研究環境基盤部会 学術研究の推進体制に関する作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成18年12月5日(火曜日) 10時~12時

2.場所

学術総合センター 特別会議室(101~103)

3.出席者

委員

 飯吉主査
(専門委員)
 石委員、海部委員、川合委員、古在委員、塚本委員、中村委員、西岡委員、松田委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、戸渡政策課長、川上振興企画課長、森学術機関課長、小桐間研究調整官、谷合学術企画室長、柴崎学術基盤整備室長、江崎企画官、その他関係官

4.議事録

(1)学術研究の推進体制の現状

 事務局より資料5-1~5-8に基づき説明があり、その後質疑応答が行われた。

(以下質疑応答等においては、○は委員、専門委員、△は事務局の発言を示す。)

○ 資料5-7において、運営費交付金が平成16年度の法人化とともに1割以上、15パーセント近く減っている。これはなぜか。つまり、運営費交付金はそれまでの経費を担保する形で移行したはずなのに、そんなに大きく減っているというのは、私はこれを見てびっくりしている。この差はどこへいったのか。

△ 注にあるように、国立高等専門学校、国立学校財務センターというのがある。そういう意味では、従来は国立学校設置法、国立学校特別会計であったので、国立学校という中には、大学だけ、大学、大学共同利用機関ではなくて、当時、大学共同利用機関に分類されていた大学入試センターとか、大学評価・学位授与機構、メディア教育開発センターというものが含まれており、それらが平成16年度以降は全て落ちている。国立高専の分も落ちている。そのほか細かいことを言うと、例えば大学の事務局職員にかかる退職手当云々みたいなものも、今は大学の事務局長は皆さん本省に戻って、そこで退職金を渡すことにしているなど、実はセンターが、高専が落ちたとかいう表向きの説明よりも、ほんとうはそっちのほうの、さまざまな人件費とか、使用者負担分とかいうものを本省のほうに戻したというほうが大きい。実質的な意味で、大学の先生方の教育研究にかかる部分、あるいは大学の運営にかかる直接的な部分については移動がない。

○ それで少し安心した。一言コメントですが、ご説明の中で、ちょっと細かくはなるが、大学共同利用機関の説明があったが、大学共同利用機関の特質の非常に大事な部分の1つは、運営が開かれた運営であるということ。つまり、大学コミュニティーが運営する研究機関であるというのが基本的な考えにあって、その点が国立大学等とは非常に大きく違う。国立大学の研究所の中にも、共同利用の歴史を持っておられるところは、例えば人事等でも外部の方を入れておられるところもあるが、それは非常に例外的で、基本的に大学は自治であるということで、人事等も含めて基本的に閉じてやってこられている。大学共同利用機関はオープンでやっている。このことをなぜ申し上げるかというと、今後、特に共同利用ということを中心にして日本の研究体制を考える場合、このことは必ず大きな問題になるだろうと思っているということがあるので、一言申し上げておく。

○ きょうは最初なので、作業部会で何をやるかということをもう少し明確にしたいという趣旨で、二、三教えて欲しい。説明を聞いていると、いろいろなことをおっしゃったけれども、要は、国公私立を貫く大学共同利用施設を新しくできないかというところがこの作業部会の一番の仕事のような気がする。僕もそれは多いに結構だと思うが、結構いろいろ障害があって大変じゃないかという気がする。1つは、予算がこれから定期的に切られていく中で、新規事業はなかなか難しい。と同時に、私学助成金でやっていた世界と運営費交付金でやっていた世界がともに補助金という名にはなっているけれども、国公私立を一緒にやったときに、財務省の視点から見ると、違ったものを予算措置上一緒にして問題ないか等々、何かあるのか、ないのか。ありそうな気がするので質問するのだが。それから、新規なことをやるときには、スクラップ・アンド・ビルドが来ると思う。ということは、既存の大学共同利用機関なり、法人なり等々を見直せというところまで我々の仕事なのかどうか。そこまで来るのかどうか。これは親の部会でやればいいと思う。そういうことまで構想に入れなければならないのか。

△ 基本的には、国公私立大学を通じた新しい学術システムをつくる。特にそういう中で、全国共同利用。全国共同利用については、人事ということについては、大学共同利用機関ほどではないが、例えば運営については、学外の人も入れて運営に当たるという仕組みが確立されている、そういう全国共同利用の仕組みを国公私立大学を通じて入れていきたい。そのことについて、私どもからすれば、さらに教育基本法の改正を機に、学校教育法をさまざま改正をするチャンスもこれから増えてくるので、できれば、そういう法令上の位置づけも含めて、きちっとしたものにしていきたいと思っている。
 一方で、今ご指摘いただいたように、公財政支出の問題があるが、私どもは、第3期科学技術基本計画において、これまでの24兆円であった2期計画を25兆円にする。実際2期計画の段階では、24兆円も実際実施していないから、さらに25兆円にするということは、毎年毎年これは増えていくものだと思っているし、歳出改革の中でも、名目成長率の範囲までは、科学技術振興費については増やすということもある。そういう観点に立てば、私どもとすれば、特に全国共同利用の部分だけに対する新たな財政支援措置というものは構築し得るのではないか。現に研究交流・共用促進法も、これは実は法律をつくっただけではなくて、19年度から、今までSPring-8に関する運転経費については、理化学研究所に対する交付金の中に入っていたり、さまざまな政策目的研究費の中に入っていたのを、共用促進法の成立を受けて、共用にかかる交付金という形で、その部分を独立させたということもあるので、今後、我々の中で考えていく中で、新たな大学に置かれる全国共同利用というものの中に、真に新しいシステムを構築した際には、当然従来の運営費交付金、あるいは私学助成というものとは別な形で、いわば科学技術予算という形での新たな予算措置も可能ではないか。全体として科学技術予算が増えていく中で、そういう仕組みを構築することも考えていいのではないかと思っている。そういう意味では、直接スクラップ・アンド・ビルドということにはならないと思う。
 ただ一方で、厳しい組織の見直しをしなければいけないということは当然である。一番問題なのは、附置研というものが、中期計画に書かれているので、書かれている以上は、総務省の組織見直し勧告対象になり得るということ。ご承知のように、総務省のほうは、今までいろいろな独立行政法人についての組織存続見直しをしているが、各省大臣の委員会でいくらこれが大事だと言っても、総務省のほうでこれは廃止すると決めてしまえば、これは廃止に決まっていて、逆に言うと、学部、大学院、研究科、附置研は、そういう一方的な組織存続見直しの対象になっているという位置づけもあるので、それはそれで我々も厳しい見直しを、文部科学大臣みずから中期計画に記載している事柄については見直し、組織の再編、転換、廃止というような厳しいことをしないと、総務省のほうから一方的にこれは見直ししろということを言われてしまうと思っているので、それはそれで厳しい。中期計画に記載されている事柄というのは、大学本体、大学共同利用機関本体、それから、大学に置かれている学部、研究科、附置研究所、大学共同利用機関に置かれている研究所自体であるが、これについては文部科学大臣のほうで、再編、転換、存続、廃止という徹底した厳しい見直しをやらないと、総務省の独法評価委員会のほうからそれを上回るもっと厳しい勧告案が出されてしまうことは必至だと思っているので、そこはきちっとやりたい。ただ、そのときも、逆にこういう場でもって、文部科学大臣が行う検討に際する学術面からの組織見直し、存続、廃止、転換等についてのガイドラインを与えていただければと思う。

○ 私から一つ事務局のほうにお願いしたい。今回の検討は、私立大学も視野に入れるということで、大変結構だと思うが、難しいだろうと思うけれども、私立大学の研究所、組織、5-2に国立大学のが出ているが、これに類したものを私立大学を調査できれば、わかる範囲で結構なので、データを次回あたり出していただくと、今後の議論を進める際の資料になるのではないかと思う。

△ 今、それについては作業中で、完全に網羅的なものになるかどうかというのはあるけれども、できるだけ顕著なものというか、そういうようなものを関係の部局とも相談して、行っているところです。

(2) 今後の審議の進め方について

 事務局より資料6~8に基づき説明があり、その後質疑応答が行われた。

○ 親部会の研究環境基盤部会に入っていないので確認しておきたいが、全体の流れで、1つは、多分財政的な面から考えなければいけないだとか、もう一つは、ずっと歴史を聞いていると、かなり長い間附置研という形をとってきていて、それが実際、うまく機能しているかどうかということが問題なのか。あるいは、COEなどとどういう関係になるか、わかりにくいところがあるけれども、そういう流れの中で改変していくということがあるのか。全体の流れがもしあれば、ぜひお伺いしておきたい。

△ 基本的には、現在、第3期科学技術基本計画というものを踏まえて、我々、いろいろな政策を展開し、大学の学術研究もその中で公財政支出を行っているわけだが、端的に申し上げると、新しい仕組みをつくらない限り、絶対に公財政支出は増えていかない。基本的には、すべての予算は全部1パーセント減の中にしか入っていかない。したがって、私どもとして、科学技術基本計画の中で、もっと我々の学術というものについて振興すべきだということであれば、学術について新しい仕組みをつくらない限り、そういうことは主張できないということが基本にある。
 もう一つは、正直にいうと、附置研等についても、私の個人的な考えでいえば、あまりにも本来の性格として、改廃、転換、再編が少な過ぎる。基本的に文部省の国立学校設置法時代は、時限をつけて、7年に一度必ず附置研については見直しをさせ、名前も変更させてきたにもかかわらず、法人化した瞬間に、各大学は急にやめてしまった。このことについては、非常に問題があると思っている。そもそも附置研という仕組み自体が、現代に通用する仕組みなのか。一方で、例えば東京工業大学の長津田にある3附置研究所は、すべて科学技術振興調整費という、全然別の政策研究の資金を使って、3附置研というものを全部廃止して、新しい研究体制をつくるという組織変革ということで、現在新しい仕組みをつくっている。はっきり申し上げれば、附置研というのは19世紀のシステムであるから、これをこのまま今後とも続けていくことが果たして妥当なのかどうか。もちろん研究内容そのものについては、附置研で行われている研究がいいかどうかということはまた別の議論だと思っているが、大学院については今から20年前に抜本的な改正をしてきた。大学院重点化ということも考え、あるいは、当時大学院については連携大学院、連合大学院、さまざまな改革を実施してきたが、残念ながら、研究施設、研究所については、直立時代、何とか帝国大学何とか研究所官制があったころからあまり本質的な部分が変わっていないという点については、極めて問題があると思っている。なので、研究の内容そのものということではなくて、こういう時代の中で、一番大きな問題は、かつて東大の宇宙研が大学共同利用機関に転換していった。それがさらにJAXA(ジャクサ)と一緒になって、今は政策試験研究開発機関の中の1つで機能している。当時はまだそれでも、例えば附置研が大学共同利用機関に転換をするとか、あるいはさまざまな転換が学術世界の中で行われていたと理解しているが、あまりにも最近はそういったことが少な過ぎて、我々は、今、この21世紀、少なくとも科学技術基本計画というもの、それが次期計画、第4期もきっとできるでしょうから、そういう中で、全体として大学の研究体制をどうしていくのか。一方では、今回CSTP、総合科学技術会議の提案を受けて、全国に30拠点、形成をするという形で、いろいろな予算要求もしている。内5拠点について、独自に形成するという予算要求もしているが、それは従来の大学の組織の概念を全く超えたところでつくるということもあるわけで、ここでもう一度、大学の研究組織のあり方について、この時点でどの程度柔軟をするのか、あるいは新しい仕組みを考えていくのか。附置研についても、どういう形で現代化させていくのかということ。そのことは、具体的な個々の研究所の研究内容がどうのこうのということではなくて、今後、さまざまな大学を取り巻く世界は、極めて厳しいものがある。法人化した中で、我々はどういうふうに転換をしていくのかということである。

○ 局長のアジテーションに乗ってしまいそうな雰囲気なんですが、そういう枠組みをちゃんとするということと魂を入れることと両方ちゃんとやっていかなければいけないというのが、今の非常にきついミッションだと認識している。ちょうど法人化するときに、法人化の研究所の委員会に私は参加させていただいておりまして、限られた短い時間で全体を見るという中で、附置研のところは、心配をしたまま、多少残ったままになっているところがある。その中の魂側のほうから考えると、その当時2つ懸念があったと思う。組織的に大きな改革をするときに、歴史に学ぶ必要があると思う。実際に既存の附置研で、機能しているところもたくさんあるので、そこの運営が大学の法人の中に入ったときに、法人の都合だけで改革されることに対する懸念と、それから、予算的な措置に関して、特別教育研究経費という枠の中で附置研の枠はあるけれど、それで活動がきちっと担保されるのだろうかという、この2つの懸念は、忘れっぽい私でも、かなり心配としていまだに残っている。実際にそれが数年たった今、現実としてどのような問題があって、どこがうまくいっているのかというところも、少し資料としてお出しいただけると、今後考える上で大変参考になるのではないかと思うので、お願いします。
 それと、改革を考えるというベースの意見をここで述べるのだと思うけれども、そのときに、全国共同利用機関法人の枠組みみたいなものもあわせてここで検討する項目に入っているのか。それとも、それはそれとして、今回は手をつける範疇ではなく、大学のほうに附置されたところだけを国公私立あわせて考えるというのか、ミッションに枠があるのかどうかということも教えていただきたい。

△ もちろん大学共同利用機関ということ自体、共同利用のいわば究極の形であるから、考え方をさまざま議論する中で、当然そのことについても視野に入れなければいけないと思っているが、もちろん考え方によっては、例えば学校法人が大学共同利用機関をつくるということだって今後あり得ることだと思うので、そこまでご意見等が出れば、そのこと自体を私どものほうで、そこまでは先生方の考える範囲ではありませんなどというつもりは全くない。基本的には、大学の場における学術研究体制、国公私立大学を通じた体制をどうしていくのかということだと思っている。また特に、大学共同利用機関の設置法人のあり方について、個々の具体の法人のあり方については、国立大学評価委員会というものが別途あるので、そこで検討することとして、もしそういうご議論の中で、さまざまな大学の学術システムを見直していく上で、いわば全体に通じる形での一般論、あるいは理念という形で、大学共同利用機関を設置する法人のあり方についても、こういう考え方が必要だというご議論があれば、それはお示ししていただければと思う。

○ たくさんの説明を聞いて、頭があまりまとまっていないけれども、私は私立大学の経営に携わっているわけだが、今まで、共同利用研究というのは、国立のほうにずっとたくさん歴史もあるし、私どももそれはそれなりに恩恵をこうむってきたところは十分あると思っている。私立大学でもそういう形のものができるのではないかと言われているような気がしているので、それは大変結構だと思います。では、特色ある研究所をつくればいいのかどうかということは、これから議論になるんだと思うが、やはり人材を育てる場合は、東京周辺であり、関西周辺であり、いろいろ地域性もあるだろうと思うけれども、そんなことも含めて、そういった私立大学の共同利用機関みたいなものがもしできるなら、そういうことは議論していただきたいと思う。というのも、研究所を持っているところはもちろんあるわけですだけれども、大体が文科省の高度推進の予算の数年のプロジェクトでセンターを持っている。非常にいい成果を出したものも、5年たった後は、予算措置がつかない。それを大学はどうして持っていくかということで、非常にみんな苦労しているところがあると思う。そういったものを上手に、恒久的と言うと語弊があるけれども、短期で終わらないような研究機関があってもいいのかなということも思いますし、そういうものをいろいろ私学も持っていないと、第3期基本計画にもある人材育成に対してどれだけの貢献ができるかということもあるのかなと思っていますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

○ 1つは、頭を整理する意味での素朴な質問をさせていただき、もう一つは感想です。1つは、先ほどもおっしゃったが、全国の大学に研究の拠点を置くということを今進められておられる。来年度はとりあえず5拠点ぐらいということなのだが、その研究開発の拠点と附置研究所、センターとのかかわりというのが、頭の中の整理ができない。文部科学省は、過去いろいろたくさんの制度をつくったり、やっているが、外から見ているとよくわからないん。見えないところがあって、その辺の整理を少ししないと、作業部会で検討ができないのではないかという懸念がある。
 もう一つは、資料6にある国際的な研究の共同ということなのだが、科学技術とか学術の研究開発というのは、1国だけにとどまるのではなくて、国際的な貢献とか寄与が非常に必要なのだけれども、それが日本国だけの事情でもって云々されていいものかどうかという問題があるので、その辺も少し検討する必要があるのではないか。単に日本の財政事情が悪い、それから研究開発の方向転換もあるんだということだけで、解決すべき問題なのか、検討すべき問題なのかということも、これはやらなければならないのかなと思っている。

△ 正直言って、情けない回答になるけれども、例の30拠点をどうするかということについては、総合科学技術会議の提案で、はっきり申し上げれば、大学のことをきちっと踏まえたことではなくて、要はあの提案は、結果的に後で振り返ってみたら、30、拠点があればいいということに尽きる。今回も5拠点、要求しているが、それも後でどんどん拠点数を増やしていこうという予算要求ではなくて、ああいうやり方で5拠点つくり、また、そのほかのグローバルCOEとか、さまざまな附置研制度、そういうものもあわせて全部で結果的に30にするというようなコンセプトである。果たしてそれが30かどうかというのもあるけれども、考え方としては、さまざまなアプローチ、さまざまな制度的な手段によって、結果的に国際的に通じるものが30程度必要だと、あるいはそれに対して集中した投資が必要だという基本的なコンセプトは十分わかるが、やり方としては、直接的なやり方とグローバルCOE的なやり方と、今ここで議論しております附置研や大学共同利用機関、そういったものも全部込み込みにして、後で30という整理なものなので、よくわからないじゃないかということについては、私も正直言ってよくわからないなと。ちょっと情けないところではある。

○ 今の重点拠点は、やはり期限がついているのか。そういう性質のものなのか。

△ 今検討して、予算要求しているものというのは、こういった附置研とか大学共同利用機関等を含めて、大学で既にある程度高いレベルにある。運営交付金等の支援を受けて、また科研費等を受けて、既に高いレベルにあって、それはさらに国際的にもより高いレベルにいくということを加速したい。ただその際には、いわゆるシステム改革と呼ばれているような研究の方向、仕組みを変えるような拠点になってほしい。ですので、具体的には、外国人の先生方をそこへ呼んでくるための金とか、呼ぶためには、設備等も含めて環境整備が必要だと。そういうお金をプラスオンするということを考えているということなので、もともと基盤というか、そういうものがないとできないという仕組みではある。そういうことになりますと、それを支えるための研究所、附置研等、大学の研究組織のもともとを支えていくというのが大事だということになるのではないかと理解はしている。

○ あまりよくわからないが。いずれにしても、これはまた時限つきの話になるのか。

△ 一応今のところは、10年という期限つきだが、あくまでもアドオンだということ。今ある仕組みの上にアドオンするもので、それだけで支えるということではない。

○ 主にソフト面ということか。

△ 大学によっては、特定の教育研究組織を想定をした形で、そういったことを考えているところもあるし、そうではなくて、全学的な、極めて流動的な、バーチャルな組織を想定して、そういうことをやろうと思っている大学もあるので、各大学の検討状況も、それをどうやって対応するかということについても、まだ整理がついてないというのが正直なところである。

○ 今日の説明では、全国共同利用施設を、システムといったり、組織といったり、利用の体制というような表現が出てきた。全国的なことを承知しているわけではないが、全国共同利用施設と言った場合は、いわば建物と組織が一体になっているのではないか。全国的にはそうではないのか。

○ そうでないところもある。研究施設と言うときは、かなり幅広くなっている。

○ この資料にあるように、全国共同利用施設にいる専任教諭も不安があって、また大学としてもどう扱っていいのか、明確にわからないところがある。大学の方から見ると、国立大学法人支援課と学術機関課があるが、大学本部役員としては国立大学法人支援課をいつも見ているが、全国共同利用施設の教員は、学術機関課の方を見ている。このことから、大学本部役員から見ると、全国共同利用施設の教員は学術機関課をむいていて大学の方針、国立大学法人支援課の方針を理解してくれないといった気持ちがある。逆に、全国共同利用施設の教員は、大学本部役員が自分たちの立場を理解してくれていないことに不安な気持ちを持っている。大学役員は逆の不安がある。その辺を考える上で、大学内の全国共同利用施設の位置付けと運営に、ちょっとちゅうちょするところはあった。今日のご説明で、おっしゃることは大体見えてきたので、私としては、長期的な面ではっきりした改善を提案していけたらなと思う。

○ この作業部会ができる1つの理由としては、国立大学に限ると、法人化後に、研究所だとか共同利用機関、そういったものの位置づけが変わってきて、あいまいになってきていて、先生がおっしゃるように、不安な状態で研究を続けているというのが現状だろうと思う。私ども、二、三大学を回った感じで、大学のトップに、全国共同利用とは何かということ、その辺のこともあまりご存じない方もおられた。全国共同利用は、何もその大学だけでできた研究所でなくて、全国の関連分野の研究者の応援なり発案でできたような研究所も多い。そういう歴史的なところを必ずしも理解してないトップの方もおられて、これは少しこの辺も整理して、学外、学内からしっかりした支援体制がとれるようなことにしないと、研究のアクティビティーが下がるのではないかということも心配している。そういうのが1つにある。

○ 大学のほうもよく理解してない。あるいは文部科学省のほうもはっきり明確には打ち出してないところなので、こういうところの提言を通じて、はっきり位置づけをしていくということは大変意義のあることだと思う。

○ 法人化が及ばした影響はいろいろなところにじわじわと出ていると思う。私は大学附置研の所長の先生方とよく話をする機会があるが、やはり非常に厳しくなっている。目に見えて厳しくなっているのはなぜか。それは法人化によって、大学が独自性を出さなきゃいけない。そうすると、全国共同利用という面はどうしても捨象されてしまうだけでなく、研究所はある程度まとまったお金を必要とするので、そういうものはどんどん後回しになっていくと。そういう面で、このままではやっていけないんじゃないかという悲鳴のようなものをよく伺う。
 そういうこともあって、今まで機関が中心に、共同利用ということをキーワードにして、もう少し何とかということで努力してこられたと思うが、今回はそれをもう少ししっかりした形で検討しましょうということで、私は大変大事なことだと思う。ただ、そのときに、共同利用とは何か、大学附置研とは何かということを議論しないと始まらないことだと思うけれども、私見で申し上げると、大学の研究所というものには、学部とはまた違う、おのずからはっきりした、どういう言葉で言えばいいか、ミッションというのが一番適切かと思うが、研究所は何を明らかにしていくのかという、これは長期的で結構なのだが、やはりミッションがある。それを明確にして、それを研究し、その成果を社会に問うていく、そういう責任があるのが研究所だろうと思う。だから、研究所というのは、場としてはずっとあるかもしれないが、どんどん変わっていくものでなければ、本来おかしいわけである。例えばアメリカなどを見ていても、研究所は自動的に非常に外に開かれている。人員交流も非常に盛んですある。日本は残念ながら、そういう歴史を大学があまり持っていなかったために、どうしても固定化するという面もあったかと思う。ただ、ほんとうに活発なところは、自然に開かれて、コミュニティーとつながり、国際的にも交流をし、したがって、共同利用ということをある種必然的に選択していった面があると思う。ただ、そうはいいながら、一方、共同利用になるとお金がつくというので、何でもいいから共同利用になったという面もなくはない。そういう面も含めて、本来研究所というのは流動的であるべきだし、オープンであるべきだし、どんどん変わっていくべきだし、ミッションもはっきりさせるべきであるという、そういう視点がなければ、なぜ附置研の問題を議論するのかということは、議論が難しいのかなという気がしている。
 それから、法人化によって、1パーセントずつ減る運営費交付金の中でやれという、非常にかたいシステムができ上がってしまった。そのために、研究所なり、大学共同利用機関もそうだが、ある程度大きなものをやろうと思うと、今、全くお金がない。小柴先生のカミオカンデのようなことをやろうといったって、大学は今そういうことができない。要求すらできない。大学共同利用機関も、今は、アルマとか、やっているが、その先やる目当ては全くありません。日本の科学というのはここまで勢いをつけてきたわけだが、このままでいくと、枕を並べて討ち死にしていく。それが目に見えているというのを、現在、我々はほんとうに心配している。これは分野とかいうことではなく、基礎・基盤的な研究も大事だが、トップを世界と競う大型の分野も必要なわけで、そこのところが今、法人化によってなくなっている。そういう問題も何とかしないと、全体がレベル的には後戻りできないような状況になりかねない。そういう心配もあって、ここには特に、大型プロジェクトの進め方ということも、これは共同利用と全部絡んでいる問題でありますが、出していただいていると思うけれども、ぜひその辺議論をいただければと思う。私が1つ気になっているのは、国家的プロジェクトとしての位置づけとあるが、文部科学省という統一された1つの役所になった。従来の科学技術庁がやってきたいわゆる国策的、トップダウン的超大型プロジェクトと、今まで研究者がボトムアップで積み上げながらやってきた、旧文部省のやってきた学術の大型プロジェクト。これは大体1けたぐらい違うけれども、それでも今やその2つについては、いろいろな形で共通点が生まれつつあるというのが私の認識である。さっきから共用という言葉が出ているが、これは共同利用と違う。はっきりこれは区別しておかないと困る。にもかかわらず、大きな、トップダウン的な国策的なものを何のためにやるのか、どう有効に使うのかということが、今や非常に大きな問題になってきており、そこに学術の純粋基礎科学の先生方も随分乗り込んでいかれるようになってきている。私はこの変化は非常に大きいと思っている。おそらく今までのやり方からすると、そういう面までやるのは難しいのでしょうが、視点としては、文部科学省が1つの省になった以上、大型ということを考えるときは、その視点もどこかで考えながらいっていただきたいなと思っている。

○ 先ほど、大学の附置研について、研究の内容はさておいて、19世紀にできたものという言い方をされたわけだけれども、いろいろな組織の見直しをするときというのは、そこのアクティビティーというのをきちっと評価して、見直しをしないと、十把一絡げに言われるのは、研究者としては非常にがっかりするやり方なので、評価ということについて、しっかりとして、進めていただきたいと思う。
 新しい仕組みをつくらないとお金がつかないみたいな言い方をされるのも、ちょっと抵抗を感じる。いろいろな大学について、文科省の官僚の方の見方はあるかもしれないけれども、個々の研究員というのは、それなりに研究教育をやっているわけで、特殊なお金というのではなくて、ある程度底上げのためのお金というのは、あまり削らないで渡してほしいと思う。

○ 今の評価の件につきましては、評価委員会というところで、今まさにこれから、附置研も含めて、各大学の評価が始まる。なので、この作業部会の仕事ではないと思うけれども、むしろ評価委員会が評価するときに、しっかり研究所の存在意義をわかってもらって評価をしないと、ほかの学部とか、そういうものと一緒になって評価されると、研究所としてのほんとうの評価になってないのではないか。そういうようなアドバイスを、我々もこの作業部会からはメッセージを出せると思っているし、非常に大事なことではないかと思っている。

○ 簡単に3つあります。1つは、全般にいくつかの附置研を見ると、大学の中のほかの組織とどう違うのかよくわからないところがたくさんあると思うので、何かの形のどこのフロンティアに向かっているのかということをはっきりさせる時期ではないかなと思っている。
 2つ目として、全般に科学技術の予算が増えているので、私にとっては非常にありがたい話だけれども、ポスドクの例で、私どもは、ある面では被害を受けているというか、お金があって、フローを高めるのは結構だけれども、最後、どういうぐあいに面倒を見るのかというところがはっきりしなかったということがあって、それと同じような形で、どんどん新しいものをつくるのはいいけど、それをどうメンテナンスしていくかということに対しては、考えていただきたい。今までのシステムは、別の意味では、そういうところはきちんとしてきたところもあるのではないかなというのが2点目である。
 3点目、独立行政法人との連携という観点から見ると、今のところ、どちらかというと独立行政法人の持ち出しだなというところがあって、大学のほうでのしっかりした方針がないままに、教育のところだけに協力させられるという感じになっていて、もう少し研究の面でも、共同でいけるようなところを強く打ち出す、あるいは明快に仕切りをしていただきたいと思う。

○ 今のは人材養成との絡みの問題であるので、これも当然、議論の中には入ってくると思う。

5.今後の日程等

 事務局より、次回は平成19年1月18日に開催する旨連絡があり、閉会となった。

お問合せ先

研究振興局学術機関課