平成26年10月21日(火曜日)9時30分~13時00分
共同利用・共同研究拠点
東京大学 史料編纂所、医科学研究所
伊藤委員、北川委員、柘植委員、中村委員、横山委員(五十音順)
(史料編纂所)久留島所長、山家副所長、林教授、山口教授、松井教授、飯塚事務長
(医科学研究所)清野所長、井上教授、吉田教授、紺野事務部長
(○…訪問委員、●…史料編纂所出席者)
○評価を受ける側の視点から、現在の評価システムの問題・改善点等はあるか。
●「拠点における研究活動の成果」という観点についてだが、史料編纂所が出している論文数はあまり多くはない。しかし、前近代の論文全体で、史料編纂所の史料を使用していない論文はほとんどない。そうした、共同利用の観点からの評価も加味してほしい。
●紀要の論文は査読がされないため、多くの大学では学術論文として評価されておらず、一般的には「研究成果」には含まれない。しかし、史料編纂所の日本史研究において、紀要は史料集に次ぐ評価を得ている。研究成果を、成果物の媒体一律に捉えるのではなく、各研究分野における媒体の特性も考えて評価してほしい。
○人間文化研究機構の事業、「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」は、思うような進展が難しいのだが、共同利用・共同研究拠点と機構との連携はどのような体制なのか。既に画像データベースを保持している史料編纂所と、どのような協力体制が築かれているのか。
●「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」については、史料編纂所としても協力している。しかし、国文学の研究対象の古典籍と、歴史の研究対象の古文書は異なるという国文学研究資料館の意向もあり、全面的な協力体制が構築されているわけではない。研究方法も異なり、古典籍は既に簡単な目録が付いていることが前提に画像化が進められているが、古文書の場合はただ撮影するだけでなく、画像化と並行して目録をつける作業が重要である。
○ビッグデータの活用は異なる分野との連携が重要なので、歴史と文学という分野の違いはあるが、将来的にはリンクしてほしい。
○博士課程修了者の7割は社会に出ている一方、社会に通用するようなリベラルアーツ的な素養が不足しており、博士課程教育の幅広さが必要である。史料編纂所の活動の位置付けを学ぶことそのものが、リベラルアーツの考え方を頭の中で構成するトレーニングとなるのではないか。
(○…訪問委員、●…医科学研究所出席者)
○医科学研究所(以下、「医科研」)は中間評価で最高の「S」評価を受けているが、評価を受ける側の視点から、現在の評価システムの問題・改善点等はあるか。
●「S」評価を受けているという意味では、評価は妥当なものと考えている。ただし、共同利用・共同研究拠点にはいろいろなタイプがあり、クライテリアが異なっている。それぞれの領域をベースとした評価体制を作るのは大変だとは思うが、いま現在のように一律に評価されている点については多少の違和感がある。
○例えば、専門分野に即したアドバイザーが事前審査を行うことは有益だろうか。
●それもよい案だと思う。
●加えて、共同利用・共同研究拠点に措置される予算額が非常に少ない中、どういう形で成果をあげるのかという点にジレンマを感じる。事業費は、基本的には(医科研に来る共同研究者の)交通費となっており、実際の研究費は共同研究者を引き受ける先生が拠出している。そうした状況の中でどういう成果が求められるのか、という点は評価基準とすべきではないだろうか。
●一方、この共同利用・共同研究拠点があったことでたくさんのベネフィットがあった。例えば、医科研は生体でのin vivoイメージングが弱かったが、光学系のニコンやオリンパスと共同でイメージングコアラボを立ち上げ、愛媛大学の今村教授らに参画・オペレーションをお願いし、全国共同利用に供している。そういう点が中間評価で評価されたのではないかと思っている。
○共同利用・共同研究拠点には、研究所自体がスーペリアであるという面と、共同研究としてのハブという面の2つの側面があると思う。前者が保証され、共同研究の質と量の双方が高いことが重要である。高い評価を受ける研究所は外部資金獲得の能力もあるのではないか。
●まさしくその通りだと思う。自身で獲得した外部資金で共同研究を実施するという形を、多くの先生の間に広めていくことは重要なミッションだと思っている。
○博士課程修了者で、アカデミックリーダーになる者や、組織のリーダーになる者など、卒業後の進路等を追跡しているのか。
●そこまではやっていない。医科研としての同窓会などを行い、卒業生をしっかりフォローアップできる体制を作っていきたい。
○博士課程に進学する人は減っている。スタンフォードやMITで実施されているような、国や産業界からの研究資金で、学費や学生の生活費がサポートできるような制度があれば、学生は相当しっかりと育つのではないか。
●医科研でも大学院教育についていろいろと議論している。エリートを育てるような、少数精鋭の手厚い教育プログラムが必要ではないかと考えている。研究所としてできるところは取り組んでいこうとしており、来年度から開始するメディカル情報生命専攻では、修士をやめて5年制のプログラムを実施する予定である。
○人文系等との連携はあるのか。
●社会系のものは公共政策分野があり、公共政策研究分野の教授を招いてプログラムの構築を進めている。ゲノムに対する倫理や管理運営については社会科学系のエキスパートが必要だが、所長室付で研究倫理支援室も設け、社会科学系の特任助教授を招いている。
●スパコンの運営費は、法人化時に運営費交付金の中に組み込まれてしまい、毎年効率化係数がかかるため、維持・更新が大変である。一研究所として、スパコンをどのように維持・発展させていくかは重要な課題である。今までは無償で提供していたが、維持・管理のために課金システムを導入せざるを得ない。課金はアカデミックプライスと企業向けプライスを分けている。
○全体予算の低減化の中でどこに資源を投入するかは大きな問題である。現在の基盤部会の中でも共同利用・共同研究体制の強化に向けて議論を行っており、拠点の機能強化に資する配分のあり方もあるのではないかという趣旨が「中間まとめ」に記されている。さらに審議を頂きながら、最終的な「審議のまとめ」に繋げていければと考えている。
○課金システムでは企業と学術関係者のどちらの利用者が多いのか。
●いずれも相当の利用がある。企業向けの方がアカデミックプライスより料金設定は高い。
企画指導係
電話番号:03-5253-4111(内線4082)
-- 登録:平成26年12月 --