学術の基本問題に関する特別委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成22年5月14日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3F第2特別会議室

3.出席者

委員

佐々木主査、石井委員、小林委員、柘植委員、三宅委員、家委員、平尾委員、磯貝委員、郷委員、古城委員、中村委員、沼尾委員
(科学官)
喜連川科学官、小菅科学官、佐藤科学官、高山科学官

文部科学省

磯田研究振興局長、土屋総括審議官、倉持研究振興局担当審議官、藤原会計課長、中岡政策課長、山脇振興企画課長、勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長、舟橋情報課長、松川総括研究官、石﨑学術企画室長 その他関係官

4.議事録

【佐々木主査】 

 それでは、ただいまから科学技術・学術審議会学術分科会学術の基本問題に関する特別委員会第8回会合を開催いたします。
 まず、配布資料の確認を事務局からお願いします。

【石崎学術企画室長】 

 配布資料でございますけれども、本日、配布資料一覧というペーパーを1枚配らせていただいております。大部ではございますが、配布資料一覧と配布資料を御確認いただきまして、過不足等がございましたら、お知らせいただければと存じます。

【佐々木主査】 

 それでは、議事に入りたいと思います。
 本日の議題は議事次第にございますように、「学術研究体制の在り方について」というテーマで、「学術政策を巡る最近の動向について」、御報告いただき、御意見を賜りたいということでございます。
 先月末に独立行政法人の事業仕分けが行われたということは御案内のとおりでございまして、学術研究をめぐる政府側での大きな動きがございました。これらの動向について、まず、事務局から説明をいただきます。
 また、その上でこれらの動向を踏まえまして、議論すべき論点を事務局より提示していただいておりますので、それがどのような論点なのかということにつきましてもあわせて、事務局から説明をお願いしたいと思います。
 それでは、山脇課長から説明をお願いします。

【山脇振興企画課長】 

 振興企画課長の山脇でございます。学術に関連する最近の動向につきまして、資料1を御覧いただきたいと思います。さまざまな動きがありましたので、冒頭説明が少し長くなるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
 まず、今、お話がございました独立行政法人の抜本的見直し、事業仕分けに関連した動きでございます。先月末に47法人、151事業の事業仕分けが実施されたところでございます。科学技術・学術関係の結果につきましては、資料4-1と資料4-2を御覧いただきたいと思います。
 資料4-1は、関連法人の対象事業と結果の概要という形になっております。特に本委員会に関連の深い日本学術振興会に関しましては、学術システム研究センターと科学研究費補助金が仕分けの対象事業となりました。結果概要にありますが、学術システム研究センターにつきましては、ガバナンス・透明性の強化に努めることを前提に当該法人が実施、科学研究費補助金に関しましては、ガバナンスの強化(他機関との協調、コスト削減、独立性強化)という結論になったところでございます。
 この点についてどのような議論があったかについて、もう少しお話をしたいと思います。
 資料4-2が事業仕分けの評価結果をまとめたものになっておりまして、日本学術振興会に関しての結果については、15ページ以降を御参照いただきたいと思います。
 学術システム研究センターに関しましては、大学人が中心となった運営という方向性はいいけれども、民間企業など外部の目を入れるべきではないかという意見、センターの運営の謝金ですとか研究旅費の支払い方について、国民に十分納得してもらえるような仕組みを考えるべきではないかという意見が出されまして、結論としては、ガバナンス、透明性の強化に努めることを前提に当該法人が実施という結果になりました。
 それから、科学研究費補助金に関しましては、審査・交付の事務が文部科学省と日本学術振興会に分かれているような現状がありますので、その点はなぜなのかとか、科学研究費補助金の金額については広く、薄くという形で配分すべきではないか、大型のものについては別の研究費で見るべきではないか、トップダウン型の研究と審査の共通性を図るべきではないかという意見がありました。
 取りまとめとしては、17ページを御覧ください。この科学研究費補助金につきましては、科学技術振興機構における競争的な資金との違いとして、JSTがトップダウン型、日本学術振興会がボトムアップ型という役割があるということは一定の理解はあると思われるという見解を出した上で、実施に当たり、他機関等と協力してコストを下げるという観点などから、見直せる部分があるのではないか、あるいは、文部科学省から完全に移行できていない部分があり、その独立性の強化が必要ではないかということが結論になったということでございました。
 このほか、研究開発法人につきまして、お話をしますと、理化学研究所につきましては、7ページに結果を載せてございます。
 ガバナンスに問題があり、これについて国を含めた研究実施体制のあり方について全体として抜本的に見直すべきというような結果になっています。
 また、物質・材料研究機構につきましては、結論は10ページ以降になります。この中では研究の重複とか、理化学研究所を統合すべきではないかという議論がなされまして、独立行政法人、研究開発法人全体の抜本的な見直しの中で、当該法人のあり方を検討すべきという議論になったところでございます。
 さらに、科学技術振興機構につきましては、18ページを御覧いただきたいと思います。競争的資金の関係では、戦略目標の設定のあり方、その際の国の関与、さらには総合科学技術会議の政策の立案との関連等々について議論がなされまして、ワーキンググループの評価結果としては19ページにありますとおり、科学技術振興機構そのものの範疇を超えまして、総合科学技術会議のあり方を中心に科学技術政策を抜本的に見直すべきではないかという結論が出されたものでございます。
 このような科学技術関係についての結論になっておりますし、研究開発法人、さらには科学技術政策全体の見直しが述べられたところでございます。
 また、高等教育関係法人につきましても対象になっておりまして、資料4-1の3枚目に高等教育関係の法人の結果概要が示されております。簡単に申し上げますが、国立大学財務・経営センターにつきましては、ほぼすべての対象事業について事業の廃止、日本学生支援機構についても、私費外国人留学生等学習奨励費制度以外は事業の廃止とされるなど、厳しい評価結果が出される状況になっています。
 今後の状況ですけれども、独立行政法人に対する事業仕分けの結果を踏まえて、独立行政法人のあり方全体が見直しをされます。当初の方針では6月ごろにその方針が出されるだろうと言われておりますが、先ほどの評価結果にありますとおり、研究開発、科学技術関係の法人については、研究開発法人のあり方全体、あるいは科学技術行政体制全体のあり方を含めた見直しという形になっておりますので、それを踏まえた対応が今後、検討されることになると思いますが、具体的な方向性については現時点ではまだ検討中で、明らかになっていない状況となっています。
 続きまして、次の話題です。総括的な資料である資料1の2番目の丸です。国の研究開発システム及び研究開発法人の在り方に関する検討の状況について、御説明をしたいと思います。ただいまの話にも関連いたしますが、現在、総合科学技術会議の研究開発システムワーキング・グループにおきまして、研究開発システム、あるいは研究開発法人についての在り方についての検討が実施されています。
 また、政府の中では関係の副大臣、政務官レベルにおける研究開発法人の機能強化検討チームの中間報告も示されるような動きがありまして、研究開発法人、あるいは研究開発システムの在り方についての検討が行われている状況がございます。
 その内容について、少し御説明したいと思いますが、資料5を御覧いただきたいと思います。これは総合科学技術会議の中の基本政策専門調査会の研究開発システムワーキング・グループの中間とりまとめ(案)として検討されている状況のものであります。これは研究開発機関の組織・運営・機能のあり方でありますとか、さまざまな制度について検討し、5月中には中間報告として取りまとめられる予定というもので、今日お配りしているのは4月に開催された中間報告の案でございます。
 この内容について、要点のみ、御報告、御説明をしたいと思います。
 資料5の4ページにありますとおり、研究開発システムは、研究開発法人、国、大学、あるいは民間によって、研究開発全体の推進に必要な機能を分担したシステムととらえられていますが、その研究開発システムに求められる主要な機能として、中ほどにありますように、政策決定、施策立案、資金配分、研究開発実施という各段階について求められる機能がここではまとめられています。
 その中で資金配分に関しては6ページにありますように、政策課題設定型の研究開発への資金配分と研究者の自発性に基づく研究開発への資金配分という2つの機能に分けて機能が整理されているという形になっています。
 日本学術振興会が担っている機能についても、この中で位置づけられているということかと思います。
 この機能の分析を踏まえた上で、今後、早急に対応すべき課題として8ページ以降に具体的な課題が挙げられています。大きく4つほど出ていますが、1番目は資金配分主体の機能の強化と府省の壁を越えた資金配分を考えるべきではないか、あるいは競争的資金改革による配分機能の強化を図るべきではないかということが示されています。
 2番目は、9ページの下のあたりです。イノベーション創出に向けた「場」の構築、研究開発機関間のネットワークの構築ですとか、研究開発拠点、研究施設・整備の供用の促進などによるイノベーション創出に向けた「場」の構築というものが2番目の項目として挙げられています。
 3番目は、11ページ以降になります。研究開発独法の制度改革・運用の改善、あるいは国立大学法人の運用の改善などが指摘されています。研究開発独法の制度改革につきましては、11ページ以降、12ページ、13ページにわたりまして、さまざまな研究開発を実施する、研究開発を担う法人に求められるような機能、あるいは改善の項目が示されているところでございます。
 14ページには国立大学法人の運用の改善という項目がございますが、これにつきましては、国立大学法人制度については、第1期の中期目標期間を終了したばかりであるので、現段階での制度変更は現場に混乱を生じさせるおそれがあるということで、運用の改善で対応することが適当ではないか、あるいは、文科省における国立大学法人の在り方に関する検討などを踏まえて対応することが必要ではないか、という記述ぶりになっているところでございます。
 このほか、若手研究者・若手技術者の人材の育成、国際的な頭脳循環の促進など、研究開発システムを支える人材、基盤の強化についての方向性がこの報告書の中ではまとめられているというものでございます。
 この報告につきましては、第4期の科学技術基本計画の中にも盛り込んでいく、あるいはその研究開発法人などの体系的な議論につなげていくということになろうかと思います。
 また、これに関連いたしましては、研究開発を担う法人の機能強化検討チームというものが設置されております。資料6-1と資料6-2が、そこでまとめられました中間報告の概要と中間報告の本体資料でございます。これは川端文部科学大臣あるいは鈴木副大臣、各省の政務官などで構成される検討チームにおきまして、研究開発を担う法人の機能強化の在り方としてまとめられたものでございます。
 基本的な考え方としては、現在の独立行政法人の体系が定型的な業務を効率的に実施するための制度として設けられているということに対して、研究開発を実施する、研究開発を担う法人としては競争性があったり、予見不可能性、不確実性、長期性、専門性、あるいは重複競争の必要性といった観点があったりするということから、今の独立行政法人にはなじまない点があるのではないか。したがって、「国立研究開発機関」(仮称)となっておりますが、そのような制度の創設を図るべきではないかということが指摘されております。
 内容的には、基本的な在り方として、科学技術水準の向上及びイノベーションの創出を推進するために、府省、官民を超えるような連携を促進するような制度、柔軟な資金配分、トップダウンによる運営が可能となるような制度。業務遂行についても、グローバルな視点を取り入れた評価、複数年を前提とした研究資金制度が可能となるようなシステム、柔軟な人事システムなどの構築が必要ではないかということが、この検討チームでも指摘されました。これについては総合科学技術会議の検討にも報告がなされ、これを踏まえた全体の研究開発システムの検討がなされるものと思いますし、事業仕分けにおきます研究開発を担う独立行政法人の見直しの今後の方向性もこのような研究開発法人、国立研究機関に関する制度の創設などを踏まえた形で、今後、検討が進められていくものというふうに概略的には思っております。
 以上が研究開発システム及び法人の在り方に関連する現状のご報告でございます。
 その次の話題として、資料1に戻ってください。3つ目の項目として、新成長戦略の策定というものがございます。これは昨年12月に「新成長戦略(基本方針)」が定められました。その後、各省の検討を踏まえたヒアリングなどが行われまして、政務レベルでのヒアリングも4月には実施されたという状況になっています。
 6月に予定されています新成長戦略の取りまとめに向けた検討がなされているという状況でございます。
 文部科学省からは科学技術立国の戦略の関連としては、先ほどの研究開発法人制度の在り方ですとか、人材の育成強化、トップレベルの頭脳循環システムの実現等々の課題について説明をしたところでございまして、今後、6月の新成長戦略の取りまとめが実施される状況にあるということでございます。
 もう1点、4つ目の話題でございます。第4期科学技術基本計画の策定の状況でございます。これにつきましては、この学術分科会におきましても、第4期の基本計画に向けた意見の取りまとめなどを行っていただき、科学技術・学術審議会基本計画特別委員会におきまして、12月に報告書を取りまとめていただいたということでございますが、その後、総合科学技術会議の基本政策専門調査会において基本方針を検討中という段階でございます。
 基本方針の検討状況についての資料を御覧いただきたいと思います。資料8-1と資料8-2にございますのが、現在、総合科学技術会議の中で実施されている第4期科学技術基本計画に向けた基本方針の素案になっています。
 概要でございますが、横長の資料8-1の2ページを御覧ください。ここでは基本的な理念とともに、特徴としては、国家戦略の柱としての2大イノベーションの推進が重要ということが、まず挙げられています。グリーン・イノベーションで環境・エネルギー大国を目指す、ライフ・イノベーションで健康大国を目指すという形になっています。これは新成長戦略の基本方針に掲げられた2大イノベーションの推進というものを科学技術の基本計画としても受けるという考え方で、まず、これが出されているというのが1番目の特徴と思います。
 また、3ページを御覧いただきたいと思います。
 その中では4番目の項目として、我が国の基礎体力の抜本的強化。基礎研究の抜本的強化、独創性・多様性に立脚した基礎研究の強化などが必要だということが述べられるとともに、それを支える人材の強化ですとか、国際水準の研究環境の形成などがここの部分で取り上げられているような構成になっています。
 また、これらを実現するための研究開発投資の強化として、3ページの右下でございますが、この素案では官民合わせた研究開発投資のGDP比4%以上を目指すべきということが示されるとともに、政府の研究開発投資のGDP比については、ペンディングとなっていまして、数値が示されていない状況になっていますが、このような投資の全体についても検討が進められているような状況になっています。
 第4期の科学技術基本計画の策定に向けてのスケジュールですが、その次の4ページをごらんください。今年度内に第4期の基本計画を閣議決定する。平成23年度からの5カ年の計画になりますので、そこが最終の決定になりますが、それに向けて総合科学技術会議では専門調査会の報告書について、5月、6月にかけてパブリックコメントを行う、そして、基本方針の取りまとめ、年内には答申案をまとめるというスケジュールで進んでいるような状況になっております。詳細につきましては時間の関係がありますので、省略させていただきます。
 動向の最後ですが、日本学術会議におきましては資料1の一番下の丸でございます。
 先月、「日本の展望-学術からの提言2010」が公表されました。また、3月には「学術の大型施設計画・大規模研究計画」に関連する提言が公表されたところでございます。これにつきましては、学術分科会の研究環境基盤部会におきまして、この提言を踏まえた学術の大型施設計画・大規模研究計画の推進方策について検討を進めるという形になっています。
 内容につきましては参考資料で配布しておりますが、後ほど御覧いただければと思います。
 以上が主な最近の科学技術・学術政策に関する動向ですが、このような動向を踏まえた本日の意見交換の論点として、資料2に御議論いただきたい事項をまとめています。前回も少し御議論いただきましたが、事業仕分けにおける日本学術振興会の評価結果においても、学術研究ですとか、科学研究費補助金の重要性そのものについては一定の理解が得られています。それを前提に、今後、どのような形で学術の振興を図るべきかということで、3つの論点について御議論をいただいてはどうかというふうに考えております。
 1つ目は、今後の学術研究を推進する上で、日本学術振興会が持つべき機能にはどのようなものがあるのか、どのような機能強化を図るべきなのかということかと思います。事業仕分けですとか研究開発法人の在り方の中では、資金配分機能が中心に議論されましたけれども、日本学術振興会は大学を中心とした学術研究を支援する機関といたしまして、学術研究の助成に加えて、学術の国際交流ですとか、若手人材の育成などの機能を担っているところでございますので、全体の中でどのような機能強化を図っていくべきかという点について、意見をいただければありがたいというのが1つ目です。
 2つ目については、学術研究を推進する上で、科学研究費補助金等の競争的資金制度はどうあるべきかという観点でございます。これについては事業仕分けの結果の中において、審査の進め方などについて、他の競争的資金制度の審査との共通化などの意見が出されていましたので、そのあたりについてどう考えるか。また、もっと大きく言えば、学術、自由発想の研究を支えるような科研費とその他の政策主導型の競争的資金について、マルチファンディングの機能、体制は非常に重要だと思っておりますが、それを進めつつ、研究者の視点に立った政策主導型の競争的資金については大くくり化をすべきではないかとか、一元化をしていくべきではないかという方向性が昨年の事業仕分けでも出されていますので、それを踏まえた検討、さらには競争的資金の使用のルールの統一化、運用の改善も進めていくべきということが挙がっています。そのような論点について、御意見をいただければありがたいと考えています。
 最後は国の研究開発体制の中で学術研究を活性化していくためには、どのような点に留意すべきか。現在、第4期科学技術基本計画、研究開発システム、研究開発法人の在り方などが検討されているところでございます。そのような中で学術研究、基礎研究の強化に向けた方策については、どのような点に留意すべきなのかということが挙げられるかと思っています。特に現在の新成長戦略あるいは第4期科学技術基本計画の中では、国家戦略の柱としてのグリーン・イノベーションですとか、ライフ・イノベーションに重点が置かれた政策展開をしていく方向性が出されているところですが、その中で学術の多様性を確保し、大学等の独創的な研究をいかに進めていくような枠組みとすべきなのかということが大きな論点になろうかと思います。そのあたりについても御意見をいただければありがたいと思っています。
 その他の動向を踏まえた点についても御意見をいただければありがたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

【佐々木主査】 

 それでは、ただいま事務局からこの間の主な動向の説明がございまして、それを受けての御意見をということでありますが、何分いろいろな話があるものですから、御質問もあろうかと思います。随分たくさんの材料があるものですから、もしよろしければ、その辺からご発言をいただきたいと思っています。いかがでしょうか。
 それでは、小菅科学官、どうぞ。

【小菅科学官】 

 日本の少子高齢化問題がよく話題にあがります。説明を伺った限りでは、従来どおりの人材が豊富にあるという前提でいろいろと議論されているようですが例えば、18歳人口でいきますと、ピーク時に249万人ぐらいいた18歳人口が、現時点だと120万か130万か知りませんが、そのくらいに落ちています。大学の現場におりますと、そういう影響はものすごく大きく、ひしひしと感じておりまして、きちんとした人材が確保できなくなりつつあるような状況の中で、どういうふうにこういう政策を進めるかという議論はどこかでなされているのでしょうか。

【山脇振興企画課長】 

 定量的な評価まで含めて、今、例えば、第4期の基本計画の中でなされているかどうかについては、私自身は情報を持ち合わせておりませんので、確認させていただきます。

【佐々木主査】 

 人口減少問題はどこかに項目としてありましたか。
 では、審議官、どうぞ。

【倉持研究振興局担当審議官】 

 非常に大事な点だと思います。
 一例でございますけれども、例えば、研究開発の担う法人の機能強化などの議論でも、世界トップレベルの国際的な競争力とか、国際的なマネジメントを意識した議論があり、その背景は国際的な頭脳循環といいますか、そういったところを意識しながら、日本の中のそういう制度的な充実も図っていかなければいけないのではないかという意識もあり、議論がございます。それは一例でございます。

【山脇振興企画課長】 

 認識としては、資料8-2の「科学技術基本政策策定の基本方針(素案)」の2ページに基本的な背景、理念として挙げられています。この中の3つ目のマルの中で、高齢化と人口減少は進んでいるという中でどのような対応をするのかという論点ですとか、人材の観点では世界的な人財環流(ブレイン・サーキュレーション)の重要性という形で、この中をどう切り抜けていくのかという基本的な認識は共有されていると思います。

【小菅科学官】 

 最近、理系の若い方でできる方は大体お医者さんになりたがって、工学というのは、今、人材がだんだん集まりにくくなっております。だから、そういう中で、もうちょっとアクションを伴うような方策を打ちませんと、手おくれになるような気が、私だけではなくていろいろな方が現場で感じております。例えば、残念ながら、いい留学生は日本に来ませんよね。いい留学生はアメリカに行ったり、最近はEUが強いですから、EUのほうに行ったりして、いい留学生を集めて、留学生を将来の人材として育成するというのも、大学のレベルではいろいろとやっていますけれども、実際はなかなか難しいのが現状でございますので、もう少しアクションを伴うような提言をしていただけると非常にありがたいと思います。

【佐々木主査】 

 それでは、ほかはいかがですか。

【倉持研究振興局担当審議官】 

 今の点で。成長戦略でも、今、その肉づけをしているのですけれども、今日、お配りしている参考資料2でいけば、8ページに、まさに若者が希望を持って科学の道を選べるように、自立的な研究環境と多様なキャリアパスを整備する。これは具体策が非常に難しいわけですけれども、意識としてはこういうレベルでもありますので、本当にそれをどういうふうにやっていったらいいかということで、また、いろいろとアドバイスもいただきたいと思います。

【佐々木主査】 

 では、ほかにいかがでしょうか。
 磯貝委員、どうぞ。

【磯貝委員】 

 事業仕分けなどを見ていますと、いろいろな科学技術政策で総合科学技術会議が問題だという話が出てきて、総合科学技術会議を改組するという話も出てきています。一方では、総合科学技術会議がいろいろな施策を打ち出しているのですが、この2つの動きに対して我々はどちらを見て、何を考えればいいのかというあたりは、どういうふうに考えればいいのでしょうか。

【佐々木主査】 

 いろいろな考えがあるだろうけれども。どうぞ。

【山脇振興企画課長】 

 方向性としては民主党のマニフェスト等で科学技術戦略本部を策定し、その機能を強化していくということが示されていますので、それに向けた検討が今、進められているということですが、現在は総合科学技術会議の中でそれに向けた機能強化の取り組みを実際にやられているという状況かと思います。例えば、来年度の予算に当たって、概算要求前からアクションプランをつくり、各省が統合するような取り組みや強化ができないかということが、現在の総合科学技術会議の中で示されています。それらの取り組みを踏まえて、今後の科学技術戦略本部の設計をどうするかということが検討されていくものと思います。

【土屋総括審議官】 

 総括審議官です。
 今、山脇課長が申し上げた前段のところまではそうだと思うのですが、果たして総合科学技術会議が求められている機能を十分に発揮しているかどうかは事業仕分けのみならず、いろいろなところで議論があり、それがどの場で議論されるかはまだ決まってはいないと思っています。雑な言葉でいえば、被告人になっている人たちが自分のことを自分で検討するというのはあまりケースがなくて、違うところで行われるのではないかなというふうにも考えておりますが、いずれにしてもどこの場で検討するかはまだ決まっていないわけです。総合科学技術会議で議論されたのは、もちろん、総合科学技術会議みずからが改善するための改善努力は当然されていて、今、いろいろなことをやっておられるのはその一環だと認識しております。

【佐々木主査】 

 磯貝委員、追加的質問をどうぞ。

【磯貝委員】 

 多分、事情はそういうことだと思いますが、我々が議論をするベースとして総合科学技術会議からのいろいろな提案にどう対応するのか、あるいはどう反論するのかという問題があるときに、これはこれで動かす方向の一つであるという理解でやっていけばいいのですねということなのです。そもそもそこが変だという話になると、議論の方向が全然違ってくるので、ベースだけは確認させていただきたいということなのです。

【土屋総括審議官】 

 それは委員がおっしゃるとおりだと思っています。
 研究開発システム改革の総合科学技術会議における議論もその一環でしょうし、総合科学技術会議としても自らの改善をされていて、そのための議論は、今、具体的に行われるわけですが、それはきっちり、我々としてもそれに取り組んでいきたいと思っております。

【磯貝委員】 

 わかりました。

【佐々木主査】 

 ほかに。
 それでは、御質問がないということではないと思いますけれども、御意見を含めていただきたいと思います。
 柘植委員、何かございましょうか。

【柘植委員】 

 どの論点にという前の、少しアンブレラ的な論点の提言であります。
 先ほどのお話を受けたいろいろな動きの中で、まず、3点ほど、私としての論点の結論を申し上げたいと思います。
 1つは、仕分け結果のアクションプラン。これから仕分けは仕分けで尊重して、いろいろな政策設計がされていくと思うのですが、それに対する見方として、今まで我々、科学技術・学術審議会としては、いろいろな問題はあるけれども、学術と科学技術の多様性とか冗長性を担保しながらの思想で進んできたと思うのです。それが仕分けという作業の価値観からガバナンス重視型に変わってきている。これに対して仕分け結果のアクションプランを具体的に設計していくときに、私は2点ほど指摘したい。
 1つは、ここまでガバナンス重視ということで、多様性、冗長性を犠牲にしてまでもするとなると、日本学術会議では「科学技術・学術審議会」のように間にポツを入れるようにしていますが、根本的な学術と科学技術それぞれを振興するエンジン構造は現状どうなっているのだ。そして、それには弱いところ、強いところがあると思います。ガバナンス重視というふうに迫ってくると、それに基づいた改革設計までやらざるを得ないなと感じています。
 同じように、今の1点目の仕分け結果におけるガバナンス重視の中で、学術と科学技術の振興のエンジンについてそっくり抜けているのが、教育の振興エンジンに対する議論です。ここのところを忘れないで、科学技術と学術の振興エンジンの構造の改革設計が必要です。
 2点目は、資料5の「研究開発システムワーキング・グループ中間とりまとめ(案)」で感じたことですが、今、1点目で申し上げた欠陥がこの中にもあらわれています。
 特に大きな問題は、「人財」を財産の「財」に変えているということです。これはお金の扱いとなっています。人間というものを磨いて、そして社会、世界のために役に立つとなったときには、ひょっとしたら財産の「財」と同じかもしれないのですが、私は科学技術・学術審議会の人材委員会をやってきたのですけれども、やはり従来の人材を磨くメカニズムという視点がそっくり抜けているなと。唯一部分的に「小学校、中学校の何とか理科好き」ということで、「お茶を濁している」という言葉しか使えないのです。
 したがって、昨年8月に科学技術・学術審議会の人材委員会が出した提言がほとんど無視されているというふうに言わざるを得ないです。同時に資料5の研究開発システムの欠陥で大きなのは、日本の科学技術駆動型のイノベーションの牽引エンジンが現状どうなっているのか、どう改革すべきかという見方が資料5には抜けていると言わざるを得ません。
 大きな問題の3点目の指摘ですが、資料8です。第4期の計画の状況が入っていますが、第3期計画の罪というか欠陥についてはよく書いてあるのですが、5年間の投資をベースに第4期に生かしていくという視点がどこにも書いてないです。ここは非常に問題で、我々国民から見てもガラガラポンということはあり得ないのではないかと思います。多様性と冗長性を持ちながら第3期の計画は20兆円を超えるお金が投入されたわけですから、第3期の成果の生かし方を記述し、それが第4期につながっていくという視点が資料8では必要だろうと。
 もう1つの科学技術とイノベーション政策を一体化していこうという方針は、1つの面としては正しいと思うのですが、イノベーションの牽引エンジンの構造の現状と改革の方向性の可視化をしない限り、それは絵にかいたもちになるし、教育改革、教育政策との三位一体政策という面が全く未熟に書かれているなと思います。
 そういうことで、長くなりましたが、結論だけ言わせてください。
 結局、この問題のセンターピンは何かということです。つまり、センターピンをきちんと直せば、我々が目指している方向に行くという意味でのセンターピンが、ほんとうは1点であるべきなのですけれども、3点あります。
 1つは、教育政策と科学技術政策とイノベーション政策を三位一体で進めるという振興策を明瞭化すること。
 2番目は、イノベーションエンジンの構造を明瞭化し、強くする設計を考える。
 3番目は、世界水準の大学教育研究をどうするのか。大学に委ねるのか、外からトップダウン的にやらざるを得ないのか。この3点がセンターピンではないかというふうに私は意見を持っております。
 すみません、長くなりました。

【佐々木主査】 

 どうもありがとうございました。
 では、ほかの委員はいかがでしょうか。
 それでは、石井委員、どうぞ。

【石井委員】 

 研究も教育も短期的なものではなくて、長期的な視点で考えなければいけないものだと思うのですが、COEとかGCOEというのは期限が切られたものですよね。そして、それが終わったら財源がなくなってしまうわけで、COE、GCOEなどの要求条件としては、大学が終わった後の出口イメージをちゃんと持ちなさいということを課題として各大学に出しています。そうはいってもお金はなくなってしまうわけですから、財源がないわけです。そしたら、せっかくのGCOE、COEの活性化した活動が終わってしまうということなのです。それはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。後継の事業を別の名前で文科省が企画されるということを考えておられるのでしょうか。

【佐々木主査】 

 文科省のほうから何かお答えがあれば。

【山脇振興企画課長】 

 直接の担当部局ではないですが、委員がおっしゃいましたように、継続的な形でどう教育研究を向上していくのかというのは非常に大事な点だと思っています。理念としては各大学で継続的な取り組みを独自に進めていただくような環境を整備していただくということかと思うのですが、それを支援する制度として、5年ごとの支援制度は研究の場合でも多くあるということかと思います。そこの持続性については資金の問題も含めて簡単な問題ではないのですが、大学側の努力と国の支援の制度がうまくマッチするような形での展開は必要だというのは総括的には思っています。
 具体的なグローバルCOEなどについてのお答えはできませんので、申しわけございません。

【石井委員】 

 一応、大学側の協力もということをおっしゃいましたけれども、大学側は運営費交付金が毎年減らされているような状況で、財源はないわけですよね。だから、何らかの協力はするとしても限界があるわけで、それだけでは無理なわけですよね。

【佐々木主査】 

 これは基本的に高等教育局の話になるわけでしょうか。磯田局長、何かございませんか。

【磯田研究振興局長】 

 基本的には高等教育局で検討をしておりますけれども、今、ご指摘の点についていえば、まず、民主党のほうでマニフェストを検討されていると伺っておりますが、そういう中で高等教育関係がどのような記述になるかはかかわりがあるかもしれません。
 それから、政府といたしましては、今、新成長戦略を具体化するべく検討しておりますけれども、この中にどういう議論が入ってくるかですが、一般的に今まで聞いてきた内容で申し上げますと、国際的なレベルの研究拠点なり教育拠点を充実すべきではないかという御議論がなされているということは伺っておりますが、それがどれほど具体化するかは、今後の政府部内での議論の行方によるかと思っております。いずれにしましても、今の点につきましては来年度の概算要求をどのような形でするかということだと思います。
 今、お話がございましたように、各大学の運営費交付金の問題についても高等教育局を中心に議論されておりまして、第2期の中期計画期間を考えましても、何らかの運営費交付金の削減状況についても改善が必要ではないかとか、そういうお話も伺っておりますし、この点につきましては、国立大学については国大協、あるいは私学助成につきましては私学団体等がご検討されまして、先般も特定の大学のお名前ではございますけれども、要望書が出されたり、あるいは議論が進められていると伺っておりますので、そういう各団体の御意見も参考にしながら検討中ということでございます。

【佐々木主査】 

 では、中村委員、どうぞ。

【中村委員】 

 その辺については議論しても切りがないと思うのですが、1つだけコメントをしておきますと、もともとCOEは研究中心というところから始まり、グローバルCOEになってからは、研究というよりは教育というふうになってきたわけです。そうしますと、今の方向としてはアメリカ、中国もそうですが、皆さん、どこでも、高等教育、特に理工系の高等教育は国の柱だということで、マスターから大学院生が自活できるだけの給料を出すというのは世界的常識になっているわけです。これは科学技術政策というよりは教育政策だと思うんです。今やCOEの目的は教育ですから教育政策になっています。そうなってくると、ある意味では民主党の高校無償化とカップルしているはずで、高等教育が非常に大切だということになると、特に博士、大学院は高等教育の最後、すべての教育の仕上げなわけなので、ここを政策として引き上げることが逆に世界の流れになじむのではないかと思っているわけです。
 今のシステムでは、特定の先生が頑張った専攻や学部はお金がとれて、そこの大学院生は潤う。ある先生が頑張って研究費をとってくるかどうかで、研究室の大学院生がお金をもらえるかどうか決まり、その結果に毎年一喜一憂するという仕組みはおかしい。
 前のCOEと違って今のCOEは完全に教育政策になっているので、先生個人の努力で大学院生に給料が出るかどうかが決まる仕組みは、大学院生のほうから見ても釈然としないものです。大学院生の給与は全体の高等教育の仕組みとして出すべきです。ざっと計算してみても、ドクターコースだけだと数百億円です。子ども手当に比べたら非常に安いお金で、その中で文部科学省の方針なり何なりで、どこの大学院にお金を出すのかということを決めれば、それで結構だと思います。
 だから、COEは今のままでは、かえって学生から見ると不公平が高まってくる。まして、同じ大学の中でお金をもらえるところとお金をもらえないところがあるわけですから、こんなものが教育的であるとは全く思えない。高等教育振興という方向に視点を変えていただいたほうがいいのではないかと思います。

【佐々木主査】 

 今のこととも関連するのですが、今日の資料の中では教育というのは直接的な項目としては挙がっていないのですが、これは第4期の話かと思いますが、資料8-1、あるいは資料8-2の資料の中に基礎研究強化という名目のもとでこの話が出ているのではないかと。今、中村委員がおっしゃったように、いや、これは視点を変えるべきだという議論になると、柘植委員が言われた話ともつながるのですが、あくまでも教育というカテゴリーでは扱いたくないのか、扱えないと思っているのか、あるいは固定観念があるのかよくわかりませんが、資料8-1の参考2とか参考3あたりは何となくその辺の話が残っています。これは基本計画の議論をしたときに、我々がある意味でワーワー言って、人材委員会も含めていって、例の野依委員会の話もあり、このままではどうにもこうにもならないという話がこういう変形をかぶりながら、そこに残っているような感じがします。
 ただ、一つは、今までの施策を生かしながらやっていくという発想が政治家の間では非常に難しい問題でして、同じことをやるにも名前を変えるという話になってしまうところもなきにしもあらずなんですが、これまでの成果を生かしていき、これを使っていく。そして、またゼロから始めるのではなくてという話にも関係しているように資料を見ながら思ったんです。
 今、この基礎研究強化という中に、もちろん基礎研究の強化は結構な話なのですが、若手研究者、特に理工系大学院の話なども入っていることは入っています。あとは位置づけ方と推進の仕方の線とか点ではなくて、中村委員のご意向を踏まえていえば、面的なというのでしょうか、そういったものがきちんと入るようなことがあれば、もう少し違ったイメージになるかもしれないという気がしますけれども、私は理系のことはよくわかりませんから、感想にすぎないですが。
 それから、さっき小菅科学官が言われた話もこの辺のことに少なからず関係しているということかと思いますが、いずれにしても教育というのか、柘植委員はこれを教育という言い方をされたことも含めて、人材の問題が非常に危うくなっていることは、これまでも本委員会として繰り返し述べてきたことでありますから、今後とも、この点についてはますますきっちりした、がっちりした仕組みをつくらないと、砂上の楼閣になりかねない。外国を含めて、人材の流動化は流動化で結構なことなんだけれども、やるべきことをやらないというふうになってはならないということについては、皆さん基本的に共通の理解かなと座長としては何となく思い、理解しているところでございます。
 その辺のことは、今後ともひとつよろしくお願いします。
 もちろん、その点をさらに議論を伺っても結構ですけれども、一応、資料2に何となく宿題らしきものを出されていますので、正直、座長としてはこちらのほうも話題にしていただきたいところでございますが、皆さん、何かございますか。

【家委員】 

 今日は大変重要な資料をたくさんいただきまして、これは詳しく読むといろいろ言いたいことがたくさん出てくるんだと思うんですけれども、たまたま目についたことだけちょっとコメントさせていただきます。
 資料5の10ページから11ページにかけて、研究施設・設備の供用の促進ということが書いてあります。これ自体は大変結構な方向性でよろしいと思うのですが、そこに書かれている具体的な取り組み等のことを読ませていただくと、私としてはかなり心配なことがあります。
 例えば一番最後に、11ページの真ん中よりちょっと上ですけれども、各研究者が交付を受けている研究費から使用料を徴収する仕組みを設けて、研究開発独法に機材購入のインセンティブを与えると。これは共用促進法とか、最近の動きでこういうことはあるんですけれども、これはある意味でいうと非常に危険な方向性ではないかと思っております。どうもユーザー負担とか、受益者負担とかいうと、どこかから金がわいてくるような錯覚があるのではないかと思いますが、少なくとも基礎研究に関してはユーザーのほうの研究者も、それによって立つ資金は国からの競争的資金であったりするわけです。ですから、結局は国の基礎研究に投入する資源をファシリティーのほうにつけて、それを供用でやるか、競争的資金で各研究者に配分して、そこから使用料を吸い上げるかという問題になって、それを比較したら明らかに後者はマネジメントとして効率が悪いわけですね。一旦配分したものを、また吸い上げるということをするわけですから。その点が1つと。
 それからもう一つ、2番目のポツのところに、後述の研究開発運営人財の確保ということがあります。これ自体は大変重要なことでありまして、日本の場合、諸外国の比較すべきビッグファシリティーと比べると、それを支える技術職員の数が極端に少ないということが、どの分野でも言われていることです。
 こういうことを言っていただいたのは大変結構なのですが、その後述のというのが16ページにありまして、いろいろ書いてあるのですが、そこを読んでも一向に、これで確保・育成ができるとは思えないですね。重要であると言っていただいたことは結構なのですが、結局コストがなければ、そういう人を継続的に、特にそういうファシリティーを支える人というのは継続的に地道な仕事を続けていただくということなので、そういう人の社会的地位の確立及び育成・確保が必要であると書かれて、それを具体的にどうするかということが、今のところ一切なくて、単に定員削減がどんどん行われているから、そういう問題が起こっているのであるということを指摘していただいたことは大変結構ですけれども、ここから一歩踏み出さないと何も解決しないという印象を持ちました。以上です。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 ただいまの議論も含めてですけれども、今日はまだあまり御意見が出てないものだから、この研究開発システムワーキング・グループのあたりのことについても、何か御意見があればいただければと思うのです。そうすると、また資料2からちょっとずれちゃうかもしれないけれども、何かございましたら。総合科学技術会議を含めて、組織問題というのも背後にあり得るなということだろうと思います。これは何だろうかなという、どういうことになるのかねというあたりも、もし研究者としてのご発言があれば、お願いしたい。何しろ今見ただけでどうだこうだというのは言いにくいかもしれませんけれども、何となくでっかいものができそうな雰囲気もあるのですが。
 それでは、資料2の御議論をいただくともちろん一番ありがたいのですが、その点も含めて、御意見を出していただきたいと。
 それでは、平尾委員、次、中村委員。はい、どうぞ。

【平尾委員】 

 先ほどからの議論を少し聞いていまして、今日のこの資料は非常によくできていると思うのですが、我々は第3期科学技術基本計画で総合学術会議が決めたナノテク・材料、ライフサイエンス、それからIT、それから環境エネルギーというのをずっとやってきて、それにかなりの資金が投入されて、各大学とか、いろいろな研究機関にそれに関する装置が非常にたくさんあるわけですね。
 それが今度、グリーン・イノベーションとライフ・イノベーションということに集約されていくのですが、中身を見ると特区をつくるとか、スマートグリッドとか、特化したものがいろいろ出てきて、何らかの関係はあるので非常にいいと思うのですが、我々は第3期科学技術基本計画のときに10年先とかのロードマップをいろいろ書いていまして、それとこの第4期科学技術基本計画を始めたときとの間にうまくつながりがつけられれば、以前の装置や人材を有効利用しながら次に進めていけるという筋書きができるのではないかと。
 新たに、今、大きなものをまたつくると、またそこに費用が要るのです。例えば産業界のほうではやはり中小企業、ベンチャーが結構力をつけてきていまして、ようやく大学が門戸を開いて産学連携しながらいろいろつくってきています。ただ、成功例は今のところあまりないのですが。それからクラスター計画で、知的クラスター、産業クラスターで地域に根差したいろいろな人で、今、皆さん必死に頑張っていまして、新たな事業規模をつくろうとかいろいろなことをやっています。そういうことで、せっかく第3期科学技術基本計画で科学技術のプラットホームができつつあるところを、ある程度拠点化して、そしてそれを中心に今度の第4期のグリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションにつながるようなものになっていけば、非常に有効に活用されるのでないかと思うのです。新たにスマートグリッドとかそういうことですべてやってしまうと、また新たに始めるのかというのをすごく感じました。
 ですから、いろいろ申し上げたのですけれども、第3期から第4期へいくときにどのような形でいくかということを、国民だけではなくて、実際の大学とか、研究機関の人に、こういうことでうまく進んできているというシナリオがきれいに書けると、つまりせっかくの基盤を、さらに上げるシナリオになって、一気に何か、楽観的ですけれども、花が開くようなことが起きる可能性もあると思っています。ぜひこれまで頑張ってきたところの拠点とか、クラスターとかには、さらにそれを加速するようなシステムをつくっていただけるとよいかと思っております。
 ただ、産学連携は第3期科学技術基本計画のときから非常に進んできておりまして、皆さんの意識の中には、学術だけではなくて、科学技術を大学の研究室でも持って、それを産業界の人に使ってもらえるような意識を持たなければいけないということは、いろいろなところで出ています。かといって、学術をおろそかにしていいとは思っていないということも付け加えておきます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 では、中村委員、お願いします。

【中村委員】 

 2点、お互いに全然違うことなのですが、1つは平尾委員のお話に関係ある点です。
 今回、第4期科学技術基本計画から研究の少し方向性が変わるようにも見えるのですけれども、そのときに研究費の配分の審査の体制がほんとうにうまく行われるかどうか少し心配かなと思っています。補正予算の配分などをみると何か昔の透明性の低い配分方式に回帰しているようで、せっかく学振やJST、NEDOなどがきっちりした審査システムをつくってきたにもかかわらず、それを使わずにお金が配分されているようにみえます。例えば2年以内に何百億円執行という号令のもと、アドホックに委員会をつくってばらまくということが起きるのじゃないかという懸念があります。平尾委員がおっしゃったのと似てるのですが、今までせっかくいろいろなものができてきているので、それが生かされる審査の仕組みが必要です。これまでに培ったものが生かされた上で新しい方向にいくということが、まさにガバナンスと透明性からみて必要です。全体の方針はこれで結構だと思うのですが、具体的にどうやるかというところを至急つくり上げないといけない。
 例えば今の日本学術振興会の科研費の仕組みには、そのままは全く乗らないように思います。現在の、研究分野の細目の立て方などを見ると科研費はそう簡単に方向転換できないからです。こういうような具体的なことを少し考えていただいたほうがいいと思います。それが1点。
 もう一つは論点のほうです。上から1、2、3とあるので、せっかくですから、1の日本学術振興会の持つべき機能についてコメントしたいと思っています。
 私もあそこのセンターに最初の何年かおりまして、そのときに気がついたことが2つあります。1つは、国際関係の部のところですね。国際関係の部は、ほんとうに外務省あたりと一緒にやるというようなのがあっていいのではないかと思うのです。最近ある国に行って、そこの大使とお話ししましたが、日本とその国の科学技術の交流に協力したいと思っておられるわけです。だけど、大使館と学界にはチャンネルがありません。ですから、そういう意味でも日本学術振興会の海外学術部門は、少し違う分野の方との連携ですか、国の中の。そういうことをした方がよいのではないかなと思っております。
 それから先ほど来出ていることですが、日本学術振興会は法律の縛りがあって、簡単に言うと大学生は働きかける対象にならないのですよね。先ほどからの議論から見ても、学術振興のためには高校生ぐらいから、高校、大学、大学院と連携してやっていく必要があるのは明らかですね。ですから、そういうアクティビティーが日本学術振興会に持てるようにする必要があるのではないかと思っています。
 具体的な例示を言いますと、スーパーサイエンスハイスクールというのをJSTがやってるわけですね。JSTがあれをやる法律根拠はどこにあるのか私は存じ上げませんが、もしJSTが、ある法律根拠に基づいてスーパーサイエンスハイスクールをできるのでしたら、おそらく日本学術振興会ができないわけがないのではないでしょうか。そういう意味で、高校、大学対象の事業を日本学術振興会が行って、高校レベルから国際レベルまで一貫した学術研究のバックアップをしていただける仕組みができるといいのではないかと思っています。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。

【古城委員】 

 よろしいですか。

【佐々木主査】 

 古城委員。

【古城委員】 

 学振に関してなのですが、文系からいいますと、今、運営費交付金が減らされていますので、科学研究費補助金というのは非常に重要な位置づけになってきていると思います。この仕分けを見ますと、ガバナンスの強化が求められているということなのですが、個別のコメントを見ても結構ばらばらで、ガバナンスとして一体どういうところが一番の問題点とされたのかというのはこれを見てもわかりません。現実に対応されて、どういう点が問題とされたのかということをお聞きしたいというのが第1点です。
 それから学振の機能なのですが、今、大学の国際化ということが非常に求められていて、文科省も「グローバル30」という計画をつくって、それが今度の政権で頓挫するのかどうかちょっとわかりませんけれども、今、宙づりみたいな感じになっていて大学は困っています。先ほど理系のお話が出ていましたけれども、学術的な観点から、留学生に対して日本がどういう方針をとろうとしているのか、今ひとつ見えません。少子化で人材育成が非常に難しくなってきているところで、留学生をどういうふうに位置づけているのか、留学生の受入を促進する政策を掲げている政府としてどういうふうに留学生対策を位置づけるのか、方針がいま一つ見えません。それはそれぞれの大学で考えてくださいということで、今のところそういうふうにしていると思うのですが、ただ、それは大学だけでは非常に難しい。つまり、優秀な留学生を呼んでくるには、奨学金などがないと、難しいという点があります。
 ですので、そういった研究と大学の国際化、それと留学生に対する方針をどういうふうに位置づけるのかということを、それをどこかである程度の方針を出していただかないと、個々の大学で細々とした形でやっていくというのは無理があるのではないかと思うのです。ですので、これが学振で話し合うべき問題なのかどうかちょっとわかりませんが、学術という観点から留学生の問題を考えていただきたいなと思っています。

【佐々木主査】 

 ありがとう。
 それでは、郷委員は関連質問? 

【郷委員】 

 はい、関連。

【佐々木主査】 

 それでは関連ということで、あるいは御意見ということで。

【郷委員】 

 いろいろ申し上げたいことがあるのですが、今の御意見に関して。
 留学生の問題に関しては、確かに今の古城委員のお話も私はうなずけるのですが、やはり現場で大学教育をしている人が、例えばアジアの、それで日本に来たいという人にどういう要望があるのか、その辺をとらえて対応していく必要があるのだろうと思います。つまり、学振にお願いをしても、文科省にお願いしても、留学生の実態は、分野はわかると思いますけれども、私たちが数年前に考えていた状況とは、個々の状況が今は非常に早く変わっています。現場に行って現地でいろいろな大学の先生と、あるいは学生と会ってみると、日本に何を期待しているか。アメリカでもなく、日本なのですね。それは何なのかと。分野によって違いますけれども、非常に具体的に申し上げると、研究の第一線というよりは、むしろ教育、大学の基礎的な教育が日本ではちゃんとできていたと。そのあたりをきちんと日本で学ばせたいとか、あるいは日本の教育のやり方のノウハウを学びたいとか、特に東南アジアなんかですと、そういう要望が多いです。ですから、思ってみないようなことが、今、いろいろと日本に期待されているということ――あまり長くなりますので――そのあたりはやはり現場の、今大学にいらっしゃる先生方から上げないといけないのではないかなというふうに思います。海外にいらして、そのあたりをよく接触されてからの留学生対応が、必要ではないかと思います。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。
 他の点はまたご発言いただくとして、その学振のガバナンスの強化という話の内実ですよね。何がそこで具体的に問題だったのかという、古城委員の第1問目をちょっと、どうぞ。

【山口学術研究助成課長】 

 正直申し上げまして非常に難しいご質問の感じもいたしますけれども、資料4-1を見ていただきますと、実はほとんどの事項についてガバナンスが問題だというのは入っているわけでございます。学振についてその場で議論がございましたのは、1つはJSTとの関係について、例えば極端な話、戦略と一本化できないかというような御議論もございましたけれども、結果として、先ほどその資料の中にもございましたが、トップダウンとボトムアップというのは明確に違うということで、きちんとそこの部分の位置づけは整理されたものと思っております。ただ、その上でも他機関、例えばJSTとの関係をもう少し連携を深めることができないだろうかと、あるいはもう少しコストが下がらないかというようなことについて、少し検討をして改善策を考えていかねばならないということはあろうかと思います。
 それからもう一つ、よくわからないと言われたのは、文科省の担当している部分とJSPSが担当している部分について、どういうふうな仕分けで今こうなっていて、今後どうするのかということについてわからないというお話がございました。これについては、段階的に移管を進めているということがございますので、JSPSの体制が整うのを見ながらということではございますけれども、将来的には全面的に移管するというご説明をさせていただきまして、それについては一定のご理解をいただいたのではないかと思っております。
 これについて評価結果が出たということで、これを踏まえて、これから具体的にどうするのかということについて、それぞれの独法ごとにまとめていくという段階でございますので、先ほど申し上げたような観点で、我々も少し考えていかねばならないだろうというふうに思っております。

【佐々木主査】 

 留学生にかかわる問題はご参考というような指摘だということで、学振の活動とどう絡めるかという話はご指摘として伺っていただければと思いますが、従来、この独法問題が出てくると必ず学振とJSTを一緒にできないかという話がきて、僕もそれを阻止するのに何回か、いつも走り回って、またかという話があるのですが、今回はそれはないですか。それともむしろ、研究開発法人というカテゴリーが、これは文科省内の独法の話なのか、それとも政府全体のいろいろな研究開発法人を絡めた話なのか、それはファンディングエージェンシーの問題との対応関係みたいなものをどう考えたらいいのかとかいうあたりが何となくもやもやと霧が立ち上っているような感じがちょっとするのですが、どんなふうに現状を認識しておけばよろしいでしょうか。

【山脇振興企画課長】 

 JSTと学振との統合の問題としては、先ほど申し上げましたように、それぞれの機能としてトップダウン型とボトムアップ型の役割が必要ということで、統合すべきではないかという議論、意見は出ましたけれども、まとめとしては、そこはそれぞれの役割があるのだという一定の理解は得られたというのが1つの結論だと思っていますので、具体的にそういう議論が出てくることはないんじゃないかと思います。
 それから一方で、研究開発法人のあり方については、単に文部科学省の研究開発の法人だけではなくて、政府全体の研究開発を担う法人のあり方として検討がされているということですので、政府全体の研究開発を担う法人、国立研究開発機関というような位置づけがどうあるべきかというのは、今の検討の対象でございます。

【佐々木主査】 

 そうすると、それに対応してファンディングのシステムも変わるということですか、あるいは新たにつくるということですか。

【山脇振興企画課長】 

 ええ。その中でファンディング資金配分を担う機関もどうあるべきかというのが、議論の中には入っているということだと思います。その中で、ただ、特徴的に日本学術振興会については、学術研究の資金を配分するという機能に加えて、大学を中心とする学術研究を支える、先ほどの学術の国際交流でありますとか、特別研究員事業などを通じた人材の育成というような大学の支援機能も非常に重要な柱というか、基本でございますから、学振についてどう扱うべきかというのはよく議論しなければいけない点だと思っています。

【佐々木主査】 

 それでは、平尾委員、どうぞ。

【平尾委員】 

 すみません、もう一度質問ですけれども、先ほどトップダウンとボトムアップということがあったのですが、これは我々ものづくりのほうからいうと、加工技術の言葉で、大体1ミクロンとかまでトップダウン加工が出来ています。最近ではどんどん加工技術が進歩して半導体の電子では数十ナノまできています。一方、ボトムアップは原子分子レベルを組み立てて自己組織化で数10ナノまでできています。それがつまり、1から100ナノまでの間がナノテクノロジーといわれて、どちらも融合しているところであります。同様に考えると、ほとんどの研究レベルがその間ぐらいにきていまして、トップダウンとボトムアップにきれいに分けられるようなところはもう終わっているのではないかと思うのです。ですから、それよりも課題解決型とか、基盤の技術を上げるとか、何かそういうようなカテゴリーでのファンディングもあるのではないかと。トップダウンとボトムアップの研究での役割分担をJSTと学振に振り分けるというのは研究者にとって少しわかりにくいので、どちらに応募するかで迷うようなことになるのではないかというふうに思うのですが。

【佐々木主査】 

 それでは、家委員からどうぞ。

【家委員】 

 JSTとJSPSの役割の違いが理解していただけたというのはとりあえずよかったと思うんですけれども、ちょっと関連して気になる記述が資料5の6ページのところにございます。資金配分において求められる機能というのが5ページから6ページにかけてありまして、政策課題設定型の研究開発と自発的探求型の研究開発と分けておりまして、6ページの真ん中のほどの丸からですけれども、それぞれの資金配分に至る流れがここに書いてあるのですが、政策課題開発型に関しては、まあ、こんなものかなと思うんですけれども、自発的探求型の一番頭のところに「研究の提案を受け付ける領域の設定」とわざわざ書いてあるのですね。この領域というのはどういうふうに、非常に緩いものなら別に実害はないのかもしれないのですけれども、イメージとしては例えばJSTのCRESTとか、ああいう大くくりの、こういう領域の研究にこの指とまれみたいなのをまずやらないといけないようなことになって、これは今、学振がやっていることとは全然違う話で、学振はとにかく純粋にボトムアップで研究者の提案に基づいてやることをやっているわけですね。でも、こういうことが書かれるというのは、それこそさっきから言われているガバナンスというのが何かこういう形であらわれているのかなという、ちょっとそういうにおいを感じます。

【佐々木主査】 

 学振をめぐる議論がいろいろ出されていますけれども、小林委員、何か、これら一連の動きの中でどんなことをお感じになっているのか、あるいはどんな点に注意が必要なのか。もし、差し支えない範囲で御意見ございましたら、伺った上でまた議論ができればと思いますが、いかがでしょうか。

【小林委員】  

 まず具体的なことから申しますと、ガバナンス云々ということで指摘された中の1つは審査体制を共通化できないかということがあったかと思います。ただ、科研費とほかの独法でやっているような研究の審査と共通化するというのは現実的ではないと思います。
 もう一つ言われましたのは、審査員のデータベースを学振は持っていますけれども、それを提供できないかという指摘がございました。実際にほかで役に立つかどうかという問題もありますが、そのままでは無理かと思いますけれども、絶対不可能というものではないというふうには考えております。
 それからもう一つ、文科省と科研費の役割分担についての指摘がございましたけれども、現在、審査と交付が別々になっているというような種目がございますが、これは速やかに統一できるのではないかと思っておりますし、学振のほうでも十分準備はできている、受け入れる体制はできているかと思います。ただ、もっとディテールを言いますと、実際の科研費のいろいろな運用にかかわる、いろいろなことを決めていかなければならないわけですけれども、それの権限というか、どの範囲のことまで学振が責任を持って決めていけるかという点について議論の余地がある問題だなということを感じております。全種目を移行すべきかどうかという点については、ちょっとこれはまた別途検討する必要がある問題だなと思っています。
 これが仕分けに対する直接的な私の感想ですけれども、あと、先ほど国際事業に関する指摘がございましたが、現在、海外センターがたくさんございます。実際、海外センターの活動の中では、現地の大使館との間の交流はかなり密接に行われているかと思います。確かに学振の本体でのいろいろな事業設計は検討の余地があるかという気はしております。ちょっと細かいことになりますが。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。それでは議論を続けますので、何かほかにお気づきの点があれば。
 それでは、局長からどうぞ。

【磯田研究振興局長】 

 委員の先生方からご発言がありました点について、少しお答えできるものがあれば答えたいと思うのですが、まず資料で見ていただいております資料5は、総合科学技術会議のワーキンググループの中間の取りまとめでございますし、それから資料6-1、6-2が各省の研究開発を担う法人を担当されている省の副大臣や政務官のお取りまとめということでございます。そうしますと、資料5のほうは、今後、総理がいらっしゃいます総合科学技術会議まで上がれば、それが1つの提案あるいは方針ということに、これから形づくられるわけでございます。一方、資料6のほうは各省の政務の中核的な方々が参加されておられますので、これも固まって1つの方向性を持てば、各省の研究開発法人にすべてこの方針どおりで制度改正が行われるということになろうかと思います。
 したがいまして、現段階でどちらがどうというつもりはございませんけれども、少なくとも資料6は政治主導の政務の方々がご担当されて、資料5のほうは総合科学技術会議という我々の科学技術の指針をつくる内閣府組織で議論されています。そういう状況であろうと思います。それで学術関係に議論を移しますと、具体的には資料6で御議論いただいておりますこの研究開発法人の中に国立科学博物館と日本学術振興会が含まれております。したがいまして、我々としては学術法人であるこの2つの機関が、研究開発独法で今ご検討いただいている内容の中で十分効果を発揮し得るかとか、あるいは、もし全体の流れで調整していただく必要があるようなことがあれば、それは政務の方々にご報告をしてご指導いただくと、そういうことではないかと思っております。
 それから、中村委員からご指摘がございました学術と高等教育の人材養成や国際交流も含めた一体的な議論をどうしたらいいかという議論は、これは日本学術振興会のみならず、今回事業仕分けの対象となりました大学関係のさまざまな法人がございますけれども、そういう法人と日本学術振興会との連携のあり方とか関係をどうしていくかという、そういう議論になりまして、これはまた別の論点だろうと思いますが、当然これまでの各法人の個性とか歴史をふまえてどのように考えるかとか、あるいはその連携の仕方についてどういう形がベストかとか、多分さまざまな論点があろうと思いますけれども、現在のところ、それを特に議論するような場というのはないという状況でございます。

【佐々木主査】 

 それでは、今の局長のご発言も含めて問題提起、あるいは御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょう。
 三宅委員、お願いします。

【三宅委員】 

 ここに挙がっていない項目が本来挙がっていてもいいのではないかという話なので、どう発言させていただいたらいいか迷っていたのですが、人材育成の話にしても新しい分野での科学者コミュニティーをつくる話にしても、日本の中での情報共有なり、協調的な吟味システムとしてのIT基盤というのはかなり弱いと感じています。そのことがここで挙げられているいろいろな問題のベースにあるような気がしているのですが、あまりそういう話が出てこないのはなぜなのかというようなことをちょっと疑問に思っておりました。

【佐々木主査】 

 これは、何か議論になっているのですか。

【山脇振興企画課長】 

 政府の中で、別途IT戦略本部の中でITの全体の戦略づくりなどがされているので、その中では教育の中でのITの活用などは当然議論がされているので、それらを全体として、例えば先ほどの成長戦略の中にどう位置づけるかというふうな形になっていくものだと思いますが、済みません、直接の担当がいないのでお答えできないのですが。

【三宅委員】 

 では、一言だけコメントさせていただいていいですか。
 私が見ている限りでは、例えばボトムアップに教育を変えていきたいという話や質の高い教育による厚い人材層をつくるという話が入っているのですが、こういうことをほんとうに、今、世界レベルで起きていることに伍してやっていくには、日本の学校のITの使い方だけでなくIT基盤そのものが脆弱です。ITに関係する人材をどうやってつくっていくかという議論ではなくて、日本という、情報に非常に依存して情報を新しくつくっていくところで科学技術も進んでいかなくてはいけないという社会の中で、そのITの使い方を、子供たちが学校生活の中でどれほど日常的に体験して、将来科学技術の発展を支える認知的なスキルを身につけてゆくのか、という類の議論が今のところ見えていないですね。例えばスーパーサイエンスハイスクールにしても、その恩恵を受けている生徒というのは一部です。JSTの狙いは、これで成功したらそのやり方を学内の理科以外の教科や周りの学校に拡げていくということなのだと思いますけれども、でもここが現場の先生達にとって一番難しいところです。こういう難しさの理由の一つとして、例えば入るべきIT基盤が学校に入っていない、あるいはちゃんと機能していないということが、成果が周りに広がっていかない大きなネックの一つになっていたりします。そういうところを考える必要があると思います。
もう一つ別の観点として、先ほどのお話にあった、萌芽的な研究支援を強化しようという場合、今すでにコミュニティーがあるところはいいのかもしれないですけれども、そうではなくて日本の中でまだ、いろいろな大学や研究機関の中にばらばらにしかないけれども新しくこういう研究分野の立ち上げが必要だよね、という人たちを支えていく、あるいはそういう人たちがほんとうにいるのか、いるとしたらどこにいるのかがネットの上ですぐわかるような情報基盤というのがきちんと備わっているかというと、そうではないと感じます。萌芽的な研究については海外のネットワークのほうがずっとものが探しやすい、というのが萌芽的な研究あるいは融合的な研究を進めたい研究者の印象だろうと思います。
 ここで言われているようなことを本格的に実施するのであれば、IT基盤をしっかりしたものにするのは基盤整備なので、国主導でほんとうはきちんと整備して、その恩恵が受けられるという前提のもとにここで提言されているようなことができあがっていくということが大事なのではないかという気はしています。あまりそういう話がこういう中で取り上げられない、そのこと自体が日本がもしかしたら学術研究の基盤としてのIT基盤に対する目配りが少ないということのあらわれなのかもしれないという感想を持ちました。

【佐々木主査】 

 この件は、国そのものかどうかわからないけれども、学術分科会の中のどこかでそれにかかわる話、学術情報かなんかのところでやっていなかったですか。そのものかどうかよくわからない、三宅委員のおっしゃるようにピタッとそのものかどうかわからないけれども。

【舟橋情報課長】 

 学術情報基盤につきましては、この学術分科会の研究環境基盤部会の下に学術情報の関係の作業部会というのがございまして、その中でそういった学術情報ネットワークのあり方ですとか、あるいはそういう研究情報の提携のあり方とか発信のあり方、そういったことについては、議論をいただいております。まだ対応が十分ではないというご指摘があるかもしれませんが。

【佐々木主査】 

 対応が十分かどうかを含めて、あるいはその趣旨目的も含めて、それはまた三宅委員から御意見を伺うようにお願いしたいと思います。
 ほかに、じゃあ拓殖委員どうぞ。

【柘植委員】 

 論点の3.で学術研究を活性化していくためにどのような留意が必要か。これが今、レファレンスのドキュメントとしては、基本政策策定の基本方針とかワーキンググループの中間とりまとめがありますが、特にこの総合科学技術会議が策定した基本方針を見ると、ここの資料8-2だと思うんですが、ここにどこにも学術という言葉がないんですね。我々の今日の特別委員会は、学術の基本問題に関するという特別なミッションを持っているときには、このことは看過できないと思うんです。これは実は冒頭長々と私が申し上げた3つの中の最初の点で、今までは学術と科学技術、ここのところは多様性と冗長性を持たせたという思想で、私は平たく言えば曖昧のままできたと思うのです。ところが今、仕分けのほうから来たガバナンスを重視ということを考えると、いよいよ学術と科学・技術、このそれぞれの振興のエンジン構造の現状はどうなっているのだと。そしてこれを強くすべきところがあると思うんですけれども、こういう視点がこの本特別委員会のかなり大事なミッションだなと。しかもあんまり時間がないぞと。行政側のほうはどんどん進んでしまっていくとなる。ただ一つ救いは、今日の参考資料4-1で、日本学術会議が学術からの提言というのを出していて、かなり今の論点については論じてくれているわけです。例えば、それに基づいて参考資料4-1の30ページ以降が、かなり学術のあり方に関する提言として特に丁寧に書いてくれています。例えば、37ページのところで、学術とイノベーションということをかなり展開してくれています。違うと言いながらも両輪だと。この辺りは、私は非常に大事にすべきだし、この特別委員会として一言で言えば、学術会議のこの提言は正しいと言い切ってもいいのではないかと個人的に思っているわけですけれども、これを利用、利用というか基盤とするかしないか。私としては基盤として、この特別委員会としてのアウトプットにかなり焦点を合わせてよいのではないか。しかも時間があまりないなというふうに思っております。
 以上です。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。今の点について、何か。今の点はもちろんのこと、今の点も含めてご発言は。
 それじゃ、どうぞ。小菅科学官。

【小菅科学官】 

 先日、たまたまあるワークショップに参加する機会がございまして、そこで科学技術政策研究所から出された一つのレポートについていろいろ議論したのですけれども、どういうレポートかと申しますと、IEEEという国際団体がございまして、年間1,000以上のカンファレンスを主催して、その下に38ソサエティとテクニカルカウンシルが7つで45団体ぐらいがぶら下がっているところの定期出版物、カンファレンス以外の出版物の数のシェアを調べたのですね。それで、こういうことがひょっとしたらほかの分野でも起こっているかもしれないということで少し紹介させていただくのですが、何がわかったかといいますと、トップの上から25カ国の論文数の論文とかアーティクルの数の多いところの国別の比較とか、あと内容を比較しますと、明らかに日本というのはほかの国と分野も傾向が違うし、例えばほかの国ですと、情報通信系の論文数というのが非常に伸びているのですが日本は非常にそこが弱いとかですね、弱くてほかの国だと減っているデバイス系の論文が日本は増えているとか、特に異常なのは超伝導関係の論文がすごく多いですね、日本は。他の国と比べると突出しています。それでそういうのを分野別に分けた表がございまして、アメリカは大体同じように世界の標準でうまいこと伸びていて、中国はそれと同じような分野の伸び方を、あまりアメリカと遜色のない論文数の伸び方とかをやっているのですね。ところが日本だけがものすごく変わった傾向を持っていまして、ボトムアップとトップダウンの資金というのは非常にいいのですけれども、ひょっとしたらそれは電気・電子情報通信系が強い、喜連川科学官がよくご存じの分野ですけれど、そういうことがほかのところでも起きているといたしますと、日本のその政策、システムそのものをうまいこと見直して、要するにそこの論文が多いということはそこにお金がたくさん投資されているか、あるいは研究費がたくさん出ている。学生もたくさん来ます。人材育成から考えると、要するに世界と比べて変わったところで日本ではそういうちょっと違うところに重点を置いて人材育成をしていて、ひょっとしたらそれは日本のシステムがいいのかもしれません。けれども、事実として他の国と傾向が違うというのがございますので、もしもよろしかったら一度そのレポートを皆さんご覧になると、これは単なる電気系の電気電子情報通信系の話なのか、あるいは学術全体の話なのか、その辺の議論をどこかで定量的にきちっとデータを集めて、そういう世界の中で日本の学術研究の方向はどういうふうになっているのか、というのを少し一度見るような機会があればありがたいなと思うのですけれども、それに対してどういうふうにすればいいかというのは私にとってはアイデアございませんので、そういう観点の議論もどこかでしていただけるとありがたいと思いますけれども。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。他にございませんか。
 喜連川科学官。

【喜連川科学官】 

 せっかく名前をいただきましたので一言申し上げさせて頂きますと、昨年、IT戦略本部の専門調査会というのがありまして、緊急プラン策定ということから随分早朝から仕事をさせていただいたのですが、政権が変わると全部やめてしまう。これは、我が国の非常に大きな問題じゃないかなと思っておりまして、三宅委員がおっしゃられましたITに関して、あらゆる分野の基盤となるようなところに対する戦略策定というものが揺れ動いているというのは憂うべきことじゃないかなという気が致します。本件に関しましてもぜひ入れていただければ有難く存じます。それが1点です。
 それから2点目としまして、どうして日本から情報通信の論文がこんなに出ないのかということの最大の原因は、センター入試科目に入っていないということです。お母様が、入学試験にも出ない学問をどうして勉強させるのかということを、高校生の先生に大きなクレームをおっしゃられます。ここの問題をあまり言いますと、いろいろおしかりを受けるところがありますのでこの辺でやめておきますけれども、根源的な問題を種々解析して参りますと、究極詰まるところがここに行きつきます、日本は情報オリンピックというような場で、中村先生の化学のオリンピックもあるのですが、ちゃんと金メダルを幾つもとっているのですけれども、表彰式の場に来られるのもお母様だけで、お母様にどうやってご理解いただくのかというのが結構重要じゃないかなと思っている次第です。ちょっと話がそれているように見えるやもしれませんが、もうひとつの重要な1点でございます。
 それから資金繰りに関しましては、先ほど柘植委員がおっしゃられた冗長性というのが非常に重要でございまして、アメリカはDARPAやNIHのように非常にミッション・オリエンテッドと言いつつ、実際には、いろいろなエージェンシーがある程度冗長性をもった支援を行っていることになっております。国税が減っている中で苦しいのは事実ですが、あまり仕分けでガバナンス云々ということをきっちりすることは日本国にとってリスクヘッジが全然なくなってくるということを意味します。私としてはそれは必ずしも好ましいことではないのではないかというふうに考えています。以上でございます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。
 それでは、先ほど来の議論も含めて、これは事務局に確認をさせていただきたいのですが、資料8のこれは総合科学技術会議が検討しているということで、我々には何か物を言う場や機会はないっていう話として了解すべきか、それともこの世に生きているわけですから何かできようと思えばできないことはないという、そういう話なのかということでもあるのですが、とりあえずいろいろなこのワーキングの、先ほど磯田局長からこんなぐあいになっているのだという説明がございましたけれども、我が委員会として何か意思表示をするようなことを念頭に置いて、どういうことについてはこのようなタイミングであるとかいうようなことを、もし整理していただけるのであれば大変ありがたいと思いますが、何かございましょうかね。

【磯田研究振興局長】 

 今の段階で直ちにお答えはできませんけれども、今日いただきました御意見等について、できるだけそれぞれの政策形成に生かすということがどういう形でできるか至急検討して主査にご相談させていただきたいと思います。

【佐々木主査】 

 はい、わかりました。それでは今日大体、印象論的というと大変しかられるかもしれませんけれども、ある種の共通の御意見も多数いただいたと記憶しておりますので、また事務局とも相談をさせていただいて、また場合によってはもう一度、また会議を開くということもあろうかと思いますが、暫時お任せをいただきたいというふうに思っておりますので、そういうことで今日の議論は一応終わりにさせていただいてよろしゅうございましょうか。ありがとうございました。
 それでは、事務局から何かございましょうか。

【石崎学術企画室長】 

 はい、次回の本委員会の日程でございますけれども、また日程調整をさせていただいた上で後日改めて御連絡をさせていただければと思います。また本日配布させていただいた資料につきましては、お手元にございます封筒にお名前をご記入いただければ後ほど郵送させていただきますので、よろしくお願いします。

【佐々木主査】 

 どうもお忙しいところありがとうございました。それではこれで終了します。

── 了 ──
 

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