2.人文学及び社会科学の意義・役割・目的について

(1)人文学及び社会科学に共通する意義・役割・目的

1.人間性の涵養

  • 人文学及び社会科学は、人間性の涵養、すなわち「よく生きる知」をはぐくむ意義を有する。

2.伝統の伝承

  • 人文学及び社会科学の意義は、伝統の伝承・文化の継承にある。

3.「批判」の存在

  • 人文学及び社会科学の意義として、英知の創生、社会への貢献及び教育への貢献が挙げられるが、その根底には、やはり人文学及び社会科学を基礎とする「批判」の存在が不可欠。

(2)人文学の意義・役割・目的について

1.人間研究の基礎学

  • 人文学は、「人間」とは何かということを様々な媒体や方法によって追求する、人間研究の基礎学である。

2.文化の継承

  • 人文学の意義の一つは、文化の継承である。
     例えば、国際的にも高い評価がなされている源氏物語の文化的価値を継承していくには、単に書物が残っていればよいというものではなく、それぞれの時代において(我が国のみならず諸外国においても)意義を問い続け、生命を与えつづけること(研究を行っていくこと)が必要である。
     また、一つの文学作品から様々な文化現象が派生し、研究が行われ、更には海外にまで広められていくように、文学や文化の力の意義は非常に大きい。

3.英知の創生

  • 文化の枯渇は、人類の滅亡にもつながる。我々は、「温故知新」の精神を絶えず持ち続け、人類の文化資産としての人文学から新たな英知を創生し、次の世代へ継承していく使命がある。
  • ‘HOW’ではなく、すぐには出ない‘WHY’に対する答えを希求するのが人文学である。このような知の営みを深化させなければ、国や文明そのものの衰退につながる。社会の中で、一定の割合の人たちが人文学研究という知の営みを継続できる環境をつくることが絶対に必要。
  • 人間社会の現実をトータルに解明するには、自然科学的方法のみではなく、意味を解釈するという人文学的な方法も総動員する必要がある。

4.社会への貢献

  • 文化行政、環境問題、情報化社会への対応、科学・技術との融合や協働など、社会への貢献も人文学の大きな意義のひとつ。新しい発見、科学技術、あるいは様々な自然科学の発見のベースには、人文学の成果がある。
  • 社会全体が二極化し、格差社会が進行している中にあって、人間の真の生き方や考え方について提言し、それを支援するという人文学の役割は非常に重要。

5.教育への貢献

  • 人文学を、新しい世紀や新しい世界を担う人間づくりと位置づけていく必要がある。このためには、教育の観点から、人文学を将来への投資であるという認識を共有することが重要である。
  • 生涯学習の観点から人文学の意義を考えることもできるのではないか。

(3)社会科学の意義・役割・目的について

  • 研究者の問題意識、研究対象及び研究手法を現代化していくことが必要ではないか。
  • 実務との一体性の強い専門職大学院を研究面からどう位置付けるべきか。

(4)自然科学と融合した人文学及び社会科学研究の意義・役割・目的について

  • 21世紀、科学技術と人間社会の不調和が地球的規模で発生する可能性が大きい。このため、持続可能な社会を実現するための、経済活動、生活様式及びそれらの基礎をなす倫理・価値観の形成への取組が不可欠であり、文理融合のアプローチが社会的に要請されている。
  • 科学技術、特に情報メディアやバイオテクノロジ-の高度化は、ますます文理融合型の知識を必要とさせている。
  • これからの社会問題について意思決定を行う際には、文理双方の知識を持っていないと対応できなくなる。
  • 地球環境問題、生命操作の問題、技術移転と文化摩擦、大規模災害など科学技術の発展が人間社会にもたらす諸問題に対し、高度な価値判断に基づいた速やかな意思決定を行うための文理融合型の学問(社会理工学)の果たす役割が重要である。
  • 「文理融合」の必要性は認めつつも、社会問題の多くは、文理の隙間で起こっているもののみではなく、むしろ、「文」そのもの「理」そのものの領域で起こっているものが多い。

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