5.大学・大学共同利用機関における研究基盤の充実

委員の意見

【研究施設・設備の整備】

○ インフラストラクチャーの充実は重要な課題であり議論が必要である。研究の基盤を支えるものが急激に脆弱化しているのではないか。リソースのないリサーチはあり得ない。【第1回】
○ 基盤的経費と競争的資金、各種装置や維持経費のバランスが非常に崩れている。基盤的経費が減っている分を、例えば、科研費の基盤研究Cなどで対応しようとして、多くの研究者が応募し、結果的に採択率が下がるという状態になっている。また、科学系分野では共通的装置の維持が重要になるが、メンテナンス経費についても、競争的資金でカバーしようとする状態になっている。本来競争的資金ではないものを、競争的資金でカバーしようという状況は問題ではないか。【第1回】
○ 学術のサポート体制ということでみると、現状では、金銭的な意味での豊かさは随分拡大しているが、サポートで重要なのは研究のインフラストラクチャーであり、その供給が必要。競争的資金を獲得してインフラの充実に充てるということではなく、インフラは公共のものであり、学術の観点から共通して充実させることが必要である。貧しいといわれるイギリスであっても、インフラのサポートが整っており、逆に日本の研究体制の貧困が目に余る。【第1回】
○ 共同利用については、研究者コミュニティの分野に応じ大きな汎用型の施設の整備を必要とするようなものもあれば、人文・社会科学や自然科学の一部のようにそうではない分野もある。【第2回】
○ 研究設備に関する課題の解決にあたっては、対症療法的なものでは不十分で、たとえば設備建設と維持の予算が分けられているなどの制度設計レベルの問題にまで踏み込むべきではないか。【第2回】
○ 研究環境基盤という点では、そもそも研究室がない、研究する時間がないといった根本的な問題点の解消から手をつけるべきである。【第2回】
○ 基礎研究を支えるシステムに関しては、共同研究を行うにあたって我が国では研究室の共用が困難であるなど、個々の研究費の充実では解決できない問題もある。【第3回】

【研究情報基盤の整備】

○ 全国の大学で、学術雑誌を買うためにいくら使われているのかわかるデータはないか。自然科学系の商業誌が高騰しており、研究者や大学では問題となっている。【第2回】
○ 研究成果公開促進費が3分の2になったため、学会の雑誌が出版できないところが増えており、学会活動の支援について検討が必要。【第3回】

【文献・資料、研究用材料等の体系的な整備】

○ 大学等と資料館や博物館等との交流は個別的なものに止まっている。それらの多様な文化的な財の蓄積装置との交流関係を深め、さまざまな資料を有効に利用することについてさらに検討をするべきである。【第2回】
○ 大学における図書の購入費にどれくらいの経費がかかっているかデータが欲しい。【第2回】
○ 人文学の特徴として、多くの時間と必要な情報へのアクセスが重要である。例えば、図書館やデータベースが充実しているかどうか、原資料へのアクセスが可能かどうかが問題になる。【第4回】

「我が国の未来を創る基礎研究の支援充実を目指して」(平成20年8月1日 日本学術会議科学者委員会学術体制分科会)

【研究施設・設備の整備】

○ 大型研究機器など、個人研究では整備できないものを的確に支援する方策を検討すべきである。このような支援体制は短期的成果を望むのではなく、長期的視点に立った継続的支援が必要である。

【文献・資料、研究用材料等の体系的な整備】

○ 長期的視点に立って、研究資源をはじめとするリソースの整備を図るべきである。データベースの構築、動物研究支援などに象徴されるように、科学技術支える基盤の発展的構築・維持は、競争的資金という性格から外れていることから、適切な施策がなされる状況にある。・・・(中略)・・・このような支援体制は短期的成果を望むのではなく、長期的視点に立った継続的支援が必要である。
○ 基礎研究の成果について、研究データベースの構築、ネットワークの整備等を通じて広く研究者間で情報共有するとともに、・・・(略)・・・。

「基礎科学力強化に向けた提言」(平成21年8月4日 基礎科学力強化委員会)

【研究施設・設備の整備】

○ 先端的研究については、大規模な研究インフラの整備が必要であり、その効率的な整備には、研究施設の共同設置を含め国際協力が必要。また、我が国が得意とすべき分野については関連する研究活動を総合的に振興するため、必要な研究インフラの整備は国内整備を基本として取り組むべき。
○ 研究基盤施設については、施設の整備後も、技術支援者の適切な配置や運営費の確実な確保、共用の促進等、施設の能力を最大限活用し、画期的な成果が得られるようにすべき。

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