2.学術研究への財政支援の拡充

委員の意見

【学術研究への財政支援の在り方】

○ 自由発想研究が新しい発見や世の中を変革する力になるということや、教育や基礎研究の充実や、学術研究のインフラをつくるということには公共的な役割があり、そこに投資をしていくことが日本の力をつけていくことになるということについて、論理的な補強をして説明していく必要がある。【第1回】
○ 基盤的な研究を支える経費が重要だという共通認識はあるが、どういう範囲でどのような方針で配分するのか、どういう評価をするのかというレベルに踏み込んで制度設計の議論をしないと実現に向けて進んでいかないのではないか。また、どこがイニシアティブをとってやるのかという問題もある。【第1回】
○ この委員会では、学術の全体をカバーする議論を進めていく必要があるが、このことは、各分野に対して一律の制度をつくるということではない。【第1回】
○ 評価の方法や資金配分については、各学問分野ごとの特性があるため、一律に論じることはできない。【第1回】
○ 我が国の学術研究の振興に当たって政府全体としてどの程度の役割を果たすべきかということについて、これまで資源がどう投入されてきたかを統計的に把握したうえで、しっかりとした認識を持つべきではないか。【第2回】

【基盤的経費の確実な措置と競争的資金の大幅な拡充】

○ 国立大学の法人化に当たっては、学長が基盤的経費を自由に使えるようにするという方向で議論していたのに、実際には、基盤的経費が削減され、競争的資金が拡充されている。研究組織が直接競争的資金をもらうことになって、マネジメントを行う立場からするとどんどん裁量の余地がなくなっているというのが実感である。【第5回】
○ 日本は、諸外国に比べてドクターが多いわけではない。人口比に対してどれくらいが適正か分からないが、日本として研究セクターの量を拡大すべきではないか。そうでなければ、新しい研究やポストドクターの職を生み出す余裕はない。研究だけでも、何千億円も増やさないと対応できない。この必要性をロジカルに説明して、GDPの何%が必要だと主張すべき。【第5回】
○ 文系の研究者の場合は個人研究のケースが多く、運営費交付金の減少によって、図書が購入できなくなるなどの問題が生じている。【第3回】
○ 大学現場では、間接経費というものを運営費交付金の不足をカバーする感覚で捉える傾向があり、間接経費の使途についてやや混乱が起きている気がする。【第3回】
○ 我が国で、科学研究費補助金(以下「科研費」という。)を含めて競争的資金が増えている一方で運営費交付金が減っているということは、基盤的部分を削って競争的資金のほうに回していると理解できる。【第3回】
○ 運営費交付金で足りない分を科研費でカバーしながら大学院生に対する教育を行っているのが実態であり、教育に携わっている研究者と教育に携わっていない研究者を同列で競争させていいかどうかという問題がある。【第3回】
○ 運営費交付金が減っていることから、科研費を申請して大型設備を整えようという傾向が多くなってきた。【第3回】
○ 現在の科研費は、教育経費の肩代わり、設備の購入、先端研究の実施といった性格が混ざっており、性質がおかしくなっているのではないか。【第3回】
○ 科研費の「研究成果公開促進費」は研究費そのものではないが、学会活動の支援、研究活動の支援という意味では、近年の学会の公開促進費の減少は危惧すべきである。【第3回】
○ 科研費全体では増額でも、間接経費が増加している裏で研究者の手許に入る直接経費は減少している、申請件数の大幅な増加に伴って採択率も平均金額も減少している、というのが実質であり、研究者の実感に即した見方である。【第3回】
○ 科研費は、我が国の学問や文化を支えてきた最も重要な研究費と言って差し支えないが、行政の縦割りや研究費の細分化のために、一定の枠の中に抑え込まれてしまっている。政策主導であれ何であれ、研究者の自由な発想の伴わない研究というものは考えられないのだから、多くの国で科学技術が国家戦略として位置づけられている中、科研費をもう少し広く捉え、基盤研究を中心とした多様な研究を我が国の中心的な文化や科学技術を担うものとして位置づけていくべきではないか。【第3回】
○ 科研費のように、研究計画に対して審査を行うのは、研究成果の予測が非常に難しく、時間と労力を要する。もう少し成果主義を導入するなど、審査する側の負担も軽くする工夫を行うべきではないか。【第3回】
○ 科研費は、改善が重ねられて使いやすいものになってきているが、ティーチングアシスタントの経費も賄えるようにして研究者が研究時間を確保できるようにする、単年度主義という問題をクリアする、過去に存在した制度枠の長所も採り入れる、情報系など変革期にある研究分野に応じた制度枠を設けるなどして欲しい。【第3回】
○ 科研費などの競争的資金制度によって期限付きの雇用が助長され、若手研究者がテニュアトラックに入るのが妨げられているということはないか。【第3回】
○ 文科系から理科系に至るまで統一的な制度の下で研究費を支出するということは避け、分野の特性に応じた研究費の制度を設ける方向で見直すべきである。【第3回】
○ 日本の研究をレベルアップするには、大きく投資をして研究基盤を向上させないといけない。科研費の間接経費が増えればいいという話ではない。【第5回】
○ 基盤的経費を支えるための資金は必要である。科研費にその役割を期待するのではなく、基盤的経費を支えるための新しいファンドを用意することが重要ではないか。【第5回】

「我が国の未来を創る基礎研究の充実支援を目指して」(平成20年8月1日 日本学術会議 科学者委員会学術体制分科会)

○ 科学技術の根幹を支え、明日の科学技術を生み出す、自由な発想に基づく知的創造活動としての基礎研究の支援を我が国の科学技術基本政策に合致させながら、行うべきである。科学研究費補助金に代表される競争的資金による基礎研究への支援をより強化するべく適切な施策を講ずるべきである。
○ 大学・研究機関で行われている知の創造活動を展開させるべき基盤的経費(運営費交付金、経常費補助金)が、国の歳出改革により毎年大幅に削減されており、基礎研究の根幹が揺るがされている。来るべき2期目(平成22年度)以降の施策では基盤的経費を増額し、競争的資金との二本立てによる研究支援(いわゆる「デュアルサポートシステム」)の破綻を防ぐための施策が急務である。

「基礎研究強化に向けた長期方策検討ワーキンググループ」における審議経過について (平成21年5月27日 総合科学技術会議 基本政策推進専門調査会 「基礎研究強 化に向けた長期方策検討ワーキング・グループ」)

○ 平均研究期間の長期化や採択率の向上により、研究者が安定して研究できるようにするため、基盤研究を中心に計画的に科研費の拡大に取り組むことが重要。

「基礎科学力強化に向けた提言」(平成21年8月4日 基礎科学力強化委員会)

○ 高等教育への公的投資、基礎科学を含めた科学技術への政府研究開発投資の抜本的拡充が必要である。国立大学法人等、私立大学、研究開発独法の基盤的経費を確保した上で各種競争的資金を拡充することが必要である。
○ 国立大学法人等の運営費交付金、私学助成等については、年々削減が進んでおり限界となりつつあることから、総人件費の抑制を含め、1%削減の方針を撤回すべき。
○ 研究者の自由な発想に基づく研究を支援する科研費は、基礎科学力強化に極めて重要な役割を果たしていることから更なる拡充を図るべき。

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