資料2‐4 「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」における研究課題

研究領域1 「日本と諸地域との関係性の解明-協働に向けて-」

 以下は、平成18年3月6日に、科学技術・学術審議会学術分科会 研究環境基盤部会 人文・社会科学作業部会より提出された「『世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業』の今後の進め方について」において示された「研究領域1 日本と諸地域との関係性の解明-協働に向けて-」に関する研究課題の例である。

(1)日本・日本人観をテーマとするもの

  1. 地域における「日本観」、「日本人観」(及びその裏返しとしての日本人の「当該地域・当該地域の人々に対する見方」)
  2. 地域の政治指導者、オピニオンリーダー、ジャーナリズム、日本での滞在経験のある外国人(留学生等)などの「日本観」、「日本人観」(及びその裏返しとしての日本人の「当該地域・当該地域の人々に対する見方」)
  3. 国際緊急援助など、最近の日本の活動を踏まえた「日本観」、「日本人観」の変化
  4. 地域における現代日本研究の現状分析
  5. 日本・日本人に対するイメージ形成の在り方
  6. 日本・日本人観を踏まえた今後の我が国の関与の在り方
  7. 日本と当該地域との交流史とその現代的影響
  8. メディアを通じた日本イメージの形成(日本、当該地域、欧米諸国の発信する日本情報の比較研究など)

キーワード

 異文化理解、植民地経験、第2次世界大戦、日本企業、日本製品、経済協力、開発援助、日本への留学生、帰国留学生、日本への留学希望者、日本研究、対日政策、災害支援、メディア、日本・日本人の役割

(2)日本の社会システムと地域の社会システムとの比較をテーマとするもの

  1. 法制度や社会慣行等、日本の社会システムと当該地域の社会システムとの比較
  2. 当該地域において活動する日本企業、NGO等と当該地域社会との関係(当該地域において採用された従業員の人事・労務管理、当該地域の企業や欧米系企業・NGOとの比較、地域住民との関係等)
  3. 日本の社会システムに対する当該地域の人々の認識

キーワード

 文化伝播、交流史、漢字、律令、租税制度、慣習法と実定法、家族制度、労務管理、雇用制度、人事評価、報酬(賃金)、経営者と従業員との格差、生産管理、企業観、契約観、納品期日、違約金、環境問題、地域社会、欧米系企業・NGO

研究領域2 地域のアイデンティティーの解明-相互理解を深めるために-

 以下は、平成18年3月6日に、科学技術・学術審議会学術分科会 研究環境基盤部会 人文・社会科学作業部会より提出された「『世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業』の今後の進め方について」において示された「研究領域2 地域のアイデンティティーの解明-相互理解を深めるために-」に関する研究課題の例である。

(1)地域の人々の価値観をテーマとするもの

  1. 研究対象地域の人々の宗教的・歴史的・文化的・民族的な背景
  2. 人々の生活文化、社会習慣、伝統と欧米的・近代的価値観
  3. 人々の生活圏と自然観、人間観
  4. 「民主主義」、「人権」、「法の支配」、「契約」等の欧米的な法観念との相克
  5. 「地域統合」、「国際協力の枠組み」といった近年の国際的な動向についての認識
  6. 先進国等からの経済的支援に対する認識
  7. 1~6について、地域内での共通点と相違点

キーワード

 国家観、民主主義観、人間観、人権観、経済観、契約観、労働観、宗教観、死生観、幸福観、自然観、生態系、伝承文学、道徳倫理、文化

(2)グローバリゼーション等に伴う社会の変容をテーマとするもの

  1. グローバル化への対応の諸相
  2. 都市化・工業化の進展による生活様式の変容(家族、社会関係等)
  3. 都市化・工業化の進展に伴う新たな課題(都市の貧困、格差の拡大等)
  4. 宗教が地域社会において果たしてきた役割の変容
  5. メディアのグローバル化にともなう地域社会の文化の変容

キーワード

グローバリゼーション、都市化、工業化、人口移動、農地改革、コモンズ、宗教、メディア、社会制度

(3)経済発展の潜在的能力(経済発展の負の側面を含む)をテーマとするもの

  1. 経済発展の考え方と可能性
  2. 地域の経済政策の現状と課題
  3. 地域における産業競争力の現状と課題
  4. 地域の金融市場の潜在的可能性
  5. 地域の政治的安定に関する研究
  6. 地域の人材養成システムの現状と課題

キーワード

 工業化、都市化、人口移動、農地改革、石油、資源、多国籍企業、民族資本、モノカルチャー、社会主義の影響、労働力の量と質、公教育、開発援助、貧困、環境問題、政治体制、民主化、民族運動、原理主義、テロ、災害復興、持続的開発

(4)東南アジアにおけるイスラームをテーマとするもの

  1. 東南アジアにおけるイスラームの影響
  2. マレイシア、インドネシアの経済発展とイスラーム
  3. イスラームと地域の社会構造
  4. イスラーム法の東南アジア的修正
  5. 他のイスラーム圏との共通点と相違点

キーワード

 ソフトイスラーム、イスラームと経済発展、イスラームとナショナリズム

研究コンセプト グローバル・イシューに対応した新たな地域研究の可能性の探索

 以下は、「平成19年度『世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業』公募要領」において示された「研究コンセプト グローバル・イシューに対応した新たな地域研究の可能性の探索」に関する研究課題の例である。

平成19年度「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」公募要領

(1)開発等に伴う環境問題

 酸性雨、異常気象など、大規模な資源・エネルギー開発や農業灌漑、化石燃料の大量消費等を背景とした開発等に伴う国境を越えた環境問題が顕在化している。
 例えば、地域研究が扱いうる社会現象としては、

  • 国境を越えた汚染物質の拡散と地域社会への影響
  • いわゆる公害輸出の問題
  • 資源の乱獲等、国境を越えた生態系の破壊とその地域経済への影響
    といったものが存在するものと考えられる。
     本事業への提案に当たっては、以上のような個別の事象に係る経験的な事実の紹介にとどまることなく、個別の社会現象の背後に、1.環境を犠牲にして経済成長を追求してしまう(政府を含めた)社会の問題、2.環境規制等に係る立法措置を阻む政策形成過程の問題、3.国際的な環境規制等の枠組の問題、といった構造的な問題が存在していることを明確にすることが求められる。
     このような観点を踏まえ、日本との関係で重要な「グローバル・イシュー」を構造的に把握しつつ、具体的な研究フィールドの存在を前提とした実証的な地域研究が提案されることを期待している。

(2)人的移動に関する社会問題

 移民や難民、労働力移動など、国際紛争や経済のグローバル化等を背景とした国際的な人の移動が活発化しており、これに伴い、人権や経済格差、異文化理解に関する問題など、人々が共に解決していくべき様々な諸課題が生じている。
 例えば、地域研究が扱いうる社会現象としては、

  • 外国人労働力に支えられた地域経済、社会の問題
  • 移民等の少数エスニック・グループとの文化的コンフリクトの問題
    といったものが存在するものと考えられる。
     本事業への提案に当たっては、以上のような個別の事象に係る経験的な事実の紹介にとどまることなく、個別の社会現象の背後に、1.豊かな地域と豊かでない地域との経済格差の問題、2.外国人労働者等を受け入れるに当たっての法整備の問題、3.異なる宗教、習俗等を互いに尊重しあうことができるかという異文化理解の問題、といった構造的な諸問題が存在していること明確にすることが求められる。
     このような観点を踏まえ、日本との関係で重要な「グローバル・イシュー」を構造的に把握しつつ、具体的な研究フィールドの存在を前提とした実証的な地域研究が提案されることを期待している。

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研究振興局振興企画課学術企画室

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