資料1 共同利用・共同研究体制の強化に向けて(中間まとめ)(案)-共同利用・共同研究拠点の在り方を中心に-

1.共同利用・共同研究拠点の経緯と意義・役割について

(1)共同利用・共同研究拠点の経緯

○個々の大学の枠を超え、全国の国公私立大学等から研究者が集まって行う共同利用・共同研究のシステムは、我が国が独自に発展させてきた仕組みであり、国際レベルの研究成果をあげるなど、我が国の学術研究の発展に大きく貢献してきた。

○こうした共同利用・共同研究のシステムは、従来大学共同利用機関、国立大学の附置研究所や研究センター等を中心に推進されてきたが、国公私立大学を問わず大学の研究ポテンシャルを活用して、研究者が共同で研究する体制を整備することが重要であることから、平成20年7月、学校教育法施行規則の改正等により、国公私立大学を通じたシステムとして、新たに文部科学大臣が大学の附置研究所や研究センター等を共同研究の拠点として認定する制度が創設されたところである。
※平成26年7月現在、大学共同利用機関:4法人、17機関
共同利用・共同研究拠点:95拠点

○現在、制度創設5年が経過し、拠点の大半を占める国立大学の第二期中期目標期間の終了が平成27年度に迫り、国立大学改革の動きが加速する中、改めて、このような共同利用・共同研究拠点制度の意義・役割について確認を行うと共に、今後拠点制度をさらに深化・発展させるために、課題と今後必要な方策等について検討を行う必要がある。

(2)共同利用・共同研究拠点の意義・役割

○共同利用・共同研究拠点の意義・役割を整理すると、具体的には概ね以下の通りである。

[1]関連分野の中核的な研究拠点としての意義・役割

○学術研究の高度化・国際化が進展するとともに、各学問分野の専門化・細分化が進む中、異なる視点をもつ研究者の知を結集させ、研究の活性化や異分野融合・新分野創成を促進する観点や、人的・物的資源を効率的に活用する観点から、共同利用・共同研究拠点において関連研究者が共同して研究を進めることや、研究施設・設備や資料・データ等を共同で利用することの必要性・有効性は一層大きくなっている。また、国際ネットワークを形成して国際共同研究や人材交流などを主導し、国際的な頭脳循環のハブや我が国の国際活動の戦略的展開に資する情報の収集・分析のプラットフォームとしての役割や若手・女性研究者の人材育成・供給拠点としての役割も期待される。

[2]各大学に設置されている研究組織が共同利用を行うことの意義・役割

○現在の国立大学改革やミッションの再定義の流れの中、大学に求められる『グローバル化』、『研究力強化』等の実現に向け、各大学においては、附置研究所や研究センター等の研究機能がこれまで以上に十分な役割を果たすことが求められている。共同利用・共同研究拠点としての活動は、大学の研究活力の増大、研究機能向上に直結するものである。一方附置研究所や研究センターは大学の関連研究科の協力講座としての教育機能も有することから、全国の研究者コミュニティの中核である共同利用・共同研究拠点に期待される機能・役割として、特に、当該分野における高度専門人材育成への貢献も挙げることができる。

○加えて、大学を国内外の研究者や産業界に開かれた場とする観点からも、学術研究の推進体制を支えている共同利用・共同研究拠点の潜在的な有用性は高いことに注目すべきである。共同利用・共同研究拠点の意義・役割について、大学において改めて評価、認識を深めることにより、拠点としての機能向上が大学全体の研究力向上に相乗的効果を及ぼすことに留意すべきである。

2.共同利用・共同研究拠点制度の課題

○共同利用・共同研究拠点制度について、「1.」で示した拠点の意義・役割が十全に発揮されることが期待されるが、現状において、以下のような課題があると考えられる。

(1)拠点数の増加に伴い研究者コミュニティ内での連携推進が一部困難

○制度発足後、現在まで、拠点の認定数は着実な増加を見せてきたが、増加に伴い、例えば、一分野多拠点制度の導入などにより拠点の役割分担などが過度に進むことがあると、かえって各拠点におけるバランスのとれた研究の推進が難しくなることが、指摘されている。

(2)拠点の活動に対する各大学の位置づけが不明確

○共同利用・共同研究拠点は、大学の研究力向上等に寄与するものである一方、国立大学改革の動きの中では各大学自身の機能を強化する動きが強まり、大学の枠を越えた全国的な観点からの共同利用・共同研究の推進は、各大学固有の研究機能を向上させるものとは必ずしも見なされず、各大学の機能強化の構想において、本来各大学の強み・特色として活用されるべき拠点の位置づけが不明確になっている。

(3)新たな要請に応える拠点の取組への財政的支援が年々困難

○現状において、拠点間連携やネットワークの構築、国際化、分野融合による新分野創成などの新たな要請に応える拠点の取組は十分とはいえない。平成26年4月現在、95拠点(国立大学29大学77拠点、公私立大17大学18拠点)が認定され、国立大学運営費交付金あるいは特色ある共同研究拠点の整備の推進事業により、国公私立通じた拠点に対する拠点活動への基盤的な支援が行われているが、拠点活動の活性化や機能強化に資するこうした新たな要請に応える拠点の取組への財政的支援は、年々困難になっている。

(4)拠点を全国レベルの機関に転換するインセンティブが欠如

○かつて、学術分野の動向や社会の要請を踏まえた共同利用・共同研究体制の整備の観点から、大学の附置研究所や研究センターを発展的に改組して大学共同利用機関を設置する事例も見られたが、国立大学法人制度発足後、このような組織の改編を含む流動性は損なわれている。すなわち、法人化以降、特色のある大学の附置研究所や研究センター等を研究者コミュニティが主体となって全国レベルの機関に転換することのインセンティブが失われている状況にある。

3.共同利用・共同研究拠点の機能強化に向けた基本的考え方

共同利用・共同研究拠点の機能強化の検討に当たっては、個々の大学の枠を超えた研究者の知を結集して多様な研究活動が行われるという共同利用・共同研究の特性を生かして、各研究分野の強み・特色をさらに伸長していく視点とともに、共同利用・共同研究体制全体の強化に資するシステム改革を図っていく視点が重要である。

(1)拠点間連携の一層の強化

○今後の拠点の機能強化に向け、人的・物的資源をより効果的に活用する観点、また、分野を超えた新たな学問的融合を促進する観点、さらには、分野における強み・特色がより全国的に生かされる観点からも、拠点間の連携を一層強化することが必要である。具体的には、拠点間の密接な連携により拠点総体としての機能が一層高まることを目指して、ネットワーク型での拠点形成が可能かどうか、可能な範囲で検討を促す。ネットワーク型拠点については、複数の拠点が連携し、研究目標と情報を共有し協力して研究を推進する体制を構築することにより、[1]学術の発展に対してより柔軟な組織編成が可能であること、[2]当該研究機関の規模を超えた研究に対応することが可能となること、[3]一分野にとどまらず、異分野融合による新分野創成などが容易となること等、我が国の学術研究の発展に貢献するものであり、今後更に推進する必要がある。ちなみに、ネットワーク型拠点は、拠点として単独で認定を受けて活動することが困難な組織にとっても、ネットワークの構成機関として拠点に加わることが可能となるものであり、その強み・特色が全国的な観点で活かされることになる観点からも、我が国の研究力強化にとっては非常に有用であり、強化すべきとの視点もある。
また、拠点の認定後、新たな学問分野の創成に向けて、ネットワーク型拠点を含む認定された拠点間での連携やネットワーク形成を推進する取組も必要であり、強化を図る必要性がある。

(2)大学の機能強化への貢献

○国立大学改革の動きが加速する中、大学の機能強化への取組みが強く求められており、共同利用・共同研究拠点は、当該大学の研究力向上に直接的に寄与するとともに、我が国の学術研究における共同研究推進のハブとして、また人材育成の拠点としても機能することで、広く大学全体や当該分野の研究者コミュニティを支え、各大学の研究の活性化と機能強化にも資するものと考えられる。

(3)時代の新しい要請への柔軟な対応

○学術研究が人類社会の持続的発展や現在及び将来の人類の福祉に寄与するとともに、国際社会において存在感を発揮するなど、「国力の源」としての役割を果たすためには、現代の学術研究においては、研究者は自己の専門分野の研究を突き詰めた上で、分野、組織などの違い、さらには国境を越えて、異なる価値や文化と切磋琢磨しつつ対話と協働を重ね、社会の変化に柔軟に対応しながら新しい卓越した知やイノベーションを生み出すために不断の挑戦をしていくこと、すなわち、「挑戦性、総合性、融合性、国際性」が特に強く要請されている。
こうした学術研究への要請は、共同利用・共同研究拠点においても同様であり、具体的には、グローバル化の観点から、国際ネットワークを形成して、国際共同研究や人材交流などを主導し、国際的な頭脳循環のハブや我が国の国際活動の戦略的展開に資する情報の収集・分析のプラットフォームとしての役割や時代を担う若手研究者の人材育成拠点としての役割を果たすことや、異分野融合による新分野創成など、我が国の学術研究の拠点として、大学の枠を超え、時代の新しい要請に柔軟に対応することが重要である。

(4)拠点の体制強化の推進

○国際的な頭脳循環ハブや我が国の国際活動の戦略的展開に資する情報の収集・分析のプラットフォームとして、あるいは異分野融合・新分野創成、若手・女性研究者などの人材育成の基盤としても共同利用・共同研究拠点が機能するためには、特に組織運営、人事面等での体制強化を図ることが重要である。体制強化に当たっては、拠点の研究成果について、国民・社会や学術界、産業界などに対する情報発信を国内外で積極的に行い、拠点の活動について、十分な説明責任を果たすことが重要である。

4.共同利用・共同研究拠点の機能強化に向けた具体的方向性

「1.」に示した意義・役割を果たす共同利用・共同研究拠点として、「2.」で整理した課題を解決するため、「3.」の基本的考え方にのっとり、今後その機能の一層の強化を図る観点から、以下の拠点整備にあたっての基本的方針を踏まえ、具体的方向性にそって取組を推進するとともに、国においても、その進捗状況を評価することが必要である。

(共同利用・共同研究拠点の整備にあたっての基本的方針)

○共同利用・共同研究拠点の整備にあたっては、認定時・中間・期末の評価と文部科学大臣の認定制度が連動していることも踏まえ、評価によるPDCAサイクルを基盤としたシステムを構築していくことが重要である。
特に、現状、拠点の大半を占める国立大学の拠点に関し、認定期間と国立大学の中期目標・中期計画期間が連動しており、拠点の継続性について一定の時限で見直しが図られるシステムとなっているが、今後、拠点の機能強化の観点から、認定期間中においても、中間評価などを基に各拠点の活性化や改善に資する仕組みとすることが必要である。
また、平成22年の制度発足後初となる期末評価(平成27年度実施予定)においては、中間評価結果等を踏まえた拠点の継続性のチェックを行うことが適切である。各拠点の活性化や改善に資するPDCAサイクルの強化の観点から、その評価項目の設定に当たっては、拠点の規模や研究者コミュニティの動向、分野の性質などに応じたきめ細やかな評価が行われるよう、本報告で指摘した拠点の機能強化に向けて期待される事項を中心に細目を検討していくことが重要である。
その際、第3期に向けて、柔軟な改編等が可能となるような制度改善を検討すべきである。

○期末評価で認定更新が検討される既存の拠点組織については、「1.」の観点から、その意義・役割を果たしているか、また今後に向けて強化される可能性があるか、といった観点から、必要と判断される場合には見直しを促す。 具体的には、中間評価結果を踏まえた改善が図られない場合や、期末評価で低評価の場合には、拠点の認定更新はしない等、厳正な質の保証・管理を行うことが考えられる。
※共同利用・共同研究拠点の中間評価結果(平成25年8月)
S:18拠点(24%)、A:46拠点(62%)、B:9拠点(12%)、C:1拠点(1%)

○これまで拠点のなかった分野等についても、研究者コミュニティからの意向を踏まえ、必要な場合には拠点の整備を行う。(その場合、整備される拠点の分野が学問領域全体を網羅すべきかを考慮する必要があるとともに、整備すべき分野をどのように把握するかが課題。)こういった新たな共同利用・共同研究拠点の形成のニーズが高い学問分野において、個人的研究から拠点形成へと発展する可能性のある研究プロジェクトや研究体制の整備に対して、スタートアップを促進するための方策の検討を行う。

○共同利用・共同研究拠点の一層の機能強化を図る観点から、新たな要請に応える拠点への重点的支援に向けた検討を行うとともに、拠点への基盤的経費の支援の在り方についても見直しを行う。

○なお、今後検討が進められる国立大学法人運営費交付金制度の改革や次期中期目標・中期計画の策定に向けた国立大学法人評価制度の検討に当たっても、これらの基本的方針について十分留意されることが望ましい。

(1)一分野多拠点に係る考え方とネットワーク型拠点の形成の促進

○拠点間の連携を促進し、資源を効率的に活用する観点から、ネットワーク型拠点の形成を促進する。具体的には


1)既に、一分野で複数の拠点が認定されている場合、各拠点が一定の役割分担の下で相互に密接な連携を図ることが求められる(認定更新の際などに、ネットワーク型での拠点形成が可能かどうか、可能な範囲で検討を促す)。


2)既に拠点が認定されている一分野につき、新たな拠点を認定する際は、当該分野の拠点が現在どのように機能しており、新たに多拠点を認定した場合における拠点間の役割分担とともに、拠点間相互で密接な連携がどのように図られ、多拠点が存在する効果を十分に考慮することが求められる。その場合、ネットワーク型での拠点形成が可能かどうか、可能な範囲で検討を促す。


3)拠点認定後に、新たな学問分野の創成に向けて、拠点もしくはその一部がネットワーク形成を推進する場合、単独拠点とネットワーク型拠点の併用を可能とする。

(2)大学の機能強化と連動した取組への支援

○現在の国立大学改革やミッションの再定義の流れの中、大学に求められる『グローバル化』、『研究力強化』等の実現に向け、拠点間連携やネットワークの構築による国際化、分野融合による新分野創成など、新たな取組を行う拠点に対する支援の枠組みが現状では存在しないため、そのような取組に対する重点的な支援について検討する必要がある。
○また、共同利用・共同研究拠点が有する国内研究者コミュニティの中核としての機能、あるいは国際的な頭脳循環のハブとしての機能を維持・向上させるとともに、大学の研究機能を向上させる方策として、こうした拠点における取組を広く学内外の組織と連携し、取組を広げていくことが必要である。

(3)国際化や産業界との連携等への対応

○共同利用・共同研究拠点は、分野によっては国際ネットワークを形成して国際共同研究や人材交流などを主導し、国際的な頭脳循環のハブや我が国の国際活動の戦略的展開に資する情報の収集・分析のプラットフォームとしての役割を果たすことが重要となる。そのためには事務的なサポートの強化が必要であり、URAの活用など拠点を発展させるための戦略的に活動できる人材の育成が望まれる。
○国際共同研究等を推進するために、国際対応を専門とする事務職員や技術職員を配置や、国際的な人材登用を含めた若手人材育成等、国として支援する必要がある。
○いわゆる先進国のみならず、アジアやアフリカ諸国の学術研究の発展に貢献するために日本の共同利用・共同研究拠点の果たすべき役割は重要であることを強く意識すべきである。
○国際的にも中核的な研究拠点を目指すためには、国際公募を実施し、待遇面等について柔軟な人事制度を整えることにより、国内外から卓越した研究者を集め、国際的な研究環境を目指すことも考えられる。
○共同利用・共同研究拠点における最先端の研究成果は、様々な分野において、それぞれの強み・特色を活かした多様性のある独創的なものであり、将来有望な技術シーズを有している場合も多い。これら最先端の研究成果の実用化によるイノベーションの創出を図るためには産業界との連携を進める必要があり、拠点における研究が製品開発等の貢献にもつながり得る場合には、その情報を産業界に対しても積極的に発信していくべきである。
○人文・社会科学系を含む様々な分野の拠点に、活用可能なコンテンツやデータ等を保有している場合には、産業界との連携を図ることで新たなイノベーションの創出が期待される。
また、長期的な視野で大きな変革をもたらすような研究についても、産業界との連携を促進していくことも考えられる。

(4)拠点間の連携等による異分野融合及び新たな学問領域の創成

○共同利用・共同研究拠点が拠点間の連携を更に進め、新たなネットワークを構築することで、異分野融合・新分野創成による新たな学問領域の創成や国際連携を図る必要がある。その際、同じく異分野融合・新分野創成をミッションとする大学共同利用機関法人・大学共同利用機関との関係等について、さらなる検討が必要である。
○拠点間の連携促進にあたっては、共同利用・共同研究制度発足の趣旨に鑑み、国公私の設置主体を問わず、幅広い横断的な連携となるよう留意すべきである。

(5)共同利用・共同研究拠点の運営体制(組織運営、公募の採択、人事等)

○共同利用・共同研究の効果的な推進のためには、拠点の活動実態を踏まえつつ、当該分野の研究者コミュニティの連携・自主性・自立性に基づいた運営を確保することが必要である。
○共同利用・共同研究拠点において、関連研究者に対して広く研究課題の公募を行い、外部研究者の意見も反映した公正な採択及び支援を行う必要がある。
○拠点運営の透明性と説明責任を果たすためには、拠点組織の研究者の人事に関しても外部の視点を取り入れるなどの配慮も必要である。
○共同利用・共同研究拠点は、我が国の当該分野のCOEとして、また、我が国発の国際的な頭脳循環のハブとしてや我が国の国際活動の戦略的展開に資する情報の収集・分析のプラットフォーム、人材育成・供給拠点、とりわけ若手研究者・女性研究者の人材育成に、国際的視野を含めて積極的な役割を果たすことが必要であり、当該分野における人材育成システムの構築に寄与することが求められる。
○また、任期制や公募制、年俸制の導入等により人材の流動性を高めていくことが必要である。
○運営体制の整備に当たっては、研究活動が適切に行われることが大前提であり、関連する研究者個人、グループ、研究機関において高い研究倫理を醸成し、公正な研究活動を推進するのはもとより、研究に当たっての安全の確保が図られるよう努める必要がある。

(6)共同利用・共同研究に係る研究成果等の情報発信

○拠点で行われた共同研究だからこそ生まれた研究成果や共同利用に供することができる設備等について、国民や学術界に対する情報発信を十分に行うなど積極的な取組が求められる。これらの成果の発信状況については、できるだけ定量的な把握を行い、各種評価において厳正にチェックすることが必要である。特に、中間評価等で高い評価を得た拠点の好事例については、国においても幅広く情報発信していくことが必要である。

○共同利用・共同研究体制の強化の観点から、拠点のみならず、共同利用・共同研究全般における研究成果等の情報発信の強化についても視野に入れる必要がある。

(7)学術研究の大型プロジェクトの推進

○学術研究の大型プロジェクトは、共同利用・共同研究体制の強化を図る上でも有効な取組であり、その性質上、多くの物的・人的資源の投入を要するため、個々の大学では実施が困難であるが、国の学術政策として、大学共同利用機関をはじめ、共同利用・共同研究拠点が連携し実施主体となるなど、多くの研究者の参加を得て推進する必要がある。そのためには、日本学術会議の「学術の大型研究計画」に関するマスタープランを踏まえつつ、推進の優先順位を明らかにしたロードマップを策定するなど、透明性を確保しながら、戦略的・計画的な推進を検討することが重要である。その財政措置については、現状において、施設や設備の整備は主として施設整備費補助金により、運転経費等の運用費については、主として運営費交付金により措置されているが、安定的・継続的な財政措置を実現するためには、さらに幅広い観点からの財政措置について、検討を進めていくことが必要である。
また、独立行政法人には、実際に大学共同利用システムにより大型プロジェクトを実施しているところもあることから、分野によっては研究開発をミッションとする独立行政法人等、大学共同利用機関や各大学の拠点との密接な連携が図られるよう留意しなければならない。

5.共同利用・共同研究体制の強化に向けた今後の検討課題

○現在、科学技術・学術審議会学術の基本問題に関する特別委員会において、「学術研究の推進方策に関する総合的な審議について」の審議が行われており、また、国立大学法人評価委員会において、第3期中期目標・中期計画に向け、国立大学法人等の組織・業務全般の見直し等について検討が行われている。

○これらの状況を踏まえ、本部会としても、我が国の学術研究の基盤である共同利用・共同研究体制の強化の観点から、共同利用・共同研究拠点制度を含め広く共同利用・共同研究体制の具体的な在り方を審議することとし、その審議結果を関係審議会等における議論に反映していくことが重要であると考えられる。 具体的には、特に、以下の事項について、引き続き本部会において検討する必要があると考えられる。

(1)共同利用・共同研究拠点と大学共同利用機関法人・機関の連携方策

○共同利用・共同研究拠点の機能と役割の検討に併せ、3(4)に示すとおり、共同利用・共同研究体制を強化し、我が国全体の研究水準の向上等を図るために、拠点と大学共同利用機関法人・機関とのさらなる連携を図るべきではないか。(例えば、大学共同利用機関法人・機関が、拠点と連携して新領域創成を目指していくという方策も分野によっては考えられるのではないか。)

(2)共同利用・共同研究拠点と大学共同利用機関法人・機関相互の位置付け及び関係

○共同利用・共同研究拠点が活動上では大学共同利用機関に近い活動を行うようにもなってきている状況も踏まえ、今後の拠点の在り方を検討する上で、大学共同利用機関との相互の位置づけ及び関係等についても同時に考える必要があるのではないか。

○また、異分野融合・新分野創成を同じくミッションとする共同利用・共同研究拠点、大学共同利用機関にとって、組織が確立し研究分野が固定されることで研究が陳腐化することもあることから、それらを防ぐ手立てが必要ではないか。

○共同利用・共同研究体制の強化の観点から、共同利用・共同研究拠点と大学共同利用機関の連携はもとより、独立行政法人や各種研究機関との連携を図り、ネットワーク型拠点の形成を促進することはできないか。

○その他、大学共同利用機関は、大学研究者による共同利用を基本的目的の一つとし、各分野の中核的研究機関として設置されてきた我が国独自の組織であって、全国規模の大型計画には優れたベースとなり、また人事も含めて研究者コミュニティに開かれた運営体制が確立されており、過去には、大学附置研究所等が廃止・転換され、大学共同利用機関として創設された経緯の研究所・研究センターもあることから、学術研究の推進のために、研究者コミュニティの意向を踏まえ、拠点が大学共同利用機関に転換するということもあり得るのではないか。

(3)共同利用・共同研究体制強化に向けた、大学共同利用機関法人・機関の在り方の見直し

○共同利用・共同研究体制強化に向け、大学共同利用機関法人・機関が特に重点を置くべき機能については、「大学共同利用機関法人及び大学共同利用機関の今後の在り方について(審議のまとめ)」(平成24年8月 研究環境基盤部会)において提言されているところ、その状況を検証するとともに、現在の国立大学改革なども踏まえ、第3期中期目標・中期計画期間における各大学共同利用機関法人・機関の機能強化等に係る取組、共同利用・共同研究体制の強化に向けた検討が必要である。

<論点例>

・「ミッションの再定義」を踏まえた組織改革の必要性
・「国立大学改革プラン」を踏まえたガバナンス改革、新たな機能強化等の必要性(分野全体を俯瞰した戦略の作成など)、次期中期目標・中期計画策定に向けた運営費交付金改革の動向を踏まえた改革方策の検討
・将来、急速な展開が予想される研究に係る新分野創成の推進
・若手、女性、外国人などの人材育成・供給拠点として機能(原則内部昇格の制限などの人材流動化促進スキーム等をはじめとした新しい「岡崎モデル」の構築)
・共同研究の機能面に着目した独立行政法人等の研究機関等との連携の促進
・国による財政支援の在り方  等

(4)共同利用・共同研究体制強化に向けた、学術研究の大型プロジェクト推進の在り方

○「学術研究の大型プロジェクト」については、個々の組織の枠を越えた研究機関・研究者が多数参画し、世界トップレベルの研究を推進する拠点が形成されることから、大型研究設備を設置する大学共同利用機関をはじめとする共同利用・共同研究体制と密接な関係があるため、その推進の在り方について、共同利用・共同研究体制の強化の観点から検討が必要である。

<論点例>

・共同利用・共同研究体制における大型プロジェクトの位置付け
・国による財政支援の在り方(特に、新規プロジェクトの円滑な着手に向けた方策の検討)
・大型計画における大学と大学共同利用機関の関連・役割
・収入確保に係る国内外利用者からの課金制度の導入  等

(5)共同利用・共同研究体制の成果の国民・社会への情報発信力の強化

○これまで各種提言で示された国民・社会への情報発信の状況について正確に把握するとともに、その課題と対応策について、民間のノウハウも生かしながら、社会・国民のニーズを踏まえて国内外への情報発信力強化に向けた検討を行う。

○また、情報発信の対象に即して、その意義や目的が異なることから、その方法を対象にあわせて行うとともに、特に、対国民・社会においては、既に関心を示している層と認知を期待される層双方に重層的に展開することが必要である。その際、メディアと適切な信頼関係を築くことのできる広報担当者を確保しつつ、組織全体として広報の重要性を認識して対応することが重要であり、必要な検討を進める。

<論点例>

・情報発信の意義・目的(国民・社会、学術界、海外など対象ごとに整理)、
・情報発信の好事例の整理
・情報発信力強化に向け求められる対応策

お問合せ先

研究振興局学術機関課

企画指導係
電話番号:03-5253-4111(内線4082)

-- 登録:平成28年05月 --