研究環境基盤部会(第100回) 議事録

1.日時

平成30年11月7日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学共同利用機関の今後の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 稲永忍部会長、松本紘部会長代理、相田美砂子委員、天羽稔委員、井本敬二委員、勝悦子委員、小長谷有紀委員、小林良彰委員、瀧澤美奈子委員、永田恭介委員、橘・フクシマ・咲江委員、藤井良一委員、観山正見委員、森初果委員、八木康史委員、横山広美委員

文部科学省

磯谷研究振興局長、千原大臣官房審議官(研究振興局担当)、西井学術機関課長、錦学術研究調整官、早田学術機関課課長補佐、吉居学術機関課連携推進専門官、その他関係者 

5.議事録

【稲永部会長】  おはようございます。ただいまより、科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会第100回を開催いたします。
 委員の先生方におかれましては、御多忙の中、御出席頂きまして、誠にありがとうございます。
 まずは、事務局から、委員の出欠、配付資料の確認をお願いします。
【錦学術機関課学術研究調整官】  本日は、伊藤委員、佐藤委員、松岡委員、山内委員、龍委員が御欠席です。配付資料の確認をさせていただきます。資料は、議事次第に記載の通り、資料1から資料7、参考資料が1から3と、机上配付資料が1点でございます。不足等ございましたら、事務局までお申し付けください。
【稲永部会長】   それでは、議事に入ります。前回、前々回の研究環境基盤部会では、19の大学共同利用機関等からお話を伺いました。本日は、前半と後半に分けて、9月に本部会でまとめました「意見の整理」における論点について、議論を行いたいと思います。
 まず前半ですが、「意見の整理」では、大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点との連携が論点の一つでしたので、国立大学共同利用・共同研究拠点協議会からお話を伺いたいと思います。事前に事務局より協議会に対して意見照会を行っていますので、それに対する見解を御示しいただきたいと思います。
 後半では、「意見の整理」における主な論点について、これまでの議論・ヒアリング等を踏まえた検討の方向性について、議論を行いたいと思います。
 早速、審議を進めたいと思います。それでは、国立大学共同利用・共同研究拠点協議会の小原会長、東京大学物性研究所の森所長、名古屋大学宇宙地球環境研究所の草野所長、順番に御説明をお願いします。
【国立大学共同利用・共同研究拠点協議会(小原)】  おはようございます。御紹介、ありがとうございます。私、ただいま紹介いただきました、国立大学共同利用・共同研究拠点協議会の会長を務めさせていただいております、東京大学地震研究所の小原でございます。今回、先ほどお話にありましたように、大学共同利用機関の在り方、特に共同利用・共同研究拠点との連携に関するアンケート調査を行いたい旨、文部科学省から要請がありましたので、アンケートの配布・収集・整理を拠点協議会の方で実施させていただきました。本日は、そのアンケートの集計結果の概要につきまして、私の方から御説明させていただきます。その後、両者の連携につきまして、アンケートの全体を代表する考え方の一つとして東京大学物性研究所の森先生から、また、既にネットワークを形成し、連携を実践されている名古屋大学の宇宙地球環境研究所の草野先生から、それぞれ具体的なお話をしていただくという段取りになってございます。
 まず、参考資料3を御覧ください。こちらが、今回、各拠点に配らせていただいたアンケートの内容となっております。基本的には、こちらの研究環境基盤部会の方でまとめられた「意見の整理」に対して、共同利用・共同研究拠点、名前が長いので、共・共拠点あるいは単に拠点と申し上げたいと思いますけれども、その拠点について、大学共同利用機関と拠点がそれぞれどのような役割を果たすべきかというところで、最初の設問がございます。それから、1枚めくっていただきまして、(2)として、大学共同利用機関が中心となってネットワークを形成することの必要性に関する、それのメリット・デメリット、それから、もしネットワークを形成する場合については、相手先としてどのような機関があり得るか。申し後れましたけれども、まず、(2)の最初の設問では、「関連する研究分野の大学共同利用機関がある場合」というところでその設問がございます。それから、その下に「関連する研究分野の大学共同利用機関がない場合」という形での設問がございます。それから、(3)につきましては、拠点から大学共同利用機関への移行について、それはどのような場合に適切か、その移行のメリット・デメリット、国としてどのような方策を講じる必要があるか、という形の設問。それから、(4)として、逆のパターン、大学共同利用機関から拠点への移行について、どのような場合が適当と考えるか、ということでございます。
 3ページに移りまして、2ポツですけれども、既に大学の拠点の方では、法人化以降、複数の研究施設が関わる再編・統合が実施されているところもございますので、その概要について、取りまとめさせていただいております。
 最後に、全体について何か意見があればという形で、まとめてございます。
 それでは、取りまとめた結果について御説明したいと思いますけれども、資料1と資料2を御覧ください。
 まず、資料2の方を御覧いただきたいのですけれども、この資料につきましては、先ほど御説明申し上げたアンケートの内容に従って、順番に書かれております。資料2の1ページ目でございますけれども、1ポツ、(1)の設問に対して、まず、その下の「大学共同利用機関の役割」と書かれている網かけの見出しは、アンケートの設問に記載されているキーワードに対応してございます。その下の両括弧の小見出しにつきましては、そのキーワードに関連する複数の意見を取りまとめた要約という形になってございまして、その下に丸が幾つか並んでございますけれども、それが、それぞれの拠点から出されたら意見そのものになってございます。若干、文章を整理している場合もありますけれども、ほぼ原文に近い形で掲載してございます。この資料2が全体の詳細な意見ということになりますが、これだとかなり分量が多いので、両括弧の小見出しの部分だけ、つまり意見の要約のみだけを抜き出したものを資料1としてまとめてございます。これより資料1に沿って御説明申し上げたいと思いますけれども、随時、資料2の方に移る場合もございますので、御容赦願います。
 では、資料1の方を御覧いただきたいと思いますけれども、まず、「意見の整理」に対する意見、(1)でそれぞれの大学共同利用機関と拠点がどのような役割を果たすべきかというところにつきまして、まず、大学共同利用機関の役割というところでは、大学が保有できないような大規模な設備、それから学術基盤に基づく先端研究や大型研究を推進するというような役割を持っていて、その大規模設備については、日本の研究発展のために維持すべきであるという要望が幾つか出されております。
 一方、拠点の役割としては、大学に附属する組織として、教育や若手人材育成が重要なミッションであり、また、各専門分野のハブとして、コミュニティ活性化への貢献であるとか、異分野融合や新分野創成に向けた挑戦的課題への取組を行うというところが大きな役割であろうと。それから、大学の機能強化等々については、これは言わずもがなのところでございます。
 それから、大学共同利用機関と拠点との類似性についての意見もありまして、こちらは、生命・医学領域については、大学共同利用機関にも拠点にも超大型の実験装置がないということから、研究開発法人との比較という観点で見ると、両方は似ているのではないかというところです。
 それから、大学共同利用機関と拠点との協力・連携につきましては、非常に多くの意見として、それぞれのミッションや機能、役割が異なって、相補的な関係にあるというところを十分に意識すべきであろうというところがございました。
 それから、大学共同利用機関と拠点の機能分担、役割分担というところについては、最初にケース・バイ・ケースということを書いていますけれども、これは、場合によっては機関や拠点のどちらも中心となり得るというところでございます。また、ざっくり機関と拠点の役割分担について説明すると、意見としては、機関については、トップダウン的な運営を行って、大型研究を推進し、設備利用面に軸足があると。それに対して拠点については、ボトムアップ的な運営で、挑戦的な課題を行い、共同研究を中心として展開すると。そういった役割分担があるのではないかということでございます。あと、予算規模は当然ながら異なってきますので、それに応じた役割分担をしているということです。
 次のページに参りまして、「集約化・一体化に対する懸念」という見出しを付けておりますけれども、これは本来であればここの設問の中にあるべき内容ではないのですが、これ以降の設問を意識した意見がこの段階でかなり寄せられていますので、それについて取りまとめたものになります。まず、分野によっては大学共同利用機関が中核機関とならない場合があると。例えば、分野の重複が限定的であるなどという場合については、中核機関としてはならないのではないかと。また、効率化の名の下で集約化を図っていくと、学問の多様性、機動性が失われる懸念があると。また、大学共同利用機関と拠点につきましてはミッションが異なりますので、その場合、拙速に一体化を行うと混乱を招くのではないかと。また、安易な改変については、各拠点の実績であるとか特色を失う懸念があると。そういった意見がかなり寄せられております。
 基本的に、この「審議のまとめ」に同意する機関もかなりございます。16機関については、特にほかの意見がなく、この審議の取りまとめについては同意しているというところでございます。
 続きまして、(2)の設問、大学共同利用機関が中心となってネットワークを形成するということについて、まず、(2)-A、「関連する研究分野の大学共同利用機関がある場合」というところですけれども、これは、アンケートの結果を見ると、必ずしも自分の拠点のことだけではなくて、想定して回答しているという例もございます。ざっくり言いますと、ネットワークの意味の捉え方がそれぞれの拠点によって異なっていますので、表向きは「必要である」「必要ではない」という逆の答えを出しているところについても、その中身を見ると、それほど意見が分かれているわけではない。とても大ざっぱに言ってしまうと、共同研究を促進するための相補的で緩やかな連携であれば賛成であるけれども、トップダウンの新たなガバナンス体制を構築するというのがネットワークということであると、それについては同意しないという意見が多かったように思います。
 ネットワークを形成することについて「必要である」というところが13機関ありますけれども、この中では、共同利用という大きな共通した役割を果たすための方策としては必要ではないかと。ただ、役割分担を前提として連携をすべきであろうと。それから、大学共同利用機関のハブ的な機能を生かして、そもそも設置趣旨からしても、中心となるべきであろうと。一方では、初めからネットワークありきではないので、必要性の明確化がまずは必要ではないかというところがございました。
 また、「必要ではない」という意見につきましては、多様性の確保の観点から見て、ネットワーク化はメリットがない。拠点が担う大学機能強化の役割からしても、ネットワークは必要ない。あとは、関連する分野の大学共同利用機関が存在していない、分野ごとに研究戦略・運営方法が異なるためにネットワークは特に必要ではないだろうと。それから、既存の連携で十分であると。つまり、個人ベースですけれども、既に共同研究は十分に実施済みですので、それ以上のネットワークは特には必要としないという意見もございました。あとは、ネットワークを形成すると拠点への予算措置がどうなるのかという懸念、組織体の意思決定につきましては基本的にはボトムアップであるべきである、法改正や合意形成が必要、という意見がございました。
 「どちらともいえない」という意見はかなり多くありまして、それは、先ほど申し上げたように、ネットワークの意味が必ずしも明確ではないというところから、こちらを選択した機関もかなり多くございます。例えば、各部局や分野によって事情が異なるであろうから、どちらとも言えないという場合。また、大学共同利用機関が中心となるとは限らない。分野によっては共・共拠点が中心となる場合も当然あるでしょうと。大学共同利用機関が全ての分野をカバーするとは限らない。それから、拠点が扱う分野が広い場合についてはネットワークの構成が非常に複雑になるので、多様性を確保することができるのであろうかという懸念があります。また、資源配分、特に資源が大学共同利用機関に一極集中するのではないかと。ネットワーク化によって拠点の独自性が喪失されるのでないかと。また、ネットワーク化することによって、事務的な負担が増えることも懸念されていると。もちろん、ネットワーク形成に対する期待であるとか、ネットワークを形成する場合の留意点についても、意見が出されております。
 その他の意見としては、ネットワークの中心を固定化することへの懸念というのは、そもそも「大学共同利用機関が中心となって」という設問の表現には違和感があって、これは、上下関係ではなくて、横の対等な立場による連携が必要ではないかというところでございます。
 あと、メリット・デメリットについても幾つか意見が出されておりまして、メリットについては、適切なネットワークを形成すれば、研究環境がよくなり、大型研究施設を用いた共同研究が可能となってくると。多様性の確保が可能となり、また、スケールメリットによって研究予算等を効率的に扱うことができるのではないかというところ。それから、相補的な緩やかな連携をとることによって、活発な研究交流による研究力の向上が期待されるというところでございます。
 デメリットにつきましては、ネットワーク化に伴って組織が複雑化・非効率化して、事務的な負担が増えるのではないか。それによって、特に大学共同利用機関のスタッフの負担増が懸念されるというところ。また、ネットワーク化に伴って、研究活動や評価が制約される。あるいは、機関が中心という前提に立つと、拠点の自立性や機動性等々、多様性が失われる危険があるというところでございます。
 その他の意見としては、そもそも組織改編の大義は何かというところで、まず、現在の共同研究体制の問題点を明確にした上で、その解決策を考えるべきではないかという意見がございました。
 時間もなくなってきますので次のページに移りたいと思いますが、マル2の「今後、新たにネットワークを形成する場合、相手先として想定される大学共同利用機関はありますか。ある場合、それはどの大学共同利用機関ですか。」というところで、「ある」「なし」については、円グラフで示したとおりでございます。ある場合については具体的な相手先の機関名を資料2の方に取りまとめておりますので、資料2の方もちょっと御覧いただきたいと思いますけれども、17ページのところに表がございますので、こちらも併せて御参照いただければと思います。
 そのようなネットワークにおいて大学共同利用機関の役割についてですが、ほとんどの意見としては、大規模な研究、大型施設を持って研究を推進するというところが、大学共同利用機関の役割であるというところ。それから、ほかにも幾つか、専門性、トップ人材の育成等々が挙げられています。
 それから、資料1に書き漏らしたのですけれども、既にネットワークを形成している場合については、資料2の19ページのところに、その具体的な内容について記載しておりますので、こちらも御覧いただければと思います。
 その次の(2)-B、「関連する研究分野の大学共同利用機関がない場合」という設問に対する回答・意見になりますけれども、新たなネットワーク形成のため、中心となる大学共同利用機関が必要かどうか。「必要である」というところについては、全体の中では少数意見というふうになってございます。「必要ではない」というところにつきましては、既に研究者レベルでの連携ができているので、新たなネットワークは必要ではないというところ。それから、研究分野の関連性がないため、そういった大学共同利用機関とのネットワークは特には必要ではないと。また、学問の多様性を阻害するネットワークは必要ではないというところ。あと、「どちらともいえない」という意見の中では、そもそも今の組織というのは、設立当時の社会要請によって設立されているので、ネットワークをこれから構築するという場合については、共同利用研究体制全体の見直しが必要ではないかという意見もございました。
 以上がネットワーク形成に関するところでして、(3)は拠点から大学共同利用機関への移行についてという設問で、どのような場合が適当か、移行のメリット・デメリットについて回答がございますけれども、基本的には、これは非現実的な話として受け取られて、それに対する回答と。仮にあるとすればというスタンスでの回答ですので、こちらについては、ここでの説明は省かせていただきたいと思います。
 その後、3ポツの「その他、「意見の整理」について御意見があれば御教示ください。」というところは、内容としては共同利用機関と拠点との連携に関する意見がかなり多かったので、順番を逆にして、ここに記載しております。
 それから、最後の部分で、2ポツ、既に再編・統合を行った研究施設に関する、その動機・内容・効果という設問につきましては、このような表の形で取りまとめております。具体的には、本日、3番目に名古屋大学宇宙地球環境研究所の草野先生からお話しいただきますけれども、実際に再編・統合を行っておりますので、その内容につきましても御説明させていただきたいと思っております。
 私からの説明は以上で、この後、森先生からの説明に移らせていただきます。
【東京大学物性研究所(森)】  おはようございます。それでは、小原先生に続きまして、物性研究所(以下、物性研)の森の方から、「物性科学分野における共共拠点と大学共同利用機関の連携について」ということで、お話しさせていただきます。分野によって連携の仕方が大分違うと思いまして、物性科学の方は割と多様性を生かしながら連携をしているという特徴がありますので、それについて御説明したいと思います。
 まず、物性科学分野の特徴でございますが、各研究分野の卓越性を持っているということと、研究分野内外で非常に多様性があるということがございます。ざっくり言いまして、物理分野、化学分野、工学分野というふうに共・共拠点と大学共同利用機関を分けたのですけれど、物理分野ですと、我々物性研は割と軸足が物理分野にございます。それから、山内機構長がおられる高エネルギー加速器研究機構(KEK)の物質構造科学研究所(以下、物構研)は、大学共同利用機関としてあります。化学分野に関しましては、分子化学研、この前、川合眞紀先生が発表をしてくださいましたけど、大学共同利用機関としてあります。あと、佐藤委員がおられる京都大学の化学研究所(以下、化研)、ここも化学分野に割と軸足があります。工学分野に関しましては、東北大学の金属材料研究所(以下、金研)などが共・共拠点としてはありますということで、研究分野の外の方で、物理、化学、工学と、このように多様性があると。また、物性研の中でも、もちろん物理だけではなくて、ナノ、強相関、強磁場、高圧だったり、超低温だったり、いろんな分野があって、分野の中でも、分野間でも、非常に多様性があるというところが、特徴でございます。
 それから、施設でございますが、先端的な研究施設がありますけれど、大型から中・小規模の研究施設ということで、非常に多様性がございます。各機関・拠点が特徴的な研究施設を相補的に使っているということでございますが、大型の方は、物構研は、電子加速器(放射光、中性子、ミュオン、低速陽電子)ということで、このような多様な大型の施設を持っておられます。それから、極端紫外光研究施設ということで、分子研もこのようなSOR(放射光)を持っておられるということで、大学共同利用機関では普通の大学では持てないような大型の施設を持っておられます。それから、我々共・共拠点におきましては、中・小規模の研究施設ということで、物性研も、パルス強磁場、最近、世界最高の1,200テスラが出たのですけれど、あと、アト秒という、世界で一番波長の短いレーザーを作って、利用して、共同利用に供すということをやっております。あと、超高圧と超低温、そういうようなイクストリームな研究環境を作るということを、中・小規模の研究施設として作っております。それから、金研ですが、我々はパルス強磁場なのですけど、定常の強磁場ということで、相補的に強磁場を作っている。こちらは1,200テスラまで、こちらは30~40テスラで、非常に定常な強磁場を作っておられる。それを物性研究に提供しているということです。また、金研はスーパーコンピュータを持っておられます。化研の方も、化学が中心なのですけれど、スーパーコンピュータを持っておられる。これに関しては、後で説明させていただきます。このように研究施設に関しても非常に多様性があって、それを相補的に利用しているということでございます。
 ですので、物性科学分野における連携というのは、どういう連携が好ましくて、どういう連携だと多様性とか卓越性が確保できないかということですけれど、こういう形で、一元的といいますか、研究分野の卓越性、拠点内の多様性が生かされない一元的な連携ということで、狭い意味での効率性、狭い意味での選択と集中じゃなくて、多様性と自立が生かされたような連携だったらいいだろうということですね。例えば、こういう一元的な連携にしてしまいますと、拠点のこういうテーマが外れてしまうのですね。多様性が確保できない。多様性が確保できないと、全体としても大きな研究分野になっていかないということで、連携の基軸が短軸で広がりのないものは、少し連携として困るなということです。
 しかしながら、拠点間で多様性を確保して、それから、強みをお互い生かして、1+1が3にも5にもなるような、そういうのはすばらしい。それぞれ、先ほど申しましたように、拠点がございます。物性研とか、化研、金研、分子研がございますが、それぞれに対して分野があります。分野で、卓越性というか、専門性が高まっております。また、それぞれの分野で、資料3の5ページにありますように、裾野が広がっております。ということで、拠点内でもこういうようなお互いの山が重なり合って、ポテンシャルを高めるような、サイエンスの広がりやサイエンスの発展というのがございます。あと、それぞれに対して非常に、山の得意、強みというのがございます。そういうものをボトムアップに生かしてきて、先端テーマ・分野融合ということで、新しい学問を作るということと、人材育成をするというような、こういうような包括的な、多様性が生かせて、それぞれの山が強みとして生かせるような、そういう連携だと非常に、学問の多様性も生きますし、人材育成の活性化ということもできるのではないかということでございます。
 そういう意味で、どういう連携をやっているかというのを2つ、例として御示ししたいと思います。1つは、物性科学連携研究体ということでございます。ですので、我々は、卓抜のものを作るというところと、その物の性質を測る、物性研究ですね。それから、それを利用して省・創エネルギーの原理ということで、社会に生かすようなものの基礎研究をやっていくということで、物を作りながら、それの物性を測りながら、新しい原理を作って、そうすると、その次はどういう良い物ができるかという設計ができますので、これがぐるぐる回って、正のスパイラルになるというようなところを目指しております。それにおきましては、それぞれ、化学、物理、工学の強みのあるところが一緒にやっていくのがいいであろうということで、6ページのところに、エネルギー変換、情報処理、物質変換を目指して、物性研、分子研、化研、金研、理研(理化学研究所)が一緒にマスタープラン2014と2017を出しまして、2014のときには理研が、2017のときには分子研が代表で出されて、今回も出す予定なのですけれど、重点大型研究計画ということで選ばれております。ですので、物性科学における融合学術領域の創成ということで、大事なのは、この下に、連携研究、人材育成という日本のそれぞれのコミュニティを抱えて、それが包括的に入っており、日本で富士山の山頂みたいな、トップのサイエンスを作ろうというような計画でございます。
 それぞれの項目ですが、先ほども申しましたように、卓抜的な機能物質を作る、物を作るということですね。ハードマター、ソフトマターを含めて、高効率の触媒とか、スマートマテリアル、水素材料、光合成タンパク質や分子などがございます。また、物性を測るということで、創発量子物性、相互作用するような電子群が示す創発的な物性ということでございまして、強相関エレクトロニクスとか、コヒーレンス制御、トポロジカル絶縁体、スキルミオニクスということで、このような特筆的な物の性質を出しています。また、それを利用することによって、省エネルギーの原理ということで、人工光合成、太陽電池、二次電池、パルスレーザー、デバイス、そういうものにつなげていくということでございます。
 ですので、2つございまして、1つは、物を作って、測って、その原理を調べて、正のスパイラルを持ってくる研究手法のところと、それぞれが多様性を持って、量子ビーム、大型施設のところで大きな放射光がございますし、小・中規模のところでは、極限環境ということで、強磁場とか、低温とかがございますし、あとはミクロなプローブということで、触媒なんかは反応をその場で見る。オペランド測定と言うのですけれど、どのような反応が起きているかということが分かって、その次のいい触媒を作ることができるということで、そのような研究項目と手法というのが入れ子になって物性科学連携研究体というので新しい学問を作っていくということと、また、人材育成をするということを計画しております。
 2つ目の例といたしまして、先ほども申しましたように、物性研と金研と分子研の3機関でスーパーコンピュータを持っているということを御示ししました。それぞれ強みがありますので、分野の枠を超えて計算資源を利用できる制度というのを整備いたしました。3研究所が一緒に行うプロジェクトとして、文部科学省のポスト「京」プロジェクト、JSTの科学技術人材育成コンソーシアム、PCoMSと言うのですが、Professional development Consortium for Computational Materials Scientistsの略でございます。それから、文部科学省の元素戦略プロジェクトの研究拠点形成型ということで、その3プロジェクトに参加しておりまして、各研究所の研究資源の20%を優先的に提供、これが共用事業でございます。
 物性研は物性系に強く、多様な自作プログラムがございまして、そのプログラムが動くようなスーパーコンピュータを取り入れ、プログラミングをして、使用しております。分子研の方は、分子系が強いので、ガウシアンというプログラムを中心としているのですけれど、その辺のところが強い。金研の方は、材料系なので、このような手法が強いということでございます。しかしながら、物性系でも材料系の研究をする方もいらっしゃいますし、材料系でも特に分子系に注目されている方もいらっしゃる。分子系でも物性ということで、それぞれが融合領域の研究をする場合は、お隣の計算機を使った方が効率的にできるし、分野融合にもなるということで、そういうことを進めていこうということで、一緒に共用事業運営委員会というのを作りまして、それぞれのユーザーが申し込んだものを、それぞれ採択を決めて、11ページにありますようにウェブサイトでちゃんと公募をしています。それぞれの採択課題といたしましては、物性研は25から26課題、金研、分子研、それぞれ、物理、化学、材料って、割と分野としては独立した分野なのですけど、こういう意味で共同研究とか分野創成というものをやっております。
 ということで、物性科学の特徴としては、研究分野あるいは先端施設において卓越性と多様性があり、それで学問分野が発展してきている。また、人材育成をやっているということがございますので、そういう事業を2つ御紹介いたしました。卓越性と多様性を担保しながら、強みを生かした連携ということで、そういった連携が生かせるようなネットワーク化というものが非常に良いのではないかと思っております。
 参考資料にございます、論文数とイノベーションの相関という、これは日本学術会議の分科会で出したものですけれど、10億当たりのGDPの論文数です。論文数が多ければ多いほど新規プロダクト・イノベーションも大きいということで、やはり学問の多様性というのはイノベーションに重要だというのがデータに出ております、ということも最後に紹介しております。以上でございます。
【名古屋大学宇宙地球環境研究所(草野)】  おはようございます。続きまして、名古屋大学の宇宙地球環境研究所(ISEE)についての報告を、所長であります、私、草野の方からさせていただきます。
 ISEEは、非常に新しい研究所ですので、皆さん御存じないかもしれませんけれども、簡単にその概要をまず御説明いたします。ISEE(宇宙地球環境研究所)は、2015年10月に、それまで名古屋大学にありました3つの研究所及び研究センターを統合して、設立したものです。この設立の経緯はいろいろありますけれども、後ほど説明しますISEEのミッションであります、宇宙と地球を統合的・包括的に理解していくという学問的なモチベーションの下で、ボトムアップの議論を通して、こういう新しい研究所を作っていったという経緯がございます。それによって、我々はまさに、今まで全く違うコミュニティが研究していた学問領域の間に1つのブリッジをかけて新しい領域を創成していくということを目指しておりまして、手前味噌(みそ)でありますけれども、非常に様々な成果が上がっていると思っています。
 もう1つは、大学にあるというメリットを生かしまして、下の方に書いておりますけれども、教育の面でも非常にユニークな取組を行っております。上に我々の組織を書いておりますけれども、幾つかの研究部があります。まさに宇宙から地球まで包括的な研究部があるわけですけれども、それぞれの研究部は、大学の中で異なる、大学院の研究科に所属しております。具体的には、理学、工学、環境学、3つの研究科にそれぞれの先生方が所属しているわけですけれども、1つの宇宙地球環境研究所の中にこの3つの研究科につながるネットワークが出来上がっていると。それによって、異なる研究科の学生が1つの研究所の中で研究をしていくということが実現しています。実際に私の研究室では同じ部屋の中で理学の学生と工学の学生が机を隣り合わせて研究するという環境が出来上がっておりまして、非常にユニークな大学院教育が実現できているというふうに考えています。
 次のページを御覧いただきますと、これは宇宙地球環境研究所のミッションと研究領域であります。我々のミッションは、先ほど申しましたけれども、地球・太陽・宇宙を1つのシステムとして捉えて、そこに生起する多様な現象のメカニズムと相互関係の解明を通して、地球環境問題の解決と宇宙に広がる人類社会の発展に貢献するというものです。ということで、研究領域をここに書いておりますけれども、まさに銀河のかなたの、非常にエネルギーの高い、高エネルギーの宇宙物理学から、太陽物理学、惑星間空間の宇宙空間物理学、地球の周りの磁気圏・電磁圏、超高層大気の物理、それから、気象、海洋、あるいは、植生も含めた生態、陸域の物理、さらには地球史とか人類史にまたがるような、非常に幅広い学問領域を総合的に研究していく、そういう研究所です。まさに、宇宙での現象が地球の環境にどう影響しているのか。あるいは、例えば地球で大きな地震が起きて津波が発生しますと、その影響は電磁層にまで伝わるわけですけれども、地球の影響が宇宙空間にどういう影響を与えているのかということも含めて、研究をするということであります。
 実際に我々、大学共同利用機関との連携を幾つか実現しております。きょうは、その実例を幾つか御紹介したいと思います。実際の組織としては、JAXAの宇宙科学研究所、自然科学研究機構の国立天文台、それから、情報・システム研究機構、特にその中の国立極地研究所との連携を、我々は進めております。この連携はいずれも、3つの特徴を持っています。1つは、いずれも、大学共同利用機関が持っている非常に大きな装置を利用した、共同利用・共同研究の実現ということであります。もう1つは、国際的な共同利用研究を全国規模で実現していくということを、大学共同利用機関と共・共拠点が共同でやっているという点です。それからもう1つは、いずれもデータサイエンスに関係しております。大きな装置で観測したデータ、データそのものには色が付いていませんから、研究機関も超えれば、分野も超えれば、国も超えていくわけですね。そういうものを実現するためには、こういう大学共同利用機関と共・共拠点の連携というのは非常に重要な役割を果たすというふうに考えております。
 幾つか、実例をお示ししたいと思います。1つは科学衛星。これは、非常に巨大な装置でありますけれども、科学衛星に基づく大学共同利用機関との連携です。我々は、宇宙科学、地球科学、両方の研究をやっているわけですけれども、特に、ここに書いております、ERGという衛星です。後ほど詳しく説明します。それから、太陽を観測します、「ひので」という衛星です。この2つの衛星に関して、国立天文台及びJAXA宇宙科学研究所との連携の下に研究を続けているということです。特に、ERG衛星に関しましては、宇宙科学研究所と我々宇宙地球環境研究所が対等の立場で連携協力協定を結んでおりまして、マッチングファンドで研究者あるいは技術者を名古屋大学の方で雇う。それによって、この衛星から出てきたデータの解析ツールを開発するなど、いろいろな環境整備を行う。それを国内外の研究コミュニティ・研究者に対して供与して、非常に多角的な共同利用・共同研究を実現するというシステムであります。同時に、我々はいろいろな分野とつながっておりまして、アウトリーチ活動も盛んにしておりまして、最先端の研究の成果を広く市民や学生に展開していくというような活動も行っております。
 まず、ERGサイエンスセンターについて、御説明します。ERGという衛星は、地球の周りの、放射線帯といいまして、非常にエネルギーの高い粒子が地球の磁場にとらわれて存在する領域です。これの観測をしております。人工衛星等に対して高エネルギーの粒子というのは非常に被害を与えることもありますので、実利用の面においても非常に重要な衛星になっております。ERGというコードネームで、今、「あらせ」と呼ばれていますけれども、この衛星のデータを我々とJAXAとの間で連携してシェアしまして、衛星データをlevel 0、level 1、level 2というふうに、生のデータだけでは研究に使えませんから、それを科学的に利用できるように加工していくわけですが、現場の研究者の意見を取り入れながら、そういうデータの加工あるいは標準化ということを行うと。コミュニティ全体の意見を非常にきめ細かく聞きながらそういう作業をやっていくということで、我々、宇宙地球環境研究所のERGサイエンスセンターというものを作っております。
 さらに、そうした経験をこの衛星の運用にも反映するということで、まさに宇宙科学研究所とISEEの間でフィードバックをかけながら、研究を行っていくと。
 それから、衛星データの科学研究というのは国際的に展開しておりまして、例えば、台湾や韓国、いろいろな研究者の場に我々出向きまして、このデータを使うための説明会を行うとか、国を超えた、非常にきめ細かい研究を行っております。
 なぜ名古屋大学にこういうものがあるかということですけれども、宇宙のプラズマの現象というのは、地球とつながっています。端的に言えば、例えばオーロラ現象ですね。オーロラというのは磁力線に沿って粒子が落ちてきて光るわけですけれども、こういう現象というのは地上から観測されております。我々名古屋大学のISEEでは、古くから地上観測を非常に盛んにやっていました。この地上観測と衛星観測というのはまさに一体的にやらなければ全体の描像が分からないということで、我々が持っている地上観測のネットワークと「あらせ」衛星のデータを統合して解析するようなツールを開発するために、ISEEの中にこういうサイエンスセンターを作っているわけです。実際に成果はどんどん上がっていまして、アメリカ大陸にあるオーロラ帯の写真ですけれども、実際に地上観測と衛星観測のネットワークによって、最近、最初の『Nature』論文が出版されております。
 それからもう1つ、ひのでサイエンスセンターというのがあります。「ひので」というのは太陽観測を専ら行っている衛星ですけれども、宇宙科学研究所が運用しておりますが、開発は国立天文台が中心に行っております。我々は国立天文台あるいはJAXA宇宙科学研究所と連携をしまして、ISEEの中に「ひので」のサイエンスセンターを2012年に設立し、運用しております。この「ひので」に関しましても、衛星からの観測と、我々が行っている地上からの観測、特に名古屋大学では電波を使って地上から太陽風の観測を行っておりますけれども、そういうものとの連携環境を作る。あるいは、我々、データサイエンス、特にシミュレーション科学に非常に強いわけですけれども、そういうものとの連携を行うということを行っています。それによって、例えば、名古屋大学で「ひので」の10周年の国際シンポジウムを実施するとか、それから、私が領域代表をやっているのですけれども、新学術領域で宇宙天気予報に関する研究をやっております。これは太陽が地球の環境にどういう影響を与えるかという研究ですけれども、まさに、こういう研究をやるときに、ひのでサイエンスセンターというのは非常に重要な役割を果たすということです。さらに、大学院教育はもちろんです。先ほど申し上げましたけれども、理学だけではなくて、工学、環境学の学生も含めて、こういうデータ利用を行っていくという、1つの場を提供しているということです。
 次は、情報・システム研究機構との連携ですけれども、こちらは大ざっぱに分けて2つあります。1つは、国際的に非常に大きな装置を国際共同で開発・運用しています。EISCATと呼ばれているプロジェクトですけれども、これは、高緯度地域、北極とか南極とかは宇宙と地球がつながっている領域なのですが、そこに非常に巨大なレーダーを設置しまして観測する、そういう大型プロジェクトです。これを、情報・システム研究機構の極地研究所と名古屋大学の宇宙地球環境研究所が連携しながら国際的なネットワークを作って観測し、そのデータを国内外の研究者に供与していくということを人の交流も含めて行っていまして、相互に客員教授・教員を併任することも、実際に行っております。
 それから、データサイエンスに関しては、単に名古屋大学と極地研究所だけではありません。先ほど申し上げましたように、宇宙空間と地球のつながりというのは、ほかの大学でも研究をしております。例えば、東北大学の惑星プラズマ・大気研究センターとか、京都大学の生存圏研究所とか、同じく京都大学にあります附属天文台等、幾つもの研究所があるわけですけれども、そういった機関とネットワークを作って、極地研究所と一緒にデータをシェアしていく。それを共通のフォーマットの中で簡単に利用できるような環境を作り出すという、IUGONETというプロジェクトを進めています。
 それから、最近、情報・システム研究機構ではさらに、超高層大気だけではなく、様々なデータベースを統合的に整理して供与するという、データサイエンスセンターを設立しておりまして、こことの連携を強めております。というのは、いろんな大学に非常に優れた研究者や技術者がおります。そういう方々の能力をフルに利用して機構と大学の間の連携を作って、非常に幅広いデータセンターを運用していくということを展開しようとしております。
 ということで、今まで幾つか実例を挙げましたけれども、名古屋大学の宇宙地球環境研究所(ISEE)そのものが分野融合を目指した研究所です。ただいま説明しましたように、JAXA、国立天文台、情報・システム研究機構と非常に強い連携を持っていまして、特に大型の装置のデータを共同利用するという努力をしております。3つ目のビュレットに書いた、「大学共同利用機関が各大学で持つことが困難な大規模装置を整備・運用するとともに、共同利用・共同研究拠点が大学共同利用機関と協力して分野を超えた全国の研究者のハブとしての役割を果たす」と。これは非常に重要だと思います。ただし、こういうことは今でも十分にできるわけで、これはまさに我々研究者のボトムアップ的な議論の中で作り出してきたものです。ですから、組織改編というのは非常に大きな労力が必要なわけですけれども、まず、何ができるのかということを具体的に考えて、その中で実現していけば、今の枠組みの中でも非常に強力なネットワークを構成することができるというふうに、私は考えております。以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。 それでは、ただいまの、国立大学共同利用・共同研究拠点協議会、更に2つの研究所からの御説明に対して、御意見、御質問がありましたら、お願いします。どうぞ。
【観山専門委員】  まず、調査に関してですけれども、詳細な調査をしていただきまして、ありがとうございました。御礼を申し上げたいと思います。ただ、先生方がおっしゃっていたとおり、ネットワークがどういうものなのかという、実体が余り分からないまま調査が行われたようなことなので、反応が随分分かれていると思いました。そうは言っても、2ページの円グラフを見ると、ネットワークを形成することに消極的な研究者が多い点は、少しびっくりしました。それはやはり、例えば、組織、意思決定、経費などがどういうふうになるのか、というのが余り示されないで、「ネットワーク」に関して質問だったので、こういうことになってしまったのではないかという感想を持ちました。
 少し残念なのは、メリット・デメリット、いろいろ読ませていただいたのですが、組織的なもの、意思決定、経費配分への懸念、ダイバーシティーが確保できるのかどうかとかいうようなことがありましたが、私の感想としては、学術の発展に関してネットワーク構成がどう効果的なのか、それから、特に学際的研究をどう構築していくのかというような視点がほとんどないという感じもいたしました。先ほどのダイバーシティーの懸念は、そういう観点かもしれません。もう1つは、ユーザーサイドに対して、どのようなメリット・デメリットがあるのか、という部分も余りなかったような気がします。例えば、新たな共同研究を掘り起こしていけそうなのか、それとも今の形態の方がいいのかとかいうような部分もなかったので、少し残念に思ったのですが、森先生や草野先生のお話を聞くと、そういう学際的な研究に対してネットワークが結構効果的に働いていて、新たな研究者を掘り起こしている部分もあるのだということを聞いたので、その面では非常に安心しました。
 だから、ネットワークというものがどういうものかということをもう少し具体的な例を示しながら調査しないと、経費的な部分だとか、所長さんが一番懸念されている部分に集中しているような形になったので、その辺が今後の課題であろうという感想を持ちました。ありがとうございました。
【国立大学共同利用・共同研究拠点協議会(小原)】  ありがとうございます。先生がおっしゃられたとおりでございますけれども、基本的にそれぞれの大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点の独自性、多様性を生かした中でネットワークを緩く構成することによって、更に学際的な研究であるとか、萌芽研究を、挑戦的な課題にも取り組めるということで、ネットワークのソフトさ、ハードさによっては、大きく意見が分かれるところでございます。
 また、分野によってもそれぞれネットワークに対する捉え方が違ってくるので、その点ももう少しきめ細かく調査していく必要があるのかなというふうには感じました。
【稲永部会長】  どうぞ。
【永田臨時委員】  簡単な質問をさせていただきますが、資料1の1ページ、大学共同利用機関と共・共拠点の機能分担、役割分担の2つ目の「運営面におけるトップダウンとボトムアップ」というのは、どういう意味ですか。片方がトップダウン型、片方がボトムアップ型という意味でお書きになっているのでしょうか。
【国立大学共同利用・共同研究拠点協議会(小原)】  その通りでございまして、資料2の方を御覧いただきたいのですけれども、具体的な意見としてトップダウンとボトムアップと書いているのは、資料2の4ページのところです。運営面におけるトップダウンとボトムアップというところの丸を御覧いただけると、特に大学共同利用機関については、国策を反映したトップダウンのプロジェクト制で運営されるべきではないかと。拠点については、逆にというか、ボトムアップ的に研究を進めるという、そういった理解、そういった意見が出されているということです。
【稲永部会長】  ほかに御意見はありますでしょうか。どうぞ。
【相田専門委員】  ISEEの最後にございますまとめの一番後ろのところについて御質問をさせていただきたいのですけれども、「ネットワークの形成は、メリットがありますが、必ずしもそのために組織改編を必要とはしません。」とありますが、ISEEは3つあったものを統合して、新しい機関に組織再編なさったわけですよね。だから、意図がよく分からないのですけれども。
【名古屋大学宇宙地球環境研究所(草野)】  ありがとうございます。幾つかの種類の統合というのがあると思います。現在、我々が機構とやっている大型装置に関するものは、ある意味、大きな、1つの強い、硬い組織を必要としなくてもいい。すなわち、大型のプロジェクトです。例えば、衛星プロジェクトというのは、あるタームがあって、その中で実現していくものであるというふうに思っておりますので、フレキシビリティーがあった方がいいと思います。
 ISEEに関しては、宇宙と地球を統合することによって本当に新しい学問を作り出そうというふうに現場の研究者が実際に思って、議論をしながら作っていったという経緯があります。そのため組織再編が必要な場合ももちろんあると思いますけれども、必要条件としては、現場の意見がちゃんとボトムアップ的に、学問的な基盤がきちんとあるかどうかということが重要だと思います。
 それから、組織が紙の上だけで統合されても余り意味がなくて、ISEEの場合には非常に幸いなことに、名古屋大学で研究所共同館という新しい建物が建って、それまでばらばらに研究所があったものが、新しい建物の中に全部集まったのですね。組織を作るときには、物理的な距離というのは非常に重要だと思います。日常的に会話ができるような環境がきちんとあるかどうかによって、次に新しいものが出てくる確率、機会が増えていくと思うので、1つは先ほど言ったようにボトムアップにミッションをちゃんと議論して作っているかどうかということと、もう1つはちゃんとした環境がそこにあるかどうか、この2つが内包されるのであれば新しい統合があっても良いと思います。しかし、単に紙の上の統合だけでは恐らく余り意味がなかろうというのが、私の意見です。
【相田専門委員】  なるほど。と、すれば、随分レベルが違いますね。ありがとうございます。
【稲永部会長】  では、横山委員。
【横山臨時委員】  ありがとうございます。御説明、非常によく分かりました。森先生の卓越性と多様性の話も、すばらしかったです。
 草野先生に1つお伺いしたいと思います。ISEEの取組は非常に活発で、興味深く拝見しているのですが、お教え頂きたいのは、大学共同利用機関の手が回ってないことをボトムアップ的にサポートしてくださっているという印象を受けているのですが、例えば「あらせ」衛星に関して伺いたいのは、『Nature』の表紙を飾った、すばらしい成果は、東京大学理学系の笠原准教授を中心に発表されております。大学共同利用機関と大学のPIという関係で言えば非常に分かりやすく、従来の大学と大学共同利用機関との関係というふうに理解できるのですが、そこに大学の共同利用・共同研究拠点として間にハブとなる施設があると、その成果の評価というのは、もちろんどの施設も非常に貢献的に立派な仕事をされていると思うのですが、従来だと共同利用・共同研究拠点にいるPIが中心になって発表される成果論文として理解するのが順当だと思うのですが、そうした二重構造といいますか、間に1つハブ機関として入ることによる、成果の評価というのをどのようにしていくのがよろしいのかという点について、少し具体的にお伺いできればと思います。
【名古屋大学宇宙地球環境研究所(草野)】  ありがとうございます。先ほど例として御示しました「あらせ」の『Nature』論文ですけれども、御指摘のように、東京大学から出されたものです。けれども、まさに先ほども御説明しました、我々のERGサイエンスセンターが作っているいろんな研究環境をフルに利用して、初めてこの成果が出てきたものです。特に、地上と「あらせ」が飛んでいる宇宙をどのようにつないでいくかというようなことというのは非常に精密にやらなければいけないわけですけれども、そういうツール、あるいは研究ソフトウエアの環境を開発してきたのは、名古屋大学のISEEのERGサイエンスセンターです。さらに、ERGサイエンスセンターは共同利用・共同研究拠点として大学の研究者と連携して研究しているわけで、ある意味、組織は違いますけれども、コミュニティとしては、僕は一体のものだと思っています。なので、どう評価していただくかというのは評価していただく方にお任せしたいと思うのですけれども、これは、共同利用・共同研究拠点である宇宙地球環境研究所のERGサイエンスセンター、宇宙科学研究所のERG衛星、ISEEが展開している共同利用・共同研究、この3つが一体とならなければ出てこなかった成果だと思っていますので、そういうものだと思います。
【横山臨時委員】  ありがとうございます。実は別の部会で、宇宙開発利用に関しては直接、別の評価をしている観点からも気になるのですが、これは本来、宇宙科学研究所を強化すべきなのが、手が回らなくて、名古屋大学を中心にボトムアップ的になっていったのか、それとも、今後、宇宙開発の衛星は全てこういう形で、共同利用・共同研究拠点がどちらか、かなりデータサイエンスセンターとしてサポートしていくような展開になっていくのか、どういう展開が見込めるでしょうか。
【名古屋大学宇宙地球環境研究所(草野)】  恐らく、それはケース・バイ・ケースだと思っています。「あらせ」の場合には、先ほど申し上げましたように、地上観測との連携というのが極めて重要で、衛星が1個だけあっても、恐らく何も分からないわけです。地上観測のいろんなツール、経験、成果など、そういうものに関しては、大学が持っているわけです。だから、我々大学との連携というのは非常に重要になります。
 さらに、「ひので」に関しても、「ひので」は太陽観測ですけれども、もはや太陽観測は太陽だけの問題ではなくて、地球環境に対してどういう影響するかというのは、非常に重要な問題です。ですので、ISEEが中心となってサイエンスセンターを作り上げていることによって成果が出てくるというものです。
 そのため、単一的にどれが良いというのは単純ではなくて、プロジェクトを見て、何が最良なのかということは、コミュニティ全体の中で俯瞰(ふかん)しながら考えていく必要があるのではないかと思います。
【稲永部会長】  まだ議論はあると思いますが、では、藤井委員。
【藤井臨時委員】  先ほどのトップダウン、ボトムアップの議論ですが、やはり誤解を解いた方がいいと思いますので。研究機関及び研究所は、基本的に学術会議のエンドースメント等で作られていますので、そういう意味からすると、非常に規模は違いますけれども、極めてボトムアップの機関だということを申し上げたいと思います。
 それから、先ほどのユーザーとの関係ですけれども、共同利用・共同研究拠点と大学共同利用機関のラインナップを明確に示して、全国のユーザーがどのような分野でも共同利用することができる、そういう環境を作るという観点も重要ですので、ガバナンスだけではないということを申し上げたいと思います。よろしくお願いします。
【稲永部会長】  それでは、八木委員。
【八木専門委員】  どうもありがとうございました。物性研究所の方の話を聞かせてもらう中で、少しお尋ねしたいことがございます。いわゆる研究という観点では、連携することが幅の広がりを作って、新たな共同研究等々、分野の創成等ができてくるというメリットは、すごくよく分かるのです。それに加えて、どちらかというと緩やかな結合という形で今やられていると思うのですけれども、共同利用の観点でいくと、現実に皆さん得意とするところが違う中で、相互に周りへのサービスを連携しながら、うまく運用されているのか、うまくいくのかというところと、もう1点は、人材育成って連携したときに大きくなってくると思うのですね。ここで書いてある交流の意味が知りたかったのですけれども、交流は、単に行き来するだけではなくて、大阪大学で拠点をやらせてもらっていた際一番大きかったのは、若手の人材が武者修行のように相手のところに何年間か行って、実際に学んで技術を身につけて帰ってくるということが頻繁に起きるようになってくる。それは相互の信頼関係ができてくることによってできると思うのですが、そういう観点で人材育成がうまく促進できる仕組みというのはどういう具合にやられているのか、の2点をお聞きしたい。
【東京大学物性研究所(森)】  どうもありがとうございます。先ほど、計算物質科学でスーパーコンピュータを3機関が持っているということを御説明いたしました。その中でPCoMSというのが人材育成コンソーシアムということで、おっしゃったように、若手研究者が物性研から金研の方に数か月あるいは数年行って、違う技術を学び、また帰ってくるという。人材が、違う場所に行って学び、戻ってきて融合するというのをやっております。それが1つの例で、非常に成果が上がっているというふうに聞いておりまして、そういうところをもう少し広げて、物性連携体にも広げていければ、というふうに思っておりまして、それに関しては相田委員にはいろいろお世話になっております。先ほど申しましたように、5研究施設、物性研、理研、分子研、化研、金研ということで、共同利用施設は大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点がございますが、物性研の場合は、北海道大学の講師の方が強磁場のところにNMRを立ち上げたいということで、北海道の方はNMRの専門家で、我々は強磁場を作ることができる。そうすると、強磁場NMRという新しいツールができる。そこで新しい研究が進むというので、そういう若手の方が数か月来られるというようなのをこの物性連携体の中で始めております。
 また、先ほど申し上げましたように、相田委員は広島大学の方でいろいろアドミニストレーションをやられているのですけれど、分子研の方に研究室がクロスラボみたいな形で数か月行かれて、分子研のところで研究される期間を設けるというようなところで分子研と広島大学や、神戸大学とは検討中だというふうに聞いておりますが、そういうところで大学と共同利用・共同研究拠点みたいなところが人材交流をして、新しい分野、あるいは人材育成をするということもございます。
 3つ目の例といたしましては、強磁場というのがございまして、先ほど申しましたように、我々はパルス強磁場なので一瞬、ミリセクだと長いぐらいの感じなのですけれど、また、定常磁場と言って、ずっと同じ磁場が続くようなところは金研がやっております。ですので、研究者がどこを使いたいかによって、パルスが使いたければ、物性研で強いパルスの強磁場、もう少し安定的にかつ低い磁場で物性研究がしたい、というときには金研を使うということで、強磁場コラボラトリーというのは、金研、物性研、大阪大学の強磁場センターで結ばれておりまして、そこでやっております。このように、いろんな仕組みを考えておりまして、先ほどおっしゃられたように、そういった仕組みがもう少しいろんなところで進むような形にすれば良いのではないか、というふうに思い、検討しているところでございます。どうもありがとうございます。
【八木専門委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  それでは、時間がないので、勝委員で最後にしたいと思います。
【勝委員】  本日のお三方の御意見ですけれども、図らずも同じ御意見であったなというふうに思っておりまして、森委員が言われたように、卓越性と多様性というのが共同利用・共同研究拠点と大学共同利用機関の連携において生み出される、それが最大のメリットであって、ただ、組織としての連携については皆さん否定的な考え方であったというふうに思うのですが、これは最初の御質問のネットワークとも関わるのですけれども、意見の整理のまとめのところで、参考資料3を見ますと「ネットワークを形成」としか書いてないので、共同研究という形でしか捉えてない方もいれば、ガバナンスの意味からのネットワークということ。先ほどおっしゃられていた通りだと思うのですが、ただ、資料1の2ページの「必要ではない」と「どちらともいえない」というところの中身を見ると、まさに本日お三方がおっしゃったことが如実に表れていると思いますので、「ネットワーク」という言葉自体の捉え方が違っていたのでこういう結果になったのだと思うのですけれども、まとめ方としては、やはりそういった形でまとめた方が、全体の総意というか、実際のファクトとして、我々は受け取れるのではないかと思いますので、一言、コメントだけさせていただきました。
【稲永部会長】  よろしくお願いいたします。最後と申し上げましたが、企業所属の天羽委員に、是非。これで最後としたいと思います。
【天羽臨時委員】  とんちんかんな質問かもしれないのですが、物性研の方に、森先生にお聞きしたいことがございます。研究項目と概要ということで、例えば高効率の内燃機関とか高効率の太陽電池ってあるのですが、これは太陽光電池のことだと私は思っているのですけど、こういうようなプログラムを何年か続けていらっしゃると思うのですが、10年前は確かに高効率な太陽光電池というのはいろいろな産業・企業さんと研究があったのですけど、現在では、太陽光パネルを造っているところは、日本はどこもないと思います。全ての産業、日本の企業さんは全部、手を引いたわけです。そういう状態でも、基本的に今後も、もっと高効率な、変換効率はどの辺ぐらいだというようなことを求めてやっていらっしゃるのか。質問は、産業が変わってきていることに対して、どういうふうなリンケージを持って研究を続けておられるのかということを、お聞きしたかったのですけど。
【東京大学物性研究所(森)】  これは2017年のマスタープランのところで、世界の標準で、宇宙に行くようなシリコンの太陽電池に関しては、割と標準的なところをまだ世界の中で決めているというふうに聞いておりますけれど、我々のところは、太陽電池のシリコンのところの、一番、宇宙に行くところの基礎研究みたいなところをやっているチームがあって、そういうところを書いたのですが、おっしゃるように、これからは、どういうニーズが社会にあるかということも含めて、基礎研究で、我々は例えばSPring-8のところでラインを持っておりますけれど、そのときに、こういうものを測ってくれというふうに、電池や何かのオペランド測定とか、いろんなものが持ち込まれてくるのです。そういうところのボトムアップの中でこういうような課題が出てくるというところもございまして、そういう意味では、世の中が少しずつ変わってきたときには、持ち込まれる材料あるいはシステムというのは変わっておりますので、これをトップダウンでやるのではなくて、ボトムアップとしてこういう計測を一緒にやりましょうということで進められているものが結構あります。
 あとは、それと計算科学を結び付けるとか、そういう意味でボトムアップのニーズに対して対応している基礎研究として、こういうものがあるということでございます。だから、そういう意味では、おっしゃるように時代とともに変わっていって、持ち込まれる材料・システムも変わっていって、測るものも少しずつ変わっていって、今度、マスタープラン2020で出すのですけれど、そのときにまた考えてやっていこうということで、少なくとも我々がやっているのは、そういうところの基礎研究ということでございます。おっしゃるように、世の中の産業とどういうふうに、実社会の実装と結び付けていくかということに関してはこれからの課題でして、そういうことに関しましては、どういう仕組みで考えていくのがいいのかということに関しても、考えていく。
 また、元素戦略に関しては、いろんなところが入っていて元素戦略のプロジェクトというのは動いておりまして、その中の4項目に関してはそれぞれが多分入っているので、そういう意味での連携というのは実際にあるというふうに理解しております。
【天羽臨時委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  まだあるかと思うのですが、後半もございます。協議会から御越しいただいた3人の先生方、本当にありがとうございました。引き続き、どうぞよろしく御協力のほど、お願いいたします。
 続いて、「意見の整理」における主な論点について、これまでの議論・ヒアリング等を踏まえた検討の方向性について、議論を行いたいと思います。まずは、事務局から資料の説明をお願いします。
【錦学術機関課学術研究調整官】  資料5をお願いいたします。資料5は、9月21日にこの部会でおまとめいただいた意見の整理、本日は参考資料1としてその意見の整理を付けておりますので適宜御参照いただければと思いますけれども、この「意見の整理」の中の主な論点6つにつきまして、これまでの御議論ですとか、あと、前回、前々回、19の大学共同利用機関の所長に御越しいただいて御意見を伺いましたが、こういったものを踏まえまして、事務局として具体案を示させていただいたものでございます。
 早速ですけれども、1ページ目の(1)大学共同利用機関における質の向上のマル4、大学共同利用機関の構成の在り方という部分ですが、四角囲みの中におさらいとして、「意見の整理」でどういったことが書いてあったのかということを書いてございます。1つ目の丸ですけれども、大学共同利用機関として備えるべき要件を明らかにした上で、各機関が、大学における学術研究の発展に資するものとなっているか等を定期的に検証する体制を整備し、この検証結果に基づき、再編・統合を含め、当該機関の在り方を検討することが必要、ということを書いてございます。
 これに関連しまして、下の論点1のところですけれども、まず、大学共同利用機関として備えるべき要件はどのようなものかということで、1つ目の丸、これはこの要件を誰がどう定めるのかということでございまして、この要件につきましては、文部科学大臣が、科学技術・学術審議会の意見を聴いて決定する。ここで定まった要件につきましては、大学共同利用機関の定期的な検証を行う際の指針として活用してはどうかということでございます。
 2つ目の丸、この要件につきまして、主に以下の事項が考えられるのではないかということで、幾つか書いてございます。1つ目のポツ、各研究分野のコミュニティ全体の意見を取り入れて運営されていること、2つ目、大学・コミュニティ全体を先導して、最先端の研究を行う中核的研究拠点であること、3つ目、国際的な研究拠点であること、4つ目、個々の大学では持ち得ないような大型装置等を有して、それらを全国的な視点に立って共同利用・共同研究に提供していること、次のポツ、時代の要請等に対応して、新たな学問分野の創出等に取り組んでいること、最後ですけれども、優れた研究環境を持っておりますので、これを生かして若手研究者の育成に貢献していること等というふうにしておりまして、これらを踏まえて、今後、審議会で検討をしていってはどうかという御提案でございます。
 次、論点2、大学共同利用機関について、「意見の整理」では括弧書きで書いてございますが、「定期的に検証する体制を整備し、この検証結果に基づき、再編・統合を含め、当該大学共同利用機関の在り方を検討すること」とありましたけれども、「定期的」というのはどの程度の期間が適切かということですとか、検証をする体制はどのような体制が望ましいか、という部分が論点かと思っております。
 まず、1つ目の丸、検証の周期ですけれども、これは、各機関からのヒアリング等を踏まえますと、長期的な視点での検証を可能とする観点から、12年間を1周期。これは6年間の中期目標期間の2倍ということですけれども、2期分ということで、これを1周期としてはどうかと。検証の時期、行うタイミングにつきましては、検証結果を次の中期目標に反映させる観点から、2期目の中期目標期間の4年目終了後に実施してはどうかということでございます。
 次の丸、検証の体制ですけれども、この検証結果は、再編・統合ということになってまいりますと、国の政策ですので、この検討結果を国の政策に反映することから、検証の体制については科学技術・学術審議会に設けてはどうかと。そこでは各機関の研究成果や将来性等を客観的に評価できる研究者等で構成することとしてはどうかということでございます。
 次の丸、具体的な検証のプロセスについては以下の通りとしてはどうかということで、3つ書いてございます。まず1つ目ですけれども、審議会におきまして、検証の観点、参照すべき指標等を示したガイドラインを策定する。2つ目、このガイドラインを受けまして、各機関・各法人が海外の研究機関に属する研究者からの意見を求めつつ、自己検証を実施するということ。最後ですけれども、マル3、審議会におきまして、この自己検証の結果を基に、各分野に関係する部会・委員会等における議論にも留意しつつ、検証を実施してはどうかと。その際ですけれども、法人評価の関係で大学改革支援・学位授与機構が各大学共同利用機関の現況分析というのをやっておりますので、この結果も、使えるものについては適宜活用してはどうかということでございます。
 次、3ページをお願いいたします。(2)の人材育成機能の強化のところでございまして、四角囲みの「意見の整理」で何が書いてあったかということですけれども、主に総研大のことについて書いてございました。読み上げますけれども、総研大につきましては、下線部のところ、「大学共同利用機関が、その優れた研究環境を活用して主体的に当該分野の後継者を育成するという特色を踏まえた上で、どのような人材を育成するかを明確化し、他大学における大学院教育との差別化を図り、自らの強みを社会に向けて分かりやすく発信するとともに、伸ばしていくことが必要」と。「人材育成の目的を、「他の大学では体系的に実施することが困難な研究領域や学問分野における研究者人材の育成」とした上で、設置する学位プログラムを当該領域・分野に対応するものとし、かつ、個々の学生のニーズにきめ細かく対応し得るものとすることが考えられる」と。
 次の丸、こういった改革を組織的に進めていくためには、大学共同利用機関法人のより一層の協力が必要であり、各法人は総研大の運営に積極的に協力することが必要といったことが、書かれていたわけでございます。
 これに関連しまして、論点3として、総研大における大学院教育に係る課題に対してどのように取り組むことが必要か、ということでございます。
 まず、一つ目の丸の前半で課題を書いてございまして、総研大の知名度の低さや、これは一部の所長が言われていましたけれども、一部の専攻の入学者数の減少に伴い、優秀な学生を継続して獲得することが困難となっていること、連携大学院制度などの進展により総研大の優位性が低下していること、こういった課題を踏まえまして、4法人と協力して、広報活動の強化等を通じて知名度の向上を図るとともに、海外の大学との教育交流の強化や留学生の積極的な受入れなどの取組を推進することが必要と。
 次の丸、総研大における人材育成の目的を「他の大学では体系的に実施することが困難な研究領域や学問分野における研究者人材の育成」と整理した上で、総研大がカバーすべき領域・分野について改めて検討することが必要と。こういった中で、国語研究所ですとか地球環境学研究研は、今、総合研究大学院大学に参画しておりませんので、このあたりについてはどうするかということも、併せて検討することが必要ではないかというふうに考えてございます。
 4ページをお願いします。(3)の関係する他の研究機関との連携。本日は共同利用・共同研究拠点協議会の会長に意見を述べていただきましたけれども、その部分でございます。大学の共同利用・共同研究拠点との連携ということで、四角囲みの「意見の整理」の1つ目の丸ですけれども、「今後、我が国においては、厳しい財政状況の下、限られた人員・予算の中で、より一層効率的かつ効果的に研究を推進することが求められる。このため、大学共同利用機関が中心となって、関連する研究分野の共同利用・共同研究拠点その他の研究機関とネットワークを形成し、それぞれの役割を明らかにした上で、協力して研究を推進するための体制を構築することが必要ではないか。」と。
 次の丸、「上記のネットワークを活用し、恒常的に、当該研究分野における今後の研究推進体制の在り方について検討することも重要ではないか。」というふうにしております。
 次の丸、このネットワークで議論をした結果として、下線部のところですけれども、「共同利用・共同研究拠点から大学共同利用機関への移行が適当であると考えられる場合」、次の下線部ですけれども、その逆に、「大学共同利用機関から共同利用・共同研究拠点への移行が適当であると考えられる場合において、移行を容易にするため、国においては、移行に向けた考え方やプロセスを整理し、明らかにすることが必要ではないか」といったことが、「意見の整理」に書かれてあったわけでございます。
 これに関連しまして、論点4でございます。大学共同利用機関が中心となってネットワークを形成することについて、どのように推進するのかということでございまして、一つ目の丸の下から3行目ですけれども、「国においては、ネットワーク形成のための取組やネットワークの下で行うプロジェクトに対して重点的な支援を行ってはどうか。」といった御提案をしてございます。
 次、論点5ですけれども、共同利用・共同研究拠点から機関への移行、逆に機関から共同利用・共同研究拠点への移行に関して、そのプロセスについてどのように考えるかということでございます。5ページですけれども、これは、先ほど会長の方から実際にはなかなか難しいというお話がありましたが、一応、念のためにプロセスを整理しているということでございまして、まず、「共同利用・共同研究拠点から機関への移行の場合」ということでございます。3つありまして、マル1ですけれども、国の方から定期的に国立大学の全共同利用・共同研究拠点に対して、大学共同利用機関への移行に係る意向を調査する。マル2、大学共同利用機関への移行の意向を示した共同利用・共同研究拠点については、審議会において審査をすると。その観点を4つ挙げておりまして、1つ目、先ほど御覧いただいた、「大学共同利用機関として備えるべき要件」を満たしているか。2つ目、当該分野の発展のために、その大学共同利用機関の設立が必要であるか。3つ目、コミュニティから大学共同利用機関への移行の要望があるか。4つ目、大学本部の合意が得られているか。こういったことを審査いただいて、マル3としまして、国はこの結果を踏まえて必要な措置を講じるということを考えております。
 次、これは逆ですけれども、「機関から共同利用・共同研究拠点への移行の場合」でございまして、まず、マル1、国立大学の方から、大学共同利用機関の共同利用・共同研究拠点への移行に係る意向が示された場合、科学技術・学術審議会におきまして審査をすると。その観点としまして、1つ目、当該大学が有する特色や強みとの相乗効果により、研究の進展が期待できるか。2つ目、国の学術政策上、大学共同利用機関として存続させる必要はないか。3つ目、共同利用・共同研究拠点につきましては認定基準というものがありますので、それを満たしているかということ。4つ目、当該大学共同利用機関・コミュニティの合意があるか。こういったことを審査いただきまして、マル2ですけれども、国はこれを踏まえて必要な措置を講じるというのを、プロセスとして挙げております。
 次、6ページをお願いいたします。こちらは最後の論点ですけれども、(4)大学共同利用機関法人の枠組みでございます。「意見の整理」における記載の一つ目の丸ですけれども、第4期中期目標期間における法人の枠組みを検討しましょうということで、その視点としましては、各機関が、時代の変化に対応しながら、現下の厳しい財政状況においても、その機能を十分に発揮し、我が国の学術研究の発展に資することができるような体制の在り方について検討することが必要ということで、具体的には2つの案を御示ししていたところでございまして、まず一つ目の案が、マル1、4法人を1法人として統合というものでございます。現在の4法人を統合して、1つの法人を設立、当該法人が全ての機関を設置するというもの。マル2、分野ごとに複数の法人を構成ということで、これは幾つかパターンがありますけれども、現在の4法人を存続する又は分野ごとに2~3の法人に再編する、といったものでございます。
 これに関しまして、7ページですけれども、論点6、第4期中期目標期間における法人の枠組みについて、どのように考えるかということでの御提案でございまして、1つ目の丸、まず、4法人を1法人として統合することのメリットは確かにあるということで、そのメリットとしては、スケールメリットを生かした柔軟な資源配分や業務の効率化が図られると。こういったことが考えられるわけですけれども、一方で懸念もございまして、研究分野や研究目的等が多岐にわたる17の大学共同利用機関を1つの法人が適切にマネジメントできないことが懸念されるということでございます。一方で、業務の効率化というものを進める必要がございますので、「このため」としまして、現在の4法人を維持しつつ、4法人で構成する連合体を創設しまして、業務の効率化等を図ることとしてはどうか、というふうにしてございます。「更に」ということで、この連合体に先ほど御覧いただきました総研大を加えまして、大学院教育の充実を図ることとしてはどうかということでございます。
 次の丸、この連合体における業務を3つ書いてございます。まず1つ目は、業務の効率化に関連する部分ですが、4法人が共同で取り組むことで効率化が見込まれる業務といたしまして、これは飽くまで例示ですけれども、括弧書きで、広報、情報セキュリティなどを書かせていただいております。2つ目、これは研究の推進の面ですけれども、異分野融合による研究領域の拡大と新分野創成に向けた研究プロジェクトを実施する。あと、大学共同利用機関の国際化を促進するために、海外リエゾンオフィスの共同による設置・活用、外国人研究者への共同相談窓口の設置等を行ってはどうか。さらに、ポストドクターへの支援など、若手研究者の育成に取り組んではどうか。3つ目、これは大学院教育の関連ですけれども、総研大の大学院教育に関して、基盤機関である大学共同利用機関が有する海外ネットワークを用いて、国際共同学位プログラムを策定する、留学生のリクルートを行うなどといったことをやってはどうかということでございます。
 次の丸、連合体の管理・運営経費はどこから出すのかということですけれども、共通的な部分につきましては各法人が一定額を拠出するとともに、各事業に係る経費につきましては、当該事業への関与の度合いに応じて拠出することとしてはどうか、というふうにしてございます。
 最後の丸ですけれども、連合体における業務の実施状況、もしこれでということであれば、4期からこの連合体は発足するわけですが、4期以降の連合体の取組については、評価を行いまして、その結果に応じて、大学利用機関法人の枠組みについては改めて検討するものとしてはどうか、というふうに書いてございます。資料5につきましては、以上でございます。
【稲永部会長】  ありがとうございました。ただいま説明のありました検討の方向性について、議論を行いたいと思います。御意見のある方はお願いいたします。
【小長谷委員】  おまとめいただき、ありがとうございました。4ページにあります大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点等とのネットワークの件ですけれども、こちらで見ると機関が中心となってネットワークを形成する方向でまとめてくださっていて、先ほどのアンケートが逆向きに向いているところが気になりました。先ほど発言しようと思っていたことはこのことですので、お話ししたいと思います。
 組織体としては全く別で、日本学術会議の下に、地域研究に関する人々が集まる、小さな部会があります。その部会の中には、そのテーマに関する共同利用・共同研究拠点はほとんど皆さん参加されていて、拠点でなくても、研究所の所長さんが集まっていらっしゃいます。そこでの議論では、弱いところは皆共通です。産学連携ですとか、取り組まなければならないということは共通なのだけれども、それぞれの研究所が人を雇って、そういうことだけを専門にするようなことを動かそうと思っても相当大変なので、その弱いところのために束ねて行うといったまとまり方、つまり、ネットワークでも、全てのことをネットワークするのではなくて、最も弱く、そして最も今日的なところを一緒にやっていこうという方向で議論をして、まとめております。その際に、中心がどうかということを自分たちの中では押し付けないような形で議論をしているわけですけど、こういう形で決まった機関にまとめ役をお願いするという形で上から降ってきても、ボトムアップの方向性と、トップで、こういうところで決められた流れとがかみ合うということは可能ではないかというふうに思います。
【稲永部会長】  では、井本委員。
【井本臨時委員】  評価の期間は12年ということを提案されていると思うのですけれども、12年も経(た)つと、人はすっかり変わってしまい、評価とは何だった、ということになると思うので、やはり6年間と合わせるぐらいが妥当なのではないかという気がしました。
【稲永部会長】  では、観山委員、その次は永田委員。
【観山専門委員】  7ページの最後の、一旦は連合体という形が、私は好ましいのではないかと思いますが、連合体というのはどういう規定で、つまり、機関間の協定でするのか、それとも、今はそれぞれの機関は、法律に書かれていますが、同じように法律に規定するのかなど、それによって仕組みは割と変わると思います。特に今の大学共同利用機関法人と総研大の関係も、それぞれ別の法人になっているので難しい問題であると思うのですが、連合体の中に総研大が入るというのはどういう形になるのかというのが、聞きたいところであるのですけれども。
【稲永部会長】  では、事務局の方、お願いします。
【錦学術機関課学術研究調整官】  必ずしもこの部分、どういった組織にするか、決まっているわけではありませんけれども、事実上の協定というもので連合体を作っていくということもあると思いますし、あとは、一般社団法人という枠組みがありますので、その中にそれぞれが社員として入って、定款を1つ掲げて、その下に業務を進めていくというようなことも考えられるかなと思います。
【稲永部会長】  今後、そういうことも議論をしていくとのことですね。では、永田委員。。
【永田臨時委員】  研究強化のためにいかにマネジメント・ガバナンスを考えるかということが主体だと思っていて、そう考えた際に、先ほどボトムアップ・トップダウンというところでわざと質問をしたわけですけれども、藤井先生が途中でおっしゃったように、研究のニーズから上がっていく、ボトムアップは当たり前だと思います。問題は、それを決定できるか否かにあるわけです。それがトップダウンというふうに、どれだけ力が発揮できるか。現在の大学共同利用機関のいろんなアイデアが上がってきた際、こうするのだという最終決定を下せるだけの力がトップにあるかどうかが一番の問題だと思うのです。その上で、例えば連合体を作ろうが、何をしようが、結局、一番の問題は研究を進めるため、強化をするため、改革のための全てであり、最終決定を下せるかどうかである。なぜかというと、先ほど御示しされた資料の中で、大学が持っている共同利用・共同研究拠点の方は、随分と改組・組織再編をやっている。それは何を示すかというと、ボトムからのニーズをすっぱりと大学が判断をし、人や予算を付けて実行されているということです。連合体なり、あるいは今の4大学共同利用機関法人と総研大の1法人でそれができるかどうかを危惧するわけです。そこで、例えば、12年は放っておけないですよね。僕は、12年というのは難しい問題だと思います。
 それから、観山先生から出たばかりですけれども、7ページを読んでみて驚くのは、「連合体においては、例えば、以下のような業務を行うこと」以下の事項について、なぜまだやれてないのか、連合体を組まないとできないぐらい脆弱(ぜいじゃく)なのかというのが、心配なわけです。お互いの利便性を考えて、例えば、海外ネットワークは共同で利用するなどはあって当然でしょうし、事務的な共同調達とか、そういった類も当然だと思います。連合体になれば、できるのかが僕は疑問です。連合体というのを相当厳しく定義しないと、今と同様に12年間やることになるのではないか。その中で、観山先生も御指摘でしたけれども、総研大をどういう位置付けにするのかが明確でない限り、総研大は要らないという極端な議論になりかねないと思います。総研大は、大学院大学として他にない価値を創出していくということであればいいのですけど、そのために4大学共同利用機関法人が協力しましょう、と今更書いてあること自体、大変に4法人の方の認識を疑いたいと思っております。
【稲永部会長】  八木委員。
【八木専門委員】  私もだいたい同じような意見を持っておりますが、違う視点なのですけれども、5ページに共同利用・共同研究拠点と大学共同利用機関の相互移行のプロセスが書いてありますが、起きてくる問題として、予算の問題もありますが学生の問題というのがあります。それから、現実の問題で言うと、通常、共同利用・共同研究拠点の各研究室は、研究科の方の協力講座になっていて、移行するという話になると各研究科の改組の問題も、課題としてあるという認識はあった方がいいのではないかと思います。
【稲永部会長】  では、小林委員、最後にお願いします。
【小林臨時委員】  7ページの論点6について、前回までヒアリングをいろいろと伺いましたけれども、そもそも、4法人の方で現状に対する何か問題点の認識があるのか、ないのか、よく分からなかりませんでした。実際に課題となっている、運営経費の高騰や、どこの施設も40年ほど経(た)ち激しくなる老朽化をどのように改善するのか、ということは、本来であればこのような議論するまでもなく、大学共同利用機関法人の方から何か議論があってしかるべきだったのではと思うのです。しかし、そう言ったこともなく、それぞれの機関の予算内では対応が難しいだろうからということで、議論が始まってきたのだろうと思います。ところが、ヒアリングを伺うと、ほとんどの研究機関が、今のままでいたいが、どうやって問題を解決するのかという答えは、残念ながら伺えなかったということです。ですから、本来であれば1法人というのも考えられるというところですが、事務局としては、ヒアリングの回答も踏まえて、恐らく、ぎりぎりの線で論点6というのをまとめられたのだろうと思います。そうであるならば、連合体というのがかなり強い権限を持って予算配分や人員配分をしていかなければ、今の問題は何も解決しないままで終わると思います。運営経費の高騰に対応できず稼働時間が短くなり、施設が老朽化していけば、国際的な競争力も失われていきます。本来であれば、連合体を作るまでもなく、機構長連絡会議で全て解決されるべき問題だと思うのです。しかし、それができないので連合体を作るのであれば、それは、機構長がただ集まるという連合体ではなくて、強い権限を持った連合体でないと問題は進まないというふうに思います。
【稲永部会長】  まだ御意見があると思いますが、次に大事な議論も控えております。このことに関する議論は今後も続きますので、その節はよろしくお願いします。ありがとうございました。
 本日頂いた御意見や、これまでの議論を踏まえて、次回は大学共同利用機関の在り方に関する取りまとめの議論を行いたいと思います。本日の御意見等は、その中に反映させていければと思っております。
 続いて、別件ですが、共同利用・共同研究拠点の中間評価について、事務局からお願いします。
【高見澤学術機関課課長補佐】  資料6と参考資料2に基づいて、御説明させていただきたいと思います。
 まず、御報告ですけれども、参考資料2を御覧いただきたいと思います。1年ほどかけまして、この部会の下に設けられています共同利用・共同研究拠点に関する作業部会におきまして、中間評価を実施いただきました。また、作業部会の下に各専門の委員会を設けまして、書面評価、合わせてヒアリング等も実施させていただき、各拠点の施設として優れている活動というのを確認できました。一方で、共同利用・共同研究といった機能面での状況というところで適切に機能を果たしているのかどうかというところは、併せて慎重に確認をさせていただいたところであります。これまでの経緯等については、作業部会の稲永主査の談話という形で10月下旬にホームページ等で公開させていただきまして、各大学にも通知しております。
 中間評価結果の概略ですけれども、3ページを御覧いただきたいと思います。まず、今回、中間評価を実施するに当たりまして、SからCまで、大体の目安を設けて、評価に臨んでいただきました。Sで全体の2割程度、Aで半分程度、B、Cで3割程度というところで、各専門委員会で評価をしていただいたのですが、左から2番目のセルのところにありますのが、全体の概略です。77拠点あるうち、S評価が11拠点、Aが45拠点、Bが21拠点ということで、御覧の通り、Sは全体の14%ということで、かなり厳しく見ていただいていますし、B評価のところも、27%ということですので、こちらも厳しく見ていただいたと思っております。
 具体的な各拠点の評価は4ページと5ページに掲載しておりますけれども、詳細は省かせていただきたいと思います。これらも含めて、ホームページに公表しているところでございます。
 本日、御審議、御意見を頂戴したいと思っている点についてまとめたものが、資料6であります。今回の中間評価を通しまして、実際に共同利用・共同研究として、コミュニティに対して貢献している、機能しているということについては、中間評価、期末評価を通じて定期的に検証していくということが必要でありますけれども、その評価の仕方という点についてはまだ改善の余地があるのではないかという意見を評価終了後に頂いております。それをまとめたものが、この論点メモでございます。
 まず、中間評価が終わった後、これが次回反映されるのが、基本的には期末評価、3年後と見込まれますので、先ほどのお話にもありましたように、人が入れ替わっていくということもございますし、共同利用・共同研究拠点制度の評価の改善については、今のうちにできるだけ課題事項を整理して次の期末評価に向けた準備を進めたいというのが、今回御示しした趣旨でございます。ここで評価の改善に向けた課題を抽出して、それを今後整理していきたいと思っておりますし、あわせて、今回、評価を受けた方、共同利用・共同研究拠点側の御意見というのもあろうかと思いますので、評価者、被評価者、双方からの意見も必要に応じて聴取しながら、改善事項を整理していければなというふうに思っております。
 2ポツのところにありますのが、実際、中間評価を終えて、現時点で考えられる課題として挙げているもので、大きく3点ほどに整理しております。
 まず、評価プロセスの改善ということですけれども、例えば同じ理工系であっても、その中の専門分野によって論文の重みですとか分野の評価の仕方というのが若干違っているというところもありますので、それをあらかじめ把握しておく必要があるのではないかといったような御意見、分野の特性に応じた、よりきめ細やかな評価ができるようにしていくべきではないかといったようなことや、専門委員会・作業部会の中での最終的な調整の仕方、これは評価コストと表裏一体の話で、丁寧にやればやるだけコストがかかるというところもございますので、どこへプロセスを持っていくのかというのは、今後検討が必要かと思います。また、並行して、中間評価の後、拠点の認定や別途、特色拠点などの評価制度もございますので、評価制度の良い点、悪い点も含めて連携を図り、改善をしていくという観点も必要であるというふうに考えております。
 また、(2)の評価報告書の改善というところですけれども、非常に分厚い調査書を各拠点から提出いただきました。データも含めて大体50ページから100ページぐらいの調書を御提出頂いて評価をしたところですが、評価負担の点は課題であるというふうに思います。評価の趣旨に照らして必要最小限の資料・データに絞り込んでいくということも今後必要になると思います。また、記載事項が膨大になったために定義が不明確になっていくという問題もあろうかと思います。その辺りは調書の上でより明確に示していくということが必要かと考えております。
 また、(3)の評価区分の設定についてですけれども、今回、大まかな目安を設けて評価をさせていただいたところですが、相対的な評価をどの程度の目安で設けるのがよいのかといった御意見、あるいは、評価区分を今回は4区分で行いましたけれども、4区分のままがいいのかどうか、といった意見が、今後の改善としては出されております。
 2ページ、3ページ目は、今の検討課題のベースになっております、各作業部会の先生から出された主な意見でございます。かいつまんで御紹介したいと思いますけれども、まず、2ページの一番上の評価の観点についてというところですが、私ども、共同利用・共同研究拠点の機能の評価というところが重要であるというふうな共通認識は持っていたと思っているところでありますけれども、ただ、それを明確に十分に伝えていくという努力は必要ではないかという御意見がございました。
 それから、評価報告書の記載について、学内学外利用ですとか、そういった、各拠点が考えている捉え方と評価の上で捉えているところが若干ずれているケースもあったのではないかといった御意見。また、外国人研究者というのをどういう定義でもって評価書に書いていただくのかといったような点。それから、そもそもの共同利用・共同研究拠点の機能は、公募型の課題の採択、共同研究の実施といったところが基本ですけれども、それ以外の点も含めて評価の対象になっていることがございますので、拠点側にも不明確になりますし、評価で誤解を招くようなことがあってはならないのではないかといった御意見がございました。それから、今後の課題ですと、共同研究に参加する際に、拠点が、どういった支援の基準を持って、どういう仕組みで共同利用を実施しているのかといった点なども、今後は必要になってくるのではないか、といったような御指摘がございました。また、3ページの上のところになりますが、記載要領等が非常に分厚いということが問題の1つとしてはあるのですけれども、もう1つの観点として、1つの研究施設の中に複数の拠点があるというケースがございまして、施設のデータと拠点のデータというのが深く読み込まないと理解しにくく、評価の際にもなかなか大変であったため、改善が必要ではないか、という御意見がございました。
 それから、評価区分についてですけれども、今回は4つの区分で行ったのですが、進捗状況の評価ということであれば、例えば、5つ、6つという形で評価の区分を設けることで、よりきめ細やかな評価ができるのではないかというような御意見。あるいは、評価区分のS、A、BとCの割合を2対5対3ということで評価を実施いたしましたけれども、実施された先生方の中には、苦渋の評価といいますか、厳しいジャッジをしなければいけなかったということで、この区分の厳しさに対する御意見もございました。また、期末評価での観点に、今回と同じ厳しさでいくのかどうかというのもありますので、その点は事前にきちんと議論をして頂きたいという御意見がございます。
 評価プロセスのところですけれども、分野の特性について、あらかじめ共有した上で評価をする。あるいは、個別に評価を付す前に、ディスカッションをした上で個別に評点を付すような方式。あるいは、一覧性の高い資料を準備していただいて、比較可能な状態というのを設けたらどうかと。あるいは、最終的な評価を決める際の調整の仕組みというのを考えられないだろうかといった、プロセスについても御意見がございました。
 これらは評価の過程でもって出てきたものでございますので、この際お気付きの点や、今後、期末評価に向けて改善事項等ございましたら、お時間の範囲で御意見を頂戴できればと思います。以上です。
【稲永部会長】  時間が押しておりますが、どうしてもという点がございましたら手短にお願いします。
【観山専門委員】  今回、各クラスの件数の目安を決められたというのは非常に良いことだと思いますが、結果、相対評価になって、評価をする際に、大規模な拠点と10人ほどの小規模のところをどう相対評価するのか全く分からなかったです。次回は、何を視点として評価するのかということを事前に公表しておかなければ、結局、Sに選ばれたのは、大大学の、割と古く、由緒正しい研究所ばかりになっているので、研究者の方から少し伺いましたけれど、少し不満があったような意見もありました。
【稲永部会長】  今後、評価委員会で議論をして、さらに、評価される拠点側の御意見も十分に伺って、良いものにしていければと思います。どうぞ。
【瀧澤臨時委員】  私は部外者ですので分からないのですが、先ほどの大学共同利用機関法人の評価でも思ったのですけれども、評価というとどうしても、過去にやったこと、過去に成果が出たことが中心になってしまう。こちら側としては次に伸ばしたいところを高評価にした方が良いと思うので、萌芽的な動きとか、まだ結果につながってはいないけれども、内部の人たちが汗をかいて新しいプロジェクトを立ち上げているといったような、ところは意外と見逃しがちだと思うのですね。評価をするのはとても難しいのだけれども、次の時代に向けては非常に重要なポイントで、記者であれば、いろんな情報を集めて、匂いをかいで、匂いのかぎ分けみたいなところだと思いあす。学術界であれば、恐らくその分野に精通された俯瞰(ふかん)的な見方ができる専門家なのかもしれません。そういった、明文化されない点での評価というのは意外と大事なのだけれども、別に答えがあるわけではないので、評価きちんとするのは難しいと思います。
【稲永部会長】  大変大事な点だと思いますが、具体的にどうやっていくかというのは、今後議論をしていきたいと思います。それでは、今後のスケジュールについて、事務局から説明をお願いします。
【錦学術機関課学術研究調整官】  資料7を御覧ください。次回、第101回、11月30日、金曜日、15時から17時でございます。議題としましては、大学共同利用機関の今後の在り方ということで、取りまとめの議論を行っていただければというふうに考えております。場所は、未定ですけれども、文部科学省内の会議室ということを予定しております。以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。それでは、本日の議事は終了いたします。

―― 了 ――


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