人文学及び社会科学の振興に関する委員会(第6期)(第6回) 議事録

1.日時

平成24年3月22日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省研究振興局会議室

3.出席者

委員

樺山主査、鈴村主査代理、田代委員、金田委員、加藤委員

(科学官)
縣科学官

文部科学省

田中総括審議官、吉田研究振興局長、森本研究振興局担当審議官、永山振興企画課長、伊藤学術企画室長、高見沢学術企画室長補佐

4.議事録

【樺山主査】
それでは時間になりましたので始めさせていただきますが、まだおいでになっていない委員の方がおいでになりますけれども、おいおいということだと伺っておりますので、開始させていただきます。
ただいまから、科学技術・学術審議会学術分科会人文学及び社会科学の振興に関する委員会でございますが、第6期第6回を開催いたします。
では、まず事務局から配付資料の確認をお願い申し上げます。

【伊藤学術企画室長】
失礼いたします。お手元に配付資料3点及び参考資料2点の計5点、資料を配付させていただいております。
まず資料1に関しましては、当委員会におけます審議事項例。こちらは毎回お配りしております資料をお配りしております。
資料2に関しましては、これまで5回、この委員会におきまして審議をしていただきました内容を、簡単に論点ということでまとめさせていただいた資料でございます。
資料3に関しましては、今後のスケジュールということで、参考資料1につきましては、本委員会におけます、これまでの主な意見を審議事項のそれぞれ例1、例2、例3と、3本の柱に分けて整理したもの。
そして参考資料2に関しましては、これまでの人文・社会科学に関する取り組みの現状ということで、お寄せいただいた意見を取りまとめたものということで、本日、特に資料2の論点整理をご議論いただく際の参考資料にしていただければと思います。
資料の過不足等ございましたら、事務局にお申しつけください。どうぞよろしくお願いします。

【樺山主査】
ありがとうございます。加藤委員がおいでになりました。どうぞお座りください。
それでは、これから議事に入らせていただきますが、ここに入りますまでのいきさつをお話し申し上げます。本日、3月22日ということで、大変お忙しい時期にお願い申し上げたのですが、実は当初3月22日というこの時間に、アメリカ合衆国のとある著名な歴史家の方がたまたま日本においでになることを伺っておりましたものですから、この時間を割いていただいて、ここでお話しいただき、人文科学あるいは社会科学のあり方についての国際的な流れについて議論をするいい機会であると考え、進めてまいりました。実はそういうことで案内を申し上げる直前に、先方のご事情が変わってしまって日本に来ることができない、訪日することができないことになりましたものですが、急遽、私どももやむを得ず断念いたしました。日を改めてといって、その日を改めたところに、その用事だけにご招待申し上げるだけの予算的な割りつけがないというのもあるものですから、やむを得ず、今回については断念いたしまして、今日、これから皆様とお諮り申し上げる事柄を話題として、会を催す次第になりました。不可抗力でございましたけれども、当初の予定と狂ってしまったことにつきましては申しわけございません。おわび申し上げます。
それでは本日でありますけれども、人文・社会科学の振興方策の論点について検討したいと思いますので、当委員会におけるこれまでの議論及び有識者の皆様からヒアリングしてまいりました内容を踏まえまして、これらにつき事務局で論点をまとめていただきました。まず、事務局からその資料に基づいてご説明をお願い申し上げます。

【伊藤学術企画室長】
資料2をごらんいただければと思います。これまで、先生方にヒアリング、そして意見交換ということでご意見をいただきましたものを、大きく6点の論点にまとめて整理いたしました。
論点1と、次ページにわたります論点2は包括的な論点ですが、人文・社会科学の振興に当たっての基本的な考え方ということで、これまでいただきましたご意見、そしてこれまでの報告書等において述べられているような基本的な観点も、この基本的な考え方につきましては少し盛り込んで整理させていただいております。
まず論点1に関してでございますけれども、グローバル化が進む世界の状況、また、東日本大震災後の我が国の状況といった現状における人文・社会科学が、今、果たすべき役割は何かという観点と、また、学問的特性に即した振興方策を講じていく上で、どのような点に着目して振興を図っていくべきかという観点でいただきましたご意見、主な指摘等を整理しております。人文・社会科学に関しましては、まず1つ目の役割といたしまして、人間の営みやさまざまな社会事象を省察する、あるいは既存の社会システムへの批判や新たな制度設計の提示という役割と効果を持ち、また、人間生活と精神生活の基盤の構築や文化の継承や発展における貢献という役割も持っている点をご指摘いただいております。
また、その学問的特性という観点でございますけれども、多くが個人研究中心の学問であること、また、着想を温め成熟させる過程とか、長年の学問的蓄積が大きな意味を持つという学問的特性を有することも、ご指摘をいただいているところでございます。
また、取り巻く状況という点でございますけれども、その下2つの丸でございます。まず1点目の部分に関しましては、学術研究と社会とのかかわりが求められる中での提言という機能が重要性を増していると。とりわけグローバル化が進む中におきましては、研究協力が進む中で、まず自国や他国の文化的・社会的基盤の理解が必要であって、そういったところにこの人文・社会科学が果たす役割があるのではないかというご指摘や、また、一番下の丸でございますが、東日本大震災の現状を踏まえると、社会が抱えるさまざまな課題を的確に把握するための方策、課題解決のための学際研究や分野間連携がとりわけ必要なのではないかというご指摘もいただいているところでございます。また、その成果や知見という部分に関しましては、海外を含めた社会への発信と対話がより一層必要というご指摘もいただいているところでございます。
また、次の論点2でございますが、グローバル化等が進む現状という中におきまして、活性化をするためにはどのような取り組みが必要なのかという観点でも、いろいろご意見をいただいております。
主なご意見といたしましては、まずグローバル化への対応といったときに、国際化を進めるのに当たりまして、人文・社会科学の中でも分野によっては意義・必要性という部分についての認識の違いを踏まえる必要があるのではないかというご意見がある一方、同じ丸の「一方で」のところでございますが、研究というところが国境を超えて展開されるグローバル化がもたらす影響という部分に関しましては、人文・社会科学共通の課題ということで、共通認識を持つ必要があるのではないかというご意見もいただいているところでございます。
また、国際化という観点での可能性という部分でございますけれども、2つ目の丸でございます。日本研究が海外で多く知られるようになれば、日本を研究対象としたいと思う人も増えて、日本研究のすそ野が広がるということや、また、必要な取り組みという部分に関しましては、英語論文の執筆、欧米の学術誌への論文投稿の奨励ということとともに、国際的な交流の場をつくる活動、こういったようなさまざまな促進方策が必要なのではないかというご指摘をいただいております。また、そういったものを促進することの1つの取り組みといたしまして、論文執筆、欧米等だけではなく国際学会の組織化への貢献も積極的に評価する必要があるのではないかというご意見もいただいているところでございます。
こういった全般的にわたるご意見というのが、まず論点1と論点2ということでまとめさせていただいております。
次に論点3というところで、かぎ括弧でございますが、4つまとめさせていただいております。先ほどの論点1の中にもございましたけれども、社会が抱える課題を的確に把握し対応するためには、学際研究、分野連携ということで共同して取り組むことが必要ということを、これまでの委員会でも重ねて先生方からご意見をいただいておりました。そういった観点から学融合的な協働や、政策課題・社会への貢献を活性化するための共同研究のあり方ということで、論点3としてはひとつにまとめてみております。共同研究のあり方という観点で、まず1点目、研究の意義というところでいただいているご意見といたしましては、主なご意見といたしまして、他分野を知ろうとすることが「細分化の克服」につながるため、他の分野との連携を共同研究を通じて考えていく必要があるのではないかというご意見がありましたし、また、人間社会のさまざまな問題は分野を超えて取り組まなければならない場合が多いというご意見もいただいております。これがご意見をいただいている共同研究の意義という形でまとめさせていただいております。
次に、必要な取り組みについては、関係者の交流の場の形成・定着が必要であるというご意見を多くいただいております。具体的な主な意見という部分でございますけれども、まずは共同研究によって何を目指すかという目的を明確にする必要があるとのご意見としていただいておりますし、交流の場の形成という部分でございますが、2番目の丸でございます。継続的に会う場を設けることが必要と。そうした交流の場の形成によって、異分野共同研究の成功事例の蓄積や情報交換、こういった効果が期待できるというご意見もいただいております。また、そういった取り組みを促進するという観点からは、3番目の丸でございますが、交流を仲介する人材の養成が急務ということ、また、交流の窓口が明確である工夫が必要なのではないかというご意見をいただいているところでございます。
次に、そういった共同研究を進める際の実施スキームについては、具体的に研究の実施体制について、実務者、若手研究者の参画、研究の延長等のご意見をいただいております。また研究者の自由な課題設定を尊重した公募のスキームを基本としつつ、共同研究を促進する事業を考える際には、こういった審議会の場で学術振興上の課題等の検討も踏まえた課題設定の仕組みを検討する必要があるのではないかというご意見とともに、社会課題対応型の研究は分断的に行われているけれども、ある程度まとめてくくるようなプロジェクトの検討が必要なのではないかということ、また、プロジェクトの延長も含め長期的な継続が必要なのではないかというご意見もいただいております。
また、次の4ページの上段でございますが、若手研究者を意識した研究プロジェクトの設定も必要なのではないかということ、また、そういった若手研究者が課題設定型のプロジェクトにどう取り組むということをきちんと評価していくことが必要なのではないかというご指摘もいただいております。
また、次の丸でございますが、全く違う分野の研究者同士の共同研究、実務家の参画、ここは重ねてになりますが、若手研究者の参画、また、実務経験のある研究者の参画を要件として事業を考えるときは検討するべきなのではないかというご意見もいただいております。
また、研究手法という部分に関しましては、実証的な研究の推進という部分も積極的に評価していく必要があるのではないかというご意見もいただいております。
次に共同研究を推進する際の審査・評価の改善についてのご意見をまとめております。主な意見の部分でございますけれども、文理の共同研究の場合の成果の求め方と評価の配慮という部分に関しましては、理系と同じように短期的に目に見える成果を出すことはなかなか難しい点も含めて評価という、評価の観点及び評価事項を検討していくべきなのではないかというご意見とともに、2番目の丸でございますが、伝統的な研究者のピアレビューという部分だけではなくて、実務家を含めた評価という部分、また、評価の観点といたしまして、未来志向型など、質的な面も評価項目に加えるなどの評価の多様性も意識していく必要があるのではないかというご意見もいただいております。
次の3番目の丸でございますが、この研究目的という部分で考えたときに、課題対応型、学融合型の研究を推進するという観点から考えますと、関連分野を幅広くとらえて、積極的に広い分野の方が研究に参画できるような形で考えるべきなのではないかというご意見や、中間評価の結果を踏まえてプロジェクトの期間延長の必要性を判断するなどの柔軟な取り組みが必要なのではないか、その評価に当たっては、メディアを含めた社会への成果発信という部分、いかに社会への成果発信をする予定があるかという取り組みも評価する必要があるのではないかというご意見をいただいております。
以上、共同研究という学融合及び社会課題への対応を活性化するための共同研究という観点でいただいたご意見を、大きく4つにまとめた部分でございました。
次に、横軸的な観点でご意見をいただいているものといたしまして、論点4、研究拠点の機能強化のあり方、そして論点5、研究者の養成と研究評価のあり方、そして次ページになりますが、論点6として、成果発信のあり方ということで、随時項目としてまとめております。あわせてご説明を申し上げたいと思います。
論点4研究拠点の機能強化のあり方でございます。こちらに関しましては、研究拠点には国際的な窓口であったり、共同研究の企画、研究資源の提供など、さまざまな役割がありますけれども、人文・社会科学の基盤強化と新たな展開という観点から強化すべき機能は何か、また、形成が必要な分野はどういったものがあるのかという観点でご意見を頂戴できればと思っております。これまでいただきました意見でも、海外の日本研究者が日本の研究者と交流する際の窓口の明確化が必要であるとか、また、研究の推進といったときの人及び情報の行き来のサイクルを活発にしていくためには、やはり人文・社会科学におきましても拠点、センターという部分が必要なのではないかというご意見をいただいているところでございます。
そして論点5研究者の養成と研究評価のあり方でございますけれども、主な意見といたしましては、お互いに伝え合う能力やディベートの技術が必要、人材育成につながる形で、専門分野と異なる研究を行っている場合につきましても、きちんと積極的に評価していくべきなのではないかというご意見をいただいたり、また、留学とか海外研究者との交流という部分も積極的に評価するべきではないかというご意見をいただいております。
原典の英語訳を積極的に試みるなどの取り組みも評価をしていくべきなのではないかということもご意見としていただいております。
最後に論点6の成果発信のあり方でございますが、こちらに関しましてはステークホルダーが参画した事業報告会の実施であるとか、事業成果の発信方法の充実を工夫していく必要があるということ、また、書籍による成果発信が人文学では多いことも留意した上で、活性化とか評価のあり方についても検討すべきではないかということや、国際発信、また、情報をより「見える化」していくという観点からも、ネット上で読めるように、研究成果について発信したり、機関リポジトリという部分も積極的に活用したほうがいいのではないかというご意見もいただいているところでございます。
こういったご意見を、これまで当委員会でいただいておりました。本日、ご意見を深めていただくために、事務局といたしまして別紙以下のところ、少し補筆をさせていただいておりますので、あわせてその資料についてもご説明申し上げたいと思っております。
まず1点目の資料、別紙1の部分でございますが、論点3の共同研究の部分で、3ページの(3)の部分でございます。こちらで学融合と政策課題や社会への貢献という共同研究を進めていく際の課題に関しましては、公募のスキームを基本としつつも、科学技術・学術審議会等における審議を踏まえた課題設定もあってしかるべきではないかというご意見をいただいている部分でございます。それにつきましては別紙1ということでご用意いたしました。こちらの案につきましては、科学官の先生方にもご相談しつつ、原案を作成させていただいております。1つは、分野を超えて共同で取り組むことが求められる課題例ということで、研究領域1、非常時における適切な対応を可能とするための社会システムのあり方ということで、起こり得る非常時に備えた社会リスクの管理や価値判断が求められるような課題という部分については、例に3つございますようなデータの共有化のための事前の法的ルールの整備であるとか、また、震災の非常時にサプライチェーンを再構築するために、これもシステム科学に関する諸分野の知見を生かした方策の検討であるとか、また、非常時における意思決定のあり方ということで考えれば、現場における自律分散型の意思決定が必要になるということから、諸科学の観点を生かした危機管理のための意思決定マネジメントのあり方を検討するといった課題も必要な課題として挙げられるのではないかということで、例として作成させていただいております。
次に研究領域2という部分に関しましては、社会的な背景や文化的土壌等を加味した新技術・新制度の普及ということで、例にございますような社会的価値を含むさまざまな新技術・新制度の創出・提示が想定されますので、こういった自然科学的な検討に加えて、民俗学と宗教学と心理学的な観点といった学融合的な検討が求められる例ということで、2つほどご用意しております。
こういった例をはじめといたしまして、先生方のほうでまた進めるべき課題については、ご審議を深めていただければと思っております。それが別紙1でございます。
別紙2に関しましては、論点4の研究拠点の機能強化の部分で参考資料としてご用意しております。人文・社会科学の基盤強化を考えていく際に、どういった分野、または機能強化が必要なのかというご意見を頂戴するための参考資料といたしまして、現状ということで、現在の大学共同利用機関法人、人間文化研究機構の機関一覧であるとか、大臣認定の共同利用・共同研究拠点の人文・社会科学の研究分野がわかる一覧をご用意させていただいております。
最後に別紙3は、論点5の研究評価のあり方という部分に関する資料としてご用意させていただいております。人文・社会科学の特性を踏まえた研究の評価の観点、また、評価の項目という部分について審議が必要なのではないかといったご意見を頂戴しておりますので、現状ということで資料をご用意させていただいております。別紙3Aは、まずは評価の観点と主な評価項目ということで、まずはここに用意させていただいているところに関しては、文部科学省における研究と開発の大綱的な評価指針でございます。こちらについては、必要性、有効性、効率性、その他というところで、それぞれ科学的・技術的意義であるとか、社会的・経済的意義、国費を用いた研究開発としての意義のほか、有効性につきましては、新しい知の創出への貢献はじめ、その他のところには世界的水準という評価の観点がございます。そこにあわせて参考の部分でございますけれども、こちらは大学共同利用機関法人の研究所でございます総合地球環境学研究所の取り組みを参考で入れさせていただいておりますが、こちらに関しましては、地球環境のために学融合的な共同研究を進めることをモットーとしておりまして、その研究を進める際の共同研究の審査実施要領でございます。そこの項目を見てみますと、特色がある部分として言及させていただきますと、その他の部分ですが、国際性ということで、国際的な研究協力の体制の中核となり得る研究内容なのかという点と、既存の学問分野の枠組みを超えた総合的なストーリーがこの研究には期待できるかといった、総合性・学際性を特に評価するという観点を設けている形になっております。
次に、別紙3Bは評価の具体的な項目ということで機関評価の例と課題評価の例ということで1例ずつ入れさせていただいております。機関評価の例は、独立行政法人大学評価・学位授与機構が行っております国立大学法人の機関評価の基準の部分でございます。課題評価の部分に関しましては、科学研究費助成金の例ということで書かせていただいております。本委員会でご意見をいただきましたような日本語原典の外国語への翻訳であるとか、また、海外での研究活動の経験、国際共著論文、国際学会の組織化等の活動という部分に関しまして、明示的な評価の例という部分に関しては機関評価及び課題評価の例のところにも載っていない部分がございます。また、機関評価及び課題評価の部分に関しましても、該当項目については丸で書かせていただいていますとおり、逆に丸がついていないところには積極的な例示という部分が明示的にはされていないというところでございます。
こういった資料も参考にしていただきながら、人文・社会科学の研究振興に当たりましての評価のあり方ということで、評価の観点及び指標でどういうものが望ましいかということもあわせて、本日ご意見をいただければと思います。
関係資料に関しては以上でございます。どうぞよろしくお願いします。

【樺山主査】
ありがとうございました。ここまで当初から数えますと5回もしくは6回にわたりましてヒアリングを行いまして、いろいろなご意見をいただきました。これで十分に手続が踏めていると考えるわけにはいきませんけれども、ただし、いつまでもというわけにもまいりませんので、適切な形で少しずつ最終的な報告を視野に入れながら、あるいは遠方の視野に入れながら、どういう形で議論をまとめていくか、収束していくかということにつき、考えてみたいという趣旨で今回このようなまとめをしていただいたものでございます。もちろん、まだまだこれはまとめ方の1つの例でございますので、もっと別な角度があり得ることはその通りかもしれません。そうした点も含めまして、時間の許す限り、本日はご議論いただきたいと思い、そのさまざまなご意見を受けとりながら、次回以降、これをさらに別な形でブラッシュアップしていくという方向で作業を進めたいと考えております。というわけで、本日は、ともかくもこういう形でやってみたけれども、別のあり方があるのではないかという広い角度からのご意見も含めまして最終的にはいただきたいと思っておりますが、今回、事務局でご説明いただきました形でとりあえずのまとめをしていただきましたものですから、一応これをたたき台にいたしまして、ここから議論を進めてはいかがかと考えた次第でございます。
今、お聞きになっておわかりになりますとおりに、論点1から始まりまして論点6までお話しいただきました。また、それについての合わせて3つの点につき、別紙1、2、3がございますけれども、そんな情報も含めてご提起をいただいたというものでございます。ということでございますので、1から6までの論点がございますが、1つ1つを個別に扱っていくというわけにもまいりませんので、できましたら、差し当たりですが次のように考えさせていただきたいと思います。論点1から論点6までございますが、1つ1つということではなくて、できれば論点1と2は、ある程度、いわば総括的な議論、問題提起でありますので、それを一まとまりとして第1。それから論点3の部分はごらんいただきましたとおり、かなり長目のさまざまな論点を含むものでございますので、論点3の部分が2つ目。それから残り論点4から5、6、この3つの論点はほぼある程度技術的な問題あるいは制度的な問題等、お互いに似通った点がありますので、この4から6までがもう1つのくくりと、合わせて3つのくくりがあるように読めますので、差し当たりそのような3つのくくりに、この順番に従いましてここでは議論させていただきたいと存じます。その結果、こういうくくり方が適切ではないというご意見も当然あり得ますので、それはまた本日いろいろご議論いただき、それをお預かりした上で修正していく形で進めたいと考えました。
ここでいろいろ取り上げていただきましたものは、この席で皆様方から総括的もしくは断片的にいろいろいただきましたものをこうした形で取りまとめたものでございますし、また、科学官の皆様方へいろいろなヒアリング等も行っていただきまして、そうしたものもあわせてここに書き込まれております。こう書いてあるけれども、私はこんなことを言わなかったということも含めまして、いろいろご意見もあろうかと思いますので、差し支えなければ以上、申し上げましたように、論点1、2、それから論点3、それから論点4、5、6という順番に、少し時間を区切りましてとりあえずは議論を進めていきたいと思います。何分にも今回こうした形で初めてご提示申し上げますので、全体がどう見えてくるかについてはまだ十分に見通しがございませんので、いろいろご発言いただいて一向に構いません。これをもとにいたしまして少しずつ整理をしていくことを考えており、後ほどご相談申し上げますけれども、今回は別にし、次回から含めて3回もしくは4回程度の場を設けながら少しずつ整理していきたいと考えておりますので、どうか気楽に、気軽にご発言いただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
ということでですが、まずはじめに論点1と2の部分をおあけいただけますでしょうか。先ほどご説明いただいたとおりなのでございますが、こうした、言うならば基本的な考え方あるいは人文・社会科学全般についてどう考えるかという全般的な活性化の方向という、こうした総括的な、あるいは全体的な議論をここでは行っておりますので、できましたならばこれをお読みになりまして、もう少しこう考えたらいいかというようなそうした事柄を含め、自由にご発言いただきたいと思います。
全体として、本日は17時まで時間を用意しておりますので、時間はたっぷりあります。遠慮なくご発言いただきたいと思います。書かれております文言のどういう意味かということも含めまして、ご自由にご発言いただきたいと思います。
資料2の1ページから2ページにかけての部分をまずはごらんいただき、ご意見をいただければと思います。
それでは、これらにつきましてご感想でも結構です。あるいはご提言等でも結構ですのでご発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
お差し支えなければ、鈴村主査代理から自由なご発言で結構でございますので、お願いできますでしょうか。

【鈴村主査代理】
ありがとうございます。まとめの部分のご説明は、これまでヒアリングで出た論点を要約して下さったのだと理解していますが、私は多くのヒアリングを欠席しましたので、思わぬ誤解があるかもしれません。その点は最初にお詫びしたうえで、意見を申し上げます。論点1では、グローバル化と震災がキーワードになっていますが、この2つのキーワードは大分違う視点を表現しています。グローバル化はずっと継続して進行してきた持続的な問題ですが、東日本大震災によって我々が社会科学的に取り組まなければいけない問題は、衝撃的に変わったというべきです。つまり、日本の社会・経済システムの脆弱性が突如としてあからさまにされて、持続可能な社会・経済システムを新たに設計し直す必要性が誰の目にも明白になったのです。ヘーゲルが『法哲学序説』で指摘したように、従来の人文学、社会科学は事態の推移が定まった後で飛び立って現場を踏査して、学術の知の事後的な体系化をはかるミネルヴァの梟の姿と重なっていました。これに対して、持続可能な社会・経済システムの事前的な設計と実装を意識すべき今後の人文学、社会科学には、果たすべき社会的な役割にも、そのパフォーマンスの学術的な評価の仕組みにも、従来とは大きく異なる考え方が必要になると考えるべきだと思います。これが私の第1のコメントです。
グローバル化との関連で、もうひとつのコメントを申し上げます。日本の人文学、社会科学の国際的な貢献という場合には、日本の研究成果の国際的な情報発信が中心的な重要性を持つことは当然ですが、国際的な会議の企画と運営のイニシアチブをとって、指導的な役割を果たす活動も、学術のグローバル化の趨勢のなかで重要性を認められるべきです。これは学術の世界で国際的公共財の供給に貢献するという意味で、日本の学術の国際的プレゼンスを高める大事な機能なのですが、この機能を積極的に担う研究者をサポートする仕組みがどれだけ日本で整えられているかと言えば、私は全くお寒い状態だと考えています。学術の国際化に貢献しなければいけないというかけ声を挙げるだけではどうにもなりません。国際化を意識した研究活動が重要だというメッセージは正しいけれども、本気でこれらの活動を支える体制が整っていなければ、覚悟してこれらの活動に献身する人々は二重の意味で自分の首を絞めてしまう可能性があることを認識すべきです。第1に、国際会議の責任を担うためには、最初の構想段階から実施段階に至るまで、自分自身の時間とエネルギーと知的資産を犠牲にして、長期間にわたるコミットメントをしなければなりません。しかも、これらの活動に割くべき時間とエネルギーを考慮して、学期中の講義負担を軽減するとか、秘書機能を提供するような大学は、日本では皆無に近いと思います。第2に、こうした国際公共財の私的供給に貢献する研究者の活動を評価して、研究者としての処遇の改善を配慮する研究機関が、日本にどれだけあるでしょうか。精神論やかけ声どまりの国際化推進策には、持続するエネルギーを供給する内燃機関が欠落しています。これが私の第2のコメントです。

【樺山主査】
ありがとうございます。どうぞ、縣科学官。

【縣科学官】
全く同じような気持ちを、私も先生の後段のほうに感じておりましたので、それを違う言い方で申し上げますと、例えば論点2でそのことが問題になる、国際化をどう推進するか。そのときに、私もこういう立場でこの人文・社会の活性化について、2、3年違う会議の形で、あるいはアウトプットとして違う形で参画はさせていただいてきました。そこで感じることは、議論をして、ある程度方針が明確になってくるのですが、今おっしゃったように、具体的にそれを推進する政策ツールは何なのかということがあまり議論されていないわけです。今、鈴村先生が重要なことをご指摘になって、例えば国際化を推進するときに、プロジェクトを立てて、それである程度チームを組みなさいと言われても、教育のほうの制約からそれが進まない可能性はあるということで、国際化を国際会議に集中させて推進するときには、多面的に方策を考えねばならないことをご指摘になったと思うのです。であるとすれば、ここである程度いろいろな重点を決めた後、どういう政策ツールを使ってそれを具体化するのかという議論を本来はやっていただくのだと思うのですが、我々としてもイメージとして持っていないと重点の置き方も難しいし、置いた後どうなっていくのかということを我々も考えていく必要があるのではないかという意識があります。今、伺いたいのは、例えばほんとうに具体的にいい例を出していただいたのですが、大学で教鞭をとりながら研究者として国際化を進めなさいといったときに、どういう政策ツールを組み合わせるのかについて、何かお考えをお示しいただけないですか。我々から出すべきことなのか。あるいは予算と規制と、財政配分と規制制度の設計をどう組み合わせたらいいのかを、何か具体的に出していただいたほうが、後でその政策そのものを評価するときにも意味がありますし、具体的に歩みを進める上でも重要なのではないかと思うのですが、そう申し上げたときに何かご教示いただけないでしょうか。

【樺山主査】
ありがとうございます。むろん、これは当委員会の報告に結びついていく素材の1つですので、文科省がどうお考えになっているかということはもちろん必要なのですけれども、当委員会がどう考えるかということも含めて議論しなければいけないということだと思います。何かお考えのことがありましたら、この時点でお話しいただけますか。

【伊藤学術企画室長】
当委員会で振興方策としてどういったものが必要なのかということを、また先生方のご意見を賜りながらまとめていきたい。必要であれば概算要求という形に結びつけていきたいというのが基本的なスタンスであります。ただ、予算という形だけでなく、政策ツールの1つとしまして、評価指標の開発もあると思っております。特に、今、大学改革の促進が高等教育局中心に議論されていますが、教育研究の共通的な指標の開発が必要なのではないかという議論もございます。そういった観点で考えますと、教育研究の指標の開発を進めていく中におきましては、例えば特に人文・社会科学においての配慮が必要だということであれば、特にどういう評価項目があるのかというのは、人文・社会科学の振興を考えるこの委員会で積極的な意見をいただき全体に反映していくことも可能だと思っておりますので、そういった制度的な観点も含めまして、ご意見を賜れればと思っております。

【樺山主査】
どうぞ。

【縣科学官】
そうしますと、研究の分野としての財政配分以外のツールとしてはそれが考えられるわけですが、今、鈴村先生がおっしゃったように、実際には時間の流れの中で、研究と教育が連動しているわけですね。ですから、大学教育の制度の側面をこの研究推進の中にどうやって組み入れていくのかということを考えないと、どうしても時間の制約が出てくるということで、そこをこの委員会が出したときに、具現化できるかというところが実は非常に重要なポイントだと思うのです。申し上げにくいのですが。

【伊藤学術企画室長】
まさにこの委員会で研究振興という観点での審議が中心でありますけれども、あわせて大学における現状というところで、教育という部分とバランスを持ちながら人文・社会科学の研究を進めていく場合には、逆に例えば大学の中で教育負担軽減の可能な配慮の方向性であるとかそういったものも積極的にご意見をいただけますと、報告書等を通じてメッセージとして出していける部分にもなると思いますので、どういうバランスを工夫すればうまく研究者の国際発信が進められるのかをご意見をいただければと思っている次第です。

【樺山主査】
今、ご指摘がありましたとおり、研究と教育という2本の柱があるとして、私どもはこの委員会あるいはこの審議会で、研究の問題だけを扱うのだというわけではないのだと。当然、両者は極めて密接な関係がありますし、また、個別の研究者は多くの場合、皆、教育という問題を同時に抱えながらそれぞれ個性的なやり方でもって作業をしておりますので、当然のことながら、教育のあり方あるいは教育がもたらすものについての議論は、この報告の中で何らかの形で触れるだけではなく、さまざまな形での提言も含めた議論も必要だと私も考えておりまして、それを上手に表現できるかどうかはやってみなければわからないのですけれども、今のご提言は大変重要な点をついているかと思いますので、それをどう書くかということはまたもう少し考えさせていただくことにしましょうか。

【鈴村主査代理】
補足で1点だけよろしいですか。

【樺山主査】
鈴村さん、それからその後、金田さんという順番でお願いします。

【鈴村主査代理】
短く申し上げます。
研究と教育という2つの活動は、あれかこれかという選択を行うような位置づけにはありません。とりわけ大学院レベルの場合には、教育といっても実際に創造的な研究活動に従事しているひとから受ける教育でなければ、事実上、教育としての意味さえ持たないというべきです。したがって、創造的な研究成果の発信と国際的な研究ネットワークという公共財の供給に貢献している研究者が、これらの活動に基づいて新鮮な研究情報を提供することは、立派な教育の一側面です。この意味の研究・教育活動をサポートすること、その貢献を正当に評価して的確に処遇することは、学術の基盤を充実させる社会的な投資であるというべきだと思います。

【樺山主査】
それでは金田さん、どうぞ。

【金田委員】
少し論点が変わってもよろしいですか。

【樺山主査】
結構です。

【金田委員】
まず論点1ですが、ここの設定は非常に大きなインパクトですから、短期的であるか長期的であるかは別にして、非常に重要なことだと思いますが。ただ、この論点をめぐって、1つぜひ加えていただきたいと思います。グローバリゼーションは、ローカルな文化とか特性とかとは無縁の形で来るわけですよね。例えばかつてはマーケット人口が少なくて、100万人か200万人あれば十分成立していた工業とかが、今の世界経済の中ではとても成立しなくなっています。もっと大きな規模のマーケットに対してのインパクトを持つ企業が残って、小さいものがつぶれてしまう状況になるわけです。つまり、地域に根差した文化とかシステムとかがグローバリゼーションの中で根底から覆されるわけですよね。これが私はグローバリゼーションの1つの非常に大きな側面だと思っております。それからもう1つの大震災のほうは、これも地域の論理と関係なしにいきなり外から災害が押し寄せてきて、これが単純に自然か、人的なものが入っているかどうかは別にいたしまして、そういう形で基盤が覆されたときにどうするのかということになるのだという理解をいたします。これに対する論点として、例えば3つ目の丸の下にグローバル化が進む中で研究協力を推進するに当たっては、どの研究分野においても自国や他国・多地域の文化的社会的基盤の理解が必要である、というところに少しは反映しているのですけれども、これはやはりグローバリゼーションの持っている本質とか、災害の持っている本質を考えたら、もっと強く、それに対しては何が有効で、何を主張すべきで、何ははっきりわからないということが出てくると思うのですけれども、そういうところのめり張りを少し強くする必要があるのではないかなと私自身は思います。
それともう1つは、論点2のほうですが、先ほどから既に十分に議論があるのですが、これも申し上げにくいことで恐縮なのですけれども、私自身が、今は大学ではなくてサポートする側にいると認識しておりますけれども、かつて大学にいたときの大学改革の流れとか法人化の流れを見たときに、大学改革といっても、その前には例えば大学の教養部の改組があったわけですが、教養部の改組のときに理念と実態とが相当違うような専攻とか学部、学科がいっぱいできてしまっていて、それに十分対応をし切れていない。それから法人化という流れの中で、先ほどもっとハードな私立大学の例を鈴村先生からご紹介になりましたけれども、そういう法人化の流れの中で、より教育のところに方向性がシフトしている実態の中で、どういうふうに研究をするのかということが非常に重要なことなのです。、そうすると、これも今のところは大変言いにくいことなのですが、一連の改組や法人化というのが、しばらくするとまた効果も出てくるのかもしれないのですけれども、今のところマイナスの効果が非常に表立っているのではないかという気は個人的にはしております。
ですから、何が言いたいのかというと、そういう制度をあまり教育の観点から、研究の観点から行くと、そうしょっちゅういじくるのはどうかなというのが私の非常に強い思いでして、そういう観点は特に人文・社会科学の中で大きいと思います。ですから、論点2の中に、入れ方は難しいのですけれども、そういう議論を少し入れていただけるとありがたいと思います。
その2点です。

【樺山主査】
どうぞ、田代さん。

【田代委員】
私は日本史研究者ですので、グローバル化ということが日本研究の分野でいかに難しい課題なのかを実感しています。外国の歴史や文学などを専門とされる方々は、それだけで国際化への一歩を踏み出しておられますが、日本研究者にとっては、まず外国語の必要がほとんどありません。日本研究者は英語はもちろんのこと、フランス語など諸国語がまったくできなくてもそれで済ませることができます。この現状のなかでグローバル化をどう進めていくのかということは、ものすごく難しい問題があります。私の大学では幸いにも、日本史研究でも国文学研究でも外国にどんどん行けとしきりに留学をすすめる非常に恵まれた環境にありますが、そうしたところは他にあまりなく、留学といえばせいぜい「国内留学」です。結局、日本研究が海外で多く知られるようになったのは、海外から来られる日本研究者のお陰である言っても過言ではありません。日本に来て様々な知識、研鑽を積まれ、高いレベルの研究者に育ち、その方たちがまたご自分の国へ帰られて、そこでさらに日本研究を広めるといった形で国際化が進められています、しかしこれでは、日本研究者は常に受け身の形のままです。ではいつまでも受け身の形でいていいのだろうかということが問題の1つです。もっと日本研究者の側から海外への発信ができないものか。そのためには日本研究者の留学の範囲を国内ではなく海外へ拡げ、少なくとも英語で講義できるような研究者の育成があっても良いのではないかと思います。日本に来る留学生は、日本語で日本史や国文学の講義を受けますが、専門語が難しくて理解ができないことが多く、そのため私の大学では国際センターで英語で日本関係の講義を聞けるようにしています。しかし現状としては日本研究を英語で講義できる人がなかなかみつかりません。そういった人たちを養成する取り組みも、これからの大学の中で必要とされてくるのではないかと思います。
問題の2つめは、先ほど申し上げた日本研究をやる外国の方たちへの対応です。もしかしたら今日来られるはずだった著名な外国の日本研究者は、おそらく研究資金の面で大変なご苦労があったのではないかと推測いたします。日本は、海外の日本研究者に対する資金サポートが非常に悪いのが現状です。結局は外国の方たちがどこかのファンドをとってきて、それで日本研究をしていると思いますが、あまりにもそうしたことに日本側が任せてきっている現状です。日本研究の国際化のために、資金面のサポートへの取り組みをもう少し考えていただきたいと思います。

【樺山主査】
ありがとうございます。実はその議論を今日したかったので用意しておりましたのですが、ご本人がおいでいただけなかったものだから、かわりに今、田代さんがその問題を扱っていただいて、ありがとうございます。今後、できましたら、そういう機会が一遍できればいいと思っているのですが、うまく行くかどうかはまたお約束できませんけれども考えさせていただきます。ありがとうございます。
もしできましたら、加藤さん、今の1、2くらいのところについて一言言っていただいた後に次に行きたいと思うのですが、何かありませんでしょうか。

【加藤委員】
皆さんが既におっしゃったことにほぼ尽きるのですが、私も書かれている目的に賛成できる一方、先ほどもお話がありましたが、今まで制度改革をしてもなかなか目的を達成できていないように思います。問題発言かもしれませんが、残念ながら、折角よい目標をたてて改革しても目標の達成にはいたらないことが多いのです。これは、目的に合った手段をとらないからだと思います。例えば国際的な研究を奨励するという目的の場合、例えば、海外から人を呼んで国際シンポジウムを開くと、これは非常に高く評価されます。が、シンポジウムをやっても論文は書けません。私が今まで論文とか新しい研究に真剣に取り組んだ時期は、海外にも行けませんでしたし、シンポジウムも開けませんでした。1人で、あるいはチームで研究していました。そういう成果を発表する機会として国際シンポジウムがあるのはいいことだと思いますが、国際シンポジウムをやっているからきちんと研究しているという評価になりますと、どうしてもシンポジウムをしましょうと言うことになってしまいます。先ほどお話に出たように準備に大変な時間がかけ、自分の研究を犠牲にして行なうわけです。論文を断念するとか、あるいは著書を断念することになりかねません。そんなことなら論文を少しでも進めたほうがいいでしょう。このように問題がおこっているところから、評価や手段を少しずつ見直していくことが必要ではないでしょうか。この点に関しては大学の研究者の側も、問題であると思っても、それを率直に言わないので制度設計がきちんとできないのではないかと私は考えています。
もう1つ、先ほど研究と教育という話が出ましたが、きちんと研究をしていればそれが教育になるのは、筋道から言うと全くそのとおりです。しかし、これは一定の授業負担の下でのことです。例えば留学生が増えて、英語の授業を増やしましょう、それはいいことだと思います。ただ、私の能力がないからかもしれないのですけれども、日本語と英語両方で、研究と教育を同時に行なうことは現実的に非常に難しい。研究活動、論文とか著書でしたら日本語と英語でやっています。その上で、授業を、例えば1週の間に同じ負担で日本語と英語を両方やりなさいといわれたら、研究を犠牲にしない限り、私にはできません。もちろん能力のある方もいらっしゃると思いますけれども、他の外国の大学で日常的に、二言語を使い分けて、研究と教育を行なっているところはないと思います。例えば韓国などは英語の授業が非常によく行われているではないかとおっしゃる方がいるのですが、韓国では海外のPh.D.、たとえば、米国,日本、のほうが明らかに高く評価されます。つまり、評価基準が全部そうなっているのです。それで英語での授業が奨励されます。こうしたやり方自体には評価はわかれるでしょう。しかしながら、やり方としては、一貫しています。日本は、とりあえず、英語もやりましょう、日本語もやりましょう、という形です。このように、負担が増えて行く現状を、例えばアメリカ合衆国の大学(カレッジではない)の先生に話しますと、私たちの方ではたくさん教えたいと言っても、どうせ準備ができないでしょうといって教えさせてもらえないと言われます。このような意見を鑑みると、負担を増やしていくことは、その人の個人的な負担になっていると同時に、現実的に考えれば、少しずつ手が抜かざるをえないという可能性を考えなければならないと思います。その結果、制度的には科目数は増え、これだけきちんとやっていますと言っても、そこで研究教育の効果が上がっていますかといった時に、やはりコストがかかっている割には上がっていないのではないかと、残念ながら思ってしまいます。
この点に関しまして、先ほどもお話がありましたけれども、研究をやるのはその人の趣味というような状況に実際なっています。ですから「趣味」を貫くために無理をするとか、あるいはほかの人と違う行動をとって研究を進めていくのが嫌だったら、ある程度まで評価されるように、国際シンポジウムをやったり科目数を増やしたりになってしまう。そうすると本当に効果が上がりますかという、堂々めぐりのような形になっていると思います。結論としては、日本が何に関し比較優位を持っているか、日本では他の国と比べて何が得意かということを考え、目標を設定することが必要だと思います。他の国がやっていることを網羅的に行なうことは有効な対策であるとは思えません。学部教育も大学教育も研究も全てある程度のレベルにすることは大切です。しかし、全体的に負担を増やしていくことは現実的な解決ではないと思います。日本がほんとうにグローバルという形で競争していくなら、研究で差別的に強い分野を作り、まず大学院を活性化させ学部に波及していくのが最も現実的な解決であると思います。日本研究のような分野でもまず海外の方に日本研究の魅力を知ってもらい国際貢献していく形にしていくのがよろしいのではないかと。何かとりとめのない話になって申しわけありません。

【樺山主査】
ありがとうございます。またこの議論をしなければいけないという感じはしているのですけれども、論点は多様にわたっておりますので、一応、論点を提出したと。これをまた次回以降、必要な形で詰めていきたいと思っておりますので、この問題はここまで一段落させていただきますが、後ほどまたゆっくりと耕してみたい問題だと思っております。
それでは恐縮ですけれども、先ほどからごらんいただいております冊子の論点3、つまり2ページから3ページ、4ページにかけてですか、論点3の部分があります。基本的には、ここにございますとおりに、共同研究のあり方であるとか、あるいはその中で学融合であるとか政策課題であるとかいう問題提起という側面を論点3として扱っておりますので、ここで論じられている点、あるいはこの議論の広がりも含めて何かご意見がありましたら、先ほどと同じようにそれぞれいただきたいと思いますけれども。どなたからでも結構です。
どうぞ、金田さん。

【金田委員】
私はいろいろネガティブなことを申し上げるようで恐縮なのですが、この設定なのですけれども、学融合的共同とかいうのの、まずはその実態というか、このほんとうの真意というところが少し気になるのです。もちろん政策課題や社会へ貢献することを拒否しているわけではないのでそれはいいのですけれども、その学融合という言葉は、例えばいろいろな形で融合ということはそれぞれの主体性がなくなるというふうに、私なんぞは少しへそ曲がりですのですぐ思ってしまうのですが、それではやっぱりだめなのではないかと思っています。ですから、もちろんタコつぼ型が悪いことはよく知っていますので、独断で孤立して、ということを主張するわけではないのですけれども、ほかの分野と連携することは非常に大事なのだと思うのですが、融合するというのはほんとうに必要性があるときに融合したらいいわけで、連携の中で融合する必要が出てきたらそこは融合したらいいわけで、もともとのディシプリンは、それではもう意味がなくなったということになるのではないかと思うのです。ですから、学融合自体が目的ではなくて、連携をしながら学問を研究を進めることが重要であって、そのプロセスの中で融合して別のディシプリンをつくって、あるいはその1つの目的に向かって別のことをやったらいいというときには融合と言っていいのではないかと思うのです。私はこの学融合というのは、最近いろいろなところで文理融合とかいろいろな形で使われますが、個人的にはあまり賛成ではなくて、いろいろそのあたりの表現も含めてお考えいただいたらありがたいと思います。

【樺山主査】
できましたら今の問題で。

【鈴村主査代理】
今の問題に関わる点だけ申し上げます。以前、学術会議で何期にもわたって議論したうえで、学の『融合』という表現の使用はやめようという話になりました。『融合』という表現は解けて一緒になることを意味しますが、学術の世界に関しては、こんなことはあり得ないはずです。新しいものを創造するという意味で『進化』という統合はあり得ても、融合はありえない。もちろん学問的な連携とか統合は必要だから、学術会議では学あるいは知の『統合』をキーワードとして使用することにして、『融合』はやめましょうということになったのです。

【樺山主査】
事務局、いかがですか。今のようなご意見がありましたけれども。

【伊藤学術企画室長】
事務局としてまとめさせていただいている基本的な考え方としては、今、先生方がおっしゃられたように、新しい研究課題、そしてそれに対していろいろなアプローチがあって、そこでその結果、新しい学問領域を開拓していくという結果、その連携自体を学融合と、新しい学問領域開拓という形になれば、新しい学問として融合されて新しいものができていくことになりますので、それは融合と呼んで差し支えないではないかという考え方に基づいてこの文言を使っております。これまでも人文・社会科学の振興の事業の中で異分野融合の事業ということで使わせていただいてきた経緯もございます。また、ご審議を深めていただく中で、それをもう少し精緻にとらえて、こういう文言で新しく打ち出していったほうがいいのではないかということが本委員会で新しい方向性として出れば、またそこを踏まえてメッセージを出していくことは必要かと思います。なお、これまで当委員会におきましても、異分野融合という観点でご意見を、加藤先生からもご発表いただきましたし、ご審議いただきました主な意見ということで参考資料1にまとめさせていただいております。
具体的にご紹介いたしますと、2ページを見ていただければと思いますが、2ページ目の(3)の分野を超えた相互理解というところでありますけれども、新しい学問領域を開拓していくためには、違う研究分野の研究が全体のストーリーの中でどこに位置するかをお互いに伝え合う能力をどう意識しながら進めていくというような、それぞれにディシプリンを踏まえつつ、新しい学問領域を開拓していくという視点を持ちつつのご意見もいただいておりますし、また、課題という同じ目的・関心を共有していれば、それに対して研究推進ということで異分野融合研究が進んでいくというご意見もいただいておりますので、観点としては同じ問題意識かと思います。

【樺山主査】
この趣旨で融合という言葉を使っていいかどうか、あるいは融合という言葉が持っている多様な意味合いをここで十分に表現できているかという、いろいろな問題があるかと思います。これまで融合という言葉は各方面でかなり使われていることは確かですので、これに対する検討も加える必要があるかと思いますので、当委員会の報告として何らかの形で、この融合という言葉を使うとすれば、当然それについての厳密な定義を誤解がないように下す必要があるかと、かねてからそういう感じはしておりますので、今、問題提起いただきましたので、実質的な作業をする中で、より具体的な誤解のないやり方を考える必要があるかなと。そういうことではないかと思います。当然、融合と呼んでいるのは、したがってもともとそれに参画した2つ、3つ、4つの複数のものが言うなれば融合で、解けてなくなってしまっていいのだという趣旨ではおそらくないはずですから、この言葉を使うか使わないかということを含めまして、今一度、厳密な言葉の用法についても検討する必要があるかなということだと思います。お預かりして、また、事務局でもご検討いただけますでしょうか。
論点3の部分について、何かほかにお気づきの点がありましたらお願いします。
どうぞ、縣科学官。

【縣科学官】
ここのくくりでは政策課題や社会への貢献という言葉がありますが、それが後ろのほうに来ると、どこに該当するかがよくわからなくなってしまっています。例えば解釈すると(3)のところに少し入っていると思うのですが、それが別紙1参照になっていますので、忖度すれば、政策課題や社会への貢献のために、この数年間において共同利用機関とかCOE等を促進してきたと解釈してよろしいわけですか。であるとすれば、これまで行ってきた別紙1のようなプロジェクトが実際にどういうふうに政策課題に具体的に貢献するかということを見る必要がありますし、それから、同じスキームが延長されると思うのですが、そのときの方針を極分化していえば、ボトムアップの政策課題設定にするのか、トップダウンにするのかという判断を考える必要があると思うのです。ですから、その点はどう考えるのでしょうか。まず、従来行ってきた政策が政策課題にどう貢献したと考えるか。それから今後このスキームを延ばすのであれば、政策課題の観点でいうと、どういう課題設定をするのかということです。

【樺山主査】
何かお考えがあればお願いします。

【伊藤学術企画室長】
学融合及び政策課題への貢献という観点の共同研究のあり方ということでの課題設定という部分に関しては、別紙1で先生に今ご紹介いただいたのは大学共同利用機関とか、共同研究拠点の別紙2のほうかと思います。

【縣科学官】
2ですか。

【伊藤学術企画室長】
はい。研究拠点の機能強化の部分として参考資料のほうで挙げさせていただいたものでして。大変失礼しました。つくりがわかりにくく。こちら、共同研究の場合についてどういう課題を設定して分野を超えて取り組むべき課題、そういうものを考えられるかが別紙1のほうで。

【縣科学官】
ごめんなさい。間違えました。わかりました。そうすると、これから設定をするということなのですね。

【伊藤学術企画室長】
はい。

【縣科学官】
であるとすれば、わかりました。その場合は、この別紙2のような試みとは全く違うやり方をとるということですか。結局、将来的にはどういうアクションをとるかということを判断する場合には、別紙2のような形をとるのではなくて、トップダウン的に課題を、この別紙1のような事例として出していって、そこに人に集まってもらうというような形をとるのですか。

【伊藤学術企画室長】
どのようなやり方が望ましいのかというのは、あわせてご審議いただければと思っております。共同研究ということの論点3及び別紙1で考えている対応案としては、JSPSの事業で社会課題設定型の事業枠がございますので、平成25年以降、新規採択等を進めていく際の1つの研究課題設定の方針の打ち出しになりうると思っています。あと先生がおっしゃられている共同研究、共同利用拠点の別紙2の部分に関しましては、おっしゃるとおりボトムアップ的に学術振興という観点からどういった研究資源や共同研究が必要なのかという観点で進められている取り組みでありますけれども、そういった取り組みの中でこういう分野も必要なのではないかというご意見等をこの委員会でいただければ、共同研究拠点の認定という際に1つの観点ということで取り入れていくことも可能かと思います。まずは人文・社会科学振興、社会貢献という観点で、ご審議いただき、どういう制度や事業で対応するかは、色々あり得ると思いますので、その点をご審議いただければと思っています。

【縣科学官】
済みません、間違えました。

【樺山主査】
おそらくまだまだ説明が足りていないと思いますので、次回以降、もう少し具体的な話を前提にしながら議論を進める必要があるかなと考えております。
今、事務局からご説明がありましたように、実はここの部分、特に論点3の部分は現実にJSPS日本学術振興会でこの数年間行われてきたものを念頭に置きながら書かれておりますので、そのことを書かないと何を言っているのかよくわからなくなるということがあるのですが、現実に行われ成功したものとそうでないものともちろんありますけれども、私はそれに両方とも関与したものですから趣旨がわかるのですが、もう少しそこの具体的な説明がないと何のことかわからないという点がありますので、報告書としてこの問題を取り上げるとすれば、具体的に行われた研究の成果、あるいはそれに対する評価も含めて書き込む必要があるかなという感じがしましたので、これはまた次回以降、やり方を考えることにいたしましょう。
どうぞ。

【鈴村主査代理】
(3)の共同研究の実施スキームにかかわる意見です。書かれていることを読む限り、これはいささか無理ではないかという気がします。共同研究の発生の実態を考えると、研究者の間でスパークが生じて、それをきっかけに新たな研究のシーズが自生的に登場して、幸運な場合にはこのシーズが発芽して堅牢な研究へと成長するというのが、共同研究の発芽と成長の実感に近いような気がします。課題をあらかじめ設定して、そのために研究チームを組織していくという共同研究の推進方法は,自然科学の一部では標準的なアプローチであるのかもしれませんが,私が述べたような共同研究の発生を促進する措置も、共同研究に対するサポート・スキームの一部として考慮されるべきではないかと思います。

【樺山主査】
ありがとうございます。
それでは、時間の制約もありますものですから、まだいろいろな論点があり得るかと思いますけれども、次へ移らせていただきます。
先ほど申しましたように論点4から論点6にかけて、つまり拠点の形成の仕方あるいは評価の仕方、もしくは最終的な発信の仕方といったような制度にかかわる問題というところで、5ページから6ページにかけて記載されておりますので、これらにつきお気づきの点等がありましたらば、またご指摘いただければと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。

【縣科学官】
評価につきましては、別紙3A、Bですね。これについて、評価と言っておられるときの判断のタイミングとして、基準は課題採択の際の基準ですか。それとも課題が出てきて成果を判断するときの基準なのですか。それがまずよくわからないのですが。

【高見沢室長補佐】
簡単に補足します。別紙3Aの「文部科学省における研究開発の評価指針」は、事前評価、中間評価、事後評価まで全部含めた形の指針になっております。、必要性、有効性、効率性の観点で、どのタイミングではどのようなことを見るべきかということは、大綱的には書かれていて、ここではその観点だけを抜き出しています。また、研究の内容によって、例えば学術研究であればこういうところをきちんと見るべきだとか、大型のプロジェクトであればこういうところに注意すべきだというような、研究の性格に応じて書き分けられています。

【縣科学官】
であるとすると、今、仮に評価のタイミングを3つ言っていただいたとします。つまり、採択の際にはこういうことがある。採択を目指す上で、それが重要だと考えて研究者が行動するということです。中間ではそれが延長されるためにどうするかということですから、そこでもし判断が下れば中断される可能性があるということです。ですから中断されないように行動するということです。そこまではわかるのですが、この研究成果が上がったときに評価されたことが、今度どういう意味を持つのかということはどうなるのでしょうか。つまり、さらに継続するために評価するということなのか、あるいは実際にその研究成果が先ほど言ったような話の政策課題にこたえているのかとか、それから融合型、統合型の成果が上がったという形で評価されて、社会に貢献すると見るのか、そこのところは実際にはどう使われているのかどうか。使われているとすればどういう意味があるのかということが知りたいです。

【樺山主査】
この問題は多少制度にかかわっておりますので、まず文科省はどうお考えかということを先に伺ってからにしましょう。つまり、現在では完了した、終了した研究成果に対して評価がつきます。Aプラスだったり、Bマイナスだったりつきますけれども、そのついたものは一体その後どういう意味を持ってくるのか。やった人間がやっぱり能力がないとわかったと、そういうことではないでしょうから、やっぱり制度的にはどうなっているのかという趣旨だと理解しますが、それはどうでしょう。

【伊藤学術企画室長】
まず、基本的な考え方として、事後評価の考え方というのは個別課題というよりも、大きくはプログラム全体としてこれは効果的であったかどうかという判断をすることにあります。ただ、研究課題個別についてもその最終評価がどうだったかというところは研究業績ということで研究者個々の評価に返ってくるものだと思っております。

【樺山主査】
縣さん、そういうお答えなのだけれども、おわかりになりました?

【縣科学官】
いえ、つまり、例えば具体的に言いますと、別紙3Aに有効性の基準が行政施策への貢献とあります。ですから、その研究成果として文章なり何か構想とか構築物とかの案とかが出てきたとして、それが貢献できるという判断をします。あと、貢献というのは、実際の政策に貢献することです。そこの、要するに結節点はどうするのかということが、一番関心があることなのです。だから、提言なりで出ていたということはわかりますが、それはほんとうに社会貢献のために具現化されたのか。それも大事ですし、それを評価されたから、そのプロジェクトにかかわった人は今後どうなるのかということですよね。そこが何か結びついていかないと、結局は研究が社会に貢献するというインセンティブの見通しがないので、インセンティブがわかないことにもなりかねない。あるいは研究が結局は社会と結節点を持たないことにもなりかねないと思うのです。

【樺山主査】
今のご意見に対していかがですか。

【高見沢室長補佐】
そういったことはまさにここで先生方にご議論いただきたい点です。例えば個別の現在やっている事業の中で、そこで人文・社会科学の特性としてどこまで反映させたらそれが評価として認められるべきなのか。例えば、社会選択の1つとしてきちんと提示されること、あるいはそれが検討の俎上に上げられることといったところは必要であるというご議論をいただいているかと思います。社会選択を与えたことをもって評価をするとするのか、あるいはほんとうに社会実装までしなければだめなのかというのは、ご議論のあるところかと思っております。十分なお答えになっていないかもしれませんが。

【樺山主査】
わかったようでわからないのがほんとうのところですけれども、もう少し必要なときにすべて考えることにいたしましょう。次、金田さん、どうぞ。

【金田委員】
論点4のことでよろしいですか。

【樺山主査】
どうぞ。

【金田委員】
論点4の箱の中のことはこのとおりだとは思うのですけれども、その下の意見のところに、私どもの国際日本文化研究センターのことを書いてくださっていて、いいような悪いようなところがあるのですが、ちょっと誤解が入っています。関西には日本国際日本文化研究センターがあって、こういう機能を一部果たしているというか、果たすべきだと思っておりますが、実は関東には国立歴史民俗博物館と国文学研究資料館と国立国語研究所と、日本研究の機関が3つありまして、それがそれぞれ対外的なこともやっています。そもそも我々の人間文化研究の本部も東京にあって、対外的な協定をしたり、受け入れたりというのは、例えばイギリスのArts and Humanities Research Councilとの提携も我々のほうでやっています。我々が受け入れの対象、協定先となって、いろいろな機関にポスドクとかの人たちを割り振ったりしているわけですので、むしろ、要するに関西にはそういうのがなかったから、それをまとめて1つつくっているようなものであって、ちょっと誤解が入っているのではないかなと思うのです。

【樺山主査】
これはこういうご発言が委員会の中であったという。

【金田委員】
あったのですか。すいません。

【田代委員】
多分、私が申し上げたのではないかと思います。確かに別紙2をみますと関東のほうにいくつかありますが、地理的に離れていて、また研究テーマも別々ですので、統合された日本研究の拠点という視点から申し上げました。またさらに別紙2によりますと、東北地方に大学を含めた日本研究の拠点となるような所がなく、関東よりもさらに北の東北地域にあっても良いのではないかと思います。

【樺山主査】
ありがとうございます。ほかに何かございませんでしょうか。どうぞ。

【加藤委員】
ここでいつも気になっていることなので、適切かどうかわからないのですが、申し上げたいことは、人文・社会の評価と自然科学の評価の仕方が違う点が十分に配慮されていないことです。特に、若手の研究者の評価基準で混乱が起こっているような気がします。具体的に言うと、例えば博士号をとる前に何らかの論文を出版していると高く評価されます。これは私が異分野融合研究を始めてからよくわかったのですが、自然科学では(数学などは違うのかもしれないのですけれども)研究室に所属し、自分の指導教授のもとで実験を行なっていれば、博士論文ができるまでに論文が出版できているという形になっています。言い換えれば論文ができていないと博士論文もできていないはずだということなのですが、そのやり方が文系にもそのまま適用されているようです。
その結果、文系で何が起こっているかというと、学生は高く評価されたいので、論文を書き出版しようとするわけです。理系のように、例えば指導教授と共著で海外の専門誌に載せるならまだいいのですけれども、個人で研究を行うのが通常の文系では、大学院生では無理なので、大学の紀要などに出版するわけです。それだけで済めばいいのですが、そうして単発的に論文を書いていると、最悪の場合、博士論文が結局書けなくなる場合があります。そうしますと、文系にとっては、何のためにこの評価基準を掲げているのかわからない。大学院生の中に単発的に論文を出版せず博士論文を最優先して書く人がいるのですが、そういう人は高く評価されず、運が悪いと研究資金とか奨学金も得られないことになります。
さらにもう1つあるのですが、自然科学ではポスドク(PD)になったら研究室を移るのが普通なのですが、それをまた文系のほうでも同じようにやろうとしています。例えばその先生にしかできないような専門があっても、わざわざ関係のない人に移らないと評価されないわけです。文系の場合は、博士論文を完成してもそれを出版するためにさらに時間が必要ですので、理系のように博士号を取った時点で出版が全て終わっている場合は稀です。評価されるために形式だけ移るというのもその制度の無駄のような気もしますし、それをしないと低く評価されるのはさらに問題でしょう。人文・社会を振興させたいのであれば、自然科学のような理系と違うところがあるのだというところをもう少しきめ細かに見ていかなければならないのではと思います。人文・社会の中でも、例えば論文が評価されるような分野と、また著書が評価されるような分野もありますので、その違いも多少加味しないと、こういった使い分けはできないと思います。今言ったような問題が起こる分野は、文系でもどちらかというと著書が評価されるような分野です。若手は非常にそういうところに敏感に反応してしまうので、その点、目的より手段をもう少しきめ細やかに見ていくことにしたらいかがかと思います。
このようにして、少しずつ直していくと、若い世代の研究者が正しい動機づけを持つようになるのではないかと私は思っています。

【樺山主査】
どうぞ。

【金田委員】
加藤先生のお話に全く同感なのですけれども、ちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。私が言うのは、不穏当な話ばかり申し上げるようで恐縮なのですが、評価が非常に難しいと思うのです。今のところは、要するに評価、評価という形で動いていますので、評価をするなというのは難しくて、それじゃあ、無責任にお金を出せるのかという話にもなりますから、そこは非常に難しいと思います。しかし、今の加藤先生のお話のように、相対的に短期的な評価を求めることによって、そうすると短期的に評価をされるような研究がいい研究というか、そのような研究者が育って、成果は短期的に出せるようなものではなくてもっと時間がかかるという人たちがエンカレッジされないことになります。というのは起こり得る1つの現象で、実際私も経験しておりましたけれども、そういうことが1つと、もう1つは、前にも私が申し上げたことで、どこかに反映していただいているのですが、やはり特に人文系の研究は相当熟成しないと使い物にならないのですけれども、その熟成する前に小出しにしてしまう点です。共同研究がマイナスばかりだとは言わないのですけれども、共同研究のマイナスの1つは、せっかくのいいネタが小出しにされてつぶれてしまうことなのです。もうちょっとゆっくり熟成しないと人文学は特に大成しない面が非常に多いのですが、そのあたりのところの何というか可能性をつぶしてしまうという点が気になります。つまり一番最初に加藤先生がおっしゃったような趣味でもいいから続けていきたい、その趣味でもいいから続けられるようなシステムをつくらないと、趣味さえつぶしてしまうという形になってしまったのではもうどうしようもならないので、そういうところが何とか表現できないかと思うのですが、かなりむちゃなことを申しているとは思っております。

【樺山主査】
何かもう長年の宿題という感じですよね。幾度も幾度もこういう議論をしてきましたけれども、なかなか適正な方法を見つけることができないというのが現状ですが、もう少し私たちも頭を絞ってみる必要もありますね。
どうぞ。

【鈴村主査代理】
悩ましい問題で、ひょっとしたら矛盾することを申し上げることになるかも知れません。第1に、人文学、社会科学では客観的な指標に基づく評価が難しいという批判的な声は高いのですが、研究機関の内部での処遇を決める人事とか、学術賞の選定などをやっている以上、人文学、社会科学でも研究の評価を行っていることは紛れもない事実です。確かに、その際に用いられる評価方法は、論文の数とか引用頻度など,自然科学では頻繁に用いられている方法とは異なっているかもしれません。しかし、その違いが人文学、社会科学にとって決定的に重要なのだということを主張するのであれば、個々の学問分野に即してその評価方法を客観的に理解可能な形で明確にする義務があるのではないかと思います。ある機会に私は、人文学、社会科学の分野の研究者に対して、この主旨の要請をしてみたことがあるのですが、わずかな数例を除いて no reply だったことを鮮明な記憶にとどめています。私自身も、自然科学では当然視される評価方法であれ、人文学や社会科学に機械的に適用することが不適切であることは十分に承知していますが、評価の多様性を求めるからは、多様な評価方法を明示的に示して、その機能の有効性を説得する努力を背負う責任は、人文学、社会科学側にあると、私は考えているのです。これが私の申し上げたい第1点です。
第2点目も分野によるのでなかなか言いにくいのですけれども、論点5の一番下から2番目の丸です。海外研究者との交流を踏まえた論文執筆とは何を意味するのかといえば、実は微妙でよくわからないところがあります。経済学でかつてあった事例を挙げますと、留学して非常に著名な外国人学者のディスカッションペーパーを勉強してきて、帰国後に自分の論文として書いてしまった明らかな剽窃事件がありました。この個所の記述の意味は、下手をすると誤解される危険性が多分にあると思います。さらに進んで、原典の英語訳を研究と呼ぶのかどうかという判断は、原典が非常に希少性を持っていて、それを読み解くことが大部分の研究者には不可能に近い場合であればともかくとして、そうでもなければ、これを研究と呼ぶのをためらうひとは、人文学者、社会科学者の中にも多数いるだろうということを、正直な感想として述べさせていただきます。
それから、海外経験を評価するという点ですが、海外経験が意味を持つのならば、それは研究成果にあらわれることであって、これは結局研究成果の評価の話に戻ってくることではないのでしょうか。
最後に、社会のための社会の中の学術という論点6の一番上の丸ですが、ステークホルダーが参画した事業報告会というのは、問題によっては微妙な点があるように思います。例えば、共同研究の一つのイメージとして挙げられている災害復興の関連で、シンポジウムなどを開催する際の難しさとして、被災者などのステークホルダーが出席する場合、無理からぬこととはいえ彼らからは、自分たちが必要とする災害復興援助を獲得するために、学者たちは戦略的な知恵を出せという強い要望が出てきます。この要望に応えることが研究評価の基準として果たして適切であるのかといえば、研究者の立場次第で答えは大きく割れるのではないでしょうか。
以上です。

【樺山主査】
ありがとうございます。今、ご意見をいただきました。どうぞ、田代さん。

【田代委員】
論点6の丸2に、人文学で書籍による成果、発信が多いという点について、補充的な発言させていただきます。これは人文科学の研究の特性でありまして、どれだけ熟成され集大成されたかを問う学問分野だからだと思います。人文科学全部がそうだというわけではありませんが、私の専門とする日本史では書籍がないと就職がかなり困難になります。以前は博士号さえあれば就職はどうにかなりましたが、現在は博士号だけではだめで、その博士論文が書籍として刊行されたかどうかが就職の決め手になっている現状です。最近、民間の出版助成基金がいくつか撤退し、致し方なく自費出版する若手研究者を何人も知っておりますが、やはり資金的に大きな障害となっています。中堅以上の研究者は、実績もありますことから出版社がこちらの要望に沿った形で書籍を出せますが、とりわけ苦しい立場にいるのが若手の、それも就職前の研究者です。科学研究費では学術図書の刊行にかなりの資金を割いていただいておりますが、理系の分野からは博士論文をそうした書籍にする必要はないといった廃止論が時々出されます。しかしここは人文科学の特性上、どうしても書籍による成果、発信が必要不可欠なものであるとご理解いただくしかないと思います。

【樺山主査】
ありがとうございます。
何か問題をどこに絞っていただいても結構ですので、またご発言がありましたらば、ご自由にご発言ください。
もしないようでしたら、当初、約束しておりました17時までということでございますので、本日の事務局からご用意いただきましたペーパーに基づいてのいろいろなご意見はここまでということにさせていただきます。
初めに申し上げましたとおり、実はあくまで本日のペーパーはこれまでのご発言があったものを、言うならば整理したというのに過ぎませんので、問題の論点に沿って本格的な議論が行われているわけでは必ずしもありません。今後、今日いただきましたいろいろなご意見をもとにして、事務局で、また、私どもご相談にあずかりながら、次回以降、もう少し議論が収束できるような形でのたたき台を作成したいと思っておりますので、もしできれば事前にお届けができれば一番いいとは思っておりますけれども、次回のスケジュールとの相談もありますが、そんな方向で、今日ご欠席の方々も含めて、事前にご検討いただけるようなペーパーを用意することができればと思っておりますので、その節はまたよろしくお願い申し上げます。
今後のスケジュール等につきまして、事務局からお願い申し上げます。

【伊藤学術企画室長】
失礼します。別紙3にお配りしております。次回は4月19日木曜日の13時から15時。こちら、文部科学省の3F2会議室で開催を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いします。
その際には、この資料3にもお書きしていますとおり、分野間連携に関する意見発表ということで、科学技術政策研究所における研究もございますので、そちらについてもこの議論を深めるためにご報告していただくとともに、今、主査からご示唆いただきましたとおり、論点2を精査いたしまして、また報告骨子案という精査したものを事前に送れるようにいたしたいと思いますので、何とぞよろしくお願いします。
また、本日の会議の資料に関しましては、もしお荷物になるということであれば、机上にお名前を書き添えていただきまして置いていただければ、後ほどご郵送いたしますので、そのようなお取り扱いでよろしくお願いします。
本日はどうもありがとうございました。

【樺山主査】
ありがとうございます。それでは、本日、この会議をこれにて終了いたしますけれども、本日はご出席の方が多少少なかったということもございますので、次回、なるべく多くの方々においでいただき、全体のまとめの方向について、それぞれのご意見をいただきたいと考えております。どうかよろしくお願い申し上げます。
本日はありがとうございました。

 

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