学術研究推進部会 国語に関する学術研究の推進に関する委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成20年3月14日(金曜日) 13時~15時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

 飯野主査、井上主査代理、中西委員
(専門委員)
 石井専門委員、真田専門委員

文部科学省

 藤木大臣官房審議官(研究振興局担当)、森学術機関課長、町田文化庁文化部国語課長、江崎企画官、松永研究調整官、丸山学術機関課課長補佐

オブザーバー

(外部有識者)
 野村雅昭 日本語学会長

4.開会

 第3回委員会の開会にあたり、主査代理より挨拶があった。また、主査が遅れて到着するため、その間、委員会の進行を主査代理が務める旨報告があった。
 なお、資料1の前回議事録案について、修正があれば3月21日(金曜日)までに、事務局へ連絡することとした。

5.議事

 まず、事務局より、資料2(野村雅昭日本語学会会長 発表資料)及び資料3(石井専門委員 発表資料)について説明があった。
 主査代理より、野村日本語学会長より発表があり、その後質疑応答を行い、自由討議を行う旨の発言があった。発表及び質疑応答、自由討議の内容は以下の通り。

【野村日本語学会長】
 本委員会、あるいは、本日私を呼ばれた趣旨から言うと、国語に関する学術研究の推進のための提言ということであろうかと思うが、一方で、国立国語研究所の大学共同利用機関への移管ということもある。また、我々の学会の名称が日本語学会という名前になったが、4年前の2004年の1月に変わって、まだそれほどたっていないということもあり、そのようなことを背景に、話をすることになろうかとも思う。
 国際化時代、情報化社会という言葉は、もう大分前から使われており、かつては、間もなくそういう時代が来る、あるいは、そういう社会になるという認識だったが、現在では、もうその時代に入ってしまっている。そういう中で、我々の言葉、国語がどのようなものであるべきかという議論は、大分前から行われていたが、本格的な議論は、あまり行われていなかった。それが、我々の学会が名称を変える議論を始める頃、1990年代の終わり頃から、学会の中でもそういう議論が多くなり、一体そういう時代に望まれる日本語、日本の言葉としての国語は、どのようなものであるかという問題に対して、研究者である我々がどのような認識を持つべきかを議論をする機会が訪れた。一般的に言えば、資料に書いたように、「日本語研究者の立場から、日本語の科学的研究を基礎として」という、そのことに集約される。その上で、今まで以上の水準に至る研究を可能にするためには何が必要なのかということを、今日は若干申し述べたいと思う。
 資料には、6つの項目を立てたが、日本語研究全般を対象とする総合的な研究機関が必要だということは、これまでも多くの研究者によって認められていたところだが、実現はしていなかった。国立国語研究所がそれに相当するものであるという考え方、あるいは、それに近いものであるという認識はかなりあったが、いわゆる言語学の研究機関としては違うという認識のほうが多数を占めていたと思うし、また、実際に行政面においてもそうであったろうと思われる。
 したがって、ここにもし大学共同利用機関として、新しい日本語の研究機関ができるとするならば、それは、私たちの学会に属する多くの日本語研究者にとって望ましいものであると思われる。今までも国語研究所は随分我々のために非常に貢献をしてきてくれたが、大学利用機関となって広く開かれた組織として設置されるということ、そしてその運営にも我々コミュニティの意見が反映されるであろうということへの期待も込めて、それは望ましいことであると考える。
 これは、単にこの日本の国内のことだけではなく、第2言語としての日本語学習者が世界的に非常に広がっており、同時に、在外の日本語研究者も非常に多くなっており、そのような外国人の日本語研究者にとって、日本における日本語研究の中心は一体どこにあるのかということは、関心の持たれるところであろうかと思う。その点で、国語研究所は、ある程度それにかわる役割を果たしてきたとは思うが、そういう日本語研究者にとって、ここがその中心だ、というところは、はっきりは存在しなかったと思う。もしこういう新しい機関ができるのであれば、日本語研究というものを世界規模で進める、その中心になるものとして、非常に意味のあることだろうと考える。
 それから、そこでどのような研究を行うのかということに話を移すと、多くの研究者の関心が集まる現代の日本語を中心とする研究になるであろうということである。我々、日本語研究者は、必ずしも現代のものだけを研究するだけではなく、歴史的な研究を志している者もいるが、共同利用機関として存在するためには、現代のものを中心に位置づけることが最も効率的だろうと思う。今までの研究では、そういう歴史的な研究については、大学等において、各研究者の個性によって研究が行われてきたというのが、実情だろうと思う。そういう面から言うと、歴史的な研究に対しても、今後はそういう機関の中で位置づけが行われてしかるべきであろうかと思うし、あわせて、狭い意味での言語学だけではなく、認知科学や情報科学といった隣接研究分野との境界領域にあるような研究にも取り組むことが望まれる。
 それから、先ほど外国人の研究者が増えたということを話したが、そういう研究者たちを含む本格的なプロジェクト研究が行われてしかるべきだろうと思う。そこには、言語学の一つの新しい分野である対照言語学の研究もあり、最近文化史的な研究ということが重視されているが、単に日本の中での文化史的な研究ではなく、日本の置かれている地理的な環境から見て、東アジアとの対照研究、あるいは広域的な文化史研究というようなものが必要であろうと思われる。少ない定員の中では、そういう外国人研究者を正規の研究員として招くということは困難なことかとは思うが、招聘研究員制度といったようなことを活用できるような組織であってほしいと思う。
 今までの国語研究所の研究成果の中には、世界的に見て非常にすぐれた先駆的な研究が存在している。例えば、言語地理学に立脚した言語地図の作成。言語地理学そのものは日本でできたわけではないが、それを取り入れて、全国方言分布地図を世界に先駆けて行った、その調査を行い、地図を作成した。その後も、方言分布の地図を続けて作成している。これは、本当に世界に対して誇ってよいことである。また、大規模な用語用字調査、これは単に数を数えるだけなら、外国にも先蹤はあるが、統計的な裏づけを持ち、数理言語的な解析を試行したというのは、日本が最初と言って過言ではない。さらには、日本語の多様性についての社会言語学的な調査、これは、単なる地理的な分布や歴史的な変化ではなく、現代の社会、比較的に短い期間の中で、日本語にどのような多様性が存在するのか、それはどのように変化していくのかということを調べるための調査だが、それが日本に取り入れられてからは、世界的に普及した。それらは、国語研究所のすぐれた業績だったと言って過言ではないと思う。今回の新しい研究機関においても、そういう先駆的な研究が可能な組織体制が望まれる。
 最後に、新しい機関が、共同利用機関として、広く日本語研究者にとって高い評価を得るためには、国語研究所が今までに蓄積したいろいろなデータ等を新しい共同利用機関によって、さらに広く大勢の人たちに提供できるようなものであってほしいと思う。言語データそのものに関しては、最近では大規模なコーパス研究というものも行われており、過去の方言調査のデータというものも存在する。その他、国内外の日本語研究に関する情報や日本語に関する図書に関しては、ソフト的な面においても、ハード的な面においても、国語研究所が今までになし得たことというのは、大変価値のあるものであり、それが、今後の新しい機関にも引き続いて活用されるということを望む。
 以上、簡単ではあるが、我々の学会からの要望としたい。

【中西委員】
 日本語研究について、具体的なイメージを少し持つことができ、非常にありがたかった。いろいろ理解することができたが、ただ、国語研究の中の日本語研究の位置づけというのは、どういうふうに考えられているのか。

【野村日本語学会長】
 今の質問については逆で、我々の考えだと、日本語研究のほうが広くて、国語研究というのは、その中に含まれるというふうにはとらえてきた。つまり、なぜ名称を変える必要があるのかと言うと、国語研究は、あくまで一国言語--日本という国は、世界でもまれに見る一国言語的な国なのだが、それがために、日本語だけの研究を行えば、それで国語の研究は済んでしまうという考え方、一体のものだというふうに意識されてきたのだが、世界各国を見れば、一つの国の中にも多数の言語があるという国は、決して珍しくない。そして、日本語以外の言語は、世界中に多くあり、その中に日本語なり国語を置いて考えようということが、やっと共通理解になってきたと考えていただいたほうがよいかと思う。

【井上主査代理】
 現在の独法の国語研究所は、従来はどちらかというと大学等の研究者に広く開かれた組織とは言えなかったという話だったと思うが、いろいろな研究成果を見ると、大学の研究者と共同で、例えば、対照言語学や言語地理学を生かした方言の調査等、大学の研究者とも共同研究してきたように思われるが、その点については、国語研究所と大学研究者の研究交流はあまりなかったという認識か。

【野村日本語学会長】
 なかったわけではなく、研究交流は過去にもあったし、現在もある。ただし、例えば、方言に関する言語地図の研究だと、地方研究員という形では大学の研究者が大部分だが、各地の研究者の方にお願いをして、一緒に研究をするというような制度があった。方言などは、それが非常によく機能した例だと思うが、その他のことに関して言うと、必ずしも十分ではなかったかと思う。ごく一部の人たちがそれにかかわるという形はあったが、それは、個人として外国からある期間だけ共学者として依頼する等、そういった研究はあっても、恒常的に大きな計画のもとに進められるという環境にはなかなかなりにくかった。結局は、国語研究所の研究の目的がどこにあったかというと、国語政策の基礎となる研究という大きな枠づけが既にあったためである。

【井上主査代理】
 先ほど6のところで話があった、言語コーパスは今、大規模なデータベース構築をやっていると思う。現代日本語を主たる研究対象とするという点から言うと、現代日本語の基礎的な研究としては重要な意味合いがあるのではないかと思うが、そこについてはいかがか。

【野村日本語学会長】
 これは、いたずらに外国と比較をすることは意味がないかと思うが、外国においては、早くからそういう現代語の資料が大量にコーパスとして蓄えられ、現代語だけではなく、さらにさかのぼって、例えば、イギリスなどでは、もうシェイクスピアあたりまで大規模なコーパスが存在している。日本語では漢字を使っているということが一つの障害になっており、漢字を使っていて、分かち書きがされていないデータを、どのようにして、コーパス化していくかというのは、長い間の課題だった。
 最近では、機械の面での処理技術に関しては、相当なところまで上がったが、基本的なデータ入力は、技術が不足している。一方で現在やっている書き言葉コーパスなどにおいては、著作権などの問題もあり、遅れているというところが実情かと思う。

【真田専門委員】
 プロジェクトを共同でやってきていることについては実績があると思うが、データベースのような、蓄積したデータを一般の人に利用してもらうということをやっていなかったような気がする。国語研究所の図書館も、国語研究所の所員関係の人でないと入れないみたいなところがあって、そこが開放されるということは期待できるし、よい共同利用ができるような形は望ましいと思う。
 それから、データベースは現代だが、近代語からやっている。日本の近代語から現代に至るところ、細かく見られるような歴史的なものはかなり集めていると思っている。

【井上主査代理】
 野村会長からの意見等を踏まえ、報告書に向けた審議を進めたいと思う。

(野村日本語学会長退室)

 では、2番目に、人間文化研究機構における検討状況の報告をいただきたいと思う。
 前回、石井専門委員より、国立国語研究所が大学共同利用機関法人へ移管されるとの閣議決定を受け、人間文化研究機構として自主的に検討を行っており、その状況について、本委員会に報告したい旨の発言があったので、今回、報告いただきたいと思う。

【石井専門委員】
 去年の閣議決定で、大学共同利用機関法人ということと、国語研究所ということで、人間文化に関係してくるだろうと思い、懇談会を発足させた。大学共同利用機関の場合には、基本的には研究者コミュニティの意見を聞くということが非常に大事なことであり、この懇談会には、今発表された野村先生や日本語学会の会長、音声学会の会長、それから日本言語学会の会長等、国語、日本語のさまざまな領域で業績を上げている先生方を招いてきた。そこで数回にわたって議論いただき、共通的なことでまとめができ上がったので、本日、それを報告させていただきたい。日本語というのは、日本の文化、それから、日本の社会の知的基盤であり、日本語の実態を把握し、これを理論的に解明することは、学術的にも社会的にも重要な意義を持つという認識である。
 特に近年、グローバル化が非常に急速なスピードで進展していることを考慮すると、日本語研究を、新しい視点に立って総合的に推進することは急務であると我々も認識している。
 そこで、我々の立ち上げた懇談会は、そのためのナショナル・センターとして大学共同利用機関を設置して、整備することが最も望ましいというふうに考えた。その、基本構想が、これから述べるところである。
 まず基本方針は、日本語を世界の諸言語の中に位置づけて、その日本語の持っている特質と普遍性の研究を推進する国際的研究拠点とする。世界には日本語研究者が多く、そういう一つの日本語研究の国際的な拠点にならなければいけない、これがまず最初である。
 それから、研究の中核は現代日本語であるということで、現代日本語は中核だが、歴史研究を含む言語研究のさまざまな領域を包括するという意味である。
 そして、日本語以外の言語研究や、関連する分野との共同研究の推進を図るということ。大学共同利用機関は基本的には共同研究というのがコアになるので、共同研究を推進する。
 最後に、大学を中心とする国内国外の日本語研究者に開かれた協業の場として、組織運営を行う。人間文化研究機構の中に、国際日本文化研究センターという機関があるが、ここには外国人の研究者が20名もいる。それで、日本文化の共同研究をやっており、この新しくできる日本語研究所というものには、国内だけではなく、国外の日本語研究者にも開かれた協業の場として組織し、運営したいということである。
 研究領域については、1つは、理論・構造の研究、2番目が、空間的な変異の研究、3番目が、時間的な変異の研究、4番目が、言語資源の研究、5番目が、広領域・プロジェクト研究、こういう5本の柱を一応研究領域として立てたらどうだろうかと。つまり、言語理論の研究、あるいは日本語の構造の研究をするということ、それから、日本語が空間的に変わっている、その変異の研究をする。あるいは、時間的な、歴史的に変わっていく変異の研究をする。それから、言語資源、つまりコーパスのようなこういう研究をする。それから、広領域・プロジェクト研究を行うという研究領域である。
 具体的な事業の内容だが、第1番目に、日本語研究に関する資料・文献を収集し、これを研究し、整理し、研究者に提供するということ。その意味で、開かれたということは非常に重要である。
 それから、日本語研究にまつわる重要課題に関して共同研究を推進する。これは、人間文化研究機構は、いろんな形の共同研究をやっているが、基本的には共同研究というのが研究所の基本的な姿勢になる。
 そして、日本語研究に関する国際交流・連携の強化・推進。つまり、諸外国の日本語研究者との連携を強化し、そのセンターになりたいということである。
 最後に、国内国外の日本語研究情報を集積して、発信するということ。この4本を考えた。
 大学共同利用機関に期待されている機能を十分に発揮できるために、今、3つの点を重視したいと思う。先ほども述べたが、大学共同利用機関は研究者コミュニティというものが背景にあり、我々の懇談会も、研究者コミュニティを代表する先生方に来ていただき、立ち上げたのだが、まず、新しくできる研究所も、研究者コミュニティの意見を基礎にした運営をするということである。したがって、外部研究者が過半数を占める運営会議が非常に重要で、人間文化研究機構に5つ機関があるが、その実際の運営は運営会議の中の外部の研究者が過半数を占めるということが前提である。その運営会議が事業の基本計画や所長・研究者の人事を審議し、その結果を尊重するということで、その意味で、外部の研究者コミュニティが、所長の人事、あるいは研究者の人事等にも発言権を持っているということである。これが運営の中で非常に重要なことで、研究者コミュニティの意見を基礎とするということの具体的なあらわれは、運営会議で発言されているということである。
 2番目に、柔軟な研究組織の形成と書いたが、事業目的に即した柔軟な研究組織を形成するために、任期制を導入する。人間文化研究機構の場合には、助教は5年間で、再任は認めないということにしているので、任期制を導入するということ、国内外の研究者を客員教授で採用するということ、それから、プロジェクトを立て上げ、そこに参加をしてもらう研究者の雇用の形態として、年俸制を導入する等、研究組織が、非常に流動的に、共同研究を推進するために、フレキシビリティを持たなければいけないということである。
 3番目に、大学院教育への協力についてだが、大学共同利用機関は学位授与権を持っていないので、総合研究大学院大学に協力して、その基盤機関になり、総合研究大学院大学から学位は出ることになる。実際に学生が来るのは、それぞれの基盤機関だが、大学院教育というのは、総合研究大学院大学を通してということである。そのため、大学院に積極的に協力するためには、設置指針等、人事の資格でも問題が出てくるであろうと思われる。
 名称については、色々な意見があり得るが、「大学共同利用機関 日本語研究所」というのが一番いいのではないかというところである。
 以上である。

【中西委員】
 この基本方針の中で、「世界の諸言語の中に位置づけ」というのがどういう意味を持つのか教えていただきたい。

【石井専門委員】
 日本語というのは、たくさんある言語、全部で6,000とか7,000とかある中の一つだ、という意味である。

【中西委員】
 それが基本方針なので、例えば、どういう意味があるとか、どういう研究をそのためにすべきだとか、分野が必要だとか、少し具体的なイメージが湧きにくい。

【石井専門委員】
 それは、比較言語学という学問があるが、ある言語が、例えば、インド・ヨーロッパ語の場合、イタリア語やポルトガル語等、色々あるのが、まとまってラテン語になって、さらに上のインド・ヨーロッパ語になるというふうに、それぞれの言語を、ほかと比較することによって、特徴が出てくる。
 日本語の場合も、日本語だけ見ていてもだめだが、これを韓国語と比較したり、ビルマ語と比較したりする。日本人だけしかないと思っているのが、実はほかの言語にもあるという意味で、日本語を相対化するということになると思う。

【真田専門委員】
 国語と言った場合は、日本国内のものしか扱えない。ヨーロッパの人が国語を勉強するということはあり得ないだろうし、みんなが日本語を勉強するという意味で、個別言語としての日本語と。だから、多分、日本語研究所というところの名前にもかかわるのだろうが、個別言語として日本語を日本人だけでなく見ていくという視点もあるというふうに思う。

【石井専門委員】
 日本語というのは、確かに、日本の中だけ考えていれば、それでいいのだが日本語も、たくさんある言語の中の一つだとすれば、逆に、日本語の特徴が出てくるし、日本語の類似性が出てくるという、それが理論研究に役に立っていくということ。

【井上主査代理】
 基本方針の3のところで、日本語以外の言語研究と書いてあるが、日本語と英語なりタイ語なり、そういう対照言語学的なのではなくて、日本語以外の言語研究というと、日本語と対照言語学ではないけれど、単独で英語なりタイ語なり中国語を研究するということか。対照言語学なら、日本語と比較研究するということではないのか。

【石井専門委員】
 そういうことである。

【森学術機関課長】
 それは、共同研究の対象として入ってくる分野に、英語やほかの外国語の研究が入ってくるという意味か。

【石井専門委員】
 今、対照言語学と言われたが、まさにそうで、日本語の特徴をわかるためには、やはり比較するということは非常に大事だと思う。

【真田専門委員】
 例えば、英語やドイツ語で出てきたような理論的な課題みたいなものを、日本語にも考えるということだろうか。理論としてはというところがあると思う。

【石井専門委員】
 理論としてはそうである。この場合、一番中心になるのは、対照言語学と考えてもらっていいと思う。

【真田専門委員】
 必ずそれは、日本語が対象の場合、日本語が入ってくるのだが、日本語でなく、例えば、普遍的な言語の理論を研究するようなものが、日本語にも適用できるという意味も含めている。

【石井専門委員】
 それは、この中の理論・構造研究の中に出てくると思う。

【真田専門委員】
 私の領域で言うと、例えば、フランスやドイツで言語地図をつくっているが、そのときのテクニックをこちらにも利用するということでの共同研究はある。

【石井専門委員】
 いずれにしても、日本語の研究をするわけだが、その日本語の特徴や特質を浮かび上がらせるためには、いろんな見方があるわけで、その一つが、ほかの言語との比較という形で出てくる。国語と言っていると、世界にたくさんある言語の中の一つの日本語という発想は出てこない。

【森学術機関課長】
 研究領域でいうと、比較言語学的なところというのは、理論・構造研究に入るのか。空間的変異研究というのは、日本語の方言や社会的な変化といったことか。

【石井専門委員】
 基本的には、空間的というのは、そういう意味である。この場合の研究領域で言うと、今の国語研がずっとやってきたことは、かなりこの中に入る。

【森学術機関課長】
 時間的変異というのは、歴史的なものだということになるのか。

【石井専門委員】
 そうである。

【真田専門委員】
 年齢差や世代差もここに入るか。

【石井専門委員】
 現在でも日本語の中に、階層によって言語が違うという問題は出てくる。今までの国語研究所では社会言語学というふうに言っていたが、結果的には、いろんな言語生活と考えれば、これは理論研究にもまたがっていくと思うので、その問題では、時間と空間以外の、理論研究、あるいは構造研究の中には入れたらいいのではないかと思う。

【真田専門委員】
 変異というのはバリエーションだろうから、空間の中には、地域的なバリエーション、それから社会的バリエーションが入る。
 それから、時間の場合は、歴史変化もあり、世代的な変化も入ってもいいと思う。
 方言というのは、英語でdialectというが、「dia」というのは空間という意味で、dialectで空間のある言語というか、そういう意味で、社会性も含んでいると思う。

【中西委員】
 新しく機構をつくられるということの基本方針だと思うので、日本語そのものというか、言語や歴史、比較等を行うということはわかったのだが、今行われている研究の上に立って、どういう方向性を模索するとか、共同研究そのものは、やり方だと思うので、分野的に何を目指すのか、その社会的意味はどうだといったことがもう少しつけ加わっていると、わかりやすいと思う。領域研究として、1から5まで書いてあるが、例えば、今まではこういうことがあったので、積み立てて、もっと理論的な言語の特徴を研究したいといったことがないので、素人が見ると、少しわからないところが多い。

【石井専門委員】
 日本語という、世界にたくさんある中の言語で、日本語の持っている特質、役割といったものを明らかにしていこうと。そのためには、いろんな区別の仕方がある。だから、それを国語だけに限らず、日本語というものの持っているいろんな特質というものを見られるということで、空間から見たり、時間から見たり、あるいは階層で見たり、いろんな見方があるだろうということである。

【中西委員】
 特に今までと違って、共同利用することによって、どういう分野を育てたいとか、思い入れがあってもいいと思うが、具体的な例示、構想のようなものはあるか。
 3に書いてある、資料整理や提供等の主要事業がかなり進むというふうに捉えてよいか。

【飯野主査】
 中西先生が言われているのは、これまでの研究の成果がどういうふうに生きていくのか、その辺りはどういう積み重ねになっていくのか、それを積み重ねると、次に何を目指すことになるのかということだろう。

【井上主査代理】
 確かに、研究領域がちょっとわかりにくい。ある程度外部に説明責任を果たすという意味では、我々は少し説明を聞かないとわからないというところがあるので、そういう説明はつけたほうがいいのではないかと思う。
 先ほど日本語学会から、2004年までは国語学会でやってきたけれど、2004年からは日本語学会に名称を変更したという話があったが、グローバル化した世界の中の日本語、国語研究という意味で、日本語学会が名称を変更された理由はよくわかる。最後の名称のところで、「大学共同利用機関 日本語研究所」と書いてあるが、閣議決定では、独立行政法人国語研究所を大学共同利用機関に移管すると書いてあるわけで、そういう点から考えると、名称はやはり国語研究所とすべきではないかと思う。というのは、別に全く新たに大学共同利用機関をつくるというのではなくて、既に存在して60年の歴史と、そして、研究成果も持ち、いろんなデータベースを持っている国語研究所をベースに、大学共同利用機関に移行するということから言うと、名称については国語研究所を日本語研究所にするというのは、閣議決定の趣旨に反するのではないかという言い方も言えるわけで、名称は国語研究所にして、中の研究部門を、日本語ということで、研究領域や研究部門を立てたらどうかと思う。名称を今変えるのは、やはり少し、閣議決定の趣旨から言うと、問題が生ずるのではないかと思う。

【石井専門委員】
 学術的には、それは全く議論にならないが、行政的にはよくわかる。よくわかるが、国語という語が、今、科研費の領域からなくなっているように、日本語でなくてはだめだと思う。
 それと、もう1つは、非常にグローバル化しているということで、日本を世界に理解してもらわないと困るというのがある。その意味で言うと、国語ではどうも全体の議論がどうしても内向きにならざるを得ない。日本語とすれば、世界の日本語研究者は、みんな来てくれるだろうし、そういう意味での開かれたというか、つまり、日本の内向きでなく、国際的な日本というものの基礎である日本の文化・社会の知的基盤である日本語の研究をするということが言える。
 今言われた意味はよくわかるし、我々もその議論を大分したが、少なくとも、研究者コミュニティの意見としては、やはり日本語とすべきだという議論である。だから、今言われたように、行政的な判断はせず、我々は、今は純粋に学術的な議論でいくべきで、我々はこうだと。それは、全然ジャンルの違う議論である。

【井上主査代理】
 研究者コミュニティとしての議論はよくわかるが、行政的に見て、閣議決定の趣旨から言うと、名称まで変えるということを許容されているかどうかという問題については、やはり慎重に考えなければいけない。これは、この委員会として、やはり閣議決定に従わざるを得ないのではないかと思っており、あとは、文部科学省が、委員会の報告を受けて、判断するということではないかと思う。

【森学術機関課長】
 我々の理解としては、人間文化研究機構では、この日本語研究の共同利用機関を更地に立てるとした場合、どういうものが理想的かということで議論されて、その上で、国語研究所を移管するとした場合、そことどうすり合わせをしていくかという話があり、その辺りについては、さらに今後人間文化研究機構でも議論をすると思うが、行政的な取り扱いがあり、その中で、中身的にはできるだけ学術コミュニティの形に添った形が望ましいということになると思う。
 検討としては、更地につくったらどういう形かということで議論が始まったというふうに理解している。

【石井専門委員】
 我々としては、日本語研究をするために理想的な大学共同利用機関はどういうものかということで、研究者コミュニティの方に集まっていただき議論をしたという、その結果なわけで、それをどういうふうにされるかは、この委員会と、文科省ないしは文化庁のご判断だと思う。
 ただ、あくまでも研究者コミュニティとしては、こういう意見が出ているということを申し上げている。

【井上主査代理】
 研究領域、主要事業、あるいは組織・運営のところは、研究者コミュニティの意見はできるだけ尊重すべきだと思うが、名称問題は、非常に行政的な要素もある。
 閣議決定の趣旨をどこまで尊重するかということだと思うが、名称ということが書いてあるので、少し申し上げたまでである

【石井専門委員】
 いろんな議論が出たが、例えば、国際日本語研究所や国際日本語研究センター等、全部日本語だった。

【井上主査代理】
 もう1つ、組織・運営で任期制の導入という点で、先ほど助教5年で再任は認めないという話があった。現在、放送大学や理研では、准教授、教授も任期制を普通にとっているが、人間文化研究機構は、助教だけで、助教授や教授では任期制は導入していないのか。

【石井専門委員】
 入っているところもあるし、入っていないところもあるが、助教は全部任期制である。教授、准教授で任期制の人もいる。例えば、地球環境学研究所では任期制である。

【森学術機関課長】
 組織については、今後の検討になっていくのかと思うが、柔軟な組織等の形成との関係でいくと、研究領域の1から4は、基本的には研究部門的なことを考えていて、5に関しては、どちらかというと、プロジェクト的ということか。

【石井専門委員】
 そうである。国際日本文化研究センターがそうなのだが、プロジェクトを立ち上げて、その間、例えば3年なら3年、年俸制で人を雇って、研究してもらう、そういう意味での流動性を持たせるということである。

【井上主査代理】
 ドクターコースについてだが、他の機関と同様に、3名程度の入学定員になるのか。

【石井専門委員】
 それはまだわからないが、他の機関でも大体そのくらいではある。

【井上主査代理】
 この委員会の初回や学術研究推進部会でも、国語研究者の若手が非常に少なくなったという話があったが、ドクターコースを設けて若手研究者の養成を行うことは、非常に有意義なことだと思うので、ぜひドクターコースを設けて、若手研究者養成にあたっていただきたいと思う。

【石井専門委員】
 ただ、その場合に、いわゆる大学設置・大学法人審議会での人事の選考があるので、マル合の問題が出てくる。

【井上主査代理】
 それは当然そうだと思う。ただ、国語でマル合を取っている人は、最近はともかく、50代以上ではほとんどなかったのではないか。
 要するに、大学設置・大学法人審議会の教授審査委員会における審査で、マル合を取らなければいけないということだと思う。
 前回、研究論文のことで話があり、従来国語研究所にいた研究員は、国語研究所という名のもとに、国語研究所で共同研究をしていた成果を発表していたということを聞いた。内部的に見れば、例えば、第1章はだれが担当したとか、第2章はだれが担当した、というようなところはわかっているはずなので、そこは研究成果として申請できるように、配慮が必要ではないかと思う。組織的な研究はやっていても、個人として研究は評価されないというのは、やはり少し不合理だと思うので、その点は、国語研究所のほうで十分内部で分担関係を精査し、ここの部分は、だれの研究成果としてこういう発表がなされたかというのは明示すべきだと思う。そういうことによって、教授審査にもそれを申請したらどうかと思う。

【飯野主査】
 また名称についてもいろいろ議論が戻るかとは思うが、これまでいただいた意見をもとにして、資料6にある論点に沿った形で、報告の素案をまとめている。既に委員の先生方にお送りしているので、一読していただいたと思う。それについて、意見などがあれば、ご議論いただきたい。
 資料4の「国語に関する学術研究の推進について」の報告の素案について、どの部分からでも結構だが、何か気づいた点があれば言っていただきたい。

【石井専門委員】
 研究所の名前とは別として、国語でなくてはだめか。名称の問題は行政の問題で、我々は関知しないが、あくまでも研究者コミュニティを大事にするという立場からすると、これを結構ですとは少し言いにくい感じである。
 また、文章内でときどき「日本語」という言い方も出てくるが、これはどういう理由か。整合性がないと思う。

【飯野主査】
 今のような、ここは整合性に欠けるとか、そういった意見や、これに肉づけをするという意味での意見もいただければ、ありがたい。

【中西委員】
 この報告書を見て、少し自然科学の分野と異質な感じがした。なぜこういうことが必要かという切実な必要性があまり伝わってこないというところは一番大きな感想である。
 また、具体的にどういうことというのが、例えば、理論的な研究を推進することを図っていくというのは、例えば具体的にどういう理論かとか、研究形態、方法についても、もう少し、素人でもイメージがわくような具体的なところが欲しいと思う。

【石井専門委員】
 「国語」、「日本語」という言い方について、例えば科研費の細目からは国語という言い方がなくなっている。科研日の細目から国語がなくなったのは、どういう理由か。

【森学術機関課長】
 科研費の分科細目が、言語学の後、国語学と書いてあるというところだと思うが、調べてみないといけないが、学会の名称変更にならっているのかもしれない。
 この報告書の「国語」に関しては、この委員会の名称は、もともと「国語に関する学術研究の推進」となっており、そういう観点から使用している。それから、今回、国語研究所の移管ということもあり、これまでの文化審議会等での議論等を踏まえてのことでもある。
 また、例えば、「○○研究」、「○○教育」、という場合、「日本語研究」や「日本語教育等」という形で使われているかと思うので、「○○研究」等というときには、大体「日本語研究」、「日本語教育」を使う形でつくったかと思っている。
 一方で、「国語」という言葉に込めている意味としては、学術研究の面からは、世界の中の日本語であるという話があったが、自国の文化を理解する中での国語の重要性というような、我が国の文化の基盤としての言語としての国語という観点が、もともとはあったと思う。それを外国人に理解してもらう場合には、「日本語」という言い方のほうが良いということはあるかと思うが、いずれにしても、英訳すると、どちらもJapaneseになっていることもあるので、外国人にとっての日本語の研究や日本語の理解というものは、その中に入れ込んでいかなければいけないということは考慮し、十分に強調しなければいけないことかと思っている。

【真田専門委員】
 日本語のことや方言のことを話すときに、やはり日本の場合は、どうしてもぬるま湯というか、その切実さを感じない。だが、多くの世界で、自分の国の母語というか、それはまさに命をかける闘いであると言える。そういう意味で、今回、例えば、「国語」を「日本語」と変える。世界の中の中国語、英語のはざまで、せめぎ合う中で日本語を出すことは大事なのではないか。ちょうど変わることになればというふうに、個人的には思う。
 国語と言えば、目を国内だけに向ける意図があると思う。外をなるべく見ないでおこうというところがあるので、そういう意味では、今回は一つの大事なエポックになってほしいと思っている。それは、特に外国人に対してということだけではなく、我々自身の心の問題のような気がする。日本だけを見ているのではないということである。

【石井専門委員】
 国語政策や国語の研究というのは、大事で、本当は国語政策研究所があってしかるべきである。大学共同利用機関にはなじまないということを言っているので今まで国語研究所がやってきたことに意味がないということを言っているわけでは全くない。国語政策というのは、研究しなくてはいけないが、それとこれとは違うということである。
 だから、本当は国語政策研究所というのが立ち上がればいいと思っている。

【真田専門委員】
 そういう意味で、公用語とか国家語とかということを本格的に考えることも必要だと思う。

【飯野主査】
 公用語の研究というのは、大学共同利用機関になじまないということか。

【真田専門委員】
 国語政策という意味で研究の対象にはなると思うが、我々自身の母語の問題を扱うときに、やはり日本語と言ったほうが良いと思う。国語というのは、その中で、日本の標準語をどうするかという問題であって、国家の言葉である。

【井上主査代理】
 国立教育政策研究所というのはあるが、独法の見直しで国語研究所を大学共同利用機関に移管するという閣議決定を受けた以上、国語研究所を大学共同利用機関として、研究者コミュニティの意見に基づいて、その研究領域や研究事業、あるいは組織・運営について、そういう方向に組織替えするということは、当然だと思う。その場合に、学術研究の観点から見て、国語研究所が今までやってきた政策的な研究が、その中に入るということはあり得ないということは、そのとおりである。
 ただ、そうした政策的な研究の必要があった場合に、委託研究や科研費の特定領域研究等で、それを受諾して国語研究所が研究することは可能だと思う。そういう学術研究の成果が、国語政策の研究に生かされるということはあってもいいと思うので、そうした研究が途切れるということでもないのではないか。

【石井専門委員】
 ただ、その場合、本当に国語の先生が考える受け皿が必要だと思う。それが国語研だったわけだが。

【井上主査代理】
 今の行政改革は天の声みたいに、ある日突然いろいろ機構を変えないといけないことがあるので、必ずしも理論的にいっているとも言い切れないが、その時々で時代の変化に適切に対応していかざるを得ないと思う。

【石井専門委員】
 この議論を、私の外国人の友人が非常に興味を持っているのだが、国語研究所は、「Japanese Language」なので、今の議論を英語に訳せない。つまり、どうも議論が内向きにならざるを得ない点で、やはり国際化の時代に反しているという気がしてならない。

【井上主査代理】
 国語研究所も、英語に訳せばそうなってしまう。

【石井専門委員】
 だから、その矛盾を、アメリカ人は、よく突いてくる。例えば、アジア経済研究所が、アフリカの研究やラテンアメリカの研究をやっている。そうすると、あれは、英語は「developing economy」だからやるのだと。しかし、アジア経済研究所だから、本当はおかしい。そういう問題があって、日本人は、その意味でオネストじゃないという言い方をされるのが、非常に不愉快に思う。

【井上主査代理】
 これは将来の課題だと思うが、当面は、やはり閣議決定を尊重せざるを得ないのではないかと思う。
 いずれにしても、報告書に書いてあるような方向でまとめざるを得ないのではないか。

【森学術機関課長】
 特に資料の5ページのあたりに、独立行政法人国語研究所で行っていた日本語教育事業の取り扱いについて記述してある部分があるが、これは、基本的には、新しい大学共同利用機関において、いろんな学術情報を収集等するので、そういったものをもとに、一定の貢献は行うことは考えられるけれど、基本的にはいろんな大学において日本語教育も行われているということがあり、その他、資料作成等については、別途検討していくことが必要ではないかということである。この部分についての意見を少しいただければと思う。

【中西委員】
 もう少し事務局のほうで書き込んでもらいたいと思うところが何カ所かあり、例えば、2ページの2の、国語に関する研究者の養成のところだが、2パラグラフ目から、「また、国語に関する学術研究は、自然科学と同じように、仮説を立て、これを検証し、法則を見付けて理論化するといった実証的な方向による科学であるにもかかわらず」というところが、ほかと比べて理解しにくいということがまず1点。
 それから、次の3ページの上から2行目だが、「今後、理論研究を推進することが」というところは、具体的にどういう理論かということをもう少しわかるようにしてほしいということ、3ページの(2)の最初の行に、「先に述べたとおり」とあるが、「国語に関する学術研究は、自然科学と同様に実証的な方法によって行われ得るものであり」というのも、もう少しイメージがわくように具体的な説明が必要だと思う。
 それから、4ページの一番上の行の終わりから、「さらに、全国の大学や研究者間のネットワークをより強固に」というところが何のネットワークかということも、具体的なことが伝わってこない。
 資料5も、最初の必要性というところを読むと、現象論の羅列が多い。人が少なくなってきたとか、テレビでこうだとか。そうではなく、もっと「なぜ必要か」という踏み込んだところ、直接的な必要性を書いてもらうと、理解しやすいのではないかと思う。
 それから、資料5の下のほうの「国語に関する学術研究の体制の在り方」だが、最初の丸で、「国語研究は、理工学に比べれば多くの公的資金は必要ないが、継続して研究できる『資金』と『場所』及び『人材』と『時間』が必要」と書いてあるが、そうすると、例えば、バーチャルな組織で始めてもいいのではないかという議論も出てくると思う。国際高等研究所もあるので、いろんな人が来て、いろんなことを議論して、これから何をしようかということも議論できる場があるわけで、そういうふうにも受け取られてしまうので、報告の素案のもとになる資料5なので、もう少しその書き方、まとめ方を工夫していただきたいと思う。

【飯野主査】
 今の中西委員が言われたことは、研究領域のイメージがわかないということと深くかかわっているかと思う。

【井上主査代理】
 先ほど、5ページの森課長が言われたところは、要するに、新しい大学共同利用機関ではなく、政策上の必要性の観点から、その実施主体、方法等について委託研究の推進なども含めて、別途検討を行うことが望ましいと書いてある。今までの議論でもそういうことだと思うので、実施主体を別にできれば、それが一番すっきりするのだが、簡単にそういう実施主体が新たに設けられるかというと、非常に難しく、その場合には委託研究でそういうことをやるということも含まれているとすれば、やむを得ないのではないか。

【松永研究調整官】
 中西委員から指摘いただいた点について、研究者の観点から何か補足をしていただけるとありがたい。

【真田専門委員】
 それぞれが言った意見を全部羅列しているから、そこに矛盾も出てくるのだろうと思うので、確かに難しいところである。科学的な研究、実証的と言っているのは、一般には、国語というのは、科学的でなくても心情で理解できる、という思い込みに対しての言い分だと思う。確かに、研究者はわかるが、まだ細かい具体的なものがないと、一般にはわかりにくいかとは思う。
 理論研究ということで言えば、欧米と比較して、日本は、データはたくさん集めるが、理論がないと随分言われる。仮説がないというか。本当はあるのだが、そこを言ってしまうと、出しゃばりという感じが文化としてあるので、控え目にしている。しかし、そうでなく、本当に日本からの理論というのを出そうという動きが出ていると思っている。
 先ほど言ったように、何か攻められて日本語が消えていくという環境がないので、その辺りが難しいところではないか。

【飯野主査】
 資料5は、ここで出された意見を並べてあるものなので、確かに、意見の積み重ねやそれに対してこういうことが言われたというところは、ここからは読めない。総合的なかかわりからの次への進展というところは、これでは読めない。確かに、このままを反映すると、矛盾したことを言っていることになるかもしれない。本日の意見を反映させて、これをもう一度推敲したものを、次の委員会でまた検討いただきたい。
 この報告骨子に関して、意見など、後から出てきた場合には、事務局までご連絡いただきたいと思う。

6.閉会

 次回以降の開催予定について、事務局より説明があり、本日の委員会は閉会となった。

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