学術研究推進部会 アルマ計画評価作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成20年6月20日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 16階特別会議室

3.議題

  1. アルマ計画評価報告書骨子(案)について

4.出席者

委員

 飯吉主査、井上委員、高橋委員、外村委員、永原委員、山根委員、山本委員

文部科学省

福島科学官、片岡参事官、笹川宇宙科学専門官、他 関係職員

オブザーバー

(国立天文台)
 観山台長、立松アルマ推進室長、井口アルマプロジェクトマネージャ

5.議事録

 国立天文台から、資料に基づき、前回の補足説明があった。
 次に事務局から、資料に基づき前回の意見・指摘等の説明及び中間評価報告書骨子(案)について説明があった。

 下記のような質疑応答がなされた。

【外村専門委員】
 日本の出資割合に応じたというのは、どのくらいの割合か。

【観山台長】
 建設費は、日本の予算は256億円である。これは日米欧全体の25パーセントである。ただし、物価上昇などがあり、総額1,200億円ぐらいになっているが、25パーセントという寄与分は変わっていない。その寄与分に応じて、資料の25ページに運用経費というのがあったが、例えばチリで雇う職員の雇用経費、光熱水料なども建設費の割合で25パーセント拠出する。アルマ観測所運用経費が8.9億円は、これらも含めた25パーセントである。
 ただ、日本で製造したアンテナなどのメンテナンスなどは別途経費がかかる。
 今後は別に運営費もかかってくるので、国からの援助が必要と思っている。

【高橋専門委員】
 「東アジア地域センター」という名前をつけて、「アジア地域センター」としなかった理由をお教え願いたい。

【観山台長】
 インドや東南アジアの研究者ともコミュニケーションはあるが、韓国や中国、台湾は電波観測で連携していたという実績がある。オーストラリアやインドは、興味を示しているが、今のところ具体的な協力関係に至っていないため、今後の検討事項としたい。

【高橋専門委員】
 「東アジア」と命名したことで、東アジアに限定したいという意思に見える。まずは、東アジアから始めて、その後に広がりを持たせるという戦略もあるので、名称をすぐに変更した方がいいということではないが、外国からそのように見えることを踏まえて、よく考えて名前をつけたほうが良いと思う。

【井上臨時委員】
 日本の整備は米欧に比べて、先を走っているということであるが、逆に欧米が現時点で、少し遅れているとか、あるいはその種のことが生じた場合、日本側の進め方に影響があるのか。
 日米欧で歩調が合っていないと予算等、運営面について影響があるのかお聞かせ願いたい。

【観山台長】
 分担は決めているが、3か国の協力で作るので完全分離はできない。
 例えば、アンテナ・受信機・受信機を入れる装置などは、一体とならないと機能しないので、製造について調整が必要である。

【立松室長】
 大きな状況として、山麓施設の完成に関しては、半年程度遅れた。山頂においても、施設の完成、アンテナの4台目の到着、移動台車のチリ到着が遅れた。当初計画に関して比べて、半年程度の遅れがあるが、非常に大きな遅れはない。
 2010年度の初期運用の開始は予定通り行えると考えている。

【井上臨時委員】
 これは、技術的な遅れなのか、予算的な遅れなのかお聞かせ願いたい。

【観山台長】
 日本の建設に関する遅れは、大体数カ月から半年ぐらいで済んでいるが、会計年度の面から考えると、若干影響する部分もある。
 欧州の場合は予算的な遅れということよりは、連合体で分担して製造する、最終的にそれらをアセンブルするというところに難しさがあると思われる。
 アメリカは、日本と同様アンテナも着実に供給しているので、目立った遅れはないと思われる。
 計画のスケジュールは各国のプロジェクトマネージャが厳しく管理を行ったうえで、進めているところである。

【井上臨時委員】
 日米欧で、予算的・技術的なリスクはあるのか。
 また、リスク回避用の予算は確保されているのか。

【観山台長】
 スケジュール管理や大小様々なリスク管理などを日米欧の三者で行うところに難しさがある。
 プロジェクトマネージャが集まる会議を頻繁に行い、これらのリスクが回避できるような体制を作っている。
 リスク回避の予算は、欧米の場合は10パーセント程度、予算に組み込めるが、日本には仕組みがない。

【永原専門委員】
 国民の立場から言うと、多額の税金を投資して、日本がどれだけサイエンスの成果を国民に還元できるかということが一番大きい。どれだけ早くエキサイティングな結果を出せるかということが注目されると思うので、技術的および科学的な準備状況をお聞かせ願いたい。

【観山台長】
 現在は、単体のアンテナでの性能実験として月を電波で観測したが、来年には、より科学的な試験として、干渉計として干渉パターンを出す予定である。
 その際は、我々科学者が現地に赴き、試験運用に参加するので、ミリ波での初期的な成果は日本の研究者で出せると思っている。

【井口プロジェクトマネージャ】
 補足させていただくと、アルマのポリシーは、基本的に現地組み上げ、試験運用、初期運用の開始までの準備は三者共同でやることになっている。
 ただし、最初の初期運用の中の日本のアンテナが占める割合は、この瞬間で強いことは明らかなので、プレゼンスを世界的に発信することはできると思っている。
 科学的成果という意味では、地域センターにどれだけ充実したサイエンスを持ち込んでも、そこで得られた情報は世界共有なので、その得られた情報からどういうサイエンスを展開するか。そこがやはり勝負だと思っているので、地域センターの運用は始まっている必要がある。
 日本は、ものづくりについては先行しているが、運用面は必ずしも充分ではない。地域センターを早く立上げ、運用面の整備を行うことが重要だと考える。

【飯吉主査】
 今の件については、現地の主要ポストに就いている長谷川プロジェクトマネージャが主張して、初期運用からイニシアティブを取れるようにすることを期待していくことが良いと思われる。

【外村専門委員】
 アンテナなどの設備は、着々と完成してきているが、これらを使った観測を行う運用経費はまだ、措置されていないと思われる。地域センターの運用経費など予算の確保を早く行うことが必要である。例えば、公募でアイデアを募集し、成果という風船を上げて、それを達成しながらお金をとっていくということを考えてはどうか。
 もう一つは、リスクに対する経費についてである。アルマ計画の事前評価を行っている頃、スーパーカミオカンデの光電子増倍管の破損事故があった。一つ一つの機器がオーダーメイドなので、復旧までに3年を要することとなった。こういった事を考えると、リスクを考えておく必要があるのではないか。

【観山台長】
 建設費に関しては、日本がアルマ計画に参入する際に認めていただいたことだが、人件費や装置を動かしていくといったランニングコストは、まだきちんとした経費が確保されているわけではない。
 国の予算の制度として、リスクを見越したストック分までは認められないので、事前に準備しておくことは不可能である。メンテナンスも含めて、製造した国が責任を持つので、相関器などで一挙に不具合が出てきた時に、どのような対応ができるかは、今後の大きな課題であると思っている。

【山根専門委員】
 随分前に取材をさせていただいた時に、なかなか予算がつかないという話を聞いていたが、今年に入ってから月の写真が撮れているということは驚きである。 80台全部揃わなければ観測は始まらないと思っていたが、1台でも撮影が出来ているとのことであり、今後は加速度的に成果が出てくると思う。月というと月周回衛星「かぐや」の写真が話題になり、その影に隠れてしまったのかもしれないが、アルマの電波望遠鏡であんなにきれいな月の写真が撮れているということを、私は知らなかった。こういった成果は国民に広く伝えるべきである。
 「すばる望遠鏡」は、望遠鏡という名前がついていたので、「世界最大」などという表現がしやすかった。また、ハワイという日本人に親しい場所であり、それで非常にロマンチシズムあふれるもので、マスコミの関心もすごく高かったと思う。
 アルマは非常に壮絶で人類としては地球上最後の壮大な観測プロジェクトだと思っているが、「すばる望遠鏡」と比較すると、一般の人たちの認知度は低いと思う。
 例えば、今運ぶキャリアで日本が一番先かどうか不明だが、望遠鏡を5,000メートルに上げるというのは、これは1つの大きなイベントの節だと思う。「すばる望遠鏡」の主鏡がピッツバーグから港に着いて、それをトレーラーで山頂まで上げるときに私も行ったが、ものすごい日本のマスコミの数であった。大行列で付いていくし、私たちはヘリコプターまでチャーターして追いかけたりした。まだ完成しているわけでもなかったが、本当に日本人は盛り上がっていた。
 アルマの場合は、チリという非常に遠いところにあるということ、国際共同であるということ、電波望遠鏡であるということで、形を見ると何か普通の通信用のパラボラアンテナのように見えてしまうので、アルマの広報体制のことはよくわからないが、「すばる望遠鏡」と同じように広報を行っていくことは難しいと思っている。しかし、国民の税金によって作られ、国民の知的感心に貢献が大きいものなので、この運用経費の中で、国民に対して知的な成果や価値を伝えていくようにしていただきたい。このような機能を是非「東アジア地域センター」の中に置いていただいて、そういう情報の発信をやっていただきたい。
 特に期待するのは、物質、有機化合物を見つけるというような話で、多分一番おもしろいと思われる。例えば今、NASA(ナサ)が火星で氷を探しているのも、生命の根源を探すことだと思うが、海洋研究開発機構が深海や海底、あるいは地球をボーリングしているのも、これも生命の発祥、原点を導き出したいということ。それがどうも火星あたりのほかの惑星から来た可能性がすごく濃くなっているということである。
 地球の生命は、私たちは火星から来たなんていうと、本当にうそみたいに思われてしまうが、どうもそういう可能性が大きな学説として認められる時代になってきて、夢物語ではないということである。非常にエキサイティングな話なので、広く伝えて、我々は何か、生命とは何かとか、そういうことを広く伝えていくことによって、またそれに刺激されて若い人たちがどんどんこういう分野に向かって、生命科学も含めて大きなモチベーションになるだろう。
 運営費の中に、広報予算は、いつもほとんど計上されていないように思う。是非文科省としても広報に力を入れていただき、人類の根源に迫るようなことを日本がやっているということで、JAMSTECやJAXA(ジャクサ)などと横断して行っていただきたいと思う。
 アルマ計画は、利益を生み出さないが、このように横断的に広報することで、伝えきれないほどの成果が出てくることも予想されると考えるが、とても大事なことに思える。

【観山台長】
 確かに「すばる望遠鏡」は可視光の望遠鏡ということで、非常にイメージが伝わりやすいということもあるが、アルマについてはもっとパブリックリレーションに関して力を入れなければいけないと考えている。「すばる望遠鏡」や「ハッブル望遠鏡」よりも10倍の精度といっても、まだ撮れていないので、なかなかそれを見せることが難しいが、今度我々が作ったアンテナを移動台車で運ぶところなどは動画で撮って、いろいろなところで公開していきたい。

【山根専門委員】
 私も、今年中には一度伺いたいと思っているが、一般の人たちがわかったときには、本当にすばらしいとみんな思ってくれると思う。「伝える」という役割は非常に大事だと思っている。

【飯吉主査】
 今日の報告も、11ページに成果の見通しのようなことが書いてある。ここに、この議論のような内容も加え、最終的な報告書の中に、そういうものを少しつけ加えていただくということは大変良いことではないかと思う。

【井上臨時委員】
 資料1の14ページ、共同研究を発展させるということに触れると、やはり考えておくべきは、電波天文学分野の、まさにこれを使っている方々が、共同研究などを積極的に働きかけることが必要かと思うが、アルマのユーザーのすそ野が資料からは見えないので、説明いただきたい。

【立松室長】
 アルマのユーザーであるが、天文関係者で700人程度、天文以外の惑星科学や分子化学等から300人程度で、1,000人程度の潜在的なユーザーがいて、その人たちに連携していただいて、天文台と共同というのはあると思うが、そういう方々に使っていただこうと考えている。
 地域センターの設計も、そのようなユーザーを対象として構築している。

【井上臨時委員】
 もう少し手前の、国内の大学の、実際に核になって動いておられる方はかなりの方がいると思うが、その辺も説明いただきたい。

【観山台長】
 これから実際に観測が始まっていくので、ある程度いいテーマを考えておく必要がある。すばるや、X線、遠赤外線や赤外線のグループとも一緒に連携して研究を行っていこうと考えているので、それぞれ国内的な組織を作って、ワーキンググループを立ち上げているところである。
 ただ、アルマは国際共同研究なので、例えば、惑星形成の現場を見たいということは米国でも欧州でも考えているところである。
 我々は、すばる望遠鏡やX線天文学など世界最高性能の技術を持っているので、その技術との連携を強化していくことで、リードしていくこととしたい。

【山本専門委員】
 コアになって動いているのは12ページにある4つのグループで、常時参加しているのは大体100人ぐらいである。
 観山先生の発言にあったが、やはり米欧も同じことを当然考えていると思われる。
 日本が、どこに強みを持つかという点では、我が国に電波望遠鏡というのは、大型のものは野辺山の45メートル望遠鏡がある。それからASTE10メートル望遠鏡、それがある面、唯一の我々の準備のための道具である。
 やはり、実績が一番なので、それらを非常に有効に活用していかないとならないと考える。そういう意味で、もちろんアルマを作ることも非常に大事だが、その周辺というものに対する支援ということも、是非、配慮いただきたい。
 そうでないと、やはり、実際にできた後の競争というものを勝ち抜く力を十分養えないという懸念を持っている。

【飯吉主査】
 今日、既にいろいろな御意見をいただいて、この中の、例えばアルマ計画の意義のところなどは、山根委員も言われたように、夢のある話。例えば生命の謎の部分が、少し状況が変わってきたようなところがあれば、ここに少し加筆し、素人わかりをするような、また、若い人たちに夢を与えるような意義についても加筆していただきたい。この報告書がどこまで公の場に出るか不明であるが、当然、ホームページでも公開するので、是非、つけ加えていただきたい。それから、国際協力に関する部分で「東アジア」というのが非常に強く出ている。この表現をもう少し丁寧に書いていただきたい。例えば東アジア地域の取りまとめというところに、まずは、「東アジア」で開始していくが、もっとアジア全体に広めていくことを強調するなど、何か説明を付け加えていただきたい。
 もう一点、2ページの「(3)事前評価における留意事項への対応1.」であるが、共同研究、共同利用機関としてもかなり、ネットワークで地盤を作っているとの話を先ほど聞いたので、これにさらに何か付け加えていただきたい。
 最後に、「2.本格運用に向けた課題について (3)広報活動」についても、すばる望遠鏡のハワイと違って、さらに遠隔地に作られるので、いかにこの遠隔地のすばらしい研究状況を国民にPRしていくかを付け加えていただきたい。

【外村専門委員】
 まずは、アルマ計画の意義について、日本がもっと積極的に世界をリードするという趣旨の文書にした方が良いと思う。
 次に、「1.アルマ計画の意義及び進捗状況について (1)アルマ計画の意義」の冒頭文にある「惑星の形成過程が初めて明らかになる」という部分を具体的に書いていただきたい。
 次に、もっと成果に対する意欲が欲しい。例えば、私が新しい電子顕微鏡を作ったときは、サンプルを作ってほかの電子顕微鏡で事前に観察し、新しい装置が完成したらすぐに実験に取りかかれるような用意をするというような工夫をした。おもしろい成果をすぐに出して国民の理解を得て、運営経費などの予算獲得を有利に運んで欲しい。
 最後に、経費については、建設中だけでなく、建設後の運用経費も記載しておく必要があると考える。遠隔地で、完成後にどんどん面白い成果を出し続けるには、運用経費の確保が必須であり、本中間評価で記載しておく必要があると考える。

【飯吉主査】
 最後の経費については、運営に関わる重要な部分なので、確かに中間評価に特に記載すべき部分だと考える。

【山根専門委員】
 アタカマは落雷の多い場所と聞いているが、例えば落雷により、ダメージを受けたときの補修費用などは、考えているのか確認したい。

【観山台長】
 落雷など、突発的な事故に対して、保険をかけるよう日米欧で議論中であるが、通常では考えられないような場所に置いていることから、保険会社との取り決めが難しい。
 ただ、外村委員の発言のように、これは、二、三台余分にアンテナを作っておくということもできないことから、落雷などの非常に大きなダメージがあった場合、修理にかなりの時間を要することは、避けられないと考えている。

【飯吉主査】
 資料1 25ページ「運用経費」について、部分運用が開始されると、年々経費が増えていくこととなる。国の予算は、前年比で減らされていくことが多いので、しっかりと確保していく必要がある。

【永原専門委員】
 課題という意味で、成果の国民に対する還元のような項目が入っていないので、きちっと織り込んでいただきたい。
 アルマだけではないが、特に天文分野の持っている役割、これは惑星科学も言えることだが、基礎的な科学、自然科学に対する国民の理解や次世代の育成について、非常に特殊な役割を持っていると認識している。
 このことをもっと強く打ち出さなければ、小さな天文学のコミュニティーだけの課題となり、逆に言えば、これ以上まだ投資をするのかという議論になりかねないと思う。
 今後のソフトウェアの充実や定常的経費の確保が、良いサイエンスの結果を出し、さらに国民に還元していくことに繋がるということを報告書に記載していただきたい。

【山本専門委員】
 骨子案で、「1.アルマ計画の意義及び進捗状況について3.国際協力」は、東アジアの取りまとめということで、国外の話が主になっているが、東アジア地域センターの役割の大きな部分は、やはり国内の研究者、あるいは候補の部分が非常に大事だと思うので、これをきちんと記載すべきである。
 東アジア地域センターにはまず、国内の天文関係者、いわゆる本当のディープユーザー向けの課題、それから他分野への進展の役割があり、それに加えて、アジア地域の包括の役割がある。さらに、広報の役割も持っている。それらを包括的に推進する東アジア地域センターの確立というのは、非常に急務かつ不可欠であるというのが、論理としては全体を覆うような気がする。これでは、一部のみが強調されている印象があると思う。

【観山台長】
 国際協力でやっているが、それぞれの地域センターの力量によっていると思うので、少なくとも国内の研究者には豊富なサービスをして、ほかの分野の研究者にも簡単に使えるようにし、なおかつPRをするというのは、非常に重要な責務だと思っている。

【高橋専門委員】
 そうすると(1)のタイトルが「東アジア地域のとりまとめ」となっているのがあまり適切ではなくて、正確に書くと「研究体制の確立」と思われる。さらに国内拠点を強調するため「国内」を入れた方が様々な所へのアピールになるので、書き換える方が望ましいのではないか。
 東アジア、アジア問題に関していうと、ヨーロッパに行くと、ヨーロッパのいろいろな研究機関なり、ファンディングエージェンシーが、非常にアジアにお金を出している。そういう意欲があるというのを感じる。このままでは、東アジアは日本がカバーするが、東南アジア以降の西は、ヨーロッパのESA(イサ)の支援で研究するという体制になりかねない。それを避けるため、最初から、「アジア」として、日本がアジア全域の代表ですという姿勢を見せることが必要だろう。

【飯吉主査】
 EUのアジア版という意味か。

【観山台長】
 なお、インドは、イギリスとのコネクションが随分強い。

【高橋専門委員】
 実際はそうだと思う。それは旧宗主国とのかかわりが強いからである。だから彼らも援助する。東南アジアも、結局は旧宗主国に頼っている。

【山根専門委員】
 大気圏での電波観測では、インドは京都大学と随分強いつながりでやっているので、うまく共同研究を行うことは可能であると考える。

【井口プロジェクトマネージャ】
 インドの電波天文学者は、電離層にすごく影響するような、長い波長の方を研究している。
 我々とも、コミュニケーションは行われており、彼らが干渉計のようなものを作っているとき、コラボレーションはしているが、最終的な天文学のターゲットが我々とはちょっと違うので、最終的には、共同研究までは至らず、結果的にアルマの中でのコネクションは薄くなっている。

【飯吉主査】
 この東アジアという名称は、日中韓で集まって、正式に決めたものなのか。

【観山台長】
 日本、中国、韓国、台湾。この4者のEAコアといって、東アジア中核天文台の協議会という、台長の集まりが毎年あり、アルマに関しては、非常に包括的であるが決定したもの。

【飯吉主査】
 そうであれば、このタイトルは「東アジア」でなくてもいいのではないか。アジア地域の研究体制の取りまとめということにして、具体的に今、東アジアの4つの国で、東アジアとしての活動を始めているということであれば、問題はないと思える。

【外村専門委員】
 アルマ計画に関する一般向けの講演会などは行っているのか。

【観山台長】
 各地を回って、天文台の一般講演会などを行っているが、「アルマという計画をやっているが、知っていますか。」と尋ねると、そういう会に来られる方には認知されている。
 ただし、本当に一般的な人々に、どれぐらい伝わっているのか。「すばる望遠鏡」に比べれば、やはり注目度が低いと思っている。

【山根専門委員】
 「アルマ」と聞いても何のことかわからないので「すばる」のように和名を付けてはいかがか。

【観山台長】
 「心・精神・魂」という意味のスペイン語だが、和名をつけてもいいかと思う。

【外村専門委員】
 理化学研究所の、X線の自由電子レーザー(XFEL)など、製造中の試験運転の段階で愛称の募集などを行っているので、同様に広報や愛称の募集などをやっても良いかと思う。

【山根専門委員】
 ジャーナリストとしては、「すばる望遠鏡」の4,200メートルで、かなり取材が困難だったので、それより高い5,000メートルの高地となると、現地取材する方法も説明していただきたい。
 例えば、酸素ボンベを用意してもらうことや、アルマではこのような体制で取材できるということをメディアに説明していただければ、実現性は高まると思う。

【観山台長】
 今年の11月、来年も11月に、アルマ全体でいろいろなイベントを企画している。その際に移動台車にアンテナを載せるデモンストレーションなどを考えているので、メディアにも案内しようと考えている。

【飯吉主査】
 アルマの電力の供給はどのようにしているのか。太陽電池などを使っているのか。

【観山台長】
 望遠鏡80台を一斉に動かすための大きな電力が必要なので、通常の発電所からの中継で行う予定である。パイプラインが近くにあるので、パイプラインの燃料を買って使おうと思ったが、燃料の高騰により実現性は低くなった。ただし、引き続き重要な課題の一つと思っている。

【高橋専門委員】
 「1.アルマ計画の意義及び進捗状況について (1)アルマ計画の意義」の「天文学分野への国民の期待に応えられる」や「国民の科学技術に対する関心を高める」は、もっと一般向けにわかりやすい言葉に改めていただきたい。また、最終行「変わらない」は当初と変わらないという意味であれば「プロジェクトである。」と書ききった方が良いと思われる。
 「2.本格運用に向けた課題について (1)東アジア地域のとりまとめ」であるが、アルマ計画では、「センターが重要であり」のみでは記載が弱い。研究成果を生み出す現場は地域センターであり、ここは成果を生み出すために不可欠な存在だとわかるような書き方が望ましい。また、最後は技術の話に特化しているので、研究の中身の話も記載した方が良い。

【山根専門委員】
 報告書の中に、こういうことが発見されるとか、こういう成果が得られることが期待されているということを記載した方が良いと思われる。例えば、カミオカンデの場合、幸運にも超新星の爆発があり、ニュートリノが観測でき、結局、ノーベル賞ということに繋がった。
 アルマでも、同クラスの成果は期待されるはずなので、目指すところを記載した方が良いと思う。

【飯吉主査】
 「すばる望遠鏡」の認知度は高いので、比較で記載すると、素人でもわかりやすいと思われる。

【立松室長】
 先ほど言ったように、「すばる望遠鏡」で見えない、より遠方の銀河がみえる。

【山本専門委員】
 専門的な立場で発言すると、アルマの一番すごいところは物質が見えるところである。単に物が見えるだけではなくて、物質がわかる。「すばる望遠鏡」でも遠い銀河はそれなりに観測できるが、アルマでは、さらに物質が見える。物質が見えることで、生命の起源に迫ることも可能である。

【山根専門委員】
 資料1 6ページの比喩表現「東京から大阪の1円玉が見える」というのは、かえってわかりにくい表現となっている。
 比喩はとても大事であり、「すばる望遠鏡」のとき、海部先生が、「関東平野の大きさのレンズとしたときに、新聞紙1枚のでこぼこ以内に押さえる」という言い方をされていた。何か、一般の人でもわかりやすい比喩を考えていただきたい。

【飯吉主査】
 それでは、本日も活発な意見が出たので、これらをまとめていただき、報告書に盛り込んでいただきたい。

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研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)