研究環境基盤部会(第114回) 議事録

1.日時

令和5年6月15日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 全国的な観点からの学術研究基盤の整備について
  2. その他

4.出席者

委員

観山正見部会長、勝悦子委員、原田尚美委員、井上邦雄委員、関沢まゆみ委員、治部れんげ委員、永田敬委員、中野貴志委員、長谷部光泰委員、渡辺美代子委員、森初果委員

文部科学省

森研究振興局長、奥野大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、黒沼大学研究基盤整備課長、柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官、山本大学研究基盤整備課長補佐、その他関係者

5.議事録

【観山部会長】  それでは、時間になりましたので、ただいまより科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会(第114回)を開催いたします。委員の先生方におかれましては、御多忙の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の会議は、文部科学省のYoutubeチャンネルでの配信という形で、公開での開催となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 まず事務局より、本日の委員の出欠、配付資料の確認をお願いいたします。

【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  事務局です。本日は、吉田委員、松岡委員が御欠席との連絡を承っております。また、勝委員が10時50分頃に、井野瀬委員が11時頃に途中退席予定となっておりますので、よろしくお願いします。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。本日の資料は、議事次第に記載のありますとおり、資料1、資料2、また、参考資料は1から4まであります。事前に各委員にお送りしておりますが、不備等ありましたら、随時チャット機能等で事務局までお知らせください。
 また、本日はウェブ会議で開催することとしております。委員の皆様におかれましては、御発言に当たっては、Zoomの挙手ボタンを押していただき、部会長からの指名の後、御発言をお願いいたします。御発言の都度、まずお名前をお願いいたします。御発言は、聞き取りやすいようゆっくりとお願いいたします。発言されないときは、マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。資料を参照される際は、資料番号、ページ番号など該当箇所をお示しいただくよう御協力のほどよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上になります。

【観山部会長】  それでは、本日の議事に移りたいと思います。本日は、中規模研究設備の整備について、前回の関係団体からのヒアリングも踏まえた議論を行いたいと考えております。今回の議論を踏まえて、次回の会議において中間的な意見の整理を行いたいと思いますので、どうぞよろしく活発な意見交換をお願いいたします。
 事務局において、前回・前々回の主な意見をまとめた資料と、その参考資料を用意してもらっておりますので、まずは説明をお願いいたします。

【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  それでは、資料1を御覧ください。画面でも共有させていただきます。資料1につきましては、第112回と第113回の研究環境基盤部会の中規模研究設備の整備に関する主な御意見について、事務局において概要をまとめたものとなっております。資料につきましては、中規模研究設備の整備に関する現状と課題、それを踏まえた今後の検討の方向性、そのほか設備整備に関連する課題の3つの構成で整理させていただいております。
 まず、中規模研究設備の整備に関する現状と課題について、2ページを御覧ください。(1)中規模研究設備の整備の重要性につきましては、大学間の連携や共同利用といった横軸の機能により発展してきている学術研究の中での中規模研究設備の重要性、また、中規模研究設備には最先端の設備と汎用性の高い設備があり、それぞれの研究者側の共同利用の高いニーズがあること、また、世界最先端の研究成果を生み出す源泉としての特色ある中規模研究設備の維持・更新の必要性などに関する御意見がございました。
 次に、(2)中規模研究設備の整備に関する制度では、国立大学の基盤研究設備、大規模プロジェクトにおける最先端設備の整備に関わる予算制度、国立大学における研究設備・機器の共用推進に向けたガイドラインを踏まえた設備マスタープラン策定といった国の取組を記載しております。
 次の(3)大学等における設備整備の現状と課題では、大学単位の予算要求の仕組み上、大学の枠を超えた機能に対する要求や予算の確保が難しくなっている。学内の設備が優先され、中規模研究設備の導入・更新の計画を立てることができていない。設備マスタープランに位置づけて要求を行った場合でも、採択は限定的であり、計画的に整備を行うことが困難な状況である。競争的資金による整備では、一定規模以上の設備の導入、設備の維持・更新に係る経費の確保に課題がある。最先端の設備の高度化や光熱費の高騰等により、維持・更新に係る経費が高額化している。企業と連携した設備整備も進んでいるが、一部の範囲に限られている。このような状況により、中規模研究設備の老朽化・陳腐化が進み、光熱費の高騰を原因とする運用休止や制限などの事態が生じており、我が国の研究力の低下が危惧されるといった、大学等の設備整備に関する厳しい状況についての御意見が多数ございました。
 続いて6ページからは、これまでの現状と課題を踏まえた今後の検討の方向性についての御意見になります。(1)整備方針に関するものとして、研究設備については、大学の枠内で整備可能なものと、大学の枠を超えた整備が必要なものがあるため、両者を整理し、国として整備方針を検討すべきではないか。国際的な動向や国内の整備状況など、今後の整備方針の策定に向けた調査が必要ではないか。大規模プロジェクトのロードマップのように、全国的な学術研究基盤整備の視点が必要な中規模研究設備についても、国として戦略的に整備を推進すべきではないか。各大学で策定する設備整備計画において、大学の枠を超えた中規模研究設備整備が重要ということをエンドースする仕組みが必要ではないか。個々の大学での対応では限界があり、大学の枠を超えたネットワークを構築すること。特に中規模研究設備については、大学共同利用機関と大学との連携を強化することで、設備運用における技術支援やコンサルティングなどの機能をより有効に発揮できるのではないかとの御意見がございました。
 また、(2)整備の在り方に関するものとしまして、中規模研究設備の継続的な整備のためには、競争的資金や補正予算での対応ではなく、毎年度の計画的な予算措置が必要ではないか。各大学におけるコアファシリティや全国への共同利用・共同研究体制、技術職員等、設備の運用体制についても確認すべきではないか。研究設備が高度化していることから、設備の整備に併せて維持管理費や技術職員の配置・育成についても検討が必要ではないかといった御意見がございました。
 続きまして9ページからは、設備整備に関連する課題に関する御意見になります。中規模研究設備の整備に関連して、技術職員について多くの御意見がございました。技術職員については、設備の利用支援だけでなく、研究のコンサルティングなども担っていること。また、設備の高度化に対応した専門的な技術職員の配置が必要であること。一方、技術職員の育成、人材確保、キャリアパスの構築、スキルアップの機会の確保などに課題があることについての御指摘がございました。
 もう1点関連する課題といたしまして、機器の利用に関する課金についての御意見がございましたので、そちらについては11ページにまとめております。
 資料1についての説明は以上になります。
 関連しまして、今回新たに配付しております参考資料1、2につきましても、簡単に御紹介させていただきたいと思います。資料1の中でも中規模研究設備の整備に関する国際的な動向についての調査についての御意見がございましたけれども、関連する情報としまして、JST研究開発戦略センター様より御提供いただきました、研究機器の開発・導入に関する海外動向に関する資料を参考資料1として配付しております。
 こちらの2ページになりますが、このレポートでは、問題意識として、研究機器は多くの分野で海外メーカー製品への輸入依存度が高まっていること。そのため、購入に際して海外メーカー国での調達に比して大きな価格差が生じ、投資コストが多くなり、研究競争上不利であること。特に数千万円から数億円規模のミドルレンジの機器で影響が顕著であること。複雑化する社会課題や科学の進展に伴い、これら研究基盤には多様で高度な性能や仕組みが求められるが、そうした研究基盤環境の整備やエコシステム形成に課題があることなどが指摘されております。
 また、諸外国の機器設備の支援の仕組みの例としまして、6ページからアメリカのNSFの例が掲載されております。その中で、7ページに、中規模研究インフラに関するプログラムの課題例が挙がっております。7ページの下段の説明には、NSFは2016年に「未来に向けて投資すべき10のビックアイデア」を発表。先駆的な研究を通じてビッグアイデアの基盤構築に取り組んでおり、その一つに中規模研究インフラ支援があること。研究活動に必要となる研究インフラは多様化しているが、整備状況にはギャップが生じている。この課題に対応すべき中規模研究インフラの開発支援を行うプログラムと実装支援を行うプログラムがあるとございます。
 また、9ページには、ドイツにおける研究機器の開発・調達に関する支援プログラムが紹介されております。例えば中段にあります研究機器プログラム及び研究機器イニシアティブでは、研究機器の調達費の助成、その下のコアファシリティプログラムでは、共用拠点形成のための研究機器の維持管理費への助成を行うものとなっております。
 続きまして、参考資料2になります。こちらは前回の会議でヒアリング団体からの説明にありました事項に関する参考資料となっております。
 2ページからは、研究設備・機器の共有に関する文科省の取組として、先端研究基盤共用促進事業の先端研究設備プラットフォームプログラムと、コアファシリティ構築支援プログラムに関する概要、採択機関、大学の実施事例などを掲載しております。コアファシリティ構築支援プログラムの概要につきましては8ページにございますが、こちらは大学・研究機関全体の統括部局の機能を強化し、機関全体として研究設備・機器群を戦略的に導入・更新・共用する仕組みを構築するものでして、大学等における研究設備等の再配置・再生・廃棄等、共通管理システムの構築、技術職員等の専門スタッフの配置・育成に関する支援を行っております。
 続いて15ページからは、内閣府が産学連携に取り組む国立大学70機関に対して実施しております調査です。研究機器・設備の共用の状況と、教育研究系技術職員の基礎情報に関する調査を行っておりますので、その結果を参考に載せております。
 最後になりますけれども、科研費による共同利用設備の購入に関するお話もありましたので、そのルールについて33ページに掲載させていただいております。
 以上のほか、これまで会議で配付した関連の資料を参考資料3として、前回会議におけるヒアリング団体の資料を参考4として配付しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 事務局からの説明は以上になります。よろしくお願いします。

【観山部会長】  どうもありがとうございます。それでは、本日は、資料1に沿って、①中規模研究設備の整備に関する現状と課題、②今後の検討の方向性、③設備整備に関連する課題の3つの事項について、順番に意見交換をしていければと思います。
 まず、資料1の現状と課題というところで御意見をいただければと思います。現状としては、大規模プロジェクト、例えば望遠鏡だとか加速器だとかそういうもの、人文系のプロジェクトもありますけれども、フロンティア予算で行う事業があります。今後は文部科学省の大規模計画に関するプランをつくるために、申請を受けて、ヒアリングをして、ロードマップをつくるという方向性です。ここれは結構大きな、文系の場合にはそんなに大きくはないかもしれませんけれども、理系の場合には非常に大きなプログラムについてはそういう仕組みがあります。フロンティア予算という形で300億程度の予算が毎年確保されているという状況です。
 それ以下の中規模研究設備に関してはそういうプログラムがないわけで、基本的に大学共同利用機関、共共拠点、それから、大学の中でそれぞれが申請していって獲得するという状況です。大学共同利用機関や共共拠点と大学そのもので少し状況は異なると思いますけれども。どうでしょう。例えば中野先生とか森先生、現状どんな感じで、どんな課題があるかということについても御報告いただければと思いますが、いかがでしょうか。

【中野委員】  では、御指名ですので、中野から、現状というか……。

【観山部会長】  森先生にも後で聞きます。

【中野委員】  よろしいですか。中野ですけれども。

【観山部会長】  どうぞ。

【中野委員】  現状、かなり中規模の設備を整備するのが難しくなっていると感じております。もう既にまとめられているので繰り返しになりますけれども、やはりいろいろルールが変わって、設備の整備に関して、設備マスタープランという大学での順位づけが非常に大きなウエートを占めるようになったので、いわゆるコミュニティーの中での順位づけと大学の中での順位づけが一致しないとなかなか外に出せないという難しさがあります。もちろん大学の中での順位づけを上げるためにいろいろ工夫はしていて、1つの設備を導入する際に、学術的な面だけでなく、応用面やあるいは異分野融とか、大学は異分野融合が非常に得意ですので、そういう面を付け加えることによって設備の整備を行おうとしていますけれども、やはり以前に比べてなかなか中規模の設備を整えるというのが簡単ではなくなってきたというのを感じております。
 もう一つは、設備がついた後の維持や管理についての問題です。設備とか大型の装置、大学にとっての大型の装置がつくというのは補正予算が多いんですけれども、補正予算というのはやはりこちらで狙ったタイミングで常に措置されるわけではないので、長期的な維持・管理をあらかじめ計画した上で、その一番いいタイミングで予算が措置されるということが保障されないわけです。そのことが、せっかくついた装置に関して、維持費とか管理費がかかり過ぎるから運転の時間が短くなるとか、老朽化に対して十分な手当てが必要なときにできないので、装置が予定よりも早く陳腐化するとかそういうことが起こっていると感じています。
 以上です。

【観山部会長】  ほかの委員からも御意見いただきたいと思いますし、勝委員は途中で抜けられるということなので意見を伺いたいと思いますが、よろしければ森先生、勝先生、何かありますか。

【勝委員】  どうぞお先にお願いします。

【観山部会長】  では、森先生、いかがでしょうか。

【森委員】  ありがとうございます。今、中野委員もおっしゃったように、やはり観山先生が先ほど、300億以上は大型機器の選定というところでロードマップなどの制度を使って応募するシステムがあるとおっしゃっていました。また、小型というか個人ベースのものは、科研費、特別推進とかJSTとか。それでも10億は行かないわけで、数十億前後のものから300億ぐらいのところまでで我々、中規模のものを維持してコミュニティーの研究を維持しているというような共共拠点にとっては、そこがミッシングリンクにやっぱりなっているというのが現状です。どういうふうにこれを維持していくのか、設備の更新、それから、維持、技術職員、人の手当てということで、いつも三重に考えながらどうしたらいいものかと思っているところです。先ほど、やはり予算の出し方が大学を通してということで、縦軸の大学と横軸の共共拠点のはざまにあって今悩んでいるような状態です。
 あと、やはり国がお願い、一緒にやっていく、制度を変えていただいて、中規模施設を使った学術を支えていくという場面と、あとは、もう少し広い社会の中で、それはまた後の中にあると思うんですけれども、共同利用と共用というものをどういうふうに考えていくのかということで、共同利用のほうはやはり、利用するだけではなくて、その設備のR&D、それから、人材育成も含めてやっていくような中で、共用のほうはやはり利用するということで課金を考えていく中で、それをどういうふうに1つの装置の中で、あるいは共共拠点で維持している装置の中で考えていくのかというところを、いつもそれは整理ができていないところで、そういうところも考えながら、いろいろ多面的に財源、リソースを確保しながら進んでいかなきゃいけないのかなとは感じております。その辺りを議論を進めて、共共拠点の研究活動、日本のコミュニティー、それから、世界の中で日本が研究していく中での研究装置の維持ということを考えていかなければならないのではないかとは思っております。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございます。では、共共拠点が続くんですけれども、井上先生、何かご意見ありますでしょうか。

【井上委員】  中型ということですと、実は共共拠点以外でも中型の設備で最先端の研究をしているところは結構あると思います。学内にあっても、中型の予算要求というのは順位が上がっただけでは簡単には通らない仕組みで、研究者にとっては、自分は大型として頑張ってお金をつけようとするのか、中型としてつけようとするのか、あるいは科研費で頑張るかという位置づけすらできない状況が、非常に将来が見えなくて、なかなか研究の設計が難しいので、やはりこのぐらいの規模はこういうところを目指すのがいいというような仕組みが最初からあって、何を頑張ればいいかというのが研究者にとってはっきり分かる状況をつくってほしい、つくられるといいのかなと考えています。

【観山部会長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【勝委員】  それでは、1点。

【観山部会長】  勝先生。

【勝委員】  少し早く出ることになりますもので。いただいた資料でかなり課題がクリアになっているのではないかと思いますが、今までの何人かの委員の先生の御意見にもありましたように、中型設備についてもやはり大学単位での予算要求になっているというところが問題で、かなりいびつな形になってしまっているのではないかと思います。先ほど、海外メーカーへの依存度が高いという話もありましたけれども、やはり予算がすごく絞られている中で、大学に国の予算が入り、それによる需要という意味では、企業としてもやはりそういったところの技術開発をなかなかやらないということもあり得るので、企業との連携の点でも 悪循環になっているのではないかと思います。
 これはやはり運営費交付金の減額、すなわち法人化から続いているわけですけれども、確かに資料でも指摘されているように、今後は大学間でのネットワークや大学共同利用機関とのネットワークが重要であるわけですが、先ほど中野先生が言われたように、コミュニティーでの順位づけではなくて大学での順位づけになってしまうというところが非常に大きな問題であると思われるので、やはりここについては、国としても政策といいますか、予算の割り振りについてはやり方を考えていかなくてはいけないのかなと思いますし、それはやはり企業の技術開発の面からも喫緊の課題なんだと思います。この部会でも、具体的にどのようにするかというところは非常に難しいところではあるかと思うんですが、この辺りを中心にまとめていくということも必要になるかと思いました。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。大事な視点を言われたと思います。海外メーカーに頼っている部分があるというのがあります。ただ、これは後で聞きたいと思いますし、調査もあったほうがいいと思いますが、分野によって大分状況が違っているのではないかなと思います。割と物理系では結構、研究者が自分で造ったり、メーカーと相当とやりとりして設備を導入するという部分が割と多いのではないかなという印象を持っています。生物系とか、割と製品がもう確立しているようなものについては、米国やヨーロッパ製だとかでその先端の機械が入っていないことにはもう全然戦えないとかいう分野も結構多いと思います。
 それから、大学からの予算要求で、様々な分野で、大学の中での順位と、他の大学の研究者にもためになるいろいろなプロジェクトみたいなものの順位の調整がうまくいっていないとかが課題としてあります。そもそも大規模計画に関しては割と国の一つの方針みたいなものがありますけれども、中規模計画は、分野によっては、この分野の機器の導入がもう基本的な戦いになっているんだという分野においても、どうも国の戦略がないのではないかというところの御指摘だったと思います。
 どうでしょうか。ほかの委員の皆様、感想でも結構ですし、質問でもよろしいかと思いますが。

【関沢委員】  では、関沢です。

【観山部会長】  関沢先生、どうぞ。

【関沢委員】  ありがとうございます。今回議論の論点をおまとめいただきまして、法人化以後、部局で予算要求ができなくなったところが、結果的に何年もたって国際的な競争力、研究力の低下に影響しているというようなことが分かったわけです。もう悲鳴のような、国として大学内で整備することが困難な部分をどうにかしてくれという意見がたくさん出たわけなのですが、それをするときに、どういう仕組みがフェアにここはまず補強しなければいけないとかそういったところを、国立大学附置研究所・センター長会議及び国立大学共同利用・共同研究拠点協議会説明資料のなかでが目利きという言葉がありましたが、どういう観点でフェアにここにまず投入するというような方針というか基準を決めていくのか。そういったことも重要なことなのかなと感じております。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございます。割と核心に、いわゆる共通の物差しというか、こういう分野のこういう機器というのは非常に重要だねという共通認識が無いように思えます。、分野にもよりますけれども、共通認識をどうやって育んでいくかということが結構重要です。例えば大型の場合は、基本的に全国のこの分野のユーザーはほとんど関係する、例えば高エネルギーだと、高エネルギー分野の人、それから、核融合の分野の人がほとんど全部関係するというようなオールジャパンの感じで1つの装置を考えるというときには、これは大学の枠を超えても検討しなければいけないかなというところです。
 中規模に関しては、共共拠点だと全国規模ですけれども、例えば近隣の大学で、三、四の大学が集まって予算申請を例えばするとしても、法人化しているので、法人の意向が予算の獲得にとっては重要な視点なのでしょう。文部科学省からたとえば、コミュニティからの意見が上がっているので、 おたくの大学からは要求はないですけども、予算をつけますなんていうのはなかなかできない状況です。何か共通認識を持って、ある種のコミュニティーが一緒に当該大学からも予算要求が出ていくとか等の状況がうまくつくれるのかがあります。それとも、政策的にどういう分野のどういうものが非常に国際競争力の中で重要な機器になるのかとか、そういう共通の認識に基づいた予算要求というのは何かつくることができますかね。
 政策的なものをつくろうと思ったら、しっかりとやり方を検討しなければならないでしょう。また、 調査は後でも議論したいと思いますけれども、中規模設備という限りは機器が非常に多様になっているので、そのような中で、共通の物差しとか共通の認識もうまくつくれると政策的にもいろいろなアピールができると思います。
 中野さん、どうぞ。

【中野委員】  ありがとうございます。幾つか意見を述べたいと思います。まず中型の機器といったときに、どうしても大型の機器に比べて競争力が低いとか、先進性に乏しいとかというようなイメージを与える場合もあると思います。しかしそれは必ずしも正しく無く、学術の大型計画等で実施されている様々な実験や装置開発のかなりの部分が、最初は中規模で始まっています。中規模で始まって、そこで世界的に競争力があるということが分かって大型計画に進むということが物理の世界でも多いので、中規模計画のところをおろそかにすると、学術全体がなかなか進展しません。裾野が枯れてしまうと大きな幹も育たないと思います。
 そういう意味で、先ほど観山さんがおっしゃったように、共通の指標がつくれるかというとかなり難しくて、そういう中規模計画というのはやっぱりボトムアップで出てくる。ボトムアップのアイデアが中規模計画としてみんなで一緒にやっていこうというふうにして育っていくので、この基準を満たしなさい、この基準で評価しますというような評価軸を1つに決めてしまうと、なかなか難しいんじゃないかと思います。
 一方で、一大学に閉じてそういうアイデアが出てくるかというと、なかなかまれです。中規模計画を進める上では、大学の枠を超えた連携、コラボレーションがまず必要になってきます。例えば、今は大学単位でいろいろな設備の要求が出ているところを、複数の大学から要求が出ることを条件とするような枠、金額的にもう少し小さい小規模から始まっていてもいいですけれども、複数の大学がある装置を一緒に造りたいと言っているというような、そういうものを可能にする受皿をまずはつくっていただいて、それをどう審査するかというのは工夫が必要だと思いますけれども、大学間の競争だけではなくて、大学間の連携によって初めて実現するようなそういう装置開発を受ける受皿があると、少しは改善するんじゃないかと思います。
 以上です。

【観山部会長】  共通の物差しというのは難しいかもしれないけれども、複数の大学が割と共通に要求を高く言っているんだとすれば、割と一つの物差しになるのではないかと思います。
 では、長谷部先生、どうぞ。

【長谷部委員】  先ほど観山先生がおっしゃった、全国規模でどういうデマンド、どういう政策をつくっていくかという、そういうアイデアを出すことが大事だというのは、僕は非常に同感いたしました。
 それで、やはりこの間のヒアリングでも、研究基盤協議会とか、いろいろな協議会がありますよね。それを利用していくとか、あるいは今、共同利用・共同研究システム形成事業が立ち上がってスタートして、これによって共同利用研と共共拠点が、今、多分、共同利用研と共共拠点ってあんまりコミュニケーション、個々には多少あるんですけれども、全体で何かを議論する、例えば生物系全体の共共拠点が集まって何が必要かを議論するということは全くないので、何かそういう枠組み、今の共同利用・共同研究システム形成事業の中で、それをより拡張して共同利用研と共共拠点が一緒になって考えるような仕組みをつくっていけると、何か全体として必要なものが提言できたりしないのかなと思いました。

【観山部会長】  今言われたのは、学際的ハブの形成事業みたいなものでしょうか?

【長谷部委員】  そうです、はい。

【観山部会長】  分かりました。
 渡辺先生、では。

【渡辺委員】  ありがとうございます。私も中野先生がおっしゃったように、大学間の連携を強めて、そこからの提案を重視していくのはとてもいいと思います。
 それから、前回ヒアリングしたときに、大阪大学が装置メーカーと協力しながら進めているという話がありました。今日のお話でも、日本の装置メーカーが弱くなって、海外から買う装置が増えているというお話がありましたが、海外の状況も非常にこれからも不安定になっていく可能性があります。海外から購入することは円安が進めばますます大変になりますし、国内の装置メーカーを強くしていくということも同時に必要ではないかと思います。
 大阪大学で懸念されていたのは、その場合には装置メーカーに資金を出してもらえばいいという方向に行くのではないかということでしたが、そうではなくて、むしろ装置メーカーにもそれなりに国としてちゃんと投資して強くする。それを大学と一緒にやっていくような、そういう基盤も一緒につくっていくことも同時に必要ではないかと思います。
 以上です。

【観山部会長】  なるほど。では、井上さんのお話を聞いて、事務局ともちょっとやり取りしてみたいと思います。井上先生、どうぞ。

【井上委員】  すみません、私も中野委員の話にちょっと関係するんですけれども、素粒子・原子核分野ですと、基本的に大型計画というのはもう国際共同になっていまして、コミュニティーはもちろん国際共同の大型研究というのは非常に強力に推すわけですけれども、中型計画が重要であるという前提に立って中型計画を、中型といっても素粒子・原子核の中型というのはもはや結構大型に近い予算規模なんだけれども、中型を申請しようとすると、コミュニティーの全面的なサポートというのは当然大型の下に入れられるので、例えば今回のロードマップの申請のときも、サポートレターがコミュニティーから出る必要があるとかという、そういう条件をつけられると、それが果たして出るのかというと、大型計画と中型計画が同じ土俵で戦うことになってしまいまして、やっぱり中型の特色を生かすためには、コミュニティーの全面的なサポートがあればいいんだけれども、それよりは大学間連携とかという、やはり個性を生かせる規模感での申請を受け付ける仕組みがないと機能しないんじゃないかなと。分野による話だと思いますけれども、そういうように思っています。

【観山部会長】  なるほど。全体的というよりは、割とコンパクトな大学連携でも重要視している部分があると言うことでしょうか。
 事務局、今までの意見についていかがでしょうか。特にあったのは、大学が連携してそういう中で要求していくというものに対して、ある程度の、少し重要視してほしいというか、そういう枠組みが何かできますかとか、例えば今、共共拠点と共同利用研、学際ハブというのが今後どうなるかはちょっと分かりませんけれど、そういう仕組みが可能でしょうか?物理系の方からはそういう。大学間連携の在り方でどう進めるかというのを少し重要視してほしいということでしたが、それは可能ですか。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。設備に関しては、今のところ、各大学単位でしか要求を出してもらっていないというのはありますけれども、例えば組織要求なんかは大学間連携でお話をいただくようなものがありますので、仕組みをつくれば、やれないことはないんだとは思います。ただ、今、学内で優先順位を議論するというやり方をやっている中で、複数大学でどういうふうにお話合いをしていただけるのかというのは、大学サイドとも相談しないと機能するかどうか、またいろいろあるのかなと思いますが、技術的にはできないことはないとは思います。

【山本大学研究基盤整備課課長補佐】  あと、補足をしますと、大学間連携の組織をつくるような枠組みがある中で設備の要求ももちろんあるんですが、その設備もどちらかというと、先ほどから議論いただいている大学の優先順位の中の枠組みの中で設備を要求することになりますので、結果的に大学間連携、つまり、コミュニティーの要望の基づいた順位がそういう要求の枠で反映されやすいかというと、やはり設備は大学の優先順位の世界の要求の枠ということで今要求をいただく形になってしまうので、大学間連携の例えば設備の要求をする場合には、先ほどありました専用の要求の窓口みたいなものが必要なところもありますので、そういった制度設計も含めて検討しないといけないかなというふうに御意見をいただいたと思っています。
 以上でございます。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  いずれにしても、この後の2の今後の検討の方向性のところでもまた御意見いただくことになるとは思いますので、そこでいただいた意見と併せて検討していきたいと思います。

【観山部会長】  そもそも大学共同利用機関とか共共拠点を日本でつくったわけなんですけれども、それは、それぞれの大学がそれぞれの装置を競争的に獲得して使うというのは、米国なんかはそういうところが大きいわけなんですが、なかなか資金的にも難しいので、そういうコミュニティーが集まって、いろいろな大学の研究者の要望を例えば共共拠点に装置を入れてみんなが使うという考え方、これは財務的にも非常にいい考えだし、ある程度そういう共同利用をするところには技術者なりサポートする人間を拠点に配置して、他大学の方に使っていただくという在り方というのはうまく機能してきたと思うんですね。
 ただ、法人化という縦割りの状況が出来たことによって、その部分が、横串横串と言っているんですが、横串の予算要求の仕方というのがなかなか難しくなってきているということなんだと思います。、財務的には、例えば複数の大学がある装置を共同で購入して、それぞれが持つよりはよっぽどコストパフォーマンスが良いという考え方自体は消えてはいないと思うんです。そういう部分がどういうふうに仕組みの中で訴えられるかというところが課題ではないかと思います。、今、事務局からあったとおり、次のこともありますので先で議論しましょう。
 先ほどちょっと手が挙がっていた方がおられると思いますが、どなたでしたか。よろしいですか。

【原田委員】  原田ですけれども、次のテーマで発言させていただきます。

【観山部会長】  それでは、2番目の今後の検討の方向性、もちろんまた振り返って議論してもらえればと思いますが、整備の方針とかそういう部分について、では、原田先生、どうぞ。

【原田委員】  ありがとうございます。参考資料1の12ページで、先ほど観山先生がおっしゃった、共共拠点に予算をつける形の何か仕組みづくりを考える場合に、研究ニーズのマップの中で、緊急性と重要性、両方を兼ね備えたような、どうしても右上の四角のボックスに入っている研究分野に予算をつけたくなる思うのですが、こういった中規模の施設・装置というのは、コミュニティーの非常にベーシックな基盤を支える重要な役割ということも大変大きいかと思います。
 ですので、ぜひとも、緊急性か、重要性、いずれかを満たせば予算が要求できるような仕組みづくりもお願いしたいなと思います。皆さん競争疲れというのもあるかなと思うので、やっぱりコミュニティーの基礎を支える、基盤を支えるという重要性というところにも重きを置いたような予算のつけ方の仕組みづくりもお願いしたいと思います。
 
【観山部会長】  このレポートは、JSTの研究開発政策センター、CRDSが作られたと聞いていますが、今日は、海外出張か何かでこの作られた方が出席できないので、この中身については具体的に聞けないところがあれなんですが、先ほど言われた、12ページの重要性と緊急度のグラフですが、こういうものが最初に言ったように研究者間とかコミュニティー間で共通認識にあれば、割と簡単にいけるかもしれません。これはある視点での多分重要性と緊急性なんでしょうが、こういうものがつくれるかどうかというと、最初に中野先生が言われた意見では、なかなか難しいのではないかなということですよね。これも一つの方向性だと思います。例えば調査をして、共通の認識でこういうマップが描けるということになれば、一つは簡単なところがあるかもしれません。
 もう一つ、視点として、勝先生言われた企業との連携。つまり、物理分野では相当、企業との連携とか、新しい技術を企業に例えば研究者のほうから広がっていくとかいう事例もあるんです。いろいろなことを考えると、海外の機関に非常に依存していると、いろいろなことでリスクもありますね。価格が高騰しているとか、入ってこなくなるとかということもあります。例えば、ゲノムの解析装置だとか、他にもいろいろな分野でありますが、日本の企業が後れを取っているという分野があります。ただ一方で、研究の上ではそういう新しいものがないとほとんど太刀打ちできないという現状もあるようです。
 中野先生、どうぞ。

【中野委員】  企業との連携という意味では、今、核物理研究センターで核医薬品、RIを使った医薬品の開発をやっていて、そこは実際、企業との連携が主になっています。加速器メーカーもかなり本気になってコミットしてくれたんですけれども、その際重要なのが、その事業は長期にわたってコミットする価値があるかどうかというのはやはり企業目線で判断するという、そういうフェーズが入ります。研究者は、これはすごい成果になるとか、これは世界をリードしますとかもちろん言うんですけれども、ビジネス面で本当にそれが基幹産業として日本で育っていくかどうかという判断を企業がしないと、企業はコミットしないというのがあります。それを信じてもらって初めてコミットして、そうなると、今、企業はたくさんお金を持っていますので、非常に助けになります。
 今、核医薬品の開発では、アメリカと非常に、連携もしておりますが、競争にもなっております。いろいろな国際会議とかワークショップに、DOE、アメリカのエネルギー省の人が来るんですけれども、彼らに話を聞くと、非常にフランクに、自分たちはたくさんお金を持っている、資金をたくさん持っていますと。それをこの大学とこの大学とこの大学、5つの大学に重点投入します。企業が興味を持つまで投入し続けます。投入して企業が興味を持ったら、ステップバックするとはっきり言います。お金の使い方に関して非常に戦略性も感じられるし、メリハリも感じられるし、企業がコミットする際に何が重要だということも理解していると感じます。
 そういうところと我々は競争していかないといけないわけなので、同じような戦略性が必要になってくるんですけれども、その際にはやはり産学官の連携があると、国際競争の面でも非常に強いかなとは感じております。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございます。治部先生、どうぞ。

【治部委員】  ありがとうございます。私はこの分野全体に詳しくはないので、ただいわゆる広く一般に知らせるとか、納税者に伝えるとかそういった観点でずっとお聞きしているんですけれども、今中野先生がおっしゃったことはとても大事なことだなと思っています。
 もう20年近く企業取材を続けていますが、先ほどJSTの資料を拝見して、ああ、なるほど、そういうことかと思いました。日本の研究力や国際競争力といったときに、割高な海外製品を買わなくてはいけない状況というのはもちろん問題だと思うんですけれども、だからといって日本のメーカーに造ってくださいとただ言うだけでは、とてもじゃないですけれども、企業は長期的な経済合理性で動きますので、頼まれたからやるということではないと思います。
 その点でまさに中野先生がおっしゃったように、政府の役割というのは、短期的な市場原理にかなわないけれども、長期的な公共性に資するようなところにお金をつけていくということだと思います。ですので、もし文部科学省のほうでそういったことをこれから後押ししていく際には、長期的な視点が必要なのであるということは、つまり、少しお金をつけて、成果が出ないということを早々に簡単に判断をしてやめてしまうようなビヘービアを政府が取ると、企業はそれを信頼せずに、今後もその分野に投資をしないということいなってしまうということを、恐らく財務省に対してきちんと言っていく必要があるのかなと思ってお聞きしました。感想でした。

【観山部会長】  ありがとうございました。重要な点だと思います……。永田先生、お願いします。

【永田委員】  今までのお話を伺っている中で少し私自身の中でも整理ができていない部分があるんですけれども、学問領域によって少し違うかなと思っているのは、中規模の機器の開発なのか、それとも、導入なのかというのは大分違うと思うんです。これは例えば長谷部先生にお伺いしたいんですけれども、生命系で例えば、昔だったら多分、物性科学、生命系辺りはそうだと思うんですが、汎用的に使える機器で必要なもののレベルが、例えば分光計だったり、蛍光測定だったりしたんですけれども、今ではもうそんなものでは戦えない。もっと上のものを持っていないと戦えない。例えばそれはクライオ電顕だったり、MRIだったり、いろいろなことになっていると思うんですね。そういうところと例えば素核でさっきお話があったような、大規模ではないところで機器開発も含めて動いていかなければいけない部分はちょっと違うような気がするんです。
 そこの領域ごとのというか、分野ごとの違いによって、どんな体系あるいはどんな塊でどんなものを導入してくるかということについては、大きく分類が違うような気がしていて、そこに関してお伺いしたいなと思っています。例えば長谷部先生、いかがですか。

【観山部会長】  長谷部先生、どうぞ。

【長谷部委員】  永田先生のおっしゃるとおりだと思います。機器の外国からの導入と開発というのは別に分けて考えるべきかなと、私も生物学の分野では思います。導入については今までいろいろ議論されてきたんですけれども、開発のほうは、先ほど観山委員長おっしゃった様に、物理系は自ら、特に天文なんかは開発されているんですけれども、生物系で開発するということはすごく少ないんですね。ただ、生物学者はすごく開発したいと思っていまして、ソフトマター、生物学者ができるような開発、例えば蛍光たんぱくを作るとかというのは、これはもう世界に先駆けて新しいものを日本でどんどん作って、世界の人が使うという状況なんですね。一方で、物理、機械に関わる分野というのは生物学者は不得意なので、そこの連携がうまくいかなくて、機器開発あるいは企業との連携に進めない。デマンドはすごくあるんですけれども、そういう状況です。
 多分、共同利用研が再編されて、例えば僕のいる自然科学研究機構が出来たというのは、それについてはすごくよくて。僕はもともと基礎生物学研究所、生物だけのところにいたんですが、自然科学研究機構が出来て天文台と一緒になって、例えば天文台の望遠鏡の技術を生物学に持っていくというような研究、これは機構が出来る前はとてもそんなことは考えなかったんですが、そういう方向に進んで、新しい顕微鏡を造るというようなことができるようになったので、やはり新しい機器開発については異分野の融合が大事かなと思います。
 ただ、そのときに、機構が出来てある程度は進んでいるんですが、大きな問題として明らかになってきたのは、予算がアドオンにはつかないので、従来使っていた、専門分野に使っていた予算を一部削って使わなければいけない。そうなると、やはり研究者としては、自分の立ち位置の研究を進めていかないとキャリアパスが次につながらないので、なかなか新しい機器開発に進めないんですね。なので、政策として、今までのところを再編して異分野融合を進めるというよりは、何かアドオンの、非常に難しいというのは分かるんですけれども、そういうアドオンで何かそれをすると予算がつくというような競争的な仕組みをつくられると、そこはもっと進むと思います。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。生物系の分野で、例えば米国とかヨーロッパというのは、新しい機器とか新しい解析装置とか観測装置というのはどんなふうに開発されているのですかね。やっぱりメーカーが主導しているのか、それとも、一部の機械に強い生物学者とか生命学者が入っていって、会社でつくったりしてやっているんでしょうか。どんな状況なんでしょう。

【長谷部委員】  機械に強い生物学者がベンチャーをつくったりしている場合が多いです、一番出発点は。

【観山部会長】  なるほどね。今後の方向性に関しては、調査をして、先ほど海外の調査結果が出ていましたけれども、適切な調査というのはどういうふうにすれば良いかというのはなかなか難しいとは思うんです。しかし、例えば分野によって、開発なのか、それとも導入なのかとか、それから、企業との連携とか、分野の特色はあると思うんです。、やはり一応そういうものが把握されているということが、一つ重要じゃないかと思います。それから、今後の戦略としてどういう方向性が必要なのかということは調査してみないことにはなかなか中規模分野の戦略を立てる上でも難しいのではないかと思います。
 今後の方向性とかという中でいかがでしょうか。その次は、非常にまた難しい、技術職員とかそういう問題が入りますけれども、いかがでしょうか。中野さん。

【中野委員】  ありがとうございます。先ほど参考資料を拝見していて、非常にいいことが書いてあるなと思っています。参考資料1の最後のページです。最後の13ページの一番上のところに、新たな技術が生まれるポテンシャルを維持するためには、無形資産としての技術的・人的な蓄積、20~30年の継続的な無形資産の集積及び育成が必要と書いてあって、全くこのことに同意するとともに、これは本当に大事だと思っています。
 付け加えたいのは、無形資産というのが、いわゆる人によって継承される技術としての資産だけではなくて、これは物と密接に結びついていることが非常に多いということで、技術を発揮する場所は何かというと、やはり中規模施設であったり設備であったりするわけですね。日本の場合、老朽化とか陳腐化というのが現在、非常に速いスピードで進んでいるという危機感を持っています。大学には確かに高い技術やそれを使ったいろいろなアイデアやノウハウといった資産が集まっているんですけれども、設備・施設と共にそれが失われていくんじゃないかという危機感があります。
 だから、先ほどから今後どういうところに国の支援を投入していくべきかなどの議論はあるんですけれども、今既にある、日本が、現在、保持している科学技術上の有形・無形の資産をもう一度見直して、それに対して手当てしなければ、本当に何年か後にはそれが失われてしまうという危機感を持っています。その危機感を共有して、それを何とか解決していくということをこの部会でも話し合っていきたいと思っています。
 以上です。

【観山部会長】  非常に重要な視点だと思いますが、ここに書かれた部分を例えばリストアップするなり調査で浮かび上がらせてくるということができますかね。

【中野委員】  それこそ拠点の協議会とかそういうところに頼めば、そういうところから意見を徴集すれば、いっぱい出てくるんじゃないかと思います。

【森委員】  よろしいでしょうか。

【観山部会長】  どうぞ、森先生。

【森委員】  ありがとうございます。中野先生もおっしゃったように、私が見ていても、物性科学は割と中規模の装置が多いんですけれども、そういうところで、いつもいつも将来計画を立ててコミュニティーの中で話し合って、それをまとめて、その次どういうふうに進めるのかということをきちんと合意形成しながら進めているような分野、非常に技術革新にしても、それに伴う研究にしても、それから人材育成にしても前に進んでいるなというふうに感じております。そういうことをコミュニティーでしているところを外に分かるように、物性科学の分野ではお互いに意見交換をする機会があって、そういうところで切磋琢磨して、計画を連携とか、あるいは、中身を向上させるということをしているんですけれども。
 どういう計画が、先ほど資料1ですか、二、三十年のところで必要なのか。技術を含め、あるいは装置、それから人ですよね。そういうところを共共拠点協議会とか、多分コミュニティーは出せると思うんですよね。そういうところをボトムアップで出していただいて、その中で考えていくというのは大事で。ロードマップの中規模版みたいなものがあれば、そこの中で多分出てくるのかなというふうには思うんですけれども、ロードマップが大規模で数百億だとしたら、その中規模のところで二、三十年どう考えていくのかというのは、我々は計画を立ててやっている分野が幾つかあります。
 以上です。ですので、そういうようなところを見ながら、その中で優先順位が高く、日本としても必要なところを考えていくというような施策を持っていくというところが重要なのかなというふうに思っております。ですので、コミュニティーとしてボトムアップを出していくということです。

【観山部会長】  ボトムアップ、要するに、協議会なんかで議論していただくというのは良いと思います。ただ、協議会は、実際問題、非常に多様な研究分野が集まった組織ですよね。その中で、今後の学問的な状況の中で、さっきあった重要性と緊急性みたいなマップが、調査に基づいて出してもらえませんかとお願いして、まとまりますかね。

【森委員】  今度は、だから、先ほどおっしゃったように、大学共同利用機関と共共拠点がハブのような形のときに設備費みたいなのがあれば、その二、三十年のロードマップというところで、こういうように書いてくれというところで、書かないところはそれまでということでやれば、出てくるは出てくるというふうには思います。しかし、我々のところの分野では、もう話し合って、どういうものが必要かというところは準備しているような状態です。我々というか、物性科学全体ですよね。今は日本学術会議の中で未来の学術構想とかやる機会がありますので、そのときには、大学共同利用機関と共共拠点があり、かつ、物性分野の中では、そういう幾つかのグループが話し合うということは、いつもされていると思うんですけれども、それとさっき言っているところとはあると思います。

【観山部会長】  学術会議はマスタープランという形ではもう出さないことにしましたけれども、割と一緒に大枠の方向性みたいなものはつくられるということなので、その成果も見つつということと、さっき言われた協議会等の役割として依頼するということは1つの考え方ですね。
 中野先生、どうぞ。

【中野委員】  協議会に頼んで、もし役に立たないものが出てきたら、それは協議会の実力不足ということなので、仕方がないと思います。次に何にお金をつけるかというのは、非常に重要なことを議論するわけだから、そのときに自分の分野のことだけ考えたり、声の大きいところだけが得をするというようなシステムを研究者がつくってしまったら、それは研究者が自分で自分の首を絞めていることになります。研究者がちゃんと汗をかく、違う分野のことも理解しようとして、本当に重要なものは何かということを協議会の場で話し合って、きっちり優先度をつけることができるということをやはり協議会は示すべきだと思うんです。
 だから、もし頼んで、そうじゃなくて、総花的に100ぐらいこういうことが緊急ですと出てきたら、それはやはり、あ、そうですかと言って、残念ながら、御意見は伺うけれども、それは全部一度に実現することは難しいですとお答えするしかないんじゃないかなと思います。
 以上です。

【観山部会長】  そういう場合には、協議会の会長や副会長と十分な意図を意見交換しなければいけないと思うんですが。
 永田先生、どうぞ。

【永田委員】  今、森先生がおっしゃったようなことが、私も物性科学に若干近い部分があるので、もしそれが動いているとすると、それがどんな規模の予算をどの程度の構想でやっておられるかという具体的なものを見せていただくのは非常にためになると思います。例えば、そういうものが1つあると、これぐらいの規模の感じのものがこれぐらいのスパンで、こういう形のコミュニティーがつくられている。これと同じことがおたくのコミュニティーでできますかという、そういう話だと思います。
 そういうものを並べていったときに、我々がそれを全体として、予算規模も含め、あるいは、タイムラインも含めて、どの程度のものかということが把握できる。これはすごく大事だと思うので。
 例えば、森先生、そういうものがある程度具体的に見せていただけるような状況になるんでしょうか。

【観山部会長】  森先生、どうぞ。

【森委員】  物性科学の分野で出ているような、我々は強磁場とか中性子とかレーザーとかスパコンとかそういう分野での話ですけれども、特に強磁場や何かは1980年代からずっと、二、三十年をかけてやって進んでいるような分野で、中規模と言えば、本当に数十億程度のものを更新しながら、人を育てながら、研究をグローバルに展開しながら進めているという状況です。
 それはロードマップが100億を切ったときから、その裾野のところである程度、何回か発表はしておりますので、例となるものは幾つかあるというふうに思います。

【永田委員】  例えば、これから10年、20年ぐらいのスパン――20年はあれかもしれません。5年、10年のスパンでどういうことが必要であるかという具体的なことも含めて、もしそういうものを見せていただけると、それに相当するものが各領域でどういうになっているかということをきちんと見るのは、これは大分、具体的にどの程度の規模の予算が必要かということを見るという上でも大変重要なことではないかという気がしているんですけれども。
 これは、中野先生のところでもそういうことが可能でしょうか。

【中野委員】  はい、可能だと思います。

【永田委員】  そうすると、協議会にお願いするということもあると思うんですけれども、既にコミュニティーとしてそういうものが整っている部分があれば、そういうことを一度見せていただいて、ある種、それをひな形にしながら、他の領域でそれと同じような状況がどうなっているかという、それを積み上げていくというのが1つの作業かなという気もしておりますけれども。

【観山部会長】  学術会議はマスタープランはつくらないことになりましたけれども、マスタープランをつくる過程の中で、非常に議論が進んでいるところは、どんどんマスタープランをつくっていかれてました。ただ、そういう議論が全然されてないところも、一応、マスタープランを出さないことにはロードマップに載らないという状況が二、三期続いたものだから、必要にかられて議論の場ができたという効果はあったみたいですね。
 だから、そういう意味では、ちょっと今度は状況が変わって、学術会議でまとめる物は、 割と大枠な仕組みにもなりましたけれども、そういう資料も参考にすべきではないかなと思いますし、連合協議会に関しても御依頼するとか、いろいろな方法があるかと思います。
 よろしければ、3番目の設備整備に関連する課題に移りたいと思います。いろいろ出てきていましたけれども、大きな話題は、ヒアリングでも随分出ていましたけれども、技術系職員に関する問題です。つまり、非常に数が少ないとか、キャリアパスの設定だとか、今まで大学の事情でいろいろ、研究職の確保をするために、技術職の職を振り替えて使ってきたとかいうこともあったりして、サポート人員が少ない問題が指摘されています。サポート人員が少ないということはありますが、一方で、法人化したということは、各法人の裁量の下に、技術系を採るのか、研究系を採るのか、事務系を採るのか、はたまたURAみたいなのを採るのか、一応自由度はあります。でも、現状としては非常に厳しい状況にあるというところまとめがだと思いますが。
 この点に関しては、いかがでしょうか。長谷部先生。

【長谷部委員】  技術職員の問題は非常に大事だと思います。それで、僕は、技術職員というのは、先ほど話題になりました、新しい機器の開発、特に生物学分野なんかだと、この技術職員が結構鍵になるんじゃないかなと思っています。
 参考資料の2の31ページのところに、技術職員の雇用条件の内訳があります。これですね。そうすると、無期雇用と有期雇用があって、ほかの分野は分からないんですが、生物系だと恐らく、この無期雇用というのはパートで実験を手伝ってもらっている方が多いかなと思います。無期雇用というのは各機関で雇用の方ですよね。この無期雇用の方と有期雇用の方の区別というのが今あんまり明確ではないというか。仕事の内容として。
 この無期雇用の方々をもう少し異分野融合ができるような、チャレンジングな仕事ができるような人材を新しく採って、そういう人たちが研究開発をできるような予算をつくっていく。今、技術職員が出せるのもあるんですが、例えば、年間100万とか、職務に関わりのないような研究というような枠組みでの科研費だけで、技術職員が自分で研究できる、独自に研究できる、特に機器開発についてできるという予算枠というのはないと思うんですよね。
 それはやっぱり、技術職員の最初に採るときに、これは事務職員とたしか同じ給与体系になっているので、あと、勤務体系も事務職員とほとんど同じになっているので、そこは研究教育職員と同等に研究ができるような無期雇用の技術職員というのが育ってくると、機器開発というのがより日本の中でも進んでいかないかなというふうに思っています。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 ちょっとここで質問です。いろいろな分野の方がおられるからお聞きしたいと思います。私の認識では、物理系の場合は、要するに、今言われた開発、エンジニアの部分は、結構研究者がそういう分野担当してを開発しているのではないでしょうか。 新しい加速器とか、新しいマグネットや、望遠鏡の中で言うと新しい観測装置をつくっている研究者がいます。もともとは新しい物理的な研究をしたいというものですが、その方向として、新しい、誰もつくってないような装置を開発してというエンジニアの部分があります。一方、テクニシャンといいますか、ある装置があったら、それを物すごく有効に使う能力がある人たち、これは物理系では、基本的に昔の技官とか技術系職員になってきたという状況ではないかと思います。ほかの分野、生物分野だとか、そういうところで分化というか、研究者と技術者というのが相当遠い感じなんでしょうかね。

【長谷部委員】  今のお話ですごく目からうろこで、エンジニアがいないんですね、きっと。多分、生物分野。テクニシャンはたくさんいるんですけれども、エンジニアの人材が抜けているんだと思いました。

【観山部会長】  そういうのは、例えば、研究所の中でなくても、非常にうまい企業だとかベンチャー企業とか、そういうところとの連携みたいなのはあんまりないんですか。

【長谷部委員】  生物学の分野とエンジニアリングの分野が離れているので、興味の方向も、生物学者はやはり生物が面白いので、エンジニアのほうにはなかなか行く人は少数です。いないことはないんですけれども。そういう方もいて。それで、新しいものを開発している方もいらっしゃるんですが、マジョリティーにはなっていかないですよね。物理系だと、そこはすごく低いんじゃないですかね。谷が。

【観山部会長】  この分野、医学系も多分そうなんです。医学、生命系みたいなものも。
 中野先生、どうぞ。

【中野委員】  加速器を使った開発とかそういうところというのは、研究者が開発するというのも当たり前になっています。だから、エンジニアリング、必要なときにはします。
 それだけじゃなくて、実験をしているときも、研究者が、海外だったらエンジニアが担当する仕事をするというのは非常に多いです。日本で実施される国際研究の現場では、海外から来た人はケーブルもつながらないけれども、日本の研究者は何から何までやってしまって、実験がうまく走るようにエンジニアの仕事もするというのが当たり前のようになりつつあるというところがあります。
 それはちょっといびつだなと思っていて、そういう点からも、日本の技術者の数の少なさ、特にエンジニアの少なさというのは本当に大きな課題だと思っています。
 一方で、なかなかアカデミアの世界でパーマネントな職に就くというのは難しくなってきているので、技術者に転身する研究者も多いです。我々のセンターだと、新たに技術者になった方は全員ドクターを持っております。研究者としてのキャリアも持っている方が技術者に転身したということがここ何年か続いております。
 その際に、研究者として築いてきたキャリアが全部リセットされて、給料が非常に安いところが始めないといけないという大きな問題があります。だから、これは研究者の中から、技術者といっても、学生から見たら神様のような人で、研究力もあって技術力もあるという人が技術者になっているわけなので、若手の研究者からあの人の給料を上げてくださいというような、そういうお願いが来るぐらい、待遇とやっていらっしゃることの間にギャップがある。それも解決していかないといけない問題かなというふうに感じています。
 この層を厚くすることによって、日本で研究者が技術者と同じようなことをするのが当たり前になっているけれども、実はもっと違うことに集中すべきということがあるかもしれないし、実際そうしたほうが論文も書けるし、業績も上がるんですよね。だから、技術者の層を増やして、なおかつ待遇を改善して、できるだけ国際的な標準に持っていくということが、日本の科学力というか、成果を発信する力を上げていくには非常に役に立つんじゃないかなというふうに思います。
 以上です。

【観山部会長】  今の視点で言うと、法人化したことなので財政的な事象が非常に絡みますが、ポストとか格をつくることは大学単位で議論できますが、研究者単位では難しいです。財政的な問題があるので、教授と同じようなレベルの給与をもらう技術主幹とかそういうそういうものがあってしかるべきだし、私が前いた天文台ではそんなことをやっていました。
 ただ、人事体系をつくることだとか、給与体系をつくることだとか、資金的な問題だとか、人件費ですから、物件費と人件費の割合だとか、そんなことを全部考えなきゃいけない。財政的な面があるので、非常に難しいことはよく分かりますけれども。

【中野委員】  観山先生のような俯瞰力と実行力を全て備えていらっしゃるリーダーはそういうことが可能なのでしょうけれども、おっしゃるとおり非常に難しいです。これは人の問題ですけれども、装置の問題で、例えば、老朽化に対する管理費とか維持費というのをどれだけ充てるかというのも本当は非常に大きな問題ですが、問題が起こるまでそういうものはできるだけ節約するというようなことが現場では起こっています。
 似たようなことが人の面でも起こっていて、目の前に人件費がそんなになければ、ついつい若手の研究者を雇用することに、使ってしまうとか、そういうことが現場では起こっているんじゃないかなというふうに思います。最適化というものはなかなか難しい。できていない。予算が少ないときには。そういう問題があると思います。
 以上です。

【観山部会長】  よく分かりました。以前のポストとかいうものに縛られているわけではないんだけれども、それを一つのスタンダードにして、本当の人員とかの最適化は、なかなかそういう議論するところが難しいというのはあり得る話ではないかとは思います。これについても少し、様々な団体を通じて調査しないといけないことではないでしょうか。
 ほかにどうでしょうか。関連する課題として。財務関係というのが一番問題なんですけれども。
 最後に、共用と共同利用という観点があったので、皆さんにお聞きしたいところは、共用はある意味で、割と装置の単純利用で課金ができるということで、一般の企業とかそういうことにも開かれている。共同利用・共同研究というのはサービス機関というふうに思われるかもしれないけれども、実は基本的な考え方としては、大学の研究者なりがその大学に来て装置を一緒に運用したり、それから、いろいろなディスカッションをしてアイデアをつくっていくことによって、その機関の研究者にとっても非常にメリットがあるという仕組みです。単純に先ほどは財務的に非常にコスパがいいということだけ言いましたけれども、そうだけでなくて、基本的には、一緒に共同利用・共同研究することによって新たなアイデアなり新たな発見ができるという部分が非常に強くて、それをうまくやっていたというのが20世紀の日本の現状でした。その結果日本の研究者が世界で活躍できた、日本の研究者がノーベル賞をたくさん取れているところのことだと思うんです。
 共用という部分は、私は非常に遠いんですけれども、仕組み的にどうなんですか。漠として聞きますけれども、うまくいっているんですか。例えば、いろいろな、そんなに大きな額が入るわけではないと思いますが。いろいろな共用することによって、ユーザーに対する、それこそ完全にユーザーに対するロードだとか、それから、資金を得ていることによる面倒さだとかというものは、ある程度クリアされているんですか。
 中野さんのところは共用されているんでしょうか。

【中野委員】  共用は少ないです。共同利用が多いです。

【観山部会長】  やっぱりそうでしょうね。

【中野委員】  それで、観山さんがおっしゃったように、共同利用のそれもヘビーユーザーというのは、我々のところではコアユーザーになっていて、ほとんど内部の研究者と変わらない。一緒に考えて、一緒に開発している。もちろん、予算的には、ほとんどの場合は核物理研究センターが持つことになるんですけれども、それだけじゃなくて、コアユーザーが競争的資金、科研費等で装置を開発して、それで実験で使ってみてうまくいって、実験が終わった後も他のユーザーが使い続けることができるということが分かれば置いていっていただくというような形で、設備的な面でも機能強化に役立つとかそういうことが起こっております。
 だから、おっしゃるとおり、ユーザーと施設側という関係というよりは、もっともっと密接に一緒にものをつくり一緒に研究していく仲間という位置づけになっています。それが発展して長期の計画になると、共同利用から共同研究に発展するということが普通かなというふうに感じています。

【観山部会長】  そうですね。長谷部先生。

【長谷部委員】  今の共用の問題なんですけれども、私のいる基礎生物学研究所でも共同利用というのはずっと多かったんですが、共同利用される方と研究所の教員が一緒になって何かを進めているというのは少なかったんです。この数年の間に、URAを少し変えて、RMCというリサーチ・アンド・マネジメント・コーディネーターという仕組みを、新しく職階をつくりました。それは研究教育職員が教授も含めてなって、その共同利用の方々とともに、今はAIを使ったような生物、階層を越えた生物学というのを新しくつくろうというプロジェクトを概算要求で文科省に支援していただいています。
 それで、ある意味でコンセプトを共用して、かつ、基生研にある機器を共有するというのを、基生研のRMC教員がコアになって、うまく研究所内の教員と、あと大学の教員というのを一緒にミックスして研究を進めるというような体制が出てきたので、共用するときにも、共用するのがすごく得意なというか、それを専門にやるような人というのが鍵になるのかなという感じがいたします。
 以上です。

【観山部会長】  ちょっと質問ですけれども、共用のユーザーというのはどういう人なんですか。

【長谷部委員】  大学の先生方です。

【観山部会長】  大学の先生方なんですね。

【長谷部委員】  ただ、今、RMCとして、クロスアポイントメントで企業の方というのも加わっていただいて、一緒に研究グループに入っている場合もあります。特にAIを使うというと、企業のほうでそういう研究が進んでいる場合も多いので、そんなふうに進めています。

【観山部会長】  そうですか。ありがとうございます。
 共用というと、SPring-8だとかJ-PARCだとかというところが代表的なんですが、ちょっと私は違う分野ですが、そういうところで、例えば、企業の方とかがいろいろ入ってこられて、さっき言った企業との間の共同作業みたいなものから何か出てくるというようなことはないんですか。ここには関係者はおられないので難しい質問でしょうが。その点についてはコメントがないようです。
 では、時間はまだありますけれども、どうでしょうか。大体議論はできましたでしょうか。何かまだこういう視点だとかこういう部分については次回のまとめの中に残したいというものがありましたら、御発言いただければ。

【森委員】  すみません。

【観山部会長】  森先生、どうぞ。

【森委員】  先ほどの共用と共同利用で、観山先生がおっしゃったように、放射光とかJ-PARC、SPring-8は共用施設だと思うんですけれども、共用というのは、研究者あるいは企業の方が使うだけという視点で、その装置を新しく開発して次世代の装置を使うとか、学生さんの次世代の方を育てるという視点は入っていないと思います。
 ただ、最先端の装置をつくったときに、その中で、またR&Dでその装置を、その機能を向上させるとか進化させていくということはもちろん必要で、そのために研究者が入ってきて、そのときに共同利用研とか大学共同利用の方のシステムをつくって、共同利用のシステムの中でそういう新しい機器の開発、R&Dをするとか、それから、学生さんが来られますので、そういうところで育った方がその次のその施設の担い手になってくるわけなので、そういう方を育てるとか、そういうような意味での共同利用ということと、共用で使う、あるいは、外部資金が入ってくるというところがうまく組み合わさったようなシステムというのがあるといいなというふうに思います。
 今は、共用の施設の中だけで共同利用をやるということに関して、そういう形で認めるというか、そういう活動をしていますというところを報告するということになってはいると思うんですけれども、そういうところはちゃんと今後考えていかないと、共同利用研に関しましても、そういう共同利用の装置、共同利用でやっているほかに共用というアイデアを入れていって、外の企業の方も含めて使っていただいて資金導入して、それを維持費に回していくとか、機器の更新に回していくとか、そういうアイデアも取り入れながら考えていかないと、この中型施設というのは、私はこれから5年、10年、20年保っていくのかなという非常に危機感を持っているところです。
 いろいろな国のシステムを更新していくということもあるでしょうし、そういうボトムアップに考えていくということと両方だと思うんですけれども、それを共同利用と共用を少し整理して、こういうところまでは共同利用だし、ここは共用だしと、そういうところを、1つの装置で両方考えていくというようなところを議論いただければなというふうに思っております。
 以上です。それは観山先生がおっしゃったことと多分重なってはいると思うんですけれども。

【観山部会長】  例えば、物性研でいろいろな高度な設備をお持ちですが、もちろん研究者にとっては非常に重要な装置です。一方、企業の研究者にとって重要で、それをある種、課金して、それに対するテクニシャンの人件費だとか何とかということがカバーできるぐらい日本の企業にとって有効な装置というのはあるんですよね。

【森委員】  たくさんあります。質・材料にとって計測というのは、今、命で、そういうミクロな、あるいはマクロな計測というのをしたいという御希望、それに対するコンサルタントをしてほしいというのは非常に多くいただいております。ですが、それは1つ1つ、今、共同研究という形で結んで進んでいるような状況です。それをもう少し施設として共用ということも含めて課金を、もうちょっと、共同研究を一々結ばなくても、近くの中小企業の地域の方にも使っていただくとか、もうちょっと広げるような形を考えていくような仕組みをつくると、有効に利用できるのかなと思います。
 ただ、それにはやはり人員も必要だし、装置の更新も必要なので、それがうまく組み合わされるような形のシステムができるといいのかなというふうに思って、共同利用の考え方を少し共用と一緒に整理していくということだと思っております。
 以上です。

【観山部会長】  そのシステムというのは、別に今、法律でつくっていくとかいろいろな手続として共用ができないわけじゃないけれども。

【森委員】  はい。合意形成として、共同利用と共用というのは組み合わせることができるんだというような、文科省様といろいろ話し合って進めていくということができるのなら、それは今のところ、あまり、公式にはなっているかというと……。事務局、いかがですかね。
 文科省様のいつもこの装置ってどうするのかということは共共拠点として御相談しながら進めていくような形で、我々もナノテラスのほうにも行っておりますし、これからスタートするということは文科省様とも御相談しながらやっていますので、その点に関して文科省様がどういうふうにお考えなのかというところをこれからすり合わせていくのかなというふうには思っております。そのところの共通認識があまりあるような気が私にはしてないですけれども。

【観山部会長】  事務局、共用に関して、障害があるような仕組みにはなってないと思うんですが。

【森委員】  ただ、法律的な縛りは少しあるのかというふうにはちょっと思うんですが。

【観山部会長】  それがありますかね。事務局、いかがですか。

【山本大学研究基盤整備課課長補佐】  事務局でございます。放射光の場合、例えば、共同利用する部分と共用で、以前、共用の補助金で運用しているというような例もあって、成果を公開する、非公開にするとか、いろいろな枠組みの中でうまくマネジメントしている例もありますので、そういった中で、先ほどの運用の中で、企業と連携するような幅の部分とか、そういったところで共同利用と共用というのは両立していくべきということで、いろいろコミュニティーからもお話は伺っておりますので、引き続き、そういったところをきちっと我々も認識していきたいと思います。
 以上でございます。

【森委員】  ありがとうございます。

【観山部会長】  共共拠点だからそれができないという仕組みではないと思いますが、なかなかそれが進んでないという現状は確かにあると思います。
 中野先生、どうぞ。

【中野委員】  すいません。先ほど、共用は全くないというようなことを言ってしまったんですが、それは間違っておりました。実際、我々のところだと、ソフトエラー評価のための白色中性子照射というのは、本当に企業だけが行っております。
 非常にデマンドも高いんですが、ばらばらに複数社と共同研究契約を結ぶということをやると、非常に無駄も多いし、企業にとっても、立ち上げのときから電気代がかかりますので、費用もかさんでしまいます。ですので我々の場合は、核物理研究センターと企業の間に一般社団法人というのを入れて、そこで調整していただいて、企業用の照射というのは同じ時期にまとめてできるようにしています。
 うまくそれを基礎研究のビームタイムと合わせることによって、基礎研究のビームタイムでは立ち上げにかかる費用を節約するという方法をとっております。実際、昨年度から電気代が非常に高騰しておりますが、立ち上げのときは企業負担、基礎研究のときは、それに続いて実験を行うというのでかなりの節約になっておりますので、うまく共用と共同利用というのを合わせることによって、拠点としても助かる場合があるということを付け加えておきます。
 以上です。

【観山部会長】  できないことではないと思いますが、ただ、難しいのは、秘密保持などですね。要するに、企業は企業のそれぞれの独自のアイデアに基づいていろいろな装置を使うというので、その結果については公表しないとか、秘密保持協定だとか、それから課金の額だとか、ちょっと面倒くさいところはあるので、なかなか進んでないという現状ではないかとは思います。でも、今後考える上で非常に重要な視点だと思います。
 大体よろしいですか。時間は少し前ですけれども。
 ありがとうございました。本日いただいた意見を基に事務局と調整しまして、次回の会議では中間的な意見の整理案を示したいと思います。まとめは難しいのではないかと思いますが、私も参加して調整をしたいと思います。
 事務局、何かございますでしょうか。今後のスケジュール等について。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございました。今日の御議論で、設備の導入と開発と分けて議論しなければならないような部分などもあるのではないかという感じもありましたので、どういうふうに整理できるのか、また部会長とも相談しながら練っていきたいと思います。

【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  次回は6月27日火曜日の15時から17時を予定しております。その前に部会長と御相談して、資料をまとめさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【観山部会長】  それでは、少し早いんですけれども、本日はこれまでにしたいと思います。どうも御出席いただいた委員の方々、本当にお忙しいところ、御参加いただきまして、ありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。
 
―― 了 ――
 

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