第5期研究費部会(第18回) 議事録

1.日時

平成22年7月27日(金曜日)10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

有川部会長、小林委員、田代委員、中西委員、家委員、
井上(明)委員、井上(一)委員、岡田委員、甲斐委員、金田委員、
鈴村委員、谷口委員、水野委員、宮坂委員

文部科学省

山脇振興企画課長、山口学術研究助成課長ほか関係官

オブザーバー

独立行政法人日本学術振興会 学術システム研究センター村上主任研究員、渡邊研究事業部長

4.報告概要

 事務局より、参考資料1「海外におけるアウトリーチ活動の取組について」、参考資料2「平成22年度科学研究費補助金の配分について」について、報告を行った。

5.審議概要

(1)事務局より、資料3「科学研究費補助金に関し当面講ずべき措置について(報告)(案)【見え消し版】」について説明を行った後、審議を行った。

【有川部会長】
 ただ今、説明していただいたように、報告については前回いただいたご意見などをもとにして事務局で修正いただいている。それから、追加された部分もたくさんあるが、全体を通して、お気づきの点などがあれば、ご発言いただきたいと思う。
 「若手研究」や「基盤研究」における研究期間の問題はかなり時間をかけて議論してきたと思う。それから、事業仕分け等に関係したことについては、比較的最近、議論してきたが、これまでいただいたご意見はすべてきちんと位置づけて整理されていると思うがどうか。事前にご覧いただいているが、全体を通してお気づきになった点があれば、ご意見をお願いしたい。

【田代委員】
 見え消し版の34ページであるが、「若手研究(A・B)」及び「特別推進研究」を日本学術振興会に移管するという点について、当然、これは科研費のほとんどの部分が日本学術振興会によって実施されているので、なぜ「若手研究(A・B)」と「特別推進研究」が移管されていないのかが不思議であるが、予算の関係でこうなってしまったのか、よくわからないので、ご説明願いたい。

【山口学術研究助成課長】
 今お話があったように、基本的なスタンスとしては、文部科学省で担当している科研費のうち、一定の整理ができたもの、落ち着いたものについては、順次日本学術振興会に移管するということで、これまで進めてきている。
 今、3種類あって、1つは文部科学省で審査事務を行い、また交付事務も行っているもの。それから、日本学術振興会で審査事務を行い、交付事務も行っているもの。3つ目として、「若手研究(A・B)」と「特別推進研究」については、ここにも書いてあるが、日本学術振興会で審査事務を行い、交付は文部科学省の名前で行うという、非常にわかりにくい構造になっている。
 この「特別推進研究」と「若手研究(A・B)」については、これまでも予算要求の中で研究種目の移管を要求してきたところである。移管が認められていない1つの要因としては、独立行政法人の見直しの中で、移管をすると独立行政法人の予算が一度に何百億円も増えてしまうという、単に見ばえの面と言えば見ばえの面かもしれないが、そういったところについて、なかなか理解が得られなかったというところがあると思う。
 実際上、審査事務については日本学術振興会で大部分を行っているので、あとは決めの問題として、これらの研究種目について、移管を認めていただければ、わかりやすい形になるだろうと私どもは思っているところである。

【有川部会長】
 それでは、全体を通してご意見を伺ったが、18ページぐらいまでのところで、何か意見はあるか。「『若手研究』の見直しの方向」ということで、17ページから18ページにかけてまとめてある。

【家委員】
 12ページに、平成22年度に「若手研究(B)」の新規採択率が激減したということが書かれている。非常に大きな問題だと思うが、今後の見通しはどうか。

【山口学術研究助成課長】
 これから、平成23年度の概算要求ということになってくるので、確たることはちょっと申し上げにくいが、ここの部分は、ここにも既に書いてあるように、特に「若手研究(B)」はほかよりも高い採択率で若手研究者の支援をしてきたという経緯があるので、特に平成22年度に予算の手当が十分できなかったところもあって、採択率が激減したというのは重大な問題であると思っている。これについてはやはり1つの大きな課題として、今後、概算要求等々で考えていかねばならないと思っている。
 その先は、なかなか申し上げにくいところであるが、大きな課題だと認識している。

【有川部会長】
 若手研究の見直しの方向については、かなり具体的なことが書いてあるが、今回は、見え消しで書かれている赤字部分を中心にして確認していただければよろしいかと思う。
 この若手研究の見直しの方向については、これまでの議論でその方向性としては確認がされてきたと思う。

【甲斐委員】
 6ページの「最先端研究開発支援プログラム」に対する説明のところの、考え方に関することで、最初の「○」の一番最後であるが、この「最先端研究開発支援プログラム」が「科研費とは基本的に性格を異にするものと考えられる」という表現について、「科研費とは基本的に性格を異にする」で「。」にしていただきたい。
 これは、「最先端研究開発支援プログラム」は、科研費とは全然考え方が違うトップダウンのものであるということを説明しているので、このように弱く表現を緩めなくてもいいのではないかと思う。「科研費とは基本的に性格を異にする」で文章を切っていいのではないか。

【有川部会長】
 その次のところで「全く異なるものであるとは言え」という表現になっているので、「考えられる」よりも、より断定的な表現にしたほうがいいと思う。これで困ることは何もないと思う。

【岡田委員】
 文部科学省と日本学術振興会との間のPDCAサイクルという言葉の定義というか、何をPDCAと言っているのかという問題など、どこにもそういう説明がないのではないか。あるいは、そのサイクルによる良さということのポイントをどこかに書くほうが明確だと思う。

【山口学術研究助成課長】
 ここの部分を書き加えたのは、前回、4ページの上のほうにもあるが、事業仕分けのときに、もっと見直し、ガバナンスの強化等をやっていくべきであるというようなご提言をいただいたが、本部会のご意見として、基本的に科研費については毎年の審査状況等々も踏まえて、きちんと制度の見直しをやって、既にそれに取り組んでいるということを書くべきであるというご指摘をこの前いただいたためである。
 そういう意味で、文部科学省の科学技術・学術審議会、それから日本学術振興会の科学研究費委員会、あるいは学術システム研究センターを通して、実際の審査を踏まえた制度の見直しにつなげているということをきちんと書こうと思い、こういった形の記述をさせていただいている。
 その際、PDCAサイクルという言葉自体の定義については、書いていないが、ある意味これは一般的に使われている用語かなと思い、注はつけていない。必要であれば注を追加することも考えたいと思う。

【有川部会長】
 実際には我々の研究費部会や、審査部会、日本学術振興会でもそうだと思うが、審査が終わった段階や審査委員会の都度、委員に対して意見を求めたりしている。そういったことなども点検作業の一環と考えることができるのではないかと思うが、その辺も触れていただいた上で、ここは制度改善につなげていく「いわゆるPDCAサイクルが確立している」と、「いわゆる」くらいを入れておくのはどうか。
 それをどういったところで行っているかということについて、実際にやっているところ、研究費部会や審査部会、日本学術振興会など、その辺を3つぐらい書いておくとかなり具体性が出てくるように思う。

【宮坂委員】
 今の点であるが、5ページの上の図を見ると、PDCAのところに両方ついていますよね。ですから、やはりこれが外に出たときには、できるだけ横文字を避けたり、略語を避ける。それで、ここでも「いわゆる」みたいなものがついていますから、やはりきちんと説明しないとまずいと思う。

【有川部会長】
 PDCAサイクルについて、もう少し説明するということか。
 実際には5ページのようなやり方で回しているということで、これを見ればわかると思うが、私のほうで言ったのは、それをどこで行っているかということで、文部科学省と日本学術振興会のほうできちんとやっているということがこの図から見えるのかなと思った。

【山口学術研究助成課長】
 必要であれば、脚注という形で、PDCAサイクル、一般の用語の注はつけたいと思うが、本文中でも「いわゆるPDCAサイクル」というような形で、一般用語ではなくて「いわゆる」という形で修正させていただこうと思う。

【有川部会長】
 後半のほうで、「『基盤研究』のあり方について」として19ページから記述があるが、赤字で書かれている部分について、29ページまでで何か意見はあるか。
 もう十分検討していただいているので、意見がないというのが普通なのかもしれないが、上滑りしないように確認をしているつもりである。

【家委員】
 細かい話であるが、19ページの四角で囲まれている部分の、基盤研究に関する平成8年度の記述で、3の「基盤研究(C)」のところ、「以下」が消えて「未満」に変わると思う。資料2の【とけ込み版】もそれが残っているようである。

【有川部会長】
 他にもあるかもしれないので、その辺は再度事務局で通してチェックしていただけると思う。

【田代委員】
 「基盤研究(C)」の問題点について、いろいろまとめていただき、とてもありがたいことだと思う。特に、研究期間が3年間からではなくて、2年間というのが検討課題であるということは、研究者のニーズによるものである。おそらく90%の人が3年間に集中しているということからきていると思う。
 ただ、これはすぐには改まらないということはわかっているが、28ページのところで、「『2~4年』を『3~5年』に改めたばかりであり」とか、「サイクルが短くなり、応募件数が増加することが予想される」とか、こういう評価者をさらに拡充しなければならないなど、これは審査コストのことだと思うが、これは応募する側のことを考えているのではなく、文部科学省、あるいは日本学術振興会などのいわゆる審査側のことなので、これをあまりあからさまにすると、逆に反発として、それだけニーズが多くなるということは必要なのだから、ここを改善しなければならないという反論が出るのではないかと思う。
 そして、これは改めたばかりだからすぐに変えられないというのは、いかにもお役所的な言い方であるので、もう少し何かこの辺の表現を修正したらと考えるがどうか。

【有川部会長】
 確かにそういう面もあろうかと思う。
 これは、最初の「○」であるが、「一方で」というところに審査にかかる手間のことが書いてあったと思うが、審査の部分は、限られた時間で公正な審査が難しくなるといったことだろうと思う。

【甲斐委員】
 今の提案で、1番目の「短期間で制度を頻繁に変えることは混乱を招くのではないか」という部分はなくてもいいのではないか。過去にもほとんど毎年制度を変えているという経緯もあるし、1年ごとに科研費を細かく見直しているとか、2年ごとに変えているということはよくあることであり、そのきめ細やかさが逆に評価されている場合もあるので、1行目はなくてもいいと思う。

【有川部会長】
 先ほど言った、いわゆるPDCAサイクルのところで絶えず見直していると言いながら、そんなに頻繁に変えるのはまずいと言っているようなところもあるので、この2行はなくてもいいと思う。
 それから、審査についての表現はどうか。「『基盤研究(C)』に2年を導入した場合」という部分であるが、これは、質問された場合に、こういった答え方をするということで、ここには書かなくてもいいかもしれないがどうか。

【宮坂委員】
 今の、「適切な評価者を確保できない」というのは、コストの面でできないのか、それとも人的資源がないのか、どちらか。

【小林委員】
 どちらかと言えば、人的資源の問題だと思う。

【有川部会長】
 そうだとすると、「評価者の確保という技術的な問題もある」というような表現でどうか。評価者がいなければ、やはり審査ができないので、こちらのほうは残すということでどうか。お金の問題ではなくて、適切な評価者がいない。今関係しているのは2万人ぐらいか。

【小林委員】
 データベースには5万人ぐらい登録されており、毎年6,000人ぐらいの審査員が必要となっている。

【田代委員】
 それでは、「適切な評価者を確保できない」というところに、「専門員」とか、「専門研究者」とか、そういう言葉を1つ入れておけば、いわゆるコストではなくて、研究者の確保が難しいということになると思う。

【有川部会長】
 それは、今度は少し別の問題も引き起しそうな気がする。評価者もいないようなところにお金をつけるのかという意見も出てくる可能性がある。

【家委員】
 別の言い方をすれば、「現状の評価担当者で増えた件数を処理しようとすれば、評価者1人当たりの負担が過剰になる」という言い方もできるかもしれない。

【有川部会長】
 そうすると、増やしたらどうかということになると思う。

【家委員】
 その裏には、適切な評価者を確保するのが難しいということがあるが、評価側の話は、やはり実態としてこういうことがあるので、それはあまり隠すのではなくて、むしろ適切に表現されるべきだと思う。
 その文章の上に「採択率の低下をもたらすおそれがあるのではないか」と弱く書いてあるが、これは、現状でやれば採択率の低下が起こるのはまず間違いない。仮に2年間の研究期間を許して、ほとんどの応募者が2年間に殺到した場合に、継続研究課題も含めて「基盤研究(C)」を受ける「基盤研究(C)」の潜在的応募者の中で、新規・継続を含めて「基盤研究(C)」の配分を受ける人の割合というのは、2年間をベースにした場合は、今、新規の採択率が4分の1ぐらいであるので、5分の2ぐらいになる。これは、3年間をベースにすると、同じ新規研究課題の採択率4分の1で5割という、そのぐらいの違いが出てくる。私はそこが非常に問題だと思う。

【有川部会長】
 議論の中ではあったと思うが、一方で我々はいろいろなところで研究というのは時間のかかるものであって、長い目で見てもらわないと困るというようなことを言っている。それでいて、研究期間は長いよりは短いほうがいいというのは、整合性がないような気もする。おそらくそういうこともあって、昔は1年間という研究期間もあったが、ある程度の期間を確保できるようになってきたという経緯もあり、3年間程度の長期のスパンで取り組んでいく必要性があるということが背景にあると考えたほうがいいのではないかと思う。
 この辺は、これまでも議論してきたところであるが、ちょうど研究ができ上がったところの1年間あるいは2年間で一気にやるということもあるが、そこまでいくようなところも含めて考えていくということであれば、問題はないのではないかと思う。いずれにしても、そういったことも含めて検討していくということになっている。

【有川部会長】
 それでは、最初の「・」のところは書かなくていいだろうということであるが、4つ目「・」のところについては、少し検討させていただく。軽微な修正だと考えられるので、今いただいたような意見を念頭に置きながら、修正してみたいと思う。その辺はご一任いただければと思う。
 それでは、残りの30ページから38ページまでについて、何か意見はあるか。この部分は、最近の動きとその対応についてである。

【鈴村委員】
 31ページであるが、一番上の赤字で加筆されている部分であるが、確かに研究者の自由な発想を強調するということで、この委員会でいろいろな検討を行ったが、これは理解を得るためのこちらからのメッセージの送り方であるので、自由な発想ということだけを出発点として強調すると、ある意味では研究者のエゴだとか、そういう誤解を招く危険性があると思う。
 ここに書かれている文章をできるだけ生かしていくとしたら6行目の「発展に大いに資するものである」というところに、例えば「発展に大いに資する基礎的な役割を担っている」ということで、要するにこれはその後に来るさまざまな研究にとって決して身勝手な関心を追究しているだけではなくて、基礎科学としての役割を担っているということを補っていただきたいと思う。それが第1点。
 それから、第2点は図の下の「○」のところであるが、2行目のところで、「現時点で国民の理解が十分であるとは言い難い」という表現がある。確かにこれが現状ではあるが、この書き方自体は、理解していない国民を責めているような受けとめ方すら起こるような、皮肉な読み方をする人もいるので、「現時点で国民の理解と支持が十分得られているとは言い難い」ということで、その下でそのための努力を強調するという受け方をしておいていただいたらベターではないかと思う。
 したがって、段落を変えて、「科研費の制度のあり方とその成果及び効果については」ということで、繰り返しにはなるが、これを受けとめて、今後、研究と努力が必要だと書いていただいたほうが、メッセージとして素直に読まれるのではないかと思う。

【有川部会長】
 2つのことをご指摘いただいたが、まず、2つ目のほうはご指摘いただいたように修正したほうがいいのではないかと思うがどうか。確かに分かっていないほうが悪いという感じに受け取られかねない。
 それから、最初のほうの「自由な発想に基づく研究」という表現であるが、これは科研費を特徴づけている、ある意味で言えばデフィニションみたいな格好になっていると理解している。一般的に言えば、自由にやるのであればお金をつける必要はないといったことを言われかねない。どこかで書いてあると思うが、自由な発想に基づく研究が、研究の多様性と重層性を生んで、そうした研究が次世代、あるいは次々世代の発展につながる科学や技術の基礎になっていくということだと思う。そういう意味で自由な発想というものが大事だということを、これまでいろいろなところで言ってきたのではないかと思う。ご指摘のようなこともあるのかもしれないが、誤解されないように、しかし、研究者の自由な発想に基づく研究の重要性ということを科学者のコミュニティからは発し続けなければいけないと思う。
 私自身は、科研費の性格づけとして、自由な発想に基づく研究ということが高らかにうたってあるということが非常に大事ではないかと思う。それと、そのほかの研究資金との区別がそれによりできているのではないかと思ってきたところである。

【鈴村委員】
 おっしゃるとおりで結構である。私が申し上げたのは、要するにそれをできるだけ誤解の余地なく読んでもらえるような表現の仕方は何だろうかという提案をしたつもりである。
 ただ、自由な発想ということを強調すると同時に、例えば日本学術会議などで我々が議論している際には、非常に古典的な学問観だが、ともかく真理の発見ということを最初に言わずして自由な発想が出てくるということは、やはり誤解を招く危険性があるのではないかという思いは持っている。
 ここでの表現がこの部会の文章として、有川部会長がおっしゃったようなものを盛り込むということに全く反対しているわけではなく、単に表現上のことを提案したつもりである。

【有川部会長】
 他に意見はあるか。ここのところはかなり大事なところだと思う。
 真理の探求というところまで言うかどうかというところがポイントだと思うが、いわゆる政策課題研究ではなく、科研費はボトムアップ的な研究に対する支援をするということで大きく違う。そのことを「自由な発想に基づく研究」というようにこれまでの人が整理して表現されてきたのではないかと思う。真理の探求ということからすると、大学における研究というのは、基本的にはそういうことだと思うが、それだと、ほかのファンディングとの区別、差別化がしにくいとも思う。

【鈴村委員】
 あまり時間をとりたくないが、私はそれを入れろということは一言も言っていない。そうではなくて、今、ここでの表現の中で、いかにここでやられている仕事が基礎的な役割を担っているかということを一言つけ加えておいたほうが、メッセージをそのとおり読んでもらえるのではないかということに限って申し上げている。

【有川部会長】
 ここのところは、他の資金等との対比でもって言っているので、そういう意味では、ここがちょっと目立つのかもしれない。
 ほかの方のご意見もいただきたいがどうか。

【家委員】
 ここに関連する記述としては、前のページの30ページの一番最初の「○」のところにも学術研究の重要性、「研究者の自由な発想に基づく研究である学術研究」という形で書かれている。私などには「論をまたない」と思うが、世間一般ではそうでもないというのが問題なのかもしれない。
 31ページには、最初に「「学術研究」を支える資金」であるという記述がある。ただ、そう言ってしまうと、他の競争的資金は学術研究を支えていないのかという反論が出ることを少し懸念して、何か注釈をつけられたのかなと想像している。
 科研費の特徴は、有川部会長が発言されたように自由な発想、ボトムアップでテーマも自由に設定するということと、もう一つはあらゆる学問領域を対象にしているということだと思う。そういう科研費の特徴をここで明示すればいいと思う。

【有川部会長】
 必ずしも表現は尽くしていなかったかもしれないが、先ほど申し上げたような、今、家委員が発言されたことをここに少し書いて、単に勝手にやっているような研究ではないということが伝わるようにしたらどうかと思う。そういうことでよろしいか。

【鈴村委員】
 はい。

【井上(一)委員】
 細かいことであるが、32ページの一番下の「○」の「サイエンスライターやサイエンスコミュニケーターと言われるような人材を」という部分だが、これは非常に大事なことであると思うが、そういう人材は「研究機関が間接経費を用いて雇用する」と、わざわざ「間接経費を用いて」ということを書く必要はないと思う。できるなら、本来はそういう定員をきちんと置いていくほうがむしろいいような話だと思う。一番最後に、「間接経費も積極的に活用しながら」と書いてあるので、それは削除したほうがいいと思う。

【有川部会長】
 そうすると、「と言われるような人材を研究機関で雇用することも考えられる」と、このような表現でよろしいか。 ほかに何か意見はあるか。
 全体を見ていただき、それから、3つのパートに分けてもう少し細かく見ていただいた。大事なご指摘もいただいたと思っているが、表現を少し工夫させていただき、この報告に修正を加えてみたいと思うが、大幅な変更を伴うことはないと思うので、修正については、私と事務局のほうにお任せいただきたい。よろしいか。

【鈴村委員】
 17ページに戻るが、(「若手研究(A)」の見直しの方向性)というところについて、多少気になることがあり、発言させていただきたい。
 この中に、「・」で「優遇措置については――経過措置であり、一定の期限を設ける」という文章が入っているが、この委員会の中で優遇措置というのは、必ず恒久化する危険性が絶えずあるので、もしそれが経過措置として構成される場合には、そのことを明記すべきだと、期限を設けるべきだと申し上げたので、おそらく対応的に入れていただいたと思うが、前後のつながりがよくわからない形で入っていると、非常に制度の不安定性のイメージを与える気がする。
 優遇措置を設けるにしても、どこかきちんとした着地点があって、その着地点に関しては、この制度は基本的には揺るがないということをどこかで言っておかないと、きっかけとなって、近い将来にまた制度が変わるのではないかという不安を誘導するようなことになっては非常に残念だと思う。
 回付していただく際に、有川部会長、ぜひご配慮いただいて、制度全体のクレディビリティを高めるような方向で、しかしこの点に関しての配慮はきちんとしたものになっているということのバランスで修文していただけると、大変ありがたいと思う。

【有川部会長】
 ここのところは少し大きな修正になりそうな気もするが、「・」の前で「以下のような内容の『私立学校・高等専門学校調整枠』と同様の優遇措置を講じる必要がある」とあり、1つ目の「・」ところに関しては、そのことを言っているが、2つ目はただし書きのような格好になっている。そういうことで、ここのおさまりが悪くなってしまっているのかもしれない。

【山口学術研究助成課長】
 おそらく、ここの部分については、「・」で書いているため、かなり印象も違うと思われる、きちんとここの部分を普通の文章で書いて解説することによって、かなり印象は変わるのかなと思っている。そこは少し工夫したいと思う。

【有川部会長】
 ご指摘いただいたことは理解できているので、今のようなことで書きぶりを少し工夫させていただこうと思う。

【家委員】
 細かいことであるが、先ほど井上委員がご指摘された32ページのサイエンスコミュニケーターの話で、もう一度その文章を読み直して、気になったが、研究機関が雇用するということになると、場合によってはお抱え記事を書くようにとられないかなという気もする。取り越し苦労かもしれないが。
 それと、サイエンスコミュニケーターはいいが、サイエンスライターというと、ドキュメンタリーの本を書くような人をイメージしてしまうので、ここで言っている趣旨はもちろんわかるが、研究機関が雇用して成果を発信するというのがいいのか、よくわからない。
 それと、もう一つの問題は、日本には雇用すべき人材が今は非常に少ないということが問題で、育成して活用するような取り組みが今後必要だろうと思う。
 適切な表現が提案できなくて申し訳ないが、改めて読んで少し引っかかった。

【有川部会長】
 そうすると、「と言われるような人材を研究機関で育成し、活用することも考えられる」という表現にしてはどうか。

【甲斐委員】
 サイエンスコミュニケーターはいいが、サイエンスライターのほうは除いておいたほうがいいと思う。これは、科学物を書く作家であろう。本当にドキュメンタリーかフィクションかわからないぐらいのものを書いて、非常に爆発的ベストセラーになっている方が外国にいるが、独自にやっている話であり、そういう方たちを研究費で育成するととられると、とても違和感がある。

【有川部会長】
 これは、「サイエンスライターや」というところをとってしまうということでよいか。

【中西部会長代理】
 全般的なことだが、最初に問題点ということで事業仕分けの話があり、その後、どういうことを議論してきたということが書かれている流れとなっており、内容的にはいいと思う。ただ、内容と多少重複してもいいので、「はじめに」に数行でいいので、さっき家委員が発言されたように、科研費はボトムアップで、分野を問わず、個人研究を支えてきたこと。また、日本の研究者のほとんど、つまり研究者が一番多く応募してきており、その数は10万件以上にもなること。さらに日本の基礎研究を非常によく支えてきていることから評価も高く、実績もあるということを、最初に数行書いてもいいのではないかと思う。
 というのは、中ほどにあるように、これから、競争的資金は一元化していいのではないかなど、いろいろな議論が出てくると思うが、科研費は研究者の自由な発想に基づく研究を支えているということだけでは少し説明が弱いような気もする。そこで、科研費はプロジェクト研究ではなく、個人の研究をきちんと支えて日本の基礎研究の基礎を築いてきたということを数行最初に入れてもいいのではないかと思う。

【有川部会長】
 出だしのところでそれを入れることにしたいと思う。そうすると、先ほどの鈴村委員のご発言にもうまくつながっていくと思う。

【井上(明)委員】
 31ページの参考の図というのは、今までも広く出回っている図なのか。今回、これは新しく作成した図なのか。
 必ず科研費に何回か採択されたり、特別申請と。実用化は科研費は全く関係ないものではなく、そのラインを残して、自由な発想に基づいても、即工業化のルートもあり得るという、説明責任上、その道を残されたほうがいいような気がする。

【有川部会長】
 これは新しい図である。特に下のほうに矢印が書いてあり、左のほうが「大学等における研究」となっているが、科研費はご承知のとおり、企業の人も応募できるわけなので、そういうこともあるだろう。

【山口学術研究助成課長】
 この図の趣旨としては、真ん中に「特定の目的のための研究を推進」とある下に、「その他の競争的資金」というのを幾つか書いているが、今までの議論の中で、競争的資金がたくさんあって、それを一本化したらいいのではないか等々のお話があったが、科研費とそれ以外の制度は全く違うということをきちんと表現したいと思い、科研費を左側に大きくとらえ、真ん中に「その他の競争的資金」と、「特定の目的のための研究を推進」という形で書いている。この2つは全く根本的に違うのだということをアピールするために最近使っている資料である。
 したがって、確かに科研費から直接実用化という方向で流れることもあるかもしれないが、この図の目的はそのような趣旨で作成しており、参考のタイトルも、「科研費と他の競争的資金」というタイトルにしているものである。

【有川部会長】
 確かに科研費から実用化にすぐに発展することもあるので、それで「その他の競争的資金」というところが3つあって、あと「・・・」になっているが、この「・・・」を2つ目の箱と3つ目の間に入れて、そこをちょっとあけて、左の科研費のところのブルーの箱をもう少し下に伸ばして、そこから矢印を1つつけ加えておくと先生の発言されたことを表現できると思うが、どうか。

【宮坂委員】
 これは、左から右のシークエンスになっているからいけないと思う。シークエンスにしなければ、「実用化」とか、「国民生活」云々というのが全部まとまって、両方下に置いて、上から下に行くように、「科研費」と「その他の競争的資金」から行くようにすればいいんですけれども、これだといかにも矢印がシークエンスになりますよね。そこが多分、誤解を呼ぶと。

【山口学術研究助成課長】
 おっしゃるとおりだと思うが、ここで私どもがこのような矢印を使ったのは、1つには、やはり特定の目的のための研究の競争的資金についても、その根本はまずは科研費にあって、科研費からそれが発展していくということを実は言いたいところがある。「その他の競争的資金」もろもろあるが、科研費なしには何も動いていかないということを言いたいために、こういう形の矢印にさせていただいているところである。

【井上(明)委員】
 科研費が重要で、科研費なしでは何も動いていかないというのはわかるが、大学の基盤的経費の重要性について議論するのはもちろんこの会議の趣旨ではないが、大学の基盤的経費から「その他の競争的資金」に発展することもあり、大学の運営費交付金等が厳しい状況で、このことを除外して議論していっていいかどうかという問題にもなりそうな気もする。この部会はもちろん科研費を重要視するということでよろしいとは思うが。

【有川部会長】
 それを反映させるとすると、科研費の左に大学の運営費交付金等の図を加えることになり、大もとは大学の運営費交付金等だから、そこを重視すればいいじゃないかということになり、それはそれでありがたいと思うが、いろいろな研究機関の方も科研費をとられているので、そこで薄まってしまうと思う。
 この図は、競争的資金が複雑に見えるから一本化したらどうかという話に対して、そうではないということを言いたいというのが趣旨なので、あまりいじると説得性がなくなると思う。確かに井上委員が発言されたように、即実用化になっていく場合もあるが、その辺を表現するとしても、そのくらいでとどめておいたほうがいいような気もする。
 この件については少し検討させていただきたいと思うが、この図は元々はそういった趣旨で作成されたものである。
 それでは、大体時間にもなってきたので、今日いただいた意見をもとにして、今後、若干の修正をさせていただきたいと思う。大幅に変わるということもないと思うので、その作業については、事務局と私のほうにご一任いただきたいと思うが、よろしいか。

(「異議なし」の声あり)

(2)その他

 事務局から、次回の研究費部会の日程については調整の上、改めて連絡する旨、連絡があった後、意見交換が行われた。

【甲斐委員】
 一般的な話でもよいか。
 この部会で取り上げていいのかわからないが、私が疑問に思っているのは、科研費は誰のもの、誰のための補助金であるかということを、ここで議論していただくことはできないか。
 つまり、今、科研費の指定機関をいろいろな企業に広げている。資格審査を行って、いろいろな細かい後づけのクライテリアがあるが、それさえ越えれば申請資格ありになっていくが、そのクライテリアは、結構、曖昧模糊としている。自分で自由に論文が書けるというのがどこまでなのか。企業の研究者は、企業の命令があって、その範囲の中で研究を行っているが、それが自由な発想で、公表していい論文なのかなど、疑問に感じることが数多くある。
 そういう機関をどんどん科研費の指定機関にし、そこから応募してくる方たちみなに分け与えているような補助金になっているが、大学の関連機関から民間一般にまで科研費の対象機関を一気に広げたときに、そのような細かい議論まではなかったと思う。だから、一度そろそろ見直さないと、無限に資格者が増えていって、財政困難と主張しているが、そもそも誰のための科研費かという議論を一度するのであれば、この部会かなと思い、時間があればお願いしたいと思う。

【有川部会長】
 科研費を申請できる機関であるかどうかということに関しては、審査部会で審議をしている。

【甲斐委員】
 審査部会ですか。失礼いたしました。

【有川部会長】
 科研費を使って研究する企業の研究者が、多少の関連があっても普通の企業の仕事ではなくて、研究者の自由な発想に基づいて研究できるようになっているかどうかということを中心に審査しているのではないかと思う。甲斐委員はよくご存じだと思うが、今発言されたようなことについて、次回以降に、もしここで議論するのであればやってもいいのではないかと思う。我々の議論の範囲内に入っているのではないかと思う。実は最初に議論しておくべきことだったのかもしれない。
 先ほどの鈴村委員が発言されたこともそうであるが、井上委員の発言にも関係があると思う。
 それでは、次回以降に、この作業が一段落ついたら、そういうことも議論することにしてはどうか。

【山口学術研究助成課長】
 今の点について、少し説明申し上げると、部会長からも話があったが、審査部会のほうで議論が行われている。
 研究者番号を取得するためには、その所属する研究機関が研究機関として位置づけられていなければならないが、大学等は無条件で研究機関として認められているが、民間企業であるとか、あるいは地方公共団体の研究所、あるいは財団法人等の研究所等々についても、一定の要件を満たせば、審査部会にお諮りをして、研究機関として認めるということになっており、認められた研究機関に所属する研究者がアプライできるという仕組みになっている。
 ただ、この点については、やはり審査部会で議論がある。例えば要件として、各研究者に対して年間どのぐらいの研究費が渡っているのかということについて、今は大体1人当たり36万円以上の研究費が渡っていることというような要件であるとか、民間企業以外の研究所については、学会に対してきちんとした論文等を出している研究者の割合が何%ぐらいかというような要件等が付されており、それを満たしたものについて、審査部会でご決定いただくという仕組みになっている。
 これについて、制度改正も何点か行われている。例えば、今までは研究機関として指定してしまえばそれで終わりだったが、昨年から、指定した後3年間はフォローしていくという形で、本当にその基準をクリアした状況が続いているのかということを見ていくことになっている。1つの宿題となっているのは、今まで指定されてきた機関の実態を十分に把握できていない点である。実態として研究費がどうなのか、あるいは指定を受けたけれども科研費に全くアプライもしていないというところもあるのではないかといったことについてフォローアップ調査をして、議論していかなければならないだろうということが審査部会で言われているので、そういったところとも連携しながら、次回以降、また必要なご議論をいただければと思う。

【有川部会長】
 他にまだ意見はあるか。

【中西部会長代理】
 企業の研究者ということが話題になったので、まだ時間があるようなので一言だけ発言したい。
 研究者というのは、研究の土俵についたらみな平等であるという意識を持たないといけないと思う。研究には費用が必要なので、例えば国からお金をもらっている大学では、税金からのお金で研究しているが、企業では製品を売った利益で研究せざるを得ないわけである。費用の出所は異なるものの、研究者という立場から考えると、同じ研究という土俵についたならば、あなたは企業の研究者だからこうだとか、大学の研究者だからこうだということはなしに、何をどのように進めているかということをメルクマールに、きちんと平等に評価するという意識が非常に大切だと思うので、一言つけ加えさせていただければと思う。

【有川部会長】
 それでは、時間になったので、本日の委員会はこれで終わりたいと思う。

―― 了 ――

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