資料2-1 今後の共同利用・共同研究体制の在り方について(意見の整理(素案))

今後の共同利用・共同研究体制の在り方について(意見の整理(素案))

○ 今期の研究環境基盤部会においては、平成27年1月の本部会「審議のまとめ」において指摘された、今後の共同利用・共同研究体制の中・長期的在り方について、以下の4つの視点から整理した。
○ 次期以降、この整理を踏まえ、共同利用・共同研究を担う各法人・研究所において、具体的な取組の検討と推進が期待されるとともに、本部会における残る課題の検討とともに、関係者間において議論が深められることが期待される。

1 学術研究の動向に対応できる柔軟な研究組織の在り方

○ 共同利用・共同研究体制は、わが国独自の研究システムであり、各分野の研究者コミュニティーの意見を踏まえて研究所等が整備され、学術研究の発展を支えてきた。
○ また、新たな知の創出、社会における諸課題の解決などにより、社会の発展に貢献してきた。
○ 学術研究は今後ますます多様な形でかつ急速に進展していくと考えられ、そのような学問の内在的要求(学術研究の発展性、必然性)に基づいて、研究組織の在り方を変えていくことが重要である。
○ その際には、世界的な視野で学術研究の動向をとらえるとともに、従来対象としてきた研究者コミュニティーに限らない幅広い関係者の意見を集約することが重要である。
○ また、大学の共同利用・共同研究拠点、大学共同利用機関、研究開発法人それぞれの役割を明確化した上で、相互の連携を強化し、わが国全体の学術研究の発展を目指すべきである。
○ 異分野融合や新分野の創成を図るためには、スクラップ・アンド・ビルドも視野に入れつつ、新たな研究所の設立や、既存の研究組織のネットワーク化を考えていくことが必要である。


(大学の共同利用・共同研究拠点)
○ 大学の共同利用・共同研究拠点については、文部科学大臣による認定制度創設により、公私立大学での拠点設置、複数大学の研究所等によるネットワーク型の拠点の形成、大学以外の研究所等との連携制度の導入などを行ってきた。
○ 各大学においても、既存研究所の改編により大学の強みを生かした新研究所の設置(名古屋大学未来材料・システム研究所)、研究所の統合による研究組織の流動化促進(東京工業大学科学技術創成研究院)、複数大学が連携しての新分野創成(スピントロニクス学術研究(東北大学、東京大学、大阪大学、慶応義塾大学)、トランスオミクス医学研究(東京医科歯科大学、徳島大学、九州大学、熊本大学))などの取り組みが進んでいる。
○ こうした各大学の特色ある取り組みを一層促すため、国は重点的な支援を行う必要がある。


(大学共同利用機関)
○ 大学共同利用機関については、共同利用等を通しての全国の大学の支援、個々の大学では対応の難しい大型の研究プロジェクトの推進、分野共通の研究基盤の構築、最先端の分野の開拓、さらにはこれを担う人材の育成が求められている。
○ 大学共同利用機関法人では、機構長のリーダーシップにより新分野創成のためのセンターの設置などの取り組みが行われている一方で、平成16年の法人化後、独立行政法人からの移管(国立国語研究所)を除き、新たな大学共同利用機関の設置やその検討は行われていない。
○ このため、法人の長が法人内の研究組織の再編や資源配分の重点化等について、一層リーダーシップを発揮できるよう、法人のガバナンスの在り方を検討する必要がある。
○ 加えて、大学共同利用機関の果たすべき役割を踏まえつつ、現在の4法人の枠にとらわれず、学術研究全体の現状及び今後の動向を見通して、大学共同利用機関が最適なものとなっているのか、検討するための枠組みをつくる必要がある。
○ 大学共同利用機関を中心として推進している大型プロジェクトについては、現在別途作業部会において、マネジメントの在り方に係る改善方策について検討が行われており、大学共同利用機関の在り方については、作業部会でのこのような検討を踏まえる必要がある。
○ 大学共同利用機関が十分に期待された役割を果たすためには、法人運営の効率化を図りつつ、その基盤を強化する必要がある。そのためには、4機構において共通にできる業務(広報、知的財産、研究不正対応、事務職員の人事等)については、4機構長のリーダーシップにより積極的に共通化を進める必要がある。
○ 以上のような点を踏まえつつ、第4期中期目標期間における大学共同利用機関法人の在り方について、多面的かつ具体的な検討を行う必要がある。


【今後の対応】
○ 共同利用・共同研究拠点における研究組織の流動化に向けた取組に対する支援の充実(文部科学省:次年度中に検討・結論)
○ 4法人での業務の共通化の推進(機構法人:ただちに着手)
○ 第4期での各法人・共同利用機関の在り方(基盤部会:次期中に検討・結論)

2 大学の研究力・教育力強化への貢献

○ 大学共同利用機関は、研究分野ごとに個々の大学では困難な研究環境を整備し、研究機会を提供することで、各分野の研究者コミュニティーの発展に貢献するとともに、協定に基づく大学との共同プロジェクトなどの推進も含め、個々の研究者が所属する大学の研究力・教育力の強化にも様々な貢献をしている。
○ しかし、研究者のレベルでも、例えば公私立大学の研究者の利用が少ないなど、異なる分野や、利用経験のない研究者に対しては、大学共同利用機関に関する情報が十分に届いていないと考えられる。
○ また、大学共同利用機関からは、未だこうした観点からの情報発信は不十分であり、各大学の執行部において、大学共同利用機関の果たしている役割は十分に認識されているとは言えない。
○ このため、大学共同利用機関と各大学の執行部や大学関係団体との組織的な対話の機会を設け、大学共同利用機関が果たしている役割について共通の理解を得るとともに、大学関係者の要望を主体的に把握することが重要である。その際には、各機関のIR活動をもとに、大学共同利用機関の大学に対する貢献度をできる限り定量的に見える化することが必要である。
○ なお、1で述べたような今後の大学共同利用機関や大学共同利用機関法人の在り方の検討にも、大学関係者の意見を十分に反映すべきである。この際、目的に応じたステークホルダーを設定し、それに即した戦略を検討することが必要である。
○ また、より多くの研究者が大学共同利用機関を利用できるよう、各機関から共同利用・共同研究者に提供されている研究設備や資料等、共同利用・共同研究を始める際の手続きや要件、研究者が受けられる支援などに関する情報をわかりやすく発信するとともに、狭義の関連コミュニティーにとどまらず大学執行部や隣接領域の研究者などにも周知する努力が必要である。
○ 研究の国際化を推進するという観点からは、研究所の活動全般について、国内のみならず、国際的な情報発信について強化することが重要である。
○ さらに、大学共同利用機関は、研究者育成を中心に大学における人材育成への貢献も重要な役割であり、現状を詳細に分析した上で、連携大学院制度等の一層の活用を図る必要がある。また、ICTを活用した教育コンテンツの作成等においても、大学共同利用機関が大学のネットワークづくりの中核となるなど、貢献が期待される。


【今後の対応】
○ 大学共同利用機関法人・各機関と大学関係者との組織的対話(機構法人及び各機関:ただちに着手)
○ 共同利用・共同研究の手続き等の情報発信の強化・共通化(機構法人:ただちに着手)

3 研究の国際化の推進

○ 共同利用・共同研究体制は、わが国の各研究分野のCOEを形成するものであり、それぞれの研究分野の国際化を推進する拠点としての機能を果たすべきである。
○ 研究の国際化の具体的な姿としては、トップレベルの頭脳循環への参画、途上国の研究人材養成への貢献、大学の特色・強みとしての機能強化など、様々な意義、必要性、可能性があり、分野によってもその在り方は異なるので、一律かつ外形的に国際化を図るのではなく、分野の特性等に応じて推進する必要がある。
○ 外国の優れた研究者をわが国の研究機関にひきつけるためには、先端的な研究環境が整備され、優れた研究者が集まり、高い研究成果を出し続けることが必要である。
○ しかし、わが国においては、研究者に対する技術支援が脆弱であるほか、欧米の研究者公募時期と異なっていることや、日本に来る研究者のキャリア形成の道筋が明確でないなどの課題がある。
○ また、研究所の管理・運営体制の国際化(英語での運営等)、外国人研究者やその家族に対する生活支援も含めた包括的な環境整備が必要である。
○ そのほか、海外研究者との共同利用・共同研究が伸長する中で、安定的な共同利用・共同研究の推進に当たっては、海外との共同利用・共同研究における費用負担の在り方に係る基本的な考え方や留意点について、整理を行う必要がある。
○ また、国際的な研究拠点としての活動を支え、担保する観点から、研究所の活動について、より国際的な観点からの評価体制を構築することが重要である。


【今後の対応】
○ 当該分野における我が国のCOEたる大学共同利用機関及び共同利用・共同研究拠点が、更なる研究力の強化に向け、強固な国際研究ネットワークを構築するための研究環境の整備について、重点的に支援する。(文部科学省:次年度中に検討・結論)
○ 研究所の活動に関する国際標準としての観点からの評価体制の構築(機構法人及び共同利用・共同研究拠点:ただちに着手)

4 産業界など社会との連携

○ 共同利用・共同研究体制においても、大学と同様、教育研究とともに社会貢献は果たすべき重要な役割として位置付けることが必要である。
○ 第5期科学技術基本計画でも学術研究はイノベーションの源泉としての役割が期待されているとともに、日本再興戦略2016では企業からの大学等への投資を2025年度までに3倍増にするという目標が立てられており、産学連携によって産学双方のベネフィットを実現することへの期待は高まっている。
○ 共同利用・共同研究体制においても、最先端の研究装置を研究者コミュニティーだけでなく産業界の利用に供しているほか、「出口」を見据えた共同研究を行ってきた研究機関もある。また、最先端の研究を進めるために開発した技術が産業界において応用されるような例もある。さらに、共同研究者として受け入れた企業の若手研究人材の育成にも貢献している。
○ また、地方自治体をはじめ、地域の社会課題の解決に貢献することも、重要な役割である。
○ 産業界等との連携の拡大のためには、産学連携等についての学術的な成果の位置づけを整理し、評価の仕組みを整備することが必要である。
○ また、共同利用・共同研究体制は、大学の研究者のみならず、産業界等の研究者にも開かれたものであるが、それを意識した情報発信が十分には行われておらず、研究所(研究者、研究成果、研究環境等)の一層の見える化を推進し、産業界に対する窓口を明確化することが求められる。
○ さらに、産業界等の研究者に対するサポート体制の充実や産業界等との企画・提案・交渉・調整体制の確保が重要である。特に、産業界との調整に当たっては、研究内容について理解し、企画、知財、リスクマネジメント等に精通している人材が当たることが重要である。
○ そのほか、研究者や技術者などとの交流に基づく企業の若手研究人材育成への貢献が重要であり、様々なチャネルを通じた企業の研究者や技術者との交流や人材育成機会の提供を、継続的、組織的に行っていく必要がある。
○ こうした共同利用・共同研究体制における産学連携の推進に向けた体制整備を促すため、取組に対する支援の充実を図る必要がある。
○ 産学連携の拡大については、大学全体に係る推進方策についての検討が行われており、それを踏まえつつ、共同利用・共同研究体制特有の課題については、さらに検討を深める必要がある。
○ 具体的には、組織の枠を超えて関係する研究者を結集し、将来の新産業創出につながるような先端的な研究・技術シーズを生み出すことができるのが、共同利用・共同研究体制の強みと考えられるが、その場合の知的財産の管理の在り方や、産学官における人材流動の促進の在り方については、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」(平成28年11月30日イノベーション促進産学官対話会議)を踏まえるとともに、共同利用・共同研究体制における課題については更なる整理が必要である。


【今後の対応】
○ 共同利用・共同研究体制における産学連携の推進に向けた取組に対する支援の充実(文部科学省:次年度中に検討・結論)
○ 共同利用・共同研究体制、特に異なる研究機関間での共同研究推進における知的財産の管理の在り方(基盤部会:次期中に検討・結論)
○ 教員、研究者の業績として産学官連携活動を評価する仕組みを検討するとともに、産学官連携に取り組むことによるリスクの回避を含めた組織的なサポート体制の構築を検討する。(省内の関係会議における検討と連携)
○ 産学官における人材流動の促進と、そうした取組を通じた専門人材の養成やキャリアパスの確保。(省内の関係会議における検討と連携)


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研究振興局学術機関課

-- 登録:平成29年03月 --