令和7年1月20日(月曜日)13時00分~15時00分
オンライン会議にて開催
観山正見部会長、勝悦子委員、井上邦雄委員、井野瀬久美恵委員、関沢まゆみ委員、永田敬委員、中野貴志委員、長谷部光泰委員、松岡彩子委員、吉田和弘委員、渡辺美代子委員、森初果委員
塩見研究振興局長、生田振興企画課長、柳澤大学研究基盤整備課長、柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官、熊谷大学研究基盤整備課課長補佐、その他関係者
【観山部会長】 それでは、ただ今より科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 第120回を開催いたします。委員の先生方におかれましては、御多忙の中ご出席いただきまして、本当にありがとうございます。本日の会議は、文部科学省のYouTubeチャンネルでの配信という形で、公開での開催としておりますので、よろしくお願いいたします。まず、事務局より本日の委員の出欠、配付資料の確認をお願いいたします。
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】 事務局でございます。本日の委員の先生方の御出欠状況でございますが、原田委員、治部委員が御欠席と伺っております。また、井野瀬委員が14時ごろ、吉田委員が14時半ごろに退席されると伺ってございます。
本日の資料につきましては、議事次第に記載のとおり資料1-1~資料3、参考資料1・2となってございます。委員の先生方には事前にお送りしておりますが、不備等ございましたら、随時チャット機能等で事務局までお知らせいただければと思います。また、音声等に不都合がございます場合も、随時事務局までご連絡お願いいたします。事務局からは以上になります。
【観山部会長】 それでは、本日の議事に入りたいと思います。議題1「大学共同利用機関を中心とした共同利用・共同研究体制の機能強化について」になります。前回の会議において、大学共同利用機関の現在の役割や課題、今後の機能強化の方策について広く意見交換をいたしました。その際、4機構と総研大で構成される大学共同利用研究教育アライアンスの効果に関する御質問がありましたので、本日はアライアンスの代表理事である人間文化研究機構の木部機構長にご出席いただき、活動報告をしていただきたいと思います。その後、引き続き大学共同利用機関の今後の機能強化に関する議論を深めたいと思いますので、まず、それでは木部機構長から活動報告をお願いいたします。よろしくお願いします。
【木部機構長】 ただ今ご紹介いただきました、一般社団法人大学共同利用研究教育アライアンスの代表理事を務めております木部でございます。この度はお時間を頂きまして誠にありがとうございます。アライアンスは4つの大学共同利用機関法人、人間文化研究機構、自然科学研究機構、高エネルギー加速器研究機構、情報・システム研究機構、それから国立大学法人の総合研究大学院大学が社員となって令和4年3月1日に設立した一般社団法人です。本日はアライアンスの活動状況についてご報告申し上げます。よろしくお願いいたします。
アライアンスの御説明をする前に簡単に大学共同利用機関法人と総研大がどのような活動をしているかについて、資料の3ページから8ページまでまとめてございます。スライドを準備しましたが、時間の関係で具体的な読み上げは省略いたします。アライアンスの活動はこうした個々の法人の活動の上に成り立っているということで、参考としてお目通しください。では、9ページをご覧ください。
9ページはアライアンスの設立の経緯です。研究環境基盤部会での御議論を経て設立に至ったものですので、詳細は省略いたしますが、研究環境基盤部会の審議のまとめを受けて、私どもとしましても、大学共同利用機関がその機能を十分に発揮し、我が国の学術の発展及び共同利用の拡充に資するために連合体すなわちアライアンスを設立し、様々な活動や取組を、行っていくことといたしました。10ページからもう少し具体的なことが書いてございます。
10ページですが、アライアンスは先ほど申しました5法人の連携を推進する事業を企画・推進する法人と位置付けられております。アライアンスの理事は5法人の長が担っております。
11ページをご覧ください。アライアンスの目的ですが、5法人が「一体的な研究教育活動を通じて、その機能を十分に発揮するための事業を推進し、我が国の学術研究の発展に寄与すること」と設定しております。それにより研究教育・共同利用の両面から広く大学や研究機関等の機能強化に貢献することを目的としております。
目的の達成のために部会を設置しております。スライドの左下の方ですが、1つ目は研究力強化のための部会、2つ目が大学院教育の部会、それから3つ目が業務運営の効率化の部会です。その他に国際連携プラットフォーム形成事業推進委員会を設置しておりまして、国際連携の取組を進めております。
一般社団法人に必要な経費について少しご説明いたします。この社団法人の運営に必要な経費は社員法人からの会費でまかなっております。それぞれの事業は、各法人が行うものを横展開したり、あるいは外部資金を獲得するなどして実施しております。その他、研究支援のプログラムや研修事業では、別途経費を拠出して実施しております。アライアンスのための予算が措置されているわけではないことから、5法人の持ち出しと創意工夫により活動しているものであることをご理解いただけますと幸いです。12ページは役員の名簿でございます。
13ページをお願いします。ここからはアライアンスが実施する事業についてのスライドです。主なものだけご説明いたします。はじめに、研究力強化事業です。研究力強化事業は現在、ここに書いております(1)から(5)までの事業を進めております。14ページをご覧ください。その中で特に「IU-REAL 異分野融合・新分野創出プログラム」というのが②に書いてございますが、これについてご説明します。IU-REALというのは、アライアンスの愛称として昨年決定したもので、この名称は、Inter-University Research & Education Allianceの略です。このプログラムでは、異分野の研究者の協働による新たな研究領域の開拓に資する研究活動を支援しています。令和4年度に研究の公募を行って、令和5年度に3件の研究を採択いたしました。
15ページをお願いします。これが3件の採択事業でございます。ここに書いてございますように、各大学共同利用機関法人が参加して3つのプログラムを推進しておりますが、他にも理化学研究所等が参加しておりまして、今後ともこうした取組を継続してアライアンス以外の機関からの参画も拡大していきたいと考えております。
16ページ以降は3つのプログラムの具体的な内容が書いてあります。詳しいことは時間の関係で説明いたしませんが、16ページがナレッジグラフによる分野横断型の知識構築、それから次のページが神経細胞の誕生履歴と生理機能の統合データのオープンサイエンス化、それから次のページが素粒子実験のデータ解析技術を応用した日本語テキストの数理的解明というテーマのプログラムです。3番目のものは非常に意欲的な取組でして、スタートアップで採択された事業ですが、素粒子実験のデータ技術を日本語テキストの数理的解明に応用した、素粒子原子核研究所と国立国語研究所という全く分野の異なる研究者による共同研究です。素粒子分野においては膨大な実験データを数値処理し、実験データと物理模型との一致度合いを、統計学を駆使して定量的に計算するといったデータ解析手法を用います。この手法を日本語のテキストに応用するというものです。言語も膨大な数の語彙ですとか文法項目を有しております。このような言語の普遍的な性質は一体何かということを、統計学を用いた定量的な方法により解明しようという非常に意欲的な試みでございます。
次の19ページをご覧ください。ここからは大学院教育事業の説明に入ります。大学院教育では、特別研究員制度による博士研究者人材育成の取組を進めております。これは総研大の博士後期課程に在籍する優秀な志のある学生を総研大特別研究員として採用して経済的な支援を行うものです。令和3年度以降、延べ85名の支援を行いました。現在は全ての分野の学生を対象とする一般枠と、次世代AI研究者枠を設けております。これらはJSTの各種事業や総研大の運営費交付金を財源として進めているもので、令和7年度には次世代研究者挑戦的研究プログラム及び次世代AI研究者人材プログラムの方も採択を頂いております。今後も大学共同利用機関を教育・研究の場とする総研大の特徴を生かしながら制度を拡充させていく予定です。
20ページをご覧ください。これは総研大の教育組織再編に関する資料でございます。総研大は、令和5年度にこれまでの6研究科の体制から1学術院・1専攻・20コース制へ移行いたしました。これにより、大学共同利用機関が持つ教育リソースを機関・組織・分野の枠組みを超えて全学で柔軟に提供できる教育環境が整い、専門性と展開力を併せ持つ博士人材育成が輩出されるものと考えております。
21ページをお願いします。これは共創的研究連携コンソーシアム構想の図を示しております。若手研究者が枯渇しつつある中で、多くの機関が組織的に連携し、教員・学生のモビリティを高め、研究教育環境を相互に利活用することによって、全体として研究力・人材育成の強化を図るシステムが必要なのではないかと感じ、このような図を描いております。総研大と大学共同利用機関の関係性は非常に有効で、総研大をハブとすることで大学共同利用機関と全国の大学とが組織的に連携するネットワークを形成することができると考えております。ここに示しております人文科学イノベーションは、そうした取組の一例となります。総研大が地域中核・特色ある研究大学強化促進事業に申請したものでございます。残念ながら採択にまでには現在至っておりませんが、連携大学や参画機関をコアとする共創的研究連携コンソーシアムを形成するとともに、地方自治体や地域コミュニティとも密接に連携して計画を推進することを枠組とする計画を立てております。将来的には、これ以外にもいくつかの大きな課題でコンソーシアムがそれぞれ立ち上がり、機関や分野を超えた連携が活発に展開されることを目指しております。
次に22ページは、業務運営の効率化事業についてでございます。ここにございますように、共通業務の集約や教員の人材育成を共同で進めることにより、共同によるスキルの向上、知見の共有や高度化、それから経費・業務負担軽減を目指しております。特に人材育成に関しては、5法人だけでなく大学を含めて取組を展開していきたいと考えております。効率の観点でいえば、研修の共同実施では、ここに書いてございますように、経費にして約240万円、それから作業時間にして1,000作業時間程度の削減効果となっております。また、それ以外にも複数の機構、機関が連携して国のプロジェクトに申請する等、アライアンス連携のプロトタイプとなるような成果が見られるようになっております。
次に国際連携プラットフォーム形成事業ですが、この事業では、各機関法人が既に持っているそれぞれの分野における国際的中核拠点としての強みを生かして、それらをアライアンスのスキームで組み合わせることにより、多角的な国際展開のプラットフォームを形成する取組を企画しております。
具体的なことは24ページに記載しております。ここには昨年11月にキプロスで開催したシンポジウムについて記載しております。このシンポジウムは、アライアンスの活動を紹介し、国際頭脳循環の拠点として新たな学際的科学の創造に貢献することを目的として開催したもので、アライアンスの各法人から参加した研究者が研究教育活動について講演を行いました。その場において、アライアンスという独自の枠組みは各国との学際的な協力を深め、若手研究者の交流を促進するためのゲートウェイとしての役割を果たしていくものであるとアピールしてまいりました。
また、25ページにありますように、このシンポジウムに併せましてアライアンスの各法人の事務系職員、それからURAの海外研修も行い、研修生は発表資料の準備や会議事務局の支援を通じて国際業務の実務に従事いたしました。この研修プログラムは国際的な研究推進人材の育成を目的に昨年度から実施しており、各法人から参加しております。参加者からは、実務面でのスキルアップを実感するとともに、研究支援の重要性や日本の研究環境について考える機会になったとの声が上がっております。また、訪問をきっかけにした国際連携の動きも見られております。26ページには、具体的な場面の写真を掲載しております。その次の27ページには、キプロスでのシンポジウムでアライアンスを紹介した際の資料を挙げております。アライアンスの国際的な認知度向上や、それから学際共同研究の推進につながる発展的な会議であったと考えております。その次をお願いいたします。
ここからは5法人における物価上昇等の影響について少しご説明いたします。アライアンスでは、28ページに書いてありますように、昨今の物価上昇が我が国の学術教育・科学技術力の維持・向上に多大な影響を及ぼしていることに鑑み、物価上昇が続いた場合どのような影響を受けるのかというのを、5法人で連携して今後4年間のシミュレーションを作成いたしました。このような資料を5法人が共同で作成するということは初めての試みとなります。資料はアライアンスのホームページに掲載しておりますが、今回は省略しております。先日、この資料を関係各所に持って上がって、5法人の物価上昇の影響について御説明をしたところでございます。次のページをお願いします。
最後にアライアンスの今後の方向性についてお話しいたします。現在、政府の各種会議等で大学共同利用機関や機構をめぐる議論が行われておりますが、その中で大学共同利用機関や機構が何をやっているのか、また、その強みや特色が見えないとの御指摘を頂いているところでございます。各法人や各機関はそれぞれ特色があって、それぞれが国内外の研究者コミュニティと築き上げた関係がございます。アライアンスはそれらを生かしながら、5法人が一体的な研究教育活動を通じてその機能を十分に発揮するための事業を推進する組織として、様々な連携事業を行っておりますが、今後さらに2点に力を注いでいきたいと考えております。
1つ目は、現在でもいろいろと連携しておりますが、今以上にアライアンスの枠にとらわれることなく、全国の大学や研究機関、共同利用・共同研究拠点をはじめ、外部との情報交換や連携の場を一層多く持つということでございます。
それからもう1つは、先ほど申し上げましたように、総研大をハブとすることによって、大学共同利用機関が全国の大学と組織的に連携し、オールジャパンで研究力を強化し、研究者人材の育成を促進する取組を一層推進することです。これらに今後、力を入れて進めていきたいと考えております。このような取組を通じて、研究教育・共同利用の両面から、広く大学や研究機関等の機能強化に貢献し、我が国の学術研究の発展に寄与してまいりたいと考えております。
発表は以上ですが、本日は各部会長、それから委員長も陪席しておりますので、ご不明な点や御意見、御助言等がございましたら、この後ご発言いただければ幸いに存じます。本日はこのような報告の機会を頂き、誠にありがとうございました。
【観山部会長】 ありがとうございました。それでは、委員の皆様から御質問や御意見がありましたら、どうぞ挙手ボタンか実際に手を挙げていただければと思いますが、いかがでしょうか。中野委員、お願いします。
【中野委員】 説明ありがとうございました。意欲的な取組が多く、大変感銘を受けました。資料の21ページ、スライド番号で20を開いていただきたいと思います。先端学術院・先端学術専攻でテーラーメイド型の教育プログラムを実施されている点に非常に感銘を受けました。一方で、基盤機関が全国各地に散在しているため、これを実質的に運用するためには、教育のDX化が必須になってくるかと思います。その点について、どのように実現されているのでしょうか?また、最後の課題として挙げられていましたが、オールジャパンでの人材育成にも今後取り組んでいきたいとのお話がありました。これらの教育プログラムを大学に対しても開放する可能性は将来的にあるのでしょうか?
【木部機構長】 どうもご指摘ありがとうございます。これについては、私よりも大学院教育部会の山本部会長が参加していると思いますので、山本先生、お願いいたします。
【山本理事(総研大)】 山本でございます。最初の点でございますが、確かに点在しているということはあるのですが、コロナのこともありましてオンラインによる講義というのはかなり定着してきているということもあり、対面とオンラインをうまく併用する形で進めることで、そういう分散しているというところを乗り越えていくということで進めております。
それからもう1点は、現在でもいくつかのプログラムは公開しております。それは非常に基盤的なものは他の大学の学生さんにも聞いていただけると大変よいと思いますので、それは鋭意拡大してまいりたいというふうに思っております。以上です。
【中野委員】 ありがとうございました。
【観山部会長】 それでは、吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】 木部機構長、ありがとうございました。非常にアライアンスの概要であるとか、背景であるとか、組織であるとか、非常によく分かりました。特に23ページのところでアライアンスが実施する事業というところでご説明いただいて、業務の効率化ということでお示しは頂いたのですが、確かに実際この効率化というのがアライアンス事務局、業務、法人運営、こういうところからすると結構負担が増えているのではないかなと実は私は考えるのですが、部分的には削減効果としては出していただいているのですが、実質的に効率化って本当にできているのか、あるいはその中で課題みたいなものがあったのかどうかとか、そこら辺をぜひ教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【木部機構長】 どうもありがとうございます。具体的には、やはり場所が離れておりますものですのでなかなか難しい面もありますが、この部会の宮崎部会長、よろしくお願いします
【宮崎理事(人間文化研究機構)】 宮崎です。業務運営部会の部会長をしております。業務の効率化ということですが、ここの資料にお示ししましたような実績を挙げているということは強調しておきたいと思います。まず何よりも、何もかも一緒でやってというのではなくて、効率のよい、効果的なもの、効果の見込めるものから始めるという方針でやっております。研修については各法人で共通している部分があるので、それを共同で実施することによって、これは一つにはオンライン環境でできるということもありますので効果を上げていると思います。
それからもう一つ付け加えますと、何もかもアライアンスで閉じてやってしまうというよりも、このSD・専門職研修のところにありますように、都内3大学と共同でやっていると。つまりこれは近くの大学と共同してやっているということでありますので、大学と連携してやるという、今後の方向性にもありましたが、そういった方向も考えていきたいと思っています。以上です。
【観山部会長】 吉田先生、よろしいでしょうか。
【吉田委員】 はい。どうもありがとうございました。
【観山部会長】 勝委員、お願いいたします。
【勝委員】 今の吉田委員の御質問と少しかぶってしまうのですが、私もアライアンスはかなり大きな効果が特に業務運営に関してあるのかなと思っておりましたらば、定量的に見るとさほどないと。もう1点としては、やはりアライアンスをすることによっての負担というものも増えているのではないかなというふうには思うのですが、やはり共通でできることというのは例えば広報であるとか、そういったところは余り記述がないようなのですが、これをどのようにやっているかということ。
それから国際連携プラットフォームについて職員の研修の話が今出ましたが、これは非常に効果があるのではないかなというふうに思うのですが、その成果といいますか、教えていただければと思います。特に研究者についてはそのキプロスでいろいろやられているとは思うのですが、各大学側が全てあるいは学会単位でやっているところも非常に多いと思うので、むしろそういったところにお金を掛けるよりも、特にURAであるとか職員の能力開発とか、この辺を重視していく方がよいのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。以上です。
【木部機構長】 ありがとうございます。広報についても宮崎部会長からよろしいですか?
【宮崎理事(人間文化研究機構)】 ご質問ありがとうございます。広報につきましては随分議論いたしました。経緯から申しますと、やはり大学共同利用機関というのがまずあって、そこで広報体制も何もかも含めた自律的な単位であったと。それが機構法人にまとめられ、そこでまた単位ができたと。それを更にまとめてアライアンスということになると、二重三重に重複する部分が出てまいります。広報については一番力を入れていますのは個々の大学共同利用機関ということになりますので、こちらを主体にやっていく。そして、アライアンスとしてはアライアンスの事業を主体に広報していく。つまり異分野融合連携だとか、それからシンポジウムですかね、そういったイベントについての広報をしていくということ。それから、今後進めていきたいと思っておりますのは大学共同利用機関全体についての意義を説明するというのも今後やっていくように考えていきたいと思っています。どうもありがとうございました。
それから職員研修については、これは私の方からでよろしいでしょうか。実は既に職員研修について外部資金を取って展開しようという試みをやって、まだ成功しておりませんが、技術職員の研修については視野に入れているところではあります。以上です。
【木部機構長】 花垣委員長から何かございますか?
【花垣理事(KEK)】 それではKEKの花垣も一言だけ。その国際連携に関するところについて補足いたします。スライド26ページにありますようなことを実施しまして、これは確かに4機構が共同でやることによって効率化はできるのかなというふうには思います。ただ、その成果をまだ定量化という段階には至っておりません。それからもう一つ木部代表理事が冒頭で説明しましたとおり、それから御指摘もありましたとおり、こういうことをやると人的資源は追加で必要になりますし、それから予算が付いているわけではないということで、では実際効率的に何を進めたらよいかというのを現在検討しております。その検討の材料としましてもう4機構から事務職員の方にどういうことをやったら効率的に業務を減らせるかというようなアンケートを取りまして、今はその解析等を行って、次に何をやればよいか考えているという状況です。以上です。
【観山部会長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは、渡辺委員、お願いします。
【渡辺委員】 ありがとうございます。アライアンスの取組は素晴らしいと思いながら聞かせていただきました。資料の18ページにある素粒子の実験データを日本語テキストで解明していくというところは、大変独自性があり日本ならではの研究になり得ます。通常ですと英語をベースにして実験データを解析していくというのが一般的だと思うのですが、それを日本語のテキストで解明していくということによって、英語で解明するのとはまた別の日本語独自の価値というのが生み出されるのではないかという期待があるのですが、そのようなものがあるかどうかを教えていただきたいと思います。
【木部機構長】 ありがとうございます。これは私が答えた方がよいのですかね、井本部会長、どうしましょう。……
【井本理事(NINS)】 木部先生の方が専門に近いのでお願いします。
【木部機構長】 一応私の専門は言語なのでご説明いたします。どういう成果が挙がっているか、実は具体的なところはまだ聞いていないし、そんなにすぐに結論が出るものではないと思いますが、言語の資料というのはやはり膨大になりますので、それを数量的に処理するというところに特徴があります。それからもう一つはおっしゃったように日本語のテキストを使うということです。日本語は表記法が非常に複雑なので、英語に比べて解析が非常に難しいのです。それに比べてヨーロッパ言語ですとかアルファベットを使う言語は手法としては一律に扱えるので、日本語を扱うことで、もしかしたら面白い結果が出るかもしれません。
言語学が目指しているのは、一つは表記法だとか話されている各種言語に限らず、いろんな言語に共通する言語の普遍性というのが何なのかということの解明です。もう一つは、普遍性があるにもかかわらず今、世界的にはものすごく多様な言語が話されている。その多様性がどんなところから出てくるのかということの解明。これが言語学における大きな二つの解明課題です。
そこに日本語をテキストとして扱うということは、特に2番目の課題に貢献することになると思います。おっしゃるとおりですね。ただ、具体的にどういう成果が挙がったかというのは、まだ今のところは具体的には挙がってきていないという状況です。ぜひ発破を掛けていただければありがたいと思います。
【渡辺委員】 ありがとうございます。成果はこれからだということなのでぜひ期待したいと思うのですが、言語学にとっての成果だけではなくて、素粒子にとっても今までとは違う発見の部分があったら本当に素晴らしいと思うので、ぜひ期待していきたいと思います。ありがとうございます。
【木部機構長】 どうもありがとうございます。
【観山部会長】 ありがとうございます。まだ質問や御意見があろうかと思うのですが、時間が来ております。今後も引き続きこの基盤部会において適宜状況の確認をしていきたいと思います。アライアンスというものを作ったことに関する成果みたいなものは今後求められるのですが、その4つの機構と総研大が完全に融合しない形でアライアンスというのを作ったわけで、その個別な機構はそのままの状況でアライアンスを作ったということの効果というのがよく出ているのだということをしっかりと取りまとめに向けて示していただくこと。5つの機関で共同で活動すると非常にうまくいったということになると、では融合したらよろしいではないですかということにもなりますし、それぞれの機能は残しつつアライアンスという形で活動することが今後将来にとっても非常によい形態なのだということを、非常に難しい宿題でございますが、そこをしっかりと提示していただくことが必要と思われます。この部会でも、別の所でも表現されることが結構なことではないかと思いました。今日はお忙しいところどうもありがとうございました。木部機構長をはじめ大学共同利用機関、アライアンスの皆様、どうもありがとうございました。ここで退出いただいて結構です。今後ともご活躍いただければと思っております。今日はどうもありがとうございました。
【木部機構長】 どうもありがとうございました。失礼いたします。
【観山部会長】 それでは、前回の会議に引き続き大学共同利用機関等の今後の機能強化方策に関する議論を進めたいと思います。まずは前回の会議の意見を基に、事務局において本部会としての意見の概要の作業をしていただきまして、案を作成してもらいましたので、説明をお願いいたしたいと思います。
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】 それでは、資料1-2についてご説明させていただきます。前回の会議におきまして大学共同利用機関を中心とした共同利用・共同研究体制の機能強化に向けて委員の皆様から様々な御意見を頂いたところであり、その御意見を意見の概要という形でまとめさせていただいております。こちらについては本日の御議論も踏まえまして、文部科学省における第7期科学技術・イノベーション計画に向けた検討や、次期の研究環境基盤部会におけます大学共同利用機関の検証を通じた今後の在り方の検討におきまして引き続き議論を深めていただくことを予定しています。
最初に全体の考え方を記載しておりますが、現在国際卓越研究大学制度や地域中核・特色ある研究大学強化促進事業等によりまして、トップ層や上位に続く層に位置する大学の研究力強化に向けた取組が行われているところでございますが、それらの大学以外にも広く意欲・能力ある研究者が所属しているといった特徴が見られております。
このような中、大学共同利用機関や同様の機能を有する共同利用・共同研究拠点は、全国の大学に点在する意欲・能力ある研究者が最先端の研究を行うことができる場として、また、組織の枠を超えて国内外の研究者をつなぐことにより、新しい知を創出する場として重要な役割が期待されておりまして、研究活動・研究設備は高度化・複雑化する中で、組織・分野を超えた国際的・学際的な研究ネットワークのハブとしての機能をより一層強化する必要がある、そのような御意見が前回の会議で多く寄せられました。
その機能を強化する方策といたしまして、例えばということで挙げられたものを下の機能強化が求められる事項として大きく4つに分類してございます。
1つ目は、研究環境の充実・高度化。その中でも先端的な研究を行うための中規模研究設備等の基盤の更新といった御意見が多かったかと思います。また、設備以外にも、技術職員やURA、産学官連携コーディネーター等の研究マネジメント人材による研究支援体制の充実、また、組織の運営も含めましたグローバル化の推進等による国際競争力の強化について意見が多く寄せられておりました。
2点目といたしまして、下に研究人材の育成・輩出ということでまとめております。この観点では、若手研究者の育成や支援に関する取組の充実、また、企業等とも連携した技術職員の育成・輩出のハブ機能の強化、また、総研大との協働によります学生の早期からの戦略的育成に関する御意見がございました。
続きまして、右上の新しい学際領域の開拓。こちらにつきまして、新しい学際領域を開拓するための仕組みの構築を主導するハブ機能の強化についての意見がございました。
最後、ハブ機関としての体制の充実といたしまして、各機関における公募情報の集約化等を通じた、より広い分野の研究者への訴求。また、先ほどアライアンスの御説明もございましたが、アライアンスですとか、また、今の法人内に分野が異なる機関が所属したことを踏まえた、その連携の促進や効果的な活用に関する御意見がございました。前回の会議の意見をまとめた資料としては以上になっております。
【観山部会長】 それでは、続いて、先ほど少し説明もありました第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けた文部科学省の検討状況について、事務局より説明していただければと思います。
【生田課長】 失礼いたします。振興企画課の生田です。資料1-3に基づきまして、第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けた、まだ研究振興局内の議論の途中でございますが、ご紹介をさせていただき、委員の皆様方から御意見を頂戴できればと思います。
まず資料をおめくりいただきまして2ページ目・3ページ目。こちらは夏の段階で7期に向けた学術分科会及び基礎研究振興部会として取りまとめられた資料でございますので、ご参考いただければと思います。この結果を踏まえながら、我々としてどのような議論をしてきたかというのを本日ご説明させていただければと思います。
資料5ページ目以降、こちらが我が国を取り巻く現状ということで、まず5ページ目は論文指標で見る研究力の現在地でございます。もう皆様方は一度はご覧になった資料かと思いますが、論文数及びTop10%補正論文数、そして一番右端がTop1%の補正論文数の各国比較が並んでおります。総体と見て日本はかなり厳しい状況ではございますが、真ん中のTop10%補正論文数は一応下げ止まりという兆しが見えつつあるかなという状況が現在地でございます。
一方で6ページ目を見ていただきますと、こちらは論文総数の順位等を各国比較で並べたもの、そして下半分がTop10%の補正論文数の推移で過去から見た形を表しておりますが、日本がTop10%の方につきましてはより鮮明に下落の傾向があるというのが見て取れるところかと思います。
7ページ目・8ページ目が、今度はサイエンスマップに基づきまして新たな研究の芽となる可能性がある研究領域の参画が日本は他の国と比較してどうだろうというものを表しているものでございます。このSci-GEOチャートによりますと、縦軸・横軸でこのようなコンチネント型、アイランド型等々の研究領域を分類しているものがございます。この7ページ目の右半分では、世界の研究領域数、この919というのがサイエンスマップ2020で国際的に注目を集めている領域ということで規定されておりますが、この中でスモールアイランド型が全体の36%、そしてコンチネント型領域が19%と。スモールアイランド型というのが、右の所に少し吹き出しで書いてございますが、いわゆる小規模な領域であって、ただ、入れ替わりが活発ということで、ある意味新しい研究の芽となる可能性のある研究領域というふうにも見て取れるのではないかと思います。一方で、コンチネント型は大規模であり入れ替わりが少ない、つまり持続性があり規模も大きい研究領域数というのが、現状このような形で位置付けられております。
これを各国比較で過去からの推移を見たのが8ページ目のグラフになっておりまして、これは右半分がサイエンスマップ2004でございます。左半分が2020でございます。特に例えば一番右端の中国を見ていただきますと、この一番上にあるブルーの所が27%から32%に増えています。これが先ほど説明申し上げましたスモールアイランド型の割合を表したものでございまして、一方でその隣の日本はどうかと見てみますと、26%から23%へ減っていると。世界全体というものが一番左端の棒グラフでございますが、こちらも全世界的に見ても、2004年は35%だったのが2020年は36%ということで増えている。にもかかわらず日本はこのスモールアイランド型、いわゆる新しい研究の芽となる可能性のある研究領域が割合として減ってしまっていると。何が増えているかというと、一番下のコンチネント型。これは世界の潮流の反対を行っているというのが我が国の状況だという認識をしているところでございます。
続いて9ページ目、こちらは研究大学群の現状でございます。これも皆様方よく見られている図かと思いますが、イギリスとドイツと比較をしてトップ層の大学が圧倒的に少ない。一方で上位に続くいわゆるセカンドティアといわれるような大学、こちらについても日本の場合は少ないという、両軸において研究大学群の形成にまだなかなか比較したときに厳しいというのが現状値だと思っております。
その中で10ページ目でございますが、こちらは少しフォーカスを広げた見方でございまして、まず大学分類。ここはNISTEPの分類でございますが、論文数のシェアで上位から第1グループ、第2グループというふうに規定をしているところでございます。いわゆる国際卓越といわれるようなところは第1グループ。そこから順番に流れているというふうに見ていただければ結構だと思いますが、左から横軸は基盤的支援、そして研究大学への大学全体としての支援、拠点形成支援、そして一番右端が個人支援という流れの絵になっております。この中で赤枠で囲ってあるところ、当たり前かもしれませんが第1グループ・第2グループといわれるような所に対しては、組織支援若しくは拠点支援のものが主流で流れていっているというのが見て取れます。
一方で右の下にブルーの四角で囲ってございますように、第3グループ・第4グループといわれるような大学にいる研究者個人で見たときに、科研費の基盤Aですとか創発的研究支援事業、こういったものを獲得している研究者というのは必ずしも第1グループ・第2グループに限らず第3・第4にも相当数存在しているというのが我が国の特徴ではないかというものでございます。
これを同様にマクロな形で見たのが次の11ページ目でございまして、こちらもご覧になった方は多いかもしれませんが、日本とイギリスとドイツというのを比較していて、イギリス・ドイツはいわゆる第1グループないしは第2グループのところまでで全体の論文数が圧倒的に占めているのに対して、日本はこのようにカラフルになっていますが、第1・第2・第3・第4それぞれのグループの大学がそれなりの規模感で論文数を出していると。それが先ほどの個人で見たものの裏腹のデータかというふうに思っております。こういった特徴を踏まえながら、我が国としては全体としての研究力向上をどのように上げていくかというのを考えなければならないというふうに認識しております。
続きまして12ページ目、こちらは研究者個人で見たときにどれくらいの運営費交付金等の定常的に措置されるお金が流れているかというものを経年変化で見たものでございます。法人化が大体2004年からガクンと減っておりますが、当初2000年代は280万だったものが現状では100万を切っていると。これは分析方法の違いだけですので、上が均等配分、下が対数正規分布でございますが、どちらにしても1人当たりに流れている定常経費、定常的に使える研究開発費が減少してしまっているというのが、体感としても感じられておりますが数字としても出てきているというのが現状でございます。
一方で13ページ目でございますが、そうはいっても研究活動全体が大型化しているものを表したのがこちらの13ページ目でございまして、1920年より以前は論文は一人で書く個人型の研究が主流だったというのに対して2012年、少し古いかもしれませんが、それでもなお論文を1本書くのに平均共著者が5.3人ということでチーム型の研究が主流になっていると。多分もちろん分野によっても違いますが、現状ではもっと大型化しているのではないかというふうに思っております。
さらに14ページ目、これは研究のDX化でございまして、これも言うまでもございませんが各国がデータ駆動型研究開発に巨額な投資をして進んでいる中で、日本がまだまだ遅れているということを表しているものでございます。この下半分に二つのグラフが並んでおりますが、このデータ駆動型の、これは材料に少し特化したものでございますが、それに関連する論文数の動向、これが左でございまして、右側はそのデータ駆動型材料研究開発に関わる研究者の数の経年変化を見たものでございます。中国・アメリカ等々が圧倒的にリードしている一方で日本がなかなかそれに追いついていけていない。このような現状認識を我々としてはしているところでございます。
そうした中、では我が国が直面するどういう未来像を描くか、そしてそこに向けて基礎科学力をどのように強化していくのかというのが次のページ以降で示しているものでございます。16ページ目、こちらはこれまでの議論の振り返りでございまして、御案内のとおり第5期で初めてSociety5.0というものが提唱され、第6期ではその具体的化を目指すという流れが来ております。
では第7期はどうしていくのかというのが17ページ目でございますが、その5.0の実現、まだまだ道半ばではないかという認識をしております。更にいえば、足元で国際情勢や社会構造の変化が加速し、全体感としての漠とした不安、これが高まっているのではないかと。地政学的リスクが拡大していたり、社会課題の深刻化、更にはグローバルコモンズの維持に対する危機感、こういったものからいろいろな不安感がある中、一方、科学技術の周辺を見てみると、例えばAIで見てみますと、各国ともに熾烈な研究開発競争を繰り広げていると。左半分はAIの研究領域の盛り上がりを示しておりまして、これは先ほどご紹介したサイエンスマップと同じでございますが、領域自体が全世界的に一気に増えていると。これに伴い右側がその市場を表したものでございまして、これも言うまでもございませんが生成AIの市場がぐわっと増えていて、2027年には1200億ドルといわれております。この1200億ドルというのが2023年のノートPC市場と同規模といわれておりまして、一気に研究開発が加速すると同時に市場も大きくなっているというのが今の日本が直面している社会ではないかというふうに思っております。
そうした中でどういうことをしていかなければいけないかというのが18ページ目でまとめておりますが。2つあるのではないかというふうに考えております。1点目は、日本がこういった国際社会の中でプレゼンスを発揮して、誰もが安心して豊かに暮らせる社会、これを実現するためには、先端技術における優位性をしっかり獲得して、それだけではなくてそれをイノベーションにつなげるところまで。これが必要不可欠ではないかと。昨今、政略的自律性・不可欠性の確保といった言葉も出てきておりますが、とにかく揺るがない頑強な国の力をしっかり蓄積していく。これが重要ではないかと思っております。
一方、ただそれだけではやはり駄目で、今予見されているこの競争にしっかり追い付くだけではなくて、予期せぬ事態、そういったものですとか、社会がこれだけ不連続に変化している、そういったものにもアジャイルに対応する。そういう変化への対応を日本が世界にリードして主導できるように、将来の競争力の源泉への先行投資というものをしっかり行っていく。これが未来の日本の盛衰を大きく左右するのではないかというふうにまとめております。
この下に図がありますように、1つ目、揺るがない頑強な国の力、これが縦軸の赤いところをイメージしております。国の力をしっかり強くするということ。ただそれだけではなくてこの横軸、アジャイルに対応する、この両軸が重要ではないかと。これによって、ある意味我々の日本という国が世界に向けて大きくリードしながらプレゼンスを維持することができるのではないかというふうに考えているところでございます。
この右下の方に図もありますが、これも同様に下半分の青でくくってあるところ、これがどんなことが起きても我々が対応できるような将来の競争力の源泉、これに先行投資をすると同時に、上半分、世界各国がしのぎを削っているような重点分野、これはこれでもちろん重点支援をしてしっかりイノベーションにつなげていくことが重要だというふうに考えております。
そんな中で、次のページ19ページ目、ではアカデミアに何が期待されるかというものでございます。昨今、リニアモデルではないパラダイムシフトというのがどんどん起きている中でございますので、研究とビジネスの距離というのは明らかに近くなってきていると。そうした中で社会からの要請を意識した研究ですとか成果の社会実装、これに大学の研究者がしっかり関わっていく、これは当然やはり社会からの期待というものに対して応えるという意味で重要なのではないかと思っております。ただそれだけではなくて、しつこいようでございますが、やはり卓越した技術というのは先駆的な科学研究、サイエンスに支えられているということで、この0から1を生み出すアカデミア、このアカデミアに対する期待感というのが今まで以上に高まっているのではないかというふうに感じております。ですので、日本のアカデミアは世界の学術だけではなく産業界を先導するような知のハブとして科学研究における革新的な発見、これを生み出すことを通じて、日本の発展の原動力になるということが期待されているのではないかというふうに考えております。
この下に図を書いております。科学の上に技術、技術の上にイノベーション、もちろんこの一直線のリニアモデルだけではございませんが、いかんせんイノベーションだけに例えば投資をしていたらいずれにしても科学が沈んでいってしまう、これは言うまでもございませんので、しっかりと両軸でベーシックなサイエンスというのをやっていくことが重要ではないかというふうに考えております。
ではもう少し政策に結び付ける話として20ページ目でございます。基礎科学力の強化に向けてどういう方向性を目指すかというものをまとめております。まず、目指す姿といたしましては、先ほど申し上げましたようにアカデミアに対する期待がこれだけ大きくなってきておりますので、開かれたハブとなることによって、そこに研究者はもちろんでございますが、下にたくさんいろんな人材を書いておりますが、多様な人材が自分の所属する組織等々を超えて協働し、新たな知を創出し、そして社会的価値の顕在化を図る、この好循環を実現することが我々の目指すべき姿なのではないかというふうに考えております。そうなってきますと、その独創的な研究活動と多様な人材との協働、これが掛け合わせること、そして何を目指すかというのが下3つでまとめておりますが、新しいサイエンスを生み出す。先ほどのサイエンスマップでも申し上げましたように、やはり日本からゼロイチで何かを生み出す、こういったものをしっかりと切り開かなければならないのではないかというふうに思っております。
そして2つ目、これは日本全国各地、つまり先ほど紹介しました第1・第2グループに限らず、多様な大学にたくさんの優秀な研究者がいらっしゃいます。その研究者はもちろんでございますし、それ以外の多様な専門人材、そういった方々のポテンシャルを最大限引き出すことで、日本全体としての研究力、質・量ともに最大化させることが必要ではないかと考えております。
そして3点目は、やはりこれだけ時代の変化が激しい、DXも進んでいる中においては、いろんなものの壁を越えるということが重要ではないかと思っております。複雑化・高度化する社会課題への解というものは異分野融合だったりセクターを超えた協働から生まれてくるのではないかというふうに思っております。
こういったことを念頭に置いて21ページ目、今度は施策レベルで考えた整理学でございます。3つの柱に分けておりまして、1点目が組織、そして2点目がその横軸の組織をどうつなげていくか、3点目が今度は個人というような形で3つに分類しております。
1点目の組織論のところでございますが、まず1つ目のチェック項目は、先ほど来申し上げておりますように研究者と多様な専門人材が協働する、こういったことが可能な、そしてそこに国内外の多様な人材が集まってくる、こういう研究大学を作るためには、その組織としてのシステム改革というのを引き続きやっていくことが必要ではないかと思っております。これは今の国際卓越ですとかJ-PEAKS、そういったものの流れではないかというふうに思っております。
また、それだけではなくて、個人として競争研究費を獲得している研究者はいろんなところにいらっしゃいます。その研究者がしっかりと研究生産性を上げていく、研究時間を質的にも量的にも確保していく、そのためにも組織としてのマネジメントが必要だろうと。これは具体的に例えば創発研究では、研究者に研究費を流すだけではなくて、その研究者が所属する大学に研究環境をよくするためにということで支援しております。そういったことをより広げていくことが重要ではないかというのが2つ目でございます。
そして大きな2つ目の柱、これが研究ネットワークの構築でございます。ここが先ほど来ご議論あると思いますが大学共同利用機関とか共同利用・共同研究拠点といったものが念頭にあります。高度な研究環境、これはファシリティのみならず技術者も含めた研究支援、そういったものを持っている、若しくは提供している大学共同利用機関、これを中心とした分野・組織、それを超えた研究ですとか人材流動の中核となるための共同利用・共同研究システムのハブ機能を今まで以上に強化していく。これによって横軸を強くしていくというのがあるのではないかというふうに思っております。
さらに、分野別ですとか設備の共用事業、こういったものを現状走っておりますので、その先端研究基盤、これをしっかり充実させていくことも重要ではないかと思います。なお、こういうハブ機能を強化するに当たりましては、昨今の研究のDX化・大型化、こういったものも念頭に置きながら、自動・自律化ですとかリモート化の導入、更には研究データの基盤を強化する、そして専門人材の育成確保、こういったものもファシリティの整備と同時にやっていくことが必要ではないかというふうに思っております。
2点目は、今度はそういうハブ機関を結節点として様々な研究者が集い、研究活動を促進していく、そういう新しいファンディングの仕組み、これを考えていくことが必要ではないかというふうに思っております。これは、今までよくあるのはハブ機関にはハブ機関にお金を出す、そして研究者には競争的研究資金で研究費を出す、それぞれが独立的に行われたかと思いますが、その二つをある意味マッチングさせながら両者を協働させていく、そのような新しいファンディングの仕組みが考えられないだろうかというのが念頭にございます。
そして3点目の柱、これは個人に対する支援でございます。科研費、質的・量的充実、これは言うまでもございませんが、古典的な分野だけではなくて新しいサイエンスをどう科研費支援から生み出していくのか、又は海外の研究者コミュニティをハブにして更にそれを広げていく、そういったこともあるのではないかというふうに思っております。
そして2つ目、競争的研究費の質向上。これはいわれてもう久しいですが、とにかく応募・審査負担の軽減も含めて異分野融合の推進、そういったものを念頭に置いた全体としての質的向上、これは持続的にやっていくことが必要だろうというふうに感じております。
最後の点、こちらは社会からの投資拡大と書かせていただいておりますが、産学連携でいわゆる出口に近いところに対して産業界からお金を入れていく、こういった流れは当然政策としてこれまでもやってまいりましたが、ここで書いてある趣旨は、それだけにとどまらず、いわゆる本当にキュリオシティ・ドリブン、そういった研究にも社会からしっかり理解を得て、社会からの投資を受け入れていく、そういったことの流れも必要なのではないかという思いで記載をさせていただいているところでございます。
最後の22ページ目・23ページ目は、ただ今申し上げたような内容の概念を書いている図でございますので説明は省略させていただきます。その先の参考資料につきましても必要に応じて参照いただければ幸いでございます。資料の説明は以上で終わります。
【観山部会長】 どうもありがとうございました。ただ今の説明について御意見、御質問がありましたらお願いします。なお、意見の概要については、本日の議論を踏まえて取りまとめて学術分科会に報告し、次期の部会の議論に引き継ぐことを予定しております。それではどうぞ委員の皆様、御意見よろしくお願いいたします。松岡委員、お願いします。
【松岡委員】 ご説明どうもありがとうございました。私たち研究者にとっては実現していただけると大変よいのではないかと感じた内容が大変たくさんあったと思います。その上で、この方針のバックとして考えていらっしゃることで一つ教えていただきたいことがあります。それは、ただ今の御説明に入る前のところで、この資料の100分の34のところに研究基盤振興部会の意見というのがありまして、それの「1. 基礎研究の価値」というところの下に3つ黒い丸がありますが、その1点目、「若手研究者のみならず全ての研究者が長期間腰を据えて挑戦的な研究に打ち込める状況」というようなものがあります。今ご説明いただいた中ではこのことについてどう考えていらっしゃるか。もう少し具体的に言うと、全ての研究者にこういう素晴らしい研究をするための環境なりを準備するというようなものなのか、そうではないのかというようなところを確認させていただけないかと思いました。
先ほどにも研究の大型化というお話がありましたが、この点では私が今から申し上げることは多分共通していると思うのですが、先端研究には大規模な経費が必要なものがありまして、その額というものが昔よりも増えている。先ほど1つのテーマの研究の人数も増えているという話がありましたが、どんどん必要なリソースが増えていると思います。また、昔に比べると評価、審査、レビュー、そういうものが大きくなっていまして、審査を受ける方も非常に負担が大きくはなっていますし、審査をする方も負担が増えている。その結果、経費配分に反映されている、そういう状況だと思っています。
一方、私たち大学にいる者にとっては、研究的経費が減っていて競争的経費の割合が増えている。また、パーマネントの定員が減って任期付きのポジションが増えている。そういうことからいうと、どんどん状況としては全ての研究者がかなり等しく経費を受け取って機会も頂いてというようなことからはだんだん離れているような状況にあるのではないかと私は感じているわけです。
一方で、そういう競争に基づいて経費配分をするということは、非常に萌芽的な、まだ芽の出ていないような研究とか結果が出るまでに長い時間の掛かる研究等を潰しかねない。そういう議論も一方であるわけです。
すみません、長くなりましたが、伺いたかったのは、今ご説明いただいたいろいろなお考えというのが、昔の日本ではそうであったような研究者に等しくそういうお金とかいろんな研究の機会とか、そういうものを与えようというものというよりは、むしろ研究者は研究を主にやる者、若しくは教育を主にやる者、そういう者をもうある程度何かカテゴライズした上でこういうことをやるということがベースになっているのか、すみません、質問がきちんと伝わっているかちょっと不安なのですが、そういうことを少し教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【生田課長】 なかなか難しいお問い合わせを頂いたと認識しておりまして、少なくとも我々としてすべからず全研究者に対して平等にということではなくて、資料の端々に意欲あるとか能力が高いとかというふうに少し書かせていただいたというのは、もちろんそういう人たちが今、逆にいうと最大限生産性が上がるような研究環境下で研究できていないのではないかという問題意識から始まっております。やはり我々、国際卓越とかJ-PEAKSとかということで、大学の組織全体を念頭に置いて、それは多分一部の大学に限定して御支援をしてきたで、基盤的経費と競争的研究費の科研費等々のデュアルサポートで全国の、意欲のある研究者の研究活動を支えてきた。この両軸でこれまで来たというふうに認識しております。
ただ、先ほど来申し上げましたように研究活動自体が大型化していたりDX化していく中で、組織支援が受けられていない大学にそれなりにやはり能力・意欲のある研究者が存在しているのではないかと。逆にいうとそれが今の日本の特徴ではないかというふうな問題意識を持っておりまして、ではそういう研究者の競争的研究費のレバレッジを上げていく仕組みが必要なのではないかと。そういう観点から申し上げますと、我が国のこれも特徴的な大学共同利用機関だったり共同利用・共同研究拠点だったり、そういうハブ機関をうまく活用することで、というのはそれは元々全国に開かれた研究のハブだったはずなので、その機関の機能を強化することによって、ある意味全国の意欲ある、能力の高い研究者、それは若手にもちろん限りませんので、そういう研究者の研究活動を最大化させるというところにつながるのではないかというような考え方に基づいているというところでございます。すみません、直接的な回答になっているかどうか分からないのですが、以上でございます。
【松岡委員】 どうもありがとうございます。こういう言葉を使ってよいのかどうか分からないのですが、やはり結構選ばれし研究者に非常に支援をするというような、少しそういう色合いを持った内容というふうに理解しました。どうしても大学とかでも、やらなければいけない教育又は大学の運営等の仕事がありますので、ある研究者がそういうことをやらないというような状況になると、絶対それを引き受けなければいけない他の人が出てくるはずなので、その辺が気になって質問させていただきました。どうもありがとうございます。
【観山部会長】 非常に重要な議論だと思います。それでは、長谷部委員、吉田委員、中野委員の順番でお願いします。まず長谷部委員。
【長谷部委員】 ご説明ありがとうございました。素晴らしいアジェンダで、こういう方向性というのは非常に重要だと思います。ただ、僕は科学者なもので気になった点がいくつかあって、アジェンダを説明するために資料を使うのはよいのですが、客観的な分析をやはりもう少し省内でした方がよいのではないのかなと思って、例えば8ページです。これでコンチネント型とスモールアイランド型の説明をされて、日本はコンチネント型が増えていて、全体がそうではなくてスモールアイランドという話だったのですが、この変化というのはすごく微妙で、経年変化を見るとか、あるいはこれが誤差範囲でないかというのを、僕らの感覚だと見ないで先ほどのようなことをおっしゃるのはちょっと危ないかなと思うようなところが他にもありまして、例えば10ページです。地方大学で優秀な方がいらっしゃって、そういう方が伸びるような環境をつくるということが、非常によいポリシーだと思います。ただ、このデータで例えば個人支援の科研費ですね。これはAからCの採択率が1、2、3、4で似ているというのですが、例えばこれをAとSだけに絞ると違う結果が出てくると思うのです。
後は、例えば11ページです。これは結構顕著なのですが、ドイツでは1・2群がすごく多くて、日本では3・4群が多いというお話をされたのですが、これは1・2群の母数が全然違っていて、ドイツは1群が2で2群が34なのです。日本は1群が4で2群が14なので、これを比較するならば比で比較しないと絶対数では比較してはいけないものなので、こういう基本的なデータの取扱いを省内でこういう統計解析とかをちゃんとできる方と相談しつつされるとよいかなと思いました。そうしないと、非常によいポリシーなのですが、データの使い方がおかしいと変に勘ぐってしまうことも出てきてしまいますので、気を付けられた方がよいと思います。以上です。
【観山部会長】 ありがとうございます。それでは、吉田委員、お願いします。
【吉田委員】 ありがとうございます。私からは共同利用・共同研究体制の機能強化に向けた意見の概要について2点と、それからイノベーション基本計画について1点コメントさせていただきます。まず31ページのところになりますが、1点目はハブ機関としての体制の充実ということで、これは共同利用機関の視点でございますが、地域の大学にとってもこれは極めて重要な視点でございます。例えば私たちの好事例をお話しさせていただきますと、我々は名古屋大学と東海国立大学機構は現在、自然科学研究機構と複数の機関と連携しながらヒューマングライコームプロジェクトというものをフロンティア事業として展開しておりまして、大変大きな予算も措置されておりまして、各機関と多くの優秀な研究者が連携して研究を推進していると。こういう大学と共同利用機関の連携事業としても非常に有り難く、また、よい例となっているということをまずコメントさせていただきます。
そして重要なのは、この双方が研究力を高めて互いの発展をエンカレッジしていける、すなわちお互いコンペティティブにならないような仕組み、こういうものをぜひ構築して、より一層地方大学との連携、こういうようなことが進んでいくということを非常に望んでおりますので、これがまず第1点目のコメントでございます。
もう1点は、左下の研究人材の育成・輩出というところの3つ目のチェックになりますが、ここの総研大学院大学等との協働による博士課程後期等の学生の早期からの戦略的育成。これは総研大学さんにとりましては非常に重要な案件だというふうに私どもも認識しております。
一方で、学生確保のためには他大学からのリクルートということが強化されるというふうに考えられますので、これもやはりコンペティティブになる可能性がありますので、研究人材の育成においては優秀な学生を確保するという方策も必要なのですが、お互いにメリットがあるような他大学との連携、これをやはり構築しようとする必要があるのではないかなと。例えば共同教育連携のようなものも取り入れて構築するというのも非常によいのではないかなというふうに思っております。
それから3点目で、41ページにお示しいただきましたイノベーション基本計画に向けたデータを見せていただきますと、これも先ほどと関連するのですが、国際卓越あるいはJ-PEAKS以外の大学でも、地域の大学でも優秀な研究者がたくさんいるというのは非常にデータを見ていただいて改めてなるほどなと思ったのですが、これは今国際卓越、J-PEAKSというのがやはり研究環境もよくなると地方での優秀な研究者というのがともするとそちらに集約されてしまう可能性も危惧されますので、ぜひそういうことがないよう、地方の研究者個人の支援もですが、そういう人が存在する大学、あるいは施設、そういうことへの支援もぜひ忘れずにお願いしたいというふうに思います。先ほどのレクチャーの中ではそういうことをやるのだということをお示ししていただいておりますので安心はしておりますが、ぜひ続けてお願いしたいというふうに思います。以上になります。
【観山部会長】 重要な指摘どうもありがとうございました。中野委員、お願いします。
【中野委員】 ありがとうございます。生田課長からも少し言及がありましたが、デュアルサポートが現在崩れつつあることは非常に大きな影響を与えていると思います。もちろん、科研費の質的・量的強化に代表される競争的資金の拡充も必要ですが、基盤的な経費が十分でなければ、新しいことに挑戦しにくい状況が生まれているのではないかと思います。
一方で、国際卓越研究大学やJ-PEAKSというような新たな取組によって、特定の大学では基盤的な資金状況が改善される可能性があります。その際、対象大学だけが強くなるだけではなく、基盤的経費と競争的経費のバランスが整ったときにどのような効果が現れるのかを検証し、それを他の大学にも横展開していただきたいと強く願います。
それから、基盤的経費の強化方法についてですが、各大学に任せるだけではなく、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点を活用する方法も考えられるのではないでしょうか。ただ単に、これらの拠点が新しい研究を希望する申請を受け付けて実施するだけではなく、その研究の実施に至るまでのサポートを提供できる中核的なハブを整備することも、非常に効果的ではないかというふうに思います。
また、話は変わりますが、今回もイノベーション、すなわち新しい技術の社会実装や、社会への導出が強調されました。しかし、日本は諸外国、特にアメリカと比べると、ベンチャーキャピタルの分野が非常に弱いと思います。そのため、環境整備が不十分なまま、全てを研究者に任せて社会実装を進めようとしても、負担が大きく、労力をかけても実現が難しい状況があるのではないでしょうか。このような環境の改善については、文科省だけでは対応が難しいかもしれませんが、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
最後に中規模施設や中規模設備についてですが、状況は次第に待ったなしになってきていると感じます。老朽化・陳腐化が進行し、それに伴い競争力が低下しているという分析もあります。さらに年数が経過するほど、更新に必要な人材の確保が難しくなり、加えて施設の老朽化が進むほど更新にかかる手間や費用も増大します。本当に待ったなしの状況だと強く感じています。以上です。
【観山部会長】 ありがとうございます。またまとめて文科省からコメントがあれば受けたいと思います。永田委員、お願いします。
【永田委員】 全体として大変良くできているという印象を持っているのですが、海外と比べたときに、人的なモビリティが極めて小さい、あるいは海外の研究者・学生に比べてモビリティに対する意識がすごく薄いというのが日本の特徴かなと思っています。実際に研究者のモビリティがどの程度研究力の強化と結び付くかという具体的な事例があるかどうか分からないのですが、今日出されたアジェンダの中には、人的モビリティを促進するような仕組みがなかなか見えてこないのですが、それを明示することが必要なのではないかと思っています。大分昔、我々がまだ准教授ぐらいの時代には、例えば共同利用機関が流動部門を持っていて、大学との間の人的なモビリティを確保していた。そこから結構良い人材がまた大学に戻ったという事例がかなりありました。それから学生に関しても、海外の学生は非常にモビリティを大事にしていて、一つの研究機関だけではなくて複数の研究機関を跨いで学位を取ったりする。これが最終的に研究の多様性、あるいは研究者人材の育成にかなり資する部分があると思っていて、これを何か顕わに明示できないかなという感覚を持っています。
それで、先ほど吉田先生がおっしゃったのですが、例えば国内で共同学位プログラムをやるとすると、今は共同専攻を作って大学院課程をきちんと置かなければいけないのですが、我々は例えばヨーロッパの大学とやるときは、cotutelle方式によって協定・契約書で学生を派遣して、共同で指導し、共同で審査して、ディプロマは2つ出すというのをやっています。これには欧米の学生は必ず乗ってきます。これと同じようなことが国内でできたら、人のモビリティと研究の流動化、あるいはその共有化が必ず起こると思っていて、何かそういうものがアジェンダに入ってくると良いなと思っているのですが。これは感想です。
【観山部会長】 どうもありがとうございました。関沢さん、どうぞ。
【関沢委員】 資料の31ページをお願いしたいと思います。私は大学共同利用機関に所属している者なので、その共同利用・共同研究体制の機能強化に向けた意見の概要のところで、この4つの事項いずれも本当にそうあるべきだと思うのですが、いずれにしてもやはり基盤的経費が付かないことにはなかなかやっていくのが厳しいということを思っております。
もう一つは、この新しい学際領域の開拓のところなのですが、大学共同利用機関だけでなくて国公立・私立の共同利用・共同研究拠点を共有して、どういうやり方が有効なのか、それを検討することも必要なのかなと思っております。以上です。
【観山部会長】 ありがとうございました。事務局の方から、全てについてはなかなか難しいと思いますが、各先生方の御意見に対してコメントできるところはありますでしょうか?
【生田課長】 ありがとうございました。まず資料3-1の方の7期の件でございますが、正に本当に吉田先生、中野先生、永田先生、全体のその研究大学群の在り方、そこにそれプラス個人支援をどうかぶせて日本全体の研究力を上げていくかという観点の御指摘だと認識しております。正に国際卓越、J-PEAKSと来て、それ以外どうするのだという問いを今我々文科省としても突き付けられているというふうに認識しておりまして、その中でそのデュアルサポートというのはなかなか厳しい状況下にあると。ではここで正に出番が大学共同利用機関とか共同利用・共同研究拠点、この機能をうまく使うことで日本の全体の研究者の研究活動を活性化していく、そういったことがあるのではないかと。
そうなってくると今度は、大学共同利用機関とかは元々研究者のモビリティ、先ほど永田先生からもありましたが、モビリティは日本全体としては少ないものの、大学共同利用機関というのは元々研究者が出たり入ったりするのがなりわいである組織であるというふうにも認識しておりますので、そういったところをうまく使いながら、人が動くことがプラスになるみたいな、そういった形の研究システムというものを新たに今回7期に向けて構築していくことが必要なのではないかというふうに考えているところでございます。
あと、最初に長谷部先生から頂戴したデータの使い方、見せ方のところの御指摘に関しては、我々も政策についてNISTEPと話をしながら、誤解のないような形でしっかりと発信をしたいというふうに思ってございます。全体のコメントではございませんが、以上でございます。
【観山部会長】 ありがとうございました。いろいろこの議論を続けたいところなのですが、他の議題もありますので一応ここまでにして、先ほどの学術分科会の方の意見表明として、もしも更にありましたら事務局の方にメールで頂いて私どもで相談させていただきたいと思いますが、適宜修正して分科会に報告したいと思っております。
【観山部会長】 それでは、議題2「各作業部会の審議状況について」に移りたいと思います。資料2の2枚目にあるとおり、本部会の下には3つの作業部会がありますが、1年前に一度活動状況の報告を頂いておりますが、その後の状況について共同利用・共同研究拠点等に関する作業部会、学習研究の大型プロジェクトに関する作業部会の主査から御報告をお願いしたいと思います。すみません、時間が余りなくなってきましたので簡潔にまとめて報告願いたいと思います。まず井上委員からですかね。
【井上委員】 では、共同利用・共同研究拠点等に関する作業部会の審議状況の概要について報告します。まず75ページを御覧ください。今期におきましては、国立大学の第4期中期目標期間における既存の認定拠点の中間評価及び令和7年度からの新規認定に関する審議に関して、前期の期末評価等を踏まえた改善すべき事項等について審議を行った上で、実際の中間評価及び新規認定審議を実施するため、作業部会下の専門委員会を含めて計10回の開催を行いました。
76・77ページをご覧ください。第1回から第5回までの作業部会におきましては、前期の期末評価等を踏まえまして資料に記載されている改善を行うことについて審議決定をいたしました。これらの改善を行うことにより評価を受ける側、実施する側の作業負担の軽減を図ることとしました。また、評価意見作成者に次世代を担う研究者の推薦を拠点側に求めるとした点も改善点であったと認識しています。
では78ページをご覧ください。こうした作業点を踏まえまして、作業部会下の専門委員会を含め、第6回から第8回までの作業部会において国立大学の第4期中期目標期間における既存の認定拠点の中間評価及び令和7年度からの新規認定を実施いたしました。ご覧いただいている資料は国立大学における中間評価結果についてでございます。第3期から継続して認定を受けた拠点につきましては、前期の期末評価結果のフォローアップを実施しております。なお、令和7年度からの国際拠点の認定を希望する拠点については、今回の中間評価の結果も踏まえつつ国際拠点の認定候補の選定に向けた審議を進めてまいりました。評価はS~Cの5区分による相対評価としており、例えば上位2割程度のS評価となった拠点は16拠点でございます。一方でB評価以下となった拠点がなかった点を参考で記載しています。第3期の中間評価計画との違いとして挙げられます。
79ページをご覧ください。次に国立大学における新規拠点認定の結果についてですが、共同利用・共同研究拠点には9拠点、国際共同利用・共同研究拠点には10拠点からの申請がありました。審議の結果、京都大学基礎物理学研究所と名古屋大学宇宙・地球環境研究所の2拠点が、令和7年度からの国際共同利用・共同研究拠点として認定されております。具体的な認定施設の概要はホームページの下部の部分をご覧ください。
続きまして81・82ページをご覧ください。これらの審議を踏まえ、国立大学における共同利用・共同研究拠点等に関し第4期中期目標期間における期末評価に向けて、委員及び拠点の評価負担の更なる軽減及び一層の評価の充実・改善を図る観点で、委員及び評価意見書作成者から資料記載のとおりの御意見を伺っております。国際共同利用・共同研究拠点の認定方針や評価基準調書等に関することなどに関して様々な御意見を頂いておりますので、次期はこれらも踏まえて期末評価に向けた検討を進めていく予定です。
83ページをご覧ください。これらの国立大学の第4期中期目標期間における既存の認定拠点の中間評価及び令和7年度からの新規認定に関する審議と並行し、公私立大学の共同利用・共同研究拠点に関しても中間評価及び新規認定を実施しております。公私立大学の場合は認定年度が拠点によって異なっておりますが、各拠点の認定3年目終了後に中間評価を実施しています。令和6年度におきましては、令和3年度に認定を受けた4拠点を対象として専門委員会における書面評価及びヒアリング評価を経て、S・A・B・Cの4段階の絶対評価により、資料のとおり評価結果をまとめています。
また、資料後段の令和7年度からの新規認定に関しましては、今回3施設からの申請があり、審査を行いましたが、新規認定はなしという結果になりました。私からの説明は以上です。事務局から適宜補足の説明等があればお願いいたします。
【観山部会長】 ありがとうございました。続いて、学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会について、主査の渡辺委員よりご説明をお願いいたします。
【渡辺委員】 ありがとうございます。学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会の審議状況について報告いたします。次のページの85ページ目を出してください。本日は令和6年度の審議実績について報告いたします。太字で書いた部分が今回説明する部分になります。
まず1番の事業移行評価及び年次計画の策定についてですが、令和6年度に10年間の計画期間が終了するスーパーカミオカンデによるニュートリノ研究の推進について、事業移行評価として現行計画に対する評価と後継計画への移行に当たっての評価を行い、令和7年度から後継計画に移行することを決定し、後継計画の年次計画を策定いたしました。
2番目の進捗評価について、大型先端検出器による核子崩壊・ニュートリノ振動実験、ハイパーカミオカンデ計画の推進ですが、これについて年次計画に基づき進捗評価を実施いたしました。※印の注記のとおり水槽設置工期が延びた影響による全体計画の遅れを踏まえまして、年次計画を一部変更しております。
3番の期末評価について、今年度はございません。
それから4番の年次計画の変更についてですが、大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)の計画については、昨年1月に発生した能登半島地震により装置がずれるという被害が生じておりました。被害の状況や事業の進捗を確認して、復旧に伴う計画の遅れを踏まえて、年次計画を1年延長して令和7年度に改めて評価を実施する予定となりました。
一番下にあります学術研究基盤事業の進捗については、南極地域観測事業について、実は明日作業部会を実施する予定で、そこで進捗確認をいたします。
次のページに行っていただいて、既に報告済みのロードマップ2023の概要になりますので、これは割愛させていただきます。私からの説明は以上でございます。
【観山部会長】 どうもありがとうございました。これに関して御質問や御意見がありましたら、どうぞ挙手いただければと思います。どうぞ。
【森委員】 ご説明どうもありがとうございます。内容に関してはきちんと審査をされていたことを伺ったのですが、今国際的な共同利用・共同研究活動が重要になっている中で、文科省としてはどういうバランスで国際共同利用・共同研究拠点と共同利用・共同研究拠点というのは今後考えていくのかということを事務局の方に伺いたいのですが、よろしいでしょうか。
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】 ご質問ありがとうございます。まず共同利用・共同研究拠点、国際共同利用・共同研究拠点の認定に関しましては定められている基準に沿っているかどうかという判断で認定をしております。
最近の傾向といたしましては、、各拠点で国際的な活動が増えてまいりましたので、それに伴って国際共同利用・共同研究拠点の申請数が増えてきている状況です。したがって今後は、国際共同利用・共同研究拠点の認定数も増えてくるのではないかと事務局としては考えてございます。以上でございます。
【森委員】 ありがとうございました。文科省様としてはプロモートするということで、基準に合ったものを採択するということで伺いました。ありがとうございます。
【観山部会長】 他にいかがでしょうか? どうもありがとうございました。それでは、続きまして議題3「令和6年度補正予算及び令和7年度予算案について」に移りたいと思います。事務局より御報告をお願いします。時間が押しておりますので、手短にお願いいたします。
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】 それでは、本部会におきましてご議論いただいている内容に関連する令和7年度補正予算及び令和7年度予算案につきまして、資料3に基づき報告をさせていただきます。まず、昨年12月17日に成立をいたしました令和6年度補正予算について御報告をいたします。89ページ(3ページ)をご覧ください。学術研究の大型プロジェクトの推進に係る最先端の研究設備に対する支援を行う、及び大学等における最先端研究設備等の整備推進につきましては、90億円が措置されております。世界の学術研究を先導し、広く国内外の研究者の参画を可能とする先端的な研究に必要な研究設備等につきまして、国際競争の状況を踏まえ整備を行うこととしており、具体的には学術研究の大型プロジェクトの年次計画に基づき整備を行うこととしておりまして、ハイパーカミオカンデ計画、大型光学赤外線望遠鏡すばる等、国際競争・協力下にある取組の年次計画の早期実行や老朽化対策、高度化等に係る支援を行ってまいります。
次の90ページをご覧ください。本部会におきましてご議論いただきました中規模研究設備の整備等に関する論点整理を踏まえた最先端の中規模研究設備につきましては、共同利用・共同研究システム形成事業の下、大学の枠を超えた研究基盤設備強化充実プログラムといたしまして、10億円の設備整備費と1500万円の運営費を2件程度支援する内容で概算要求をしておりましたが、5億円を上限として新規技術開発・設備開発要素が含まれる最先端の中規模研究設備の整備費を2件程度、国公私立大学の共同利用・共同研究拠点に認定された研究施設に対し支援をする内容で措置されてございます。本件につきましては現在公募に向けて選定要件等につきまして、本部会の委員を中心といたしました有識者会議を立ち上げ議論を行っているところでございますので、年度内には公募を実施したいと考えてございます。
91ページをご覧ください。一方、同論点整理におきます汎用性の高い先端設備につきましては、国立大学等における教育研究基盤強化等の中で、組織の枠を超えた効率的・効果的な活用に資する設備であるヘリウム液化供給システムにつきまして措置をされてございます。その他、本事項につきましては、次世代を担う人材育成やイノベーション創出の中核としての役割を果たすため、各国立大学等より要望のある優先度の高い教育研究基盤設備等の環境整備に対する支援が行われてございます。
92ページをご覧ください。令和6年度能登半島地震等により被災をいたしました国立大学等の教育研究設備の復旧に必要な経費につきましては、国立大学等における設備災害復旧において支援をしており、39億円を措置してございます。令和6年度能登半島地震によって障害が発生いたしました大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)につきましては、機器類の復旧作業は完了し、レーザー干渉計としての動作を再開しており、様々な調整と感度向上作業を経た上で、今年の春頃には米国のLIGO、ヨーロッパのVirgoとの国際共同観測運転への参加をする予定と伺っております。
次に、昨年12月27日に閣議決定をいたしました令和7年度政府予算案について御報告をいたします。こちらは94ページをご覧ください。国立大学運営費交付金につきましては、対前年度予算額同額となる1兆784億円を計上してございます。
資料の左側上段、教育研究組織の改革に対する支援につきましては、新規分といたしまして98億円を計上しており、教育研究力強化等に向けた学部等の改組をはじめとした教育研究組織改革を推進してございます。これらの教育研究組織の改革に対する支援における研究組織の支援事例につきましては、次のページの95ページ及び96ページに示してございますので後ほど御確認を頂ければ幸いですが、今後はより全学的かつ大規模な組織の体制整備・体制強化を中心に支援を進めてまいります。
94ページにお戻りいただきまして資料左側中段、我が国全体の研究力強化の柱のうち共同利用・共同研究拠点の強化につきましては、対前年度2億円増の58億円を計上してございます。国立大学の共同利用・共同研究拠点に対しましては、本年度実施いたしました第4期中期目標期間の中間評価や新規認定の結果を踏まえた認定経費を計上してございます。世界の学術フロンティアを先導する大規模プロジェクトの推進につきましては、学術研究の大型プロジェクトの年次計画に基づきまして必要な経費を補助金と合わせて340億円を計上してございます。これらの内容につきましては資料の97ページ・98ページに示してございますので、そちらも後ほどご確認ください。
99ページをご覧ください。我が国の研究力の底上げを図るためには、本部会においてご議論いただいてございます共同利用・共同研究体制の強化・充実を図ることが重要であり、大学の枠を超えた連携の強化・充実により、全国的な学術研究基盤の形成を促進するため、令和5年度より共同利用・共同研究システム形成事業を立ち上げております。そのうち学際領域展開ハブ形成プログラムにつきましては、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点等がハブとなって異分野の研究を行う大学の研究所や研究機関と連携をした学際共同研究、組織・分野を超えた研究ネットワークの構築・強化・拡大を推進するものであり、これまでも委員の先生方から本プログラムの重要性等につきまして度々御意見を頂いておりました。
令和7年度の当初予算案におきましては、継続事業の実施分と1件の新規採択を行うための経費といたしまして、対前年度5000万円増の5.5億円を計上してございます。なお、来年度の公募につきましては、こちらの資料の100ページに記載してございますスケジュールを予定しており、現在事前相談を受け付けている状況です。私からの報告は以上です。
【観山部会長】 ありがとうございました。ただ今の説明に関しまして、御質問がありましたらどうぞ挙手をお願いいたします。勝委員、お願いします。
【勝委員】 ご説明ありがとうございました。1点だけなのですが、中規模研究設備に関してなのですが、この部会でもかなり議論されたと思うのですけれども、補正予算としては5億円、研究拠点で2件ということであると思うのですが、その次のページにはヘリウムの装置とかもありますが、実際に今そのニーズとしてどれくらいあって、今回の措置でどの程度カバーされたのかというのをもし数値があれば教えていただければと思います。以上です。
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】 研究設備に関しましてはこれから公募を行う状況でございまして、おそらくはその共同利用・共同研究拠点に認定をされている各国公私立大学の多くの皆さんについては要望をお持ちだということはこちらとしては認識しているのですが、具体的にどこの拠点がどの設備について要望をお持ちであるかというのは事務局においては把握しておりません。
【勝委員】 もちろん。前提としてどれくらいの人数があって、今回の措置でどれくらいがカバーされるのかということが、もし大体の数字で分かればという質問です。
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】 そちらの具体的な件数等につきましてはまだ把握はしていないという状況でございます。
【勝委員】 件数ではなくて全体的な金額ベースでどの程度なのかなということです。
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】 というのも拠点側の皆さんのどの設備をどれくらいの金額でという、その全体の規模感につきましてもこれから御要望をお伺いしてというところになります。
【勝委員】 分かりました。
【観山部会長】 勝委員、もう大雑把にいうと、特に中野先生なども具体的にご説明できると思いますが、老朽化という面では今非常にたくさんの設備や施設が老朽化の状況になっていて、要望だけ聞けばもう非常に大きな額になると思います。今回頑張っていただいて補正予算にも計上していただきましたが、まだまだこの程度では全てを満足できるような状況ではないかなと思いますが、地道に要求して獲得していかなければいけないと思います。特に老朽化というのは国の予算の中では非常に厳しい面がありますので。中野委員、どうぞ。
【中野委員】 今回の公募には、78拠点のほとんどが申請するのではないかと思います。今回、5億円のキャップが設定されているため、5億円×78というのが一見必要な額のように見えます。しかし、上限を引き上げればその上限に貼り付く申請がさらに増えること予想されるため、実際に必要な額はさらに大きくなるかと思います。そういう意味では非常に厳しい状況ですが、だからといって拠点側が申請を控えるのではなく、限られた中でも積極的に申請し、必要性をアピールしていくことが重要だと考えています。以上です。
【観山部会長】 ありがとうございました。他にいかがでしょうか? どうもありがとうございました。最後は随分急がしてしまいまして申し訳ありませんでした。本日の議題はこれで全て終了いたしました。今回は第12期最後の研究環境基盤部会となりますので、塩見研究振興局長から一言ご挨拶いただければと思います。塩見局長、よろしくお願いいたします。
【塩見研究振興局長】 研究振興局長の塩見でございます。委員の皆様方におかれましては、2年間にわたり大変貴重な御審議を頂きまして誠にありがとうございました。この研究環境基盤部会におきましては、中規模研究設備の整備、また、大学共同利用機関等の機能強化について等を中心に御意見を賜ったというところでございます。また、各作業部会におかれましては、先ほどもご説明ありましたとおり、共同利用・共同研究拠点に係る評価、また、新規の認定に係る審議、学術研究の大型プロジェクトの推進に係る基本構想でありますロードマップ2023の策定、また、各プロジェクトの進捗管理等を行っていただきました。皆様にご審議いただいた内容につきましては、今ご説明申し上げました補正予算や令和7年度の予算案に反映させていただいているところではございますが、まだまだこれから大きな課題があると認識しておりますので、引き続き我々も努力したいと思っております。皆様には本当にお忙しい中、多大な御尽力を頂きましたことに改めて感謝を申し上げます。
先ほど来のお話に出ておりますように、我が国の研究力の向上について、先ほど研究振興局内を中心とした検討の状況を生田課長からご説明申し上げたとおり、今後の第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けて議論が本格化をしていく中で、研究力強化に向けて様々検討していかなければいけない事柄があります。その中でも特に本部会でご議論いただきました全国的な研究基盤の整備や、大学共同利用機関を中心とした共同利用・共同研究体制の機能強化ということは極めて重要な役割を担う重要な手になるのではないかと認識しております。我々としましてもこうしたことを中心に引き続き皆様からしっかり御意見を頂き、また真摯に受け止めて、より実効性のある政策に生かせるように努力していきたいと考えております。皆様、本当にこの2年間ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
【観山部会長】 どうもありがとうございました。最後に私の方からも一言ご挨拶させていただきたいと思います。私も多分卒業になると思いますので、3つの点をお話しさせていただきたいと思います。
まず、研究力強化という面で、こういう大学共同利用機関とか共同利用・共同研究の機関というのは非常に重要なファンクションだと思っております。日本独特の形で戦後始まったわけでございますが、この役割と効果というのは未だに失われていないと思います。やはり先ほどのデータも見ても、中心大学にはもちろんたくさんの優秀な研究者がおられるわけですが、地方の国立や公私立にもたくさんの優秀な研究者が分散しております。そういう方々をうまく効率的に結び付けるというのは、こういう共同利用・共同研究拠点とか大学共同利用機関の仕組みではないかと思います。
一方で、研究力というのが下がってはいないのだけれども非常にプラトーになっているという状況を、予算と連携で見ていただければ、予算も余り増えていないわけですよね。だからやはり諸外国がどれだけ研究費に対してコントリビュートしているかというところも見て、今までと同じ予算で効率よく上げるというのは研究の面では難しいという点をやはりよく考えていただきまして財政当局に要望していただければと思います。
それから、今期は中規模設備について随分議論してきました。大規模プロジェクトに関しても非常に重要なのですが、中規模設備に関しては法人化したということに伴って少し文科省からのサポートが大学に任せるという状況になっておりました。この部分は来期についてもしっかりと検討していただいて、その調査をして、必要な部分を、老朽化もそうですが、中規模の区画の最先端機器に関して、拠点には配分するということが非常に重要だと思います。この点も研究力を上げるという面では重要な項目だと思います。
それから、この共同利用・共同研究拠点とか大学共同利用機関というのは日本で考えられたうまいシステムなのですが、何度も言いますがチャレンジをしていただいて、新しい分野に乗り出していくというところが必要ではないかと思います。ただ、そういう経費を作っていただきまして、10件今走っているわけでございますが、やはり自前の今までの経費ではなかなか新しいところにチャレンジするというのが難しいので、研究費の話ばかりになりますが、ぜひ今後ともよろしく文部科学省にはご努力いただければと思っております。以上です。
それでは、本日の会議はこれで終了したいと思います。委員の皆様、第12期、2年間にわたって本当にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いしたいということで終了としたいと思います。ありがとうございました。
【一同】 ありがとうございました。
―― 了 ――
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