資料3 国際共同利用・共同研究拠点制度(仮称)に関する意見(国立大学附置研究所・センター長会議会長・国立大学共同利用・共同研究拠点協議会会長作成資料)

2017年12月26日

文部科学省研究振興局学術機関課
    課長 西井 知紀 殿

国立大学附置研究所・センター長会議会長   梶田 隆章
国立大学共同利用・共同研究拠点協議会会長  村上 正晃


国際共同利用・共同研究拠点制度(仮称)に関する意見


 平素より国立大学の附置研究所、研究センター(附置研・センター)および共同利用・共同研究拠点の活動に対してご支援を賜り有難うございます。特に本年度は国際共同利用・共同研究拠点の制度をご検討いただき、感謝しております。この制度が成功し、日本の研究力の向上につながることが非常に重要と考えております。そこで、具体的な制度設計が検討されている今の時期に、国立大学附置研究所・センター長会議と国立大学共同利用・共同研究拠点協議会での本制度に関する意見や要望をまとめましたので、意見書として提出させていただきます。ご検討くださいますよう、お願い申し上げます。


制度そのものに関する意見

(1)共同利用・共同研究拠点は、拠点が日本国内の様々な大学の研究室では持てないような中・大規模の実験装置や研究資料を整備・運用し、それを国内の研究者が共同利用したり、様々な共同研究の核となることで、日本の研究を活性化・高度化することにある。今回の国際共同利用・共同研究拠点制度でも、上記の基本的な考えは不変であると想定している。すなわち、国際共同利用・共同研究拠点制度は、国際拠点に選ばれた研究所のみが海外とポイント・トゥー・ポイントで国際的プレゼンスを向上させるのではなく、従来の共同利用・共同研究拠点制度によって構築されている日本国内の関連分野コミュニティ全体が、国際拠点に選ばれた研究所等を通して国際共同研究等を促進するためのものであり、そのことが日本全体の研究力向上に繋がるという観点が重要と考える。この原則に沿って、制度設計を更に進めていただくことを期待する。

(2)多くの拠点では、既に国際的にも高い研究業績を上げ、国内コミュニティと国際コミュニティとの共同研究等の窓口となっている。しかし、拠点における国際化に関する業務実施体制は、十分整備されていない場合が多々あり、拠点によっては、所属する多くの研究者に過剰の負担がかかっている場合もある。研究時間を確保し、研究力を更に高めるという観点からも、国際共同利用・共同研究拠点制度に基づく国際化の体制強化のサポートは、大変有意義であろう。一方で、国際拠点のための条件設定を外形的に厳しくすると、結局研究者の研究時間の更なる減少などの深刻な副作用が懸念されるため、慎重な制度設計をお願いしたい。

(3)極端な集中支援と支援打ち切り等による予算額の急激な減少は、拠点の組織運営を難しくする。特に拠点は日本の研究者コミュニティの当該研究分野を長年に亘って支えることが使命である。この点に関しても慎重な制度が設計されるべきである。例えば、国際拠点に一度なって、その後の審査で国際拠点として不適格となった場合でも、審査を通して現状の拠点に途切れることなく戻れるような制度が望まれる。

(4)多くの研究所・拠点が、本制度を活用して研究の国際化を進めたいと希望している。一律の支援額ではなく、少額であっても国際化の推進が可能であると意見を表明している研究所・拠点も複数存在しており、トップの研究機関だけでなく、二番手三番手の研究機関も含めて採択数を増やすことが日本全体の研究の国際化にとって効率的であろう。ただし、国際拠点となった場合、今までの拠点基盤経費のサポートがなくなり全て国際拠点支援分(仮称)との方式では、少額の国際拠点支援分(仮称)の場合、支援額が減少となり効果を発揮し得ない。これらも加味した制度設計を要望する。

(5)国際拠点申請に際しては、従来の拠点機能を包含するかたちで申請するとのことであるが、その場合、従来の共同利用・共同研究拠点に認定されている拠点の申請額は、拠点基盤経費とは別に、国際拠点支援分(仮称)を必要経費として要求するという制度設計を要望する。(現在、共同利用・共同研究拠点に認定されていない機関からの申請では国内、国際分を合計した要求額となると想定する。)もし、国際拠点支援分(仮称)の中に従来の拠点基盤経費を含めてしまうと、既存の単独型拠点が新たにネットワークを形成して申請する場合、もともとの拠点基盤経費の合算総額が国際化拠点支援分(仮称)の想定される額を超えてしまう場合がありうると懸念する。すなわち国際拠点となった場合に予算が減少し、既存の単独型拠点にとって新規にネットワークを形成・申請しにくくなる仕組みになってしまう。そのため、これらも加味した制度設計を要望する。

(6)同一大学内,あるいは,同一地域内の異分野の研究所でネットワークを構築して申請するようなことは想定していないとの説明を受けたが、一方で、現状の共同利用・共同研究拠点内の一部組織が国際拠点に申請できるのかなど、申請できる組織の要件に関して現状では共通の認識が得られていない。そのため、この点に関してお考えをなるべく早い段階で明示していただきたい。

申請・選考基準等に関しての意見

(1)申請作業が各拠点において過度の負担となることがないよう効率的な申請・選考の方法を工夫していただきたい。

(2)一律の認定基準で認定選考した場合、特定の分野に認定拠点が偏ってしまう懸念がある。分野の特性も加味した多面的な認定審査をお願いしたい。特に文系の拠点からの申請に関しては、学問の特性を踏まえた認定基準の設定への希望が強い。具体的には以下の3点を考慮していただきたい。
  1.英語または英語以外の外国語で書かれた国際共著書や国際会議報告書、研究対象国の言語で書かれ、研究対象国の有力ジャーナルや学術図書に掲載された論文の刊行実績(総数と質の両面)
  2.研究成果やデータベース等の学術資源が国際機関や外国政府・中央銀行等の政策や調査報告等で利用・引用された実績(総数と質の両面)
  3.有力な国際会議や海外での会議・研究会への招待講演、招待発表・報告実績(総数と質の両面)

(3)認定基準の1から4のうち特に1と2を重要視していただきたい。特に、「国際的な運営体制」に過度の要求があると、そのための運営コストが非常に大きくなり、研究者の負担を大幅に増やし我が国の研究力をそぐことになりかねないと考える。そのため、これらも加味した選考基準の設定を要望する。

(4)国際化を進めるという考えから、国際化に関して現時点での国際化の状況のみならず、これから国際化を強化するという拠点計画も、認定の際、考慮されるべきではないかと考える。そのため、これらも加味した制度設計を要望する。


国際共同利用・共同研究拠点の運営に関する意見

(1)国際共同利用・共同研究拠点制度は、研究の活性化・高度化を通じて、日本国内の研究を国際化することが目的である。そのため、運営面では過度の要求をせず、研究自体を推進するような運営をできることが必要である。具体的には、「国際的な運営体制」などの運営面に関しては、評価指数などを設定しない緩やかな制度とされるべきと考える。

(2)国際共同利用・共同研究拠点制度は、国際共同研究を増やして、その結果日本の研究レベルを上げることが目的であると考える。しかし、外国人研究者に対して外国旅費、国内滞在費、研究費などを丸抱えで研究をしてもらうというスタンスは明らかに相互性を欠く。従来から実施されているような国際共同研究のしくみに沿った予算執行が想定されている旨をあらかじめ明確にしていただきたい。国際共同研究の場合、来日研究者の旅費、滞在費、研究費は基本的に全て先方持ちである。また例えば、JSPSの拠点形成では、(いわゆる発展途上国の)外国人研究者が日本に渡航する旅費は先方持ち、日本国内での滞在費は日本持ち。日本人が外国に行く場合はその逆などとなっている。

(3)国際拠点になった場合でも、国内研究者コミュニティの行う研究へのサポートをきちんと続け、また拠点が外国の研究機関等と共同で研究・運用などをしている日本国外の研究拠点にて行う研究においても、今まで以上に国内の研究者をサポートできる運営がなされるべきである。


以上。


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