学術研究推進部会 国語に関する学術研究の推進に関する委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成20年2月8日(金曜日) 17時~18時15分

2.場所

中央合同庁舎第7号館全省庁共用会議室1114

3.出席者

委員

 飯野主査、井上主査代理、中西委員
(専門委員)
 石井専門委員、上野専門委員、真田専門委員、鈴木専門委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、藤木大臣官房審議官(研究振興局担当)、伊藤振興企画課長、森学術機関課長、町田文化庁文化部国語課長、江崎企画官、松永研究調整官、門岡学術企画室長、袖山学術研究助成課企画室長、丸山学術機関課課長補佐、中野学術機関課専門官

4.開会

 事務局より科学技術・学術審議会学術分科会研究推進部会運営規則に基づき、学術研究推進部会長より飯野委員が主査として指名されたとの報告があった。
飯野主査から、井上委員が主査代理に指名され、併せて開会にあたり、主査より挨拶があった。
事務局から委員及び事務局の紹介があり、その後、森学術機関課長より委員会の開催にあたり、挨拶があった。
事務局より資料1に基づき、本委員会の設置趣旨について、また、続いて資料4に基づき、本委員会の運営規則の制定について説明があり、了承、決定された。
運営規則第2条、3条により、本委員会は、会議、会議資料、議事録について原則公開することとし、別途の取扱を必要とする案件が生じた場合には、改めて委員会に諮ることとされ、以後、会議は公開とされた。

5.議事

 まず、事務局より、資料5、6(文化審議会における文化芸術の振興に関する基本的な方針についての答申)及び資料7(科学技術・学術審議会学術分科会学術研究推進部会(第18回)における国語に関する学術研究の推進についての発表資料)、資料8(学術研究推進部会(第18回)における主な意見の概要)に基づき、国語に関する学術研究の現状について説明があった。
続いて、事務局より、資料9(「国語に関する学術研究の推進に関する委員会」における論点案)に基づき、本委員会における検討事項について説明があった。
また、事務局より、資料10に基づき、今後のスケジュールについて説明があった。
主査より、資料9の論点案に基づき、自由討議を行いたい旨の発言があった。自由討議の内容は以下の通り。

【井上主査代理】
 本日、午前中に国語研究所に行き、国語研究所の今まで果たしてきた学術研究、あるいは国語政策の推進に果たした役割等について聞いてきたが、その中で思ったのは、国語研究所がやはり国語、日本語の研究を通じて我が国の文化の向上に非常に大きな貢献をしてきたのではないかということである。
学術研究をする場合には、基盤研究というものが非常に重要だと思うが、昭和23年に創立されて以来60年間にわたって、大規模な調査研究によって日本語の実態を把握するという学術研究の基盤研究の蓄積というのは、いろいろ資料も拝見して、説明も受けたが、充実したものになっているのではないかと思った。
特に、社会言語学等といった点で社会に対する情報提供等をかなり従来行ってきており、日本語の今までの発展、特に方言の研究というのは全国2,600か所の定点観測のような実績もあり、また、敬語の今までの移りかわりといったものを見てみると、やはり学術研究を行う場合、歴史的に見て国語がどのように変遷をしてきたかという基礎研究が非常に重要だと思うので、そういった意味では、国語研究を行う場合の基盤研究というものをやはり今後も推進し、確立していくべきではないかと思っている。
それと、やはりそれに基づいて、従来は組織的な研究なので、最近大学では21世紀COEとかグローバルCOEで大学としての一つの組織的な研究がかなり推進されてきているが、今までの国語研究所の研究などを見ると、組織的研究が中心で、個人研究というのが、自分で論文を書いて学会に発表するというようなことが行われていたが、今後は組織的な研究とともに、大学共同利用機関として、個人的な研究を他の研究機関、大学研究機関の研究者との連携協力によってさらに推進するというような学術研究の推進が求められているようにも思う。
先般、学術研究推進部会で話を伺い、思ったことは、やはり国語研究も対象が非常に多様で、そういった対象についてそれぞれに研究を重ねている研究者がいる。そういった研究を今後どのように発展させるかという場合に、やはりそれらのセンター的機能を持った学術研究機関が、大学共同利用機関として必要だということである。
特に、国語はあらゆる学問が発達する場合に、それの基礎的な役割、基盤的な役割を果たしているので、国語自体が思考力、表現力、また、想像力を豊かにしていく上でも非常に重要な役割を果たしていると思うので、そういった観点の学術研究も推進する必要があると考えている。

【飯野主査】
 基盤ということでは、私は国語の研究者ではないが、私どもの大学は外国語、特に英語を教えることを伝統としてきたが、その基盤には必ず、国語の力をつけることがある。最近のグローバリゼーションの波の中で、一層、国語の力が大事であると認識している。
学術推進ということは、結局、その重要な国語教育の底辺を広げていく、すそ野を広げていくということにつながり、それがまた学術研究のレベルを高めていくというサイクルになると信じている。
この論点でいうと、必要性のところだけではなく、学術研究に求められる役割や、大学等における国語に関する学術研究の現状と課題、それに加えてその次の、国語に関する学術研究の特性、当面、特に重点を置いて推進する必要のある研究分野、あるいは新たに展開する必要のある研究形態・方法、そういうところまで踏み込んだ意見も伺えればと思う。

【中西委員】
 私は、国語研究所をよく存じていなかったのだが、今、話を伺って、非常に奥が深く、基礎研究をされていることがよく分かった。この前の学術研究推進部会にも意見が出ているように、言葉は文化そのものだと思うので、是非、基礎研究と言わず、今までの研究が生きるような形で残してもらいたい。
話を伺っていると、やはり人材育成ということが最後には出てくるが、共同利用ということを一部でも目指すようなことになると、やはり魅力あるところ、つまり研究分野が、基礎研究に加えて発展するような仕掛けを検討してもらいたいと思う。
研究に魅力があると、若い人は自然に集まってくる。いろいろな分野との融合も可能で、方言の話も非常におもしろいと思うので、基礎と応用も兼ね備えたようなものを検討してもらえればと思う。
この前の話でも、個人研究が多いという説明があったので、質問させていただくが、科学との融合はいろいろ考えられるが、共同研究の可能性というのはどういうふうに広がっていくのか。

【鈴木専門委員】
 一昨年のことだが、日本語学会で学校文法についてのシンポジウムがあり、パネラーの1人を務めたことがある。そこに出てきた他のパネラーの方は、大学の先生方で、文法研究をされている方々だったが、その場で話し合っていて感じたことは、大学のそれぞれの個人の研究者は、新しい日本語の文法についての知識や研究を次々に発表されており、いろいろな分野で魅力的なことがあるということである。
子供や生徒が聞いても興味を持ちそうなことも多くあるのだが、それが実際の学校で教えられる文法教育には全く反映されていない。戦時中に出た中等文法という国定教科書の内容がそのまま現在も生きている。教科書の会社等は、ともかく踏み出そうとせず、新しい見解がほとんど反映されていない。
そういうものは、むしろ日本語教育等の分野のほうには割とスムーズに流れていっており、日本語について「ああ、こういうところ、おもしろい」という感覚は、むしろ日本語教育で勉強している留学生等のほうが持っていて、日本人の学生は、「日本語というのは少しもおもしろくなくて、敬語の使い方が難しくて大変なものだ」といった感覚しか持っていないような場合もあり、実際に大学院の入試等で日本語についての質問を出すと、留学生のほうが非常によく日本語を客観的に、日本語の特徴をとらえていることがある。
そういうことがなぜ起こっているのかということを考えてみたが、それぞれの研究者の発想は非常におもしろくて、新しいことも色々言われているが、それぞれの立脚点はかなりばらばらで、実は根本においてはかなり違うところがある。
ところが、今は、そういうものが集約されないまま放っておかれているという感じがする。
現在でも、民間の方が中心になって、新しい文法研究の中で出てきた成果を、ある程度、共通して認識できるようにまとめる作業も行われているが、そういうものがもし、国立国語研究所等の手で、参照文法のような形で、日本語の文法の内容として多くの人に認められているというようなことが示されたりすれば、おそらく教科書や学校教育等にも、徐々に反映していくのではないか。
それによって、日本人の学生、生徒も、日本語というものがどういうものであるかということを、今よりずっと客観的にとらえられるようになってくる気がする。
今の国語研究所の行っている社会言語学、方言、コーパスといったこと、これは非常に重要な仕事で、私もいつもいろいろな影響を受けたり、助けられたりしているが、今、国語研究所では文法に関しては避けられているという気がする。それは、おそらくそれぞれの立脚点がばらばらで、共通してまとめていくことは不可能だというふうに心配しているからかもしれないが、もし新しい組織になったら、そういった文法研究等に関しても広く視野に入れて、多くの研究者が共同で認められるような内容のものを、敬語だけではなくて、全体にわたってつくっていくことができれば、いい影響があると考えている。

【真田専門委員】
 先ほど言われたように、昭和23年の暮れだったと思うが、日本語の国立の研究所、そこにはアメリカ進駐軍の要請も一部であったと思うが、国語の民主化や、国民の言語生活の改善という、そのための基礎的なデータを得る機関が必要だということで国語研究所が設立された。
言葉を言葉としてだけではなくて、社会と結びつける、言葉を国民の生活のなかで考えるという立場であり、それが最近の社会言語学という学問につながっている。そういう意味で研究所は日本社会言語学の生みの親であると思うし、日本語研究者のよりどころになっていると思う。また、方言研究でも、図書館は方言資料の全国を網羅するデータベースを収集し、その情報センターになっている。
私個人で言うと、もう四半世紀前になるが、研究所で、方言の全国地図を作る仕事をしていた。それは大学の研究室ではできないようなプロジェクトで、全国各地、各県ごとに地方研究員というのを設けて、委託しながら、全国の研究者を動員して、大規模な、国家規模の言語地図を作成してきたものである。そういう意味で、研究所は研究者のナショナルセンターとしての先導的な役割を果たしてきたと思う。
ただ、研究所の業務には二つがあって、その一つは政策の在り方のための研究である。純粋に日本語のバリエーションとその形成を追究するといった研究をやっていたが、それが政策にどう生かされるのか、ということをいつも問われて、そこで私自身はジレンマがあった。
方言の分布によって、標準語の成立基盤とか、標準語の広がり方を見るのだ、というふうに言っていたが、本当は、日本語の形成そのものを探りたいということがあった。純粋な基礎研究として特化する面と、応用的な政策に寄与するという面があった。
今回の話は共同利用機構への移管をめぐってのことだが、基礎的な研究をさらに特化させることには私は大賛成である。
ただ、一方で、第二言語としての日本語の習得、日本語を母語としない人々への日本語教育と、その基礎となる言語習得にかかわる研究の面で、日本語普及センターのようなものも将来は必要となってくるだろうと考えるので、それは今回の移管とは別にまた是非とも推進してもらいたいと思う。

【井上主査代理】
 先ほど言われた、教育に反映されていないという点について私も非常に気になって、本日、国語研究所の所長にも尋ねたのだが、やはり国語研究所は日本語教育はやっておらず、日本語の基盤研究をやっているということだった。
だから、そういう状況を提供して、あとは出版社や教科書会社などがそれを活用して、教科書なり出版に利用しているという話だった。
そういう場合に、例えば、日本語と英語の比較研究をする対照言語学等によって日本語の特徴、そして英語との違い、そういう研究というのは、特に英語が世界語になって、今度、小学校高学年、5、6年から学習指導要領改定で23年以降入ってくるというような時代なので、今後必要なのではないかと思う。
そして、先ほど言われたように、それが日本語教育という国民の言語生活に生かされていくと考える。最近はどちらかというと、どこでも役に立つものが評価されるという傾向にあるが、やはり特に国語学では密接に日常生活に国語を使っているわけだから、そういう仕組み、日本語教育基盤情報センターをもっと発展的に活躍の場を広げたらどうかと思っている。

【上野専門委員】
 国語研究所の関連で言うと、政策的な任務は所員がみんな受け持っていた面があり、それをこの後どう見ていくかというのが一つのテーマだと思うが、基礎的な研究ということに限って言った場合には、例えば方言部門は研究そのもので、しかも全国2,400か所を調べて分布を明らかにした。それはまさにチームでやった非常に大きな成果だと考える。
逆に欠けている面を考えたときに、国研の中では理論的な研究、歴史的な研究が足りないと思う。これもすぐに実用になるわけではないが、特に共同利用研究機関になるような場合には、是非とも必要な領域だと思う。応用というのは基礎がない限りできないが、基礎は必ずしも応用を前提にしなくてもできる。そこを分けて考えたいと思う。
だからといって応用は要らないとはもちろん思っていない。最終的にはやはり応用すべきだと思うが、あまり狭く応用だけを考えてしまうと、それに特化した研究になってしまって、その目的が変わってしまうと、もうあまり使えなくなってしまう。そういうものではない、しっかりした形のものをつくるという姿勢が必要ではないかと思う。

【石井専門委員】
 結論として、大学共同利用機関に移管するという一つの枠組みがあり、そうなると、大学共同利用というのは一体何なんだということになり、今の国語研究所がやっていることがいい悪いという問題とは全く関係なしに、大学共同利用機関として国語研究をするならば、やはり政策や応用以前の、極めて基礎的な研究ということにならざるを得ない。
大学共同利用機関の場合には、それが一つのセンターになって、各大学とネットワークを結んで共同研究をするというのが非常に大きな役割なので、その意味で政策の問題というのは、まず大学共同利用機関にはふさわしくないと言えるし、それから結果として応用されることはよいが、それを目指す研究は、ある種の建前上、やりにくいということが言えるのではないかと思う。

【井上主査代理】
 今、話があった点は、本委員会では、学術研究の推進をどうするかということが中心であることは間違いないので、その場合、今の実態として、国語研を中心とした国語研究の現状をやはり認識せざるを得ないのではないか。
そういう意味で、基礎研究としての学術研究は、国語にとっては必須のもので、国語の歴史的な変遷や、比較言語的な研究、対照言語学的な研究等、いろいろな意味で今までの成果を十分評価しながら、今後、学術研究で、その国語の学術研究のセンター的機能、大学共同利用機関としての役割を果たす場合に、従来の研究成果をさらに発展させるということが必要である。そういう意味で大学や研究機関の研究者との共同研究や研究交流という場としての学術研究機関というのが必要であると考えざるを得ない。
言語学的な意味では国語というものに特化して、我が国の国民全体の生活にかかわる母国語としての国語の研究をやる必要性は昭和23年に国語研究所ができたときに指摘されているので、そういう認識のもとに、やはり基盤研究と、さらにそれを発展させる研究を大学共同利用機関としての機能として十分評価し、今後の発展を考えていくという取り組みが学術研究機関として必要ではないかと思う。
政策的なものは、大学共同利用機関としては異質のものだという意見もあったが、国語の今までの研究実績、研究業績のデータベースがあるのは国語研究所ということから、そういう蓄積はやはり活用すべきではないかと思う。
それと、委託研究というのが、大学共同利用機関であっていいのではないか。その場合に、文化庁の国語政策について発展をする場合の委託研究としての大学共同利用機関の役割も、あえて否定する必要はないのではないかと思う。学術研究機関としての研究成果を評価して、研究を委託されるということはあってもいいのではないか。

【石井専門委員】
 国語研究所が悪いということではなく、むしろ非常に重要で、政策研究も必要だが、大学共同利用機関の趣旨とは違うということである。

【井上主査代理】
 本来は、大学共同利用機関は学術研究が主体であるというように意識改革が必要で、それに委託研究というものを加味されることは差し支えないのではないか。
人文社会科学振興に関する委員会の今までの報告を見れば分かるが、やはり人文社会系の研究は、自然科学のように大規模なハードがなくても、研究者の研究蓄積やデータベース等を活用すれば研究が推進できるという性格があると思う。
そういう意味では、データベースを学術研究機関や大学共同利用機関に構築し、それに研究者が、いつでもアクセスして、それを活用できるようにしていく等、それから国語の場合には大学共同利用機関のネットワークで絶えず研究情報の交流や、研究についてのお互いの情報交換等を行うといったことはできるとも思うので、大学共同利用機関に研究者が来て、一緒に研究するという通常の大学共同利用機関としての役割もあるが、ネットワーク型も、この場合には人文社会に共通した研究形態としてあり得るのではないか。

【石井専門委員】
 ネットワーク型の研究というのは非常に大事だと思うが、政策研究もかなり大事だと思うので、それを止めるというのは、少し違うのではないかと感じる。つまり、政策研究のための機関があってもいいのではないかと思う。

【徳永研究振興局長】
 例えば、アメリカの場合でも、自分で政策研究機関をつくっている場合もあるが、その政策研究機関の運営自体を大学に移管している場合もあり、大学の持っているアカデミックな研究機能に着目して、それに委託をするということが行われている。
自然科学の世界では、各省庁から委託を受けて研究をしているという比率が、少なくとも競争的資金の中では半分ぐらいになってきており、大まかに言えば、大学本来の固有のお金でやっている研究と、それから科研費でやっている研究と、委託研究でやっているお金が1対1対1と、3分の1ぐらいになっているようなところもある。
そういう自然科学で行われている状況を踏まえて、国全体として、研究資源あるいは財政的な問題、そういったことを考えていく上で、理想として学術研究機関と政策研究機関が別々に存立するというのもいいかもしれないが、優秀な学術研究機関があれば、それに対して、研究を委託するということもあってしかるべきではないか。

【石井専門委員】
 政策研究をかなり重要な課題にすると、言語学的に見たときにはやらなければいけない基礎研究がなおざりになって、そっちのほうに研究所全体が傾かざるを得なくなるという状況が、例えば国語研等の場合も見られている。問題はそこである。
委託研究という形である段階で受けるというのは構わないが、制度として政策研究もやるというふうにすると、組み立て方が問題となる。

【森学術機関課長】
 性格的、制度的には政策研究所と、学術研究機関でやっている政策課題研究の大きな違いは、政策研究所はそれを目的としているので、それをやらないといけない。
一方で大学や学術研究機関がやっている政策対応の研究というのは、その研究所がやるといって、それで受けてやっているので、その研究所がやりたくないと言えば、こちらが幾ら頼もうと言っても、ある意味でやれないということである。基本的な性格においてはそういうふうに変わるということだろう。

【徳永研究振興局長】
 基本的には、他の国立大学と全く同じように、中期計画ごとに教育研究の質の向上という評価があるが、そこで評価されるものは、まさに学術研究の質の向上度である。
それから、大学共同利用機関になれば、人事についても、機構を含めた運営委員会で外部の人が半分以上入って決めるわけで、そういうところではコミュニティの支持がない人事は行われない。大学共同利用機関の実績のバックボーンとなるのは、各関係コミュニティである。
その辺りの説明が十分でなかったかもしれないが、基本的に大学共同利用機関の場合、運営はすべて学外者が過半数を占める運営委員会で運営を行い、教員人事についてもすべてコミュニティが半分入って、決めているというのが、大学共同利用機関のルールであり、そうした心配は制度が担保するのではないかと思っている。

【石井専門委員】
 将来的には国語研究所をどうするかという問題になるが、その前に、国語に対する学術研究をどうするかということについて、専門の先生方から徹底的に議論してもらい、それを考えあわせたときに大学共同利用機関の機能として、どこがはみ出て、どこが入るのかということが重要である。
なるべく重なるところを多くしたいと思っているが、本日の会議については、国語に関する学術研究の推進をどうするかということを、専門の言語学の先生から伺い、この柱は今の国語研究所でいけるとか、これは無理だとか、そういう議論になるのではないかと思う。

【森学術機関課長】
 留学生は多くなったが、日本人の研究者が非常に少なくなっているというようなことも言われているが、その辺りは如何か。

【鈴木専門委員】
 大学院生はおそらく数年すると留学生の方が、東大などの国語研究室でも多くなるだろうと予想される。それはなぜかというと、留学生の場合は日本語を客観的な対象として研究しようと思って日本に来るので、日本語をただ習うとか上達しようと思って来る人も、だんだん研究の方へ進んでいくわけだが、日本人の場合は、国語ということに目覚めてくるというのは、かなり特殊な経路をとっているように思う。
留学生のように最初から積極的に国語研究をどうしてもという形で来るというのとは少し違うところがある。国語という研究をもう少し正面に据えたような教育とか、社会的な雰囲気みたいなものが出てくると違うのではないか。

【真田専門委員】
 確かに留学生が増えてきていることは事実である。ただ、留学生だから良くないとは思わない。日本人がそれに刺激を受け、影響されて勉強し始めているという面もある。
ただ、やはり現代日本語に限定されるということがあり、日本語の歴史的なところはやる人が非常に少なくなっていて、その辺りが大きな問題かという気はしている。

【飯野主査】
 将来との結びつきということは如何か。

【真田専門委員】
 世の中全体が、実用的な面での興味ばかりが先行していて、本質的な日本語を考えようとする態度が少ないようにも思う。

【上野専門委員】
 私は、言語学の方にいるので、来る学生はほとんど言葉には興味を持っているが、ただ、それが日本語とは必ずしも限らない。大学院生の中で、日本語を専攻する人は2割程度である。
ただ、先ほどの話を伺いながら少し思ったのは、もしかすると、国語という形でやっていると、新しい問題があるという意識がなかなか出てこないのかもしれないということである。
いずれにしても、こんなおもしろい問題があるということをどこかで教えるという視点が、高校か、あるいは大学に入ったばかりの段階で必要である。こんなおもしろい現象があるんだ、こんなにやることがある、わからないことがあってやればおもしろいんだということを教えることが、研究者養成の前提として欠かせないと考える。

【徳永研究振興局長】
 文部科学省の大学政策の中でも、総合研究大学院大学というものがあり、現在、すべての大学共同利用機関は総合研究大学院大学というものを構成し、その中での大学院の博士課程の専攻を担っている。
大学共同利用機関ということを想定したときは、総合研究大学院大学での教育機能ということについても、あわせて念頭に置いてご議論いただきたい。

6.閉会

 次回以降の開催予定について、資料10に基づき事務局より説明があった。
また審議の進行に際して、必要に応じ、メール等で各委員に意見を照会することがある旨、説明があった。

お問合せ先

研究振興局学術機関課