共同利用・共同研究体制における附置研究所等について

1.附置研究所等をめぐる課題


 附置研究所等をめぐり、現状、以下のような課題があるのではないかと考えられる。

(1)現在、附置研究所等については、共同利用・共同研究拠点を通じた支援に焦点化していることから、共同利用・共同研究体制に入っていない附置研究所等に係る施策や方針が見えづらい。

 

(2)共同利用・共同研究拠点においては、共同利用・共同研究のサービス提供に重点が置かれ、当該研究所の卓越性追求に不十分な点がないか。(拠点数がそもそも逓増している中で、研究所を支える主たる経費である運営費交付金が減少している。)
 ※法人化以後、附置研・拠点への国の財政支援は、総額で約▲=マイナス30%(89億→62億)、一拠点あたり約▲=マイナス66%(2.3億→0.8億)となっている。
 ※附置研究所の中には、トップ1%論文の状況についてみれば、九州大学応用力学研究所2.2%(H23)、京都大学化学研究所1.8%(H26)(WPI平均では4.6%)など、卓越性を発揮している研究所がある。

 

(3)大学共同利用機関同様、共同利用・共同研究拠点である大学の附置研究所において、組織の流動性が高くなく、現状、機能強化の動きにあわせて、再編等の動きがあまりみられていない。
 ※近年は、再編の事例なし。なお、今後に向けては、京都大学においてウイルス研究所と再生医科学研究所の再編(平成28年4月を目標)の構想もある。

 

(4)地域・産業界、独立行政法人との組織的な連携が不足しており、附置研究所等のリソースが十分生かし切れていない。

2.今後の対応策(案)

  附置研究所等及び共同利用・共同研究拠点との関係について、今後、以下のような考え方及び対応策を明確にすることが必要ではないか。

(1)拠点に対する重点支援
  国立大学運営費交付金における共同利用・共同研究拠点の機能強化の枠組みの中で、1)拠点の安定的な活動への支援(拠点維持をサポートする大学本部への支援を含む)のほか、2)拠点の機能強化に対する重点支援や、3)共同利用・共同研究体制の充実に資する附置研究所等の改革の取組みに対する重点支援を行う。特に、共同利用・共同研究拠点において、研究の卓越性が一層発揮されることをめざすとともに、共同利用・共同研究拠点になっていない附置研等への支援スキームを設け、共同利用・共同研究体制の底上げを図る。

 

(2)拠点の卓越性の確保と厳選
  共同利用・共同研究拠点の認定については、研究の卓越性についてもより詳細に評価するとともに、厳格な質の保証及び管理を行うことで、厳選する。
   ※卓越性については、主な科学賞の受賞状況や、高いインパクトファクターを持つ雑誌への論文の掲載状況等を参考として判定することを検討。

 

(3)組織の流動化促進
  科研費において、共同利用・共同研究体制の強化と連動した異分野融合の推進、新分野創成を目指す観点からの研究助成システムとの連携の可能性を含め、拠点等の再編を促進する等望ましい方策を検討する。

 

(4)研究開発法人等との連携促進、情報発信の強化
  取組の推進に当たっては、新たに導入される「連携ネットワーク型拠点」の活用など、従前以上に多種、多方面の各機関(大学共同利用機関、研究開発法人等)とのネットワークが拡大するよう、留意する。また連携にあたり、附置研究所等の取組について、情報発信を強化し、存在感を高めるとともに、大学の研究機能の向上や拠点の属する大学の機能強化に貢献していることを分析し、国立大学法人評価等で明示する。

(参考)附置研究所等の現状、共同利用・共同研究拠点との関係

○国立大学法人には、特定の専門分野の研究を、継続性を持って長期的に進める附置研究所及びこれに準ずる研究センター等が設置されており、学問の動向や社会の変化に対応しながら高い研究水準を維持するとともに、優れた若手研究者の育成にも貢献してきている。

 

     年度

   附置研(※1)

 共同利用・共同研究拠点(※2)

       附置研

 センター

 合計

   平成16年度

     58機関 

   ― 

 ―

 ―

   平成22年度

     61機関

 44拠点(48機関)

 26拠点(34機関)

 70拠点(82機関)

   平成26年度

     72機関

 48拠点(52機関)

 29拠点(37機関)

 77拠点(89機関)

   

※1 平成16年度は旧国立学校設置法施行令に規定されていた附置研究所。平成22、26年度は、「全国大学一覧」において「国立大学附置研究所」として記載されている附置研究所。 ※2 平成22年度から拠点認定を開始。

 

○ 国の関与については、法人化前は、国立学校設置法施行令、施行規則で規定し、定員措置も含め、国が組織整備・運営に密接に関与したのに対し、法人化後は、第1期中期目標期間においては、附置研究所(及び全国共同利用型の研究センター)の設置を中期目標別表に位置づけ、その設置改廃を審議会が判断する形で国が関与した。

○ 第2期(H22~)以降は、附置研究所等について、基本的に大学の自主判断により附置研究所の組織整備・運営等が行われることとなり、中期目標別表への位置づけもなくなった。代わりに、国は、平成20年度にスタートした共同利用・共同研究拠点(大臣認定制度)を通じて支援を行っている。これは、我が国全体の学術研究の発展のため、従前、附置研究所や全国共同利用型の研究センターが担ってきた「全国共同利用」の機能に着目し、「共同利用・共同研究」の推進の主体としての附置研究所等に対する支援に焦点化しているものである。 

(参考)附置研究所一覧(平成26年度)

 

 

 大学            

 研究所名

 共同利用・

共同研究拠点

 設置年月日

 設置年月日

1

 北海道大学

 低温科学研究所

 ○

 昭和16年11月25日

 電子科学研究所

 ○

 平成4年4月10日

 応用電気研究所(S18.1.30設置)の改組

 遺伝子病制御研究所

 ○

 平成12年4月1日

 免疫科学研究所(S49.6.7設置)の改組

2

 弘前大学

 北日本新エネルギー研究所

 

 平成22年10月1日

 

 白神自然環境研究所

 

 平成22年10月1日

 

 被ばく医療総合研究所

 

 平成26年2月1日

 

 食料科学研究所

 

 平成26年4月1日

 

3

 東北大学

 金属材料研究所

 ○

 大正8年5月21日

 

 加齢医学研究所

 ○

 平成5年4月1日

 抗酸菌病研究所(S16.12.15設置)の改組

 流体科学研究所

 ○

 平成元年5月29日

 高速力学研究所(S18.10.5設置)の改組

 電気通信研究所

 ○

 昭和10年9月25日

 

 多元物質科学研究所

 ○

 平成13年4月1日

 素材工学研究所(H4.4.10設置)、科学計測研究所(S18.1.30設置)、反応科学研究所(H3.4.12設置)の廃止、統合新設

 災害科学国際研究所

 

 平成24年4月1日

 

4

 群馬大学

 生体調節研究所

 ○

 平成6年6月24日

 

5

 東京大学

 医科学研究所

 ○

 昭和42年6月1日

 伝染病研究所(M25.11.30設置)の改組

 地震研究所

 ○

 大正14年11月13日

 

 東洋文化研究所

  ※    

 昭和16年11月26日

 

 社会科学研究所

 昭和21年9月24日

 

 生産技術研究所

 

 昭和24年5月31日

 

 史料編纂所

 ○

 明治28年4月1日

 

 分子細胞生物学研究所

 

 平成5年4月1日

 応用微生物研究所(S28.8.1設置)の改組

 宇宙線研究所

 ○

 昭和28年8月1日

 

 物性研究所

 ○

 昭和32年4月1日

 

 大気海洋研究所

 ○

 平成22年4月1日

 海洋研究所(S37.4.1設置)、気候システム研究センター(H3.4.12設置)の統合による改組

 先端科学技術研究センター

 

 平成16年4月1日

 先端科学技術研究センター(S62.5.21設置)の移行

 国際高等研究所

 

 平成23年1月1日

 

6

 東京医科歯科大学

 生体材料工学研究所

 ○

 平成11年4月1日

 医用機材研究所(S26.4.1設置)の改組

 難治疾患研究所

 

 昭和48年9月29日

 

7

 東京外国語大学

 アジア・アフリカ言語文化研究所

 ○

 昭和39年4月1日

 

8

 東京工業大学

 資源化学研究所

 

 昭和29年4月1日

 

 精密工学研究所

 

 昭和29年4月1日

 

 応用セラミックス研究所

 ○

 平成8年5月11日

 工業材料研究所(S33.4.1設置)の改組

 原子炉工学研究所

 

 昭和39年4月1日

 

9

 一橋大学

 経済研究所

 ○

 昭和17年2月5日

 

10

 新潟大学

 脳研究所

 ○

 昭和42年6月1日

 

 災害・復興科学研究所

 

 平成23年4月1日

 災害復興科学センター(H18.4.1設置)の改組

11

 富山大学

 和漢医薬学総合研究所

 ○

 昭和53年6月17日

 S49.6.7富山大学に附置(和漢薬研究所)。S53.6.17富山医科薬科大学に移行。H17.10.1改称のうえ、3大学統合により富山大学に移行。

12

 金沢大学

 がん進展制御研究所

 ○

 昭和42年6月1日

 

13

 静岡大学

 電子工学研究所

 ○

 昭和40年4月1日

 

 グリーン科学技術研究所

 

 平成25年4月1日

 

14

 名古屋大学

 環境医学研究所

 

 昭和21年3月29日

 

 太陽地球環境研究所

 ○

 平成2年6月8日

 空電研究所(S24.5.31設置)の改組

 エコトピア科学研究所

 

 平成18年4月1日

 

15

 京都大学

 化学研究所

 ○

 大正15年10月4日

 

 人文科学研究所

 ○

 昭和14年8月1日

 

 再生医科学研究所

 ○

 平成10年4月9日

 胸部疾患研究所(S16.3.26設置)の改組

 エネルギー理工学研究所

 ○

 平成8年5月11日

 原子エネルギー研究所(S16.11.28)の改組

 生存圏研究所

 ○

 平成16年4月1日

 木質科学研究所(H3.4.12設置)の改組

 防災研究所

 ○

 昭和26年4月1日

 

 基礎物理学研究所

 ○

 昭和28年8月1日

 

 ウイルス研究所

 ○

 昭和31年4月1日

 

 経済研究所

 ○

 昭和37年4月1日

 

 数理解析研究所

 ○

 昭和38年4月1日

 

 原子炉実験所

 ○

 昭和38年4月1日

 

 霊長類研究所

 ○

 昭和42年6月1日

 

 東南アジア研究所

 ○

 平成16年4月1日

 

 iPS細胞研究所

 

 平成22年4月1日

 

16

 大阪大学

 微生物病研究所

 ○

 昭和9年9月17日

 

 産業科学研究所

 ○

 昭和14年11月30日

 

 蛋白質研究所

 ○

 昭和33年4月1日

 

 社会経済研究所

 ○

 昭和41年4月1日

 

 接合科学研究所

 ○

 平成8年5月11日

 溶接後学研究所(S47.5.1設置)の改組

17

 神戸大学

 経済経営研究所

 

 大正8年10月10日

 

18

 岡山大学

 資源植物科学研究所

 ○

 平成22年4月1日

 農業生物研究所(S28.8.1設置)の改組、資源生物科学研究所(S63.4.8設置)の改組

19

 広島大学

 原爆放射線医科学研究所

 ○

 昭和36年4月1日

 

20

 九州大学

 生体防御医学研究所

 ○

 昭和57年4月1日

 温泉治療学研究所(S6.10.31設置)の改組

 応用力学研究所

 ○

 昭和26年4月1日

 

 先導物質化学研究所

 ○

 平成15年4月1日

 機能物質科学研究所(S62.5.21設置)の改組

 マス・フォア・インダストリー研究所

 ○

 平成23年4月1日

 

 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所

 ○

 平成22年12月1日

 

21

 長崎大学

 熱帯医学研究所

 ○

 昭和17年3月23日

 

 原爆後障害医療研究所

 

 平成25年4月1日

 

 

(注1)「全国大学一覧」において「国立大学附置研究所」として記載されている附置研究所

(注2)※は一部が共同利用・共同研究拠点として認定された研究所 

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研究振興局学術機関課

企画指導係
電話番号:03-5253-4111(内線4082)

-- 登録:平成27年10月 --