4.人文学及び社会科学と社会との関係について

(1)総論

  • 一般的に、人文学及び社会科学の研究者は社会との接点に関する認識が希薄ではないか。研究者自身の意識改革が必要と考えられる。
  • 大学は、いわば日本最大のシンクタンクの役割を担っている。我が国の学術政策を考えるにあたっては、そうした観点から、長期的な視野に立ちつつも、政策や社会の要請に基づいた振興方策が必要と考えられる。

(2)社会科学研究の社会的意義

社会科学の社会的意義、役割

  • 政府、企業、労働者、消費者など、社会に存在する人々や集団が、それぞれの行動をよりよいものとし、その結果社会全体がよりよくなるための知識基盤を提供することである。
  • 実験室で条件をコントロールできる自然科学の社会的役割が、客観的な予測の提示にあるのに対して、社会科学の社会的役割は、政策の方向性などの選択枝の提示にある。意思決定は、研究者ではなく、あくまで人々が行う。

社会科学の研究成果

  • 社会科学の研究成果には、2つのタイプがある。第1は、特定の社会現象の論理の解明であり、第2は、広く社会現象を見るための概念枠組みの開発である。

(3)大学の社会的意義、役割

  • 「実学をきちんと行うこと」と、「すぐに役に立つ実務知識を教えること」との間には大きな差がある。「実学」とは、現実に根ざした学問、現実と深く関わろうとする学問であり、社会における大学の存在意義は、このような意味での「実学」を教育、研究面から担うことにある。
  • 大学経営の観点から見たとき、大学は研究と教育の両方を担う教育研究機関であり、この観点からすれば、大学には、優れた研究者とともに、優れた教育者が必要である。しかし、優れた研究者が、必ずしも優れた教育者であるというわけではない。大学全体を考えれば、優れた研究者だけに資源を集中していくのではなく、裾野を幅広く育成していくことも重要である。

(4)専門職大学院について

  • 「実学をきちんと行うこと」と、「すぐに役に立つ実務知識を教えること」との間には大きな差がある。単純な実務知識の切り売り機関ではいけない。
     このため、高度専門職業人養成機能と研究者養成機能とを分けないという選択もありうる。
  • 既存の多くの専門職大学院において、その研究機能の強化は不可欠である。さもないと長期的には大学院として立ち枯れてしまう危険がある。
  • 専門職大学院については、単なる実務的な知識や資格試験のノウハウの伝授ではなく、しっかりとした教養を身に付けさせることで、教養あるプロフェッショナルを育成していくことが求められている。

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