学術研究推進部会 アルマ計画評価作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成20年8月25日(月曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 16階特別会議室

3.議題

  1. アルマ計画中間評価報告書(案)について

4.出席者

委員

 飯吉主査、鳥井主査代理、飯吉委員、井上委員、高橋委員、野本委員、山本委員

文部科学省

 信濃参事官、笹川宇宙科学専門官、他 関係職員

オブザーバー

(科学官)
 福島科学官
(国立天文台)
 観山台長、立松アルマ推進室長、井口アルマプロジェクトマネージャ

5.議事録

 事務局から、資料に基づき、アルマ計画中間評価報告書(案)の説明があった。

資料1 アルマ計画中間評価報告書(案)
資料2 アルマ計画評価作業部会(第2回)議事録(案)

下記のような質疑応答がなされた。

【野本専門委員】
 内容的に間違いはないと思えるが、文章としては固くて理解しづらい。
  第1行目の部分「天文学の大きな課題は」については、天文学に対する宿題のように見えるので、「目的」や「目指すもの」として、冒頭を締める必要がある。
 また、6行目は、「これらが理論的な考察のみならず」と「これらが」がいきなり出てくると、何が言いたいか不鮮明になるので「21世紀初頭の天文学の特徴は」を冒頭にすべきである。
  12行目の「「生命につながる物質進化を解明する国際協力プロジェクトである」は、解明するとまでは言い切れないと思う。例えば、「物質生命につながる物質進化の解明を目指す国際協力プロジェクトである」などと工夫をしたほうが良いと考える。
  15行目の「これらを組み合わせることで」は、組み合わせることがアルマなので、「これらを組み合わせ」とするほうが良いと思う。
 「アルマ計画の背景」は目立つ所であるが、全体の文章がとても長く読みづらい。
 例えば、6行目の「日本における天文学の歴史を見てみると、既に江戸時代には」部分は「江戸時代」がどこまでかかるかわかりづらい。
 「観測結果を理論研究にフィードバックするなど近代的研究手法が取り入れられ」が江戸時代に入っているかが不明である。
 このように文章が長すぎることによって文章がつながらなくなっている。
 全体的に、うまく文章をまとめていただきたい。
 また、12行目「時代は下って」は、余りに時代がかった表現だと思うので、「最近では」や「近年では」などの一般的な言い方にしていただきたい。
  16行目「VERA望遠鏡の成果や、人工衛星「はるか」においては」は初めて成功した成果がVERA望遠鏡ではないはずなので、このVERA望遠鏡の成果が、それを受ける言葉がなくて浮いてしまっている。
 「形成領域にある原始惑星系円盤の構造が詳細に観測可能となる」という表現は読みにくいので「近傍の星形成領域にある原始惑星系円盤の構造の詳細な観測が可能になる」と単語を入れ替えて読みやすくしていただきたい。
  17行目「世界の知的フロンティアを目指すことができる」は、知的フロンティアとは目指すものではなく切り開くものと思う。つまりフロンティアを開いていこうという意思ではないかと思う。
  5ページ22行目で、「マイルストーン」という言葉があるが、私は翻訳を業としているので、日本語に置き換える言葉があれば、あまり片仮名語を使うのは好ましくない。
 最後に11ページ「研究成果の国民への還元」の下から2行目「伝え続けていかなければならない」。前にも「続ける」という言葉があるが、「続け」という言葉を入れる必要があるのか疑問に思う。伝えていかなければいけないのであって、伝え続けていくのは、伝えていれば続くのは当たり前のことではないか。
  12ページ1行目「世界最高性能であるがゆえに直ちに社会で使えるものは多くはないと思われがちである」とは、多いのか多くないかがはっきりしない。
  3行目「性能と観測成果は、現在」とあるが、「現在」だけではないと思う。世界的に評価されているのは前からなので「現在」は要らないと思う。
 このパラグラフの最後の行「占めるようになった」というよりは、「占めている」と言った方がいいのではないか。「占めるようになった」では、やっとの思いでなったような感じがあるので、それはもう当然であるという顔をしていいのではないか。
 次のパラグラフの2行目「アルマ計画は「すばる望遠鏡」では観測不可能な宇宙の姿を、ミリ波やサブミリ波を使って観測する」と書いてあるが、まだ観測できるかどうかわからないので、「観測を試みる」などの表現に替えるほうが良いと思う。
 その次は、「野辺山で培ったミリ波天文学の成果を引き継ぎ」、ここは問題ないが、最後に「天文学研究。」と、この文章が何か突如としておかしな止め方になっている。「そこに」は、もし電波の眼が加わると言いたいのであれば、「すばる望遠鏡」で最高レベルに達した我が国の天文学研究に野辺山で培ったミリ波天文学の成果を引き継いだ「人類史上最強の電波の眼」が加わるのではないかと思う。そうだとすれば「すばる望遠鏡で最高レベルに達した」天文学研究に野辺山で培った「電波の眼が加わることになる」と書き直した方が良い。
 最後の行で、「人類の自然観の拡大に貢献できる大きなステップとなるだろう」。ここは、もう少し強調しても良く、「人類の自然観の拡大にこれまで以上に貢献すると思われる」や、「貢献することになるだろう」などはっきり書くべきであると思う。
  15行目「スタート時点で乗り遅れた」の「乗り遅れた」という表現はよくないと思う。

 他の部分でも記載のあった「プレゼンス」という言葉は、広辞苑で調べたところ、「存在すること」とか、「国外での軍事的、経済的影響力の存在」とかという意味である。このため、ここでプレゼンスという言葉は適していないような気がするので、「その存在感を示すことができているのか」という書きぶりにしていただきたい。前回も「シンパシー」という表現で申し上げたが、片仮名語の場合には、自分たちがわかっている意味で相手がとってくれるとは限らない。それを避けるためにもやはり日本語できっちり書かれること方が良いと思う。
  最後から2行目に「日本国民に対して成果を還元し続ける」、これもさっき申し上げたとおり「続ける」のではなく、「還元する責務もある」と、「続ける」という言葉は一々言わなくてもいいのではないか。
 以上、言葉の繋がりを考えて、全体の文章をもう少し読みやすくしていただきたい。

【高橋専門委員】
 まず、「すばる望遠鏡」もサブミリ波を受けているのか教えていただきたい。

【観山台長】
 「すばる望遠鏡」は光と赤外線を観測している。

【高橋専門委員】
 今、野本委員のおっしゃること、一々ごもっともと思って聞いていました。特に最後のいきなり出てくる体言止めには私もすごく違和感があった。
  括弧の中の文末に「○」を入れる問題は、私が小学校で習ったときは、「○」になるように書くように習った覚えが確かにあるが、新聞社に入ってから、鍵括弧の前の「○」は入れるなと習った。ダブルスタンダードな表現とは思うが、「○」入れない方向で検討いただきたい。
 中身のことで申し上げると、私が最初に指摘した東アジアで、なぜアジアではないのかという問題について、7ページ「3国際協力」では、東アジアのことだけ書いてあり、9ページ「事前評価における留意事項への対応状況」では、将来的にはということが細かく書いてあるので、これは「3国際協力」にもこの将来の話を入れていただきたい。
 文章の冒頭で「アルマ計画への直接的な協力としては」となっているが、これは「アジアにおける」と入れないと、そもそもアルマ計画というのは国際協力で進めているので、普通に読んでいたら話が見えなくなると思う。
 野本委員が非常に細かく指摘してくださったが、この8ページ以下の細かい小さい字のところはもっとひどくて、細かい字だからいいやと言わないで、ここももう少し改善していただきたい。この小さい字のところを全体的に、いま一度精査していただきたい
  9ページ29行目、「本計画」というのが、直前に出てくるのが「LMSA計画を米欧に先駆けて構想したものの」と出てくるので、この「本」と受けるのがLMSA計画と誤解されるので、もう1回「アルマ」と書いた方が良いと思う。
  11ページ目2行目「日本国民への大きな責務である」という部分は、研究者にとって重圧があるので、「部分運用の段階においても、世界最高水準の研究成果を生み出すことは十分可能である」と書き、それを実現するには年度計画の進捗に伴って適正な資金計画が進捗されるようにという話の方向がよろしいかと思う。

【山本専門委員】
 まず、「米欧に先んじて」という言葉がかなり出ていている。これは米欧を相手にやっている話ではないというか、競争相手が米欧ではないはずで、プロジェクトで、一つでやっているはずなので、少し自制された方がいいのかなという気がする。
  特に、10ページ6行目の「米欧をリードするまでになった」の部分。これは別に必要なく、計画全体をリードするようになったということであり、ほとんどの部分で「計画全体」に直せば済むと思う。
 それからもう一つ、「惑星科学、星間化学、原子・分子物理学や宇宙生物学」と出てくるのだが、それぞれの大きさが全然違う。御存じのとおり、惑星科学は非常に大きな分野なので、その後の星間化学、原子・分子物理学は分子サイエンス、分子科学というのが妥当なサイズであり、その次に、宇宙生物学ぐらいでいいのではないか。
  10ページの本格運用に向けた課題というところで非常に気になっているのは、日米欧の三者は、それぞれの分担する装置等の開発・製造を行うほかに、チリ現地での運用経費が必要ということなのだが、やはり国際的責務を果たしていくためという論理はわかるが、最初に出てくるのはやはり「科学的成果を出し続けていくためには必要である」ということが書かれないとならなければと思う。これがないので、先ほどの高橋委員のご指摘の「前述のとおり」の意味が不明になる原因かと思う。
 それから、微妙なところになってくるが、4ページ「アルマ計画の意義」だが、これは幾つかの段落に分かれていて、全てアルマ計画が主語になるようになっている。「アルマ計画」が期待されており、高めるものであるとなっているのだが、あとの二つ、20行目から始まるパラグラフと23行目から始まるパラグラフは少しニュアンスが違う。これは重要なことだが、「極めて重要である」ということを言うよりも、その成果を国民と共有していくことによって、例えば「我が国の文化的発展の一端に資することができる」のようにアルマが主語であるべきと思う。ここの極めて重要であるという部分が委員会の意見のように見えるため、ここはアルマの意義を客観的に述べる場所だと思う。このように、この最後の二つの文章には違和感がある。
 さらに最後の部分に関しては、専門家の立場で読むと、アルマでできないものがあるので目指すサイエンスができないみたいな印象にもとらえられかねない。このこと自体は事実なので、是非書くべきだとは思うが、例えば、「アルマは地上に建設される望遠鏡である以上、観測できない周波数帯域が存在する」、これは事実だから構わない。そして、それらの観測については技術的なブレークスルーを伴う次世代観測装置が必要となると思っていても、結論としては、アルマは現段階で究極の望遠鏡であるというふうにしていただいた方がニュアンスとしてよく届くのではないか。否定的に終わってしまっている部分が私には少し引っかかるので、検討していただきたい。

 5ページ目の「各アンテナに搭載される7周波数帯」。どういった書きぶりが適切かは悩むところだが、バンド10が出てくるので、ここはやはり10 なのではないかと思われる。実際、10周波数の計画があり、そのうち当面予定されている7周波数帯ではないか。数字の整合性を実際に製作している国立天文台に検討していただきたい。

【観山台長】
 御指摘の部分含め、国立天文台で検討したい。

【飯吉主査】
 今後、サブミリ波以上の周波数、電磁波で、今度は何が期待されるのか。

【観山台長】
 電波の言い方で言うとサブミリ波、光の言い方で言うと遠赤外線。サブミリ波というのは0.1ミリまでで、遠赤外で言うと100マイクロ、それがもうすぐテラヘルツになるわけだが、その両サイドで生命に関係するアミノ酸の分子体がわかり、その先のレベルまでわかる可能性がある。

【井上臨時委員】
 一つ目は、4ページ「技術的なブレークスルーが必要」というのが最後に来るのはおかしい。これは今議論があったので結構である。
  次に、このアルマというのは今の、まさに地上で言ったら究極と言っているのだから、例えば今、赤外線天文衛星「あかり」が働いているわけだが、こうしたスペースでの天文衛星でもそこまでまだやれないという種類のことが、どこかにうまく入れられると、もう少し文意を強められるかなという感じがする。
  12行目「世界最先端のシミュレーション研究と結合して」は、何か説明がもう一つ入る必要があり、少し唐突かなという気がしている。
  11ページ目9行目から10行目「電波天文学以外の研究者」と言って、その後「このため、天文学以外」、これは「電波天文学以外の分野」と言った方が良いと思う。
 これは書きぶりというよりも質問だが、三つの地域にセンターを作ると言っているが、三つの区域に分けるという意味では、東アジアに限らないのではないか。

【観山台長】
 その点、前々回に高橋委員からも御指摘があったところだが、当面は東アジアのローカルな領域である。もちろんオーストラリアやインドなど、いろいろな興味を持っている分野もあるが、もともとの発足から言うと、アメリカと日本だけに大型計画があり、それにヨーロッパが入ってきたというものである。

【井上臨時委員】
 アルマのデータをオープンに使ってもらう相手は、アジアのほかの地域にも開かれているのではないか。

【観山台長】
 それはまだ完全に決まっていない。
  特に欧州の望遠鏡に関しては、出資をしたグループにだけ基本的にデータを出す。1年という期間を過ぎれば完全にオープンであり、その前の段階ではクローズされている。

【井上臨時委員】
 それから最後に、13ページ、野本委員も同じ趣旨の発言をされていたが、15行目は、審議の主題が移っていって、この委員会としてはそれをどうしたのかということがないと、「おわりに」に出てくる文章としては締まらなくなると思う。

【鈴木委員】
 「2年遅れ」という言葉があちこちに出てきている。これはいくつも言う必要がなく、例えば1ページ目、ここにまず「2年遅れ」、22行目の「欧米には2年遅れ」、この辺も要らない。ただ、我が国は平成16年から参加したということで良いと思う。
  また、同じようなニュアンスで6ページ17行目に「これにより日本は、欧米と対等の関係」の部分。この「対等」というのも、その下の「日本の建設貢献度に応じた数の委員の確保」部分も「日本の人たちは力を持っているので、率先して運営に当たっている」というニュアンスの方が良いと思う。貢献度に応じた数ということにとらわれると、それ以上はやっていないのかと問われる気がする。
  8ページ27行目「我が国の研究活動に不利をもたらすことがないよう」の部分は、「2年遅れで参加したが、野辺山などで培った世界をリードする観測成果と高い技術何々で推進している」と言っているので、あえて「不利」と書く必要はないと思う。
 同様に9ページ28行目「参加は2年遅れた」と「遅れを取り戻し」も書き換える必要があると思う。
 つまり野辺山で培った技術をもとに先導すると書ききった方がわかりやすいと思う。
  5ページ16行目「画像の取得、強度測定の大幅改善」と突然「強度」が出てくるので違和感がある。
  6ページ目の5行目「周波数バンドのうち最高周波数」は、絶対値が高いのか低いのかがわかりにくい。
 最後の13ページ15行目から、小説のような書きぶりなので、ここをもう少し変える必要があることと、9行目「アルマ計画は、「すばる望遠鏡」では観測不可能な宇宙の姿」、この部分は「すばる望遠鏡」も立てて、「アルマ」も立てる書き方にすべきであると思う。

【山本専門委員】
 10ページ13行目「なお、この計画は、橋や道路のように完成と同時に効能を発揮するものではない。アルマという」部分は、完成と同時に効能を発揮してもらわなければならない装置なので、完成が計画の終わりではないことを強調するのであれば、言い方を考えていただきたい。

【野本専門委員】
 鈴木委員からの意見でもあったが、「すばる望遠鏡」と「アルマ」を比較し、謙遜する必要はないと思う。

【観山台長】
 広報も含めて、国立天文台で行うビッグプロジェクトなので、山根委員からも御指摘があったところなので、比較対象として入っているが、確かに同じ電波望遠鏡とはいえ、それぞれの役割があるので、比較する必要はないと思える。

【高橋専門委員】
 ここは「評価」を書く報告書なので、「すばる望遠鏡」との比較は必要ないと思える。
  広報普及活動に関しては、本格運用への課題として委員会の評価を入れる必要があると思う。

【飯吉主査】
 今日の議論の内容を表現方法含めて反映させていただくことにしたい。
  なお、事実関係は国立天文台から意見を聴取し、各委員の意見も反映させ、最終的な仕上がりは、主査一任とさせていただくことで了承いただきたい。

‐各委員了承‐

 最後に国立天文台、事務局から一言いただきたい。

【観山台長】
 委員の方々にはお忙しい中、懇談会を含めて4回も会合を開いていただき感謝申し上げる。
  完成まで、3年半なので、様々な御意見を参考にし、報告書の御指摘も踏まえて推進していくこととしたい。

【信濃参事官】
 文部科学省としても、本評価を受け、国立天文台と連絡を密にしながら推進していくこととしたい。

【観山台長】
 最後に、一般的な広報として、アルマのアンテナメーカーが、9月5日を始め、新聞各紙に広告を打つので、一般的な広報として御覧いただきたい。

【飯吉主査】
 それでは、これで終了する。長い間、御協力いただいたことに感謝申し上げる。

【笹川宇宙科学専門官】
 先ほど主査から御提案いただいたとおり、この会は今回で終了とさせていただく。
  先ほどの主査からの提案を踏まえ、9月5日にこの会の親会である学術研究推進部会の方に最終報告をさせていただくこととしている。

お問合せ先

研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)