【2020年までの目標】 『50兆円超の環境関連新規市場』、『140万人の環境分野の新規雇用』、『日本の民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガス削減量を13億トン以上とすること(日本全体の総排出量に相当)を目標とする』 【主な施策】
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(グリーン・イノベーションによる成長とそれを支える資源確保の推進)
電力の固定価格買取制度の拡充等による再生可能エネルギー(太陽光、風力、小水力、バイオマス、地熱等)の普及拡大支援策や、低炭素投融資の促進、情報通信技術の活用等を通じて日本の経済社会を低炭素型に革新する。安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に取り組む。
蓄電池や次世代自動車、火力発電所の効率化、情報通信システムの低消費電力化など、革新的技術開発の前倒しを行う。さらに、モーダルシフトの推進、省エネ家電の普及等により、運輸・家庭部門での総合的な温室効果ガス削減を実現する。
電力供給側と電力ユーザー側を情報システムでつなぐ日本型スマートグリッドにより効率的な電力需給を実現し、家庭における関連機器等の新たな需要を喚起することで、成長産業として振興を図る。さらに、成長する海外の関連市場の獲得を支援する。
リサイクルの推進による国内資源の循環的な利用の徹底や、レアメタル、レアアース等の代替材料などの技術開発を推進するとともに、総合的な資源エネルギー確保戦略を推進する。
【2020 年までの目標】 『医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出、新規市場約45 兆円、新規雇用約280 万人』 【主な施策】
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(日本発の革新的な医療・介護技術の研究開発推進)
安全性が高く優れた日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発を推進する。産官学が一体となった取組や、創薬ベンチャーの育成を推進し、新薬、再生医療等の先端医療技術、情報通信技術を駆使した遠隔医療システム、ものづくり技術を活用した高齢者用パーソナルモビリティ、医療・介護ロボット等の研究開発・実用化を促進する。その前提として、ドラッグラグ、デバイスラグ解消は喫緊の課題であり、治験環境の整備、承認審査の迅速化を進める。
(不安の解消、生涯を楽しむための医療・介護サービスの基盤強化)
高齢者が元気に活動している姿は、健全な社会の象徴であり、経済成長の礎である。しかし、既存の制度や供給体制は、近年の急速な高齢化や医療技術の進歩、それに伴う多様で質の高いサービスへの需要の高まり等の環境変化に十分に対応できていない。高齢者が将来の不安を払拭し、不安のための貯蓄から、生涯を楽しむための支出を行えるように医療・介護サービスの基盤を強化する。
具体的には、医師養成数の増加、勤務環境や処遇の改善による勤務医や医療・介護従事者の確保とともに、医療・介護従事者間の役割分担を見直す。また、医療機関の機能分化と高度・専門的医療の集約化、介護施設、居住系サービスの増加を加速させ、質の高い医療・介護サービスを安定的に提供できる体制を整備する。
これらの施策を進めるとともに、持続可能な社会保障制度実現に向けた改革を進めることで、超高齢社会に対応した社会システムを構築し、2020
年までに医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出により、新規市場約45
兆円、新規雇用約280 万人を目標とし、全ての高齢者が、家族と社会のつながりの中で生涯生活を楽しむことができる社会をつくる。また、日本の新たな社会システムを「高齢社会の先進モデル」として、アジアそして世界へと発信していく。
【2020 年までの目標】 『アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を構築』、『アジアの成長を取り込むための国内改革の推進、ヒト・モノ・カネの流れ倍増』、『「アジアの所得倍増」を通じた成長機会の拡大』 【主な施策】
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(アジア市場一体化のための国内改革、日本と世界とのヒト・モノ・カネの流れ倍増)
同時に、日本国内においても、アジアを中心に世界とのヒト・モノ・カネの流れの障壁をできるだけ除去することが必要である。ヒト・モノ・カネの日本への流れを倍増させることを目標とし、例えば、その流れの阻害要因となっている規制を大胆に見直すなど、日本としても重点的な国内改革も積極的に進める。具体的には、羽田の24
時間国際拠点空港化やオープン・スカイ構想の推進、ポスト・パナマックス船対応の国際コンテナ・バルク戦略港湾の整備等により、外国人観光客やビジネスマン等のヒトの流れやモノの流れを作り出す。また、外国人留学生の受入れ拡大、研究者や専門性を必要とする職種の海外人材が働きやすい国内体制の整備を行うほか、貿易関連手続の一層の円滑化を図るとともに、海外進出した企業が現地であげた収益を国内に戻しやすくする。加えて、金融や運輸等のサービス分野の国際競争力を強化し、その流れの円滑化を図る。さらには、アジアや世界との大学・科学技術・文化・スポーツ・青少年等の交流・協力を促進しつつ、国際的に活躍できる人材の育成を進める。
(「アジア所得倍増」を通じた成長機会の拡大)
これらを通じて、アジアの一員としてアジア全体の活力ある発展を促し、アジア市場における取引活動を拡大させ、アジアの所得倍増に貢献することでアジアの市場と一体化しつつ、日本の大きな成長機会を創出する。拡大したアジア市場に対して、日本のコンテンツ、デザイン、ファッション、料理、伝統文化、メディア芸術等の「クリエイティブ産業」を対外発信し、日本のブランド力の向上や外交力の強化につなげるとともに、著作権の侵害対策についても国際的に協調して取り組む。
加えて、都市化・地球環境・地球規模での格差の解消など、世界規模の問題を共に解決していくことにも貢献する。
【2020 年までの目標】 『訪日外国人を2020年初めまでには2500万人、将来的には3000 万人。2500万人による経済波及効果約10兆円、新規雇用56万人』 【主な施策】
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(観光は少子高齢化時代の地域活性化の切り札)
我が国は、自然、文化遺産、多様な地域性等豊富な観光資源を有しており、観光のポテンシャルは極めて高い。例えば、南国の台湾の人々は雪を見に北海道を訪ね、欧州の人々は伝統文化からポップカルチャーまで日本の文化面に関心を持ち、朝の築地市場など生活文化への関心も高くなっている。このように、日本を訪れる外国人の間では、国によって訪れる場所や楽しむ内容に大きな相違があるが、その多様性を受け入れるだけの観光資源を地方都市は有している。また、日本全国には、エコツーリズム、グリーンツーリズム、産業観光など観光資源が豊富にあり、外国人のみならず、日本人にとっても魅力的な観光メニューを提供することができる。公的支出による地域活性化を期待することが難しい現在、人口減少・急激な少子高齢化に悩む地方都市にとって、観光による国内外の交流人口の拡大や我が国独自の文化財・伝統芸能等の文化遺産の活用は、地域経済の活性化や雇用機会の増大の切り札である。
【2020 年までの目標】 『地域資源を最大限活用し地域力を向上』 【主な施策】
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(地域政策の方向転換)
この10 年間、大都市への人口集中が進む一方で、地方の中心市街地はシャッター通りと化し、地域経済の地盤沈下が著しい。このような地方都市の状況は結果として国全体の成長のマイナス要因となってきた。地方都市が空洞化した背景には、これまでの国の地域振興策が、「選択と集中」の視点に欠け、ハコモノ偏重で、地方の個性を伸ばし自立を促してこなかったことに他ならない。一方で、地方にはその土地固有の歴史と文化・芸術がある。例えば、フランスで最も住みやすい街として知られるナント市が、かつての産業・工業都市から歴史遺産の「文化」と「芸術」により都市の再生を果たしたように、これからの国の地域振興策は、NPO
等の「新しい公共」との連携のもとで、特区制度等の活用により、地方の「創造力」と「文化力」の芽を育てる施策に転換しなければならない。
【2020 年までの目標】 『世界をリードするグリーン・イノベーションとライフ・イノベーション』、『独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数の増』、『理工系博士課程修了者の完全雇用を達成』、『中小企業の知財活用の促進』、『情報通信技術の活用による国民生活の利便性の向上、生産コストの低減』、『官民合わせた研究開発投資をGDP比4%以上』 【主な施策】
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(科学・技術力による成長力の強化)
人類を人類たらしめたのは科学・技術の進歩に他ならない。地球温暖化、感染症対策、防災などの人類共通の課題を抱える中、未来に向けて世界の繁栄を切り拓くのも科学・技術である。
我が国は、世界有数の科学・技術力、そして国民の教育水準の高さによって高度成長を成し遂げた。しかし、世界第二の経済大国になるとともに、科学・技術への期待と尊敬は薄れ、更なる高みを目指した人材育成と研究機関改革を怠ってきた。我が国は、今改めて、優れた人材を育成し、研究環境改善と産業化推進の取組を一体として進めることにより、イノベーションとソフトパワーを持続的に生み出し、成長の源となる新たな技術及び産業のフロンティアを開拓していかなければならない。
(研究環境・イノベーション創出条件の整備、推進体制の強化)
このため、大学・公的研究機関改革を加速して、若者が希望を持って科学の道を選べるように、自立的研究環境と多様なキャリアパスを整備し、また、研究資金、研究支援体制、生活条件などを含め、世界中から優れた研究者を惹きつける魅力的な環境を用意する。基礎研究の振興と宇宙・海洋分野など新フロンティアの開拓を進めるとともに、シーズ研究から産業化に至る円滑な資金・支援の供給や実証試験を容易にする規制の合理的見直しなど、イノベーション創出のための制度・規制改革と知的財産の適切な保護・活用を行う。科学・技術力を核とするベンチャー創出や、産学連携など大学・研究機関における研究成果を地域の活性化につなげる取組を進める。
科学・技術は、未来への先行投資として極めて重要であることから、2020年度までに、官民合わせた研究開発投資をGDP
比の4%以上にする。他国の追従を許さない先端的研究開発とイノベーションを強力かつ効率的に推進していくため、科学・技術政策推進体制を抜本的に見直す。また、国際共同研究の推進や途上国への科学・技術協力など、科学・技術外交を推進する。
これらの取組を総合的に実施することにより、2020 年までに、世界をリードするグリーン・イノベーション(環境エネルギー分野革新)やライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)等を推進し、独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数を増やすとともに、理工系博士課程修了者の完全雇用を達成することを目指す。また、中小企業の知財活用を促進する。
(情報通信技術の利活用による国民生活向上・国際競争力強化)
我が国の情報通信技術は、その技術水準やインフラ整備の面では世界最高レベルに達しているが、その利活用は先進諸外国に遅れを取っており、潜在的な効果が実現されていない。
個人情報保護、セキュリティ強化などの対策を進めて国民の安心を確保しつつ、情報通信技術を使いこなせる人材の育成などを強化して情報通信技術の利活用を徹底的に進め、国民生活の利便性の向上、情報通信技術に係る分野の生産性の伸び3倍増、生産コストの低減による国際競争力の強化、新産業の創出に結びつける。行政の効率化を図るため、各種の行政手続の電子化・ワンストップ化を進めるとともに、住民票コードとの連携による各種番号の整備・利用に向けた検討を加速する。子ども同士が教え合い、学び合う「協働教育」の実現など、教育現場や医療現場などにおける情報通信技術の利活用によるサービスの質の改善や利便性の向上を全国民が享受できるようにするため、光などのブロードバンドサービスの利用を更に進める。加えて、温室効果ガス排出量の削減、事業活動の効率化、海外との取引拡大、チャレンジドの就労推進等の観点からも情報通信技術の利活用を推進する。あわせて、情報通信技術利活用を促進するための規制・制度の見直しを行うこととする。
【2020 年までの目標】 ○以下の項目について、雇用戦略対話等を踏まえ具体的目標を定める。 『若者フリーター約半減』、『ニート減少』、『女性M字カーブ解消』、『高齢者就労促進』、『障がい者就労促進』、『ジョブ・カード取得者300 万人』『有給休暇取得促進』、『最低賃金引上げ』、『労働時間短縮』 【主な施策】
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(国民参加と「新しい公共」の支援)
国民すべてが意欲と能力に応じ労働市場やさまざまな社会活動に参加できる社会(「出番」と「居場所」)を実現し、成長力を高めていくことに基本を置く。
このため、国民各層の就業率向上のために政策を総動員し、労働力人口の減少を跳ね返す。すなわち、若者・女性・高齢者・障がい者の就業率向上のための政策目標を設定し、そのために、就労阻害要因となっている制度・慣行の是正、保育サービスなど就労環境の整備等に2年間で集中的に取り組む。
また、官だけでなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野で活躍できる「新しい公共」の実現に向けて、円卓会議を設けて、民間(市民、NPO、企業等)の声を聞きつつ、本格的に取り組む。
【2020 年までの目標】 『誰もが安心して子どもを産み育てられる環境の実現による出生率の継続的上昇を通じ、人口の急激な減少傾向に歯止め』 【主な施策】
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(人口減少と超高齢化の中での活力の維持)
70年代後半以降、出生率が低下傾向に転じ、深刻な少子化が顕在した90年代以降、累次の対策が講じられたが、公的支出や制度・規制改革において抜本的な対策が実施されず、少子化傾向に歯止めがかかっていない。2005年には日本の総人口は減少に転じ、現在の出生率の見通しのままでは2050年の人口は9,500万人と推計される。将来にわたって、良質な労働力を生み出し、日本の活力を維持するために、今こそ大きな政策転換が求められる。
このため、子ども手当の支給や高校の実質無償化を実行に移し、すべての子どもたちの成長を支える必要がある。また、子育て世代は、消費性向が高く、これらの支援は消費拡大・需要創出の面からも効果が高い上、子ども関連産業の成長にも高い効果をもたらす。
誰もが安心して子どもを産み育てられる環境を実現することは、女性が働き続けることを可能にするのみならず、女性の能力を発揮する機会を飛躍的に増加させ、新たな労働力を生み出すとともに、出生率の継続的上昇にもつながり、急激な人口減少に対する中長期的不安を取り除くことになる。また、子どもの安全を守り、安心して暮らせる社会環境を整備する。
このため、幼保一体化の推進、利用者本位の保育制度に向けた抜本的な改革、各種制度・規制の見直しによる多様な事業主体の参入促進、放課後児童クラブの開所時間や対象年齢の拡大などにより、保育の多様化と量的拡大を図り、2020年までに速やかに就学前・就学期の潜在需要も含めた待機児童問題を解消する。また、育児休業の取得期間・方法の弾力化(育児期の短時間勤務の活用等)、育児休業取得先進企業への優遇策などにより、出産・育児後の復職・再就職の支援を充実させ、少なくとも、2017年には、出産・育児後に働くことを希望するすべての人が仕事に復帰することができるようにする。
(質の高い教育による厚い人材層)
成長の原動力として何より重要なことは、国民全員に質の高い教育を受ける機会を保障し、様々な分野において厚みのある人材層を形成することである。すべての子どもが希望する教育を受け、人生の基盤となる力を蓄えるとともに、将来の日本、世界を支える人材となるよう育てていく。
このため、初等・中等教育においては、教員の資質向上や民間人の活用を含めた地域での教育支援体制の強化等による教育の質の向上とともに、高校の実質無償化により、社会全体のサポートの下、すべての子どもが後期中等教育を受けられるようにする。その結果、国際的な学習到達度調査において日本が世界トップレベルの順位となることを目指す。
また、高等教育においては、奨学金制度の充実、大学の質の保証や国際化、大学院教育の充実・強化、学生の起業力の育成を含めた職業教育の推進など、進学の機会拡大と高等教育の充実のための取組を進め、未来に挑戦する心を持って国際的に活躍できる人材を育成する。
さらに、教育に対する需要を作り出し、これを成長分野としていくため、留学生の積極的受け入れとともに、民間の教育サービスの健全な発展を図る。
研究振興局振興企画課学術企画室
-- 登録:平成22年07月 --