研究環境基盤部会 学術研究の推進体制に関する作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成19年1月18日(木曜日) 10時~12時

2.場所

学術総合センター 中会議場3-4

3.出席者

委員

 飯吉主査、白井主査代理、土居委員
(専門委員)
 石委員、稲永委員、川合委員、古在委員、塚本委員、中村委員、西岡委員、松田委員、松本委員、山本委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、川上振興企画課長、森学術機関課長、小桐間研究調整官、門岡学術企画室長、柴崎学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

(1)国立大学附置研究所及び全国共同利用研究施設の現状と課題

 事務局より資料2~4に基づく説明、松本委員から資料5に基づく報告、国立大学附置全国共同利用研究所・研究センター協議会近藤会長から資料6に基づく報告があり、その後質疑応答が行われた。

【委員、専門委員】
 大変勉強になった。事務局から、それから2人の先生から現状のご説明があって、そこで問題は、どこに問題があって、どこにこれから検討しなければいけない課題があるかというのがだんだんわかりにくくなってきたというのが率直な印象である。問題がなければ、こんな作業部会なんかつくる必要ないので。
 そこで、近藤先生の最後のご提案になって、ああ、やっぱりこういうところが問題なんだということは一部わかったつもりだが、全体的にいうと、やっぱり財政支援をしっかりしてくれという、予算とか資金のほうに話が行ってしまうのか、それとも、今ある全国共同利用にしても附置研にしても、その辺の構造的な問題があって、これを今後どうするかというような視点がないと、僕は文系の人間だからどうもよく先行きがわからない。これは事務局がよく言っている話かもしれないが、何か新しい仕掛けをつくりたいということなんだけれど、現状では問題がなかったらつくる必要ないのではないか。特に京大なんて、うまくいっているなと思って見ていて、どこが問題なのかなと思って聞いていたんだけど。
 なので、私の感想まじりの質問は、事務局がご説明いただいて、淡々とご説明いただいたけれど、事務局の目から見て、どこに問題があるのかという点がもしおありなら言っていただきたいし、それから京大と東工大のほうでも、予算面以外の話で、近藤先生の中で、何か国立大学法人と全国利用共同の附置研究所・研究センターの調整機能が何か不十分だというようなお話があって、そこはそうかなという気もするが、さらにここには私も含めて門外漢の人が多分いるんだろうと思いますが、何が問題かということを、もっとクリアにしていっていただきたい。
 ただ、まだ2回目なので、そんな早とちりで何か言うこともないかなと思いつつ、そういう印象を持ったということを、質問まじりにさせていただく。

【委員、専門委員】
 共同利用研の所属ではないけれど、そういうところをよく利用する立場から、ちょっと懸念を申し上げる。多分、最後に近藤先生がおっしゃったところが一番のポイントだと思うけれど、国立大学が法人化して、大学の主導権で大学の中を全部運営するという方針で、今どんどん集中的な運営に移行しているところだと思う。大学によってそのスピードは違うが、そこで出てきた問題が附置研、特に共同利用の実態を持つ附属の研究所である。これは、大学の中の論理というのと、それからすべての科学コミュニティーを考えたときのあり方というのとがだんだんずれてきているケースが出てきている。
 具体的に言うと、今は資金面で、一番最初にまず障害があらわれた。何かというと、例えば附置研の予算を申請するにしても、大学の中の順位づけを通してすべて出てくるので、大学としての優先順位と、それから科学を振興するという意味での附置研究所のあり方に少しずつすれ違いが出ており、研究予算をとるのが厳しくなっているところが出てきている。
 こうやって考えていくと、近藤先生の説明の最後の特区的な考え方が行き着く最高のものかどうかはわからないけれど、何らかの形で、法人の枠を越えたプライオリティーを表明する場所が必要かなということを、研究コミュニティーの一員としては強く感じるようになっているので、今が大学の基本的な考え方をちょうど考え直す時期であるとすれば、この時期に新たな制度の設置を検討するというのは適切ではないかと思う。

【委員、専門委員】
 特に共同利用研は学外のコミュニティーとのサポートとか支援があってできてきているところを、法人だけでいろんなことを決められると、当然そこにミスマッチが起きてくるということであろうかと思う。ここは非常に大きな問題だと思う。

【委員、専門委員】
 今のご意見にややフォローするような感じになるが、今お話をお伺いしていて、疑問に思っていたことが2つある。一つ一つの研究所の研究の内容について、どういうぐあいに把握して、それが必要になっているかということが、どれほど皆さん考えてやっておられるのか。1つは、聞いてみると、組織の論理のほうが先に来ているかなという感じがあり、研究の内容が必要だということの検討をどこまで大きく考えられたのかなという疑問がある。
 もう1つは、こういった形態がどうして必要なんだろうかという疑問。日本全体における科学技術の効率的な推進、研究力の充実において、こういった形態がどういう意味を持っているのかということについてのご発言があまりなく、おっしゃったのは、多様性であるとか、大学の自治、独立ということがすべてこういう形でやっていくといいのだという話だったと感じた。
 そういうことで、2つの大きな質問というか、あるけれども、1つは、現代社会における科学の何をやるべきかという話と、それをどう組み立てていくかという話が1つは大きくあるかと思う。そういう面から見て、先ほどの例えば生存圏の話であるとか、それからエコトピア科学研究所の話がまた名古屋大学にあったりいろいろして、いわゆる持続性科学といったようなものが例えば東大にできたりして、科学技術をどう社会に向けてきちんと組み立てていくかという観点が非常に必要かと思う。
 そういう面から見ると、きょうの松本先生のお話の中でも、木質科学研究所と宙空電波科学研究センターを再編・統合して、生存圏研究所を作られたとあったが、そういうときに、そういう目的と実態がどうかかわっているんだろうかと。例えば、そういう目的に合わせて、どれだけの人員の入れかえがあったんだろうかというようなところについて、ちょっとお伺いしたいなというぐあいに思っている。それが第1点。
 それから、第2点が、これはむしろ近藤先生の一番最後のスライドと関係するわけだが、先ほど私が申し上げた効率という観点から、全体の文科省における方針と、それからもう1つの大きな流れ、つまり、従来、省庁における研究機関というのはややその省庁のことだけやっていればいいという時代が前あったわけだが、これもまた独立行政法人ということで独自に活動し始め、かつ旧科学技術庁関係の研究所に非常に力を持っているところもある。例えば、防災の関係だとか、海洋開発の関係等々についても、それぞれの研究やそれぞれにいい仕事をなさっておられる。こういう中で、この2つのミックスをどういう考え方で今後構築していくか。その中において、この附置研究所はどういう意味を持っているのかといった論議が要るのではないか。

【報告者】
 私のプレゼンテーションがうまくなかったために、誤解されたところもあろうかと思うので、今の各委員のご質問に関係することを申し上げたい。質問に直接答える前に、基本的な考え方を申し上げたい。
 大学とは何ぞやという定義が最も重要であり、新しい教育基本法に教育、研究、社会貢献という三つの目的が明確に書きこまれた。問題はどこにあるのかとの、ご質問があったが、問題は、今まで研究所の位置づけは学校教育法にしか書かれていなくて、しかも研究所を置くことができるとしか書かれていなかった点にある。大学というのは、教員はほとんど、教育も懸命にやっておられるが、本心は研究がしたい。研究にどうしても傾いていくから、あえて大学教育は重要だということを野依先生も強調されている。しかし研究が重要であるということが教育基本法に明確に書かれたということは、大変大きな進展だと私どもは考えている。
 そういった意味で、大学とは何をするところかというと、もちろん人材育成が一番大きな要求であることは間違いないが、講義をして学生を押し出せばいいというものでは決してない。そのためには、研究が大変重要であるが研究面で何が問題かというと、附置研究所は大学に設置してもいいというような表現しかされておらず、非常に消極的であると思っている。だから、研究所の意義をここで見直すとすれば、その大きな貢献度を社会に向けてちゃんと発言できるような制度上の存在にすべきと思っている。つまり、財政的支援が必要とだけ言っているのではなくて、京都大学の中においても、組織上、研究所、研究施設の確固たる基盤というものが大変重要である。
 現在のところ、法律の改正があり、大学附置研究所は中期目標、中期計画の中の別表という形で書かれている。研究センターは独自に活躍してよろしいという観点で別表にも書かれていない。一般の附置研の別表記載が仮に除かれるとすると、大学の自由裁量権で自由にできるという議論は理解ができるが、一方、その組織的な基盤はどんどん弱くなる。学内で研究科、研究所という組織が存在する限り、その研究的な責任の分担ということははっきりしており、大学院、研究科は教育・研究に、研究所は、研究・教育に軸足の置いている。いずれにしても、研究科、研究所が等しく重要であるということは、大学全体として考えていかなければならないと考えている。
 そういう意味で、別表に書かれているということは大変重みがあって、それは是非残していただきたいと私どもは思っているし、もう一歩踏み込んで、先ほど委員からご指摘があったように、研究の基盤組織というものの強化がとても重要である。その場合に、大学は1つの法人として、組織防衛のためにそういうことを言うのではなくて、研究活動は、全国はもちろんのこと、全世界、全人類にとって重要なアクションだということを認識しなければならない。
 組織という箱いったん作ると、人間の顔の見えない箱そのものが独自性を主張する。大学の自治というものが言われて久しく、、京都大学では、学部の自治、部局の自治ということが根付いている。どこにも法制的には書かれていないがそれぞれの組織はかなり固い。一番重要なのは、研究者個々人の自学自習というか、自主独立性ということと、保障しなければならない考えているが、伝統的に部局の自治という概念があり、組織の硬直化が障害となる事柄についてはそれを乗り越える必要があろうかと思っている。インキュベーティブな相互間の融合、連携、再組織化のモティベーションのために、小さな研究センターからスタートして、研究所あるいは全国共同利用、翻って大学共同利用機関というふうに発展してきた。従って今回の見直しに際し、そのような実態を制度的に、組織的にきっちりしていただきたいということが要望の一部である。
 財政的な問題については、昨今は競争的資金が増え、研究所・研究センターも多く外部資金を獲得している。また装置についても、大型装置はほとんど附置研に集中していて、学内の他部局の人たちにもそれを有効利用していただいている。学外、あるいは産業界からも利用されているという事実もある。問題は、財政上のみならず、組織的にきっちりしたものと認知されるような方向で努力をしてほしいというのが、先ほど近藤先生が言われたことと一致する点である。
 それから、生存圏研究所のことは、人員の入れかえがあったかというご質問に関して一言申し上げたい。大学の中で教員を解雇するというのは、法人化して一、二年ではまだ大変難しい。まず、共通目的に向けた研究目的意識を持ってもらうということが一番大きな努力した点で、2年間、構成員全員で、1回5時間にわたる会議を33回やった。そういうことを積み重ねた上で、新しい研究領域に向けて従来の研究組織の箱に納まるのではなく、新しい研究部局を作りましょうという意識が生まれた。新しく採用する人は新しい分野に見合うような人を選びましょうという合意のもとに、人事も進めている。そういう意味で、全く新しい研究所として認めていただいたと思っている。研究所の社会的ニーズとして、持続可能な社会を実現するという観点の研究者を集め、今後も適切な研究者相互間の交流を進めながらやってまいるというのが現状である。
 私の用意した資料の中に「附置研究所と全国共同利用の研究施設のあり方」があるはずだが、その中に話の内容がまとめてある。この中で3点だけ申し上げたいと思う。
 2ページ目の中ほどちょっと下に5というのがあるが、これがご質問の中の大学附置研究所の非常に大きな役割に関して述べている。これは私ども大学の中だけで限ることではなく、一般に大学においては教育・研究の両方が重要であるということが書いてある。研究所が総合大学に附置された場合には、「若い研究者を第一線の研究現場を通して育成できる」という長所がある。これは大変重要で、研究というものは先行きが見えるわけではなくて、見えているものを追求するのは単なる作業に過ぎないので、見えている部分の追求だけではないということを、現場の学生に体験させて、全く新しい研究分野を立ち上げるという能力を養成することが重要です。そのためには、異分野間の複合型研究分野というのが大変有効で、いろんな研究者やいろんなバックグラウンドを持つ人間が集まってきて、そこで激しい議論をしていただく。これが大変重要で、これは学内外を問わずやることが重要である。
 例えば、京都大学を例にすると、宇治にある4つの理系研究所と本部にある文系の東南アジア研究所が協力して、生存基盤科学研究ユニットというものを立ち上げている。これら、5つの研究所が一緒になって、人材を出し合って、場所を設けて、激論を重ねて、新しい学問をつくろうというインキュベーターとしての機能を創生したところである。同様に、医工連携や、農工連携のようなものも創っており、一番重要なステップとして、大学が取り組んでいる。
 法人の意思と全国共同利用が相矛盾するのではないかという懸念があちこちで表明されるが、私どもはそうは考えていない。京都大学は、法人として全国のために、全世界のためにあるという姿勢を目標にも書いているし、ほかの大学においても、おそらく研究者レベルでは皆さんそうだと思う。○○大学が存在すれば、ほかの大学は要らないなんていうことはどなたも考えておられないと思っている。そういった意味で、意外と大学法人と全国共同利用というのは対立するものではないと考えたほうが正しいのではないかと思っている。
 概算要求の順位の話が出たけれども、これは全国共同利用だからトップに上げる、研究所だからトップに上げるということは容易にはできないが、京都大学では他の概算要求項目と同様に重要だと扱っている。京都大学の例を申し上げると、いろんな委員会で、いろんな方々の意見を聞きながら、最後は役員会で概算要求順位を決めている。私は財務担当もしており、概算要求を担当させていただいたが、委員会から上がってくる内容を見ていても、広い研究者層、新しい研究シーズというものがやはり優先順位が上がってきている。全国共同利用・研究所の設備等の要求は過去2年間に関して言えば、高い順位に、非常に自然に挙がってきている。そういった意味で、必ずしも全国共同利用とそれ以外の要求が対立していて、具合が悪いというわけではない。問題は、各大学では研究科と研究所は対等の組織としてうまく機能している。法制上、研究科は非常にかっちりしたものが残っているが、研究所はまだそれが弱いということで、そこを強化していただきたいということが重要な観点である。
 また、文科省におかれても、そういう点は学術機関課を中心にいろんなことをやっていただいており、少額であっても基盤研究に継続的に支援をしてきていただいた。これは大変大きいことだと思っている。特別教育研究経費の中でも、拠点形成経費というのはそれに相当すると我々は考えている。また、財政的に研究所全体、あるいは大学全体の問題かもしれないが、大変大きな問題がある。近年、国の政策として、財政事情を考慮して、集中投下ということが行われているが、4つの分野で重点投下されたために、ほかの基礎分野が疲弊し始めている。これは、研究者においても同じでございまして、これは大変大きな問題だと認識している。あちらこちらからこの声が上がっているので、基盤科学、基礎学術を支えてゆくために多彩な研究所を抱えている全国附置研究所と全国共同利用、一般研究所も含めて、ちゃんとした財政的、組織的支援をお願いしたいというのが、大変重要なポイントだと考えている。

【報告者】
 費用の支援だけが問題ではないというところは共通している。しかしながら、例えば物理関係の100億、200億という、ああいう要求は一体どこへ出していけばよいのかというところがもうふさがっているのは、また現実である。
 それから、委員からあった人事などの問題だが、これはどの大学法人も抱えている非常に悩ましいところである。ただ、私どものように非常にアクティブな研究をしていると、むしろ外へ出て行くチャンスはたくさんあって、こういうアクティブな研究所は人員の入れかえが比較的容易にできるという事情がある。例えば、大学院との連携の部分では、やはり完成されていった学問が学部、大学院へという流れからすると、私どもから大学院へ転出していくケースというのは大変多いことで、今回も、学長裁量で新しいミッションを設定して進めるには、やはり新しい人を欲しいと私は願ったわけだけれども、それとタイミングを合わせて人が異動できたというのは、やはりアクティブに研究を続けていることのメリットだと思っている。

【委員、専門委員】
 きょうのお二方のお話を伺って、非常に我々も勉強になった。これまでの附置研究所とか、それから共同利用のセンターというものは、非常に歴史的な経緯を経ながら徐々に発展してきたものだと思う。しかし、さっき委員がご指摘されたけれども、大学法人化して、それで中期目標でやるというやり方になった中で、果たして今後もこういうことでいいのかということを、根本的にお二方ともご指摘になったと思う。
 なので、今、この次の中期目標を立てるに当たって、各国立大学法人がどういうことで考えてこの研究組織というものをつくっていけばいいのか、あるいは日本全体で考えればいいのかというルールは考え直す必要は絶対にある。そうしないと、これは非常に難しくなる。どうしたって、各大学は自分の法人をきっちりやるということを最大限に考えられるのはもう当然のことだ。そうすると、その中で、自分の大学に抱える研究所について、それを特徴づけるということを最大限に考えるのも当たり前だし、そうすると、共同利用研究所って一体何なんだろうかということになる。共同利用にしたからといって特徴がなくなるというわけではもちろんないけれども、その打ち出し方というのは、どうしても各法人の都合になってくる。それがほんとうにいいのかどうかという問題。
 それから、省庁の壁というのは盛んにいつまでも、もう前から言われていることだけれども、やはり大学法人でやっている研究と各省庁が管轄している研究所とは、ものすごく似ていることをやっているものもたくさんある。そういうものを、一体今後どうするのかという意味から、教育基本法はできたけど、研究基本法というのはないのだから、一体どういうふうに我々国がそれを、重複があってもいいのかもしれないけれども、あったらあったで、それなりの納得できるものがあるべきだと思うし、そういうところの、いきなりそれに入るのはなかなか難しいとしても、すぐ中期目標をたてなければいけないと。そういう作業に入るわけだから、その場合に、どういう法律であるのか、仕組みであるのか、これは文科省はやっぱりきっちり定めて取り組まれないと、非常に問題がある。
 それから、お伺いしていて、両方とも非常にものすごく立派な大学だから、あまり正直言って、例えば京大をお考えになれば、ほとんど大抵の研究資源は最高に持っておられる。だから、それぞれ独自にできるというのは非常によくわかるのだが、そうなると、やはり私は東大とか京大とかそういうところが相当世界に開かれて、自分のところのほんとうの大学の特徴として、世界に開かれた研究機関というものを何か自主的に持つというような、そういう自由度とか権限と言うのか、責任を持ってやれるというような、そういうものが、私はあってもいいのではないかと思う。全部の国立大学がそれができるかといったら、それはできない。できないけれども、本当にそういう力があって、自分のところの特徴だと。さっきカルテックのJPLのお話もあったけれども、そういうような性質のものを持つ力がもちろんあるだろうし、そういうことをおやりになりたいだろうし、そういう自由度があっても、いいのではないか。全部の大学が、その規模はいろいろ違うだろうけれども、同じシステムでもって附置研究所、共同利用研究所として認められるというような一様なやり方というのは、必ずしも合わないのではないかという気がする。そうしないと、先ほどの生存圏研究所みたいなああいう壮大なものまで、なかなか簡単に認めてもらえないし、発展しないと、可能性が非常に狭められるという印象を持つ。
 そういうことも整理しておいていただいたほうがいいのではないかと。もちろん、共同利用の研究所は運営協議会とかいろいろ設けてやっておられるのはわかるけれども、決してオープンなものかどうかと言われると、これは非常に問題である。だから、そこのところのシステムは明確に今回やっておくべきだと思う。

【委員、専門委員】
 今の共通する問題だと思うのだけれども、京都大学で、核融合科学研究所の説明をしていただいたけれども、あのときは、要するに核融合コミュニティーや、学術会議などで雰囲気がぐっと盛り上がってきて、そしてできた。そういうことは、今の京都大学でそういう雰囲気、そういうものがあるんだろうかと、また、そういうものは可能になるんだろうかと、その辺が大変心配で、共同利用機関というのは、ほとんどがそういうコミュニティーのボトムアップから、ある大学の拠点を独立させて外に出すという、それはその大学の意思よりもむしろコミュニティーの意思でできたところが多い。そういうことは、今のシステムでどうすればできるんだろうか、もう必要ないのだろうかというようなことも含めて、まずそういう動きが出てくる可能性があるのかどうかというのはどうですか。

【報告者】
 京都大学の場合、基礎物理学研究所を第1号で全国共同利用研究所としてつくっていただいたが、その運営形態は、現在でも発足当時と同様に外部の方が人事まで決定なさっている。そういうふうに、外部に開かれた大学ということを非常に強く意識している。

【委員、専門委員】
 そうなんだけれど、京都大学の中に今もあるよね。

【報告者】
 はい。

【委員、専門委員】
 例えば、宇宙研にしても、ほかの岡崎にしても、共同利用機関というのはどこかの大学にコアはあったんだけれども、それが幾つか一緒になって、外に新しいものをつくるということで、プロジェクトを推進していたということがあるが、そういう可能性が、今もあるのか。

【報告者】
 おっしゃった点は2つあると思う。質問の第一はまず全国の研究者が、京都大学の研究者を中心に全国共同利用附置研究所を設置してくださいという要望が出てきた場合、受け入れる余裕があるかということだが、。そういう素地は京都大学にはまだ十分に存在すると我々は考えている。
 ただ、でき上がったものを、今度、共同利用機関として学外へ出していくということに関しては、議論が2つに分かれている。なぜかというと、インキュベーションと同時に、若い人材を育成していく義務が大学にあり、そのためには、研究機関を外へ全部放り出してしまうとできないという意見が非常に根強くあるからだ。

【委員、専門委員】
 学術会議にも、そういう何か昔のような研究者の意見を吸い上げるという、そういう仕掛けはできているのだろうか。

【委員、専門委員】
 ご存じのとおり、今までもお話が出ましたとおり、多分、一番最初の附置研究所のフレームワークも学術会議発というようなところがあるのだと思っているが、いろいろなところで、特段、巨大装置科学をはじめとして、あるいは古文書といったような人文社会科学系統の勧告を出す、あるいは報告書でというようなことで、現在の形態に対して大分貢献してきたところだと思うが、第17期の吉川弘之会長のときに、いわゆる大型陳情団体としての学術会議の役割は、この際やめることにしようではないかというようなことが出た。その大型陳情団体ということに対する、皆さん方の理解がクリアではない。
 というのは、いろいろなことで、学者としてのコミュニティーを、75万だか76万だかわからないが、代表して、俯瞰的な立場から学術的な面に対していろいろな観点から意見を物申す、あるいは提言するというようなことになったときに、やはり一人一人の会員は、今期は連携会員も一緒になってやっているから、2,200人という大所帯になっているが、その中で、執行部として210人がいるわけだけれども、要するに一人一人が専門を持っているので、どこからどこまでが陳情になっているかというのがよくわからないというようなこともある。いずれにしても、大型装置科学に関しては、先ほどどこか200億というようなお話が出たけれども、大変、先行き心配であるというようなことで、学術会議の中で検討の場が今持たれて検討されているので、またそれはそれで意見が出てくると思う。おそらく学術会議発の勧告で最後にできましたのが、この上側にあります、国立情報学研究所と、それからその前にできました理化学研究所の脳科学研究センターというところではないかと思う。
 ただ、やはり危機的な状況を迎えているという面が多々あるので、学術会議とすると、そういったような面をつかまえては、要するにこちらは政策提言というようなところの機能を持って、車の両輪という言葉が使われたりしているけれども、総合科学技術会議の政策立案のところに向けて投げる。あるいは、場合によったら天に向けてほえるというような必要もあると思うが、そういうようなことで、学術のコミュニティーを代表して、物を言っていくというような雰囲気というか、気概は残っている。むしろ、中心の柱としてあるので、その点は大丈夫だと思う。

【事務局】
 先ほど委員のほうから出された疑問で、大学の学術研究ということ自体、個々の先生方が自由にいろんな研究をするという学術研究自体はだれも否定する人はないと思うが、そういう中で、特に拠点性を持つ、あえて附置研というようなものを形成するということについての正面切った意義は、残念ながら、まだ議論が必ずしもないので、私どもとすれば、ただ、正直言って、附置研というのはかなりの部分が設立は歴史的な経緯を踏まえたもので、新たにきちっとした形でこういったものが必要だということについては、必ずしもそういうことになっていない。ただ、そういう意味では、私のほうとしても、ただ逆に大学の学術研究という特性を踏まえれば、それは似たような研究を、試験研究、独立行政法人がやっているから、大学ではそれをしないんだという論理ではないと思う。
 ただ、それであっても、やはりそのことについて、自由な学術研究、そして研究者全体としての自立性というものを前提とした中での附置研というものを組織していく、設置していくということについては、やはりどこかできちっとしたオーソライズをし、あるいはその正当性をもう1回説明していく、そういう仕組みは必要だろうと思っている。また、同時に、いろんな疑問の中で、私どものほうで全国共同利用の話になるが、全国共同利用ということを中期計画にわざわざ明記していただいているのは、そこにおいて、大学側の一方的な判断というものをむしろ制約する観点から、これは文部科学大臣の認可事項であるから、大学側が一方的に全国共同利用施設を縮小したり、あるいは改組したりということは認めないと。それはあくまでももともと仕組みとしては、この学術分科会の研究環境基盤部会で審議して認められ、そういったことを踏まえた上でなければ、全国共同利用になったり、それをやめるということはむしろ許さないということの中で、わざわざ中期計画にその全国共同利用である旨を書かせていたわけだが、必ずしもそのことが手続機関としての学術分科会研究環境基盤部会という形で、慣例的にやってはきたけれど、明確になっていないという点だろうと思っている。
 その上で、先ほど大きな問題があったように、もともと大学共同利用機関という仕組み自体が学術会議の勧告で出されたところは、昭和38年から40年ぐらいに審議してまた出されたと。そのときは、いわば研究者コミュニティーというものを代表する機関としての学術会議という位置づけで、当時の旧文部省のレベルでは、とにかく学術会議の勧告があったものについては研究者コミュニティーの総意があったものというふうに我々はみなして、それに基づいて、大学共同利用機関という大学の外に大きな機関をつくってきたということがあるが、一時期、残念ながら、若干、日本学術会議と旧文部省の間であまり健全ではない状況もありましたので、そういう中で、そういう手続を一時、学術会議から当時の旧学術審議会のほうに実質移行させた時期があって、ただ、それがあまりにも明確な手続としては成立していなかった。
 そういうことの中で、現在、こういう状況になってきているわけなので、私どもとして、もう一度ここで、先ほど先生方からあったように、コミュニティーという言葉があるが、コミュニティーというのはもちろん我々も意味はわかるし、実態としては十分理解しているが、それを、いわば手続としてだれがコミュニティーを代表し、どこの場でそのコミュニティーの意見というものをオーソライズして、私どものほうのさまざまな仕組みの中に反映するという仕掛けをつくっていくのかということが、法人化した中で明確になっていないし、逆にそういう中で、全国共同利用みたいなものを国立大学だけの閉じた仕組みの中には置いておく必要があるのかどうかということも含めて、その辺が冒頭にあった何が問題点なのかということでは無いかと思う。
 私どもの問題意識としては、何をもって全国共同利用機関を組織するのか、あるいは全国共同利用機関であったものをやめるときには、やめた例がないが、やめるときにはどうしたらいいのか。そしてまた、全国共同利用の附置研というものを新たにつくるにはどうしたらいいのか、そして、それをやめていくにはどうしたらいいのかということのきちんとしたコミュニティーの意見をきちんと反映できるような手続をつくっていくと。そして同時に、その中でビッグサイエンスみたいなものをどうオーソライズしていくのかということが、私どもの問題意識である。

【委員、専門委員】
 今回は、これからの検討の中の1つとして大学の附置研究所及び共同利用のご紹介があったんだと思うけれども、要するに大枠を考えていくときに、今まで出た中で、要するに簡単な言葉では省略し過ぎる面があると誤解されるという危険があるが、そういうことは恐れずに申し上げると、基本的には、効率という言葉もあったが、効率が一辺倒になりますと、従来の国研のような形で、たった98しかないにもかかわらず、もっと増やすようなことをせず、要するに重複してはいけないというルールがあった。たった98で1万2,000人しかいなかった。アメリカは、いい悪いは別として、全分野で800ぐらいあり、そのうちの特別なものとして、それでサイト数から1,100ぐらいがいて、国家公務員で12万人とか18万人とか言われている。だが、その中の一部に、FFRDCというのがある。フェデラリー・ファンデッド・RDセンターが。そのうちの1つが、先ほどの先生がおっしゃられた、あれは国研なのだ。要するに、Government Owned Government Operatedというのが、それは国研なのだが、その38は、Government Owned Contractor Operatedと、Contractor Owned Contractor Operatedというのがある。MITですと、リンカーン研究所というのが有名なのがあるけれど、あれはMIT Owned MIT Operatedですが、100パーセント、DoDの金で動いているという国研である。
 ですから、そういう国研としてのシステムをどのようにうまく我々の日本としてのソサエティーの中にもうまく、大体、我が国は表層的な面で持ってくるという悪いくせがあるが、下のところも踏まえて持ってくるというようなこととか、あるいは、先生方のところはもう要するに研究大学だし、我々もアメリカを見ているのはほとんどが研究大学なわけで、さらには、我が国は研究大学であって全員大学人は研究をしたふりでもしないと、要するに金も来なければ研究員の位も上がらないという、そういうことになっているから、これを研究大学と教育大学にすぱっと切ったほうがいいのかもしれないとか、そういう体制を含めたことの検討を、やはり根底にして積み上げていっていただく必要があるなと思う。
 そこのところで重要なのが、イコールフッティングというのをお考えいただきたい。国公私立大学、すべて均等に平等に扱った上でどうするか。その昔、私立大学で研究なんかやる必要がないという声があったし、研究所をつくったときには、なぜ私立大学に研究所をつくるんだという大きな声があった。慶応に最初に、情報科学研究所なんていうのができたときとか、産業技術研究所なんていうのができたときには、さんざんそれを言われたわけだが、要は、そういうような状況ではないという時代にもなったということもあるが、とにかく育てなきゃいけないということは育てなきゃいけないというのが、国の政策として必要だと思うので、イコールフィッティングというところをお忘れなく進めていただく必要があるんだと思う。
 以上でございます。

【委員、専門委員】
 今、提起された私立大学も含めた話は次回のテーマにさせていただいているので、またいろんなご意見をいただきたいと思う。
 それに先立って、京都大学に質問があるのだが、共同利用の研究で、法人化後、私立大学のコントリビューションというのがどのぐらい増えてきたのかとか、変わらないのか、さらには京都大学としては私立大学のコントリビューションに期待するところが大きいのかどうか、その辺だけちょっとお聞きして、次回につなげさせていただきたいと思う。

【報告者】
 ありがとうございます。実は、国公私立大学と国立大学の関係ということは、この作業部会の重要なテーマであるとお聞きして、調査を進めていたけれども、間に合わなかったので、本日、定量的なものは提供できなかった。
 今のご質問に答えて言うと、おしなべて、我が大学にたくさんの研究所、研究施設があるので、平均的なことしか今申し上げられないが、態度はほとんど変わっていないと思う。国立大学と私立大学を対立する観点で考えたことは一度もない。むしろ逆で、例えば京都大学は、早稲田大学と包括的協定というものを結んでいるし、その中で、研究者同士が研究協力をさらに一層進めるという努力をしている。ただ、研究所の中で、あえて私立大学、国公立大学のコントリビューションを増やしましょうということを審議して、テーマとして取り組んでいるというところは、まだ少ない。要するに、徐々に実態的には増えているので、増える方向で努力を区別なく、差別なくやっていくという方向だと言えると思う。

【報告者】
 全共の会長の立場で、あまり正確なデータではないけれども、私どものところだと、先ほどグラフが出ていた平均値的なところだが、例えば、東大物性研であるとか、比較的簡単に手に入らない装置をお持ちのところは、やはり公立・私立大は倍くらいの割合であったかと思う。これは正確なデータではないけれども、個別のところでいえば、そういう傾向は出ている。ただ、法人化で経年変化としての変化というのは、特にないと感じる。

5.今後の日程等

 事務局より、次回は平成19年1月30日に開催する旨連絡があり、閉会となった。

─了─

お問合せ先

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