資料1 「心理学の特性と課題」(岩崎委員 資料)

目白大学人間学部心理カウンセリング学科 岩崎庸男

1 心理学の特性

1)哲学から誕生(W.Wundt 1879)

 多くの心理学科は、文学部に所属

2)生物学的観点の導入

 動物としての人間、生き物(生活体)としての人間、環境への関わりを重視

3)実証の重視

 仮説、データ収集、分析、仮説の検証

4)統計手法の重視

 統計的検定、多変量解析

2 心理学の研究対象と分野

1)主として個人の心理現象(行動)とその変容過程(Seinとして)

 人間に備わった基本的な心理的諸機能の特性の解明
 基礎系心理学(感覚・知覚、認知・記憶、学習、発達、人格、社会)

2)望ましい心理状態(行動)への誘導とその方法の開発(Sollenとして)

 人間が生活を営む上で望ましい状態を形成するための方法の開発
 応用系心理学(教育、産業、臨床、健康)

 20世紀は、基礎系心理学(科学知)が中心であったが、21世紀になって、応用系心理学(臨床知)の需要が増えている。例えば、行動変容(学習)は、ある行動が生じた後に快刺激(食物、金銭、賞賛等)が与えられると(強化されると)、その行動の出現確率が高まるという「強化理論」で説明できるが、これを最近増加している精神病理の治療(介入)に応用する試みが増加している。そして、ともするとその理論を習熟することなく技術のみが先行するようになっている。

3 心理学の研究方法

1)観察(フィールド研究、質的研究)

 記述と了解

2)質問紙調査(意識調査)

 変数の抽出と相関関係の同定、独立変数(原因)の推定

3)実験(量的研究)

 独立変数の操作と従属変数の測定
 因果関係の実証、法則の定立

 科学の発達段階(記述→分類→説明→予測→制御)のうち心理学は、全体的にはまだ「説明」段階にあるといってよい。

4 心理学の課題と対応策

課題

1)大学における心理学系学部・学科の人気とそれに伴う教員の劣化
2)大学院における基礎系心理学の縮小と応用系心理学の増加
3)大学院修了者を受け入れる常勤職の減少

対応策

1)大学の種別化の推進(研究大学と職能教育大学の分離)
2)職能教育大学の6年制化と職能資格の確立
3)COE等、研究拠点の創出(共同利用研究拠点等の設立)

 基本的には、社会に役立つ学問も必要であるが、教養ある(そのセンスのある)市民を育成する学問の方がより大切ではないか。

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