学術研究推進部会 国語に関する学術研究の推進に関する委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成20年3月21日(金曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

 飯野主査、井上主査代理、中西委員
(専門委員)
 石井専門委員、上野専門委員

文部科学省

 藤木大臣官房審議官(研究振興局担当)、森学術機関課長、町田文化庁文化部国語課長、江崎企画官、松永研究調整官、丸山学術機関課課長補佐、高木学術機関課課長補佐

4.開会

 第4回委員会の開会にあたり、主査より挨拶があった。また、前回(第3回)議事録案については来週中に、今回(第4回)の議事録案については3月中に委員に照会し、各委員の意見を踏まえ、主査の確認が取れた段階で公開する旨連絡があった。

5.議事

 事務局より、資料1に基づき、「報告の素案」からの修正点及び今後の報告(案)の取り扱いについて説明があった。その後、質疑応答が行われた。質疑応答の概要は以下のとおり。

【上野専門委員】
 私は、2回出られなかったので、流れがよくわかっていないところがあるが、「日本語」と「国語」の関係が気になる。「国語」を基本にしていて、日本語が我が国の国語であるというところに「日本語」という言葉が出てくるが、二重の構造のように読めてしまう。最初から日本語で通せばむしろすっきりする。少なくとも言語学の世界においては、国語よりも日本語を研究するというのが全く自然な言い方である。
 国語のほうがむしろ国家語という特殊な意味を帯びている。明治以降に近代国家として欧米と並んでいくために、日本の国家語、つまり、標準語を設定することが必要であるという意味で使われた用語で、それが教育の場面で国語という形で定着していったと私は見ている。
 だから、学校教育のことは別にして、少なくとも研究の立場から見ると、日本語という形で通して何の問題もないように私は思う。確かに「国語は長い歴史の中で形成されてきた」と言えばそうなのだが、国語という視点から歴史を見ると明治以降になってしまう。その点から言っても、日本語のほうが歴史としては古い。
 もともと、言語名というのは、実は内在的に呼ぶ名称は持っていない。我々は言語の内容から呼ぶ名称は持っておらず、国や地域や民族などの名前、といった外から与えるレッテルしか持ち得ない。それでどう呼ぶかでいろいろな問題が生じてくる。
 むしろ私は、国語は日本という国、あるいは韓国など一部の国において、社会との関連において意味を持つ社会言語学的な用語だと把握している。したがって、今回の研究所ということになってくると、日本語というほうが依然として私にとってはしっくりくる。
 前回の議論を踏まえていないので、もしかすると繰り返しになるのかもしれないが。

【森学術機関課長】
 事務局から、この報告のつくりについてご説明申し上げると、この委員会そのものが国語に関する学術研究の推進に関する委員会ということで始まっており、報告としてはずっと国語で法令等も通してきており、この委員会の名称もそういうことになっている。そこで単独では大体「国語」というような言葉を使っていて、それはイコール「日本語」のことであるということで、「国語」と「日本語」の関係のところは、このような理解で書いたわけである。それを踏まえて、学術研究の面でどういう取り扱いをするかということについては、例えば、何々研究というようなところは全部「日本語研究」と言っており、「国語研究」という言葉は使っていない。
 そういうことで、この大学共同利用機関の設置に当たっては、現在ある国立国語研究所を組織的には移管するということもあるので、そういった研究所全体の名称としてはそれを引き継ぎつつ、その中身についての組織整備の基本的な考え方のところの、5のところについては、現在の国語研究所でも内部の仕事を説明する際には、「国語」と「日本語」を両方使いつつ、「日本語」を使う部分も多くなっておられるようだが、そういった世界の中での位置づけというようなことを踏まえながら、日本語等の表現、あるいは日本語研究、日本語情報というような書きぶりになっている。そのような報告(案)になっているということである。

【上野専門委員】
 この委員会が国語に関するということは自明のことなので、それをどうこう言うではないが、ただ、おそらくこのこれからの研究所をどうするかの案を学会に提示したときに、異論が多く出てくるのではないか。なぜ国語なのかそれを説明しろと仮に言われたときに、非常に困ってしまうというのが率直な印象である。
 つまり、研究の上で差し支えないのであれば、国際的な交流で海外の人を呼ぶことを考えると、やはり日本語のほうがずっと良いと思う。フランスでも、どこでもいいのだが、「日本に行って国語の研究をしています」とは言えないはずである。

【井上主査代理】
 前回も確かに石井専門委員からもそういうお話があり、日本語というのが学術研究をする場合の分野としては適当だということは上野委員がおっしゃるとおりであり、日本語学会の方もそういうようなご意見だと思う。今回、更地に大学共同利用機関としての国語に関する学術研究機関をつくるならば、私はそれに大賛成だが、昨年12月24日の閣議決定が、独法の見直しの一環として国立国語研究所を大学共同利用機関に移管するとただ書いてあるだけなので、閣議決定の趣旨から言うと、国語研究所が日本語研究所に変わると、やはり行政的にまたいろいろな意見が出てくる可能性があり、やはり、研究所の名称は最終的には文部科学省が行政的に判断して政府内でそれを意志統一するということになると思うので、この際は、当面は国立国語研究所でやむを得ないのではないかということで前回お話ししたわけである。その場合に、英語翻訳の仕方は、ナショナル・ランゲージではなくて、ジャパニーズ・ランゲージでもいいのではないかと思う。別に英語訳まで規制するものではないと思うので。

【上野専門委員】
 訳すと、そうするしかなくなる。それであれば、むしろ最初から日本語という形で出すほうがいいのではないか。

【井上主査代理】
 ただ、これは国会決議で昭和23年にできているという経緯があって、やはりそういうことを考えると、今、政治的にいろいろな考え方があって、その辺を文科省として十分に行政的に説明できるかということである。行政的なものと、学術研究の分野とはちょっと違うものなので、60年の歴史と伝統と実績がある国語研究所を急に独法から大学共同利用機関法人に移管されるだけで名称を変えるというのは、やはり抵抗があるということは事実だと思う。

【石井専門委員】
 上野先生が私の言いたいことをみんな言ってくださったのであれだが、研究所の名称は、私は仕方がないと思っている。その理由は、今言われたように、これは学術と関係ない問題だからである。だが、「はじめに」以降の「国語は、長い歴史の中で形成されてきた我が国の文化の基盤を成す」、と言う部分は間違っている。国語と言われるようになったのは、明治以降だからである。だから、この中でもやはり「日本語」を使ったほうがいいんじゃないかなと思う。ただし、研究所の名称はもう仕方ないと思う。アジア経済研究所でラテンアメリカのことをやっているのは問題だという議論と同じで行政的な問題である。ただ、ここで「国語は長い歴史の中で形成されてきた」、という部分を言語学者が見たら、これは何だと言われるので、上野先生が専門委員として学会から随分突き上げられるのではないかと思う。

【森学術機関課長】
 これは文化審議会の答申の言葉そのまま使っているということもあり、また、国語に関する学術研究ということで始まっているので、それらを受けている部分は全部「国語」としているが、一方で、研究所の中身、研究そのものに関連するところでは、注意して「日本語研究」や、「日本語」という言葉も使っており、両方の言葉を報告の中では使わせていただいているところである。

【町田国語課長】
 現在も英語の名称はジャパニーズ・ランゲージを使っている。ただ、日本語の名称はあくまでも国語としている。

【森学術機関課長】
 日本文学のほうも、科研費の分科細目は日本文学になっているが、研究所の名称は依然として国文学研究資料館である。

【石井専門委員】
 私は、名称は仕方がないと思っている。ただ今のように言われるのは、言語学者とするとちょっとまずいなという感じはする。

【井上主査代理】
 7ページの新しい大学共同利用機関の組織整備の基本的考え方の中で、基本方針、あるいは研究領域、主要事業は日本語研究となっている。だから、そこは十分今の学会のご意見や、学術研究機関としての基本的性格はここに出ているから、よろしいのではないか。

【上野専門委員】
 受け入れ側の石井先生が仕方ないとおっしゃると、私としては対応が難しくなる。参考までに伺いたいのだが、今の国語研もこの名称で引き継ぎたいというような意向は持っているのか。

【町田国語課長】
 そこは必ずしも承知はしてない。

【井上主査代理】
 閣議決定で去年の12月24日に独立行政法人見直しの一環として大学共同利用機関に移管すると書いてあり、それは国立国語研究所はあずかり知らぬところである。大学共同利用機関に移管するという以上は何もなく、行政的には名称の問題については、変えるというところはどこもない。

【上野専門委員】
 内容が変わるのであれば、それを最もよくあらわす名称のほうがふさわしいのではないか。移管というのは、要するに、ただ所轄を変えるということになるのか。

【井上主査代理】
 一応、形式的に解釈ではそうなる。

【森学術機関課長】
 ただ、今回は大学共同利用機関法人にということであり、研究所の性格が変わってくるので、それにふさわしい形での中身を考える必要がある。ただ、基本的に財産とか、施設も全部引き継ぐ形が考えられるので、研究所としての外形的なもの、ある意味、同一性は持っているようなものとして来るという理解をしなければならないので、少なくとも名称等については同一のものでやっていくという形になるのだと思う。

【飯野主査】
 行政上の考え方ということで「国語」という言葉を使うとして、これが未来永劫「国語研究所」の名称のままではないということは考えられるのか。いずれ名称の再検討がなされることがあるかもしれないと考えていいのか。

【井上主査代理】
 これは、6ページのところに「当面、「国立国語研究所」を引き継ぐことが適当である」、となっている。移管した後、人間文化研究機構になって、中で名称は当然変えるべきだという意見が強まれば、時間差でおのずからそういう名称変更もあり得るのではないか。そこまで否定しているものではないと思う。

【飯野主査】
 他に修正すべき表現等はあるか。

【上野専門委員】
 1ページの3行目の「国語は、人文・社会科学、自然科学を問わず、様々な分野の」、この「様々な分野の」は必要なのか。つまり、こういう「様々な」というのは、一見範囲を広くとっているようでいて、実は限定している面がある。あまり関係ない分野もあるということを意味し得るケースがよくあるのだが、これをとって「学術研究の発展のためにも不可欠なものである」としてもいいのではないか。

【石井専門委員】
 その前の「人文・社会科学、自然科学を問わず」から「不可欠」までとってもいいのではないか。前に「論理的な思考などを支える、知的活動の基盤である」と書いてあるので。

【上野専門委員】
 「基盤で、学術研究の発展のためにも不可欠なものである」というふうに続ける。

【森学術機関課長】
 「知的活動の基盤」というのは、学術研究より、より広く、社会一般も含めての知的活動という意味合いを入れているものであり、「学術研究の発展のためにも」になっているというところなので、そうであれば、「知的活動の基盤であり、学術研究の発展のためにも不可欠なものである」ということだと思う。

【井上主査代理】
 5ページの真ん中辺、15行目に、「さらに、その機関は国内のみならず、海外の日本語研究者に対しても、研究の方法等に適切な方向性を示し、世界的な日本語研究の中核となることが期待される」と書いてあるが、これは、適切な方向性を示しということを書いてあるだけで、7ページの新しい大学共同利用機関の組織整備の基本的考え方では、「国内外の日本語研究者に開かれた協業の場として」と書いてあるので、やはり海外の日本語研究者にも開かれた学術研究機関として、また、開かれた学術研究機関として積極的に受け入れるということを書いた方がいいのではないか。石井専門委員からも、先般、20人ぐらい受け入れたらどうかというお話もあったので、そういう点で、何か受け入れについて書いておかないと、「研究の方法等に適切な方向性を示し」だけでは不十分ではないか。

【石井専門委員】
 示したら、向こうは、おれたちが考えるんだから示さなくていいなんて言われる可能性がある。

【上野専門委員】
 一方的にこちらから示すだけではなく、場合によってはそちらからも、というふうにしておかなければおかしい。

【井上主査代理】
 向こうからも、もちろん共同研究として。

【飯野主査】
 「開かれた協業の場として」ということに相当する文章をそこに加えるということでいいのではないか。

【飯野主査】
 2に関して、そこで挙げられている課題、課題の内容や表現、そのあたりに何か不適切なところはないか。あるいは、これらのほかにまだ課題のようなものはあるか。

【上野専門委員】
 2ページの1の「大学等に在籍する個々の研究者が、各々の興味関心に基づき行うものが多く」の次の「共同研究による」は要らないように思う。知見の共有にとって共同研究が唯一の方法と限定する必要はない。要するに、ここは知見の共有が行われにくいということだけが言われればいいことで、後でそのための1 つの方策として共同研究が必要であるというふうに打ち出したほうがいい。

【飯野主査】
 ここではそのほうが広がりがあるので、「共同研究による」を削除。

【上野専門委員】
 「学問の体系化が不十分」という部分について。細分化が進んでいることは間違いないが、しかし、それぞれの体系を目指していながら、その体系が違っていて話がかみ合わないというようなこともある。だから、必ずしも体系化が1本にまとまるという保証もそもそもないのではないか。

【飯野主査】
 今の指摘を生かして、後で文章を練るということでいいか。

【上野専門委員】
 学問の全体像が見えにくくなっているということは言えると思う。細分化して全体像が見えにくくなっているが、それが1つの体系の枠におさまるか、まとまるかどうかはそれぞれの考え方によるので、「細分化が進んで全体像が見えにくくなっている」というぐらいのほうがおさまるのではないか。

【飯野主査】
 ほかには何か、今のような指摘はあるか。

【上野専門委員】
 学生が少なくなっているという、2ページのところだが、「就職先が少ない」ことと、「知識や経験が将来活かされるかどうか不安であることなど」を繋ぐ論の運びはどうか。
 学生の不安は、確かに就職先が少ないということはそうなのだが、そもそも自分が一人前の研究者になれるかどうかもわからないからではないか。職につけるかどうかわからないだけではなくて、自分自身がほんとうにどうなるかわからないという不安がある。
 その意味で、「就職先が少なく、自分の将来像が見えにくい」は少しずれている気がする。

【飯野主査】
 「知識や経験を活かした将来像が見えにくい」ということか。

【上野専門委員】
 そういうことでいいのではないか。

【上野専門委員】
 3ページの「また、研究成果などの情報発信が積極的に行われておらず、学生にとって魅力ある学問となっていない」の部分に「必ずしも」を一言入れてほしい。そうじゃないと、我々が魅力があることを何もやっていないように見えるので。発信も行っているんだけれども、積極的ではないだけなのに合わせて、「必ずしも魅力ある」云々ぐらいにしてもらわないと立場がなくなる。

【飯野主査】
 ここ(3ページ)も「十分に体系化されず」という言葉が使われているが。

【上野専門委員】
 こちらのほうが、文脈のせいか先ほどより抵抗はない感じがする。成果をまとめて教育に活かすということなので。

【飯野主査】
 先ほどは学問の体系化で、これは成果が十分に体系化されていない。こちらのほうはすんなり受け入れられる気がする。

【上野専門委員】
 3について、(1)の中がどのようにつながるのかよく分からない。「国語に関しては、これまで、文字・表記、音声・音韻、方言等、多彩な分野にわたり、書籍や新聞等における書き言葉の収集や話し言葉の聴き取り調査など」の「など」はどこにかかるのか。

【松永研究調整官】
 「など」には2つあって、1つは、コーパスの構築と、もう1つが、継続的な把握、この2つにかかっている。

【上野専門委員】
 書き言葉の収集と、話し言葉の聴き取り調査というのはペアを成しているのではないか。

【飯野主査】
 これは、同格ではないのか。このままだと何かちょっと言葉が抜けていると思うが。「などによって集められた」言語資源でいいのではないか。

【上野専門委員】
 その点と、もう1つは、「書き言葉の収集と音声の聴き取り調査などによって集められた資源を基礎とした」は、「コーパス」にかかるのか。国語研が主にやっているコーパスは、書き言葉が中心だと思う。話し言葉も一部はやっているが。

【町田国語課長】
 話し言葉も一部はやっている。

【上野専門委員】
 ただ、話し言葉の聴き取り調査ではないのではないか。

【町田国語課長】
 コーパスでは確かにそうではない。

【上野専門委員】
 聴き取り調査というのは、方言調査などがその例だが、1つ1つの音声や単語から聞いていって、文法などの仕組みを明らかにしていくものをさすのが普通である。そういう記述研究はまさに聴き取り調査なのだが、国研でやっているコーパスの場合には、たしか学会発表を全部録音して、それを文字に起こして話し言葉コーパスという形にしているので、聴き取りなどは全然やっていないと思う。

【町田国語課長】
 定点観測みたいなことは聴き取り調査でやっている。

【上野専門委員】
 それはやっているが、ただ、それはコーパスとは呼ばないのではないか。

【町田国語課長】
 コーパスではない。

【上野専門委員】
 だから、先ほどの「などに基づく」としてしまうと、今度はまた後ろのほうがコーパスと「コーパスの構築や言葉の多様な使用実態の継続的な把握など」となり、二重の構造になっている。前に2つあって、それに「など」がついていて、後ろにまた2つ来て「など」がついていて、その間のつながりが非常にあいまいだ。だから、実態に合わせるとなると、クロスしながら読まないと読めないと思うが。

【飯野主査】
 ここはちょっと書き直していただいて、実態に合うかどうかを見てもらった方がいい。

【上野専門委員】
 次の段落で、言語資源の「分析や分析結果」と分ける必要があるのか。

【石井専門委員】
 分析結果だけでいいのではないか。

【上野専門委員】
 「普遍的な」というのも難しく、ここは解釈が分かれるかもしれない。
 自然科学的な普遍性とはちょっと違うのではないか。「言語資源の分析から法則を発見し、それをさらに検証する」だけでいいような気がする。

【飯野主査】
 ある種の法則を発見するということか。

【上野専門委員】
 例えば日本語である法則が発見されたとして、それとまったく同じものが必ず英語にもあるとは限らない。普遍的でなければ価値がないわけではない。だからこそ、対照研究のようなものが出てくる。

【上野専門委員】
 その次の段落の「現代の国語について」という言葉は必要か。「国語」にはこだわらないとして、必ずしも現代に限定する必要はない。地域的、社会的なものも、実は過去の言語でもある程度言える。『万葉集』にも方言差があって、東歌などは違っている。これは地域的な違いなので、必ずしも「現代の国語」に限定しなくてもいいと思う。

【石井専門委員】
 「国語が我が国の文化の基盤であることを踏まえ」と、またここで言う必要はあるか。前に二度ほど言っているのだが。

【上野専門委員】
 「国語がこれまでどのような歴史的変化を遂げてきたか」というふうに書いたほうがすっきりする。

【飯野主査】
 その次のパラグラフは、前回の鈴木委員からのご意見の中にあった言語習得研究を学際的研究の例として挙げられていたもので、それをこういう表現にしてあるが、よろしいか。

【上野専門委員】
 先ほど、どこかで「認知科学」を直したというお話だったが。

【松永研究調整官】
 4ページの(2)の、特に、新たに展開する必要のある研究形態・方法の最後の「なお」の段落で、ここで先ほどの言語情報処理研究というところに対応するところで情報工学と。また、言語習得で対応するところが認知科学という整理をさせていただいている。

【石井専門委員】
 その次の段落の「加えて、我が国の文化の基盤である」は要らないのではないか。「我が国の国語の特質と普遍性を」でいいのではないか。

【飯野主査】
 (2)の、特に、新たに展開する必要のある研究形態・方法は、ここはかなり訂正され新しくなっているが、いかがか。

【上野専門委員】
 3ページの(1)と(2)の関係は、どう読めばいいのか。(1)は、「当面、特に重点を置いて推進する必要のある研究分野」、(2)は、「特に、新たに展開する研究形態・方法」とあるが。

【飯野主査】
 それで共同研究とか、そういうテーマが出てきている。

【上野専門委員】
 「研究分野」と「研究形態」ということであるならば、その前についている言葉が違っているためにその関係が見えにくくなってしまっている。
 また、研究分野の中でも共同研究という研究形態が述べられている。そこで言語情報処理研究や言語習得研究が出てきていて、そして(2)の研究形態・方法の中でも情報工学や認知科学などの研究分野が出てきている。同じようなものが両方に入っている。

【飯野主査】
 少し整理しないといけないかもしれない。

【上野専門委員】
 言語情報処理研究とか言語習得研究は、研究分野として入れないといけないという考えなのか。
 うまい案が出てこないが、先ほどの言語情報処理研究と言語習得研究、このあたりを後ろのほうに回して括弧で入れる方がすっきりする気がする。

【飯野主査】
 それは、研究形態の方で整理できるかもしれない。

【上野専門委員】
 4ページの(2)の「なお」のところが、「共同研究の推進に際しては、新たな学際的研究の発展を視野に入れて推進することが重要である」とあり、「推進」に対して「推進する」というように、繰り返しが多い。「共同研究の推進に際しては、新たな学際的研究の発展を視野に入れて行うことが重要である」のほうがいいのではないか。また、「なお」も弱い。これをどの程度打ち出すかによるのだが。

【飯野主査】
 「なお」なしで、「共同研究の推進に際しては」で始まるのでいいか。

【上野専門委員】
 もし強く打ち出すのであれば、そちらのほうがいい。

【松永研究調整官】
 この部分は、先ほどの3ページの(1)の「さらに」という学際的なところの段落と合わせてもよろしいか。

【上野専門委員】
 一緒にするのであれば、「なお」をとってしまったほうがいいかもしれない。

【飯野主査】
 4に関してはいかがか。

【石井専門委員】
 4の(1)の1の「国語は」から「求められる」までは、前の章でも言っているので必要ないのではないか。
 要するに問題は、国語は個人が多いんだけれども、そうではなく、もっと共同研究をやるような体制が必要だということなので、あえて同じことを言わなくてもいいのではないか。

【飯野主査】
 世界的な中核的研究機関の観点を入れた部分、石井先生のご意見だったと思うが、こういう認識でよろしいか。5ページの真ん中あたり。

【石井専門委員】
 「その機関は国内のみならず、海外の日本語研究者に対しても」、「世界的に」はとてもいいと思うが、「日本語研究の中核となることが期待される」、「研究の方法等に適切な方向性を示し」という部分は要らないと思うが。

【上野専門委員】
 次の「他国の文化との比較対照」について、もちろんこれは非常におもしろい分野だが、どうなのか。「言語」をどこまでの範囲でとらえるかということになってくると思うが。

【森学術機関課長】
 大学共同利用機関なので、共同研究を進めていく場であるというふうに考えれば、すべての人が大学共同利用機関に専任でいなければいけないということではないので、共同研究を進める中での1つとしては、こういった文化も含めてやるということもあり得るのかもしれない。

【飯野主査】
 排除するものではないということか。

【森学術機関課長】
 一方で、日文研もあると言えばあるので、そのあたりについては、共同してやっていくということもあるかもしれない。それは研究所なり、先生方のお考えになると思う。

【上野専門委員】
 ここはいいとか悪いとかというよりも、どう考えるかの問題だと思う。ただ、私はこれを読んで、文化面が突出しているようでちょっと違和感を受けた。

【石井専門委員】
 これを生かすとしても、「国語が我が国の文化の基盤をなす」と、またここで言う必要はないのではないか。
 要するに、言語だけをとらえていたのに対して、文化まで広げようという、そういう発想だと思うのだが。

【上野専門委員】
 もしそういうことを言うのであれば、言語の研究のためには、狭く言語だけを見るのではなくて、広く文化を見る必要があるというぐらいでいいのではないか。こういうふうに文化も比べて海外に積極的に発信すると言ってしまうと、これは研究所の本来の使命からちょっと超えてしまうような感じがする。

【飯野主査】

2のほうは、いかがか。ここはちょっと先ほどの名称のところにも出てくるわけだが。

【石井専門委員】
 名称もそうなのだが、ちょっとわからないのは、これはだれが求めていると理解するのか。人間文化研究機構においては、構築することが求められている。これは閣議決定で決められたことである。そうすると、「同研究所を大学共同利用機関に改組・転換することが適当である」ということの主語はどうなるのか。

【森学術機関課長】
 この報告というか、この審議会としてということになる。

【石井専門委員】
 審議会が閣議決定を受けて、適当であるという判断を下したということか。

【森学術機関課長】
 閣議決定も踏まえてということである。結局、閣議決定では、人間文化研究機構にということは書いていない。

【石井専門委員】
 だから、人間文化研究機構と特定するのは、委員会が特定するということか。

【森学術機関課長】
 そういうことである。

【飯野主査】
 (2)の大学の役割と大学共同利用機関との連携。これにも何かつけ加えることや修正すべき表現はないか。

【石井専門委員】
 これも最初の話と内容的に同じになっているような感じがする。

【上野専門委員】
 内容的に同じような言葉になっている。

【飯野主査】
 このあたりも整理が必要。

【上野専門委員】
 その次の、「大学・大学共同利用機関とが」は「大学と大学共同利用機関とが」ではないか。

【上野専門委員】
 6ページの「また」の段落が随分長くて、すっと頭に入らない。国語研は、「大規模な調査研究に関する経験と成果とを蓄積している」。これをさらに活かす観点から、「共同利用機関に改組・転換することが適当である」。そこまではよくわかるが、その後は「人間文化研究機構においては」と論が飛んでいる。さらにそれが「求められる」とつながってしまうと、何だかわからないうちにそこに決まったんだなと思わされてしまうので、何か言葉が必要なのではないか。

【石井専門委員】
 「人間文化研究機構においては」というのは、ちょっとつながらない。

【上野専門委員】
 かつ、「その際」以降については、これは名称の話なので、段落を変えたほうがいい。

【森学術機関課長】
 5ページで、まず大学共同利用機関は、人間文化研究機構のもとにつくってくださいということを書いていて、それで大学共同利用機関をつくる際には、国語研究所の改組・転換が適当ですと。その次に書いてある「人間文化研究機構においては」というのは、人間文化研究機構のもとに大学共同利用機関をつくるので、その国語研究所を大学共同利用機関に改組・転換していくものの運営体制や研究組織というのは、人間文化研究機構において具体的には構築してくださいと、そういう意味合いとなっている。その役割というのは、国ではなくて、人間文化研究機構が主体となってやってほしいと、それを言っているのだが、表現としてはそれがわかりやすいかどうかということである。

【上野専門委員】
 今説明を受けてわかったが、これをすっと読んだだけでは頭に入りにくいように思う。国語研を人間文化研究機構に、しかるべき形で新しい組織として構築しなければいけないと言って、そしてその際の名称は国立国語研究所を引き継ぐ、という流れだとなると、やはり「適当である」の後で段落を分けて、ちょっと言葉を補ったほうがいいのではないか。

【飯野主査】
 パラグラフが変わって、3つになった方がいいのではないか。

【上野専門委員】
 「なお」というところがあるが、ここの趣旨としては、日本語教育関係は別にするということになるのか。

【森学術機関課長】
 基本的には、そういう考えである。ただ、国語とか日本語に関する研究を行い、しかも情報がいろいろ収集されるので、そういったもので日本語教育に貢献できるのではないかと。そういう意味では言っていいのではないかということである。
 他方また、大学でかなり研究されているので、そのように大学で行われているのであれば、大学を中心に考えていくということもあるのではないかということである。
 基本的に主たる目的としては日本語教育というものを正面から掲げるものではないということである。ただ、全く無関係というわけではないけれども、今後、研究成果は生かせないのではないかということである。

【飯野主査】
 4に関しては、石井先生からご報告いただいたものがここにほぼ書いてあるが、いかがか。

【石井専門委員】
 (2)の最初の3行は、要らないような気がする。「国語は日本文化の基盤である」というのがまた出てくるので。
 それから、その次の3行も、要らないのではないかという感じはする。大学共同利用機関というのは、大学と協力するというのは前提なので。
 研究者の養成については、大学共同利用機関は総研大に加盟しているので、研究者の養成をしているわけである。だから、この最初の6行は要らないんじゃないかなという感じはする。

【森学術機関課長】
 次の3行については、私ども関係者にとっては自明なのだが、今まで大学共同利用機関ではなかったものから、大学共同利用機関をつくった場合、その研究所は、大学と当然一体になってやるものだというようなことを強調したいということで入れてあるわけである。通常の研究所だと、研究所が独立してやるということを想定するものなので。

【石井専門委員】
 大学附置研なんかの場合は当然そうだと思う。大学共同利用機関というのは、そもそも大学と共同することを目的としてつくられた組織というふうに我々は理解しているのだが。

【森学術機関課長】
 こちらとしては、その点を改めて明示したいという思いである。
 今までは国語研だったものが、大学共同利用機関となったからには、大学と一体となってやってもらわなければならないと、そういう意味合いでもある。

【上野専門委員】
 石井先生にとっては自明のことだろうが、これはあってもいいのではないかと思う。

【飯野主査】
 ただ、「このような」となっている出だしだけは少し考えないといけない。

【石井専門委員】
 そのパラグラフの7ページの一番上のところの「さらに」以下は必要なのか。「自然科学系や教員養成系の学部等を含め、大学教育全般に活かされることが求められる」というのは、これはどうなのか。

【上野専門委員】
 この6ページの(2)自体が、そもそもどこに向かってのメッセージなのか。研究をそれぞれの大学でまずきちんとしなさい。さらにその研究を進めるためには、新しくできる大学共同利用機関を使って一層それを進めなさい。そして、進めたその成果を各大学において教育に生かしなさいという、そういう読みでいいのか。

【飯野主査】
 学者や大学院生などを育てるためにもということが含まれている。

【石井専門委員】
 これは教育じゃなくて、養成するのは日本語の研究者である。

【上野専門委員】
 研究者の養成教育ということか。
 そうすると、また違う話で、一般的な教育の場ではないということになる。あくまでも日本語を研究する研究者を養成するということだから、自然科学云々は違うことになってしまう。その意味では、7ページの最後の2行は、ないほうがいいのかもしれない。

【松永研究調整官】
 ここの2行は、日本語研究者の養成ということに限らず、先ほどから出ている国語が知的活動の基盤であるということから、すべての分野で研究者の養成の基盤になるということと、また、学校教育にも生かされていくことが重要であるといったようなご意見があったので、そこまで含めて自然科学系あるいは教員養成系というものをここに入れさせていただいたということである。

【上野専門委員】
 これは4ページの4節、(1)と(2)に関係していて、(1)が大学共同利用機関の必要性、(2)が大学の役割と大学共同利用機関との連携。今おっしゃった教育というのは、この大学の役割の一部ということになるということか。
 全体的に、この章立ての構造がよく見えてこない。

【飯野主査】
 ここは例えば、大学共同利用機関と大学との連携、そして大学の役割ということになる。

【上野専門委員】
 この2のタイトルがわかりにくい。

【飯野主査】
 先に大学共同利用機関と大学の連携というのが出てくると、大学共同利用機関に関しての説明があり、そして、大学共同利用機関と大学との関係となる。そして、そこから大学の役割ということになる。

【上野専門委員】
 その中で大学の役割として教育があるということであれば、つながっていくと思う。

【飯野主査】
 つながりとしてはそうなるので、そういうふうに整理をしてみたほうがいいと思う。
 最後に、5の大学共同利用機関の組織整備の基本的考え方、ここに関して何かご意見はあるか。

【井上主査代理】
 ここは、石井先生のところで、研究者コミュニティの専門家がこういう基本的な考え方をおまとめいただいたので、これでよろしいのではないか。

【上野専門委員】
 8ページの点(、)の打ち方がちょっと気になる。
 8ページの1は「研究者コミュニティの意見を基礎とした運営」ではないか。点がないほうがいい。
 また、審議をするのは運営会議であって、その結果を尊重するのは大学共同利用機関ということであれば、「運営会議において」の後の点もないほうがいい。「運営会議において審議し」、そこまでで1つのまとまりで、その結果を尊重するのは主語が別なので、点はないほうが明確になる。

【上野専門委員】
 7ページのところに戻って、研究領域については、この括弧に具体的なものが入ったということか。

【石井専門委員】
 そのとおりである。

【上野専門委員】
 石井先生のところで議論をしたときの経緯を思い起こしてみると、理論研究を提案した一番大きなねらいは、やはり文法にあったはずである。世界的に見ても文法理論が大きな位置を占める。次いで意味や音韻となると思う。理論は、文字論も含めてすべての分野にあるが、一般に言うときには、文法が主である。そうすると、このように全部並べてしまうと、提案者の意図からずれるのではないかという心配はある。

【石井専門委員】
 これは最初は「理論・構造」としていたが、具体的にイメージが沸かないという話があったので、これを入れたわけだが。

【上野専門委員】
 もちろん文字論にも理論が必要だし、まさに日本語などは世界をリードする文字理論を立てるのにふさわしい言語だが、ただ、もし全部並べるとしたら、文法を先に持ってくる方がいいのではないか。文字・表記が先頭に来るこの順番には、違和感がある。

【飯野主査】
 文法を前に持ってくるとして、ほかの順序はこれでよろしいか。

【上野専門委員】
 文法はトップじゃないといけないと思う。それから、語彙・意味、音声・音韻。少なくとも文字・表記と文法は入れかえた方がいいのではないか。

【飯野主査】
 文字・表記が最後になるわけか。

【上野専門委員】
 そうである。

【中西委員】
 これは質問だが、研究領域で1の理論・構造は、2、3、4の基礎にもなるかもしれないが、日本語そのものと考えると、2番と3番は、どう変わってきたかが問題だと思う。そうすると、一般の人にとっては、2番と3番はその変遷ということで一くくりになると思うが、前のほうに出てきた、他の言語との比較研究は1番や、2、3に入ってしまうのか。それから、4番目のデータベースの構築というのは、どちらかというと研究よりもサポート的なものか。

【石井専門委員】
 データベースの構築は言語資源研究に入る。それは資源をまず集めることから始まるわけである。

【中西委員】
 資料を集めることから始まるということであれば、それは、1、2、3を行うための支援・サポート、つまり比較研究の対象になるのかと思うのだが。

【上野専門委員】
 確かにそういう面はある。ただ、同時に、こういうコーパスをつくるときに、やはりその先の展望がない人がつくったコーパスは非常に使いにくい。物の分かった人がつくらないと、できたけれども使い勝手が悪いとか、役に立たないということがあるので、そこは両方にまたがっていると言ったほうがいいのではないかと思う。

【中西委員】
 主要事業のところも、資料・文献の収集、整理、提供と、研究を並べておいていいのか。サービス的なところと研究という気がしたのだが。

【上野専門委員】
 少なくとも順番が変だ。資料・文献の収集、整理、提供と研究、仮に分けるにしても、そうしないとおかしい。

【石井専門委員】
 これは順番がおかしい。収集、整理、提供、研究である。

【飯野主査】
 対照言語学のことに関しては、こういう領域、プロジェクト研究が5に入っていたのだが、それを上の、「これらの領域を超えた学際的研究や」という部分にそれを含めたということである。

【上野専門委員】
 あと、4ページの終わりから5ページのあたりが、同じようなことを言っているような感じがする。「我が国における国語に関する学術研究においては、全国の大学等に在籍する研究者個人による研究成果が、研究者コミュニティ全体に共有されにくく、また、研究者が多数の大学に散在していることもあり、研究に必要な学術資料等も全国の国公私立大学に広く散在している」、1つの文の中に同じ単語が繰り返し出てくるのが多い。これは読んでいて、流れがかえってよどんでしまう。

【飯野主査】
 そこのあたりの文章をちょっと練り直してということか。

【上野専門委員】
 その辺を少し練っていただけたらと思う。全体に繰り返しが多いという感じを読んでいて受ける。それから、「何々が求められる、期待される、必要である」という表現も何度も出てくる。

【飯野主査】
 きょういただいた貴重なご意見等を踏まえて、文面を修正し、この委員会としての報告(案)として、パブリックコメントを実施することにしたい。
 修正については、主査であります私にご一任いただきたいと思うが、よろしいか。

(「はい」の声あり)

 その後、事務局より、パブリックコメントの流れ等について説明があった。

6.閉会

 今回が委員会の最終回にあたるため、閉会にあたり藤木大臣官房審議官より、挨拶があった。

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