第6期研究費部会(第2回) 議事録

1.日時

平成23年7月7日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 科学研究費助成事業(科研費)の在り方について(審議のまとめ その1)(素案)について
  2. その他

4.出席者

委員

平野部会長、甲斐委員、小谷委員、小林委員、佐藤委員、田代委員、深見委員、岡田委員、北岡委員、金田委員、小安委員、西川委員、家委員

文部科学省

戸渡大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡邊学術研究助成課長、田中振興企画課学術企画室長、鈴木情報課学術基盤整備室長、岸本学術研究助成課企画室長、他関係官

オブザーバー

独立行政法人日本学術振興会 学術システム研究センター原主任研究員、村上主任研究員、小山内研究事業部長

5.議事録

(1)東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点について

 事務局より、参考資料1「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」に基づき説明があった後、審議が行われた。

【平野部会長】
 ただいまの御説明について、御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、事務局からの説明にもありましたように、本部会においてもこの視点を踏まえながら議論を続けるということでございます。ただ、この研究費部会においては、素案のところでもう既にあるべきそもそも論をしていただいておりますので、当然それをここの部会としては基調にして話を進めていきたいと、考えます。

(2)科学研究費助成事業(科研費)の在り方について(審議のまとめ その1)(素案)について

 事務局より、資料2「前回会合(懇談会)後に寄せられた委員意見」、資料3「科学研究費助成事業(科研費)の在り方について(審議のまとめ その1)(素案)」及び資料4「科研費の採択率を引き上げる場合の試算」に基づき説明があった後、審議が行われた。

【平野部会長】
 前回、この部会においては、懇談会という形になりましたが、科研費予算において当面取り組むべきことについて議論をいたしました。また、その後、多数の委員の方から御意見をいただいておりまして、本日は、これらの御意見等も含めまして、科研費予算についての審議の取りまとめとなります「科学研究費助成事業の在り方について」の素案を事務局に準備していただいておりますので、これについて議論を進めていきたいと思います。
 この素案の内容等について、御自由に御意見をいただきたいと思います。どうぞ、御意見ください。

【小安委員】
 これまでの議論を踏まえて、随分よくまとめていただいたように思います。効果の検証ということを、現在は前回ご紹介いただいた最先端研究開発支援プログラムに関する意見に基づいて、基金化は非常に効果があるということを書いていただいています。たしか前回出てきた「年度をまたいで」という言葉はここにも何回も出てきますが、もう1つ大事だったのは、年度をまたいで、例えば委託研究を長期間やることができるというのがもう1つ大きなメリットとして挙げられていたような気がしますが、ぱっと見たときにそれがわからないので、それを少し書き込んでいただいたらどうかと思います。具体的に言いますと、例えば、10か月かかるような委託のプロセスをやろうとすると、現在では4~5月に発注しない限り――6月の頭でぎりぎりですか。要するに、年にそれぐらいの間しか、実際にやることができない。もう少し時間が経ってからそういう研究を行おうと思っても、年度をまたげないということで実際には行えないということがあります。しかし、基金化されると、それが実際の研究期間内であれば自由にできるということで、これはかなりのメリットであるということを多くの研究者が感じていると思います。もう少しそれを書いていただけると、わかりやすいのではないかなという印象を受けました。

【平野部会長】
 大変貴重な御意見だと思いますので、これは、この前も御意見をいただいておりますから、この素案の中に書き込んで明示するようにと、そういうことでよろしいですね。その他、いかがでしょうか。

【家委員】
 大変細かいワーディングのことなのですけれども、素案の中の2ページの基金化についての第1パラグラフのところの「研究の進展に応じ、当初の研究計画を随時変更しながら」、これはそのとおりなのですが、「当初の研究計画を随時変更しながら」と言うと、やや当初の計画がずさんというふうに受け取られかねない可能性もあるので、例えば「当初の研究計画を随時見直しながら」とかいうような表現にしてはいかがでしょうか。

【平野部会長】
 この点も大変大事なところでありまして、この文章は御提案されたように修正をさせていただくことでよろしいでしょうか。いいかげんということは一切ありませんので、そのように書かせていただきます。
 その他、いかがでしょうか。この基本的な素案の考え方はよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【平野部会長】
 皆様方からこれまでにいただいた御意見をまとめさせていただきました。後の方にありますように、私どもの部会としては今後まとめました在り方をもとにしながら議論を続けますので、そのもと提案としてこれを基本としていきます。
 それでは、本日の予定はまだ、ここでもう少し御意見をいただくということになっておりますので、自由に御討論いただきたいとおもいます。この中でもありましたように、基金化はより効果的、有効に、柔軟に進めるというのは基本でありますが、科学研究費補助金に関わる問題として、その他、研究種目の見直し等もいつも話題になることでありますし、この部会で扱う重要な課題だと考えております。今日は、まず研究種目の見直しについて、皆様方から自由に御意見をいただき、また今後の検討の課題にしていきたいと考えますが、どうぞ御自由にこの点について御意見を賜ればと思います。お願いします。
 私の方から、部会長という立場でのお話ではありませんが、実は、基本問題に関する特別委員会におきまして、社会的背景を含めて研究者の自由な発想をもとに研究を進めるということの中においてでありますが、どのような課題を扱っていったらいいか、どういうようなチームワークが要るかということについて意見がありました。以前は総合研究というのがあったが、これが今はなくなって、そういうような課題について議論をする場がなくなっているのではないであろうかという意見でありました。例えば、以前のような総合研究を検証して、何か科学研究費補助金の中で扱うことができないかという意見が出ておりました。これはまだ正式にまとめ上げた意見ではありませんが、例えばそのようなことも含めて、ここで御意見を賜ればと思います。どうぞよろしくお願いします。

【小安委員】
 今、総合研究のことに触れられましたが、こことは別の、人社系の問題を扱う委員会のところでお話をいろいろと伺っていると、人社系の先生方の研究活動と私たちのような生物系の研究活動というのは大分やり方が違うということが非常によく分かりました。例えば、特別推進研究でありますとか、非常に大きな額の研究の場合に、人社系の方々は、1人で、又は少数でというのは非常になじまないとおっしゃいます。むしろかつての総合研究のような形のやり方で研究を進めるのが最も効率よく、そのような形で非常によく研究が進められるのだというようなことを伺ったことがあります。前回もそれぞれの分野の特性に少し配慮したほうがいいのではないかというお話がありましたが、そこら辺も踏まえて、今、部会長がおっしゃられた総合研究というのを何らかの形で、復活するといいますか、新しい形のものを作るということは、検討したほうがよろしいのではないかと思います。

【平野部会長】
 今のような背景での御意見、同じような立場での意見をその委員会でいただいたわけであります。従来の総合研究が変わってきた背景、その経緯をきちっとここでも検討しながら新しい在り方を考えていく必要があるのかなと思って、先ほど私も提案させていただきました。大変重要なことだと思います。
 その他でも結構でありますが、いかがでしょうか。

【小安委員】
 これもまた分野がまたがるとかなり意見の違うものの一つに、特別推進研究があると思います。特別推進研究は、日本を代表する一番トップの、世界に誇るべき研究ということで位置づけられていると理解しておりますが、生物系の場合には、これまでずっと見ていますと、同じ方が続けられるという例があります。一方で、分野が違えばそういうことはないと伺います。続けるということに非常に重要な意味があるのだという御意見を生物系の方々は持っていらっしゃっても、それ以外の分野の方々とそういうところの意見が一致しないということがあります。よく聞かされる理由の一つは、生物系の方がどちらかというと研究費の額が大きいのではないかということがあります。したがって、あるレベルに達して世界の先端を走ろうとしたときに、その規模を維持するためにどうしてもある額の研究費が必要になるという話です。現在ではそれを賄えるのは特別推進研究だけであるということが、現在の状況を招いているのではないかという意見があります。もう少し違った形での研究種目というのがあればそういうギャップを埋められるのではないかという御意見を何回かいただいたことがありますので、そういうところも少しここで議論ができればよろしいのではないかと思いました。

【平野部会長】
 ここの場で今後、今のような御提案を含めて議論をしていきたいと思います。
 ご存じのように、先ほど数字を出していただきましたが、国の予算が限られ、かつ震災を含めて大変厳しい予算の中で、いかに今後の、10年後、20年後の日本の科学技術・学術をきちっと発展させていくかというのは非常に重要でありますし、特に科学研究費というのはご存じのようにボトムアップ型で、研究者の自由発想で責任持って動くという、非常に重要なところでありますので、分野のそれぞれの文化を踏まえた上で、課題の種目の再生が必要ならば再生をするということが基本ではないかと考えております。
 その他、いかがでしょうか。

【北岡委員】
 私、資料2の研究種目の在り方についてというところの「新たな研究者コミュニティの育成も含めた若手研究者のネットワーク形成を促進するための研究種目の見直し」、これを提案させていただきましたが、実は、これを検討していただきたいと思って提案した理由は、前回の学術分科会で「審議経過報告」というのを23年1月17日に出している中で、学術研究の振興方策の中で、我が国の学術研究体制の目指すべき方向ということで、新たな研究者コミュニティの育成も含めた研究ネットワークの形成、それを促すということもありますし、個々の研究者の枠を超えた新たな研究領域ということもありまして、実は、若手というのにこだわるのは、現在、総合科学技術会議で最先端・次世代研究開発支援プログラムにおいて、大体300名以上の方が3年間、2億近いお金を投入して研究をやられている。それは、3年後には新たな研究の方向、あるいは新しい成果が出てくるわけで、そういう若手の研究者、45歳以下の方々ですけれど、そういう方々をまたさらにサポートというか、さらに研究を発展させていくためにも、ここの科研費等を含めて、いわゆる自由な発想に基づく研究というのをエンカレッジするというようなことも含めて、そういうことを目指した上で、これはどういう形で研究種目の挙げ方を見直すかということなのですけど、実は、先ほども総合研究の話がありましたが、新学術領域研究があって、それはかなりコミュニティ、あるいは広く総合研究も含めて、それぞれの新しい研究領域を生み出そうという形で組織されている、正にコミュニティの形成に対応した領域だと思いますが、その中で、研究課題提案型というのは、今、公募停止になっているわけですね。研究領域提案型というのは今現在公募されていますけど、研究課題提案型という、新学術領域研究の中にせっかくそういう項目があるので、こういう中で、年齢制限を立てて、若手をエンカレッジする意味で、その分野のエスタブリッシュされた研究者に集中するのではなくて、八ヶ岳型といいますか、若手の人たちがネットワークを作るような形の研究種目をもう一回復活させる可能性を検討してみてはどうかと。さらに、今、若手研究(S)が公募停止になっていますし、そういうのは、先ほどの最先端・次世代研究開発支援プログラムの3年後の、さらに研究を発展させるための予算措置ということもありますけれども、こういう新学術領域研究の中で、研究領域提案型じゃなくて研究課題提案型という種目の中で若手のネットワークを促進するような、大型研究の大型予算の見直しもそういう幅広い中で位置づけて考えたらどうかというのが、私の提案でございます。

【平野部会長】
 今の御提案、次回以降に検討を続けていきたいと思っております。この後、他の関連部会からの報告をいただくことになっておりますが、新学術領域研究のところで新たな研究課題を提案できるかどうか、提案をする必要もあろうかということも、出てくるかと思っております。そういうところを踏まえて、連携をとりながらこの中で議論を進めていきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。その他、いかがでしょうか。

【田代委員】
 これは、ここで議論をしていただくのがいいか、よくわからないのですけど、少し意見としてお願いします。東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討課題ですけれども、地域によっては、そうでもないところと、非常にひどいところと、いろいろあると思います。それで、どのぐらい学術的・研究的な被害をこうむったのかをある程度実態調査して、かつて例えば科学研究費でそこをやったけれど、それが全て失われてしまった。例えばデータだとか、そういうものが失われたので、もう一度やり直さなきゃいけないというところも、あるかもしれないのですね。そうしたときに、そういったリカバーができるかどうかということ。つまり、地域特化型の支援といいますか、そういう学術支援というのが科研費の中でできないかどうかという、少しそのことを申し上げておきたいのです。

【平野部会長】
 今の御提案のところは、文部科学省としてこれまで、震災後、何か調べたり、あるいは対応したりという、省全体ではどこかでその対応をとられているのでしょうか。事務局、何かわかりますでしょうか。国全体では非常に重要な問題だと思います。

【渡邊学術研究助成課長】
 例えば科研費を含む経費で購入した設備の被害というものについては、高等教育局の方で大学に対して調査をいたしまして、補正予算に盛り込むというようなことはしております。研究データとか研究成果そのものの被害というようなところまでは、調べ切っていないとは思います。

【平野部会長】
 分かりました。今、大変重要な御指摘だと思います。皆さんが出してきた財産でありますので、これは、文部科学省関係のものとしては省全体で是非対応をしていただけたらと、お願いします。ここの部会で必要なものについてはまた皆さん方にお諮りをしたいと考えています。そういうことでよろしいでしょうか。その他、いかがでしょうか。

【深見委員】
 新しい研究種目ということで、どの様なものが適切かということで今お話が出てきたわけですけれども、もちろん新しいシステムを作っていくというのは非常に重要ですが、作ってすぐまた変えるようなシステムではいけない。作っては消え、作っては消えというような、そういったことがないように。やはり、こういうシステムを1つ動かすということはかなり多くの研究者の方々に大きな影響を与えていきますので、まずは一番重要なラインとしての、特別推進研究から始まって、基盤研究(S)とか、基盤研究(A)(B)(C)、それから若手のライン、こういう軸というものを一番大事にするということを改めて認識した上で、ある程度の修正をしていくということに対しては、私はすごく賛成です。わりと早い形で変化していくというのも今までも幾つかありましたので、変化することをいけないと言っているわけではないのですが、システムを動かすときに、とりあえずやろうというのではなくて、長期的にやっていける、そういった視点というのを是非考えてからやっていきたいというふうに、私自身は思っています。

【小安委員】
 今ご発言のあったこと、私もそのとおりだと思います。現在ある種目の中で、種目の上限というのはどうやって設定するのがいいのか。若手研究(B)と基盤研究(C)の間の額がひっくり返っていることを何とか是正したいということで、文部科学省で随分ご苦労していただいて、基金化すると同時にそこがかなり近くなりました。こういうことは非常に大事なことだと思います。ですから、現在の種目でうまいつながりができるようなこと、充足率をどうするかという問題もあるかと思いますが、そういうことをまずやった上で、どうしても対応できないときに新しいものを考えるということをやったほうがいいと思います。そういうところも一生懸命考えていくべきだと思います。
 先ほどの基金化のお話の中に、採択率30%を維持して基金化するのか、それとも、とりあえず全部基金化して、それから採択率を上げるのかという議論がありました。前回の会議後の御意見の中にも、とりあえず30%は無理でも、まず全部を基金化したほうがいいのではないかという御意見もあったと思います。ですから、その辺をどういう順番でアプローチしていくのが良いかということも全体のシステムを考える中で非常に大事なことです。例えば採択率が40%というのはおそらく、これは私の個人的な意見ですが、余り必要なのではないかと思います。それでしたら、40%にするよりも、30%ぐらいで上限を上げて充足率を少しでも高めるというほうが、研究の推進にはよろしいのではないかと思います。そういうようなことも是非議論をしていただきたいなと思います。

【平野部会長】
 大変重要な問題だと、私個人的にも思います。特に、新しく入れる場合、あるいは今まであるところを変更するというのは必要に応じて当然だと思いますが、同時に、それには検証をきちっとしながら行きませんと、またすぐ変わるということになっては研究者の戸惑いが大きくなるということでありますので、是非検証をしながら、ということを考えます。先ほど私が例えば総合研究のところの話を申し上げたのも、この前からどういう経緯で変わってきて、それで何が今問題となったのかということを踏まえて、復活、あるいは別な形での対応が必要ならば、その対応をとっていくべきだとの位置づけで発言をさせていただきました。さきほどのご発言も、そういうことを含めてのことと思っております。是非きちっと検証をしながら、進めていきたいと思います。その他、いかがでしょうか。

【家委員】
 私も、今の議論のように、今、一方では特別推進研究から基盤研究(S)(A)(B)(C)というラインと、それから若手のサポートというライン、この2つに割にすっきり単純化してきているわけで、その基本線は多分守るべきだと思います。新しいものを、例えば、かつてあった総合研究というのは、少し昔のことを思い出してみると、当時の特定領域研究の準備研究でもってその分野の人の衆知を集めてプランニングを行うという、その考え方は非常によかったと思うのですけれども、実際にどうだったかというと、場合によっては少し弊害が出てきたかと思うのは、準備研究をする場合には、その分野の人、できるだけ多くの人に声をかけて、やってもらうわけですね。そうすると、その後で本番の特定領域研究のプランニングをするときに逆に切れなくなってしまうという、一つそういう弊害はあったように思います。
 それともう一つは、当時は総合研究を審査しているところと特定領域研究を審査しているところが全く別でしたので、評価に関してそれらの間に全く相関がなかったということもあったかなというふうに思います。その辺のところをよく検証して、導入するなら、基本的考え方としてはよかったと思うので、過去の反省に立って考えればいいかなと思っています。

【西川委員】
 少し話が変わりますけれども、今、科研費で、小さな額ですと、これが教育に使われて、実際には私たち運営費交付金では賄えないので教育に使っているという、そういう現状があるわけですね。それから、大型になりますとどういう形になってくるかというと、雇用の問題があります。特にポスドクを科研費で雇うということが出てきているわけですけれども、その場合に、専従義務とか、何かいろいろなことがあって、若手の人たち、ポジションもないということもありますから、科研費で大型のものを持っているとその人たちを雇うわけですが、そこのところがまだ余りしっかりしたルールというのができていないので、若手の人たちにとっても、これから活躍していただきたい人たちにもルールづくりが必要じゃないかなと思っているのですけれども、確かに科研費で人を雇えるということは非常にありがたいことですが、そこがまだルールが十分できていないために、十分活用されていない、あるいはいろいろな矛盾点が今出てきている段階かなと思っていますけれども、その辺も少し考えていただけたらと思っています。

【平野部会長】
 科研費をより柔軟に、かつ若手の方を奨励するという点でも、柔軟な対応ができるようなシステム作りについては対応が必要だろうと思います。私の経験からしても、かなり改善はされてきましたが、一時期、例えば、テニュアトラックの制度ができますと、そこにテニュアとして将来有望な方を選んで、そしてその方に仕事をやっていただくという中で、今ご発言のあったとおりでありますが、他の種目にアプライが制限されるということで、将来の経験を積みながら動くというところの経験さえも当初は非常に制約されたということがありました。少し改善はされてきておりますが、まだまだシステムとして改善をしなきゃいけない部分が御指摘のとおりあると思いますので、これについてもまた議論をいただきながら、どうやったら若手の方がより活躍できる場が多く持てるかということについて、この部会の課題にもしていきたいと思います。
 その他、いかがでしょうか。今日はこのぐらいでよろしいでしょうか。私としては、時間を延ばすつもりはありませんが、御自由に発言をと思って1時間ぐらいを予定しておりましたが、皆さん方、御意見があったら、思いついたら、まず事務局へお伝えいただくようお願いします。ご発言で足らなかったところがありましたら、是非事務局の方にあらかじめお伝えいただき、議題にもしていきたいと思っております。
 事務局におきましては、本日の議論を踏まえまして素案を修正していただき、次回の部会で改めて委員の方々にお諮りをした上でまとめとさせていただきたいと思います。事務局では、大きな修正でもありませんので、もし時間がとれるのならば、皆さん方にあらかじめメール等でお伝えてしておいていただければ、次の委員会も順調に行くだろうと思います。お世話かけますが、よろしくお願いします。

(3)学術振興上の重要な取組について

 事務局より、参考資料2「学術振興上の重要な取組について(これまでの意見のまとめ(案))」に基づき説明があった後、審議が行われた。

【平野部会長】
 ただいまの説明について御質問があったらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【小谷委員】
 質問というよりはコメントなのですが、新しい研究者ネットワークを形成するということ、特に研究者の自主的な課題設定ということは大変大切だと思います。この間の人文・社会の委員会での議論をご紹介したいのですが、海外から人文・社会系の研究について興味を持たれてアクセスしようと思っても窓口がよくわからないという情報が、提供されていました。特に人文・社会科学者と自然科学者の連携を推進するということはこれから学問の発展にとって非常に大切だと思うのですが、研究分野によって情報発信の仕方が大きく異なる場合に、どこにどのような情報があるかということが非常にわかりにくいということもあるかと思います。それで、研究者ネットワークを作るということも大切だと思いますが、それを可能にするような異分野間での情報アクセスのための支援があると良いですね。また、研究者ネットワークのコアを作る場合に、そのコアから波及効果といいますか、そのコアの外側にある研究グループ若しくは研究者社会に情報を発信していただくような機能を持っていただければ、大変ありがたいと思います。

【平野部会長】
 これについて、事務局、何かお答えがありましたら。

【田中振興企画課学術企画室長】
 まず、人文・社会科学に特化した話といたしましては、人文・社会科学の国際化を一つの論点といたしまして人文学及び社会科学の振興に関する委員会でも御議論いただこうと考えているところでございます。特に、人文・社会科学につきましては、人文・社会科学以外の多様な、自然科学も含めた国際協力でございますとか、それから、学問的なものにとどまらない経済協力等におきましても、人文・社会科学の機能が必要とされており、人文・社会科学自身の国際化が求められていると思っております。そうした際に、人文・社会科学におきまして、諸外国が求めるニーズをどのように把握していくか、あるいはどう情報発信していくか、さらには人文・社会科学につきましては分野ごとに国際化の状況も異なっていることからそうした分野ごとの情報発信の課題なども踏まえて、人文・社会科学の国際化、発信も含めて、人文学及び社会科学の振興に関する委員会で御議論していただくことを予定しているところでございます。
 また、人文・社会科学に限らず、情報発信、いわゆる研究者ネットワークを構築していくことは、第5期学術分科会の審議経過報告におきましても指摘されています。いわゆる学術研究の多様性を確保していく上で、その自主性を尊重してまいりますが、その一方で、戦略的な視点をもって、強制ではなく自主的な形で研究者ネットワークの構築が促進されなければなりません。ネットワークや学術研究の動向の調査分析も掲げられておりますし、情報発信の充実も掲げられています。そういったネットワークを作っていくという際に、どのような取組が必要であるかについては、このペーパーにおきましてもいくつか観点は掲げてございますが、情報発信も含めて具体的に検討をしていくことが必要であると思っておりますし、今後の検討に活かしていきたいと思っております。

【岡田委員】
 今ご発言のあった件といいますか、参考資料2のところで少し私が気になったのは、最後にコアグループの形成など知の集積というのをおっしゃっていて、今のネットワークを作る、あるいはコアをさらにどんどん作っていく。知の集積というのはもちろん結構ですし、必要なことだと思いますけれども、どういう議論があってこういうことを取りまとめておられるか、そこのところを私は知らないのですけれども、つまり、どんどん集積して一本化するとか、ある種体制を作っていくということが余りにも過度になれば、これはやっぱり、学問のボトムアップ、新しい分野を作っていくという問題であるとか、あるいはいわば競争的にいろんなことをやっていくのだという、そのベースが崩されていくということにならないか。そういうことはもちろんないというふうな前提に基づいてこういう議論をされていると思いますけれども、しかし、そこのところが逆に、余り集積と言ったり、ネットワークなり体制を作るということが強く言われ過ぎたりしますとそういうことにもなりかねないし、最初に提案をされた先生方とは世代が変わってきたときに、そういうふうなところが言葉だけ残ってそういう形になっていくというのは、私は少し心配です。つまり、学問というのは、一つ世代が違うと、例えば、我々の先生の世代と、私と、弟子といいますか、学生さんのそれぞれの世代がいるわけですが、それぞれの世代でやりたいことも違うし、状況も変わってきていて、それで飽き足らないと別の学会を作るというふうなことでどんどん発展してきているわけですので、そういうところとうまく折り合いをつけながら、むしろ新しいものをいかにサポートするか、そういう格好の体制にいかに持っていくかというところできっちりやっていただくということが重要だと思います。

【平野部会長】
 事務局、お答えいただけますか。

【田中振興企画課学術企画室長】
 まず、ここでコアグループの形成による知の集積と言っておりますのは、現在、新学術領域研究で研究者ネットワークの構築をしておりますが、そうしたネットワークの中でコアとなるようなグループと申しますか、そういったものを形成いたしまして、そこにグループが持っております知を集積して、そして世界への発信力を高めていくと申しますか、そういうことを念頭に置いているものでございます。今の御指摘はそういった取組が固定化につながるのではないかということだと思いますが、それは、例えば組織にしてしまうということであれば正に固定化でございますが、ここの部分を受けまして、さらに新学術領域研究あるいは科研費も含めて、どのようにコアグループを形成していくか、さらには、組織、ここでは共同利用・共同研究拠点という話もしておりますが、組織化も含めてやっていくのかということはさらに検討が必要だとは思います。ここでは、組織化、固定化をすべきだと言っているわけではなく、今行っているネットワークの構築の中で、そのネットワークの成果を創出する、あるいは発信力を高めていくために、ネットワークの中でコアの機能を充実させていくことが必要ではないかということを、御議論を経た上で記載しているという趣旨でございます。それとは別途、新しい学問分野の創成につきましては、主に2のところで記載をしているわけでございますが、これも新しいものを作るだけが重要ということではなくて、そこにも「学術研究の更なる発展を図るためには」と、「更なる」という、これまでの取組に加えて、さらに知の再構築――この「知の再構築」という言葉につきましては、参考資料1にございます総会の視点の中でもリコンストラクションという形で視点が示されているところでございます。そういう再構築や体系化のためには、新たな研究分野の創成に取り組むためにも分野横断的に、研究者コミュニティが検討して、何が研究テーマとして必要かについて共有化することが必要ではないかということを記載しているという趣旨でございます。

【西川委員】
 先ほどご発言があったように、いろいろな意味でのバランスというのは大切だと思いますけれども、私、ちょっと前まで特定領域研究を運営させていただいていたので、その観点からコアグループ形成に関して意見を少し述べさせていただきたいと思います。
 先ほどのご発言で、特別推進研究で生物系では非常に指定席化されているという、その問題点をおっしゃっていましたけれど、私、理工系の方ですとちょうどその逆でして、せっかくコアができたのに、それが分散するということが起こっております。だから、1回、特別推進研究にしろ、あるいは特定領域研究にしろ、大きなものができたとすると、それが継続できないと、せっかくできたコアが分散してしまうという、あるいは大きなことができないということが、少し問題になっております。
 そういうこともいろいろ議論をしているのですけれども、それに対してどういうことを考えたらいいかということで今考えていることは、いろいろ芽が出てきたグループを使ってネットワークを作るのですが、バーチャルラボラトリーみたいなものを作れないかという、そんなアイデアが今生まれつつあります。実際に研究所なり何なり大きなものができればいいのですが、今の状況ですととてもそういうことはできない。そうすると、特別推進研究にしろ、特定領域研究にしろ、あるいは今の新しいものでいくと新学術領域研究ですけれども、そういうところでできてきた芽を生かして、バーチャルな研究所、そういったものを作り上げていったらどうかということなのです。全くのバーチャルですと運営上難しいので、多分、大学の共同利用機関なり何なり、そこのところに1つの拠点を作って、実際にはいろいろな面でバーチャルなものが動き出したらいいのではないかなと。これも一つの実験になりますので、まだどういうことになるかはわかりませんけれども、そんなこともやっているということをご報告しておきます。

【平野部会長】
 今日ここでご報告をいただいておるのは、御意見をいただいた上でまた特別委員会に反映をするようにはいたしますが、より細かい内容についてはそれぞれの部会に関連するところでまたかみ砕いて検討いただくというのが趣旨であります。大局というわけじゃありませんが、大局的な視点、問題点をこの特別委員会では検討をしておりまして、その具体についてはそれぞれ関連の部会で今御提案があったことも含めて検討いただければと、こういう趣旨でございます。ご理解いただければと思います。

【原主任研究員】
 先ほどのコアとなる研究グループの形成のところですが、やはり私も若干違和感がありまして、日本語が若干あいまいなところがその原因かなとも思うのですが、このまま読みますと、コアとなる研究グループを例えば文科省が中心となって形成するというような意味にもとれなくもない。科研費の精神からいきますと、コアとなる研究グループの形成といいますのは研究者が自主的に形成していくものであると。これは科学を推進するに当たっての基本的な精神、科研費の精神でもあると思いますが、その辺のところをもう少し文章で分かるような形にしていただければと思います。

【平野部会長】
 誤解のないように、そこは委員会の方で詰めます。実は私がここの委員会の主査を仰せつかっておりますので、この文章にもありますように、研究者の自主的な、あるいは自発的なというのを尊重してというのを何回も入れておりますが、趣旨は一貫して変わりません。そのつもりでございますが、必要だったらまた委員会の方に諮って進めたいと思います。

【田代委員】
 3ページの(3)の諸外国の動向を踏まえた取組についてですけど、これも先ほどの御意見と全く同じで、文章がよくわからない。何をしたいのかが、全然わからない。これは、最初の文章のところで国家戦略として科学技術を推進するというのが世界的な潮流であるとまず言って、その下で「自由な提案とピア・レビューによる助成を基本としつつ」というのを紹介して、「諸外国におけるこのような状況に照らし、我が国においても、研究者の自主性を尊重しつつ、学術研究を推進するための新たな取組」と言って、この「新たな取組」というのはどっちを狙っていらっしゃるのでしょうか。国家戦略としての科学技術を推進したいのか、その下の自由な提案なのか。これは科研費の方、先ほどの御意見にもありましたように、ボトムアップ、つまり下から上がってくる自由な研究というものを推進していくというのが精神になっている。これはトップダウンですね。つまり、国家戦略として科学技術をやっていくというのは諸外国の潮流であると。両輪で行きたいと言いたいのか、あるいは、今までそれがなかったから、それをしたいと言いたいのか、この文章ではよくわからないので、これから目指す方向なので非常に大事なことだと思いますので、少し御説明いただきたいと思います。

【平野部会長】
 私が答えるというのもおかしいのですが、本部会は科学研究費の部会であります。学術の基本問題に関する特別委員会というのは、科学技術・学術全般にかかっての大局についての視点を背景にする委員会でありますので、科研費はあくまでも、ここでも言っておりますように、研究者の自発的な発想をもとにしているというのは、全く間違いありません。今の(3)の諸外国の動向を踏まえた取組については、実は一昨日の委員会でも議論になったところで、この文章をかなり修正するということになっております。先ほど事務局があらかじめお断りをしたように、その日に出した案文をここにご提出したということでありまして、まだ委員の皆さんに修正案の了解を得ていないものですから、本日ここに本来は修正案として出すべきですが、その当時も同じような御意見がありまして、その意見を踏まえて(3)のところは書きかえるということになっております。よろしいでしょうか。御心配のところの意見は出されておりますので、踏まえて事務局の方で修正をしてもらうということになっております。

【田中振興企画課学術企画室長】
 この文章全体の考え方、また、学術の基本問題に関する特別委員会の御議論といたしまして、学術研究の在り方を変えて何か新しいことをする、在り方を変えて何かするということではなく、科研費も含めまして学術研究の在り方は維持した上で、学術研究の新たな取組として、あるいは第5期の学術分科会の審議経過報告で指摘されております戦略的な視点として何が考えられるかということを議論しております。
 ただいまの御指摘で申し上げますと、(3)諸外国の動向を踏まえた取組のところでも第3段落で「研究者の自主性を尊重しつつ、学術研究を推進するための新たな取組」と、いわゆる研究者の自主性の尊重、あるいは多様性の確保といった学術研究の在り方というものは基本として、その中で新たな取組について検討しているということでございます。要は、第1段落、各国が独創的・先端的な知の創出を進める取組を強化している中で、例えばNSFにおきましても、研究者の自由な提案という中で、いわゆる政策課題に基づくトップダウンという形の課題設定ではなく、PO、PDの方々が現場とコミュニケーションしながら、学問上必要な特定課題、あるいは分野横断的な課題についてテーマを設定して募集するという取組も行われています。すなわち、国によるトップダウンによる課題設定、あるいは方向性の設定ではなく、NSFなどにも見られますような、学問上の観点から研究者コミュニティが方向性を共有し、その上で何か新しい取組ができないか、ということが御議論としてあったところでございます。委員会での議論に際しましては、先ほどお話がございました科学研究費補助金の総合研究の他、例えば新プログラム方式についても、過去の取組としてご紹介し、御議論いただいた上で、このような記載をしております。全体につきまして、先ほど申し上げましたように、議論を踏まえて修正・検討をさらに続けているところでございます。

【小安委員】
 学術全体のことをお考えいただけるという委員会だったら少しお願いしたいことがあります。先ほど若手をどうやって育てるかというような話がありましたが、非常に大事なのは、今、テニュアトラックにしても、何にしても、若手がある程度の研究費を取ってきても、それで本当に自立できるかというと、できない、という点です。
 一つの大きな理由は、コアファシリティーが非常にプアだからというふうに、私は思っております。結局、大きな予算がないと大きな機械が買えない、だから若手はその機械を持っていないので独立して研究を進められないので、やっぱり若手は育たない。各機関にコアファシリティーをきちんと充実するということがあって初めて、若手がある程度の研究費を持って自由に研究が進められるのだと思います。これはここの部会に余り合わないと思ってこれまで言わなかったのですけれど、どうも今伺っていると学術全体のことをお考えいただけるようですので、例えば、機関にコアファシリティーをいかにして充実するか、そのための研究費というのであれば非常に重要な施策になる可能性があると思いますので、そういうことを基本問題に関する特別委員会で少し御議論いただけるとよろしいのではないかと思いましたので、お願いいたします。

【平野部会長】
 今いただいた御意見を踏まえて、次回は15日にこの委員会がありますので、基本問題特別委員会の委員の方々の御意見を踏まえ、かつ今日の御意見を参考にして、事務局で最終提案に整理をしていただきたいと思っております。大変貴重な御意見をいただきましたので、ここの御意見を基本問題に関する特別委員会に反映できるところは大いに反映をしていきたいと、こう考えております。

(4)研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会における研究成果公開促進費に係る検討状況について

 事務局より、参考資料3「研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会における研究成果公開促進費に係る検討状況について」に基づき説明があった後、審議が行われた。

【平野部会長】
 ただいまの御説明に何かご質疑ありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【佐藤委員】
 この点は今まで我が国では少し遅れていた部分ですから、オープンアクセスその他、進められることは是非、必要なことですので、期待を申し上げたいと思っております。テクニックとしてそういうターゲットに向かって進むのはいいのですけれども、もう少し大きい、周りを考えますと、研究者のネットワーク形成をどう支援していくかということがあると思います。研究者のキャリアを考えますと、ドクターを取った後、必ずしも自分の専門分野を生かせるところに就職できるわけではありませんで、いろんなキャリアを経て、またチャンスがあれば専門のところに戻ってくるでしょうし、いろんな活動をなさる。そのときに自分の専門分野とする学協会とずっとつながっているということをできるだけ確保する、そういうネットワークの形成というのは非常に大切なのではないか。そうすれば、異分野に散らばっている人たちもコントリビュートできますし、いろんな方々がそのネットワークの中でまとまった知恵を生かしていくことができると思うわけです。現在のソーシャルネットワークサービスのようなものを考えれば、ネットワークにエンカレッジするというのはそんなにお金のかかる話でもありませんし、少しこういう具体的なことの外側にある研究者のネットワークづくりの支援というような視点があると、さらにうれしいと、こういう気がいたします。

【平野部会長】
 是非部会の方でも検討いただければと思っておりますが、関係する部分は当然、この委員会で一緒に扱っていきたいと思います。その他、いかがでしょうか。

【田代委員】
 学術図書の出版のことは、人文・社会科学と自然科学で非常に考え方が違う分野だと思います。特に人文学の方では、著書という形で出版されて初めて、成果が評価されるという。ですけれども、それが逆に今度は、なぜそういう大部な出版物でなければいけないのか、特定の出版社の利益につながっているのではないかとか、いろいろな議論がありますが、発表するというか、研究成果を公開する場としては、蓄積が求められて非常に長い時間をかけてやらなければいけない人文科学の方としては、学術図書としての出版というのがどうしても求められていく。そのことが求められている分野と、そうではなくて、発見したらすぐにウェブとかそういうところで発表できるような領域というのもあると思います。ですからこれは、研究分野、専門分野によってかなり考え方が違ってくるので、自然科学の方では、そんなものやめてしまえという乱暴な意見がすごく強くあったことも事実なのですね。ですから、そこら辺は各分野でもって少し議論を高めていったほうがよろしいのではないかなということを感じております。

【平野部会長】
 今の御指摘についても検討いただければと思います。またよろしく。

【小山内研究事業部長】
 今のお話についてでございますけれども、研究成果公開促進費の中で、今、先生からお話がありました学術図書と定期刊行物、ジャーナルの話と、別途、データベースという、3種類ありますけれども、基本的には、学術情報基盤作業部会の方で今御議論いただいておりますのは、ジャーナルの方でございます。もちろん学術図書については人文系等からのご要望が非常に強うございますので、それはそれとして鋭意継続をしてまいりますが、今ご報告のありましたのは、どちらかといいますとジャーナルの、学協会で出版をしております定期刊行物についての審議がこれから進んでいくというお話でございます。

【平野部会長】
 よろしいでしょうか。今御回答いただきましたが、出版方法、あるいは分野によっての背景をご理解して進めていただきたいという希望であります。その他御意見がございますでしょうか。

【家委員】
 今ご紹介ありましたように、研究成果公開促進費は3つのカテゴリーがあるわけですね。その中でも、学術情報発信を国として戦略的に支援するという意味で定期刊行物を支援するというのは、どう考えても競争的資金とはなじまないところがあるように思います。12年前のときから私は感じていたのですけれども、いろんな経緯があって科研費の中でサポートしていただいている、それは大変ありがたいのですが、このあたりでもし可能ならば、国として学術発信をどうサポートするのかということを打ち出していただきたい。競争的資金である科研費と定期刊行物というのは突き詰めていくとどうしても矛盾するところが出てきていまして、その辺を今まであいまいにしていたところがもう立ち行かなくなっているのかなという気もいたしますので、その辺も含めて検討をしていただけるとありがたいと思います。

【小山内研究事業部長】
 一言だけ申し上げますと、これがいわゆる科研費の一環になったのは1960年代からずっとでございまして、今回、そこのところまではまだ御議論出てないようでございます。

【家委員】
 そこは議論の対象にはならないのでしょうか。

【鈴木情報課学術基盤整備室長】
 基本的に、先ほども申し上げましたように、学術情報基盤作業部会では、科研費のみならず、その他の政策も含めまして全体として検討を進めていただくことを考えております。ただ、現実問題として我が国の財政事情が非常に厳しい段階で新たな助成手段を別途作ることができるかどうかは別問題だと思いますけれども、全体を視野に入れて学術情報基盤作業部会で検討を進めることについては、有川主査の御了解も得られているところでございます。

【家委員】
 私はもちろん、科研費に代わるものがないのに科研費になじまないからやめろなどというような乱暴な議論をするつもりはありませんので、そのあたりはよろしくお願いします。

【小谷委員】
 国際的社会で、日本の研究力アップということを考えたときに、日本発の学術ジャーナル発行が支援されるべきだと思います。それを競争的資金でサポートすることは適格でない。他により基盤的な財源を検討いただくのが一番ですが、他の財源がなく、科研費でサポートするのであれば、支援の期間について御検討いただけないでしょうか?非常に短い期間でサポートするにはなじまないように思いますので、きちっと精査していただいて、日本の競争力を上げるようなジャーナルがあれば、長期間サポートするということも可能だったら、お願いしたいと思います。

【鈴木情報課学術基盤整備室長】
 基本的に、現在、有川主査と御相談させていただいていますが、助成の期間、それから、場合によっては、科学研究費補助金研究成果公開促進費学術定期刊行物という名称も含め、そもそも論から議論することを学術情報基盤作業部会として考えているところでございます。ただ、財源問題になりますと、現実問題もございますので、科研費の枠の中で御支援いただくことになると思われます。

【平野部会長】
 それでは、貴重な御意見をまた作業部会の方で参考にしながら検討を進めていただきたいと思います。

(5)その他

【平野部会長】
 本日予定していた議事は以上でございますが、その他、御意見ありますでしょうか。

【小安委員】
 基金化のことに関して文部科学省にお願いをしたいのですが、いろいろな状況証拠を並べると、これは全ての種目を基金化すべきだと強く感じます。震災のこともあり、現在の経済情勢で予算をどこまでという問題は当然ありますけれども、先ほどのCSTPのアクションプランでも追い風になっていると思いますので、全種目基金化ということを強力に進めていただきたいと思います。できれば採択率30%で基金化ですけれども、それがだめでも、今の採択率でもとにかく基金化するということが、今後、科研費をさらに充実させていく上で重要だと思うので、是非お願いしたいと思います。

【平野部会長】
 文部科学省の方も大いに頑張っていただきたいと思いますし、私ども一人一人も、あちこち手を回して、最大の努力をいたしましょう。

(6)平成23年度科研費(補助金分)の交付について

 事務局より、参考資料5「平成23年度科研費(補助金分)の交付について」に基づき説明があった。

【平野部会長】
 震災の復興というのは大変重要な、喫緊に対応しなくてはいけないことであることは間違いありませんが、科研費による学術の振興というのは、将来、10年後、20年後の我が国あるいは世界を支える大変重要な研究の振興だと思っておりますので、是非政府においては、資金をきちっと100%配分を早急にしていただいて、円滑に研究が進むようにお願いしたい。
 本日の会議は、以上でございます。次回は、案内にありますように、7月28日に開かせていただきます。是非御出席いただきますよう、よろしくお願いいたします。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課