(1)国公私立大学や大学共同利用機関を中心に行われている学術研究は、人文学・社会科学、自然科学からその複合・融合分野にまで及ぶあらゆる学問分野を対象とする知的創造活動であり、研究者の知的好奇心と自由な発想を源泉として真理の探究を目指すものである。
(2)学術研究は、人類特有の知的な営みであり、それ自体優れた文化的価値を有するとともに、重厚な知的資産を形成・継承し、多様な分野において優れた人材を育成することにより、いわゆる「知識基盤社会」における社会発展の基盤を形成し、人類の福祉の向上に資するものである。
(3)学術研究の推進と、その発展のために不可欠な人材育成は、国の重要な責務であり、国として、財政的支援の充実を含め、積極的に推進することが必要である。
(1)学術研究は、個々の研究者や研究者グループ、研究組織において、自由な発想に基づいて主体的に実施されるものであり、国としては、このようないわゆるボトムアップによる多様な研究活動に必要な支援を行うことが基本である。
(2)国の学術政策の推進にあたっては、日本国憲法第23条に規定される学問の自由を保障するとともに、教育基本法に定められた大学の役割や特性を踏まえることが大原則である。
(参考)
○日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
○教育基本法(平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
(大学)
第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(3)学術政策の推進の方向としては、研究の多様性を確保し幅広い研究活動を促進するとともに、卓越した研究拠点の形成を推進することが重要である。
(4)多様性の確保の観点からは、研究者の自由な発想と大学等の主体的な取組を尊重し、それらの自主性が発揮できる環境を整えることが重要である。そのため、国は、基盤的経費の確実な措置と科学研究費補助金やグローバルCOEプログラム等の競争的資金の拡充により(デュアルサポートシステム)、各大学等において多様な学術研究が安定的・持続的に幅広く行われるよう支援することが必要である。
(5)拠点の形成については、各大学等の取組を支援するとともに、国全体の学術研究の発展の観点から、大学の枠を越えた研究拠点の形成や大規模な学術研究プロジェクト等については、国の学術政策として重点的に推進することが必要である。重点的な推進のための意思決定の過程においては、研究者の自主性に基づくボトムアップを基本とし、研究者コミュニティにおける議論と合意形成を踏まえ、国の施策に反映していくことが重要である。
(6)研究者コミュニティによる合意形成にあたっては、議論の公開性と透明性を確保するとともに、コミュニティの自主性・自律性を担保することが重要である。具体的な合意形成のプロセスについては、更に検討が必要であるが、科学技術・学術審議会の学術分科会(以下「学術分科会」という)は、研究者コミュニティの意向を国の施策に反映させる役割を有しており、その機能の強化が必要である。
研究振興局学術機関課
-- 登録:平成21年以前 --