資料4 最終報告に向けて各委員からいただいた主な御意見

1.共同利用・共同研究体制の意義

・大学単体、法人単体で開拓できないような新領域、新分野がある場合、それをオールジャパンとして開拓していく際には、共同利用以外のシステムはないのではないか。

・新たな研究領域に対して、共同利用・共同研究体制が必要であるという状態は既に生じている。

・大学共同利用機関法人・機関の特徴というのは、世界的な大型装置だが、これと各分野の基盤を支えるような設備を整備して、全国の大学の研究者の共同利用・共同研究を推進するようにとすること。最新の最先端研究のみならず、大学等における基盤となる研究を支える共同利用の中核となる必要があると考えている。

・共同利用・共同研究拠点は、共同研究と同時に、基本的には、最近の国立大学の改革やミッションの再定義の流れの中で各大学に求められるようなグローバル化とか研究力強化等の実現に向けて、附置研究所や研究センター等の研究機能が十分な役割を果たすことをまず求められており、共同利用は今の目的を達するためにも直結するものであると認識している。

・機構は機構内での共同利用・共同研究を推進するのみならず、大学における人的、技術的支援を拡大して、大学の研究・教育基盤(特に技術基盤)の強化を図る。

・共同利用という観点を本当に考えていく上で、運転経費やそれに付随する経費を運営交付金から分離するというようなことを真剣に考えていかなければならないのではないか。大学共同利用機関が全国の大学にサービスするために自らの機関の運営経費を持ち出してでもサービスをするということになっていくのではないかと懸念している。

2.大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点の差異

・共同利用機関と拠点の区別についてはその体制であると考える。そもそも大学共同利用機関は、大学ができないことや、超えるものを研究していくことをミッションとして出来た機関だということをしっかりと押さえておかなければいけない。新たな分野の開拓と教育・研究の両輪というのは、共同研究という観点で見れば同じだけれども、あえて言えばそこで違いが出てくるのではないかと思う。

・共同利用機関と拠点の違いについては、理系の場合は非常に分かりやすく、非常に基礎的な物の理論を追求されるような研究が大学共同利用機関として、また、医学のような応用学問が大学の附置研究所として残っていると思う。

・人文科学の基礎研究というのは学部で行っている研究であり、先端研究については研究機関で行っていくというように最初は作られたのではないかと理解している。そのため、人文系の場合は文化人類学や地域研究など、今までなかったような先端領域が共同利用機関となっていると思う。

・地方大学の先生方や学生にとっては、遠方の大学共同利用機関より身近な共同利用・共同研究拠点の方がアクセスしやすいことも一つ挙げられる。大学の共同利用・共同研究拠点は全国に存在しており、各分野や地方の共同研究のハブとしての役割もあると感じている。まだ研究費の獲得に至っていないような萌芽的な研究や研究設備や技術へのアクセスが困難な大学の先生方との共同研究、ある意味サービス的な面もあるが、そのようなところも拠点のミッションとしてあると感じている。

・大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点の役割分担を考えるより、どう相乗効果を出していくのかという視点の方が重要だと考える。

・共同利用・共同研究拠点の認定については認定条件がはっきりしているが、大学利用機関について認定条件が見当たらない。今後、認定の条件を作った上で共同利用・共同研究拠点と、附置研の連携を強めていく必要があるのではないか。

3.大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点の連携方策

・研究者コミュニティの近さにより、連携がなり立っている印象があるが、少し離れた研究者コミュニティとの間の技術的連携がうまく機能すると良い。

・拠点は規模が小さく、高度な専門的技術者集団を持つことは困難であるので、高度な専門的技術を持つ共同利用機関との連携が必要であり、共同利用機関が持つ高度な技術の利用を分野に限らず積極的にアピールすることが重要。

・類似した分野の研究所をまとめるネットワークより、いくつかの違うところをつなぐ連携の方が、各分野で独自に開発したものの共通化、汎用化が可能であるなど、一方の成果が他の分野で使えるといった成果もあるため、シナジー効果を発揮しやすいのではないかと思う。

・大学と共同利用機関の連携に際しては、機構法人の枠を越え、分野を越えた連携を推進すべきである。

4.法人化以降の大学と共同利用・共同研究体制の関係

・法人独自の利益を超えて、共同利用機関を設置するという決断ができるようなメリットを提示できるかどうかが非常に漠然としている状態では、恐らく法人ごとに固まっている状態になると思う。それが、結果として学問領域の開拓等に関して日本のアカデミアが弾力を失いがちになっている要因になっている。

・ネットワーク化でオールジャパン的な組織が作れるようになってきたことは前進だと思うが、その次をどういう設計でやるのか、法人単独の利益と合致するような設計ができるかどうかが見えない。

・共同利用を推進していくに当たって、人事面でやれるとしたら、ダブルアポイントメントをどこまで本気でやるかだと思う。

・共同利用化を進めようとすると、大学側は予算や責任を持たなくなってくるのではないか。また、人事の硬直や、若い大学院生からポスドクレベルの人材の還流が細くなってくるリスクもある。それらを超えて、組織体として強くできる戦略を作らないと危ないのではないか。

・大前提として、システム設計上の論理的な矛盾があるのではないか。各法人に競争的に活力をつけさせようということが今の流れであり、法人としてはどれだけマネジメントを上げられるか、いかに自己資金を確保するかという問題がある。幅広く大学を超えて研究者を組織しようとした場合に、これらがバッティングしてくるシステムとなっているように思う。

・拠点の場合、大学の中では一つの部局・研究所という立場でしかない。やはり研究者コミュニティの言葉が大学の本部に届くような仕組みがあると、共同利用・共同研究を行いやすいと考える。

・横断型研究機関と大学ということについて、単に1機構だけではなく、総研大ということも含めると、4機構全体が一緒になって日本の国公私立大学のそれぞれの分野の横断型のボディを作ったらどうかということを今後検討することが必要なのではないかと考えている。

・双方の連携に関しては、大学との連携を非常に強化して基盤の強化を行う。それから、大学共同利用機関が持っている技術をどんどん移転して、研究の底上げをするということをまずは基本的なミッションと考えている。

・附置研が大学共同利用機関法人になることによって、国際的な裾野の獲得や内部組織を柔軟に変えることができるなど、メリットは非常に大きい。分野が大きく育ってくると、どうしても日本の中核的な研究所が必要となってくる。

5.大型研究計画と共同利用・共同研究体制の関係

・大型研究計画に関しては、今後、複数の大学が関わってやって推進していくことが自然な形で行われると思う。

・マスタープランが3年に1回改定されて、そこで新たな領域も含めた大型の研究計画というのが出てくる。その計画をロードマップとしてどう扱うかの審議過程の中で、日本としてやっておかなければならない領域を見きわめ、共同利用・共同研究のネットワークの拠点をきっちり作っていくと、戦略的にうまくいく可能性はあるのではないか。

6.共同利用・共同研究体制の抱える課題

(組織的流動性・人的流動性の不足)

・大学共同利用機関の新設がしばらくない。国が新しい機関の設置ということについて非常に消極的になったためであり、また、法人化により、法人ごとに評価されてしまうこととなったため、活動が活発な研究所を外に出すことを大学が嫌がるようになったからではないか。

・新しく共同利用機関が設置できない理由としては、優秀な人材であればあるほど大学は離さないからである。大学にとっては間接経費も入ってくるしメリットも大きい。また、大学ランキングもあるため、優秀な人ほど大学は離せなくなっている。

・拠点が大学に留まるインセンティブとして、学生の獲得の容易さがある。

・今の財政状態の中で、インセンティブという意味で予算を新たに獲得することは期待できない。そのため、システム改編で対応するとしたら、ダブルアポイントメントだと思う。例えば共通の研究者なりセンターなりがお互いにダブルアポイントメントを行うことで、研究者の行き来がもっとストレートに、根拠を明確にして行うことが出来る。

・ダブルアポイントメントでメンバーを入れ替えておけば、非常に急展開し始めているような分野は改変もでき、スクラップ・アンド・ビルドも簡単だと思う。一度固めたらそのままという柔軟性のない今のスタイルは、これからはできなくなってくるのではないか。世の中の流れがスピーディーになっていると、マネジメントの意識も変えていかなければいけないが、それがまだ見えていない。

・クロス・アポイントメントが出来る教員というのは年俸制でないといけないということで、年俸制が全体に行き渡るようになると、クロス・アポイントメントももっと進むのかもしれないと感じている。

(共同利用を進めるメリット・インセンティブ)

・共同利用を推奨するには具体性がないといけない。主張することはできるが、どのような方向でやるかというところで問題があると思う。そこを超えていくだけのメリットと方法が見えない。

・あるべき連携の体制というのは、基本的には双方のミッションを踏まえて、共同研究の推進や人材の交流を通じて、共同利用・共同研究体制を一層強化して、我が国の全体の研究水準の向上を図るとともに、我が国の学術研究の発展のために分野連系を強めるということが原則ではないか。

(拠点以外の機関との関係)

・拠点をどのように生かすのかという観点と同時に、拠点に乗らなかった附置研やセンターが新しい学術の流れに沿った改革などをしていく上で、人事面や予算面で、どういうふうに方向付けをしていくのかという観点の方が、非常に重要となるのではないか。

・小さい研究所やセンターほど同じメンバーで動いていく。そのメンバーが高齢化していき、大学院生の供給もほとんどない状態になってくるため、これを止める一つの方法として、代がわりのときに一気に変えてしまうというものがあると思う。

(評価等について)

・共同利用・共同研究拠点の評価のありようをもう少し考える必要がある。例えば、論文の数だけではなく、他のセンター、研究所からどれだけ使われているのかや、ある期間でどれだけ新たな萌芽的な研究領域を立ち上げたのかというようなことを評価していくことが大事だと思う。

・共同利用・共同研究拠点には、6年ごとに審査があるが、これは結構な労力である。このような負担を軽くしていくことが日本全体にとって非常に大事だと思う。その仕掛けというのを今後きっちり考えないと、せっかくのものがうまく発展していかないのではないか。

・評価を通じ自己点検が可能となり、また法人として各機関の特色と共通性、研究の動向や法人化の影響、メリットを把握出来る。

・研究そのものの数値化、達成度の把握は難しい面があるので、研究の中に踏み込む形での評価もお願いしたい。

・共同利用・共同研究の成果を客観的資料により発信することが必要。

・大学共同利用機関法人が現在4機構あるが、その独自性や、その中における新しいことに踏み出すような力をやはりもっと強めるべきだなと思う。そのためには、もっと自由にやらせるべきであるということを文科省にもお願いしたい。

・評価の方法については、現状では論文数を重視した評価の仕組みが重要となっている。論文数は外形的に出てきやすいものではあると思うが、大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点の今後の重要なミッションとして、新たな領域の開拓や融合領域をいかに立ち上げていくのかを考えていることから、単なる論文数だけではなく、新たな領域を立ち上げるということに関しても、どれだけ貢献したのかといことを評価する指標を考えた方が良い。

(予算の確保や財政面について)

・国家財政が非常に緊縮している中で、どういうふうな研究をしていくかという際に、やはり大学共同利用機関は予算削減のターゲットになりやすい。その研究をしっかりと守るという明確な理由があれば良いが、なかなかそれを示せない。守ってほしいと言えば、守らなければならない理由を挙げなければいけないものの、それを示すことが難しいということでジレンマに陥っている。ファンディングが非常にいろいろなところで響いており、これをいかに乗り越えるかの検討が必要。

・今の大学で共同利用・共同研究を行うことは大変だと実感している。運営費交付金が減らされており、政策的経費を獲得するためいろいろなプログラムが走っている。それで、研究室がそれぞれの役割を持つのだが、それが二重、三重、四重と掛かってくると、どっちを向いて何をやればよいのかが分からなくなる。

・基本的には最先端の研究推進や最先端の研究施設・設備の整備と運用に必要となる経費の安定的な確保ができるかどうかが大きな課題ではないかと思う。

・競争的資金を増やすようにしているが、同時に運転経費も含めてインフラの整備を行わないといけない。せっかく競争的資金が増えて研究室はチャンスが増えたといっても、運転経費が減ったら意味がない。そのため、競争的資金と基盤を支えるということを同時に行っていただきたい。デュアルサポートは学術審議会でも昔から言われている話であり、何とかお願いしたい。

(国際化について)

・女性や外国人研究者の比率を見ると、大学共同利用機関ではほとんど10%以下となっている。このように外国人研究者数が少なくて国際化ができるのか。

・国際化の対応については、外国から優れた研究者がある程度長期に滞在していただくためには、家族サポートや子弟教育をサポートしないと、実際的に来てくれないこともあり、これらをサポートすることによって、本当に優れた方に滞在してもらおうという努力をしている。

(異分野融合・新分野創成について)

・大学共同利用機関法人が提案したものについて、単に1年や2年で新しい分野を作れというのではなく、十分に検討を重ねていただいた上で、広い枠の中で自然科学の新しい分野を作るといったミッションを支援いただきたい。特に第3期に向けてはその点を考慮して欲しい。

・新分野といっても、ぱっと思い付いてできるものではない。物質の起源、宇宙の起源のように、10年たったら古ぼけるという話ではないものもある。10年たっても20年たってもやらなければいけない。それを引っ張っていくうちに裾野が広がってくると思う。また、生命の起源など、他の分野についても裾野が広がってくる。それらが重なったところをいかに多く増やしていくかというのが、新分野を作る方向ではないかと思う。

・新しい分野の創成は、機構内にある研究所の間の分野間連携にとどまらず、研究所の枠を超えて広い分野での異分野の連携を図り、研究者コミュニティも新たに形成するようなつもりで行うことが必要であると考えている。

・やり方にもよるが、近い分野の附置研をまとめるだけといった連携だと、事務作業だけが増えて、かえってマイナスの効果も出てくる。それに対して、違う分野の連携であれば、マイナス要素は非常に少ない。各分野で独自に開発していたようなものがあれば共通化、汎用化が可能であり、一方の成果が他の分野で使えるといった成果もあるため、シナジー効果を発揮しやすいのではないかと思う。

(大学院教育への協力について)

・理系については、多くの場合、教員1人だけで研究を進めていくことがなかなか難しく、学生や研究員と一緒にチームを組んで進めていくというのが普通のため、そういう意味では学生が欲しいという先生方は非常に多いのではないか。

・大学共同利用機関は、総研大の基盤機関にならなければいけないということは、創立のときに明記されており、協力しているしその義務もある。しかし、大学共同利用機関を考えると、大学院教育というものを総研大にのみ集中させるのではなく、各大学に広げても良いのではないかとも思う。総研大を中心に大学院教育を行うが、総研大ではできないようなことについては、ほかの研究所等と連携とすることが大学共同利用機関の本来のミッションではないかと思っている。

・以前に大学共同利用機関の機能強化を考えた際、総研大との関係が非常に問題になった。その時は従来のやり方が不十分であったということを反省し、現在は、法人としては違うが、連携ではなく一体とならなければならないというように、より連携を強化する形で進めているところである。例えば、総研大の各種の会議には、機構長あるいは所長が必ず入る。逆に機構の会議にもなるべく総研大の理事が何らかの形で入り、教育を総研大に任せきりにするのではなく、機構の意思も反映した教育を実現できるようにする、あるいは研究に当たっても総研大側の意向を反映させるといったシステムを始めているところ。

・大学共同利用機関は、人材育成というか学生教育のコミットは大学に比べると弱いのではないか。その結果、人材育成に対する熱意の非常に強い先生と、ほとんどそれを意識しない先生とに分かれると思う。

・先生によって教育への熱意の温度差があるとか、ある程度特定の研究室に学生が集まるという傾向はあるものの、大きな問題ではないと思う。大学ではなく、学部生の講義や実習が義務化されていないので、むしろ積極的に教育したいと思っている先生の方が周囲には多かったと思う。総研大でも講義は行うが、むしろ色々な大学から非常勤講師で招かれて集中講義を行うといった先生が非常に多かったように思う。

・共同利用機関はそもそも学生の数が少なく、教員の比率が非常に多いため、全員が教育熱心じゃなくても十分機能していると思っている。

・連携大学院の教授というのは一つしかなれないという規則があり、既に総研大の教授になっている場合、連携大学院に入れない。その辺りも一つの改革を目指すところなのかと思う。

・総研大の本部は随分努力をして、いろいろなプログラムを組んで、広い視野を持つ、国際機関でも活躍できるようなグローバル人材を育成するようなプログラムを作るが、若い研究者は手間がかかることから、ともすれば「本部から仕事を押し付けられる」といった観点でとらえる傾向が強かったと思う。これは大学の研究者の方が大学の専攻研究科に協力するときもやっぱりそのニュアンスが強いのではないかと思う。この辺りは長いスパンで解決すべきものだと思っている。

・総合研究大学院大学は、通常の大学と違って、研究者の教育に関する熱意が若干欠けていると感じる。

・総研大との問題としては、はっきり言えば各研究機関とのコミュニケーション不足の問題だと思う。率直な議論ができていない。各研究機関の意見が伝わっていないところが大きいと思う。

・研究所の先生方の教育に対する視点が弱いと思う。これは大学の研究所の附置研の先生でもその傾向はある。研究所の先生方は研究が一番というのは分かるが、この日本の中を考えたとき、特に産業界とのミスマッチが極めて深刻な問題であり、この辺りを解決するためには、単なる自分のコピーを作るのではなく、本当に課題を見付けて課題を解決するという能力を本当に作っていくという意欲が大事だと思う。

・総研大については何とか問題を可視化して、どう解決するかという設計図、実行計画まで進めていかなければならないのではないか。

・法人化により学生を囲い込むことが進んでおり、非常に憂慮している。自分の分野だけしか考えない狭い視野の下で学生が育つといった状況がずっと続いている。アメリカのように、もう同じ分野では次の後期に行くと減点になるというぐらいの強い規制が必要ではないかと考える。

・大学の囲い込みについては、大都市圏での下宿代が高いという問題もある。そのため、自宅から通っている学生も多く、流動性が上がらない原因になっていると理解している。学生にとって本当に必要なのは、宿舎や奨学金ではないか。

・学生は大学共同利用機関を知らない。優秀な学生を集めるための戦略を真剣に考えるのであれば、進学説明会を開くなど周知していかなければならないのではないか。

・学生数が減少する2018年問題についての対応としては、いかに内容を高めて知名度を上げていくかということに尽きると思うが、大学のための大学共同利用機関という基盤機関側のミッションもあるため、バランスを取りながら、アジアを中心に外国からの留学生を増やしていくことを考えている。

・総研大は素晴らしい教育機関であるということを知って貰えるような活動を増やすとともに、カリキュラムの改善や情報発信体制の強化、講義等の教育の中身をオンラインで発信し、地方にいる若い人たちに届けるというような質の良い教育のコンテンツを作り上げていくべきと考えている。

・総研大の学生の就職先が総研大内部の助教であることが多く、他の大学からは総研大の助教になり難い。流動性が必要だが、それを阻害する形になっている可能性があるため、大学にも総研大にもメリットのある流動性向上策を考えて欲しい。

・総研大における教育の質をどう担保するかについては、普通の大学で行っているような学生からの評価などの学生を巻き込んだ評価の仕組みが必要ではないか。

・総研大の大学院教育は、科学をもって社会のために貢献できる人を作るという広い視野を持った教育を行うべきである。

・大学院生の教育においては、たこつぼに入らないように研究室に机をもたせず、大部屋で学生同士の交流を図らせている。

(情報発信力の問題)

・共同利用拠点の評価をしていく上で、各拠点等のウエブページを見ると、10年前のホームページがそのまま載せているなど、今何をやっているかが分からないようなところがある。どの拠点も財政的に非常に厳しい状況にあるかと思うが、情報発信に関しては、ウェブページをまずスタート地点として国内外への発信を整備することが必要ではないか。

・国際化をする上で、日本の研究機関の国際発信力が非常に大きな障害になっている。英語の発信力が日本は中国、韓国、台湾等に比べても非常に貧弱である。

・科学というものが国民の理解の上に立ってやらなければならないといった広報の大切さを、トップが認識する必要がある。また、研究者がどのように広報活動に自分の研究時間を割いてある一定の協力をするというところにつけても、組織全体としての広報の重要性を十分に認識することが大事ではないか。

・研究の段階では技術の中身や特許等のオープンに出来ない情報がある中で、研究の透明性や振興という観点をどう考えていくかが組織として大変重要。

・特定の分野の話ではあるが、とても役立つ研究であるといったことや、過度な期待を抱かせる内容で、明るい部分ばかりを広報している場合がある。明と暗をバランスよく周知していくことが重要。

・法人評価が研究機関の広報対応を進めた側面がある。

・予算確保という動機があったにせよ、広報が重要であるという認識は広がってきている。

・科学コミュニケーターの増加が研究機関の広報の在り方を良い方向に変えつつあるが、彼らが研究機関に根付き、確固たる役割を確立するかについては、若干の懸念がある。

【その他】

・色々と検討する際は、時間的なスパンで考える必要がある。学術というのは少し長いスパンのものだと思うので、その辺りの評価をうまくインセンティブを付けられるようなことができるかどうか、検討することを考えていく必要がある。

・非常に大事なことは、世界レベルから見たときに、社会が満足出来る質の博士課程修了者を、供給出来ていないという事実だと思う。学術の世界でトップレベルの者は出しているということは主張できるかもしれないが、博士課程を含めてマクロ的に見ると、産業を支えている人材を輩出する責務を果たしていないのではないか。

・URAだけは是非とも機関等の中で成功例にしていただきたい。日本の宝になると思う。URAが失敗したらものすごくもったいない。

・共同利用・共同研究機関は、いかに時代に即した共同研究体制に動いていけるかが今 後必要となると思う。そのため、共同研究体制を固めないで、いかにフレキシブルに進化できる体制に持ち込めるか、そういうふうな仕組みを何か考えられれば、もっと良くなるのではないかと思う。

・総合的な視野を持つ科学の経験者の育成が、日本の社会にとっても極めて重要であると思う。そういう素養を持った人材が十分に育成されていないという面と、それを社会が受け入れて活用していないという両面があるのではないか。

・縦割りは非常に大きな日本の科学の弊害だと思う。特に流動性がないという状況をどう打破するかというのは、日本の科学、社会の将来の死活的な問題だと考える。

 

※下線部は第67回(10月20日開催)、第68回(10月27日開催)分の意見

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-- 登録:平成26年12月 --