研究環境基盤部会 学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会(第85回) 議事録

1.日時

令和元年10月24日(木曜日)9時30分~11時30分

2.場所

文部科学省13F1-3会議室

3.議題

  1. マスタープラン2020の状況について
  2. 大型プロジェクトの在り方について
  3. 次期ロードマップの策定について
  4. その他

4.出席者

委員

小林良彰主査、岡部寿男委員、城石俊彦委員、鈴木裕子委員、竹山春子委員、東嶋和子委員、中野貴志委員、八田英二委員、吉田善章委員

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、西井学術機関課長、降籏学術機関課学術研究調整官、吉居学術機関課課長補佐、小林学術機関課課長補佐、二瓶学術機関課連携推進専門官、その他関係者

5.議事録

【小林主査】  それでは,時間になりましたので,第85回科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会を開催したいと思います。
 まず,事務局から委員の出欠及び配付資料の確認をお願いいたします。
【小林学術機関課課長補佐】  本日は田村委員,原田委員,樋口委員,松岡委員,山本委員が御欠席となっております。
 また,配付資料及び机上資料ですけれども,本日はペーパーレス会議にて実施をしております。配付資料及び机上資料につきまして不足等ございましたら,事務局までお申し出ください。
 また,タブレットの操作等に関すること,また資料の不足等ございましたら,事務局までお申し出ください。
【小林主査】  ありがとうございました。
 本日は,次期ロードマップの策定に向けた議論を中心に行いたいと思います。このため,情報・システム研究機構長で学術会議の第24期研究計画・研究資金検討分科会長を務めている藤井先生をお招きしてマスタープラン2020の状況を御紹介いただき,それとともに,OECDグローバルサイエンスフォーラムの前委員長の永野先生をお招きして,大型プロジェクトの国際動向について紹介を頂くことになっております。これらを踏まえて具体的な審議に移りたいと思います。藤井先生,永野先生,お忙しい中,本作業部会にお越しいただき,まことにありがとうございます。
 それでは,早速ですが,藤井先生,よろしくお願いいたします。なお,藤井先生は10時までということになっております。
【小林学術機関課課長補佐】  あと1点だけ補足ですけれども,資料1ですけれども,今回,机上のみ紙配付とさせていただいております。また,補足資料といたしまして,マスタープラン2020の策定方針及び公募要領につきましてはタブレットに格納しております。これについては,タブレットのタブを机上資料,タブで机上資料に切り換えていただきまして,左側にしおりが表示されておりますが,下から3つ目が策定方針,下から2つ目が公募要領となりますので,適宜御参照いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【小林主査】  資料は持ち帰らないということですね。
【小林学術機関課課長補佐】  そうです。
【藤井情報・システム研究機構長】  本日はお招きいただきましてどうもありがとうございます。この資料は既に公知のことばかりですが,委員会等で承認を得てなく,私が個人的に作ったものですので,そうお取扱いいただきますようお願いいたします。基本的には公知の内容でございます。
 この机上配付の図で御説明したいと思います。これは,大型研究計画の種類とその策定のプロセスについて書かせていただいたものです。上から下におりていくという順番になっております。まず策定の方針です。今,御紹介いただきましたが,昨年12月に策定の方針を公表させていただき,その後2月1日から本年度の3月29日までの2か月間で,大型研究計画の公募をさせていただきました。これらの実施主体は,研究計画・研究資金検討分科会という私が委員長をさせていただいているところでございます。
 大きく分けますと,大型研究計画には3種類ございまして,新規の提案,又は前回の2017年で大型研究計画として掲載されて未実施のもの,重点大型研究計画に選ばれていないものが区分1の大型研究計画提案でございます。左側でございます。
 同じく区分1の重点大型研究計画の継続提案,こちらは2017年に重点に選ばれた計画,又は2014年,17年と2回継続して重点に選ばれたものについては,今回からある条件を満たせば継続を許すという形にしました。これはヨーロッパのESFRIと同様の方針です。ただ,3回9年間継続して重点に選ばれているものはリセットするという方針とさせていただきました。
 区分2というのは,部分的な実施も含みますが,現在実施されている提案です。こちらは前回審議いたしましたが,既に実施されておりますのでリストに載せるかどうかをある要件を決めてチェックいたしました。
 2段目に参ります。学術会議は1部,2部,3部でそれぞれ分野別委員会がございます。その分野別委員会ごとに22の評価小分科会を立ち上げ,各カテゴリーで出されたものを評価いたしました。こちらが2019年,今年の4月から6月でございまして,ここでは個々の小分科会が評価を行い、順位付けをいたしました。これは学術の専門分野の方々が審査をし順位付けをされたということでございます。
 それから,2番目の重点大型研究計画の継続に関しましては,計画内容が大筋で変わらず,かつ活動をしっかり実施されており,コミュニティも計画の継続を求めている。という条件を満たしているかということを分野別の評価小分科会でチェック,審査を行いました。もし条件を満たしていない場合は,継続不承認となり左側の大型に行く。という形になっております。区分2についても,要件の審査はこの小分科会で行い, このようなボトムアップ式の審査方式を採っています。
 分野別の評価小分科会での審査が終わりますと,今度は研究計画・研究資金検討分科会にその結果が集約されまして,まず左側の,大型研究計画の選定を行いました。これはある条件を定めその条件の下選定しております。その中から重点大型研究計画を選定するのですが,その選定のためにヒアリングを実施するので,重点大型研究計画の選定数よりも多い数のヒアリング課題をこちらで選定いたしました。同時に継続の承認を,小分科会の審査結果を踏まえて行い区分2の承認も行いました。
 この後,9月14日から16日に重点大型研究計画の審査小委員会を実施し,そこでヒアリングを行いました。このヒアリングは各分野の評価小分科会の委員長又はその代理の方22名と,私たち研究計画・研究資金検討分科会の委員16名,計38名の審査委員会によって審査をいたしました。今回のヒアリングは,従来と変わり省庁の方々にも公開し多くの省庁やファンディングエージェンシーからもお越しいただきました。
 こちらでの38名の審査結果が, 研究計画・研究資金検討分科会に上げられ,その審査結果の順位に従い更に審査を加えて新規の重点大型研究計画を審議いたしました。
 以上のことに加えまして,策定方針に, 新規の重点大型研究計画はおよそ10件から20件をめどに選定すると記載されている通り今回もその範囲内で選定したということをお知らせしておきたいと思います。
 この数につきましては,2017年度に策定したマスタープランでは28件の重点大型研究計画がありましたが,そのうち18件は2014年のマスタープランからの実質的な継続でございましたので,2017年に新規で選定された重点大型研究計画は10件でした。こちらの数をベースに2020年は10件から20件という目安を作りました。
 この結果は,今後,提言としてまとめ,審査,査読等を経て恐らく2020年1月をめどに公表させていただく予定でございます。こちらには大型研究計画,重点大型研究計画,区分2の大型研究計画と選定に関する経緯等が掲載されることになります。
 なお,今回の大型研究計画で従来と少し異なるのは,最初の提案の部分です。ここで御議論いただいているフロンティアの課題の中で継続になってくる課題が,区分1の一番左側の大型研究計画に提案されてきたことが前回と違う要素になっているということをお伝えしておきたいと思います。
 全体の概要は以上でございます。何か御質問がございましたら是非お願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
【小林主査】  ありがとうございました。質疑に移らせていただきたいと思いますが,まず私から1点だけ伺いたいと思うのですが,従来は区分1と区分2の2区分だったのが,今回,区分1,A,Bのように全部で3区分になります。それぞれの件数を教えていただけますでしょうか。
【藤井情報・システム研究機構長】  件数はまだオープンにしていないため,提言の中で書かせていただきたいと思っております。前回は166件ございましたが,今回は重点の継続と両者を含めても,それよりも少し少ないということ,継続の重点大型研究計画の申請が2017年は18件あり,新規が10件と申し上げましたが,それより少し少ない数であったということを申し上げたいと思います。様々なところから質問が来ておりますが,こちらで公表しますと,全てにおいて公表しなくてはいけなくなりますのでここのところで収めさせていただきたいと思います。
【小林主査】  恐らくほかの方々が知りたいのは,最終的な重点の数を知りたいのだろうと思いますが,私が伺ったのはそこではなくて,申し込んできた数が何件かということですが,それも言えないという。
【藤井情報・システム研究機構長】  それは,先ほど申し上げたように,166に対して150件程度だったということでございます。
【小林主査】  ほかの方,いかがでしょうか。
【中野委員】  真ん中の区分の継続という提案なんですが,これは自己申告なんですか,それとも出されてきてからこれは継続だと委員会の方で判断するのか。
【藤井情報・システム研究機構長】  どうもありがとうございます。これは当初から3つのカテゴリーに分けまして,継続は,このような条件を満たせば,今回は基本的には承認する可能性があるということをお伝えした上で提案していただきました。ただ,提案していただいても条件を満たしていない可能性もありますので,そこは審査をして,満たしていない場合には一般の大型研究計画で評価をする。というプロセスを取りました。
【小林主査】  ほかの方はいかがでしょうか。
 前回に比べて審査の仕方,あるいは基準で何か変更されたことはありますでしょうか。
【藤井情報・システム研究機構長】  今申し上げた重点の継続を行い,提案者の労力を減らしたということが1点と,増えてきている融合研究計画の審査を前回は私たちの研究計画・研究資金検討分科会で行いましたが,そこで審査を行うのはおかしいので,正式に融合研究の評価の小分科会を設けそちらで区分2の実質的な審査,チェック, 承認を行うようにした。というのが一番大きなもう1点の変更点かと思います。
 また,審査の基準は基本的に同様ですが,今回特に強調したところは,今回の計画終了後に,この計画をどのように継続するのか又は継続しないのか,継続する場合はどのように予算を考えているのか等計画終了後のことも判断基準に加えたところが大きく違う点かと思います。
【小林主査】  ほかの方,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 従来のマスタープランですと,表現はよくないかもしれませんが,割とタコつぼ的な審査といいますか,選定で非常に混む分野,具体的に物理ですとか宇宙ですとかというのと,それほど混まない分野というのがあって,そういう形がこちら側にそのまま来るようなこともあったと思う。今回は比較的そういうことはなかったような印象を受けているのですが,その辺は随分改善されたのかなと思っていたのですが,特にその辺,配慮はされていたということでしょうか。
【藤井情報・システム研究機構長】  特段にはしなかったと言った方がいいかと思いますが,今回2段階で審査を実施しましたが,1段階目では,物理なら物理で3分野とか4分野ございますが,そこに専門家の方々が3名ずつほど入りしっかり審査をするという体制で行いました。大型研究計画として学術のバランスを考えたときには,全分野が集まった2段階目の審査でのふかん的で見識ある評価が重要になりました。結果を見るとこの2段階での審査がしっかり機能したのではないかいう感じを受けております。
【小林主査】  そうしますと,2段審査のウエートが従来よりは大きかったのかなということでしょうか。
【藤井情報・システム研究機構長】  基本的には同じですが,各分野の代表の方々が見識のある判断をされたのではないかという感じがしております。
【小林主査】  ほかの委員の方には何を議論しているのだと思われるかもしれませんが,私は最終的に重点大型に何が残っているか知りません。ただ,ヒアリングは傍聴させていただきましたので,従来にも増して非常によく選ばれていたと思います。混む分野が特段減らされているとか,そういう印象は受けなかったです。非常にいいヒアリングだったのではないかと思います。
 私たち傍聴者の扱いは非常によくなかったのですが,課長も来ていましたが,本当に硬いパイプ椅子で,端の方で画面もよく見えなくて,資料も全部回収されてという,扱いはありましたけれども,それは別にして,中身は非常によかったと思います。
 ほかの方,いかがですか。特にないでしょうか。なければ,藤井先生は,この後,別のところへ行かなければいけないので,ここまでにさせていただきたいと思います。今後とも,ロードマップ,マスタープランを参考にしながら進めさせていただきますので,藤井先生とは引き続き意見交換をしながら進めさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【藤井情報・システム研究機構長】  本日はどうもありがとうございました。
【小林主査】  それでは,引き続きまして,ロードマップの策定に当たりまして,これまで欧米の国際動向を参考にしながら議論を進めてまいりました。また,昨今,概算要求に着手されたハイパーカミオカンデと国際費用負担を含めた国際協調というのが重要になってきております。そこで,永野先生には,第8期の本作業部会でヨーロッパのロードマップ,つまりESFRIについて発表いただいておりますが,今回,いろいろな諸外国において実施されている大型プロジェクトの推進方策や研究施設整備に伴う課題など,OECDでの検討を中心に国際動向について発表いただければと思います。
 それでは,永野先生,よろしくお願いいたします。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  永野と申します。よろしくお願いいたします。きょうは,OECDにおける検討はどんなことをしているんだということについて話をさせていただきます。
 1枚めくりまして1ページですけれども,OECDの中には幾つか委員会がありますが,このグローバルサイエンスフォーラムというのは,科学技術政策委員会に幾つか委員会がありますけれども,そのうちの1つということで,3ページを見ていただきますと,1992年にメガサイエンスフォーラムという名前で発足して,99年にグローバルサイエンスフォーラムとなっております。
 何で92年にグローバルサイエンスフォーラムができたかということなんですが,これよりちょっと前に大型加速器を作るということで,アメリカのテキサス州にSSCというのを作ろうという話があって,一方,同じようなカテゴリーのものをジュネーブのCERNでも作ろうということで,両者の戦いが非常に競争が激しくなって,日本にも随分アメリカから参加してほしいというミッションがきました。この争いはアメリカの議会でSSCの予算が非常に大きくなり過ぎたということで却下されたということで,その戦い自体は終わったんですけれども,その後,アメリカ,ヨーロッパ,それに日本も入って,こういうことを繰り返しているのはまずいんじゃないかということで,政府のちゃんとした科学政策を担当している役所,それからファンディングエージェンシーとか実際の現場の人なんかも入った委員会を立ち上げ定常的に意見交換をしておく場を作りたいということになって,OECDというと日本語では経済協力開発機構ということで,そんなところで科学に関係することをやっているのかという話がありますが,OECDはもとをただせば,アメリカのお金が戦後,ヨーロッパに行くときの窓口になって作られた機関が前身ですが,そのときから,組織の名前に科学というのはないですけれども,初めから科学の仕事はあり,結構ちゃんとした仕事をしていたということもあって,この新たな委員会の受皿になったということで,メガサイエンスフォーラムという名前で発足して,だんだん仕事が増えてきたので,途中でグローバルサイエンスフォーラムということになっております。
 これまでの成果としては,いろんな大型施設を作るときの,これはみんな私が委員長となるより前ですけれども,ILLというのはグルノーブルにある中性子炉の機関ですか,J-PARCはいいですね。ESS,これは今作っているスウェーデンの施設です。こういうものについての評価をしたり,下にGBIF,INCF,GEM,SciCollとありますが,どっちかというと幾つかの国に分散しているような施設のネットワークを,どこかでハブみたいなものを,国際機関的なものを作るべきだということを提案して実現しているものが幾つもあるということでございます。
 4ページですが,現在の活動状況。私は2016年末まで委員長をしておりましたので,最近の仕事は余り分かりませんけれども,幾つもやっています。左側の灰色の線で上から3つ目にRIと書いてありますが,これがリサーチ・インフラストラクチャー,研究施設についてのサステナビリティー,それから社会経済インパクトというのが2016年ぐらいから始まっていて,両方とも現在は終わっている。
 赤い線がありますが,春秋,毎年2回開かれるGSFの会議を示しています。一つ一つのテーマごとに小委員会,ワーキンググループみたいなものがありまして,そこに専門家が参加してレポートを作る。大体1年半から2年ぐらい掛けてやるというシステムになっております。
 5ページに行きますと,研究施設についてこれまでどんなレポートが出ていたんだということですけれども,私が知っている限りでは,2008年にロードマップ,2010年に,後で御説明しますけれども,大きな研究施設を作るに当たって,担当者がそういうものをやらなくちゃいけなかったときに,どんな課題が出てくるのかということ。
 2014年には,Distributedと書いてありますけれども,大型施設は大きなところに加速器があるとか,そういうあれですけれども,例えばライフとかバイオのように,いろんなところに遺伝子があるとかネズミがいるとか,そういうことで世界的な協力をするようなもののやり方というのがこのDistributed(分散型)です。
 それから2017年,最近になってきますけれども,国際的な研究施設の有効性また持続性を強化するにはどうしたらいいかというようなレポートが出ているのと,これはどこでも同じだと思いますが,社会経済的なインパクトはどうなのかということについてのいろんな指標を取りまとめたものが最近の報告書でございます。
 7ページのものが今申し上げた中で比較的古い2010年の報告書ですけれども,このときに6ページにあるような,突然,施設を作ることに,どこかのファンディングエージェンシーとか役所で担当になったときに,どんな問題が出てくるんだということで,法律的な問題,経営ストラクチャーをどうするかとか,お金をどうするかとか,どこの国に設置するとどうなるのかというようなこと,運営費の問題とかアクセスの問題,人事の問題とか,国家間の交渉の問題とかいろいろあるけど,どんな問題があるんだろうかということで,2010年のレポートの目次が8ページと9ページです。3番というのが8ページにありますが,法律的,また経営形態に係ることということで,どんな協定を結ぶのかとか,どういうパートナーを選ぶのかとか,どういう協力形態があるのかとか,どういう経営組織にするのかとか,招致する国とそうじゃない国の権限の分け方とか,理事長の選び方,そんなことがいろいろあります。3の2というところを見ますと,今まである施設に作った方がいいのか,新しく作った方がいいのか。3の3はアクセスの問題ですが,これは場所の問題もありますし,データの問題もある。3の4は,国際協力施設,交渉しなきゃいかんのですけれども,どんなレベルの人が交渉したらいいんだろうかということ。3の5になると,場所を選ぶとどうするのか。9ページに行きますけれども,ファンディングはお金の場合もあるし,現物供与の場合もある,これはどうなるんだという話ですね。
 ということがこの2010年の報告書で書かれていまして,10ページに行きますが,この報告書をまとめてどんなことが分かったかというと,研究施設はとにかく一つ一つみんな違うよねという話。それから,本当に国際的な施設を作るのはとても難しくて,初め特に難しいのは,関係者,関係機関を初めの段階から参加させるというのがなかなかうまくいかない。それから,大きな施設がいろいろありますが,一般的に適用される国際的な法的な枠組みというのが決まってないので,ケースバイケースでやらなきゃいけないので本当に大変だという話です。それから,動き始めても,それがずっと安定して動かしていけるということも大変だと。運営の途中で脱退する国がでてきたり,いろいろあります。それから,社会経済的なインパクト,みんなに聞かれるけどどうなんだという話とか,データのマネジメントの話,など多くの課題のあることがわかりました。
 11ページですが,OECDではそういう議論をしていますが,ICRI,International Conference on Research Infrastructuresという会議が2年ごとに,これはもともとヨーロッパでECRIと言っていたんですけれども,2010年ぐらいから日本とかアメリカを誘って,こういうことについて議論しようということで,これはたまたま私が議長をしているときだったので,アテネでやったときに,OECDでの議論を私が紹介しているところがありますが,日本からは出席者がそんなに多くはないので,こういうところに出ていろんな情報交換をするのは非常にいいんじゃないかなと。
 12ページに行きまして,最近のレポートはどんなことが書いてあるんだということなんですけれども,これは2017年12月に出された国際的研究施設の有効性・持続性の強化というタイトルになっていますが,これはまず国際共同による施設と,一国が作ったものでも国際的に開かれた各国の研究施設を対象にして,施設の生涯を対象としていて,作り始める設計段階から建設段階までを①,それから運営の段階を②,やめる段階を③というふうに分けて,幾つか提言を取りまとめている。ただ,どの段階でも共通する問題というのはあって,お金の問題,リスクアセスメントの問題,人材の問題というのがありますと。
 提言は9つばかりありまして,まずビジネスプランというのがあって,国際的なピアレビューを経たビジネスプランを建設着手前に作りなさいということ。それから,設計から建設段階に移る際には,メンテナンスとかアップグレードを見込んだ運営経費収支に関する責任分担を明確にしてから作りなさいと。
 提言の2は,リスク評価とリスクが発生した場合の対応ということです。リスクにはいろんなリスクがある。財源の話とか,参加者が抜けたりとか,科学技術,政治,いろんな観点からリスクがある。そういうリスクの評価とリスク発生時の財源対応の確定を初めにちゃんと考えておきなさいということです。提言の3はデータマネジメントです。オープンデータ方式との適合の在り方,お金を出している国についての特権とか,逆に出していない国を制限するということもあるでしょうから,そういうことについてのポリシーを決めておかなければいけない。利用者の立場に立ったデータアクセスのシステム,研究施設におけるデータ蓄積システムと外部利用者によるアクセス方法。それから,他の機関との連携による効果,それから,施設が運営を停止するときのデータの保存とアクセス方法も大事だということです。
 提言の4番ですが,人事政策。研究施設の経営サイドによるロバストと書いてありますけど,人事計画の作成と柔軟な更新。若い研究者を引き付ける必要がある。それから,施設の技術的な支援のために科学者とエンジニアを引き付けるということも必要ですね。いろいろなレベルの人材の選考,訓練,能力開発,キャリア開発と後継者育成,更に人材の流動化は先端の研究施設の間でも必要ですし,大学との間,企業との間でも同じですと。
 提言の5,中期的ファンディングメカニズムですけれども,これまでにもいろいろな参考となる前例はあるでしょうというようなことです。財源負担者は,運転の期間を通しての安定性を維持するための中長期の財源負担スキームを実現しておくべきである。科学,技術,経営面で適切な活動が維持されていれば,定期的な外部評価を踏まえ,手続上の負担を回避して,毎回,毎回,運営サイドに面倒な事務的な負担をさせるようなことをせずに財源負担のレベルを維持していくべきである。使用料を徴収する場合は,ちゃんと事前に国家間の合意が必要だということを言っています。
 提言の6ですが,コストの最適化。財源負担者と施設経営者は資金を最も有効に使うようなインセンティブを共同して開発すべきである。予算は,研究施設経営者がその時々に決定する優先度に応じて柔軟に再配分(使用時期も含めて),年度を超えてという意味だと思いますが,できるようにすべきである。他の研究施設との協力,例えば購入手続の共通化とかソフトウエアを共有するような研究の効率を害さない節約を奨励すべきである。
 7番ですけれども,最先端の研究施設であり続けるためには,どのようなタイプの利用者に対しても全面的なサービスを提供する。地域のイノベーションハブとなる。ほかにないものを見つけ出す文化を醸成する。才能ある若手を未踏の道に踏み出させる。全てのパートナーと経験,人材を交換する。産業界との連携の重要性を認識する。出身背景の多様化,ジェンダーの同等を推進する。
 8番目,社会・経済的役割の増強。社会・経済的使命の明確なビジョンを持ち,グローバルサイエンスフォーラムの提示する指標,これはまた後で御説明しますが,を用いた定期的な評価。それから,アウトリーチとコミュニケーション戦略。知識・技術移転政策の確立をうたっています。
 提言の9が提言の最後だと思いますけど,施設の運転終了に対する準備。ほとんどの施設にその準備がないけれども,近い将来に利用者に対して価値あるサービスができなくなることが示唆されたら,すぐに資金提供者と運営者は協力して終了段階の計画を策定すべきだと。特に考慮すべき点は,データ・標本の保存,専門知識の保持,人材の円滑な移動。十分な外部評価と選択肢の分析を行うべきである。単にやめてしまうのかアップグレードするのか,目的を変更するのか閉鎖するのかということを外部評価でちゃんとすべきである。この議論は避けられがちだけれども,この分析をしっかりする時間があれば,研究コミュニティとしては利益が多いはずで,議論の根底となる枠組みは設立時に決めておくべきだというようなこと。
 実は,このレポートの前に,2010年のレポートと2008年のレポートがあって,その頃も文科省に出席してほしいということを言ったのですが,出てくれなかった。しかし,2017年のレポートのときは,学術機関課と相談して,国立天文台の井口さん(現在は副天文台長)に参加していただいて,アルマとかいろいろやられているので,これの共同議長になっていただいて,日本のプレゼンスは随分上がったんじゃないかと思います。
 次に,22ページですけれども,これは今年出たレポートなんですね。研究施設の科学・社会・経済的インパクト評価のための参照フレームワーク。これは日本でも当然,あちらこちらから言われる話です。別に日本だけが言われているわけじゃなくて,各国も財務当局からとかいろいろ言われているわけで,前からこれをやりたいということだったらしいんですけれども,この中では25のコアインパクトインジケーターズ(CII)というのと,それとアディショナルインジケーターズを合わせて全部で58のインジケーターが出ていまして,提言としては,研究施設にかかわるコミュニティは,この提案をインパクト評価の出発点として捉える。当該施設に最適な指標・データについてのコンセンサスを得る。これでやれということじゃなくて,参考にしろということです。必要だったら,新しい指標を関係者が作ったらいいんじゃないかということと,施設のライフサイクルの初期に評価の枠組みを決めておき,途中から変えたりしてはいけないということです。それから,3つ目,施設のステークホルダーは,各々の指標データに何を求めるのか,それを政策決定にどう使うのかというのを運営側と協働して決めておく必要がある。
 実際に何が書いてあるかということなんですが,結構膨大なので,実は24ページに英語で書いてありますが,このマトリックスの中に25の指標が入っているんですね。分かりにくいので23ページを作ってみたんですけれども,左側の縦に戦略的目標ということで7つ書いてありまして,最初に,国又は世界の科学をリードする研究施設となるべきである。2番目,イノベーションを支援する施設になっているのか。3番目,地域クラスター・地域戦略の一員となる,また地域協力のハブとなる。4番目,教育,アウトリーチ,知識の普及をやるべきである。5番目,政策立案への科学サイドからの支援をすべきである。6つ目,レベルの高い科学データ・関連サービスの提供。7つ目が社会的責任。
 横に行くんですが,インパクトの方が,科学面でのインパクト,技術面でのインパクト,人材養成・教育へのインパクト,経済面でのインパクト,社会面でのインパクト。
 それでは25のCIIを後で見ていただければいいんですが,例えばS6は研究ユーザー数,S11は大学との共著論文数。Sというのはサイエンティフィックインパクトですね。
 技術面でのインパクトを見るとT18,商業化された特許数,T25,施設を利用する地域事業者数,T28,データの商業的利用・サービス。Tはテクノロジーですね。
 人材養成・教育へのインパクト。H43,養成される学生の数,PhDの数でしょうけれども,Hというのは,エデュケーションインパクト,ヒューマンリソースなのでHなんだと思います。経済面でのインパクト,E35,地域購買事業者数。Eはエコノミーでしょう。
 社会的インパクト,例えばオンラインメディアへの出現回数とか政策立案へのアドバイスをしているか,データ提供しているか,エネルギーをちゃんと節約して使っているかということで,Oというのはソーシャル・アンド・ソサエティーのインパクトです。全部を書くと24ページのようになります。
 25ページ,26ページに一部だけ出しましたけれども,第4表というのがあって,58項目がずっとナンバリングしていろんな説明が書いてありまして,左側がインジケーターで,次がディテール,説明がしてあって,その右側は,どこにデータがあるかという出典というか,そんなようなものが書いてあります。
 26ページ,こっちの方が面白いかもしれませんが,サイエンスはいいとして,26ページはOですから社会的なインパクトですね。これを見ると,上の方は政策立案にどのぐらい研究施設が助言することができたかとか,48を見ると,政策に対して研究所の研究者がどのぐらい貢献できているかとか,そんなことです。51なんかは,その研究施設のパブリックビジビリティ―,すなわち,その研究所の存在が社会からどのくらい見えているかということですが,それを測定する尺度の例として,その右側に例えばとして,オンラインメディアにどのぐらい出てきているかとかが尺度として書かれていて,その右側に,それはどこで誰が提言したかということが書いてあります。これを全部やれと言っているわけじゃなくて,たくさんあるので,運営者とファンディングする人が事前にどれで評価するのか,何のためにそれを使うのかということを事前にちゃんと決めて,必要ならこれ以外のものも別に作った方がいいでしょうということを提言している。
 参考に27ページですけれども,OECDはヨーロッパにあるので,ヨーロッパの話を結構参考にしますが,私が非常に面白いなと思ったのは,ERICというのがあって,European Research Infrastructure Consortiumと書いてありまして,これは何かというと,皆さん御存じのように,国際機関を作るとなると毎回,条約になって国会で批准して成立するということなんですが,そんなことをやっていると5年も10年も掛かっちゃうよという事例が結構あるわけですね。そこでEUでは,2009年にこのERICという仕組みを発効させたのですが,これは何だというと,これを批准すれば,このERICにのっとった国際協力であれば,各国の国会を通さなくても国際的な協力組織を設立することができるということになって,例えば税制優遇なんかができるということで,28ページ,29ページを見ていただくと,これが発効したのは2009年なんですが,その後,結構どんどんできていて,見てみると人文社会系のものもあります。科学技術系のもので言えば,29ページの一番上,2015年のEuropean Spallation Source,スウェーデンのルンド大学の近くに作っている新しい施設,中性子の施設じゃないかと思いますが,そんなものも入っていて,事例が増えています。
 だから,私はこれは非常にいいものだなと思って,たしか前回もこの話をしたと思うんですが,先月,OECDに行っていいよねという話をしたら,OECDの人が,いいんだけど,結構難しいところがあって,EUの国の中でも,確かに国会は通らないんだけど,その国の中で財務省が反対してうまく通ってない国が結構あったりとか,これはできたけど入らない国がまだあったりして,まだ課題はあると言っていました。
 ちなみに,税制優遇ですが,これは当然,公務員とみなされて税金が免除されるということまではやってなくて,ある研究施設が施設の研究設備を買ったときの税金,VAT,付加価値税を掛けないというようなことだそうです。であっても,財務省が反対している国もありますというようなことでした。
 時間を超過しましたが,取りあえず私の説明は以上にさせていただきます。
【小林主査】  永野先生,ありがとうございます。
 それでは,質疑応答に移りたいと思います。どなたからでも,御意見いかがでしょうか。
【中野委員】  国家間というか国を超えたリサーチインスティチュートを作る上での既存のメガインスティチュートというか,もう既に国際的になっている機関の役割というものはこの中でも分析されているんでしょうか。そういう例が結構多いんじゃないかと思うんですけれども。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  2010年のときもそうですけれども,相当な研究施設の責任者,日本ですとKEKなんかに来て,インタビューの結果に基づいてレポートを作っている。どっちかというと,現場サイドの,役所の問題とか課題もありますけど,現場の責任者のインタビューを随分重ねた上でのレポートになっていますね。
【中野委員】  質問が分かりにくかったかもしれないんですけど,新しいインスティチュートを作るときに,既存のインスティチュートが立案,それから実施に対して結構責任を持つという例があるのではないかと思うんですね。そういうメガインスティチュートの役割とかイニシアチブ,それから全てのインスティチュートが次の立案につながるような組織を作れるわけじゃないんだけれども,そういうふうに発展するインスティチュートと,そうはならなくてターミネートしていくものの違いとか,そういうあたりの分析はあるんでしょうか。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  100%の回答にならないと思うんですけれども,2010年のレポートでは,ある新しい施設を作るときに,あるインスティチュートの中に作った方がいいのか,独立して作った方がいいのかというのを随分議論していまして,既存のところに作ると,そこの名前がもう既に有名だという場合は余り苦労しなくていろいろと活躍できる。ただし,長い目で見ると独立できなくて,経営的に縛られるんじゃないか。そういうのがあるので,ケース・バイ・ケースでちゃんと判断すべきだという感じで書いてあったと思います。
【中野委員】  分かりました。
【竹山委員】  御説明の前半で,機関の継続性に関して言及されたかと思いますが,評価によっては機関自身若しくは評価側からのアクションで,クローズという選択はあるのでしょうか?大型の施設を作るとなかなかクローズというのは選択が難しそうですが,実際の事例はありますか。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  クローズする事例は日本でもそうですが,ありますよね。当然,フランスなんかだっていろんな原子力施設をクローズしたりしていますから,それはあると思いますけれども,多分そのときに外には出ない課題,問題がたくさんあるんだろうと思うんですね。なので,そういうことについてちゃんと初めのときに,クローズするならどういう人がどういうふうに議論するのかとか,なるべく決めておかないと,決めておいた方が楽ですよと。閉じるときにたくさんのエネルギーを使わざるをえなくなるよりも,最初に議論しておいた方が科学コミュニティにとってもいいんじゃないかという感じで2017年のレポートで扱っています。
 わざわざ丸1,丸3,丸3としてターミネーションのときのフェーズについてもということを言っているくらいですから,それは大事だということを認識しているんじゃないですか。
【城石委員】  最後にお話しされたヨーロッパの取組といいますか,European Research Infrastructure Consortiumのことなんですけれども,ヨーロッパ,いわゆるEUコミッションがかなり大きなフレームを作って,例えば今だとホライズン2020という大きなプロジェクトが動いていますし,今EUコミッションの中で次の大きな予算のフレーム,ヨーロピアンホライズンという名前だったかちょっとはっきりしませんけど。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  Horizon Europe。
【城石委員】  Horizon Europeですね。そういうものとこのOECDの中に組み込まれているEuropean Research Infrastructure Consortiumというのは何か話合いはされているんですか。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  最後に参考として話したERICはEUのものですね。EUは政策という観点から考えると,非常に参考になることがたくさんある。何でかというと,EUは国じゃなくて国がメンバーの国際組織なので,理屈で説明しないと,もちろん理屈だけじゃないんですけど,理屈が少なくとも通ってないと加盟各国が納得しませんよね。なので,EUはすごくいろんなことを勉強したり,実際に役に立つことを結構していて,これなんかも非常にいろいろ研究した結果,こういう制度をEUが作ったんですね。
【城石委員】  これはOECDそのものではないんですね。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  ERICはEUのものです。
【城石委員】  そうですね。分かりました。
【小林主査】  ありがとうございます。ほかにはどなたか。
 それでは私から。研究施設がだんだん大型化していく中で,やはり国際共同整備というのは1つの有力な選択肢だと思いますが,一方で,国際研究ネットワークをうまく運営できているところと,どうもうまくできていなさそうなところとあるように思うのですけれども,日本ですと宇宙線研とかKEKは比較的うまくやっているのではないかなと思いますけれども,必ずしも全てがそうではないと思います。そういう国際研究ネットワークの強化,人材育成,ガバナンスをやるというのは,日本がどういうふうに今やってきていると永野先生は,あるいはどういう課題があると今指摘できるのか。それから,EUはどういう形で人材育成をしてきているのか,それについて教えていただければと思います。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  これに間接的な話だと思いますが,ネットワークを作ることが大事だというのは,ヨーロッパの人は身にしみているというか,とにかく何をやるにしても,自分の国1つでできないというのがまず前提にあるわけですよね。どう考えたって,何百万しか人口がいない国というのは日本の県より小さい。そんなところができるはずないですから,とにかくネットワークを作らなきゃ何もできないというところが発想の原点。ドイツだってフランスだって同じだと思います。今,英国のブレグジットの話がありますが,科学者はみんな反対しています。
この点は逆に日本が一番弱い点だと思います。現実には日本はネットワークに入れてないことが結構多いですから。人の流動性がうまく実現していません。情報の流動性も,人の流動性があって情報の流動性があるようなところもあると思うんですね。
 今のように,例えばアメリカでPhDを取る人が中国人は毎年五,六千人いて,日本人は180人だなんて言っているのでは,どうしようもない。まずベースとなる人が行き来する人がいないという状態を解消していくべきです。これは日本の本質的な問題だと思いますけど,人が動ける状態を作る,日本にどんどん呼ぶでもいいかもしれませんけど,本当は両方やるべきだと思いますが,呼ぶに当たっても,スイスと比べてもしようがないですけど,日本の大学における外国人の先生の数はやたら少ないですよね。その辺の目標を決めて,たしか今決めてやられていると思いますけれども,若い人が出て行って帰ってこられるというところをちゃんとするのが一番じゃないかなと思います。
 EUはどうしているか。EUはとにかく,簡単だと思うんですけど,EUが何かファンドするというときには,3か国以上の人がいないといけないということが条件になっています。モビリティー以前に,まず人が知り合うというところが大事ですね。EUとかヨーロッパの若い人に対する大きなグラントでは,1年ぐらい外国にいたことが申請の条件になっているんですよね。そうすると,行きたくなくても行かざるを得ないですね。というようにいろいろやれることはある。手段は別にして,若い人だけじゃなくてもいいですけど,モビリティーを上げないと,大型の国際研究施設の運営というのはやれる人が出てこないんじゃないですか。
【小林主査】  ありがとうございます。CERNだけではなくて,E-ELTをみていても,ヨーロッパがやっている指導,イニシアチブがあったら,国際共同が比較的順調に,予算のことも含めていっていて,むしろアメリカ主導の方がつまずいていることが多いかなというのを最近感じたので。
 ほかの方,よろしいでしょうか。それでは,ちょうど時間になりますので,次の議論に移りたいと思います。永野先生,きょうはどうもありがとうございました。大変参考になりました。大型プロジェクトの在り方について,引き続き御助言をこれからも頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,続きまして,次期ロードマップの策定に関する議題に入りたいと思います。本作業部会が策定する学術機関の大型プロジェクトの推進に関する基本構想,通称ロードマップについて,日本学術会議が策定するマスタープランを踏まえて策定することということになります。言うまでもありませんが,マスタープランとロードマップは趣旨が全く同じではなくて,それぞれ違いがあります。マスタープランはマスタープランの考え方で作っていますし,ロードマップはロードマップの考えで作るということになります。
 先ほど藤井先生には,マスタープラン2020の状況の概略を簡単に御説明いただきました。年明けマスタープラン2020策定が,多分1月の学術会議の幹事会で承認を経て公開ということになると思いますが,その作業部会では次のロードマップの策定に向けた基本的な方向性を数回にわたって議論を進めていきたいと思います。1月に向こうで重点が出てから議論するというのはいろんな問題が起きると思います。何か特定のものを入れようとしているのではないか,特定のものを落とそうとしているとか,そういうことではなくて,ですから,学術会議がヒアリングの結果を公開する前にこちらの方向性,方策の進め方というのは決めておきたいと思います。
 本日は,今後の検討の進め方としてこちらから資料を用意させていただきまして,これをたたき台として年内をめどに作業部会としてロードマップの策定方針を固めていきたいと思います。前回までの作業部会で主に進捗評価が議題でしたので,少しおさらいをしておきたいと思います。
 まず初めに,事務局からマスタープランとロードマップの関係について説明をお願いいたします。
【小林学術機関課課長補佐】  ありがとうございます。先ほど主査からおさらいという言葉を頂きましたけれども,事務局でロードマップとあとは学術会議が策定するマスタープランの関係について資料3-1でまとめておりますので,御説明をさせていただきます。
 ページ番号で申し上げれば3ページ目からでございますけれども,まず当方といたしましては,大型プロジェクトの分類といたしまして,大きく,政策的要請に基づくトップダウン型の研究開発と研究者コミュニティからの提案に基づくボトムアップ型の学術研究の2つに大別できるかと考えております。このうちロードマップの策定,活用が行われるのは,この下の部分のボトムアップ型の学術研究に対してロードマップを活用いたしまして,例えばスーパーカミオカンデや,スーパーKEKBなるもの,こういったものを推進しているといったところが現状でございます。
 次のページ,4ページ目でございますけれども,この4ページ目は,具体的にマスタープランとロードマップがどういった関係にありながら学術研究の大型プロジェクトが推進されているのか,その仕組みを示しているところでございます。
 まず,赤色のところですけれども,マスタープラン,これは日本学術会議が策定するものとなりまして,学術全般を展望し,かつ体系化しつつ,各学術分野が必要とする大型研究計画が網羅されております。この中で,速やかに実施すべき計画といたしまして重点大型研究計画といったものが策定されております。ロードマップといたしましては,この審議会,この部会で策定いただくんですけれども,このマスタープランを参考にしながら,優先度を明らかにする観点から,特に計画の着手,具体化に向けて緊急性,戦略性が高いと認められる計画について策定を頂くといったところでございます。
 さらに,ロードマップに掲載されたものを予算要求するに当たりましては,ロードマップで高く評価されたプロジェクトについて事前評価を行いまして,その結果として,一番下の紫色のところですが,大規模学術フロンティア促進事業という形で原則10年間の年次計画を策定し,文科省の審議会で進捗管理等々を行いながら安定的に推進していく,これが大きな流れになってございます。
 次のページ,5ページ目ですけれども,こちらは具体的な件数で示しているところでございます。ロードマップ2017時点の策定経緯ですけれども,まず応募・提案として182計画,これが日本学術会議のマスタープラン2017に対して応募・提案がありました。このうち学術大型研究計画の新規としては163計画ありまして,この中を絞り込むという形で重点大型研究計画に係るヒアリング対象計画,65計画に絞られ,最終的には重点大型研究計画として28計画が策定されたという経緯がございます。
 冒頭申し上げましたこのマスタープランを参考にロードマップ2017を審査いただきますので,前回の2017時点においては,65計画のヒアリング対象計画を基本としながら書面の審査を実施していただきました。書面審査は,辞退が2計画ございましたので63計画を書面審査といたしまして,その中から絞り込みを掛けて20計画のヒアリングの審査を行いました。そして,最終的には優先度の高い計画といたしまして7計画をロードマップ2017で掲載をさせてもらったところでございます。
 続きまして,6ページですけれども,こちらはこれまでのマスタープランとロードマップの策定の状況について概観をしているところでございます。左側にマスタープランのこれまでの策定ないし小改定の経緯が時系列で並んでおりますが,大体3年ごとにマスタープランが策定されているところでございます。ロードマップにつきましても,このマスタープランを参考にしますので,同様に3年程度をめどに策定ないし小改定がなされているところでございます。
 また,先ほど主査からもありましたけれども,ロードマップを策定する上での大きな方向性につきましては,マスタープランが策定される以前,大体秋頃から議論が進められているといったところがございます。
 続きまして,7ページ目以降ですけれども,こちらは大規模学術フロンティア促進事業などについての御説明になります。
 8ページ目ですけれども,こちらも皆さん御案内かと思いますが,大規模学術フロンティア促進事業の現時点での概算要求額についての説明になります。右上に数字が記載されておりますが,前年度予算額343億8,200万に対して408億2,600万円を概算要求しているところでございます。
 具体的な中身ですが,次ページの9ページ目に移っていただきまして,14プロジェクトを概算要求しているところでございます。新しい点といたしましては,右下のところですが,ハイパーカミオカンデ計画の推進,こちらは8月末に事前評価を実施いただきましたので,それを踏まえて概算要求として14プロジェクト目に盛り込んでいるところでございます。
 事務局からは以上でございます。
【小林主査】  ありがとうございます。事務局の御説明の4ページをごらんいただきますと,本作業部会の役割がはっきりとしております。このオレンジのところが本作業部会の役割です。ロードマップを掲載して,その中でどれを事前評価に持ってくるか,これは事務局で判断をしていただくということになります。その事務局が判断した事前評価の対象となる計画について事前評価するのはまた作業部会の役割ということになります。そこで認められるとフロンティアとして予算が付くということになります。
 どれを事前評価に持ってくるのも作業部会がやるというわけにいかないのは,作業部会は予算のことは特に考えてないと思いますので,事前評価で何でも認めても,予算は上限がありますから,それは事務局と財務当局で交渉していただくということになろうかと思います。
 5ページ目のところ,前回のことで言いますと,最終的にロードマップに掲載したのは7計画ということになります。今回は,先ほど藤井先生の資料1をごらんいただきますと,前回とは違いまして,区分が3つに分かれています。区分1,特にAともBとも付いていませんが,左側をA,右側をBとしますと,前回はこういう分け方ではなくて,区分1と2だけでした。
 実は,区分2というのは既に予算化されていますので,多くはロードマップに載ってフロンティア,あるいは全然違うところで,違う省庁で予算化されたものですから,これは今回のロードマップ選定とは関係ないことになります。
 区分1というのは,重点に掲載されたけれども,予算化されていないものということで,これも前回,既に本作業部会でロードマップ2017のときに既に審査済みということになります。ロードマップ2017では採択されてない。そこで計画を変更した方は左側の区分1のAで出し直していますから,それはもちろん今回,対象になるものも出てきます。一方で,計画変更されていないものは区分1のBのところですが,これも少し今回の対象とは違うと理解できるのではないかと思います。
 従いまして,続いて,私から資料3-2,3-3について,簡単に説明をさせていただきたいと思います。基本的には,従来のロードマップのものを参考にしているところでございます。資料3-2をごらんいただければと思います。
 最初のところは少しおいておくとしまして,マスタープランに出てきたのが150件程度というお話でした。最初が200件ぐらいですから,少しずつ減ってはきています。マスタープランは特に大きな問題がなければ,そのままマスタープランとして掲載されてきていたと思います。重要なところは重点に載るかどうかということで,9月の中頃に3日間,ヒアリングが行われました。その件数については,出席をしていましたから知ってはいますが,申し上げることはできませんが,前回とほぼ同じか若干少ないというぐらいの形になります。
 ここからが重要な点になりますが,どう扱うかということで,マスタープランの重点大型研究計画ヒアリングを経て,つまり区分1の左側のAのところ,その中で重点大型計画に掲載されたものとされないものが出てきますが,重点大型研究計画に掲載された計画については,ロードマップの書面審査の対象として,その書面審査の結果,ロードマップ独自の観点から優れた計画と認められたものについては,ロードマップのヒアリングの対象とするということになります。ちなみに,先ほどの事務局が説明いただいた資料3-1の5ページを見ていただくと分かるとおり,重点大型計画は28計画でしたが,ヒアリングをしたのは20計画ということになります。なお,書面審査は重点に載らなかったヒアリング対象も審査として,ここからも書面審査の結果,ヒアリングに持っていったものがあります。具体的に言うと,HL-LHCですが,それがそのままフロンティアにも載って予算化されているということになります。
 その次の2番目のポツになりますが,そのような重点大型研究計画に掲載された計画以外に重点大型研究計画ヒアリングの対象となった計画のうち,書面審査の結果,ロードマップ独自の観点から特段にすぐれた計画があれば対象とするということになります。
 これの2番目のポツがある理由というのは,従来のマスタープランが比較的混み合っている分野と混み合ってない分野で,選ばれているものの基準が少し違うのかなと。優れたものでも混み合っている分野は重点から外れているものも出てきていると。したがって,そういうものはここで少し拾い上げるということでこれが入ったということになります。これはロードマップ2017からです。それまでは重点だけを対象としていました。今回は割とバランスよくヒアリング対象を選ばれていたかなと印象的には思いますが,一応こういう形になります。
 その後の評価方法についてですが,実は当初,マスタープランとロードマップは評価の観点が違いました。ところが,途中からロードマップの評価の観点にマスタープランが評価の観点を合わせてきました。今,字面上は全く一緒になっていますが,このままでいいのかどうかということになります。
 ロードマップ独自の審査の方針として評価の重み付け,共同利用体制,国民の支持,国としての戦略性,緊急性,あとは定量的な指標の設定,マスタープランにはない新たな観点の導入,あるいは審査体制の工夫について少し御議論を頂く必要があろうかと思います。
 それから,書面審査で用いる書類,実はマスタープランの応募は物すごく短いです。正直言ってこれでは分からないということになります。ヒアリングに行って詳しいパワーポイントを見て初めて分かるということがありますが,それは非公開ということになっていますから,当然ながら,こちら側としては,書面審査のときに提案者に対して予算計画,人員計画,施設の詳細,スペック,あと大型施設建設を伴う場合にはどこに作るのか,土地は用意されているのかどうか,あと計画期間終了後どうするのかということについても求める必要があると思います。
 また,フロンティアの促進事業の支援についてですが,支援対象とする事業は国立大学法人運営費交付金等,これが主要な財源となっております。これは従来のロードマップには書いていませんでしたが,国立大学法人や大学共同利用機関法人を実施主体とするものを原則とすると書くか書かないかというのが1つの議論になると思います。これは今,共共拠点もできるだけ連携ネットワーク化を進めると,これは公私立の共共も含めてですから,そういう意味では,公私立の共共が入っていたら駄目という話ではなくて,むしろ申請の実施主体の中核が国立大学法人とか大学共同利用機関法人を原則とするという趣旨ではないかと思います。むしろ,ある意味では,実施主体の中核とするぐらいあった方がいいのかもしれません。
 それから,支援期間については,実施機関のガバナンスとの関係に留意しつつ設定をする。
 現在,フロンティア促進で支援中の事業については,多くが次期のロードマップ期間中に終期を迎えることになりますので,これをどう取り扱うのか。それから,新規計画についてどう取り扱うのかということになってくると思います。ここに濃淡を付けるか付けないかということが議論していくことになると思います。
 今後のスケジュールとしては,マスタープランの重点が公開されるより前には,ロードマップの策定について取りまとめて意見募集を掛けたいと思っております。1月に学術会議幹事会を経て公開された後に,書面審査を募集して書類審査を行い,ふるいに掛けてヒアリング対象を選んでヒアリングを行うということです。
 なお,前回,ロードマップ2017のヒアリングは20件行いましたが,経験から言うと時間が少し足りないと思います。プレゼンと質疑応答の時間は従来どおりでぎりぎり何とかなりますが,その後,協議と評価を入力するのがたしか5分ぐらいしかなかったと思いますが,実際にはプレゼンも質疑も時間オーバーしてきますので,5分ぐらいしかない中で,協議をほとんどできないまま評価を入れていたと思います。
 評価は後から入れれば,送ったらいいではないかという考えもあるかもしれませんが,多分やめた方がいいと思うのは,ヒアリングをやりますと,応募者はこちら側も全部分かりますから,いろんなアプローチをしてくるということもないわけではないので,こういうのは全てオープンに公平にやるべきなので,その場で評価を入れるべきだと思います。そのためには,質疑等を入れる時間,入力の時間が20分は欲しいと思います。具体的には,実質15分ぐらいになると思います。それぐらいですから,ヒアリング対象というのは,前回,30件で3日間でしたでしょうか。皆さんを拘束するので,それが限界だろうと思います。ですから,そうすると,30件よりは増えることは望まない,個人的には望まないということで,それでも時間を10分延ばせば,終了時間は遅くはなるということは御了解いただければと思います。
 それから,続いて資料3-3をごらんいただきたいと思います。実際に書類審査で求めるものとしての案ということになります。私と事務局で御相談をしつつ作ったものですが,2ページ目は従来と同じです。
 3ページ目ですが,丸2のところ,国費だけではなくて,幾ら海外の研究機関が資金を出してくれるのか,外部資金は科研費等,独自資金,そのほか含めて。できればここに金額だけではなくて,決定済みのものと申請中のものと分けるようなものがあってもいいのかなという気がします。そうではないと,当てがないものばかり書かれて,たくさん持ってくると言われて,採択後に実はそうではないと言われても困るので,そこのところは少し区別した方がいいかなとは思います。
 それから,4ページ目のところで,予算の配分計画と観測時間なり稼働時間なりをどういうふうに共同利用するのかということを書いていただくということです。そして,あとは大体従来というか前回のロードマップ2017と同様ということになります。
 計画期間終了後の方針について,先ほど永野先生からも御指摘ありましたが,これについても明確に書いていただくと。もっと予算まで含めて書いていただいてもいいのかもしれません。
 最後のページが実施機関のどのレベルまで合意ができているのかということになります。
 こちらが案ということにしたいと思いますが,どなたからでも御意見があれば御指摘を頂ければと思います。これは別に何もこだわるものではなくて,基本的には前回のものを多少微調整しただけですので,どんどん新しくしていければと思っております。どなたからでも御意見を頂ければと思います。
 私から1点。施設を作る場所,これを明記していただいた方がいいのではないかなと思います。こういうすばらしいものを作ることは結構ですけれども,どこに作るのかということが決まってないと困りますので,具体的に住所まで書いていただいて,合意が取れているかどうかも,区別して書いていただいた方がいいのではないかと思います。つまり,そこが既に当該申請機関あるいは一緒にやる海外の研究機関の所有している土地なのか,それともそうではないけれども,地元の自治体が合意をしているのか,更に地元の住民が合意をしているのか,そこまでいかないと国外だけではなくて,国内でも予算を付けても,迷惑施設と思われがちなものはなかなか作れないということも起こり得ないわけではないので,後から問題が起きるよりも,最初のうちからそこはきちんとクリアしておいていただきたいという意味で,場所も書いておいていただければと思います。
 あとは,前回で少し気になった点を言うと,当該施設のスペック,仕様と,それと競合するであろう海外施設のスペックの比較表,これが大事だと思います。どの程度,申請計画で作るものが国際競争力を持っているのか。国際競争力を持たないものに巨額な予算を付けるというわけにもいかないので,そういうスペックの比較表も必要なのではないかなとは思っています。
 ほかの方,いかがでしょうか。中野先生。
【中野委員】  人員というか人件費なのか,人員なのか分かりませんが,既存の施設のアップグレードという案が結構あるんじゃないかと思うんですけれども,そのときにスクラップ・アンド・ビルドにどれぐらい傾けるのかとか,あるいは既に有効活用できる人員がどれぐらいあるのかという情報は,この書類では見られるようになっているんでしょうか。
【小林主査】  それについては,今走っているものがあるものと全く新しいもので別の書類を作るということになるのでしょうか。
【中野委員】  どうなるか分からないんですけど……。
【小林主査】  どちらの御提案ですか。別の書類を作るという御提案なのか,それとも1つの書類で作るのか。
【中野委員】  1つの書類で何らかの形で,人件費といっても,人件費が計画全体の何割を占めているのか。既にどこまで見込みがあって,今回新たにどれぐらい必要かというところが分かった方がいいんじゃないかなという気がするんです。
【小林主査】  それは様式3-3の3ページ,予算計画丸1のところで,この一覧で人件費の割合は分かります。あと,人員計画のところで,ここで,今の中野先生の御意見ですと,例えば新規で雇う人,これですね。機関内の人員と機関外からの人員。機関内からの人員が新規と後継を分けないのであれば,後継であれば,今そこで働いている人ということになるでしょうし,新規であれば,今フロンティアでは働いていないけれども,申請した機関で働いている人ということになると思います。ですから,ここで分けて見るということではないかと思います。
 ほかの方はいかがでしょうか。
【鈴木委員】  初歩的な質問になると思うんですけれども,計画の中に何を評価の観点と考えることができるか。つまり,何を成果として考えているかみたいなことも入れてもらっている様式になっていると考えていいんですか。
【小林主査】  御意見としてはいかがですか。
【鈴木委員】  これで見ると,計画とかお金とか物量をどれだけ投入するかというのは,予算を作るために必要ということで書かれているように思うんですけど,どこまでが予定されている計画なのかという狙い,ターゲットもこの中である程度記載していただくことになっていると考えていいでしょうか。どこで成果が出るかとか,若しくは何をもって成功,若しくは不成功と考えるかというのが分かると非常に有り難いという点なんですけれども。
【小林主査】  つまり,御質問ではなくて,成果がないので,成果を入れろという話ですよね。
【鈴木委員】  もしないんだったらそうです。
【小林主査】  それは見ていただいたとおりです。そういう意味では,先ほどの永野先生の御発表,非常に参考になると思うのですが,特に23ページのところ,こういうところが,商業化された特許数とか,養成される学生,PhDの数とか,データの商業的利用サービスとか,この辺はとても参考になると思いますので,そういう意味では,今鈴木委員の御指摘もありましたとおり,成果,これも当然,書面で長期目標を立てていただいて,後で進捗評価なり中間評価なりというときに,それを達成しているかどうかというのを入れていただくのがいいのではないかなと思います。
 具体的に言うと,国際共共拠点を選定したときの一連の指標が非常に参考になるのではないかと思います。具体的には,どれだけ論文を書いたとか,国際共著論文がどれだけ出たのだとか,人間文化であれば国際共著になると思いますが,そういうものです。あと特許数とか,学生の支援とか,海外から獲得する資金とか,できれば10年後にどうだというよりも,途中,5年目ぐらいでどこまでやって,10年目でどこまでやってという2回ぐらいに分けてもいいと思いますけれども,何か成果を入れていただくと。これは非常に重要ないい御指摘だと思います。
 永野先生,何かございますか。この書類,資料3-3はもっとこういうものを入れるべきというのが。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  今の鈴木委員がおっしゃったように,23ページというか24ページを見ながら,そういうのがないと,どうせ後で評価するわけですよね。後で評価するときに,突然言われるとやっている方も困るわけで,逆に言うと,あった方がやりやすいんじゃないか。お互いにやりやすいんじゃないかなと思います。
【小林主査】  おっしゃるとおり,最初に書いておいてもらった方が後で評価するときに,こういうふうにやると言っているのにやってないではないかと言えるわけです。
【永野OECD Global Science Forum前委員長】  やる方もちゃんとやりましたと。
【小林主査】  そういう意味では,その方がいいと思います。
【竹山委員】  通常の申請書はイントロダクションやミッションステートメント書き込まれることで,必要性が把握できますし,具体的な情報がもうちょっと出てくるのかと思っていたんですけれども,そのような内容を明記された申請書類はないのですか。
【小林主査】  マスタープランの書類が来ます。逆に言うと,それはそこに書いてある。逆に,予算とか人員が書いてないということになります。
【竹山委員】  すごく枚数が少ないですね。
【小林主査】  見開き2ページぐらい。
【竹山委員】  それを見れば,ミッションステートメントは十分理解できるのでしょうか。
【小林主査】  そうですね。少なくとも,それで向こうは選んでいるわけですけど。
【竹山委員】  その分量で可能ということですね。
【小林主査】  ヒアリング対象。非常に難しいのは,改めて書いてもらうというのもありだと思います,改めて。ただ,そのときに,マスタープランに書いたものと変えて書いてくるということが起こり得るわけです。それをどうするかという問題が。どうぞ。
【中野委員】  見開き2ページ,ちょっと足りないんじゃないかという感じが非常にして,マスタープランに書いたものを書き替えるというのは非常にまずいと思うんですけれども,それを更に説明するという形できちんと書いていただいた方がいいかなという気がします。科研費でも大きなものは最終的にヒアリングで一本勝負という感じでやるんですけど,これはさすがに金額とか期間とかを考えると,書面審査は科研費なんかよりもずっとずっと大事なんじゃないか。ヒアリング,下手くそな人がいるので,ヒアリングが下手くそだというだけで本当に重要な課題が落ちてしまうとか,その逆のことが起こることを心配します。
【小林主査】  どんどん私たちの仕事が増えていくのですけれども。どうぞ。
【西井学術機関課長】  御説明をしておりませんけれども,資料の中のページ数で言いますと,ずっと後ろの方に参考資料というのがございまして,別紙の3というところでございますけれども,66ページでございますけれども,資料番号は参考資料の中の1です。参考資料とある束の中の別紙の丸3というところでございまして,ございますでしょうか。69ページです。
 ここに簡単に,今回のマスタープラン2020で使われております評価の観点,先ほど小林主査からコメントがございました,実際にはロードマップの前回の評価の観点とほぼ同じ柱立てになっておるんですけれども,それとロードマップ2017の当時,策定する際に改善の方向性というのを作業部会で作っていただきまして,それに沿いまして,こういった形で柱立てを作っていただいて,更に具体的な視点というものも作っていただいたんですけれども,それに沿ってロードマップ2017は作られてございまして,今回,ロードマップ2020というものを作ることになりますと,ロードマップ2017でお作りいただきました評価の観点でありますとか具体的な視点というものを踏まえてということになるわけでありますけれども,今後の作業部会における検討の1つの大きな課題といたしましては,先ほどの主査にお示しいただきました文章に基づきまして,この観点なり視点をどのような形で充実ないしは改めて,これに基づいて,そういう意味では,先ほどの提出資料に必要な情報をその中に入れていくかどうかというのは必要な作業になってくるのではないかなと思われますので,1つ御議論いただければと思っておりますのは,こうした観点であるとか視点について,先ほど来の永野先生の御説明なども踏まえて,何か追加するようなことが必要であるのかということと,合わせて,今のマスタープランで提出されております,既に作成済みの書類に加えて,今回,改めてロードマップのために御提出いただく書面にどのような内容を追記してもらうかどうかといった実務的な作業になってまいりますけれども,ということについても順次,御検討を進めていただくという順番になろうかなと思われます。
【小林主査】  それで今までの議論を進めてきて,1つ言えることは,研究成果,事業の成果,研究だけではなくて教育も含めて,その成果を入れるべきだと鈴木委員からお話がありました。あと私からは,研究の妥当性とは別に現実性の問題として,建設地が既に用意されているのか,合意ができているのかというのを入れた方がいいのではないかということです。あとは,施設のスペックがどれくらいで,国際的な競合施設のスペックとの比較対照表,これが必要だということになります。ですから,研究成果としては,例えば,これは分野によると思いますが,何年間でどれくらいのレベルの何を上げるのか,それが温度なのか感度なのか,それは物によって違うと思いますけれども,そういうことも具体的にできるだけ数字で書けるようなものがいいのではないかというところになります。
 あと,終了後の予算計画も出していただいておいた方がいいのではないかなと思います。そうでないと,何でもかんでもまた学術機関課が面倒を見てくれると思い込まれても困るので,まず自助努力が必要なので,終了後の予算計画はどうするつもりなのかということもきちんと書いていただいた方がいいのではないかと思います。そういう課長の御説明のとおり,今の69ページを見ながら何を付け加えるかということです。
 あとは,お2人の委員から出てきたのは,マスタープランの応募の書類がありますが,確かにあれは短いので,少なくとも研究課題,申請課題を変更されるのはまずいと思いますが,課題とか趣旨は変えないで,もう少し説明を詳しく書いていただくというのが頭にあった方がいいのではないのかということです。ヒアリングまで行けばパワーポイントが経験上,五,六十枚の厚いパワーポイントがやってきますけれども,それを選ぶためのものですから,それに相当する程度のものをある程度,出していただくということになると思います。ですから,重点のヒアリングが50数件ですから,掛ける50数件の書類は見ていただくということになりますので。
 ほかに何かあるでしょうか。
【岡部委員】  国のいろんな施策でオープンサイエンスということが強く言われておりますので,やはりこういうところでオープンサイエンスへの取組というのを明示的に書かせた方がいいと思います。もちろん,分野によって全然特性が違うわけですけれども,それぞれの特性に合わせて精いっぱい頑張っていただくということを求めるというスタンスを部会として取ったらどうかと思います。
 以上です。
【小林主査】  データ公開ですね。具体的にデータ公開の計画はどうなっているのかということですね。
 ほかにはいかがでしょう。
【中野委員】  確認ですけど,今回もこちらのヒアリング対象というのは,学術会議の方でヒアリング対象になったものは全て書面の対象にするということ,それは決定……。
【小林主査】  それでよろしいでしょうかという提案をしているわけです。
【中野委員】  前回,それで拾い上げられた課題があるとしたら,今回,急にやめるというわけにはいかないかなとは思います。
【小林主査】  それは何とも言えません。というのは,重点は1月にならないと公開されないので何とも言えません。公開されてからの議論もできないし,あれが落ちているから入れようとか,あれが落ちていないからやめようとか,そういうふうには議論できないので,今公開前に議論できることとしては,ヒアリング対象までいったものは書面の対象とすると。ただ,当然,濃淡は付くわけで,先ほどの資料3-2を見ていただくと,重点に載ったものの中で優れたもの,載ってないものの中で特段に優れたもの,その違いを聞かれても説明できませんけれども,特段に優れたもので,正直言って中野先生がおっしゃるとおり,プレゼンには上手下手がありますので,向こうも向こうでのヒアリングもそうだったと思いますから,そういうことはあると思います。
【城石委員】  一般的なコメントなんですけれども,前回もそうなんですけれども,評価をするときにリサーチ・インフラストラクチャーとしての性格が非常に強いものと,それ自体が非常に大きな成果を生むという性質のものと,その中間系のものといろいろあると思うんですけれども,そこはもうフラットに考えて評価していくということでいいんですね。
 そこは基本的なスタンスを決めておいた方がいいという気もちょっとするので,例えば,既にフロンティアで動いているSINETというものが今プロジェクトで動いています。これは研究基盤中の研究基盤で,ほかのものとフラットに比較できるかというとなかなか難しい点があるような気もします。OECD,先ほどの永野先生の話もそうですし,EUコミッションの中でも,インフラストラクチャーというものは,ある面,項目を分けて動いているというものがあります。例えばホライズン2020の中でもインフラストラクチャーに関する専門的なフレームがあって,そこはそこだけでやっているんですね。ところが,日本は完全にそこを渾然(こんぜん)一体として評価しているというのが現状です。
 それはいろんな事情があってそれで仕方ないと思うんですが,今回の評価あるいはヒアリングのときに,そこは,それ自体が成果を生むというものと,正に研究基盤というものをフラットに,最終的にそういったものを全部通じて,最終的には研究としてのアウトプットがどれだけ出てくるかということを考えて評価していくということで,皆さん,合意するかどうかというところは決めておいた方がいいような気がします。
【小林主査】  それは割と最初の方の作業部会で議論したとは思いますが,それを分けることは難しいと思います。というのは,EUと比べて予算の問題もありますので,インフラでこれだけ,あれでこれだけというわけにもいかないと思います。ですから,それは成果の表現の仕方で変えて,その項目はどの成果で評価するかということになると思います。SINETは言ってみれば,科学技術・学術の動脈ですから,あれが詰まれば心筋梗塞が起きるということになりますので,それだと利用者数とかですね。でも,ダークマターも自分で作っていますから。そのスペックも恐らく評価の対象にはできると思いますけれども,それは分けることは難しいのではないでしょうか。ほかの方,いかがでしょうか。SINETとほかを分けるというわけにはいかないように思います。
【城石委員】  今のことに関することなんですが,評価軸そのものが違ってくる可能性があると思うんですね。ですので,そこは評価軸そのものを複眼的に設定するというのであればクリアできると思うんです。
【小林主査】  評価の項目は複眼的にするのではなくて,それは戦略性であるとか妥当性であると。何をもって妥当と見るかの基準は違うということですね。ただ,項目の見方は複眼的であると思っております。そうしないと,SINETを初めからありきと,残りについてだけ議論しましょうという話になってしまいます。そういう話ではないと思います。
【城石委員】  戦略的に,日本のサイエンスにとって非常に重要だという観点は一番重要だと思うんですけれども,基本的にはそれに乗っかって評価していくということでいいんだと思うんですけれども。ということでいいですよね。
【小林主査】  波及効果が大きいもの,SINETは一番大きいと思いますが,そうしたものと波及効果が割と限定的なものというのも当然あります。その科学分野に限定されるものがあります。
【中野委員】  今回,ターミネーションというか終了後どうするかということを聞かれるというのは新しいと思うんですけれども,その際に,ずっとターミネートしないという戦略もあり得ると思うんです。だから,施設を維持するために組織を作るんですけど,その組織というものが非常に戦略的であったら,例えばCERN的な組織というものを目指していくのであったら,そういう戦略もあり得ると思うんですけど,そういうものを書くところがあった方がいいかなと。あるいは,ターミネーションというところでも構わないんだけど,今後どうするかということを考えたときに,そういう方向性も示せるということが書けた方がいいんじゃないかなと思うんですが。
【小林主査】  終了後の将来計画ですね。ついでに予算も付けて書いてほしいですね。将来計画,大きくて全部国で面倒を見てくれと書かれても困るので。
【中野委員】  それは時代に逆行しているので,特に国外からのコントリビューションをどう持続的に我が国に入れていくか,そういう戦略をきっちり入れてもらえると非常に有り難いかなと思います。
【小林主査】  そうですね。成果,将来計画,スペック,土地,そういうこと。
 では,八田先生。
【八田委員】  1つお教えいただきたいんですけれども,3年前,実施機関における意思決定の状況という書類というか資料を出していただいた。これはどう評価するんですか。というのは,実施計画を役員会でオーケーを得ているとか,長(おさ)までがオーケーだとか,予算が認められた,認められていないとかいうところがありますけど,これはヒアリングとか審査ではどのような評価をこれによってすることになるんでしょうか。
【小林主査】  それも今,作業部会で決めるということになると思います。ただ,8ページの実施機関,実行組織の長(おさ)の了承はまだ得ていないというと,評価が低くなるのではないですか。それは皆さんが何点を付けられるかということになると思います。
【八田委員】  それと,ヒアリングには実施機関の長(おさ)は必ずしも別に来られない。単に計画の提案者だけ,その関連の方だけでいいということなんでしょうか。
【小林主査】  特にそういう決まりはないですが,大体学長さんはいらっしゃいます。
【八田委員】  ということは,オーケーされているという前提ですね,来られたということは。
【小林主査】  必ずしもそうではないです。ある学長さんが,自分はここに来ているけれども,役員会はこれからという説明をされた方もいらっしゃいます。
【八田委員】  分かりました。
【岡部委員】  このページがたまたま出てきたので,真ん中辺で「実行組織へ計画について説明し,予算措置が見込まれる場合は,実行組織として推移推進」という,これは単なる推進の間違いですか。よく分からなかったんですけど。
【小林主査】  これは事務局,どうでしょうか。
【小林学術機関課課長補佐】  恐らく誤字だと思いますけれども,ロードマップ2017時点の段階でこの文言が使われておりますので,中ポツを付けるなり,適切な文言に直したいと思います。
【小林主査】  ほかにはいかがでしょうか。あと,私が学術会議のマスタープランのヒアリングを聞いて非常に悩んでいることがあって,優れた計画なのですが,明らかにほかの省庁の所管じゃないかというのがあります。これはどう扱えばいいのか。それも優れた研究だから載せるのか,それはちょっと文科省と違うでしょうということで御遠慮いただくのか,それはどうするのか。つまり,ロードマップとフロンティアの関係になるのですが,フロンティアの前提となるものをロードマップにするのか,それともロードマップは飽くまでもいい計画を載せるものにするか。フロンティアに前提になるものもあれば,フロンティアの前提にならないものもありますという,どちらのスタンスでいくべきなのかということですが,これはいかがでしょうか。
【村田研究振興局長】  基本的には学術フロンティアという裏打ちの予算があって,それに載せるということを念頭に置いた形のロードマップだと思っています。一方で,今お話があった他省庁の所管のものについては,他省庁が政策判断の上でどう対応するかということですので,こちらの土俵で何かそれを全部決め切るということは,実際には現実的ではないんだろうと思っております。ただ一方で,そういう趣旨も含めて,出てきちゃったものをどう対応するかというのは,中でまた整理をさせていただきたいと思ってございます。
【小林主査】  実際に当該の申請を出された人たち,つまり,当日のヒアリングというのは文科省だけではなくて,ほかからも来ていましたので,ほかの予算を持っているところも来ていましたので,そこはそこでじっくり見ていましたので。ですから,文科省のフロンティアだけを目的にマスタープランに応募したわけではどうもなさそうと。違う方で予算を取ることを目的に,でも,やはりそのためには重点に載っている必要があるとか,そういう感じだったみたいです。
【西井学術機関課長】  前回のロードマップの考え方でありますと,2017,この場合はJAXAのものも含まれております。ただ,これは作業部会の中のいろんな御議論の中で,実際上はフロンティア予算との関係というのが第一義的に,先ほど局長が申し上げましたようになりますので,そうなりますと,先ほどの主査のペーパーにもございますように,国立大学の運営費交付金等ということですので,実施主体が国立大学法人でありますとか,あるいは大学共同利用機関法人となるものにフロンティア予算の実施主体というのは,少なくとも代表者としては限定されてきますので,そういう意味では,前段階のところ,ロードマップのところはJAXAも含めて,場合によっては他省庁も含めて学術的に意義のあるものであり,それが実行可能性が高いようなものであれば,議論の対象にはなり得るのではないか。他方,フロンティア予算の中で拾うものについては,今の予算,行政上の仕組みからすれば,実施主体も限定されることになるのではないかと。
【小林主査】  フロンティアはもちろんそうなのですけれども,ロードマップをどうするかですけど。ロードマップについて,フロンティアに行くものを前提と考えるのか,そうでないものも入れるということをするかということです。
【西井学術機関課長】  これは,第一義的には学術的に意義の高いものでありという,省庁によってどう分けるかということは,実質的にはそうなることになるかもしれませんけれども,今お示しいただいてこれまで御議論いただいている流れからしますと,そこについて具体的に限定的に排除してしまうということにするかどうかについても,今後の部会の中での御議論になるのかなと思います。
【小林主査】  抽象的な議論で,聞いている方は何だか分からないと思いますけれども,たまたま課長がいらっしゃったときに発表,プレゼンがあるものは,明らかに文科省とは違うものがあった。
 どうぞ。
【吉田委員】  そのことに関して意見を述べさせていただくとすると,やはり学術会議で学術の重要性というものは議論されていて,それは恐らく最大限,尊重しないといけなくて,私,よく知らないんですけど,この委員会の役割は,予算化されて具体化されていくものを少し違うディメンションで,軸で評価するということなのかなと。そうしないと,何らかの追認とか,それをリバイスするということは,学術会議との関係から見てもあるので,むしろ,具体的に予算化してそれを緊急に推進すべきものとしての位置付けを選ぶと特化した方がいいのではないかなと私は思いますが,いかがでしょうか。
【小林主査】  追認するものは全くないです。私は以前,向こうでマスタープランを作っていた側ですけど,これは,こういうものができたらいいなという夢も含めてマスタープランにする。だから,現実性があるものもあれば,全くないものもあります。例えばこういう施設が欲しい,どこに作りますか,土地はどこに作るのですか,それは文科省が用意してくださいというものも出てきます。だから,むしろロードマップで重要なのは,69ページで言うと計画の妥当性です。本当にそれが実現可能なものなのかどうか。あと,国際競争力が本当にあるものなのかどうか。それによって,巨額なお金を使ってどういうアウトプット,アウトカムが出てくるのか,そこまでここはきちんと見ていくことになります。大体,スペックも決まっていなければ予算も付けようがないです。スペックが決まっていないものは,正直言って重点にもありました。これまでの話です。今回は分かりません。そういうものは,ここは対象としては,評価にはできないということだと思います。そこは全然違うと思います,マスタープランとロードマップというものは。ロードマップというのは,飽くまでも実際に実現するということが可能であることを前提にしていると思います。
【城石委員】  学術会議で分科会の藤井先生が応募要項を出されたときには,やはりフロンティアの予算だけでいろんなものを動かしていくというのはかなり大変だというのが現実として見えてきているので,ほかの省庁からも予算獲得ということも踏まえた上でプランニングをされたらどうですかということをかなり主張されていたように思います。ですので,多分マスタープランを出した人たちは,必ずしもフロンティアということだけを考えずに,もうちょっと期待感を持って出している可能性があるのかなという気はします。
 そうすると,問題は,先ほど主査が言われたことに尽きるかなと思うんですけれども,つまり,ロードマップの位置付けをフロンティアとくっ付けて,かなり結び付けて取られるのか,それともロードマップとフロンティアの間にはミシン目があるんだという形で考えるのかというところは非常に重要なポイントになるんじゃないかと思います。それは,申請を出した側の立場を考えたときには,そこはいいかげんにしておくのは不誠実なことになってしまう。あるいは,藤井先生の立場も少し悪くなるかなという気がちょっとします。
【小林主査】  いかがでしょうか。マスタープラン,ロードマップ,フロンティア,3段階ある。マスタープランははっきりしていますし,フロンティアもはっきりしています。ロードマップをどこに位置付けるのかということです。マスタープランの中で現実的妥当性を持ち,優れた計画として位置付けるのか。フロンティアに持っていける可能性があるものを条件に加えるのか,ここのところです。いろんな考え方があると思います。飽くまでもフロンティアに持っていけないものは入れてもしようがないという考えもあると思います。これも1つの考えです。もう一つは,ほかの省庁が予算を付けてくれるのだったら,それもロードマップの成果になるかなという考えもないわけではないと思います。別にきょう全て決めるというわけでもないですが。
【村田研究振興局長】  そこのところは今いろいろ御議論いただいて,また我々の方でも少し整理させていただきたいと思うんですが,1つ申し上げられるのは,この会議自体のミッションとしては,飽くまでも文部科学省の諮問の機関として,端的に言うと,予算で言えば,我々の予算の範囲で対応できる部分について,それは端的には学術フロンティア,あるいは関係の予算もあるかもしれませんけれども,それについてロードマップを念頭に置きながら作成していただくと。ですから,逆に今のお話で言うと,少なくとも他省庁の所管に属するような予算あるいは政策について,この土俵の中で結論を出してこれを推進するとか,そこは土俵の問題として難しいのかなと。ですから,逆に言うと,そこは除いて,文部科学省のテリトリーの中で主として学術フロンティアということを念頭に置きながら現実的な実現可能性ということを踏まえて御議論いただくというところが土俵の設定として。あと,具体的に,学術フロンティアとの結び付きをどこまで厳格に考えるかというのは,また御議論があるかと思いますけれども,役所の感覚としてはそういう整理かなと思ってございます。
【岡部委員】  ただ,文科省であっても,学術フロンティア,先ほどの実施主体は国立大学ないし大学共同利用機関法人ということだとすると,例えば私学から提案されているものは,マスタープランで重点に位置付けられても,ロードマップとしてはお呼びでないということになるのか,そこは明確にしておいた方が,むしろ,フロンティアに出すためのものだということであれば,実施主体,機関を変更してみたいな話も出てきますよね。そこははっきりさせて,皆さんにエフォートを使っていただく,書類を書いていただくので,その前にそこははっきりさせておいた方がいいんじゃないかなと思います。
【村田研究振興局長】  先ほどのロードマップとフロンティアをどこまで近付けるかという話になると思いますけど,現行の仕組みの中では,フロンティア事業は先ほど申し上げたような形になります。一方で,ロードマップは前回のものを引っ張るわけじゃないんですけれども,考え方としては,予算措置を必ずしも保障するものではないという言い方も一方でしております。それは,ある意味で,ロードマップに掲載されたからフロンティアになりますよということではなくて,例えば競争資金などを確保していただいて,一定のロードマップの中での質を確認した,優先度を確認したということを踏まえて,それぞれのステークホルダーが競争資金などを支給して,その際のある種の参照にしていただいて,優先的に支援していただくという意味では,実施主体は私学であったりすることも当然考えられることではありますので,これも文科省のある意味,施策の中で実現はできるものでもありますので,そういう意味では,ロードマップはそこもテリトリーにするという考え方を,少なくとも2017年の際は取っておりましたので,それを2020年の段階でどういう形にしていただくのかということはここでお取り決めいただければと思います。
【小林主査】  現実には運営交付金でやっていますので,実際に今まで,私学が中心の実施主体で出してきたものでフロンティアに採択されているものはないと思います。だんだんマスタープラン,学術会議の応募が減っている理由はそこですね。200が百何十かになって160になって今回150ぐらいというのは,私立が出しても運営交付金だから無理だろうと思っているところは多いと思います。でも,それが事実であるならば,私は書いた方が誠実ではないかなというのが先ほどの資料3-2のところです。
 ただ,実施主体とするというと強過ぎて,連携ネットワークも全部排除するのかということになりますから,実施主体の中核とすると。つまり,連携で今皆さん出してきていますから,複数の大学とか,あるいは機構も絡んでというときに,そこに私立が1校でも入っていたら落としますと読まれると困るので,中核とするぐらいにした方がいいのではないかなとは思っています。運営交付金と言われれば,そこはそう理解せざるを得ないのかなとは思います。現実的には,私立が申請の中核となる計画に運営交付金を出すことは無理だと思います。そうであれば,きちんと書いておいた方がいいかなという気はします。
 いずれにせよ,きょうで全てを決めるというよりも,きょうはむしろ頭出しであることと御理解を頂ければと思います。今後,11月,12月,何回かで,年内で,きょうの御議論を踏まえて,永野先生のきょうの御発表も大変参考になりました。
 最後の議題で時間がなくて恐縮ですが,事務局から令和2年度の概算要求の状況について報告をお願いしたいと思います。
【小林学術機関課課長補佐】  時間が超過しておりますので,資料4に基づきまして簡潔に御説明をさせていただきます。
 ページといたしましては,冒頭部分のあたりは飛ばしていただいて,7ページ目から御説明させていただきますが,7ページ目,通し番号だと見えないですね。右肩の数字番号で7ページ目になりますが,研究力向上のための共同利用・共同研究体制の強化といたしまして,これは当課,学術機関課が主に所管している予算をまとめたものになります。概算要求額といたしましては518億円になります。
 右の部分が先ほど御説明させていただきました学術研究の大型プロジェクトの推進というフロンティア事業の金額,408億円になります。左側の部分は,こちらは大学の共同利用・共同研究拠点の予算といたしまして110億円を計上しているところでございます。
 また,8ページのところといたしましては,こちらは特色ある共同研究拠点の整備の推進事業といった事業も当課で実施しております。こちら,特色あるといたしまして,公立大学及び私立大学を対象として共同研究拠点の整備を進めるといった事業になっております。こちらにいたしましても,概算要求額といたしましておよそ7億円を要求しているところでございます。
 また9ページ以降ですが,共同利用・共同研究拠点の国立大学,公立大学,また私立大学,さらにはネットワーク型拠点の現時点での数字をマッピングしております。こちらについては御参照いただければと思います。
 10ページ目以降は,先ほどの資料3-1の冒頭のところで御説明させていただきましたので,割愛させていただきます。
 事務局からは以上でございます。
【小林主査】  ありがとうございました。予算折衝,大詰めと思いますが,10ページ目の予算の確保は是非,事務局によろしくお願いしたいと思います。
 最後に,今後のスケジュールについて事務局から説明をお願いいたします。
【小林学術機関課課長補佐】  次回ですが,11月19日の14時から16時頃までを予定しております。議題といたしましては,先ほど頂きましたコメントを踏まえまして,再度,次期ロードマップの策定方針について御議論いただければと思います。
【小林主査】  それでは,本日の会議はこれで終了とさせていただきます。皆様,どうもありがとうございました。


                            ―― 了 ――

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