(15)イノベーション創出・チャレンジ精神に溢れる人材の創出
中長期的な経済成長を支えるのは、イノベーションと人材である。データを巡る熾烈な競争が繰り広げられつつある第4次産業革命においては、斬新なビジネスモデルの登場により付加価値の源泉が瞬時に移り変わるなど、陳腐化も早いが、斬新なアイデアや技術を武器にした思い切った挑戦による急激な成長も可能であり、まさに、「イノベーションの時代」である。第4次産業革命を勝ち抜くもう一つの鍵が人材であり、データの利活用に日常から接し、新たな付加価値を生み出していくことが求められる。
(イノベーション、ベンチャー創出力の強化)
世界に先駆けて第4次産業革命を実現できるかは、オープンイノベーションを実践し、企業の内外のリソースを効率的かつ柔軟に活用できるかにかかっている。産学連携の体制を強化し、企業から大学・研究開発法人への投資を、今後10年間で3倍に増やすことを目指す。〔中略〕
(多面的アプローチによる人材の育成・確保)
人工知能等の活用によって、仕事の内容や働き方は劇的に変化していくと考えられるが、データを活用して付加価値を生み出すのは「人材」である。第4次産業革命を支える人材の確保・育成に向けて、〔中略〕高等教育における大学院・大学での数理教育の強化、特定国立研究開発法人等における世界レベルの研究者を糾合した研究と人材育成の一体的推進などに着手する。〔中略〕
名目GDP600兆円の実現
人口減少局面における成長力の強化(生産性革命に向けた取組の加速)
5 イノベーション、ベンチャー創出力の強化(イノベーション・ナショナルシステムの構築)
【経済成長に向けた課題】
生産性革命の実現に向けて、イノベーション、ベンチャー創出力の強化が不可欠。
【今後の対応の方向性】
大学改革、研究開発法人の機能強化等を推進し、世界で最もイノベーティブな国を目指す。また、世界レベルの産学連携の実現等を推進する。
【具体的な施策】
・ 大学改革(指定国立大学、卓越大学院(仮称)、経営力強化に向けた大学間競争の活性化等)、研究開発法人改革(特定国立研究開発法人等)、競争的研究費改革を着実に実行。
・ 基礎研究や学術研究等を強化、世界から優秀で多様な人材が集う世界トップレベル研究拠点を構築
〔中略〕
2.成長戦略の加速等
(1)生産性革命に向けた取組の加速
3 研究開発投資の促進
「第5期科学技術基本計画」に基づき、IoT、ビッグデータ、人工知能に係る研究開発等について、将来必要となる技術を特定し今後の展望をロードマップとして描き、一元的な司令塔の下、官民を挙げて推進するとともに、新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術の強化・基礎研究の推進、企業・大学・国立研究開発法人等におけるオープンイノベーションの推進や機能強化、及び民間における研究開発投資の促進を図る。これにより、2020年(平成32年)までに官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上とすることを目標とするとともに、政府研究開発投資について、「経済・財政再生計画」との整合性を確保しつつ、対GDP比1%にすることを目指すこととする。期間中のGDPの名目成長率を「中長期の経済財政に関する試算」の経済再生ケースに基づくものとして試算した場合、第5期科学技術基本計画期間中に必要となる政府研究開発投資の総額の規模は約26兆円となる。また、人工知能の普及に伴う社会的・倫理的課題に関し国内外の議論を進める。加えて、世界最高水準のITインフラ環境、その運用を行う人材の確保及び生活に密着した分野における利活用促進、サイバーセキュリティ対策、知的財産戦略の推進、先端技術の国際標準化に、官民挙げて取り組む。
(4)文教・科学技術等
(文教・科学技術)
文教・科学技術分野については、1少子化の進展を踏まえた予算の効率化、2民間資金の導入促進、3予算の質の向上・重点化、4エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底を基本方針として、以下の改革を進める。
〔中略〕
国立大学法人運営費交付金の各大学の機能強化の取組構想やその評価に基づく重点配分により、大学間の連携や学部等の再編・統合の促進を図るとともに、民間資金の獲得割合の上昇を一つの指標とすること等により、民間資金の導入を促進する。
国立大学・公的研究機関と民間企業等との共同研究の促進等による民間資金導入の促進、国立大学の寄附金収入の拡大など財源の多様化、有能な人材の流動化、研究設備の共用化等を推進する。
第1 総論
(イノベーションと人材の強化)
第4次産業革命を実現する鍵は、オープンイノベーションと人材である。技術の予見が難しい中、もはや「自前主義」に限界があることは明白である。既存の産学官の枠やシステムを超え、世界からトップレベルの人材、技術、資本を引き付ける魅力ある国となれるのか、が勝敗を分けるポイントである。
〔中略〕
大学改革、国立研究開発法人改革を実現し、産学共同研究を大幅に拡大する。
〔中略〕
(第4次産業革命への対応)
〔中略〕
第4次産業革命を支える横断的施策であるイノベーションや人材育成も、いよいよ本格的な取組が開始される。
国立大学改革、国立研究開発法人改革は、いよいよ社会実装の時である。第4次産業革命の鍵を握る人工知能関連分野の技術戦略も、我が国の技術的な強みや海外の動向も広くウォッチしながら、戦略と行動の具体化を進めていく。個々の大学、国立研究開発法人が、自らの強みをベースに、何を目指し、誰と組み、何をするのか、目に見える具体的な取組を進めていくこととする。
〔中略〕
第2 具体的施策
1.イノベーション・ベンチャー創出力の強化
(2)新たに講ずべき具体的施策
1)イノベーション・ナショナルシステム構築の仕上げ
本年5月の国立大学法人法の一部改正法(平成28年法律第38号)(以下「改正国立大学法人法」という。)及び特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法(平成28年法律第43号)(以下「特定国立研究開発法人法」という。)の成立等を踏まえ、イノベーション創出力の強化のための制度整備や、その実装に重点を移す。
このため、本年度から始まった第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日閣議決定)で打ち出された「Society5.0」の実現・具体化に向け、「科学技術イノベーション総合戦略2016」(平成28年5月24日閣議決定)の内容を推進する。また、本年度から第3期中期目標期間が始まった国立大学の機能強化、国立研究開発法人の「橋渡し」機能の強化、技術・人材・資金を糾合する共創の場の形成の更なる強化等を図る。〔中略〕これらの取組により、イノベーション創出と、それにより得られた果実の次のイノベーションの種への投資という好循環を形成し、世界一イノベーティブな国の実現を目指す。
〔中略〕
1 大学改革
ア)指定国立大学法人制度
改正国立大学法人法の成立を踏まえ、世界トップレベルを目指し、高い経営力により国内外の様々なリソースを呼び込む指定国立大学法人制度の運用を来年度から開始し、来年度中に複数の国立大学の指定を目指す。
また、出資対象事業に係る規制緩和を活用した具体的なモデル事業例の創出を促進する。
〔中略〕
ウ)大学の機能強化の取組の加速
国立大学法人の第3期中期目標期間(本年度~2021年度)を通じて、機能強化経費、学長裁量経費、年俸制への移行等を含む人事給与制度改革による影響額等、各大学の機能強化のための戦略的な改革の取組(改革加速期間中(2013年度~昨年度)の改革を含む。)への配分及びその影響を受ける運営費交付金等の額の割合を4割程度とすることを目指す。 また、財務基盤の強化に向けて新たに認められた土地等の貸付事業について、国立大学における具体的な取組を促すため、土地等の貸付事業の考え方に係るガイドラインを本年度中に策定する。
世界から優秀な人材が集う研究拠点を構築する世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)を引き続き推進するとともに、当該プログラムが、融合領域等新領域の創出、人事給与改革、海外からの優れた研究者や寄付金の呼び込み等優れた実績を生み出していることを踏まえ、本年度中に当該取組の経験・ノウハウを学内外に横展開する仕組みを検討し来年度から導入する。また、国立大学法人の評価に当たっても、研究力向上や国際化の取組促進に向けた改革の先進事例として活用する。
なお、WPIプログラムが2007年度の支援開始から本年度末で10年を迎え、支援終了後の拠点の優れた研究システムの維持・発展の問題が顕在化しているところ、これらのシステム改革の継続のための方策・在り方について、大学改革の取組全体における位置付けを明確化しながら、運営費交付金と競争的経費によるデュアルサポートシステムの再構築の観点を踏まえて、文部科学省において本年度中に検討を行い、一定の結論を得ることを目指す。
2)組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学官連携の推進
2 国立大学法人評価や指定国立大学法人指定へのガイドラインの活用
毎年度実施する国立大学法人法に基づく国立大学法人等の評価に当たり、1で策定するガイドライン(※)の内容については、産学官連携の取組の評価の際に、参照すべき取組の例として活用する。また、指定国立大学法人の指定に際しても、産学連携を行うに当たって1で策定するガイドラインの内容を踏まえた取組がなされているか、またはなされる計画となっているかを十分踏まえるものとする。
※1で策定するガイドライン:産学連携を円滑に推進する観点から、関連する課題に対する処方箋や考え方を取りまとめたもの。
3.各分野の政策の推進
1.地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする
-ローカル・アベノミクスの実現-
4.地方の先駆的・主体的な取組を先導する人材育成
<課題>
○多様な人材育成・確保
・各地方公共団体においては、今後、「地方版総合戦略」に基づき、より具体的な事業を本格的に推進する段階に入る。その際、1)事業の戦略全体を俯瞰ふかんし関係者の合意を得る人材、2)日本版DMOやまちづくりなどの個別分野に精通し事業を経営実行する人材など、様々な専門性を有する人材が必要となるが、地方では不足しているとの指摘がある。
<今後の方向性>
○多様な人材育成・確保
・基礎知識や専門分野ごとに求められる実践的な知識について、地方創生を志す者が地域や時間を問わず学べる機会を提供し、若者も含め地方の多様なニーズに合致する人材を育成・確保できる仕組みを構築する。
第3章 科学技術イノベーションの基盤的な力の強化
(2)知の基盤の強化
持続的なイノベーションの創出のためには、イノベーションの源である多様で卓越した知を生み出す基盤の強化が不可欠であり、その際、従来の慣習や常識にとらわれない柔軟な思考と斬新な発想を持って研究が実施されることが特に重要である。しかし、我が国の論文数、高被引用度論文数は共に伸びが十分でなく、国際的な共著論文の伸びも相対的に低い。そうしたことから、我が国の基礎研究力の低下が懸念される。このため、国は、研究者の内在的動機に基づく自発的・独創的な学術研究や戦略的・要請的な基礎研究等の更なる推進を図るとともに、オープンサイエンスの世界的な流れにも適切に対応していく必要がある。
1) イノベーションの源泉としての学術研究と戦略的・要請的な基礎研究の推進
研究者の内在的動機に基づく学術研究は、新たな学際的・分野融合的領域の創出や幅広い分野でのイノベーション創出の可能性を有している一方で、学術研究に対する社会からの負託に応えていくことが求められており、国は、挑戦性、総合性、融合性及び国際性の観点から改革と強化を進める必要がある。また、学術研究に関する研究資金の分野別等の配分状況を踏まえ時代の要請と学術研究の継続性を両立させつつ、学術研究の健全な多様性を確保していくことが重要である。
〔中略〕
さらに、国際性の観点から、学術研究の大型プロジェクトの推進や国際共同研究の戦略的な推進、優れた研究環境と高い研究水準を誇り、国内外から第一線の研究者を引き付ける世界トップレベルの拠点の形成が重要である。
2) 研究開発活動を支える共通基盤技術、施設・設備、情報基盤の戦略的強化
世界最先端の大型研究施設や大学等の研究機関が保有する先端研究施設・設備等の整備・共用は、我が国の研究開発基盤の強化のみならず、多種多様な人材の交流による科学技術イノベーション創出の加速が期待される。このため、国は、研究開発活動を支える共通基盤技術や先端的な研究機器の強化を図るとともに、研究施設・設備等の全体像を俯瞰した上で、その規模や特性等に応じた戦略的な共用の促進や、研究開発と共用の好循環の確立を図る必要がある。
また、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点においては、大学の枠を超えた共同利用の取組が進められているが、大学内における中小型の研究設備・機器の共用については、研究室単位での利用が中心であり、組織単位での共用化が進んでいない。大学は、研究開発投資の効果を最大化し優れた研究成果を創出するため、組織全体の研究設備・機器の計画的運営や専門スタッフの確保・配置など、運営体制の強化が求められる。こうした取組を前提としつつ、国は、組織単位の設備の共用から大学の枠を超えた全国的な設備の共用までを一体的に推進する。
【重きを置くべき取組】
2 研究開発活動を支える共通基盤技術、施設・設備、情報基盤の戦略的強化
○最先端の研究インフラ等の整備・共用
〔中略〕
・大学及び公的研究機関等において、産学官が共用可能な研究施設・設備等の共用を更に進めるため、プラットフォーム形式の促進とともにプラットフォーム間連携の推進を図る。また、組織単位で一元的に研究設備・機器を管理・運営する共用システムの導入を促進し、研究設備・機器や保守管理業務の集約・効率化を図る。さらに、組織の枠を越えた新たな共同利用体制の構築に資する取組を支援するなど、全国的な共用を促進する。
○共同利用・共同研究体制の強化・充実
・大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点において、分野間連携・異分野融合や新たな学際領域の開拓、学術研究の大型プロジェクト等の推進をはじめとする国際的な頭脳循環や人材育成の拠点としての機能を充実させるべく、拠点のネットワーク化を促進するなど、各組織間の効果的な連携による共同利用・共同研究体制の更なる強化・充実を図る。
(3)資金改革の強化
政府が支出する研究資金には、大学等の研究や教育を安定的・継続的に支える基盤的経費と、優れた研究や特定の目的に資する研究等を推進する公募型資金がある。
特に、これら多くの資金が投じられている国立大学は、これまでに様々な改革が進められ一定の成果を上げてきたが、世界における競争激化など社会環境が変化する中、科学技術イノベーションのエンジンとして継続的な「知」の創造と活用の機能を最大化していくため、今後も組織を抜本的に改革し、多様な研究資金を効果的・効率的に活用する環境を整えるとともに、ガバナンスの強化等を促進し機能強化を図っていくことが求められている。
このため、国は、基盤的経費と公募型資金の双方について改革を進めるとともに、それら研究資金改革と国立大学の組織改革とを一体的に推進する。その際、基盤的経費と公募型資金のバランスを常に考慮することが重要である。
1 基盤的経費の改革
大学の基盤的経費は年々減少傾向にあり、経営・人事システムの改革の遅れなどともあいまって、研究の多様性や基礎研究力の相対的低下、若手人材の雇用の不安定化といった問題が生じている。
そのような中、国立大学が、地域への貢献、分野ごとの優れた教育研究拠点の形成、国際レベルの競争的な環境下での卓越した教育研究の推進など、自らの強み・特色を最大限生かし、その役割を一層果たしていくためには、学長がリーダーシップを発揮し、確かなコスト意識と予算・施設等の学内資源を戦略的に配分する一層効率的・効果的な運営が求められる。
このため、国は、地域への貢献、教育研究拠点の形成、卓越した教育研究の推進の三つの機能強化の方向性に応じて、国立大学法人運営費交付金の重点的な配分を行い、国立大学改革の加速を図るとともに、自らの強み・特色を最大限生かした大学間競争の活性化を図る必要がある。
〔中略〕
【重きを置くべき取組】
1 基盤的経費の改革
・国立大学法人運営費交付金に三つの重点支援枠を設け、各国立大学の提案構想の進捗状況に応じた段階的な評価を実施し、その結果を次年度の予算配分に反映することにより、各国立大学による自らの強み・特色を最大限生かした機能強化の取組を促進する。
〔中略〕
第4章 科学技術イノベーションの基盤的な力の強化
(2)知の基盤の強化
〔中略〕
このため、研究者の内在的動機に基づく独創的で質の高い多様な成果を生み出す学術研究と政策的な戦略・要請に基づく基礎研究の推進に向けて、両者のバランスに配慮しつつ、その改革と強化に取り組む。さらに、我が国が世界の中で存在感を発揮していくため、学際的・分野融合的な研究や国際共同研究を推進するとともに、国内外から第一線の研究者を引き付ける世界トップレベルの研究拠点を形成する。なお、こうした取組の実施に当たっては、研究者が腰を据えて研究に取り組める環境を整備することや、組織の多様性・自律性を尊重しつつ、長期的な観点で成果の創出を見守ることが重要であることにも留意する。
〔中略〕
1 イノベーションの源泉としての学術研究と基礎研究の推進
1)学術研究の推進に向けた改革と強化
知のフロンティアが急速な拡大と革新を遂げている中で、研究者の内在的動機に基づく学術研究は、新たな学際的・分野融合的領域を創出するとともに、幅広い分野でのイノベーション創出の可能性を有しており、イノベーションの源泉となっている。
このため、学術研究の推進に向けて、挑戦性、総合性、融合性及び国際性の観点から改革と強化を進め、学術研究に対する社会からの負託に応えていく。
〔中略〕
また、大学共同利用機関及び共同利用・共同研究拠点においては、分野間連携・異分野融合や新たな学際領域の開拓、人材育成の拠点としての機能を充実するため、各機関及び拠点の意義及びミッションを再確認した上で改革と強化を図ることが求められる。国は、各機関及び拠点へのメリハリある支援を行うとともに、我が国全体の共同利用・共同研究体制の構築に貢献する学術研究の大型プロジェクトについて戦略的・計画的な推進を図る。
3)国際共同研究の推進と世界トップレベルの研究拠点の形成
我が国が世界の研究ネットワークの主要な一角に位置付けられ、世界の中で存在感を発揮していくためには、国際共同研究を戦略的に推進するとともに、国内に国際頭脳循環の中核となる研究拠点を形成することが重要である。
このため、国は、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点を活用しつつ、滞在型の国際共同研究を充実する。核融合、加速器、宇宙開発利用などのビッグサイエンスについては、国内外施設の活用及び運用を図り、諸外国との国際共同研究を活発化する仕組みを構築するなど、国として推進する。また、二国間、多国間協力を強化し、相互に有益な関係を構築するため、共通課題の抽出など相手国と戦略的に連携しつつ、マッチングファンドや海外共同拠点の運営の充実を図る。
〔中略〕
2 研究開発活動を支える共通基盤技術、施設・設備、情報基盤の戦略的強化
2)産学官が利用する研究施設・設備及び知的基盤の整備・共用、ネットワーク化
世界最先端の大型研究施設や、産学官が共用可能な研究施設・設備等は、研究開発の進展に貢献するのみならず、その施設・設備等を通じて多種多様な人材が交流することにより、科学技術イノベーションの持続的な創出や加速が期待される。〔中略〕さらに、こうした施設・設備間のネットワーク構築や、各施設・設備等における利用者視点や組織戦略に基づく整備運用・共用体制の持続的な改善を促す。〔中略〕
(3)資金改革の強化
政府が負担する資金には、運営費交付金、施設整備費補助金、私学助成等の研究や教育を安定的・継続的に支える基盤的経費と、優れた研究や特定の目的に資する研究などを推進するために配分する公募型資金があるが、これらは共に科学技術イノベーション活動の根幹を支えるものであり、その在り方は研究力や研究成果、組織の運営、人材の配置等に大きな影響を与えるものである。
特に、多くの公的資金が投じられている国立大学については、組織を抜本的に改革し、多様な研究資金を効果的・効率的に活用する環境を整えると同時に、ガバナンスの強化等を促進することで、その機能の強化を図っていく必要がある。
このため、国は、基盤的経費と公募型資金の双方について改革を進めるとともに、特に国立大学に対しては、組織改革と政府の研究資金制度改革とを一体的に推進する。その際、基盤的経費と公募型資金の最適な組合せを常に考慮することが重要である。
3 国立大学改革と研究資金改革との一体的推進
科学技術イノベーションを推進する上で、その中核的な実行主体である国立大学の組織を抜本的に改革し、機能の強化を図ることが喫緊の課題であり、国立大学改革と政府の研究資金制度改革とを一体的に推進する。
大学改革の主体は大学自身であり、自らの理念に基づき教育研究の現場に改革を実装していく責務を持っている。このため、国は、自らの強み、特色を最大限生かしつつ自己改革に積極的に取り組む国立大学を重点支援し、グローバルな視点から大学間競争を活性化する。具体的には、大学の機能強化の方向性に応じた運営費交付金の新たな配分・評価方式について、国立大学の第3期中期目標期間から実行する。各大学においては、自らの強み・特色を最大限に生かし、自ら改善・発展する仕組みを構築することが求められる。具体的には、教育研究組織の大胆な再編や新陳代謝、学長のリーダーシップやマネジメント力の強化、人事給与システムの改革、経営人材の育成・確保等が求められる。さらに、経営力強化に向けた財務基盤の強化のための方策を講ずることが重要であり、国内外の企業との共同研究等の拡大に向けた、大学による企業との対話の努力及び協力の枠組みの構築等が求められる。国は、このような取組状況等を評価し、運営費交付金の配分等に適切に反映する。
〔中略〕
研究振興局学術機関課
-- 登録:平成28年12月 --