学と極端に違うかといえば、そうでないところがあるわけですね。比較的数量化が整っているのは経済学とかはある種のマネジメントサイエンスとかそういった分野ですけれども、それのみならず、日本ではまさに評価に対してかなり激しい反応が出る社会学とか、こういう分野ですら、やっぱり専門雑誌がありまして、そういう専門雑誌は基本的には編集方針と、それから、レフェリー制度と、最終的なジャッジメントと、そこへ掲載されたことの評価というのが基本的に同じパターンでされている部分もかなりある。だから、一括して社会学なら社会学、例に出して申しわけないんですが、例えば社会学で、これ全体として違うということをおっしゃるよりは、もう少し欧米の評価の仕方を考えると、そこにインターフェースをもっと拡大する余地が必ずあるというふうに私は思います。これは単なる思い込みというよりは、現実見た上でそう思います。これは一例ですけれども、社会科学の分野、及び、人文科学の分野でほかにもそういう例はあると思います。それが2点目です。
それから、3点目はほんとに小さな質問で、何か僕はどこかで誤解をしてとんでもないことを聞くんじゃないかとおそれるんですが、どこだったかな、融合的な研究に入るに際して、人文社会科学と自然科学のほうでかなりスタンスの違いがあるということが書かれていました、で、ご説明いただきました。特に自然科学の場合には、専門的な論文の研究をする前に、普通の論文を書けるようにしておく必要がある。普通の論文ってどういう意味なんですかね。僕、全然わからなかったです。ちょっと多分誤解でしょうけれども、言葉だけ教えていただきたいというふうに。以上です。

【樺山主査】
ちょっと今の最後の問題ですけど、ちょっとどこかにありましたよね。私も気になったんだけど。どこでしたっけ。

【鈴村主査代理】
どこでしたっけ。

【伊藤学術企画室長】
資料4の、事実関係だけ述べさせていただきます。資料4の6ページの3番目のポツのところでございます。前回、加藤先生にご発言いただきました点だと思います。もしよろしければ、先生に。

【樺山主査】
そうですね。ご本人から説明していただくのが一番いいので、よろしくお願いできますか。

【加藤委員】
はい。多分誤解されてしまったのではないかと思います。理系の多くの分野では、例えば教授のラボで一緒に実験をして論文を書き、レフェリージャーナルに論文を発表して、それが博士論文になるというやり方が行われています。私が少なくとも私の知っている脳神経科学分野では、そのような形で博士号に結びついていました。この評価基準をもって、今、人文社会の分野でも、博士号を取得前に、そういったレフェリージャーナルに論文を発表しておくことというようなことが奨励されるようになりました。統計学とか、経済学の一部の分野では、レフェリージャーナルに論文を掲載することが博士号取得に結びつくことは理解できます。しかしながら、社会学とか政治学の多くの分野では、博士論文は本ぐらいの長さがありまして、またそのような分野では、論文より単著の研究書の方が業績として高く評価されてきました。そのような分野で、博士号を取る前に、雑誌に論文を出しなさいということに意味があるのかという問題です。例えば自然科学の場合は、レフェリージャーナルというと、大体英語の専門誌でしかも共著論文を載せるわけですが、当たり前ですけど、人文社会科学系の大学院生が例えば英語の専門誌に、博士号取得前に単著で論文を発表するということは非現実的ですので、大学の紀要とか、日本の専門誌に論文を発表します。この評価基準ができてから、人文社会の分野でも日本の専門誌でレフェリーつきというのは増えてきています。しかしながら、分野によっては、こうして論文を発表することが、博士号やよりよい研究に役立っているかには、私は大変な疑問が残ります。博士論文にならないような主題を短くまとめることは得意になるかもしれませんが、博士論文なるような大きな主題に取り組むのが億劫になり、博士論文がなかなか仕上がらなくなっているという現状が実際に見られます。こういったところは少し評価の基準を、人文社会の分野によっては変えたほうがよろしいのではと思います。

【樺山主査】
はい。

【鈴村主査代理】
念のためですけど、今おっしゃった、博士論文を書く前にレフェリードジャーナルに公表するというのは、むしろ、今は経済学の世界では要求条件に入っています。少なくとも2本はそういう論文を書いていると、それをベースにして博士論文を提出すると。それは、だから、そういう要求が共通になっているんじゃないかと思います。

【加藤委員】
経済学でそれが行われていて可能だというのは私も非常によくわかります。が、ここが難しいところで、人文社会の全ての分野が経済学と同じ形で業績が発表され、それが評価の重要な基準となりうるかという問題です。私は、自然科学のレフェリージャーナルに論文を出版してから、論文がより評価される自然科学と著書がより評価される人文社会の分野とは異なるということをさらに実感しています。政治学は境界領域で、定量的方法や分析を専門とする分野によってはできますけれど、政治学の多くの分野の博士論文は、著書の長さがあり、それは別個の論文に分けられるものでもありません。アメリカ合衆国の場合も、人文社会の多くの分野では、よい博士論文というのは、その後書き直され、学術書になります。それを発表する前に、レフェリージャーナルに一部が発表されることもありますが、論文より著書のほうが高く評価されることには変わりはありません。ですから、人文社会でも、経済学のように自然科学で用いられるような基準で評価した方がよい分野がある一方、人文科学とか社会科学の分野によっては、著書でやはり研究が評価される分野の場合、その博士論文、著書並みの博士論文を書く前に雑誌論文を出版していなければならないとなると、実際、起こっているのですが、短い論文は書いたけれども、博士論文を書けなくなる研究者が出てきています。それはやはり問題ではないでしょうか。また、ジャーナル論文を出版しないと評価されず奨学金もらえないとなると、そちらに能力や時間をさき、博士論文にじっくり取り組めなくなる若手の研究者が多くなり、学術書のレベルの低下を招く可能性もあります。先ほど、やり方が違っても、評価基準を他の分野に明確にするというお話がありましたが、そうであれば、著書が重視される分野では、レフェリージャーナルに論文掲載という条件をつけるより、学術書の出版の際に、外部のレビューやレフェリーを行う方がずっとよいと思います。ちなみに、英米圏の学術書は必ずレフェリーされてから出版されますが、日本ではまだこのやり方は徹底されていません。ですから、たとえば同じ社会科学でも全部そろえたほうがいいと考えているわけではありませんので、経済学は経済学で、成功しているなら、そのままでよろしいのではないかと思います。

【樺山主査】
少なくとも、ここの表現で意味はわかりましたので。

【加藤委員】
はい、ありがとうございます。

【樺山主査】
ありがとうございます。それでは、ほかの問題点、鶴間委員、引き続き、お願いします。

【鶴間委員】
私も感想になるんですが、先ほど、鈴村先生の第1点目と関連しているんですが、やっぱり文理融合とか、今日のお話の中では文理社会連携、文理連携という言葉があって、おそらくこういう流れというのはもう何年も進んで実際に来てるわけですね。例えば、東日本大震災があったことで、社会的な連携、社会的な貢献をしなくてはいけないというところは確かに新しいんだけれども、我々がやっぱり今こういう体験を通して、やっぱりもう一回文理とは何かという、文理という学問というのは何なのかというところをもっと表に出していったらいいのかなという。前にもちょっと申し上げたいんですけども、やっぱり大学教育や研究のレベルになって、文理という区別の中で我々は学問をつくってきたけども、そもそもそういう区別というのはないというレベルをもうちょっと表に出して。今回の震災で私たちが感じたことは、やっぱり自然ですね。自然という言葉をもう少し、私もずっと考えているんですが、やっぱり自然の災害とか自然の大きさとか、それを考えたときに、これは我々の人文分野でも人間に対する学問、あるいは、人間と人間がつくり上げた社会に対する学問を追ってきたんですが、やっぱり自然というのをもっと人文分野でも取り上げて、学問を追究していかなきゃいけない。そのときに、当然、理系の分野の学問も必要になってくるんですね。ですから、何かもう少し、今日設定すべき課題の例として取り上げていただきましたけども、これをもう少し、もう一回、文理という学問がどうあるべきかという根本に帰らなきゃいけないというところを出していったほうが、今なぜまた文理連携なのかということになると思うんですね。ですから、それを総括しておかないと、何か今まで、ずっと今までもう我々、つくり上げた流れがあるわけですから、何か新しいものが見えてこないのかなという、そんな感想を持ちました。

【樺山主査】
ありがとうございます。ほかにご発言、ございませんでしょうか。事務局から、今いろいろご発言がございましたけれども、これらの発言を受け取って、何か今後の手続、手はず等々につきましてお考えのことがありましたら、お願い申し上げます。

【伊藤学術企画室長】
失礼いたします。まず、今後のスケジュールと、そして、ご意見をいただくその手続についてご紹介申し上げたいと思います。まず、今後のスケジュールについては資料5のほうにまとめております。本日は4月19日というところでございますので、次回は5月17日木曜日にお集まりいただきたいと考えております。その間、約一か月等ございますので、お手元、机上に意見提出用紙という形で一枚紙をお配りさせていただいております。お名前を記入していただき、自由記述でご意見を記載していただくような様式のものでございますが、こちらに、本日ご意見いただきましたことに加えまして、本日の資料、資料2、3、4ということでご提案させていただきましたものにつきまして、例えばこういう修正がよろしいのではないかということとか、また、ここにない部分でもこういう新しい観点があるではないかというようなご意見、こちらに記載いただきまして、事務局に次回の会議の前の一週間ほど前、5月8日までにいただきましたら、次回5月17日の会議の資料作成のほうに反映させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

【樺山主査】
今ご説明ございましたとおりに、本日は骨子案とその報告に関する資料を唐突にお配りいたしたものですから、ゆっくり事前にお読みいただくだけの時間的余裕がなかったかもしれません。差し当たり、今日いろいろご意見いただきましたけれども、少し落ち着いてごらんいただきますと、まだまだ指摘すべきところ、あるいは、変更すべきところ、多々あろうかと思いますので、これをお持ち帰りいただきまして、今お話ございましたとおり、5月8日を一応のめどとし、意見提出用紙の中に、これだけのスペースですけど、もちろん、別紙に書いていただいても一向に構いません。事務局へお届けいただきまして、それらをもとにいたしまして、現在の第1案といいますか、第1の第1稿をもとにし、全体として書き直したものを、次回、また皆様にお示しをすると、そんな形でもって進めていきたいと考えております。今、今後の予定、今後のスケジュール等ございましたけれども、5月17日にその第2回目の案を皆様にご検討いただきまして、その後、一応現在のところでは5月31日を予備日にとってございます。17日ではとてもまとまり切らないとも思われますので、31日は、恐縮ですけれども、一応予備日ではございますけれども、あり得るということでもって、スケジュール表をそう書いて、書き込んでおいていただきたいと存じます。それから、その後、6月22日金曜日でございますけれども、一応そこでもって報告書のまとめということを考えておりますけれども、何分にも報告書は大部なものでもございますし、また、論点も多々、多岐にわたっておりますので、できるだけ事前にいろいろご意見をいただき、事務局において整理していただき、私もご相談をあずかった上でもって、最終的な案を6月22日にはご提出を申し上げるということでできればなと思っているところなんですが、やってみなきゃわかりません。恐縮ですけれども、ご協力をいただければと思います。事務局からほかに何かご報告等ございませんでしょうか。

【伊藤学術企画室長】
ありがとうございます。先ほどご意見を賜る用紙、机上にお配りさせていただきましたが、様式はまたメールでお送りいたしますので、そちらのほうに記載いただき、メールでもファクスでもお返しいただければと思います。よろしくお願いします。また、次回の会議の会場でございます。5月17日木曜日は、この文部科学省の同じ3階の隣の3F1会議室で開催予定でございますので、どうぞよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。

【樺山主査】
ありがとうございました。それでは、本日の会議はここまでにさせていただきます。ちょうど時間になったものですから、これで終了いたしますけれども、どうか、次回以降、早急に作業もいたしまして、適切な形でもって報告書を作成したいと考えておりますので、どうかよろしくご協力のほどをお願い申し上げます。本日はありがとうございました。

 

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