人文学及び社会科学の振興に関する委員会(第6期)(第1回) 議事録

1.日時

平成23年5月11日(水曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第7号館 西館 13F共用第1特別会議室

3.出席者

委員

 樺山主査、小谷委員、田代委員、岡本委員、金田委員、小安委員、瀧澤委員、伊井委員、大竹委員、加藤委員、鶴間委員
(科学官)
 池田科学官

文部科学省

 戸渡研究振興局担当審議官、永山振興企画課長、田中学術企画室長、高見沢学術企画室室長補佐 その他関係官

4.議事録

【樺山主査】
 それでは、よろしいでしょうか。予定の時間になりましたので始めさせていただきます。
 ただいまより、科学技術・学術審議会学術分科会人文学及び社会科学の振興に関する委員会第6期第1回ということになりますが、開催させていただきます。
 去る2月4日に開催されました科学技術・学術審議会学術分科会第43回において、佐々木分科会長から、人文学及び社会科学の振興に関する委員会の主査にご指名いただきました、私、樺山でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。
 まず初めに、このたびの東日本大震災においてお亡くなりになりました方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた方々へのお見舞いを申し上げたいと存じます。
 私、大変ふなれなものでございますし、また非才の者でございますので、この委員会の主査を務めるような立場ではございませんけれども、どうか皆様のご協力等々をいただきまして進めさせていただきたいと思っておりますので、どうかよろしくご協力のほど、お願い申し上げたいと思います。
 なお、主査代理の選任につきましては、学術分科会運営規則第3条第7項におきまして、主査が指名することとなっております。資料1にもございますが、本日はご欠席でいらっしゃいますけれども、主査代理は鈴村委員にお願い申し上げたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、まず、事務局から委員の紹介をお願い申し上げたいと存じます。よろしくお願いします。

【田中学術企画室長】
 それでは、失礼いたします。
 第6期科学技術・学術審議会学術分科会人文学及び社会科学の振興に関する委員会の委員にご就任された委員の先生方をご紹介させていただきます。資料1として名簿を用意してございますので、適宜ご参照ください。
 まず、樺山委員でございます。

【樺山主査】
 樺山でございます。よろしくお願い申し上げます。

【田中学術企画室長】
 小谷委員でございます。

【小谷委員】
 小谷です。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 田代委員でございます。

【田代委員】
 田代です。よろしくお願いします。

【田中学術企画室長】
 岡本委員でございます。

【岡本委員】
 岡本でございます。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 金田委員でございます。

【金田委員】
 金田でございます。よろしくお願いします。

【田中学術企画室長】
 小安委員でございます。

【小安委員】
 小安でございます。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 瀧澤委員でございます。

【瀧澤委員】
 瀧澤でございます。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 伊井委員でございます。

【伊井委員】
 伊井でございます。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 大竹委員でございます。

【大竹委員】
 大竹でございます。どうぞよろしくお願いします。

【田中学術企画室長】
 加藤委員でございます。

【加藤委員】
 加藤でございます。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 鶴間委員でございます。

【鶴間委員】
 鶴間です。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 次に、本委員会にご出席いただいております文部科学省の科学官をご紹介いたします。
 池田科学官でございます。

【池田科学官】
 池田でございます。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 最後に、本日出席の事務局の職員を紹介させていただきます。
 戸渡研究振興局担当審議官でございます。

【戸渡審議官】
 戸渡でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【田中学術企画室長】
 永山振興企画課長でございます。

【永山振興企画課長】
 永山でございます。よろしくお願いいたします。

【田中学術企画室長】
 高見沢学術企画室室長補佐でございます。

【高見沢室長補佐】
 よろしくお願いします。

【田中学術企画室長】
 申しおくれましたが、私、学術企画室長の田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 ここで、研究振興局担当審議官の戸渡より一言ごあいさつを申し上げます。

【戸渡審議官】
 失礼いたします。
 本日は、私どもの局長倉持がちょっと国会に呼ばれておりまして、本日出席できませんので、かわりまして私、戸渡のほうから一言ごあいさつをさせていただきたいと思います。
 第6期、最初の人文学・社会科学の振興に関する特別委員会の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 委員の先生方におかれましては、大変お忙しい中、本委員をお引き受けいただきますとともに、本日の会合にご参加をいただきまして、大変ありがとうございます。心より御礼を申し上げる次第でございます。
 また、初めに、さきの3月11日の東日本大震災によりまして亡くなられた皆様に深く哀悼の意を表しますとともに、ご遺族と被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 皆様、ご案内のとおり、今回の東日本大震災の影響で、この3月に閣議決定を予定してございました第4期の科学技術基本計画というものが、現在また再考するということで、再検討されておりまして、決定は夏ごろになる見込みでございます。今回の東日本大震災に関連いたしましては、非常に科学のあり方というものに関しましても、さまざまなご意見が出ていると承知しております。今後、研究施設、設備の復旧を図っていくだけではなくて、経済社会システムの復旧、復興、あるいは心のケア、さらには後世への記録というものをきちんととどめていくということ、これは大変重要なことでございますし、そういった中でも人文学・社会科学の知見というものが強く求められていくことになるのではないかと思っております。
 また、国民に希望を与え、信頼にこたえていくというために、学術研究というものがどうあるべきかということを考えていく必要性が、今非常に強く問われているのではないかと考えている次第でございます。
 第5期の学術分科会におきましては、人文学・社会科学につきまして、十分ご議論をいただけなかったという面もございます。第6期では、この特別委員会の場で人文学・社会科学をどのように活性化をすべきか、あるいは人文学、社会科学、自然科学の垣根を超えて、社会の課題にどのように取り組んでいくべきか、ぜひご議論をいただければと思っている次第でございます。
 委員の先生方には、多大なるご負担をおかけいたしますが、大所高所からご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、大変簡単ではございますが、開会に当たりましてのあいさつとさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 それでは、まず事務局より配付資料の確認をお願い申し上げます。

【田中学術企画室長】
 配付資料の確認をさせていただきます。本日の資料につきましては、お手元の資料の議事次第の下に配付資料一覧にしております。そちらのほうも適宜ごらんいただきながら、ご確認をお願いいたします。
 まず、配付資料の1といたしましては、この委員会の委員の名簿を配付させていただいております。
 資料2といたしましては、本日審議いただきたい資料でございますが、人文学・社会科学の振興に関する審議事項例、今期の審議事項例について、案を用意させていただいております。
 また、あわせて資料3でございますが、人文学・社会科学に関係いたします課題設定型の研究推進事業につきまして、関係の事業の資料とともに、その改善の案というものについてご用意をさせていただいております。
 それから、資料4といたしましては、本年1月に第5期の学術分科会において取りまとめました審議経過報告の概要。
 それから、資料5につきましては、平成21年1月に学術分科会人文学及び社会科学の振興に関する委員会において取りまとめをいただきました報告の概要。
 そして資料6といたしましては、日本学術振興会において人文学の国際化に関しまして、現在研究会を立ち上げていただいております。その概要資料をつけさせていただいております。
 また、資料7といたしましては、1月及び2月に行われました科学技術・学術審議会におきます人文学・社会科学における主な意見。
 そして、資料8といたしましては、人文学・社会科学に関連いたします研究者等のデータを用意させていただいております。
 また、参考資料1といたしましては、科学学術・学術審議会の関係法令。
 参考資料2、3といたしましては、資料のほうでは概要をつけさせていただいておりますが、第5期の審議経過報告及び平成21年1月の人社委員会の報告の冊子を用意させていただいております。
 欠落等ございましたら、事務局までお申し出ください。よろしくお願いします。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 それではまず、人文学及び社会科学の振興に関する委員会の運営につきまして、事務局から簡潔にご説明いただくよう、お願い申し上げます。よろしく。

【田中学術企画室長】
 失礼いたします。
 お手元に参考資料1といたしまして、科学技術・学術審議会の関係法令を用意させていただいております。その中の10ページでございますが、10ページ、11ページが学術分科会の運営規則でございます。本委員会の公開も含めました議事の取り扱いにつきましては、この学術分科会の運営規則に従って運用したいと考えております。その際、この運営規則中、分科会長とございます部分につきましては、主査と読みかえたいと考えております。
 議事の公開につきましては、11ページでございますが、11ページの第4条で基本的に公開とするとしているところでございます。
 そして、12ページに具体的な公開の手続について規定を用意させていただいておりまして、2のところでございますが、一般傍聴者あるいは報道関係傍聴者に加えまして、(3)でございますが、会議の撮影、録画、録音につきましては、分科会長、本委員会の場合は主査でございますが、主査が禁止することが適当であると認める場合を除き、撮影、録画、録音することができるという形で公開の手続についても規定をさせていただいているところでございます。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 ただいまのご説明のとおりでございますが、人文学及び社会科学の振興に関する委員会の会議の公開、議事の公表等につきましては、学術分科会の運営と同様に行うこととし、その際には、学術分科会運営規則を適宜「委員会主査」と読みかえて取り扱いたいと存じます。
 また、委員会運営上、ルールを定める必要が生じた場合には、その都度お諮りして決定いたしたいと存じます。それでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 それでは、今回、第1回でございますので、第6期最初の会合でございます。まず今期の審議事項等につきまして、ご議論いただきたいと存じます。また、初回ではございますけれども、後半に当面の検討課題についての議論も行いたいと考えております。
 というわけで、まず事務局から、今期の審議事項等について、資料の説明をお願い申し上げます。よろしく。

【田中学術企画室長】
 それでは、失礼いたします。
 資料2といたしまして、今期の本委員会の審議事項の例といたしまして、案を用意させていただいております。この審議事項の例につきましては、これまでの学術分科会の議論、平成21年の人社委員会の報告、あるいは本年1月に学術分科会として取りまとめていただきました審議経過報告などを踏まえて整理をさせていただいたものでございます。
 この資料2の説明の前に、資料4から資料7にこれまでの審議事項例の参考となる資料を用意させていただいておりますので、まず簡潔に資料4以降について説明をさせていただきます。
 まず、資料4をお開きください。資料4は、本年1月に学術分科会で取りまとめていただきました審議経過報告の概要でございます。審議経過報告全体につきましては、さまざまな提言をいただいているところでございますが、人文学・社会科学の関係につきまして、5ページ、6ページに抜粋をつけておりますので、まずは5ページをごらんいただけますでしょうか。
 まず、5ページでございますが、「人文学・社会科学の意義・役割」とタイトルがあるところでございます。その中で、2番目の丸でございますが、人文学・社会科学の学問的特性といたしまして、研究者個人の意識に負うところが多いこと、あるいは研究成果の発信については、単行本等の書籍が用いられることも多いことなど、学問的特性を整理した上で3番目の丸でございますが、学術研究と社会とのかかわりが求められる中で、人文学・社会科学の機能の重要性が増していること。あるいは、「また」以下でございますが、グローバル化が進む中で、人文学・社会科学以外の分野も含めましたあらゆる研究分野において研究協力を推進するためには、人文学・社会科学の機能の発揮が必要であること。また、人文学・社会科学分野そのものの国際交流・発信の推進も重要になっていることなどのご指摘をいただいているところでございます。
 続きまして、6ページでございますが、「政策や社会の要請に応える研究の推進」といたしまして、最初の丸でございますが、地球環境問題、あるいは生命・倫理問題などの現代的課題への対応が求められる中で、3番目の段落「さらに」の後でございますが、社会のニーズや自然科学をはじめとする他の学問分野からの要請を把握した上で、人文学・社会科学の貢献のあり方を検討することが重要であること。
 あるいは、2番目の丸でございますが、人文学・社会科学の研究全般については、各分野・領域の専門化・細分化が進み、人文学・社会科学の学問的発展のみならず、若手研究者の育成のためにも、異分野融合型研究、あるいは政策や社会の要請にこたえる研究などを推進することが必要であることについてご提言をいただいているところでございます。
 また、最後の丸でございますが、資料3として資料を用意させていただいておりますが、文科省などで行っております課題設定型事業につきましては、目的の明確化、あるいは実施手法の工夫も含めた改善、充実が必要であるといったご指摘、ご提言をいただいているところでございます。
 続きまして、資料5をごらんください。こちらは平成21年1月に人社委員会で取りまとめていただきました報告の概要でございます。まず、この報告におきましては、第一章でございますが、人文学・社会科学の課題を3点ほど整理をしていただいております。
 まず、第一節とございます「『研究水準』に関する課題」といたしましては、欧米の研究成果を紹介するタイプが有力となっている中で、日本の歴史や社会に根差した研究活動の必要性ということについてご指摘をいただいているところでございます。
 また、第二節、第三節にございますように、「研究の細分化」あるいは「学問と社会との関係」ということが課題であるというご指摘をいただいているところでございます。
 その上で、第二章でございますが、そこにございますような学問的特性を整理いただいた上で2ページでございますが、第三章といたしまして、人文学・社会科学の「学術的な役割・機能」とともに、「社会的な役割・機能」を整理していただいた上で、第四章でございますが、具体的な振興の方策といたしまして、そこにございますような方向性をいただいているところでございます。
 まず、第一節といたしましては、国際共同研究や異分野融合研究なども含めました「『対話型』共同研究の推進」。
 2点目といたしましては、「『政策や社会の要請に応える研究』の推進」。
 3点目といたしましては、人文学・社会科学における「卓越した『学者』の養成」。
 4点目といたしましては、「研究体制、研究基盤の整備・充実」。
 5点目といたしまして、「成果の発信」。
 6点目といたしまして、「研究評価の確立」といったご提言を、平成21年の人社委員会のほうからいただいているところでございます。
 続きまして、資料6をごらんください。この資料6につきましては、現在日本学術振興会の学術システム研究センターにおきまして、人文・社会科学の国際化に関する研究を設けていただいておりまして、その中で国際発信の現況などにつきまして、現在、調査研究を実施いただいているところでございます。
 その右側にございますように、平成22年度に「東洋史」「法学」「政治学」の国際化の状況について、中間まとめをしているところでございまして、その一番下にございますように、今後「社会学」「経済学」を加えて報告書を作成いただく予定でございます。
 今後、この日本学術振興会の国際化の研究会の報告、あるいは状況につきましても、適宜この委員会にご報告いたしまして、審議の参考にしていただきたいと考えているところでございます。
 続きまして、資料7をごらんください。こちらは本年1月及び2月の科学技術・学術審議会総会におきます人文学・社会科学に関係する主な意見を簡潔にまとめたものでございます。
 例えば、2番目の丸にございますように、自然科学のみならず、人文・社会科学においても解決すべき重要課題があるはずであり、自立的に課題を設定していくことが必要であるというようなご意見。
 あるいは、一番下の丸でございますが、人文学・社会科学と自然科学の連携をプロモートする方策が必要であるといったご意見をいただいているところでございます。
 そういったただいまご説明させていただきました、これまでの学術分科会のご議論などを踏まえまして、改めて今期の審議事項として整理させていただいたのが資料2でございます。
 それでは、資料2をごらんください。まず資料2でございますが、審議事項といたしまして、2点整理しております。1点目といたしましては、人文学・社会科学の意義・役割を踏まえた振興・発展のあり方として必要な観点というものを3点ほど整理させていただいております。その上で、3点の観点から検討が必要な具体的方策ということを2のほうで整理させていただいているところでございます。
 まず最初の1でございますが、3点の観点のまず1点目でございます。これは特に平成21年の人社委員会の報告のほうでご指摘もいただいているところでございますが、欧米の研究紹介でない、日本の歴史や社会と直接向き合う研究の推進など、人文学・社会科学の学問的発展ということを掲げさせていただいています。すなわち(1)につきましては、人文学・社会科学そのものの発展ということを観点として掲げているものでございます。
 そして、2点目といたしましては、平成21年の人社委員会の報告、あるいは本年1月の学術分科会の審議経過報告でもご指摘をいただいているところでございますが、政策や社会からの要請を踏まえた人文学・社会科学の機能の発揮と。この2点目といたしましては、人文学・社会科学の政策、あるいは社会への貢献という観点でございます。
 そして、3点目といたしましては、平成21年あるいは本年1月の審議経過報告でもご指摘をいただいている事項でございます。また、(1)(2)に共通する事項とも言えるものでございますが、国際化の推進ということを3点目の観点と掲げさせていただいているところでございます。
 その上で2でございますが、その3つの観点から検討が考えられる具体的方策といたしまして、主に平成21年の人社委員会の報告や本年1月の学術分科会の審議経過報告から具体的な例を掲げさせていただいたものが2でございます。
 まず(1)学術的な役割・機能の発揮、すなわち人文学・社会科学のそのものの発展といたしまして、例えばそこにございますように研究の細分化を克服するための共同研究の推進、あるいは独創的な研究成果を創出できる人文学者・社会科学者の養成、研究体制、研究基盤の整備・充実といったことが考えられるのではないかということで掲げさせていただいております。
 そして、2点目の政策や社会からの要請への対応につきましては、人文学・社会科学の「社会的な役割・機能の充実」と整理させていただいた上で、具体的な例といたしまして、社会的要請や他の学問分野からの要請の把握、あるいは異分野との融合の促進、課題解決のための研究推進、研究者と実務者との協働体制の構築、研究評価・研究発信の改善といったことを具体例として掲げさせていただいております。
 そして、3点目の国際的な役割・機能の充実といたしましては、国際的に我が国に求められているニーズの把握、そしてそのニーズも踏まえた発信力の強化、そして国際的な活動、国際化の状況につきましては、分野により差があるというのが現状でございますが、幅広い分野において取り組み可能な事例の普及も含めた国際交流活動の拡大、あるいは地域研究の充実・活用なども含めまして、研究協力や国際貢献への人文学・社会科学の成果の発信といったことを具体的な例として掲げさせていただいているところでございます。
 資料2を中心といたしました今期の本委員会の審議事項の案についての説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまご説明いただきましたけれども、資料2にございます第6期の全般的な審議事項例について自由討議を行いたいと存じますが、実は第5期にもこの種の委員会が存在するはずだったのですが、諸般の事情から十分な準備と運営を行うことができなかったということで、少し時間的にも間があきました。その間にいろいろな事情も変化いたしておりますし、またそれについてもいろいろ皆様方からのコメントもあろうかと思います。それらを含めまして、ただいまご説明いただいた点を含めて自由に討議をしばらく行っていきたいと存じますので、どなたからでも結構でございます。ご発言をお願い申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
 そうたくさん委員がおいでになるわけではありませんので、必ず多分1回は回ってくることは間違いございませんので、早く手を挙げたほうが先だということもございますので、どうか遠慮なくご発言くださいませ。挙手をお願い申し上げます。はい、じゃ、田代さん。

【田代委員】
 一番最初に手を挙げさせていただきましたのは、この委員会に加わってくださいと言われたときに、表題にとても疑問を感じました。何かと言いますと、「人文学・社会科学」とありまして、人文学のほうに科学という言葉がついていないからです。それで、人文・社会科学となりますと、科学が後ろについている形になっているかもしれません。どうも自然科学系の方から見ますと、人文学の分野のほう、文学とか哲学とか歴史とかというのがここに入ると思いますけれども、そこには何か独創的な考え方だけで物事が進められるという感がいたします。しかし学問は、そこに科学的手法を用いたり、または第三者による客観的な証明がなければ、やはり人文学の学問のレベルは上がっていかないはずです。
 それで、もし可能ならば、「人文学」の「学」の前に「科」という字をつけていただきたい。現在、慶應義塾大学では、総合教育科目のほうで人文科学、社会科学、自然科学という3分野に分けております。昔、教養部というのがありましたときには、人文学という名称だったのですけれども、1つのいわゆる学問的な体系を持っているということで研究が進められていくことから、「科学」という字をつけることになりました。このことを最初に提案させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 実は長い議論の経緯がございまして、私もすべてについて把握しているわけでは全くございませんが、これまでの経緯を合わせて議論しておりますと、迷宮に入ってしまうというのがこれまでの経緯でございます。今、田代委員からご指摘がありましたとおり、この議論は大変積極的なメッセージを持った議論でもございますので、これを一体どの場所でもって議論できるのか、私にもよくわかりませんけれども、今回のこの委員会におきまして、重要な問題の1つとして議論することが可能なのではないかと考えております。よろしくお願い申し上げます。
 いかがでしょうか。はい、どうぞ岡本委員。

【岡本委員】
 では、最初のほうに発言させていただきたいと思います。というのは、私自身もこの委員会にご指名いただいたときに、私自身が学術の世界で育ってきた人間ではないわけでございまして、どちらかというと、ここで言うと社会とか政策に近い立場に身を置く者として、どういうことを貢献させていただいていいかが正直よくわからないままでちょっと発言をさせていただきたいと思います。
 それで、先ほどご説明の中で、資料2の中で、1ポツの3つの観点というのがございますということでご説明をいただきまして、私の立場からすると(1)(2)というのはすとんと落ちるような表現。どういうことをやっていったらいいのかはわかるんですが、(3)国際化と書いてあるところがどういう意味なのか、あるいはこういう言い方はよくないのかもしれませんが、どういう目的で国際化をしようとしなければいけないのかと考えていらっしゃるのかということがどうなのかなと。それで、下の2ポツの(3)を見ますと、どう言ったらいいんでしょうか。国際化をどういう観点で推進していかなきゃいけないかという強い推進力になるものがいまいちわからない。国際交流をしなきゃいけないのはそのとおりですし、ニーズにこたえなきゃいけないのもそのとおりでしょうけれども、ここで国際化というのは、どういう観点から考えなきゃいけないかということが、これまでの審議経過も当然おありになると思いますので、それをちょっともう少しかいつまんでご説明いただきたいということと、どういう意味から国際化を、特に人文学と言っていいのか、今のはちょっと失礼いたしました。人文学・社会科学のものを進めていくかというような議論があるかなと思いました。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 さまざまな問題について、さまざまな観点からご発言がございますが、これらにつきまして事務局からもいろいろ情報提供、あるいはお考え等々おありになるかと思いますが、一応皆様に見解等々をご発表いただいた上で、後ほど可能な範囲、必要な範囲内でお答えいただくという順番にさせていただきたいと存じますので、しばらく議論の展開をお待ちいただけますでしょうか。
 では、はい、伊井委員、どうぞ。

【伊井委員】
 前の平成21年の人文学及び社会科学の振興についてという報告の主査をしておりまして、これは随分かかってまとめたものでございました。ほんとうに何十人という専門の方々に来ていただいて、ヒアリングをしながら、人文学及び社会科学がどんなふうに日本において発展させていくのか、あるいは日本国内だけではなくて、世界的な共通の基盤の中で研究を推進していくのかというようなことを、随分議論をいたしました。そして、資料の2に挙がっているようなことが大体共通の認識として、その当時の委員の中には合意を得たところであったわけでございますけれども、これはある意味では繰り返していくんだろうと思います。絶えず同じ問題が繰り返し、繰り返しなされていく。むしろそういうことが大切なことだろうと思ってはいるんです。解決はできないだろうと思うんですね。
 前回のときには、キーワードとしましては対話ということを強く意識いたしました。対話というのは、いろいろなところで対話があるわけでして、その1つとして共同研究、あるいは異分野との融合、あるいは国際的な対話というようなことでの推進をしていこうという1つの提言であったと思うのです。
 ある意味では、科学技術というものであるのとは底辺では共通していくところがあるだろうと思いますけれども、科学技術というのは問題解決型でありまして、解決すれば次のステップへ進んでいくと。
 それで、人文学及び社会科学というのは、絶えずもとに戻ってまた考え直していくというところがあるわけで、蓄積型みたいなところがあるわけですが、そういう意味で、前回の提案を受けまして、多分文部科学省である程度予算をとっていただきまして、対話ということをテーマにして人文学の国際的な研究ということで、多分3チームくらい採用したと思います。各研究機関及び大学等は問題意識を持っていただいて、予算がとれなかったもありますけれども、こういう方針を国としては施策として絶えず考えていっているという認識を持っていただくことは精神的にも、物質的にも非常に支援になっていくのではないかと思っている次第です。
 この委員会でも、繰り返しみたいなところがあるのかもしれませんけれども、絶えずそういう問題意識を持ち続けて、みんなと一緒に考えていくという姿勢、そしてこれがどういう形で、今期の委員会においてまとまっていくのか今後の課題ですけれども、ぜひともそれを継続していただきたいというのが、前回主査を勤めた者としての希望ではあります。
 この点は、これからどういうふうに展開していくのか、委員長としてはいかがでございましょうか。

【樺山主査】
 明確な見通しを持っているわけではございませんが、既に経験をお積みの伊井前主査も含めまして、皆様方のご指示やあるいはご援助等々を受けながら進めていきたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、今のようなご提言あるいは見通し等々について、皆様からご発言いただきながら進めていきたいと存じますので、どうか積極的にご発言いただきたいと存じます。ありがとうございました。
 続きまして、いかがでしょうか。それでは、大竹委員。

【大竹委員】
 まず、基本的なことをお聞きしたいんですけれども、この委員会の目的というのは、今、伊井先生からご紹介があった平成21年度の報告の新しいバージョンをつくるというのが目的だと考えていいんでしょうか。それが1つ目です。
 それから、そのときの骨子となるのが、今日、この審議事項例として挙がっているものだと理解すればいいということなんでしょうか。
 その際に、最終的にどうあるべきかという資料2の1番のほうと、具体的な方策というのを議論するわけですけれども、具体的な方策で挙げたものは、将来どんなふうな形で文部科学省の政策に生かされていくのか。例えば社会科学系の、先ほど何か資料がありましたけれども、トップダウン型の、課題研究型の事業の設定をするということの指針になっていくというのが1つの例かもしれませんけれども、ほかに例えば大学評価のあり方とか、それから科研費の配分のあり方、評価のあり方ということに使われていくという、ちょっとここで議論して一体どうなっていくのかということを最初に教えていただければと思います。

【樺山主査】
 これらにつきましては、後ほど可能な範囲内で結構ですが、事務局から差し当たりの情報提供等をお願い申し上げたいと思いますので、ご準備いただけますでしょうか。
 では、ほかにいかがでしょう。金田委員、どうぞ。

【金田委員】
 資料2の審議事項例を拝見していて、これはいずれも審議を必要とする重要事項だと思うんですが、1つだけちょっと気になっている点がございます。それは、「社会の要請」と言っている「要請」とか「ニーズ」といったような話がたくさん入っていまして、どうも全体的にみんなトーンが受け身なんですよね。それが少し気になりまして、確かに2の具体的方策のところの(1)の例の真ん中に「独創的な」というのが1つ入っておりますけれども、何となくほかのところが受け身的な感じを濃厚に、ちょっと私がひねくれているのかもしれませんけれども、濃厚に感じてしまうものですから、もう少し積極的な役割、あるいは意義というものをきちんと打ち出すことができないのかと。あるいはそういうご意見を集積することができるといいなと思います。
 特に、先ほど冒頭に主査のほうからお話がありましたけれども、今回のような大災害ということになりますと、人が生きるか、死ぬかということがまずありまして、そういうときには私も人文学はとてもすぐには役に立たないなと思うんですけれども、生きるとなった途端にこれは意味のあることだと思いますので、もうちょっと根底の積極的な意義ということの認識を進めるような議論が加わっているといいなと思いました。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。鶴間委員、どうぞ。

【鶴間委員】
 私は中国の古代史とか、文明史をやっていますものですから、この1、2、3と挙げられてきたものは、これまでも踏まえてやってきたわけですね。ですから、おそらく人文学、あるいは人文科学・社会科学の先生たちは、日本をしっかり研究しなきゃいけない。そして、また社会の要請にこたえなきゃいけない。国際化というのは、当然もう10年、20年前からやっていることなんですね。ですから、それをこれからどうするかというのは、かなり具体化して提言していかないといけないのかなと。
 この日本学術振興会のほうで、「人文学・社会科学における課題設定型研究推進事業」という資料の3がございますけれども、この3ページ目ですか。私も応募したことがあるんですが、例えば異分野融合というのは、これはもう人文学・社会科学というのを超えて、自然科学と人文系というのは一緒に研究していかなきゃいけないという方向なんですね。それで、私自身もそれをちょっとやっているんですが、そういう方向が出てきている。
 それから、「国際共同に基づく日本研究推進事業」というので、ちょっと具体的にはわかりませんけれども、こういう個々のものは具体的に動いているので、それが「平成24年度統合」と書いてありますけれども、そういうものも新しい時代にこたえてさらに次の段階に行くということが、何か我々に求められているんでしょうかという質問です。
 それから、ちょっと細かいんですが、1の「欧米の研究紹介ではない」というのは、これも意味がわからないんですが、日本をしっかり研究するということは大事なんですけれども、我々外国の研究をやっている場合に、外国のことをやるのは決して向こうの現地の人たちの紹介ではなくて、むしろ現地の人たちと同等に、あるいは日本人だからできる研究というのを現地で一緒にやっていくということが我々の目指しているところでありますので、日本のことをやることが大事というよりは、むしろ日本を含めた地域世界、あるいは世界のことをやっていくことが大事だというので、1番の「欧米の研究紹介ではない」という言葉がどういう経過で出てきたのか、ちょっと疑問に思いました。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。

【小安委員】
 よろしいですか。

【樺山主査】
 はい、小安委員、どうぞ。

【小安委員】
 自然科学をやっている者として、ここで何を貢献できるかと常に考えております。最初にこのお話をいただいたときに、この委員会がそもそもどうしてできたのかということが気になりましたが、といっていただいた資料を見るしかありません。すると、いただいた「学術研究の推進について」を踏まえて、ここに書いてあるのを読みますと、「社会事象の省察、既存の社会システムへの批判や新たな制度設計の提示を行う人文学・社会科学の振興のあり方について調査する」と書かれていて、それだけ読んでもちょっとよくわかりません。人文学あるいは社会科学、余談ながら私も「人文科学」とどうしてならないのか昔から疑問に思っていたので、先ほどの田代先生のご提案は非常に納得がいきました、これらを推進するために何か問題があったためにこの委員会ができたんだろうと、考えました。
 伊井先生がおまとめになった最初の第一章を見ると、水準に関する課題と、細分化、社会との関係と、こういう問題提起をされて、これらをどういうふうに解決するかということのために、提言がまとめられたのではないかと、私なりに流れを見ております。こうやって読んでいくと、政策や社会の要請にこたえるというところから、課題設定型の研究課題というものが提案されているという印象を持ちました。
 すべての学問というのは個別にその人が何をやりたいか、その人の問題意識に基づいて課題が設定され、それで解決に向かってやっていくのがスタートだったと思います。おそらく人文学においても、あるいは社会科学においてもそうであったと思います。それがあまりよろしくないととらえて、全体で何か課題を設定して、そっちに向かってみんなの英知を結集しようという方向に行こうとしているのでしょうか。
 例えば、私たちの分野の自然科学ですと、課題設定型と対極にあるのは、科学研究費補助金です。これは、私なら私がやりたいことがあって、そしてそれを提案して、審査していただくという形になります。逆に、それこそ文部科学省のライフ課あたりから出てくるものは、こういう問題を解決したいからそれに対して皆さん力をかしてもらえませんかということをやるわけですね。
 このような対極的な制度があって、その中を私たちは場合に応じて研究の方向を考えておりますが、人文学、あるいは社会科学においても、課題設定型いわばトップダウン型みたいなものをもう少し振興したほうがいいのではないかということをお考えでこういう方向ができたのでしょうか。ここを私はぜひ知りたいなと思いました。
 それによって、今後どういう方向で議論していくかということが、少なくとも私にとっては参加させていただく場合に、かなり重要な観点になるような気がしました。それをまず最初に感じたということを申し上げさせていただきたいと思います。

【樺山主査】
 ありがとうございます。今の件について、どうぞ。

【伊井委員】
 よろしいですか。

【樺山主査】
 はい。

【伊井委員】
 今の件ですけれども、私の知っている限りは、科学研究費というのは、自然科学も人文・社会科学も基本的にはすべて共通していると思います。個人の独創的な研究共同の場合もありますが、科研費というシステムで研究されており、トータルとしましては現在充実をしている方向だと思います。
 しかし、人文学・社会科学におきましては、自然科学もそうでしょうが、きわめて細分化してしまってきていると思います。もう少し自然科学の巨大な科学に対抗して、人文学・社会科学も大きな国家プロジェクトなり、国際的な連携が必要ではないかというものが発想の根本にあるんだろうと思います。だから、個人の研究、あるいは独創的な研究、あるいは社会から異端視されるような研究は科研費に申請し、どんどんやっていただく必要があります。
 それとは別個に、もっと大きな対話というもの、あるいは共同研究というものは、どうしても人文学は不得手なものですから、そういうことも支援しましょうよということで、多分発足したのではないでしょうか。だから、すこし視点が違うところだろうと思っておりますけれども、違っているかもしれませんが、大体そういうことだと私は認識しておりました。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 それでは、小谷委員、どうぞ。

【小谷委員】
 私も自然科学・数学が専門ですので、ここの委員会で私がどのような役割を果たせるのかということを考えながら、皆様のご意見を聞いていました。
 それで、小安委員と似たような印象を持っております。こちらにある研究推進事業の表等がございますが、今までまとめられたものを基に、そこからこの委員会が何を最終的な目標にしていくのかということが、まだうまく把握できておりません。平成21年1月20日にまとめられた報告をまだ全部読ませていただいていないのですが、おそらくこれを踏まえ、先に進めていくことかと存じます。
 私は理系と申しましても、数学が専門ですので、人社とも問題を共有する事柄もあり、ここに書かれていることがどういう動機、どういう問題から発生しているのかがなんとなく推察できるところもあります。ですが、やはり小安委員が言われたように、この委員会で今後議論を進める上では、何どういう問題や背景にあってこれが書かれているかということの、例えばデータ等がもう少しありますと、この報告書をつくったときにいない人間にも、何が問題にされ、何が求められているのかというのがわかり建設的に議論が進められるのではないかと思います。
 例えば、ここに書かれている、科研費等に関する問題、それから大きな社会課題に関するプロジェクト、人材育成、細分化、いろいろな評価の問題ですね。数学分野でもわりと共通した問題がありますので、背景がわかるんですが、数学分野ではこれらのことに関しまして、データをベースとした提言を作っております。そういう感じのものがありますと、具体的に問題をブレイクダウンしていくことができて、この報告書に基づいて先に進めるのではないかなと思いました。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 ほかに自由にご発言くださいませ。いかがでしょうか。はい、池田科学官、どうぞ。

【池田科学官】
 私も大竹委員とか、あるいは今、ご発言の小谷委員とも関連するんですけれども、やはり評価の問題というのは非常に大事だと思うんですね。それで、例えば人文科学、あるいは社会科学の振興、発展をどうして達成するのかと考える場合には、やはりちゃんとした評価のあり方というものを設定することで非常に効果が上がってくると思うんですね。
 この会はそうしたことまでデザインして、今後、高等教育、研究を振興する上で反映していただけるのかどうか。そこまで我々はここで議論していくのかということ、その辺をちょっとお聞かせいただければと思います。

【樺山主査】
 事務方から後ほどまたお答えいただきますが、今のご発言です。ここにございます審議事項例は、あくまで審議事項例でございますので、これまでのさまざまな議論を前提にしながら、こういうことがあり得るという例示としてご理解いただきたいと。皆様、今日、ご発言いただきました事柄、あるいはそのほかを含めまして、この委員会で何が議論できるか、あるいは何を議論するか、必要であるかということはおいおいこの議論の中でもって考えると。
 したがって、今、お話がありました、評価の問題も含めた事柄が当委員会のマターであるか、ないかということは、これから私どもが考えると。私どもが考えたけれども、事務方からそんなことはやってくれるなという意見の食い違いがあるかもしれませんが、それはそのときにまた議論の詰めをさせていただくことで、私どもといたしましては、自由に問題を処理し、考えていきたいと、それが基本的な方向だと考えております。
 いかがでしょうか。加藤さん、どうぞ。

【加藤委員】
 私は政治学を専門としております。何を最初に申し上げていいか、迷いますが、資料を見ておりまして感じましたことは、幾つか完全に両立しない、矛盾する目標が掲げられているということです。
 実際に研究を行う上で、すべて資料に書かれている目標は重要なことであると思いますが、よく考えると両立しないものがあります。たとえば、資料2の2「具体的方策」の(1)の「学術的な役割・機能の充実」の一番最初に「研究の細分化を克服」と書いてありますが、これは国際的発信と必ずしも両立しません。英語で書く論文は細分化したものでないとほとんど査読雑誌にアクセプトされません。細分化の仕方が、もしかすると、日本と英文誌などで違っている可能性はあると思いますが、国際的な発信をすると細分化しないわけではなくて、特にキャリア形成の初めのころは、細分化しないと、国外でも論文が発表できません。
 そして、政治学の特徴ということで、私たちの分野の特徴を見ていただくには、資料6のところにあります政治学の部分が一番役に立つかと思いますが、ここに書かれているように、確かに政治学では、英語論文を書くインセンティブがありません。書く場合には、以前は完全に個人の動機づけのみによっていました。それがキャリアに役に立つというのは、最近まで殆どありませんでした。最近になりまして、査読誌にどれだけ論文があるかということが、評価の対象になってから、初めて多少のインセンティブが生じました。ただ、それをしないと、例えば就職ができないとキャリアに大変な不利益が生じるという状態にはまだなっていません。
 では、何をやっているかと言いますと、ここに書かれているように、例えば教育を重視してテキストを書くとか、あるいは社会的な貢献をするといって、専門的な論文でないものに時間を費やすということになっています。しかし、資料2にあります「具体的方策」の(2)の、「社会的貢献の推進」という目標から見ると、英語専門誌に投稿するより、そのようなことをする方が、社会的貢献をしているということになります。
 さらに言いますと、ここの(2)に書かれている「異分野との融合」ですが、これは明らかに、実は制度的にも組織的にも日本のほうが、例えばアメリカ合衆国と比べた場合にやりやすくなっています。ただ、やりやすい一方、やる動機づけがあまりないという状態ではないかと思います。
 ですから、すべて重要な目標なのですが、他の国の制度を見本にしてやった場合、犠牲になる目標もありますし、個々の目標を達成するためには、それぞれ違ったやり方で行うということになるのかなという感じがいたします。
 自然科学のことは、私はよく存じ上げませんが、自然科学の場合はやはり英語で論文を書くということがかなり標準化されておりますので、そこで何かいろいろな目標が両立するような形になっているという感じがいたします。人文・社会科学系のほうは、日本語で書くことも意義があるということも実際ありますので、なかなかうまくいかないのではと思います。
 まとまりのない意見で、申し訳ありません。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。はい、鶴間委員、どうぞ。

【鶴間委員】
 今、加藤先生のほうから、研究の細分化という話が出てきたので、私もこういうふうに考えているんですね。「研究の細分化を克服」といっても、研究の細分化が悪いことではなくて、基本的に人文科学では研究を細分化して、専門的な研究をしていないと認められないと。ただ、自分の分野だけで、狭い世界でとどまっていたら、これも通用しないと。
 だから、私どもが学生たちに指導するときには、歴史で言うと資料をしっかり読まなきゃいけない。その中でだれもやらないような資料をきっちり整理して結果を出すと。でも、自分の世界だけで論文を書いただけでは、それはおそらく数人というか、ごく狭い分野の人しか読まれないけれども、そうではなくて、近い分野とか、いろいろな人に読まれるような視点を持てと。
 ですから、「研究の細分化の克服」という、真の克服があるとしたら、自分の研究分野をしっかり深めた上で、いろいろな他分野の世界を知っていくということですね。ですから、この間、ちょっと私が疑問に思ってきたのは、例えば学際的な研究を最初から学生たちにやりますと、その専門分野がないんですね。そうすると、ある種専門的に資料を分析する能力、トレーニングというものをしていないものですから、どうしても広くなってしまって、それがほんとうにいい研究なのかなと思うんですね。ですから、専門的な細分化の研究を持った上で学際的な視点を持つべきだと思うんですね。
 ですから、「研究の細分化の克服」というのは、細分化を否定してはいけないということです。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。はい、瀧澤委員、どうぞ。

【瀧澤委員】
 多分、最後の1人になってしまったと思いますので。
 私もこちらにお声をいただいて、私自身はもともと自然科学、物理をやっておりまして、人文科学ですか、社会科学の分野に明るくないものですから、今さまざまなそちらの分野の先生方のお話を改めて聞いて、そういう学問の奥深さ、また大切さというものを改めてこの会を通じて感じていきたいなと思っております。
 それで、私自身は科学を一般の方々に発信するというのを一応テーマにしてやっておりまして、ただ自然科学を広く見た場合に、自然科学が発展していくにつれて、やはり人文学の知見を、助けをいただかなければ、それ以上先には進めないというところは非常に多くなってきているような感じがあります。
 例えば、地球温暖化の問題、それにどういうふうに対応していくのか。あとは、生命の問題ですね。広く生命の倫理的な問題も含めて、生物学ではいろいろな知識が集積されて、例えば死というものは何かといったときに、生物学的な理解というものは進んでいくんですけれども、果たしてそれが価値判断を伴って、どのように私たちが理解していけばいいのかといったときに、やはり人文学の助けがなくてはその先には進めないんだと思います。
 そういった意味で、社会的な課題というのは確かに存在して、私が今までの人文学・社会科学の課題というものを論じられるほどその分野について精通しているわけではありませんので、あくまで科学的というか、社会的な科学をまたいだようなテーマでこのような課題があるのではないかということについて、一緒にご議論させていただければいいなと感じております。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 初めに「少なくとも1回は」と申し上げましたのは、少なくとも1回でありまして、何回ご発言いただいても一向に構いません。時間の制約の範囲内でもって、いくらでもご発言いただきたいと存じますので、ほかにご発言ありませんでしょうか。
 それでは、まだご発言あろうかと思いますが、ちょっと間を置きまして、今、事務方についていろいろとご質問等もございました。当委員会のミッションがどこにあるかということ、あるいは全体としてこれまでどういうふうに議論してきたかということも含めまして、事務方から必要な範囲内でもってご説明等々いただけますでしょうか。どなたでも結構です。
 それでは、室長、お願いします。

【田中学術企画室長】
 失礼いたします。
 まず、大竹先生をはじめ、多くの先生方からご意見をいただきました審議事項例、あるいは今後の進め方ということでございますが、まず伊井先生からもお話がございましたように、第4期の学術分科会におきましては、人社委員会を設置して、人文・社会科学の振興に関する報告をいただいたところでございます。
 ただ、第5期の学術分科会におきましては、学術全体の振興策の中で、人文・社会科学についてもご議論をいただいて、審議経過報告の中で一部提言、ご指摘はいただいておりますが、人文・社会科学の振興に絞ったご審議、あるいはご審議の取りまとめというものは行われていなかったところでございます。
 そうした中で、この第5期におきましては、伊井先生のほうからもご指摘がございましたように、人文・社会科学の振興を議論すること、あるいはその議論を踏まえて振興を図ることの継続性の必要性ということを踏まえて、本委員会を立ち上げさせていただいたところでございます。
 そうした中、この委員会でご審議いただくに当たりまして、これまでの第4期、あるいは第4期の人社委員会、あるいは第5期の学術分科会の審議経過報告から考えられる審議事項例というものを事務局のほうでまとめさせていただいたところでございまして、これに足りないところ、あるいは適切でないものなどについては、今日もご意見をいただいておりますが、ご意見をいただいて、今後の審議に反映をさせていただきたいと思っております。
 例えば、池田科学官のほうから評価というお話もいただきました。現在の審議事項例の中でも、2の(2)のところで社会的な役割・機能のところにつきましては研究評価の改善、これは課題設定型事業などを念頭に置いたものでございますので、そうした課題設定の事業ということであれば、その課題に対してどう貢献したか、そういった評価の充実というものは、事業の改善という観点からも必要であろうということで明記しております。
 それに加えまして、例えば(1)の視点でございます人文学・社会科学そのものの発展の観点から研究評価がどうあるべきかと、それは人文学・社会科学の特性を踏まえるということもございますでしょうし、あるいは人文学・社会科学のさらなる発展の観点から、こういう事業関係、あるいは政策や社会の要請とは別に、人文学そのものから評価をどう考えるかということも検討事項としてはあるのではないかなと思います。そういったご意見をいただきまして、今後の審議にも反映をさせていきたいと思っております。そして議論のスタートといたしまして、今回、資料2を用意させていただいておりますので、きょうのご意見、さらには次回以降もご意見をいただきまして、それを審議に反映していきたいと思っております。
 それから、岡本委員のほうから話がございました国際化というところにつきましては、第5期の学術分科会の議論をご紹介させていただきますと、資料番号4の、5ページの一番下の丸のところ、「また」以下で国際化ということについてご指摘をいただいております。かいつまんで申しますと、1つはグローバル化が進む中で、あらゆる研究分野において研究協力を推進するということが求められていると。あるいは、この審議経過報告自体には書かれておりませんが、第5期の学術分科会の議論の中では、学問的な研究協力だけではなくて、さまざまな経済的な協力、あるいは国際貢献を含めて、さまざまなグローバル化の活動の中で、人文・社会科学の役割、例えば地域研究などにおきます相手の国の文化ですとか、社会的な基盤を理解するということ、そういったものは、人文・社会科学の分野、あるいは学問的発展だけではなくて、さまざまな研究分野、あるいは研究だけではない、経済協力などの面でも必要であるというようなご議論があったところでございます。そうした、さまざまな学問分野、あるいは研究以外の分野における国際化のためにも、人文学・社会科学の機能の発揮が必要であるといったこと。さらに、そのためにも、人文学・社会科学そのものの国際化も重要であるといったご議論をいただいて、このようなご提言をいただいているところでございます。
 そういったことを踏まえますと、審議事項にございます国際的な役割・機能、4点掲げておりますが、1つが(1)、(2)にございます人文学・社会科学の学問的な発展のためにも、あるいは政策や、社会からの要請の対応のためにも国際的な活動の促進が必要だというような考え方でございまして、そのためには、我が国に求められているニーズ、これは2つあると思います。学問的なニーズというものと、それから学問以外の分野におけるニーズ、2つあると思いますが、そうしたニーズを把握して発信、あるいは貢献をしていく必要があると。そのためにも3番目、4番目のポツにつきましては、人文学・社会科学そのものの国際化、あるいはその成果の活用というものを図っていく必要があるということでまとめさせていただいたものでございます。
 この点につきましては、まだ足りない、あるいは具体性がないということにつきましては、先ほどご説明させていただきましたように、これまでの審議の状況をまとめて、審議事項例の案として出させていただいたものでございますので、足りない点、あるいはこういうものが必要ではないかということについては、ご意見をいただければ審議に反映をさせていただきたいと考えているところでございます。
 それから、特に大竹先生のほうから話がございました、報告をつくるのが目的かということにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、継続性という観点からご議論をいただきまして、そこでの審議の結果というものを、今期におきまして、何らかの形でまとめたいと考えております。そのスタートといたしまして、このような審議事項のつくらせていただいたところでございます。後ほどまた別途説明させていただきますが、資料3に用意しております課題設定型推進事業につきましては、当面、平成24年度概算要求ということもございますので、別途資料を用意させていただいておりますが、この資料2で用意させていただいております審議事項につきましては、この期の間にご議論いただきまして、そこで提言いただいたものにつきまして、さまざまな施策に反映させていきたいと考えているところでございます。
 それから、小安先生のほうからトップダウン方式ということのお話がございましたが、先ほど伊井先生にお答えいただいたものが、まさに平成21年の報告書の趣旨でございます。一方で第5期の学術分科会におきましては、資料4の2ページに、今後の学術研究の振興の方向性ということが上段にございます。これは人文・社会科学のみならず、学術研究全般について方向性をお示しいただいたものでございますが、主に2点書いておりまして、1つが研究者の自主性と研究の多様性の尊重は、社会や時代の変化にかかわらず不可欠の前提・原則であると。そして2ポツ目でございますが、その上で、国際的な存在感の発揮や発展のためには、戦略的な視点を持って学術研究の振興を図ることも重要な課題であると。
 すなわち、学術研究の特性でございます研究者の自主性、あるいは学術研究の目的でございます多様性の確保ということについては、社会や時代の変化にかかわらず不可欠の前提・原則であると。ただ、社会や時代の変化に対して、我が国の発展を図るためには、学術研究においても戦略的な視点を持った取り組みというものも必要ではないかというご指摘、ご提言をいただいているところでございます。そうしたことも踏まえますと、また、先ほど伊井先生からご説明いただいたことも踏まえますと、人文・社会科学におきましても、科研費などによりまして研究の多様性を確保していくこと、あるいは多様な研究の芽をはぐくんでいくということ、そういったものは必要であるという上で、それプラス人文学・社会科学の貢献と、社会的な貢献という観点から課題設定型事業をはじめといたしまして、社会的な役割・機能の充実としてどのようなものが考えられるかということになるのではないかと考えております。
 そうした観点から、審議事項例におきましても、まず、1番目といたしまして学術的な役割・機能の充実、すなわち、これは多様性の確保も含むと思いますが、人文学・社会科学そのものの振興というものを掲げさせていただいた上で、2番目といたしまして、社会的な役割・機能の充実ということを提示させていただいております。この両者の観点から求められるものとして、国際的な役割・機能の充実ということを掲げさせていただいているところでございます。そのような考え方で、この審議事項例は作成させていただいているところでございます。またこの観点、あるいは具体的な例、審議事項につきまして、ご意見などにつきましては、引き続きいただきまして、今後の審議に反映させていきたいと考えているところでございます。
 説明は以上でございます。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 今の最後の点でございますけれども、申し上げるまでもございませんが、これは審議事項例でございますけれども、これまでの分科会、委員会等でもって議論されたところに基づいてここまで議論いたしましたけれども、今回、今期、新しい形でのさまざまなご提言、あるいは議論等も可能かと思っております。これは次回以降でありますけれども、機会に応じまして、それぞれ自由にご発言をいただきまして、可能な範囲内でもってそれを生かすことができればと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上、事務局の方からご説明いただきましたけれども、多少時間の余裕がございます。いま少し、ご発言等がありましたら挙手をお願いします。
 小安委員、どうぞ。

【小安委員】
 今伺った中で、人文学・社会科学の国際化というのが1つのキーワードとして出てきました。ここの議論のまとめはある意味提言のような形になるのではないかと思いますが、このような問題を、こういうふうにしたら良いのではないか、ということは言えると思います。しかし、それを文部科学省として振興するのであれば、最終的にはそこに研究費という形で予算が出るということが、まさにサポートになることだと思います。そういう施策に生かしていくためのアイデアをここで出してほしいというようにも聞こえたのですが、それでよろしいのでしょうか。
 それからもう一つ、私、昔から非常に疑問に思っていることで、どこで議論したらいいかわからないから、ここでその議論が可能なのかどうか伺いたいのですけれども、科学研究費補助金にはいろいろな種目がありますが、人文学から医歯薬学まで、すべて、同じ種目は同じ額ということになっています。
 ところが、人文・社会科学の先生方とお話をしていると、「私達はそんなに要らない」、半分でいい、あるいは3分の1でいい、それよりも件数が多いほうがいいとおっしゃいます。それは、極めて理にかなったご意見だと私は思います。例えば、この分野はこういう総学の範囲で件数を増やしましょうとするだけでも、私は非常にサポートになると常々思っているのですが、例えばこういうことをここで議論してもいいのか、そういうことを提言して、システムを変えることができるのであれば、これは人文・社会の先生がどうお考えになるかということをもちろん伺ってからですけれども、このような点も1つのテーマになるのかではないでしょうか。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 かなりデリケートな議論も含めてご発言をいただきましたが、何か機会があればここで議論したいと思いますが、まず差し当たりは、この件につきまして、事務方から可能な範囲内でもって情報提供いただけますでしょうか。

【永山振興企画課長】
 本委員会でのご議論の結果、成果というのは当然、おっしゃったような、文部科学省の施策に反映させるということは1つございます。ですからそのためだけという、狭く限定するということではありませんでして、議論として幅広く、あまり制約を設けずにご意見をいただいて、その中で施策に使えるものがあれば使っていくということになろうかと思います。ですから、必ずしも施策に結びつかなくても、文科省が社会に発信をするとか、あるいは関係者に提言をするとか、いろいろな形での活用の仕方というのはあるのかなという中で、実際の施策に結びつくというものも、ひとつ期待しているところではあろうかと思います。
 それから、科研費の話は別の部会がありますので、そこでの議論が直接的には影響するということになろうかと思いますが、これも、この委員会での議論を、何らそこについて制約をするということではないかと思いますから、自由にお出しをいただいて、必要な範囲で、適切な範囲で、私どもなりに、そこを関係のところに伝えるといったことも可能かなと。いずれにしても議事録としては残りますので、何らかの形で生かせるものは生かしていきたいと思っております。

【樺山主査】
 課長の今のお答え、私どもとしても大変勇気づけられるところがありまして、役に立たないとか、そんな議論をしても始まらないという、そういう反応はあり得るかもしれませんけれども、私たちといたしましては、乱暴な議論も含めて、どこかで発言したいことがたくさんございます。この場所でもって、議事録にとどめる形での発言もございますけれども、どうか、可能な範囲内でもって自由に活かしていただきたいということでもって、皆さん、こんなことをこの場所で言ってはいけないというふうにお考えにならずに、自由に発言することにいたしましょう。発言の場所が違うということであれば、その旨、そういうご返答もあり得るかもしれませんけれども、私たちといたしましては、人文学及び社会科学の発展のために考えている事柄でございますので、その趣旨でご理解いただければと思います。よろしくお願いします。
 大竹委員、どうぞ。

【大竹委員】
 今の議論と関係することなんですけれども、こういう、人文学・社会科学の課題というふうに挙げられた点というのは、なぜ自然科学で課題になってこなかったかというと、多分、自然科学は研究するのにお金が必要で、それを獲得するために、社会の要請にこたえることを提案して、トップダウン型のお金を取ってこなきゃいけないというのがあったと思うんですが、小安委員おっしゃったとおり、人文・社会科学系は、お金はあまり要らないと、科研費の場合は、例えば特別推進とか、格の高いのをとれば評価が高いという意味で、もう少し少額のものにして配分件数を増やしてほしいというような意見があった。
 それで言うと、ここでこういう課題を、人文・社会科学の問題点を解決するために、研究費を配分することを幾ら変えてもあまり変わらないです。なぜこういう問題が起こったかというと、お金が必要なかったから、社会からお金を取ってくる必要がなかったというのが問題なので、研究費の配分方法を少々変えたところで、多分、あまり変わらないと思うんです。やはり一番は、大学のポストをどうするかという形で、やはりポスト配分のところに影響していく。そこの評価にどう影響するかということに持っていかないと、こういう課題解決をするような研究者を育てる、あるいはそういう研究が推進するという方向には行かないというのが人文・社会系の難しいところだと思うんです。
 それから、もちろん人文・社会系でも、多額の研究費が必要になる分野というのは、データを構築したりするという形で増えてきている。そういうところで研究費の配分をすれば、もちろんそういう研究は推進できるのですけれども、そうでない分野のたくさんの分野というのがあって、そこを推進するための方法というのは、短期的にお金をどうするかというところでは、多分解決できないと思います。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 それでは、ちょっと時間の制約もございますので、伊井委員の発言でもって、とりあえず切らせていただきます。どうぞ、ご遠慮なく。

【伊井委員】
 今までまとめられたと思うのでありますけれども、私もかつて所属しておりました日本学術会議の分科会において、自然科学というのは、これは当然のことながら国際化せざるを得ないし、そのものが国際的になっているわけでございます。予算の規模も大きいし、そして他の省庁及び企業からもお金が出ると。
 それに対して、その会議の中で人文・社会科学というものは、どうしても狭い分野でしかないし、国際化になり得るところもあるのですけれども、日本としてどういうふうに発信するかということが、非常に、極めて視野の狭いものにならざるを得ないところがあり、どんどん細分化をしてしまいますだけに、評価されにくいということもあり、科研費とは別個の形で予算を取ろうというのが発想のもとであったと思うんです。だからこの場においても、人文学というものを、結果としてそれが施策において予算化されますと、我々にとってはありがたいし、むしろそれを継続していただきたい。そして継続して、絶えず文科省のもとで、人文学・社会科学というものが、国民の福祉、あるいはさまざまな研究分野にとり非常に重要であるということを認識していただき予算化を図っていただく、我々が、いろいろな施策の提言をすることによって、それを受けて、予算化の推進をぜひお願いをしたいと思っています。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 そういうことでございまして、ぜひとも、委員の方々、さまざまな形での提言をいただくと。この委員会のマターではないという議論もあるかもしれませんけれども、私どもといたしましては、現場の研究者でもございますので、さまざまに可能なこと、必要なことについて、この場でもって発言を続けていきたいと、そんなふうに考えておりますので、ご配慮のほど、よろしくお願い申し上げます。
 この議論をやっておりますと、楽しいことがまだたくさんあるのですが、時間的な制約もございます。今回の全般的な審議事項については、差し当たり、このあたりでもって一区切りとさせていただきたいと存じます。皆様のご意見を、事務局において整理した上でもって、今後につき、方向性を探っていきたいと思います。
 実は本日、もう1件ご検討いただきたい点がございます。残りの時間でございますが、今後の概算要求とも密接に関係しておりますので、当面の検討事項であります資料3、人文学・社会科学における課題設定型研究推進事業の改善について(案)というのがございます。この件に付きましてご意見をいただきたいと存じますが、まずは事務局から、これにつき資料の説明をお願い申し上げます。

【田中学術企画室長】
 失礼いたします。それでは資料3をごらんください。
 まず、課題設定型研究推進事業の改善についてということで、1、2ページにその案をつけさせていただいておりますが、まず、課題設定型研究事業の前提といたしまして、これまでの事業などについて、その後ろに参考資料をつけさせていだいておりますので、まず、そちらのほうを簡潔に説明をさせていただきたいと思います。
 まず2枚目、1ページでございます。これは、これまでの人文学・社会科学における課題設定型研究事業を一覧にさせていただいたものでございます。青の矢印となっておりますのが日本学術振興会の事業、そして、赤の矢印となっておりますのが文部科学省の委託事業でございます。まず、上のほうでございますが、日本学術振興会の事業といたしましては、平成15年度から平成20年度にかけまして、現代社会の問題に、学融合的に取り組むことを趣旨とした人文・社会科学振興プロジェクト研究事業が行われたところでございます。
 さらに平成21年度からは、異分野融合による方法的革新を目指した人文・社会科学研究推進事業といたしまして、異分野の研究者との共同研究による人文・社会科学における学問体系のブレークスルーを目指した事業を実施しているところでございます。これは矢印にございますように平成23年度までということで実施をしております。平成23年度以降につきましては、中間評価を実施した上で、その上で必要なものについては、継続も検討するということになっているところでございます。
 一方、下の3つでございますが、文科省の委託事業といたしましては、平成18年度から平成22年度にかけましては、世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業ということで、我が国にとって重要な地域、アジア地域を中心といたしまして、地域研究を委託事業により実施してきたところでございます。
 2つ目のところでございますが、平成20年度から平成24年度の5年間にかけましては、社会経済システムの設計という観点から、近未来の課題解決を目指した実証的社会科学研究推進事業を実施しているところでございます。
 一番下でございますが、人文学・社会科学の国際化という観点から、平成22年度から3年間の予定で、国際共同に基づく日本研究推進事業、これは日本研究に関します国際共同研究の推進ということを、国際的な発信も含めて推進するという観点から実施をしているところでございます。
 そして、2ページと3ページにかけましては、ただいまご説明させていただいたもののうち、現在実施をしております事業につきまして、概要の資料をつけさせていただいております。2ページは、日本学術振興会で実施しております異分野融合による方法的革新を目指した人文学・社会科学研究推進事業でございまして、その事業目的にございますように、異なる分野の研究者による共同研究を進めることによって、人文・社会科学にブレークスルーをもたらすことを目的に実施をしております。下のほうの「平成22年度」という欄にございますように、例えば「脳科学と政治学の融合」、あるいは「経済学と物理学の融合」といった形で、異分野の共同研究により、人文学・社会科学のブレークスルー、いわゆる学問的発展を目指そうということを趣旨としている事業でございます。
 一方、3ページ目の文部科学省の事業として実施しております事業につきましては、政策や社会の要請にこたえるために課題を設定して、委託事業を実施しているというものでございます。その研究領域のところにございますように、大きく分けて2つ、社会経済システムの設計ということで、研究領域1といたしましては社会経済制度の設計、研究領域2といたしましては雇用システムの設計ということにつきまして、その下に、それぞれ2つずつ実施課題を設けて実施をしているところでございます。
 また、右のほうでございますが、国際共同に基づく日本研究推進事業につきましては、実施課題のところにございますように、3つの課題について委託事業によって実施をしているところでございます。
 そして4ページ、5ページにかけましては、一番最初のページで紹介させていただきました、これまでの課題設定型研究事業の趣旨・目的などを整理させていただいたものでございます。特に5ページの一番下でございますが、「新規公募等」という欄でございます。課題といたしましては、そこの下にございますように、新規公募が1回、あるいは多くても2回という状況でございまして、すなわち、新たな事業を立ち上げて、その際に公募をするということにとどまっているという状況でございまして、こうした中で、事業の趣旨・目的を実現するために、継続性をどう確保していくかということが課題になっているということでございます。そして資料の6ページ以降は、それぞれの事業の具体的な採択課題をつけさせていただいておりますので、こちらについては後ほどご参照いただければと考えております。
 その上で、最後のページでございますが、13ページをごらんください。13ページは行政刷新会議の事業仕分けなどにおきまして、競争的資金制度の見直し、特に競争的資金の大括り化ということが指摘をされております。そうした中で、平成23年度以降の文部科学省関係の競争的資金制度の見直しの方向性について、整理をされているものがこのペーパーでございます。左側の上から5つ目の四角囲いでございますが、そこに7つの事業が掲げられております。その中の一番下でございますが、「政策や社会の要請に対応した人文・社会科学研究推進事業」につきましては、他の6つの事業とともに、大括り化という観点から、右にございます国家基幹研究開発推進事業として大括り化をするということが示されております。具体的には、平成23年度におきましてはこの国家基幹研究開発推進事業という傘の中で一本化が図られているということでございます。ただ、平成24年度以降のあり方は引き続き検討することが必要であるということとされているところでございます。そういった、ただいま説明をさせていただきましたような状況を踏まえまして、整理をさせていただきましたものが、お戻りいただきまして、資料3の1ページ、2ページでございます。
 まず、1ページの1の現状と課題につきましては、ただいま説明させていただきましたとおり、平成15年度以降、課題設定型事業を行ってきたところでございますが、新規公募が1回限りの状況が続くなど、人文学、社会科学の振興を進める枠組みが必ずしも定着していない状況にあると。一方で、行政刷新会議の事業仕分けにおける競争的資金制度の大括り化という方向性を受けて、平成24年度以降の競争的資金制度のあり方を検討することが必要になっているという現状と課題を記述しているところでございます。
 1にそうしたことを踏まえまして、2でございますが、事業改善の基本的な考え方ということを整理させていただいております。まず最初の3行につきましては、これは先ほどの説明の中でも、多様性の確保と、それから戦略的な取り組みの推進という2つの方向性が、学術分科会の第5期の審議経過報告で示されているところでございますが、そうしたことを踏まえましても、科研費等によります学術研究の多様性の確保とともに、人文学・社会科学分野においても課題設定型の研究推進の枠組みは必要であるということを掲げております。
 その上で、第5期の学術分科会の審議経過報告におきましては、課題設定型事業の目的の明確化や実施手法の工夫も含めた改善・充実が指摘されているということも踏まえて、改善を図る必要があるということで、具体的な方向性をその下に示させていただいているところでございます。
 まず(1)の事業の統合ということにつきましては、これは競争的資金制度の大括り化というような方向を踏まえた上で、課題設定型事業の持続的な実施・定着を図るためには、文科省の内局事業については日本学術振興会の事業と統合して、事業の継続性とともに、事業のメニュー化を図っていくことが必要ではないかということを、まず掲げさせていただいております。
 その上で2ページでございますが、課題設定型事業の改善・充実の観点ということで、4点ほど掲げさせていただいているところでございます。
 まず、1でございますが、課題設定スキームの検討ということで、この課題設定、あるいは課題解決ということにつきましては、第4期の科学技術基本計画におきましても、分野を指定した重点化から課題解決型への重点化という方向性が示されているところでございます。また、学術分科会の基本問題特別委員会におきましても、これは政策や社会の課題ということではなくて、学術振興上、学問上の課題ということでございますが、学術振興上の課題といったことについて、現在、検討が行われているところでございます。そういったことも踏まえまして、課題設定の仕組み、課題設定の充実ということについて検討することが必要であるということを、まず1点目として掲げております。
 そして2点目といたしまして、2でございますが、応募要件等の検討ということで、課題設定型事業におきまして、そこで掲げられた課題解決への貢献のみならず、課題解決に必要な研究の細分化の克服や国際化の推進、いわゆる人文学・社会科学の研究のあり方の改善、あるいはプロセスの改善、そういったことも必要ではないかと。そのためには、「このため」以下で書いておりますような、課題設定型事業の目的も踏まえた要件というものを、応募要件、あるいは審査基準に具体的に設定することが必要ではないかということを掲げているところでございます。
 3番目につきましては、評価の改善ということでございまして、特に、政策や社会への貢献という課題設定型事業の趣旨を踏まえますと、例えば研究者以外の実務者などの中間評価への積極的な参加、あるいはメディアを含めました社会への成果発信の取り組みを評価する仕組みの構築といったことを検討することが必要ではないかということを掲げているところでございます。
 また、最後の4でございますが、課題設定型事業の趣旨を踏まえれば、成果発信の改善、特に成果の発信といたしまして、ステークホルダー、また、地域研究で申しますれば、国際的な活動を行っている団体、あるいは企業などの関係者も含めました、そういった実際に成果を活用する側も含めた、ステークホルダーも参加した事業報告会を実施するなど、成果の発信の充実について検討することが必要であるということを4点目として掲げさせていただいているところでございます。
 資料3、課題設定型事業についての説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【樺山主査】
 課題設定型研究推進事業に関する、現段階での取りまとめと今後の方向性についてご議論いただきたいという趣旨でございます。資料3、そのように読ませていただきます。
 今、ご説明がございましたが、つまり、以上のようなご説明を今承りまして、ああ、そうですかとお聞きすればいいのかな。そうではなくて、いや、そうではあるけれども、ここをもう少し考え方を変えてほしいという、そういう発言を必要とするのか、どういうことでしょうか。

【田中学術企画室長】
 一つは、基本的には本委員会は資料2にございますような事項を、人文・社会科学の全般についてご審議をいただきたいと考えております。ただ当面、平成24年度の概算要求に向けまして、特に競争的資金の大括り化というような動きもございまして、そうした中、この課題設定型事業の方向性ということにつきましては、この委員会におきましてもご意見をいただきながら、早めに文科省としても方向性を決めたいと考えております。
 そうした中で、競争的資金の大括り化という方向性は既に決まっている状況がございまして、それを踏まえて、単なる大括り化に終わらせないために、どのような、継続性も含めました事業の改善が図られるかということについて、特に2ページの(2)というところでまとめたということでございます。
 ですので、この大括り化に当たりまして、人社事業全般の振興方策については今後ご議論いただくわけでございますが、大括り化に当たって、人社事業の改善・充実に必要な観点、あるいは取り組みなどにつきましては、この場でもご意見をいただいて、文科省としても、いただいた意見を平成24年度の概算要求において、大括り化に伴う事業改善の中で検討していきたいと考えているところでございます。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 以上のようなご説明でございまして、そのように理解いたしました。特に今回、これについて特定のいろいろなご議論をいただきたいのは、既に5月でございまして、本年度、実は通常よりも少しいろいろな手続がおくれているのは、主には地震の影響ということがございますけれども、既に5月に入っておりまして、できればこの段階、あるいは近い段階で、それぞれ皆様方、ご意見があれば申し述べていただきたいという趣旨だと理解いたしております。
 今のご説明でございますが、何かこれにつき、ご意見、あるいはご質問等ございませんでしょうか。自由にご発言ください。
 岡本委員、どうぞ。

【岡本委員】
 すいません、当たり前の話かもしれませんが、素朴に疑問に思うのは、見直しがなぜ大括り化ということにつながるのか、あるいは、大括り化はしたけど単なる大括り化に終わらないために、なぜそこでまた改善をしなきゃいけないのかという、その辺の、基本的なことかもしれませんけれども、見直しイコール大括り化というのがよくわからない。あるいは大括り化になって、何がどう変わるんですか。例えば予算要求、あるいは使うときに、その辺を具体的に教えていただきたいなと思うんですが、あるいは金額は変わるんですか。

【樺山主査】
 そうですね、これらを含めて事務方からご説明いただきましょう。

【永山振興企画課長】
 競争的資金の大括り化というのは、私どもというよりは、むしろ行政刷新会議の事業仕分けで言われて、指摘があったということで、私ども、いろいろやりとりの中でしんしゃくをするに、1つは、あまりに細分化されていると、世の中にわかりにくいというのが1つあるのかなと。それから細分化されていることによって、資金の弾力的な使用というのができにくくなるのかなと。研究者のほうもわかりにくいということに加えて、かえっていろいろな制約が出てくるんじゃないかというようなことではないかと。
 ただ、私どもとしては、細分化は一長一短がありまして、やはりある程度事業の目的を明確にして、それに従った事業をそれぞれ立てていくということのメリットもあろうかと思ってはいたわけで、そういう主張もしたわけですが、結果として、そういう評価結果になったということで、大方針としては、やはり大括り化をすると。どうせするのであれば――どうせというと少し語弊がありますけれども、大括り化ということをしただけでは、結局そのメリットが見えないということだから、あわせて、この際、何らかメリットを考えていくという中で、今回、4つぐらい示しておりますけれども、充実方策をあわせて考える必要があるんじゃないかということでの問題提起なんです。
 予算の額については、これは、大括り化は直接は関係ないと思っておりますが、行革的な視点から言うと、大括り化をすることによって、さまざまな中間的な経費が減るので、予算は減るんじゃないかという指摘もありましたけれども、一応、それは私どもとしては分けて考えている。ですから、予算額を幾らでやるかというのはこれからの検討だということでございます。

【樺山主査】
 というご説明でございますが、行政刷新会議からのさまざまな指摘等々もございますので、直接には、刷新会議が何を考えているかという、そちらへ質問を直接持っていかないとわからないところがたくさんあるんですけれども、文科省としては、差し当たりそれを受け取った形でもってこのようなご説明だと理解いたしますが、なおはわかりませんですね。
 大竹委員、どうぞ。

【大竹委員】
 私、近未来の課題解決の事業にかかわったので、その立場から少し。
 2ページに掲げていらっしゃる4つの項目、1番目の課題設定スキームは、私がかかわったときは既に課題が決まっていたので、そのスキームをきちっとしていただきたいというのはそうだと。それから2番目から4番目は、当時もある程度書いてあったと思うんですが、それをもう少し明確化するということだと思います。基本的には非常に、人文・社会系として社会から要請を受けたときにどういう形で貢献できるかというのを、自然科学は、例えば、企業の技術、R&Dに直接貢献できるという形で社会還元がなされるのを、人文・社会系は違う形で貢献するというのを、どうやって明確化するかということだったと思うので、それはこの方向でいいかと。

【樺山主査】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。小安委員、どうぞ。

【小安委員】
 事務局にお伺いしたいのですが、大括り化ということで、先ほどいただいた資料の13ページの上から5つ目の箱で、ここに7本立っていたものが、これは仮の名前かもしれませんが、国家機関研究開発推進事業になり、内局で行うということで良いのでしょうか。その中に、今おっしゃっている事業が入るのでしょうか? つまり、この国家機関研究開発推進事業の中に何本か立つという、そういうイメージでとらえてよろしいのでしょうか。
 もう一つは、事業の統合ということで、今、日本学術振興会で走っているものと、これまであったものを統合し、それを内局に持ってきてこの事業の中に組み込むというような理解でよろしいのでしょうか。

【田中学術企画室長】
 まず、国家基幹研究開発推進事業の下に「※」が書いてありますが、平成23年度は暫定的に内局事業として一本化すると、これをさらに、今の現状を率直に申し上げますと、事業としては実質的にはまだ7本に分かれています、平成23年度は。ただ、大きな傘として一本にしていると、ただ、その次ですが、平成24年度以降のあり方は引き続き検討と。これは、ただ、傘を上に立てるだけではなくて、実質的に一本にしていくことも考えていくという方向でございます。
 そういたしますと、ここに掲げております7つ、かなり多様なものがありますので、その中で、実質的に1つということになりますと、人文・社会科学の振興ということについて、必ずしもそれに特化した予算と申しますか、それから、事業の中での配分、そういうものが確保されない、いわゆる継続性が確保できないという恐れがあると。そうした中で、現在、国で内局事業として行っております人社事業につきましては、日本学術振興会で行っている異分野融合による方法的革新を目指した人文・社会科学研究推進事業と統合することによって、この競争的資金制度の一本化の流れから外れることによって、人社に特化した事業の枠組みを確保して、その中で事業の改善と、それから人社の課題設定型事業としての継続性を確保していきたいということでございます。

【小安委員】
 そのときに、どこでやるかということが、今のお話でもはっきりしなかったのですが。

【田中学術企画室長】
 日本学術振興会と考えております。

【小安委員】
 日本学術振興会というのは、基本的にはすべてボトムアップの考え方をとっているので、日本学術振興会の中にトップダウン的な事業があるというのは、非常に違和感があります。そこはどういうふうに整理されているのかなという点が、若干気になりました。私は、こういうやり方をするのであれば、当然内局に行くのかなと思っていたら、逆に日本学術振興会に行くとなると、その辺はどういう風に整理しているのでしょうか。

【田中学術企画室長】
 そこは例えば、資料3の参考でおつけしております参考資料の2ページに、現在、日本学術振興会で行っております異分野融合による方法的革新を目指した人文・社会科学研究推進事業をつけておりますが、その事業につきましても、一番下の推進方策の左側のところでございますが、公募方研究領域のほかに課題設定型研究領域というものは設けております。すなわち、共同研究による人文学・社会科学の学問的発展というときに、研究者からの提案で、この分野とこの分野の融合が必要だという自由な提案とともに、こういう分野が先導的に必要なんだということを事業として設けた上で実施しているということも、既に日本学術振興会の事業で実施をしております。
 ボトムアップかトップダウンかということにつきましては、第5期の学術分科会の審議経過報告にもございますように、研究者の自由な発想と多様性の確保は前提であると。それに戦略的な取り組みも加味していくというときに、事業のコンセプトとして、特にこういうものが必要ではないかという課題設定を図るということにつきましては、その課題を受けた上で、具体的な研究の提案を、研究者の方々の自由な発想に基づいていただくということは、それはボトムアップの中で、こういう観点を事業として求めているということは、ボトムアップとかトップダウンかということではないのではないかなと考えているところでありまして、実際に、例えば日本学術振興会の事業につきましても、1ページ目にございます平成15年度から日本学術振興会で行っておりました人文・社会科学振興プロジェクトにつきましては、これは事業として、当時の人社委員会の報告、議論も踏まえながら、具体的な研究領域を設定した上で、公募という形ではなく実施をしております。これは、具体的な内容は5ページ以降に書いておりますが、そういう課題設定ということについては、これまでも日本学術振興会のほうの事業の中でも実施をいたしております。

【小安委員】
 なぜそれを伺ったかというと、この間の事業仕分けのときに、その辺のところがさんざん議論されていたような印象があり、例えばJSTとJSPSの違いということが、そのときも話題になっていたと思います。課題設定型事業という事業は非常に、ある意味JST的な考え方です。JSTで分野・領域をいろいろ議論して、それを文科省に上げて、文科省のほうから戦略領域というのがまた降ってきて、それをJSTの中で、特定の領域のCRESTやさきがけを立てるというやり方に少し似ているようなところがあって、それは何となく、日本学術振興会らしからぬやり方に思えます。この場合、課題設定型事業の領域をだれが決めるのかということが、1つ大きな、やはり議論のタネになるのではないかと思います。そのご説明がなかったのですが、課題設定型事業の課題というのは、だれがどう決めるのかということに関して、やはりはっきりさせておかないと、同じような議論が将来的に巻き起こるのではないかと、私は心配しております。

【永山振興企画課長】
 ちょっとよろしいですか。
 確かに日本学術振興会というのは、全体で見ると科研費が代表ですけれども、ボトムアップ型の学術研究を支援する機関、これは間違いないことだろうと思うんです。
 ただ、別の面から見て、競争的資金は、必ずしもトップダウン型とボトムアップ型にきれいに分かれるものではないんだろうと、その間に、かなりグラデーションといいますか、段階があって、原子力とか宇宙みたいなナショナルプロジェクトみたいなものもあります。あるいは、おっしゃったJSTみたいに、国が、あるいは文部科学省が課題を設定するというものもあると、そういったものと、やはり一線を画すんだろうと思うんです。
 ですから、これからの制度設計にもよりますけれども、あくまでこの人社系、私どもが想定しているのは、国が一方的に示すというスタイルではなくて、研究者コミュニティーといいますか、学術の中で課題を、自主的という言葉が適切かどうかはわかりませんけれども、設定いただいて、それに基づいて日本学術振興会が支援をしていくというスタイルなのではないかというふうにイメージを持っております。

【小安委員】
 一応言っておきますが、事業そのものに反対しているわけではありませんので。

【樺山主査】
 わかりました。
 実はこの件、私、当事者でございまして、人社委員会及び異分野融合による方法的革新を目指した人文・社会科学研究推進事業にかけて、都合、全部あわせますと8年続けてまいりまして、その間に、事業の進め方についていろいろな議論がございました。完全ボトムアップでやってきたのに、なぜこうなるのかという議論も含めて、大変議論がございましたけれども、少なくともこういう形での事業の進め方が、人文・社会科学全般にとって新しいスタイルをつくり出すことになるのではないかという、そういう希望ですとか、見通しのもとに行ってきたと。それが今回、平成23年度でもって、一応のめどをつけて、別な形でもって統合されるということでございますので、それはそれでやむを得ないかなと思っておりますけれども、その遺産といいますか、財産につきましては、十分に検討した上でもって今後引き継いでいただきたいと考えております。一応、私どもとしてはそういうふうに考えると、後は当事者の方々の、今後のご努力だろうと考えております。
 どうぞ。

【加藤委員】
 一応、当事者なので。

【樺山主査】
 そうですね。

【加藤委員】
 分野融合で、課題設定型のニューロポリティクスの統括者になっています。
 今お伺いして、確かに外から見ると、何で課題設定をして、急にできるのかと、疑問をもたれるのはよくわかりました。私たちの場合、実際には、課題設定の2年前、平成19年度ぐらいから、政治的行動というか社会的行動のfMRI実験を独自に行っていました。非常に苦闘しているところで、課題設定があって円滑に行えるようになりました。ですから、押しつけられたというよりは、非常に特殊で遂行困難な研究をしていたら、課題設定をしていただいたというような感じがあります。
 本当に何もないところに課題設定して最初からとなると、確かに不自然で、3年で成果が上がるのかというのはもっともですが、何かやろうとしているところに課題設定という自然な流れでした。あともう一つは、課題設定していただいたおかげで、既に英文の専門誌に論文が2本載り、人社の分野を超えて、今非常に学際化している神経科学の研究会にも呼ばれるようにもなりました。そういう意味では、当事者としては大変助かりましたという感想です。

【樺山主査】
 当事者の証言をいただきました。ありがとうございました。
 まだまだご意見等、いろいろおありになるかと思うのですが、時間的には厳しくなってまいりましたので、これをもちまして、本日の会議は以上ということにさせていただきたいと存じます。いろいろな議論をいただきまして、ありがとうございました。
 それでは今後のスケジュール等につきまして、事務局からご説明お願い申し上げます。

【田中学術企画室長】
 失礼いたします。
 次回の本委員会につきましては、6月27日、月曜日に開催する方向で調整をしております。具体的な時間や場所につきましては、調整を経まして、また正式にご案内をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日の資料につきましては、お手元にございます封筒にお名前をご記入の上、机上に置いていただければ、後日事務局より郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。

【樺山主査】
 ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして本日の会議は終了させていただきます。皆様、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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