4.学術研究の大型プロジェクトの推進

1.学術研究の大型プロジェクトの意義

学術研究の大型プロジェクトの意義

(1)学術研究の大型プロジェクトは、最先端の技術や知識を集約して人類未到の研究課題に挑み、世界の学術を先導する画期的な成果を期するものである。大学における研究・教育を支え、国民の科学への関心を高め、国際的な競争と協調の中で我が国がリーダーシップを発揮し世界に貢献する上でも、学術政策上推進の意義が大きい。

(2)多くの物的・人的資源の投入を要する学術研究の大型プロジェクトは、個々の国公私立大学では実施が困難であり、国の学術政策として、共同利用・共同研究体制により、国公私立大学の研究者の参加を得て推進していく必要がある。

(3)学術研究の大型プロジェクトは、研究者の知的好奇心・探究心に基づき真理の探究を目指すものであり、その推進のための意思決定にあたっては、学問の自由の保障の観点から、研究者コミュニティによる自主性・自律性を確保し、権力的な関与を排除することが重要である。この点は、政策主導で実施するいわゆるトップダウン型の大型プロジェクトと大きく異なる点であり、十分な留意が必要である。

2.学術研究の大型プロジェクトの推進

大型プロジェクトの計画的推進

(1)大型プロジェクトは、研究施設・装置の建設・製作からその運転・維持まで、長期間にわたり多額の経費を要する。内外の学術研究全体の状況等を踏まえ、学術研究に対する公財政支出の相対的状況や今後見込まれる財政状況にも留意しつつ、中長期的な資源投入の見込みを検討した上で、長期的な展望をもって計画的に推進することが必要である。

(2)大型プロジェクトにおいて大規模な研究施設・装置を整備する際には、特定の限定的な研究分野だけではなく、広範な分野の研究者の利用にも配慮し、幅広い学術研究の推進に留意する必要がある。そのため、計画段階から、幅広い研究者コミュニティの意向を踏まえるための工夫が必要である。

(3)なお、大型プロジェクトは、様々な研究者による幅広い研究と議論の中から方向性が生まれ、多様な研究の成果を集積することによって推進が可能になるものである。萌芽的な段階の研究を含め、研究施設・装置の製作に向けた技術開発や施設・装置を利用した多様な研究等についての支援にも配慮することが重要である。

新たな大型プロジェクトの推進に関する手続き

(4)新たな学術研究の大型プロジェクトを推進する際には、研究者コミュニティにおける開かれたボトムアップの議論と合意形成の上に立って、推進母体となる大学共同利用機関法人等の拠点組織が計画をまとめ、学術分科会において妥当性を審議した後、国の学術政策として推進を決定することが適当である。

(5)研究者コミュニティの合意形成にあたっては、当該研究分野におけるコミュニティの合意形成に加え、関連分野も含めた幅広い研究者コミュニティの議論と大筋の合意形成が必要である。

(6)学術分科会では、研究分野毎の分野別委員会等において、当該分野における学術的意義、プロジェクトの必要性・緊急性や経費の見積もり、当該研究分野及び関連分野に対する公財政支出の影響の見通し等について、審議を行う。その上で、学術分科会として、学術研究全体の状況や国際的な動向等を踏まえ、プロジェクト推進のために公費を投入する妥当性を審議することが適当である。

大型プロジェクトの評価

(7)このような意思決定を経て、国として大型プロジェクトを推進する際には、公財政支出の妥当性について、他分野の研究者や社会一般に対する説明責任を十分に果たし、理解を得る必要がある。現在推進している大型プロジェクトに対する評価と同様に、プロジェクトの進捗状況や成果について定期的に厳格な評価を実施し、評価結果をもとにプロジェクトの継続や中止、改善等の措置をとるとともに、評価結果を積極的に公表・発信することが重要である。

(8)なお、大型プロジェクトの推進やその評価については、日本学術会議においても議論が進められているところであり、今後国において更に具体的な手続きを定める際には、留意する必要がある。

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-- 登録:平成21年以前 --