研究環境基盤部会(第98回) 議事録

1.日時

平成30年10月11日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 大学共同利用機関の今後の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 稲永忍部会長、井本敬二委員、小長谷有紀委員、小林良彰委員、佐藤直樹委員、橘・フクシマ・咲江委員、藤井良一委員、松岡彩子委員、観山正見委員、八木康史委員、山内正則委員、横山広美委員、龍有二委員

文部科学省

 磯谷研究振興局長、千原大臣官房審議官(研究振興局担当)、西井学術機関課長、錦学術研究調整官、早田学術機関課課長補佐、高見沢
学術機関課課長補佐、吉居学術機関課連携推進専門官、その他関係者 
 

5.議事録

【稲永部会長】  皆さん、おはようございます。ただいまより科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会(第98回)を開催いたします。
 委員の先生方におかれましては、御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 まずは、事務局から、委員の出欠、配付資料の確認をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  本日は、松本部会長代理、勝委員、天羽委員、伊藤委員、瀧澤委員、永田委員、相田委員、森委員が御欠席です。
 配付資料の確認をさせていただきます。資料につきましては、議事次第に記載のとおり、資料1から資料7、そして机上配付資料として大学共同利用関係資料のこの緑色の紙ファイルを配付しております。もし不足等がございましたら事務局までお申し付けください。
【稲永部会長】  よろしいでしょうか。資料はございますか。 本日の基盤部会では、前回に引き続き、大学共同利用機関の今後の在り方について審議したいと思います。前回の基盤部会では、これまでの議論・ヒアリング等を踏まえて、大学共同利用機関の今後の在り方に関する意見の整理を行いました。今後は、この「意見の整理」における各論点について引き続き議論を行ってまいりたいと思います。
 そこで、本日と次回に分けて、19の大学共同利用機関等からそれぞれお話を伺いたいと思います。
 まずは、事務局から資料の説明をお願いします。
【錦学術研究調整官】  前回、8月31日に御議論いただきまして、9月21日付で、資料1にありますように、第4期中期目標期間における大学共同利用機関の在り方に関する意見の整理、これをおまとめいただいたところでございます。
 本日は、この意見の整理の主な論点について各機関から御意見を聞くということで、事前に事務局から質問項目を各機関にお示ししてございます。それが資料2でございます。それについて御説明申し上げます。資料1と資料2を併せて御覧いただければと思います。
 まず、資料1の5ページの下から2つ目の丸のところです。大学共同利用機関の構成の在り方についての論点のところですけれども、下から2つ目の丸で、国においては、大学共同利用機関として備えるべき要件を明らかにした上で、大学共同利用機関が大学における学術研究の発展に資するものとなっているか等を定期的に検証する体制を整備し、この検証結果に基づき、再編・統合を含め、当該大学共同利用機関の在り方を検討することが必要としております。
 資料2に戻っていただきまして、質問項目としましては(1)のところですけれども、まず「大学共同利用機関として備えるべき要件」とはどのような要件と考えるか。2つ目のポツですけれども、検証すると言っておりますけれども、このことについてどのように考えるか。また、定期的に検証と言っておりますけれども、その「定期的」とはどの程度の期間が適切と考えるか。更に「検証する体制」はどのような体制が望ましいと考えるか。
 次、資料1の6ページ、冒頭に(2)人材育成機能の強化としておりまして、具体的には、総合研究大学院大学の今後の在り方について示したところでございます。
 これにつきましては、資料2の(2)のところですけれども、総研大における大学院教育に関して、どのような課題を認識し、その課題に対してどのように取り組んでいるのか。
 次、資料1の7ページをお願いします。中ほどに(3)関係する他の研究機関との連携として、大学の共同利用・共同研究拠点との連携というふうにございます。これにつきましては、一番下の丸の下から3行目のところですけれども、大学共同利用機関が中心となって、関連する研究分野の共同利用・共同研究拠点等とネットワークを形成し、それぞれの役割を明らかにした上で、協力して研究を推進するための体制を構築することが必要というふうにしてございます。1つ丸を飛ばしまして2つ目の丸のアンダーラインですけれども、共同利用・共同研究拠点から大学共同利用機関への移行が適当であると考えられる場合や、大学共同利用機関から共同利用・共同研究拠点への移行が適当であると考えられる場合において、移行を容易にするため、国においては、移行に向けた考え方やプロセスを整理し、明らかにすることが必要というふうに言っております。
 これに関連して資料2の(3)のところですけれども、1つ目のポツ、大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点の違いについて、どのように認識しているか。2つ目のポツ、「大学共同利用機関が中心となって、共同利用・共同研究拠点その他の研究機関とネットワークを形成」することについてどう考えるか。これを形成する際の留意すベき点は何か。次のポツ、「共同利用・共同研究拠点から大学共同利用機関への移行」、そして逆に「大学共同利用機関から共同利用・共同研究拠点への移行」について、どのように考えるか。また、移行する際のプロセス、留意すべき点についてどのように考えるかを聞いてございます。
 次、資料1の8ページにございます、丸2のイノベーション創出や地方創生、これについても論点として掲げてございまして、資料2の(3)丸2のところですけれども、産業界や地域との連携について、どのように取り組んでいるのかを各大学共同利用機関に聞いてございます。
 次、最後ですけれども、(4)大学共同利用機関法人の枠組みということで、資料1で言いますと9ページからのところですけれども、今の4大学共同利用機関法人の体制をどう考えるかということで、10ページへおめくりいただければと思いますけれども、第4期中期目標期間における体制の在り方として2つの案を掲げたところでございます。
 1つ目は、10ページの丸1のところですけれども、4大学共同利用機関法人を1大学共同利用機関法人として統合。現在の4大学共同利用機関法人を統合して1大学共同利用機関法人を設立し、当該法人が全ての大学共同利用機関を設置してはどうかという案でございます。
 次、2つ目の案ですけれども、11ページの上の方に丸2とございます。分野ごとに複数の大学共同利用機関法人を構成ということで、幾つかありますけれども、現在の4大学共同利用機関法人を存続する、又は分野ごとに2から3の大学共同利用機関法人に再編するといったものでございます。
 この丸2の場合の懸念される点として、11ページの下から3つ目の丸ですけれども、厳しい財政状況の下で、大規模プロジェクトをはじめとする共同利用・共同研究の取組を安定的かつ継続的に推進していくために求められる運営の効率化について、上記丸1、先ほ度説明しました、一法人化の案の場合と比較して、進まないことなどが考えられるわけですけれども、これへの対応策として次の12ページに書いてございます。一番上のところですけれども、これらの点については、複数の大学共同利用機関法人で構成する連合体を創設することで対応することが考えられる。この連合体におきましては、各大学共同利用機関法人がこれまで各々で蓄積してきた技術・経験・ノウハウを持ち寄って、共同で取り組むことで効率化が見込まれる業務を行うこととしてはどうか、ということでございます。
 さらに、なお書きが次のパラグラフに書いてございますけれども、この連合体については、各大学共同利用機関法人が共同で取り組むことで効率化が見込まれる業務の実施のみならず、学術研究の動向に対応した柔軟な資源配分を可能とし、大学共同利用機関法人の枠を超えた新分野の創成などを図るため、一定の人員・予算を配分する権限を付与することも考えてはどうかというふうにしてございます。
 これに関連しまして、資料2の(4)ところですけれども、質問項目としましては、丸1の案、「4大学共同利用機関法人を1大学共同利用機関法人として統合」することについて、どのように考えるか。その利点、懸念される点をどのように考えるか。
 2つ目のポツ、2つ目の案ですけれども、「分野ごとに複数の大学共同利用機関法人を構成」することについてどのように考えるか。その利点、懸念される点をどのように考えるか。
 次のポツですけれども、この丸2の場合は、現在の4大学共同利用機関法人を存続する場合と、分野ごとに2から3の法人に再編する場合の2通りが考えられますけれども、その場合における大学共同利用機関の構成についてどう考えるか、その理由は何かでございます。
 4つ目のポツ、丸2、「分野ごとに複数の大学共同利用機関法人を構成」する際の懸念される点への対応策として、先ほど連合体を創設というふうに書きましたけれども、この連合体を創設し、「共同で取り組むことで効率化が見込まれる業務を行うこと」が考えられるが、この点についてどう考えるか。この連合体で取り組むべき業務、留意すべき点についてどのように考えるか。
 次のポツ、この連合体におきまして、共同で取り組むことで効率化が見込まれる業務のみならず、一定の人員・予算を配分する権限を付与することも考えられるというふうにしておりますけれども、このことについてどう考えるか。連合体において取り組むべき業務、留意すべき点についてどのように考えるかということを質問してございます。
 最後に、今申し上げた質問以外や論点以外にも何かあれば教えてくださいということを書いてございます。
 これが資料1、2の説明でございまして、次、資料3でございます。これは、本日と次回18日の御説明される方のリストでございます。本日11日は9機関から御出席をいただいてございまして、18日は10機関から合計19機関、全大学共同利用機関が御出席いただくということになってございます。
 次、資料4ですけれども、これは、各大学共同利用機関の御回答をそのまま並べたものでございます。各大学共同利用機関の概要と回答、という順で資料4として整理してございます。
 最後、資料5ですけれども、これは資料4の各機関からいただいた回答の内容を事務局で質問ごとに並べたものでございますので、適宜御参照いただければと思います。ヒアリングに関連した資料1から資料5の御説明は以上でございます。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 それでは、ヒアリングを始めたいと思います。国文学研究資料館から順番に各機関の概要と照会事項への回答を7分以内で御説明をお願いします。7分を経過するとベルが鳴りますので、御説明を終了していただき、次の説明者に交代してください。質問等は、全ての機関の発表が終わってから行いますので、よろしくお願いします。
 それでは、国文学研究資料館(以下、国文研)のキャンベル館長から順次御説明をお願いします。よろしくお願いします。
【国文学研究資料館(キャンベル)】  おはようございます。キャンベルでございます。よろしくお願いいたします。
 手元に資料が1枚あるかと思います。それを御覧いただきながら説明を進めていきたいと考えております。まず、当館のミッションと、現在進めようとしている事業を、概要ではありますけれども、説明をさせていただきたいと思います。
 国文学研究資料館は、半世紀近く前に設置されまして、初期の目標設定の中に、1,300年間にわたる日本の文芸資料、文学の文献資料というものを、所在を明らかにし、それを書誌調査と、それから画像による、当時は白黒写真ですけれども、収集をし、それを研究者ないしは学生に公開をするということが中心にありました。併せて研究情報、当時は国文学研究年鑑というものを毎年作っていたということです。半世紀の間に、当然この20年、特にこの直近の20年の間に情報技術が発展しまして、撮影をする資料は全て電子画像に切り替え、研究情報のみならず、国文学研究資料館が国内外の日本文学研究者のハブとして機能し、多様な共同研究を展開するというセンターに発展してまいりました。
 手元の資料には、収集をしている、アーカイブをしている資料の数字が出ておりますけれども、マイクロフィルムでは2万点近く、そして、本年がちょうど中間地点ですけれども、採用され、進めておりますネットワーク事業では30万タイトル近い画像収集、発信、それからタグ付けを中心とする新日本古典籍総合データベースを作っているところです。
 左側の方に共同研究の現在進めようとしている、今オンラインになっているものを上げておりますけれども、我々の人間文化研究機構と深く関わっているものが数点ございます。例えば、機構内連携共同研究というところで、異分野融合による総合書物学の構築というものがあり、国文研の中で自主的にやるべき現在の日本文学研究の動向を見据え、やるべきものがこの中に多く含まれておりまして、他分野の、例えば宗教学ですとか、西洋の古典学ですとか、あるいは理系の研究者たちとともに共同研究を行い、成果を出しております。
 研究開発系共同研究という項目がありますけれども、特にこの大型ネットワーク事業で進めている膨大な画像のタグ付けを行うに当たって、日本の文献資料の特質を捉え、イノベーションとしてキーワードの抽出、あるいは、機械翻刻、翻訳、そしてもう一つは、タギングの技術というものを国立情報学研究所でありますとか統計数理研究所情報室と共同で開発をしているところです。
 社会的なアウトリーチといいましょうか、右側の下の方に、古典を現代に活かす取組として、本日は2つ手短に御紹介をしますけれども、1つは、昨年度、文化庁の共同事業として走らせている「ないじぇる芸術共創ラボ」。翻訳家を招聘し、まだ肯定されていない、整備されていない膨大な文献資料の中から翻訳すべきテキストを共に選定をし、それを行っていく。それから、アーティスト・イン・レジデンスという制度を送り、現在5人の様々な分野のトップランナー、アーティスト、それから若手を招いて、研究者とともに新たな価値の創出に取り組んでおります。直近の事業としては、これは地域との連携ですけれども、多摩信用金庫と先月協定を結びまして、西東京の様々な学術機関あるいは財団、あるいは企業と連携をし、私たちの基盤事業を身近なところで共有をし、あるいは私たちのサポートをしていただくというようなプラットフォームを構築しております。
 アンケートに関しましては、時間が限られていますので1、2点のみに絞って申し上げたいと思いますけれども、1つは、連合体を設けることによって、これは確かにマネジメントの効率、様々な効率化を図るということが期待できるというふうに我々の立場からしても想像、想定はできます。一方では、現在、今御紹介しました、例えば研究開発系の共同研究ですとか、異分野融合による共同研究においては、既に国文学研究資料館から、あるいは人間文化研究機構を通して、他機関、他機構あるいは海外との接点を多く積極的に見いだしておりまして、その動向そのもの、学術的な動向そのものが自律的に現在の日本における人間文化研究の中から醸成され、決定される。それが、連合体が作られることによって、その決定の過程、あるいは合意の過程が若干見にくくなってはいけないという懸念もございます。時間になりましたので、終わりにします。ありがとうございました。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。それでは、次に国立国語研究所の田窪所長、発表をお願いします。
【国立国語研究所(田窪)】  国立国語研究所の田窪でございます。御手元に人間文化研究機構国立国語研究所(以下、国語研)と題された資料があると思います。まず、ここに書かれてない歴史的な部分を多少御説明申し上げます。国語研は、昭和23年、1948年12月の創立で、本年70周年を迎えます。9年前の10月1日に、それまでの独立行政法人から大学共同利用機関法人に移管して、来年で10年になります。
 その70年前の設立の趣旨は、国民の言語生活の充実とあって、特にそれまでの旧仮名遣い、旧漢字から新しい表記法に変えること、実際の生活に密着した話し言葉を研究することで、国民の言語生活の充実を図るということでした。これは第二の言文一致運動の支援と言えるかもしれません。
 話し言葉というか、実際に使われている言語生活の研究はそれまで行われていなかったわけで、そのために様々な方法論を生み出しています。社会言語学、言語地理学、統計サンプリングによる調査、実際の会話データの録音収集を行って、それに基づいた文法研究を世界に先駆けて1960年初頭に行っています。また、コンピュータで日本語が扱えるようにするために、漢字にJISコードを当てはめたのが国語研の所長だった林大博士です。常用漢字の倍以上の漢字にJISコードを当てはめたため、ワープロがこれにより可能になったと言えるでしょう。この頃から統計数理研究所との共同研究を行っていて、心理学や情報処理の研究者を所員に抱えて、文理融合的な傾向を持っていました。
 しかし、これらの仕事は一部を除いて日本語で書かれていたため、世界では余り知られていませんでした。2009年に大学共同利用機関法人に移管してからは、これまでの国語研の仕事を現代言語学の立場から見直すように方向性を変え、その前から行っていた日本語コーパスの大幅な充実を行いました。国語学から言語学的な方向への転換の萌芽は設立当初からあったとは言えますが、国語学から言語学的な移管に関して、これを大胆に行いました。また、データの扱いもオープンデータサイエンス的なやり方をとって、全ての研究をオープンデータにする方向にかじを切っています。
 現在国語研では、危機言語、日常音声言語、歴史コーパス、日本語教育のための基礎データコーパス構築が行われています。危機言語研究では、独立行政法人時代のアンケートによる調査に代わって、実際にフィールドワークによる実地調査を行って、それらの危機方言・危機言語の辞書、文法、談話データを作成し、日本で話されている全危機言語の記述を行うと同時に、その元データの恒久的保存を試みています。
 また、書き言葉の何百億文単位のコーパス作成と、その検索装置の開発及び実際の自然な話し言葉の収集、書き起こしを、プライバシーの問題をクリアしてコーパス化、公開を行っています。全部で300時間ぐらいになる予定です。このようなデータは世界にもありません。
 歴史コーパスでは、万葉故事から平安、鎌倉、室町、江戸、明治期に至るまでの様々なデータがデジタルデータとして検索できるようになってきつつあります。これは国文研の画像データにリンクが張られています。特に万葉集のデータは、オックスフォード大学との共同研究で、生成文法的な木構造情報による全文検索が可能で、係り結びや様々な構文の研究を飛躍的に高めると期待されています。
 また、2008年の移管以後、理論言語学、類型論の視点を入れて、日本語を世界の様々な言語と比較対照することで、その本質を探り出そうという試みがなされています。また、これらの成果を英文で公開することで、これまで世界に知られていなかった日本語の言語研究を知らせる役割も果たしております。その写真は、『HANDBOOK OF JAPANESE PHONETICS AND PHONOLOGY』の例が出ていますが、全12巻、既刊が7巻、もうじきあと2巻も出ると思います。
 国語研は、設立当初から文理融合的な構成を持っており、現在も文学博士3分の2、工学博士3分の1ぐらいの割合で、しかも工学博士の半分は文学部出身の工学博士です。このようなユニークな研究所は世界にはなかろうと思います。
 この照会事項及び回答に関しても、この我々のユニークな研究所の研究を生かせるような形にするためにはどうしたら良いかというふうな観点から回答してございます。主に、現在の人間文化研究機構の機関構成はそのままで良いかもしれない。各所属機関は、人間文化、文化資源を総合的に研究しつつあるけれども、研究対象、手法が大きく異なるわけで、機関としての自律性がその研究の独立性を担保している。ほかの機構との協力関係に関しては、機構を通じて、あるいは単独に現在行っている状況である。
 それと、今の機構にそれほど不満はないですが、機関の独立性を担保しながら行うとなると、行政としては二重行政にならざるを得ない。その部分が解消すれば良いわけですが、例えば、大きく1法人にする場合にも二重行政は別に解消することはなくて、より遠くなることで複雑になる可能性がある。アンブレラ法人みたいなものを間にかぶせたとすると、これは三重行政になる可能性があるわけで、それをクリアできない限りは、あるいはクリアできるような方法を講じない限りは、それは少し危険なのではないかというふうな観点から回答してございます。
【稲永部会長】  よろしいでしょうか。ありがとうございました。 それでは、次に総合地球環境学研究所(以下、地球研)の谷口副所長、よろしくお願いいたします。
【総合地球環境学研究所(谷口)】  おはようございます。総合地球環境学研究所副所長の谷口です。
 最初に質問の1から7への回答を含めて、ポンチ絵、13ページ以降を用いて地球研の概要を説明した後、意見照会の質問8から13に対する答えをまとめて説明したいと思います。
 地球研は2001年に設立されて、ミッションは、人と自然のあるべき関係の構築を踏まえた環境問題の解決に向けて、広い分野を総合する地球環境学を、文理融合の学際研究と国内外の関連機関及び社会との協働による課題解決型のアプローチで推進しています。これは、地球環境問題の解決に資する学問分野の創出に対する社会や学術コミュニティからの強い要望に基づくものです。
 地球研では、既存の枠組みを超えた総合的な視点に立ちまして、幅広い分野の研究者の力を結集して地球環境問題の解決に向けた研究を集中的に推進しています。真に分野横断的な研究をするために、研究者が一時的に集丸のではなくて、一堂に会して新たな価値を創る、蓄積して発展していく、そういう循環する仕組みと場を地球研では提供しています。そのために、地球研では、研究代表者は地球研に移籍していただくことになっています。そのことで教員の流動性を担保しており、これが他機関や大学での共同研究と大きく異なる点です。クロスアポイントメント制度も活用した大学との人事交流を実現させています。
 右のポンチ絵にあります上の部分が地球研のアウトカムになります。地球研の学術的アウトカムは、新領域の創出、大学の機能強化、そして学術コミュニティの拡大です。一方、社会的アウトカムは、SDGs等の国際社会への貢献と、地域創生などの地域社会への貢献になります。
 2ページ目の14ページを御覧ください。我々は、大学共同利用機関として持つべき役割は3つあるというふうに考えております。1つ目は、新領域創成や異分野融合を進める場としてその成果を蓄積することです。地球研では、研究テーマを含む公募によりまして、大型学際的国際共同研究プロジェクトを開発・実施し、文理融合研究の実験場を提供しています。学術コミュニティからのアイデアと社会の実践的課題を基に、地球研で異分野融合の新しい価値の創造、成果の蓄積を行い、それを学術コミュニティへの連環と社会への課題解決につなげ、コミュニティの拡大に寄与しています。
 右側に第2期中期目標期間において、共同研究者の研究分野の構成があります。第2期6年間で6,000名近くの共同研究者がいますが、その半分が自然科学系、残りの半分が人文系、社会系、複合系になります。地球研の名前のHumanity and Natureにあるとおり、真の文理融合を実現していると考えています。
 地球研では、近い分野同士の学際研究だけではなく、遠い分野の学際研究も進められています。一例として、古文書による研究と同位体分析を組み合わせた異分野融合の例をお示しします。古文書に記された歴史的記録から、当時の人々が気候変動がもたらす恩恵や弊害へどのように対応したかを解読するとともに、遺跡から出た木材の年輪から同位体比を分析しまして、当時の気温や降水量の変動を復元することで、気候変動が食糧生産や人々の生活にどのように影響を与えたかを明らかにする。このような共同研究例が行われています。
 次のページを御覧ください。大学共同利用機関としての役割の2つ目は、国際的な研究拠点としての中核機能や国際動向の把握、ネットワークを活用した国際発信であるというふうに考えています。2001年の創立以来、累計40本の大型プロジェクトを実施する中で構築したネットワークを活用しまして、国際共同研究及び国際発信を実施しています。それから、持続可能な発展への取組として科学的貢献を行うFuture Earthのアジア地域センターが地球研に設置されており、ネットワークを生かしてSustainable Development Goalsへの取組を地域規模で展開しています。また、持続可能性に関する学術雑誌に人文学分野を新設し、地球研がその編集を担当するなど、学術コミュニティ拡大へ寄与しています。
 大学共同利用機関の3つ目の役割として、個々の大学では整備・運営が困難な最先端の大型装置を用いた研究開発や、貴重な学術データなどの研究資源の収集・活用があります。地球研では、そこの右の写真にありますような、同位体などの各種分析機器を用いた共同研究プロジェクトが同位体環境学共同研究に関係する国内外の研究者によって行われています。個々の大学だけでは保有が難しいような多種多様な機器を整備・運営し、異分野の研究者が議論する場を提供することで、新たなテーマの創出に寄与しています。
 それでは、最後に意見照会の8から13の質問に対する答えを3つのポイントにまとめて説明いたします。1つ目のポイントは、大学共同利用機関の組合せに関するものです。地球研は、文理融合の学際研究をミッションとする唯一の大学共同利用機関であり、そのミッションと整合的・補強的なミッションを持つ法人に属するべきであるというふうに考えています。そして、地球研は、本質的に学際研究を行う研究でありますので、どのような分離をしても整合的・補完的であるとは考えています。
 2つ目のポイントは、1法人、複数法人、連合体に対するスタンスです。いずれの場合も大学共同利用機関法人のミッションが包括的になり、研究成果が向上し、国内外での対社会的認知度、存在感が高くなるという条件が必要であり、そのような方策と配慮が必要であるというふうに考えています。
 最後のポイントは、意見の整理の論点に関する学術の動向の反映に関してです。一部の分野だけからの要望ではない全体の学術の動向を踏まえ、連合体や文部科学省の審議会だけではなく、学術会議、総合科学技術会議や、国際学術会議を含めた学術コミュニティや産業界などのコミュニティの意見を広く聞いて、その要望や要請に基づいて行うべきであるというふうに考えます。 以上で地球研の説明を終わります。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、国立天文台の常田台長、お願いいたします。
【国立天文台(常田)】  資料の21ページを御覧ください。国立天文台は、個々の大学では保有できない大型観測装置、アルマ望遠鏡やすばる望遠鏡がありますが、これを建設・運用しまして共同利用に供しております。また、国内の大学で少し小さい光学望遠鏡、電波望遠鏡を持っておりますけれども、これも天文学科の研究所は大変大事でございますので、大学間連携プロジェクトの中心機関として、これらの研究を大学と一緒に研究を進めております。
 右下の方に今後の展望がございますが、現在、ハワイに口径30メートルのThirty Meter Telescope、略称TMTを建設して、天文学の研究を更に進めるということに傾注してございます。
 それらの大型観測装置の成果が次のページにございまして、すばる望遠鏡ですが、既に建設してから20年近くたっているのですが、適切な保守と観測機器を外部資金で順次入れ替えることによって、現在非常に高い生産性を維持しております。年間出ております論文が約150編で、1日おきに論文が出ている状況でありまして、非常にほかの望遠鏡にはない超広視野、高解像度を生かして、御説明をする余裕はありませんけれども、ダークマターの3次元地図を構築するなど、極めて大きな成果を出しております。
 右側のアルマ望遠鏡でありますが、これは2011年に完成以来、非常に大きな成果を出していまして、特にここにありますように、惑星が形成できる現場、ちりの円盤から惑星が出ていくところをつぶさに捉えるということで、天文学に絶大なインパクトを与えつつあります。国立天文台は、アルマ望遠鏡の観測装置の技術的主要部分の建設に携わり、更にその運用においても中核的役割を果たしております。
 次に、照会事項に対する回答であります。23ページですが、順次お答えしてまいりたいと思います。(1)の質問1でありますが、大学共同利用機関として備えるべき要件としては、大学単独ではなし得ないような大型観測装置・実験装置を建設・運用し、共同利用に供するということが極めて大事だと思っております。
 それから、質問2でありますが、定期的に検証する体制を整備し等の御質問でございますが、これは妥当というふうに思います。さらに、期間について聞かれておりますが、先ほども述べましたように、大型観測装置の建設期間がゆうに10年に及びますので、ある程度長い期間をとった形でレビューを行うのが良いかなと思います。
 それから、検証体制については、まずは自ら評価するということと、その分野をよく知っている人でないと中身が分からないということがありますので、複数の外部有識者のレビューというような体制が必要というふうに考えます。
 (2)で総合研究大学院大学(以下、総研大)においての御質問でありますが、現在、国立天文台では、総研大と連携大学院制度が並立していまして、それぞれのシステムから学生が来ておりますが、総研大だけから学生が来ているというわけではない状況がありまして、総研大の優位が相対的に下がっているという面もあるかと思います。一方、大学との連携は、当該大学との協定に基づいておるわけで、脆弱な面もあるということで、それに比べて、総研大については制度的に保証されていますので、国立天文台としては、総研大を生かした学生教育に取り組みたいというふうに考えております。
 (3)でありますが、大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点の違いでありますが、これは規模が違うということが言えるわけでありますけれども、大学共同利用機関については、かなり独立性があって、自らの意思で将来計画を立て、大型計画を遂行していくことができるわけでありますが、共同利用・共同研究拠点につきましては、大学の下にあるということで、大学全体の方針、最適化の過程にさらされるということで、そこに大きな違いがあるというふうに思います。
 質問5でありますが、大学共同利用機関が中心となってネットワークを形成することについてということでありますが、これは当然重要であると認識しておりますが、留意すべき点といたしまして、昨今の財政状況が極めて厳しい中、コミュニティの多様な意見を取り入れると。国立天文台で申しますと、いろいろな研究分野がありまして、それぞれ大きな事業をやりたいという計画がございますので、国立天文台のリーダーシップ、それから調整機能が重要だと、より従来に比べて重要になってきているというふうに認識しております。
 それから、質問6でございますが、これは移行についてでありますけれども、共同利用・共同研究拠点から大学共同利用機関への移行については、より独立性が高く大規模になっていくという観点から、学問の進展によってそれはあり得るのではないかと思う一方、逆の方は、受皿となる大学が必要だということもあって、なかなか現実的に想定し難(にく)いというような印象を持ちます。
 質問7、産業界との連携でありますが、国立天文台の場合、非常に大規模な事業をやっていまして、その前には非常に長い期間の基礎開発、現場で研究者と企業の実務者の間での共同研究が従来行われてきました。ただ、現在の状況から、そういう現場だけの対応というより、もう少し組織間で組織的な対応がとれないかということを現在進めております。
 それから、地域との連携については、野辺山、水沢、いろいろなキャンパスで公開や望遠鏡による観望会をやって、これは天文学の有利な点でありますが、非常に地元との連携を密にしておりますし、地元からも評価されているということがあると思います。
 (4)の質問8でありますが、4大学共同利用機関法人を1大学共同利用機関法人に統合することについてという質問でありますし、質問9、質問10にも同様の答えになるわけでありますが、こういう枠組み論の前提といたしまして、現在の4大学共同利用機関法人の体制がどうであったのかと、どういう成果があって、どういう課題があったかという総括が十分ない状態で現在議論が行われているように思われます。発足時に目指しました「将来の学問体系を想定した分野を超えた連合」として合格だったのか、あるいはそうでないのかという総括を行うべきだというふうに考えます。以下、時間が参りましたので省略いたします。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。 それでは、続いて核融合科学研究所の竹入所長、よろしくお願いします。
【核融合科学研究所(竹入)】  核融合科学研究所所長の竹入です。資料の27ページにあります。右下に1/6から6/6まであります。
 まず、2/6ですけれども、核融合科学研究所(以下、核融合研)は、平成元年5月に核融合プラズマの学理とその応用研究の推進のため、大学共同利用機関として設置されました。そして、世界最大の超伝導大型ヘリカル装置(LHD)を中核として、核融合・プラズマ物理学に関する実験研究、理論・シミュレーション研究及び核融合工学研究等を推進しています。
 めくっていただきまして、照会のありました質問1、大学共同利用機関として必要な要件というのが、ここにまとめました核融合研の現在の目指すべき方向性、ミッション5点についてまとめられていますので、回答に代えて答えさせていただきたいと思います。
 まず丸1として、核融合の研究を国内外の研究者との共同研究により推進していて、核融合コミュニティを基盤に運営されているということ。2番目に、1大学では実現できない大規模研究設備といった研究環境を整備して、世界最高水準の共同研究を実施し、大学の研究活性化、新たな学問分野の創成に貢献するということ。3番目に、世界的な学術研究拠点として国際連携研究を推進しているということ。4番目に、この世界最先端の研究環境を活用した大学院教育を行い、次世代を担う研究者を育成しているということ。そして5番目に、広く社会・国民への信頼関係を構築するために、地域と連携しながら最新の学術成果の発信を行っているということにあります。
 その下に、現在中心となっています超伝導大型ヘリカル装置(LHD)が、大規模学術フロンティア促進事業「超高性能プラズマの定常運転の実証」として取り組まれています。最近の非常に大きな成果としましては、重水素実験により、核融合条件の1つであるイオン温度1億2,000万度を達成いたしました。
 次のページにいきまして、共同研究は核融合研究を進める上でコミュニティと一緒になって行っているわけですけれども、ここにあります3つのタイプの共同研究を展開していまして、全国で1,500名を超える共同研究者数、220機関を超える共同研究の実施機関があります。その中で、質問5で問われています、大学の共同利用・共同研究拠点とのネットワーク形成という観点に関しましては、既に核融合研では、真ん中にあります双方向型共同研究という形で大学附置研究所・センターの特徴ある装置を核融合研の共同研究装置と位置付けて、核融合コミュニティ一体の運営をして共同研究に寄与しています。
 その下に、更に国際的な核融合コミュニティの中核として、毎年数百人規模での海外との人材交流とともに、この核融合研をハブとして、研究者コミュニティから多数の参画を得て国際共同研究に貢献しています。
 引き続きまして、照会事項に対する回答をさせていただきます。まず、(1)の質問1に関しましては、先ほど要件について述べさせていただきました。
 質問2に関して、この研究に関する評価・検証等につきましては、当該分野の国内外の研究者による外部評価が適切ではないか。一方、再編・統合をあらかじめ前提とするべきとは思いませんけれども、この大学共同利用機関の在り方に関する評価・検証を行う場合には、大学共同利用機関法人等が外部有識者を含めた体制を整備して行うのが適切ではないかと考えます。
 質問3におきましては、総研大に関しましては、優れた研究環境を生かした国際性・専門性の高い人材を育成するということが非常に重要なポイントになっていまして、大学院教育における教育として行う連携大学院とは差別化が行われるのではないか。そして、分野の特性に応じた国際性・専門性の高い人材教育のための教育プログラムの整備が必要であり、現在その点について研究所でも検討しているところになっています。
 (3)に移りまして、質問4に関しまして、共同利用・共同研究拠点との違いという観点では、大学共同利用機関は当該分野のCOEであり、共同利用・共同研究拠点に関しましては、大学における特色や強みのある研究を基盤に、先進的・境界領域的な研究への広がりなどが行われているという点にありまして、質問5で先ほど説明しましたように、核融合研では、既に共同利用・共同研究拠点、附置研究所、センター等とネットワークを構成して共同研究・共同利用を行っています。
 質問6に関しましては、共同利用・共同研究拠点の研究分野が非常に大型化して、国内のCOEになるのであれば大学共同利用機関に移行するということはあり得ると思いますけれども、逆のケースは、研究環境の縮小を意味するために、余り好ましい方向性ではないというふうに考えています。
 質問7の産業界、地域との連携についてですが、核融合分野はまだ産業として確立されていません。そういう基礎研究の中で共同研究、委託・受託研究等、産業界との連携に取り組んでいますけれども、その規模はまだ小さいと言わざるを得ません。一方、将来の核融合実現という観点から、地域社会に積極的に情報発信をする形で、地域との連携に取り組んでおります。
 (4)の大学共同利用機関法人の枠組みに関しましては、質問8にありますような1大学共同利用機関法人として統合する場合の事務的な運営の合理化については利点として挙げられると思いますけれども、17に及ぶ大学共同利用機関を横並びでマネジメントすることは、かえって新分野創成等々が進めにくくなることが懸念されます。
 質問9にありますように、現状の大学共同利用機関法人の規模は適切であると考えていまして、質問10にありますように、分野ごとに2から3の大学共同利用機関法人に再編する場合の構成については、分野が比較的近い、あるいは共通課題があるような分野でまとまって行うのは非常に好ましいと思いますけれども、分野が大きく離れている機関が集丸と、情報交換が疎遠になり、また研究文化や評価等の基準も異なるために、かえって進まなくなることが懸念されるのではないかと考えています。
 質問11にありますように、連合体の構成という考えですけれども、連合体そのものは、施設・設備の管理・運用、事務職員の共同採用、人事交流、知財等の共同管理・運用等、メリットがあるというふうに考えられており、その辺が取り組むべき課題と思います。
 そして、質問12にありますように、この連合体に共同で取り組む業務のみならず、学術研究の動向に対応した柔軟な資源配分を可能とするという形では、非常に組織構成をきっちりやらないと複雑な組織構成になることが懸念されるというのがあります。
 また、一元的に形成できるか、若干疑問があるということで、重要なポイントとしては、1大学共同利用機関法人化の場合も含めて、総合研究大学院大学を加えることが組織的には意味があるというふうに考えております。以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。それでは、続きまして、基礎生物学研究所(以下、基生研)の山本所長に御説明をお願いします。
【基礎生物学研究所(山本)】  基生研、山本でございます。35ページに基生研の概要が示してございます。
 最初に、基生研は大学共同利用機関として当然ながら2つの大きなミッションを持っております。1つは世界に伍する研究を進めていくということ。それからもう1つは、共同利用を通じて国内外の研究者コミュニティに共同研究の場を提供し、先端研究を推進して、日本全体の底上げを図っていくということでございます。
 研究面では、生物は、全ての生物が1つのオリジンから来ているということからして、例えば、生物の基本単位である細胞の働き、あるいは遺伝子の役割など、全ての生物に共通した原理で動いている面が1つございます。
 それからもう1つは、地球の様々な環境の中に生物が適応してきたということで、非常に生命の多様性というものが生まれてきている。この2つの問題、普遍性と多様性というものを大きな研究目標として研究を進めているところでございます。
 基生研では様々な生物を対象に研究を進めております。既によく使われているモデル生物として確立されていますマウス、アフリカツメガエル、シロイヌナズナといったものを対象とする、一方で、今後生物の持ついろいろな特徴を調べていく上で重要になってくる新しい生物をモデル生物化していくという試みを行っております。例えば、動物ですと昆虫のカブトムシ、例えば面白い角の形はどうやってできてくるのか、あるいは食虫植物、植物の方では、虫をトラップするためのつぼ型の葉っぱができてくるわけですけれども、こういった複雑なものがどのようにできてくるのかといった形態形成の問題があります。
 それから、サンゴは褐虫藻という藻類と共生していることがよく知られていますけれども、生命というのは共生関係を保っておりまして、それがあることによって現在の生物界が成り立っているということがございます。そういう共生の問題。
 それから、ここには出ていませんけれども、更に1つの生物種内でも役割が異なってくる、そういう社会性を持った昆虫、シロアリとかアリとかハチとか、そういったものがございますけれども、そういう社会性というものがどういうところから来ているかという、そういったようなものが今後の研究活動の中心になっていくというふうに考えております。
 特に今後10年、15年の間の研究目標としましては、環境と生命の相互関係というものを調べていく必要があるというふうに考えております。御承知のとおり日本は四季がございまして、生物はその四季に合わせて、温度ですとか日照時間ですとか、そういったものに合わせて生育をしていくわけです。形を変え、種を作りというようなことが起こります。そういう環境と生物の相互作用というのは非常に基本的な問題なのですけれども、一方で、社会的な問題として、人類が社会環境を変えていくことによって、生物がどこまで耐えられるのかといったような問題が社会問題として現れてきております。こういうことに対しても正しく対処していくためには、生物の持っている環境適応能力といったものが根本から分かってこないと、正しい環境政策というものもとれないだろうということで、そういうことに関しても調べていきたいということで、生物の適応戦略研究というのが非常に大事だということで、これはそこの右隅に書いてございますけれども、日本学術会議のマスタープラン2017に生物適応戦略研究拠点ネットワークの形成ということで、11大学の14部局と、私ども基生研と、それから情報・システム研究機構の国立遺伝学研究所が2つハブになりまして、ネットワークを作るという形でマスタープランの応募いたしました。幸いマスタープラン2017では、緊急性も含めた上から3次ぐらいの重点大型研究に採択されているところでございます。文部科学省のロードマップにも応募いたしましたが、残念ながらこちらには採択されておりません。
 以上が研究の方向性です。それと同時に、共同利用研究の推進とコミュニティ支援でどういうことを行ってきているかということが3ページ目にまとめてございます。基生研は、個別研究という形で個々の研究者が、国内外の研究者と共同研究を進めておりますけれども、平成25年度ぐらいから、特にそういう個別のつながりがない研究者あるいは産業界の方々が、より基生研と共同利用・共同研究ができるようにという形で、センターに共同利用・共同研究の機能を集中化させるということを行っております。
 今、2つ大きな受皿になっているのが、上に書いてあります生物機能解析センターとモデル生物研究センターというものです。生物機能解析センターには3つの室を置いておりまして、生物機能情報分析室、これはDNAシークエンサーやタンパク質の分析が行える分析室です。それから、光学解析室は、今はもう世界で唯一の装置になりましたけれども、虹の7色を出すことができる大型スペクトログラフというもの、それから、いろいろな種類の新しいタイプの顕微鏡を使って研究をサポートしております。それから、情報管理解析室は、データベースの構築、特に微生物関係のデータベースの構築をやって、研究者コミュニティに情報を提供しています。
 それから、モデル生物研究センターでは、動物の研究支援室と植物の研究支援室というものを作りまして、それぞれ特徴的な飼育状況ができるものを備えております。植物などでは、外部の研究者が育てている自分のサンプルをウェブサイトを使って今日はどういう状況であるかということを調べることができる、そういったようなシステムを構築したりしております。
 以上、一般的な大学共同利用機関としての共同研究なのですけれども、科研費の方で先端バイオイメージング支援プラットフォームという事業を行っております。これは、科研費の新学術領域研究の支援事業に含まれるものですけれども、そこにありますように、光学系の顕微鏡などを使って支援事業を行っておりまして、平成29年度には、生理学研究所と共同で行っていまして、半分が生理学研究所の貢献ですけれども、約260件の課題を採択しております。
【稲永部会長】  時間が終わりましたので。また後ほど質問等で。
【基礎生物学研究所(山本)】  はい。
【稲永部会長】  それでは、続きまして、生理学研究所の井本所長に御説明をお願いいたします。
【生理学研究所(井本)】  資料の43ページです。生理学研究所(以下、生理研)は、基生研と同じく1977年に作られました。生理研は人の体と脳の働き、その仕組みを研究するということで、分子、細胞から個体まで、シームレスなイメージングを目指しております。岡崎キャンパスには分子科学研究所があるわけですけれども、創設当時より事務センターは1つです。それから、2000年に岡崎統合バイオサイエンスセンターが3機関の共同でできましたが、本年の春より自然科学研究機構の生命創成探究センターということで融合研究を行っております。
 次、研究所のサイズですが、左下にありますように、研究職員が70人、技術職員が30人ほど、総計で250名弱です。生命系の場合、手作業の実験が多いために、技術補佐員57名とありますが、これはほとんど研究費による雇用です。それから、予算が右上にありますが、大体25億円の予算で、最近少し下がっているかもしれませんが、約半分を外部資金で得ております。
 共同研究は、法人化前の約2倍、それから、大学評価・学位授与機構による研究面での評価、現況分析ですけれども、共同利用に関しては期待される水準を大きく上回る、研究成果の方は期待される水準を上回るというような評価を得ております。
 45ページですが、研究者コミュニティへのサービスとして、研究所としていろいろな事業をやっております。かなり研究者コミュニティからは、そういう面で認められていると思います。
 課題はいろいろあるのですけれども、これを言い出すと長いので飛ばします。
 次、質問に対する回答ですが、質問1、要件としていろいろ並べております。生命系は、従来スモールサイエンスと言われてきたわけなのですけれども、測定装置がだんだん大型高額化しております。科研費では買えないようなものが多くなってきており、例えば10億円程度の機械がかなり必要になってきているということで、共同利用のシステムが非常にこの生命系の分野でも重要になってきているというふうに考えております。
 質問2、評価に関しては、先ほども述べましたが、大学評価・学位授与機構の評価がありますので、そこをもう少し工夫すればそこそこのレベルの評価ができるのではないかと思っております。
 質問3は、総研大のことですが、総研大の教育は、基本的に基盤機関で全てやっております。総研大は必要な教育機関であると考えております。総研大に対しては、もう少し教育面での改善の助言とか、そういうようなことをしていただけると有り難いなと思っております。
 質問4ですが、大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点の違いですが、これは長期的に国の政策として何かをするかどうかということであり、そこが考え方の基本的な違いだと思います。
 質問5ですが、我々も共同利用・共同研究拠点といろいろお付き合いはありますけれども、我々から見ると、研究者というのは必ずしも拠点の人ではなくて、大部分は拠点以外の先生方である。それから、共同利用というか、ネットワークを作るべき装置を持っている大学も必ずしも拠点ではないという、そのあたりが若干我々からすると余り共同利用・共同研究拠点だけに力を入れることができない、ということになるのかなと思います。
 それから、移行に関しては、先ほど言いましたように、長期的な視点でどういうふうに考えるかというわけですけれども、大学共同利用機関から大学に移るというのは、なかなか難しいのではないかなというふうに考えております。
 それから、産業界との連携に関しては、研究者個々にかなりやっておりますし、生理研の場合は研究所としてもやっております。ただ、企業と共同研究をやる場合、その成果は企業のものであって公開されないことが多いわけですけれども、本当にそればっかりやって良いのかというあたりの議論をここでも是非やっていただきたいと思います。一番そういう研究成果の知的財産とかそういうものに関係なく、我々が企業に貢献できるのは教育面であるというふうに考えております。
 それから、8番目からの枠組みの話ですが、機関の立場から言えば、お金が来て自由にできれば上は余りどうでも良いという感じがしなことでもないですが、、全体的に考えれば、その組織のスケールメリットというのは無視できないことなのだろうと思います。ただ、1法人化した場合、総研大との関係というのは問題として残るわけで、そこをどういうふうに考えるかということの検討が必要かと思います。
 分野ごとの複数の大学共同利用機関というのは大体今の感じだと思うのですけれども、比較的マネジメントしやすいサイズではあると思いますが、そこで何か新しいものを、1つ研究所を作れと言われると、無理ですとしか言いようがないところだと思います。
 現在の4大学共同利用機関法人を2つ、3つにするというのは、コストばかりかかって、余り何もないのではないかなというような危惧を抱きます。それから、複数法人というのは、それはそれで良いのかもしれませんが、連合体を作るという、連合体を作ってそこで共通事務をするという考えだと思うのですけれども、4大学共同利用機関法人も発足以来10年以上たって、かなり規則、いろいろになってきているので、それを統一してやるというのは結構大変だろうと思います。以上です。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして、加速器研究施設の山口施設長、よろしくお願いいたします。
【加速器研究施設(山口)】  資料の51ページを御覧ください。
 一番上に書いてございますように、加速器研究施設は、高エネルギー加速器研究機構にあります全ての加速器の建設・運転・維持、それから性能向上を行っておりまして、それを通じて素粒子・原子核物理や物質・生命科学等の加速器共同利用実験の基盤であります粒子ビームを日本と世界の研究者に提供し、加速器科学の世界的COEの位置を維持しているということです。さらに、様々な加速器の将来計画・関連技術・産業医療応用の研究開発にも取り組んでおります。
 高エネルギー加速器研究機構で運転されています加速器としまして、つくばキャンパスにおきましては、Belle実験のためのSuperKEKB加速器と放射光実験のための放射光源加速器。それから、両者に対する入射器であります電子・陽電子線形加速器。さらに、リニアコライダーのR&Dのための試験加速器があります。以上は電子加速器ですが、陽子加速器としまして、東海キャンパスではJ-PARCが運転されていまして、ニュートリノ、ハドロン物理、それから物質・生命科学実験へビームを供給しています。さらに、各種作業・医療への応用を目指した応用加速器の開発・研究も行っております。
 次、52ページにいきまして、職員数、決算額、運転時間はそこに書いてある通りで、加速器研究施設は、共同利用は行ってないのですけれども、共同研究として国内外の研究機関や大学、それから民間企業と合計で100件以上行っております。
 それから、国際評価につきましては、3大プロジェクト、SuperKEKB、J-PARC、放射光源につきましては毎年開催しております。
 業績を幾つか紹介しますと、ビームの世界最高エネルギー、世界最高ルミノシティー、世界最高パルス粒子数というのを達成しておりまして、更に大規模な超伝導高周波空洞システムを世界で初めて実用化したということが挙げられます。
 また、大学加速器施設との連携としまして、全国の大学加速器施設と大学加速器連携協議会というのを昨年度組織しまして、相互扶助・情報共有・人材育成等を行っております。
 総研大教育につきましては、近年入学者が倍増しておりまして、その半数以上が外国人という状況にあります。
 その他としまして、各種セミナーやスクールの開催、ハンドブックの発行などを行っております。
 意見照会に対する回答ですが、質問1、まず自主的・自律的な運営の下に共同利用・共同研究が行えること。それから、個々の大学や共同利用・共同研究拠点では運営が困難な最先端な大型装置等を研究者コミュニティ全体に提供できること。さらに、国際的な中核的研究拠点であることが要件として考えられます。
 質問2ですが、在り方の検証は必要であって、期間としては10年間、存続の是非に関しては30年程度が妥当ではないかと考えています。体制としては、中立・公正でオープンな体制というものが必要ではないかと思います。
 質問3につきましては、総研大ですが、知名度が低いということもあってランキングは高くないわけですけれども、何よりも重要なことは、優秀な人を入れて出すということで、そのために説明会等を行っていますが、学生数を増やすということや、奨学金を増やすということも必要ではないかと考えております。
 それから、共同利用・共同研究拠点との違いですけれども、共同利用・共同研究拠点はあくまでも大学の組織の一部分ですから、研究者コミュニティの意向と必ずしも一致しないという点が大きな課題ではないかと思います。あと、共同利用・共同研究拠点は、教育に重点があるのに対して、大学共同利用機関は研究に重点があるというのが大きな違いだと思います。
 それから、質問5ですけれども、ネットワークを形成するということは非常に結構なことだと思いますけれども、する場合には、国際的なネットワークの一部として機能させることが重要ではないかと考えております。
 質問6は、質問2と同時にやれば良いと思います。
 質問7、産業利用ですけれども、加速器は工業から原子力まで非常に活発に行われておりまして、今後もその利用・応用を強化していきたいと考えております。
 質問8ですけれども、利点としては、スケールメリットによって、1大学共同利用機関法人としてのプレゼンスが向上するであろう。ただし、デメリットとしては、各法人の対外的なプレゼンスが低下する。特にJ-PARCという加速器にとっては、これは致命的になるというふうに考えます。それから、各法人の自主的・自律的な運営が確保されなくなる。それから、迅速な意思決定が困難となりますので、研究所の競争力が低下するということで、デメリットがメリットを大きく上回るというふうに考えます。
 質問9、これは質問8とメリット・デメリットが逆転する。
 質問10は、あえて3つに分けるとすると、人文系で1つ、自然科学系で1つ、高エネルギー加速器研究機構で1つというのが良いのではないかと思います。
 質問11につきましては、共同調達を始め、研修、外部資金獲得、共通技術支援等、いろいろ考えますが、更にやっていけば良いというふうに思います。
 質問12ですけれども、もしもこういうことをやるのであれば、ある程度の裁量権を与えることが必要かもしれませんけれども、投資した、配分した資源に対する成果のチェックというのは必要ではないかというふうに考えます。
【稲永部会長】  ありがとうございました。それでは、続いて共通基盤研究施設の佐々木施設長、説明をお願いします。
【共通基盤研究施設(佐々木)】  57ページに概要の説明があります。1ページめくっていただきますと、高エネルギー加速器研究機構のまとめがありますが、その真ん中ぐらいのところに、高エネルギー加速器研究機構を構成する大学共同利用機関、これは、素粒子原子核研究所と物質構造の研究所で、加速器研究施設と共通基盤研究施設は、実際には共同利用は行っておりません。それを支援するための組織として位置付けられています。
 もう1枚めくっていただいて、共通基盤研究施設の目的と機能ということで、今お話ししましたように、加速器の放射線防護、それから計算機システム・ネットワーク技術、超電導及び極低温技術、超精密加工技術などの加速器科学における基盤研究を通して、機構の推進する実験研究、共同利用実験の遂行を支える高度な技術支援を行うとともに、これらの基盤技術に関する開発研究を推進し、将来プロジェクトや、それに必要となる技術開発を行う。加速器科学における学際的分野の人材育成や国内外の大学・研究機関との共同開発・共同研究を実施する。この目的のために、共通基盤研究施設の中には、放射線科学センター、計算科学センター、超電導低温工学センター、機械工学センターの4つのセンターが置かれております。
 共通基盤研究施設の特徴ですが、その左側に幾つかまとめました。3点ほどあります。1つは、加速器の放射線安全に関する研究の拠点ということで、最初に上げてありますのが、放射線等物質の相互作用をシミュレーションするソフト、EGS、PHITS、Geant、これはもう世界的に評価が高く、有名な広く使われているソフトウェアですが、それは本研究施設を中核として国内外の大学・研究機関と共同で開発が行われたものです。加速器の遮蔽研究ばかりではなくて、安全評価、測定器の動作シミュレーション、がん治療などの医学分野等、幅広い分野において広く使われております。広く貢献していると思います。
 もう1つは、加速器の放射線場に対する測定法の開発と検出器・検出技術の高度化と応用というものに特徴がありまして、加速器の場に特徴的な放射線を測定する手法、放射線のモニタリング手法ですとか、それを利用して、今現在は宇宙放射線線量計測の進化領域を開拓しております。
 それからもう1点、世界に誇る超電導、世界に誇るは少し余計ですけれども、超電導極低温技術と機械工学技術開発の拠点としても知られております。1つは、CERNにおいて陽子・陽子衝突型加速器、LHCですが、それのビーム衝突点や測定器の超伝導電磁石システムの開発・建設に日本の中核機関となって参加しております。
 それから、重力波探査を目的として神岡に今建設が進みます大型低温重力波望遠鏡の建設を東京大学宇宙線研究所、それから国立天文台と共同で実施しております。
 それから、3点目は、加速器の運転並びに共同利用実験実施のために高度な技術支援を行っているということですが、そこに3点ほど、SuperKEKBであるとか、J-PARCだとか、そういう大型加速器における放射性安全管理、安全システムの構築を行っております。それから、計算・ネットワークシステム、情報セキュリティシステムの構築と運用・維持を行っております。
 1枚めくっていただいて、沿革はそこに書いてあるとおり、高エネルギー物理学研究所、高エネルギー加速器研究機構の前身ですが、そこが発足した時点で物理系、加速器系、共通系の3研究系でスタートをしておりまして、1997年には、原子核研究所を併合した際に共通基盤研究施設と名前を変えまして、田無の分室を置いております。
 規模は、そこに書いてありますように、大体教員が45、技術職員が39名、全体で120名程度ぐらいです。それから、多様な技術支援についてはそこの記載したとおりであります。
 余り時間がなくなりましたので、アンケートの回答の方に移りたいと思いますが、最初の質問1ですが、要件としては、大学では整備困難な高度な実験施設・設備を国内外の大学に提供して、基礎実験の機会を提供できる、そういう能力をまず持っているということ。それから、大型実験装置の管理・維持・運営に関する能力を有すること。それから、研究者コミュニティに存立基盤をきちんと置いていて、基礎科学の進展を牽引できるということ。3点目が、中核的機関あるいは大学共同利用機構法人として、国際的にも有用、質の高い研究資源を最大限活用して国際的な共同研究を進められること。国際的なプレゼンスの向上、研究分野の進展、新学問領域の創成に寄与できること。これが言えると思います。いずれもこれは高エネルギー加速器研究機構が法人として目指しているところだと思います。
 それから質問2ですが、検証は必要だと思います。ただ、客観的な立場に加えてコミュニティを代表する国際的な視点も加える必要があるし、いかにして正しい評価を実施するか、という視点が必要だと思います。それから、期間は中期計画等の策定、評価との整合性を図りながら極力計画的に実施すべきだというふうに思います。
 総研大については、共通基盤研究施設や加速器研究施設では、大学の教育カリキュラムにない学際的な研究が行われておりまして、将来を見据えた研究分野の進展のためには、独自の教育・人材育成システムが必要です。そのために総研大は重要と考えております。総研大の問題は、今後いかにプレゼンスを高めていくかということだと思いますが、その1つの解は、優秀な学生をいかに継続して獲得するかということが課題の1つで、それは国際的な大学共同利用機関であるということを利用して、外国人留学生の確保で海外に開かれた大学院にして国際化を図ることであって、もう一方では、研究機関法人や企業からの有職者を受け入れ支援することだと考えています。 最後まで行きませんでしたが、すみません。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま9機関から非常に短い時間で御説明いただいたわけですが、これから質問、意見の時間としたいと思います。それでは、山内委員。
【山内臨時委員】  非常に分かりやすい説明をありがとうございました。
 核融合研の先生にお伺いしたいのですが、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下、量研機構)というところがありまして、そちらにも核融合研というのがございまして、ここはトカマク型かと思いますけれども、JT-60とかITERの建設というのをやっているというふうに聞いておりますが、向こうとの共同研究あるいは連携というのがあるのかどうかというのが1点と、それから、双方の相補性といいますか、両方が必要であるというのはどういう論点なのか、それを教えていただけますか。
【核融合科学研究所(竹入)】  当然核融合開発を進めるという観点で、量研機構と核融合研はともに相補的な立場、共同研究も含めて進めています。ただ、量研機構は開発研究という観点で進めていまして、核融合研は学術研究という観点で進めています。ともに開発の必要性と学術研究基盤を作るという学術研究の必要性で、相補的に核融合を実現するために必要なものとして行っています。特に核融合研の場合には、大学共同利用機関として、大学のコミュニティの総意に基づいて学術研究を運用しているという形で、しっかりと核融合実現に向けた研究を学術的な側面から行っているという形を特徴としているかと思います。
【山内臨時委員】  量研機構の方には、コミュニティというのはあるわけではないのですか。一応コミュニティから独立した研究所としてやっていると。それに対して、自然科学研究機構の核融合研の方は、コミュニティの要求に基づいて研究を進めていると、そういう違いがあるという御説明なのでしょうか。
【核融合科学研究所(竹入)】  量研機構の方は、開発研究という形である意味国策として行われている面があります。共同研究も量研機構も行っています。大学との共同研究も行っていますけれども、大学における核融合プラズマ研究は、核融合研を中心として大学研究者のコミュニティが総意となって学術研究を推進するとともに、その学術研究の成果を、開発研究を進めている量研機構の方とも共同研究を通じて生かしていくという相補的な形で進めています。
【山内臨時委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかにございますか。もしほかの委員でなければ、基礎生物学研究所の山本所長。こちらからの質問の部分についてお答え願いたいと思います。
【基礎生物学研究所(山本)】  質問事項に関しては、全部読み上げるわけにはいきませんけれども、考えておりますことは、天文台の方からもありましたように、現在の4大学共同利用機関法人制度というものを、きちんと見直していただくということがまず前提ではないかと考えております。
 特に私ども基礎生物学研究所は、4大学共同利用機関法人になりましてから、これは法人化以前からですけれども、岡崎の3機関で統合バイオサイエンスセンターというものを作って学融合研究を進めていくという形に進めてまいりましたし、4大学共同利用機関法人の中では、その枠組みの中でできることを考えていくということで、例えば、国立天文台と組んでアストロバイオロジーセンターというものを作りましたし、今回は、核融合あるいは生理研とともにプラズマバイオコンソーシアムというものを立ち上げてきているわけです。そういうふうに、実は今現在形でいろいろなことが進んでいるところで、1大学共同利用機関法人になりますかどうかということを聞かれるというのは、何かすごろくで言うと振出しに戻るみたいな感じ、振出しに戻るとまでは言いませんけれども、3歩ぐらい戻るというような形になるような気がしておりまして、もう少し現場の方でどういうことが起こるのかということを細かく見ていただいて、最終的に1大学共同利用機関法人が良いのか、複数大学共同利用機関法人が良いのか、現在の4大学共同利用機関法人体制で特に問題はないのかということを判断していただければ非常に有り難いと考えております。以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございます。 ほかの所長、台長、館長の方、付け加えることがございましたら御発言をお願いしたいと思います。よろしいですか、先ほどの御発表で、御説明で十分意を尽くされましたでしょうか。
【国立天文台(常田)】  国立天文台でございますが、先ほどの説明の要領が悪くて、最後の方が少し抜けていまして、質問8のところで終わったのですが、その後、最後に質問13のところで所感を書いておりまして、先ほど申し上げたように、4大学共同利用機関法人体制についての総括、長所・短所の見極めが必要だということのほかに、先ほどの先生からありましたように、自然科学研究機構の中では、異なる研究所は大いにその異分野交流が進んでいると思いますけれども、一方、法人が異なりますと、そこがバウンダリーになりまして、なかなか近い分野にもかかわらず、我々の努力も足りないかもしれないのですが、同じ機構内の中でやっているような異分野交流はなかなかできにくいというふうに感じておりますので、そういう点も含めて、4大学共同利用機関法人体制がアーティフィシャルなバウンダリーを作っていないかということも含めて検討していただくことが必要かなと思います。以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございます。それでは、観山委員。
【観山専門委員】  また核融合研にお聞きしたいのですけれども、核融合研では、説明にもありましたけれども、双方向型の研究というか、核融合を学術的に研究されている大学のセンターとか研究所と双方向型の連携をされていて、非常に異法人間の連携ということの1つのモデルではないかと思いますけれども、1つは、予算を割と統一的にされているということが1つの大きな推進力になっているのではないかと思いますが、もう一つ聞きたいのは、違う法人間で、非常にうまく行っているときには良いのだと思いますけれども、法人間で調整しなければいけないとか、例えば、問題が起こったときにどのように解決するのかというのはどういうふうにされているのか、お聞かせいただければと思いますが。何か割とこういう連合体とかそういうことの1つのモデルになるのではないかと思いまして。
【核融合科学研究所(竹入)】  ありがとうございます。
 先ほど説明させていただきました29ページに、双方向型共同研究という形で説明させていただきましたけれども、核融合研のメインとなる超大型ヘリカル装置(LHD)に加えて、各共同利用・共同研究拠点、あるいは附置研究所・センターの核融合関係の主力装置をそれぞれ特徴のある形で大学の中で行われていますけれども、それを共通する部分をネットワークという形にして、核融合コミュニティ、研究者が持っている課題に応じて、A大学の装置とLHDでやるとか、あるいはA大学とC大学の装置でテーマに応じて行うという、非常にネットワーク的な研究課題を挙げてやっています。その点は、非常にある意味大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点との関係という意味では、先駆的であると思い積極的に進めているところです。
 共同研究委員会といったものを組織していまして、これに参加している各附置研究所等のセンター長等々と、定期的にその課題の設定あるいは運用の仕方については、常に情報交換、意思の疎通を図って、共同的に運営しているというのが運営上の関係としてあります。
 それと、各センター等が、大学の執行部としっかりとした連携をとる必要があるということで、その点について少しその意思疎通みたいなものが、あるいは共同利用・共同研究拠点なり附置研究所・附置センターの存在感が大学の執行部にもっと認めてもらえるような形で、核融合研としてもできるだけ大学執行部、自然科学研究機構も通す形で執行部への働きかけを強めていきたいと考えています。
 運用してもう既に10年以上たっていますけれども、予算の融通的な配分も含めて非常にうまく機能していまして、今のところ大きな問題、あるいは大学共同利用機関法人間の衝突は起こっておらず、更に発展させていきたいと考えています。
【観山専門委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかに御質問、御意見はございませんか。藤井委員。
【藤井臨時委員】  国文学研究資料館にお聞きしたいのですが、本日の御発表されたページを見ますと、所蔵資料として極めてたくさんの資料をお持ちだと思うのですが、そのかなりのものはマイクロフィルムとかそういう形で入っておりまして、広くいろいろな人が使うためにはデジタル化とかが必要かと思うのですが、古典籍はやられていると思いますが、そのほかのデータの、デジタル化、集中管理や、カタログをきちんと作るなどというのは、どういう計画をされているのでしょうか。
【国文学研究資料館(キャンベル)】  マイクロ資料としてここに上げていることのまず経緯を申し上げますと、これが従来の当館における収集事業の下で集めたものでして、マイクロフィルムですね、なので白黒なのですけれども、それを順次、5年ほど前からデジタルコンバートを行うことによって、現在の新日本古典籍総合データベースの中に繰り込んでいくということを進めておりますので、ほかの高精細画像、電子画像と同じように、同等にタグ付けの対象にする、あるいは多言語化のその資料としてあり、あるいは、学習用例としてデータとして積んでいくというふうに進めております。少し資料が分かりづらかったのかもしれませんけれども、そのように出しています。
 あとは、このプロジェクトのネットワーク事業の中には、海外での収集ということは位置付けられていませんけれども、実質的に海外とその拠点、大学や博物館とのその協定を結ぶことによって、例えば、今、あと1か月ぐらいしますと協定を結びますけれども、大英図書館にある膨大な資料を、先方が持っている画像と、資料館が例えば内製化を用いて作っていくということをこれから交渉していきますので、マッチングといいましょうか、全てが我々が自前で予算を投下して作っていくというものと、先方が既に作っているものをどういうふうに共有し、あるいはそれを使って開発していく。今おっしゃったように、カタログにしていく、メタデータを付与していくかということもこの事業の中でやっておりますし、後期計画としてもそれを位置付けて充足させていこうという所存です。
【藤井臨時委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  では、観山委員、どうぞ。
【観山専門委員】  高エネルギー加速器研究機構の2つの施設に関してお聞きしたいと思うのですけれども、高エネルギー加速器研究機構の場合には施設というものがあって、共同利用に関しては研究所が行うということでございますけれども、1つは、研究所と施設が先端技術に先鋭化していくと、大学との人事交流というのがどのように行われているのかというものが1つと、もう1つ、この2つの施設は、要するに高エネルギー加速器研究機構のための基盤的な施設を維持するとか運営するとかという形で考えられていることを考えると、もしも機構の枠組みが変わった場合にどのような在り方があるのかなという。つまり、もう少し広い意味での共通基盤とか、例えば分子研なんかは割と加速器とかというのもありますけれども、そのときにこの施設というのはどのような形態があり得るのかという。少し2番目は難しいかもしれませんけれども、2つの質問をそれぞれお答えいただければと思いますが。
【加速器研究施設(山口)】  加速器研究施設の方ですけれども、人事交流につきましては、人材の供給源がそもそも大学なわけですから、大学の方で、今、加速器の講座がだんだん減っているというのが問題としてあるのですけれども、毎年何人かの新人を大学から採っているということがありますし、あとクロスアポイントメント制度として大学と協定を結んで人を行き来するということもしております。
 2番目の質問なのですけれども、分子研には加速器がありますし、大学で、先ほど大学加速器連携協議会の話をしましたけれども、あれに参加している大学というのは42施設今あるのですけれども、全国の国公私立大学で42、実際はもう少し多いのですけれども、そういうところと共同でいろいろな加速器の性能を高めるということを進めております。それは今後も強化していきたいと思っていますし、ここでその枠組みが変わったときにどうなるかということにつきましては、例えば、高エネルギー加速器研究機構に、放射光の部門で言いますと、実は日本でも1つだけそういった加速器の施設があれば良いという意見もありますし、だからそこが中核となって加速器技術を供給するし、人材も供給するという考え方もあると思います。もちろん、だから、最先端もありますし、普遍的な加速器にも技術を広めていくと、日本全体の加速器の力を上げていくということにも対応できるというふうに、最先端と全体を上げるという両方ができるというふうに思っております。
【共通基盤研究施設(佐々木)】  人事交流については、分野にもよりますけれども、まず大学からの供給が、今ありましたように、ほとんど今はなくなっております。だから内部できちっと教育をするというようなシステムが必要で、それを重点に置いてやっています。実際にRIセンター、大学に各ありますけれども、放射線などの場合は、そこに出ていかれる方、それからうちに来たいと言われる方、そういう方がいらっしゃいます。ただ、何分加速器の放射線部門という分野なのでかなりの特殊性はあって、正直言ってそれはかなり限られているというふうに言わざるを得ないと思います。
 それから、一元化したときに、共通基盤に関しましては、今4つ主に柱があるわけですけれども、それを全部の組織にということは、今規模的には非常に難しいというふうに考えています。それに、内容的に加速器に特化している状況なので、それを共通で展開するというのは、正直言って難しいと思います。何らかの手立ては必要かと思います。
【観山専門委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  横山委員、どうぞ。
【横山臨時委員】  御説明をありがとうございます。
 何人かの先生方にお伺いしたいと思うのですが、私どもがお伺いしてよく分からないのは、一元化したときのその事務の共通の効率化というのがどの程度本当に可能なのかというのが余りよく見えておりません。基生研の方からもありましたように、地理的にそもそも分散している状態は続くでしょうし、共通化の部分は非常に限られているでしょうし、そうしたことを考えると、どの程度の事務的な効率性というのが本当に見込めるのかという感触をお持ちなのかということをお伺いしたいのが1点。
 あとは、スケールメリットという言葉が時々出ているのですが、予算規模が全然違う研究所の集まりでございますので、小さいところにより我慢してくださいというのもおかしな話ですし、大きなところにいつまでも御支援いただけると嬉しいけれども、それは本当に可能なのかとか、スケールメリットの意味というのは、どの程度の感触で受けとめられているのかというのを、もし御発言いただける先生方がいらっしゃいましたら何人かにお伺いしたいなと思った次第でございます。
【稲永部会長】  今の点について御意見を頂けますでしょうか。まず1つは、事務の統合というところにメリットがあるかと。先ほどの基生研の方では、地理的に離れているのでさほど大きいものではないのではないかというようなニュアンスの発言があったかと思いますが、いかがでしょうか。
【生理学研究所(井本)】  事務に関しては、よく分からないというのが正直なところかなと思うのですけれども、4機構、同じようで違う規則をたくさん持っているというのは、実際事務処理をする場合にかなり大変だろうなというのは想像されると思います。それを一本化するというのが果たしてできるのか。かなり強権的なものがないとそれを一本化するのは難しいのではないかなというふうに考えています。聞くところによると、給料体系もかなり違ってきているということなので、高い方にすれば良いという話もありますけれども、なかなか予算の関係でそうもいかないでしょうし、考え出すと、事務の一元化というのは、言うのは簡単だけれども、実際問題としてはかなりの覚悟とコストがかかるものだというふうに思っております。
 それから、スケールメリットに関しては、いろいろな考え方、それぞれの考え方があると思いますけれども、知名度を、大学共同利用機関が一体となる方が知名度が高まって、若い人たちをリクルートするときにもメリットがあるのではないかという、それが1つのスケールメリットだと考えております。
【稲永部会長】  キャンベル館長、どうぞ。
【国文学研究資料館(キャンベル)】  スケールメリットということで言いますと、確かに、シミュレーションをしているわけではありませんので、当館もこれはやってみないと分からないというところがあると思うのですけれども、調達ですとか、知的財産の管理ですとか、情報セキュリティに関しては、機構の中では当然担当の理事もおりますし、システムはありますけれども、そこはメリットとして想像はしています。
 ただ、先ほどのお話にもありましたけれども、末端の機関からしますと、例えば連合体のようなものができますと、一種の三重行政、二重か三重行政になりますので、全体の予算が増えないならば、どれぐらいの権限と予算がそこに充てられるかということ、そこが合理的にコストパフォーマンスが担保できるかどうかということを正確にお示しをいただかないと判断はしにくいかなと思います。
【稲永部会長】  どうぞ。
【共通基盤研究施設(佐々木)】  今のそのスケールメリットなのですが、確かにそれはシミュレーションが絶対に必要で、そのシミュレーションについて議論させていただきたいというのが本音だと思います。
 もう1点は、大学共同利用機関は、各機関がそれぞれの特性に応じて高度化されてきた経緯があり、事務の統一みたいなものが及ぶとすると、共同利用の進展が妨げられる可能性があって、それはおしなべてというわけには多分いかないのだろうと思いますので、それぞれの機関の特性が生かされるべきというふうに思います。
【稲永部会長】  ほかに御質問はございますか、八木委員。
【八木専門委員】  少し観点を変えてお聞きしたいのですが、大学共同利用機関とその共同利用・共同研究拠点との関係で、大学共同利用機関から共同利用・共同研究拠点に移行する観点においては、どちらかというと装置維持とかの点でマイナスがあるという御意見が多いかなと思ってお聞きしていたのですけれども、確かにその装置という面のデメリット、それから、資料をたくさん集めるという意味で大学共同利用機関の方がやりやすいというメリットとかがあると思うのですが、一方で、共同利用・共同研究拠点になると、大学院にぐっと入るということは、今度その学生がたくさんやってくるというメリットも逆に生まれてくるかもしれない。そういう観点においては、どういう具合にお考えになられているのかというのをどなたかにお聞きしたいなと思いました。今実際に指導されているのは総研大が中心かと思いますけれども、大学にがっちり入ると、大学のある専攻と密に連携することでそこの学生が多くやってくるという、また共同利用・共同研究拠点の場合、多く学生がたくさん集まってきて共同利用・共同研究拠点が成立しているところもあるかと思いますが、そういう人がやってくるということが逆に研究を大きくするということもあるかと思うのですが、そこはどう考えたら良いですか。どなたかお願いします。
【稲永部会長】  今の点について、質の高い大学院生の確保に苦慮されているというような発言もあったかと思うのですが、そうであるならば、どこかの大学の附置研究所になって質の高い大学院生の確保という道も1つの選択肢ではないだろうかという御発言、いかがでしょうか。井本所長。
【生理学研究所(井本)】  生理研の発表のときにも話をしましたけれども、我々、大学共同利用機関としてコミュニティにいろいろなサービスをやっております。それは、1つの大学に属しているわけではなくて、いろいろな大学と等距離にあるというのがかなり重要なポイントだと考えております。確かに大阪大学の附置研究所になって学生がたくさん来ればそれはありがたいなとは思うのですけれども、その大学共同利用機関としてコミュニティの研究のハブとなるというためには、今の立場は仕方がないのかなと思っております。
【稲永部会長】  ほかの機関からございませんか。それでは、竹入所長。
【核融合科学研究所(竹入)】  大学共同利用機関を教育的な観点、大学共同利用機関というのは当該分野のCOEとして、日本全国のある意味関係する分野の学生に協力という観点では、関与しているという意識を持っています。ですから、今核融合の関係では、核融合の人材をどう全国規模で核融合研がCOEとして協力関係を作っていくのかということを総研大とも協議しながら進めようとしているところですけれども、先生の1つ前の形に戻りまして、共同利用・共同研究拠点にはめ込む場合ということでしたけれども、むしろ、私の個人的な考えのあたりとしては、大学共同利用機関で分野融合とか、あるいは異分野的な新しい分野ができてきたと、それをしっかりと展開するために大学の共同利用・共同研究拠点として、分家ではないですけれども、そういう形で大学の共同利用・共同研究拠点として位置付けてやるという、そういうことの方が当該分野のCOEとしての大学共同利用機関に対して研究の発展として出てきた分家みたいな形が大学の共同利用・共同研究拠点として根を下ろすという、そういう方向性はあるのではないかなというふうな感じは印象として持っています。
【稲永部会長】  よろしいですか。では、基生研の山本所長。
【基礎生物学研究所(山本)】  1つは、当然研究面で全国に開いていかないといけないということがあるのですけれども、学生のことに関しましても、私は、かつて東京大学にいたことがございますけれども、東京大学の附置研究所がどこかの専攻になっていた場合にも、必ずしもその専攻の学生が附置研究所に喜んで行っているかというとそうでもないのですね。電車で1時間ほど離れた場所に行くのにもためらいがあるというようなことなのですね。ですから、例えば今の大学共同利用機関がそのままどこかの大学に所属した場合に、学生が来てくれるかどうかということに関しては、そんなに楽観的にはできないと思っております。
 それに対して、我々は、学生を非常にコストをかけてリクルートしているわけですけれども、そういうふうにしてきてくれる学生というのは、それなりにマインドを持った人たちなので、そういう人たちを大事に育てていくということも非常に大事な観点ではないかと思っております。
【稲永部会長】  ありがとうございます。どうぞ。
【国立天文台(常田)】  連携大学院制度と総研大を活用して優秀な学生は来ていただいていると思うのですが、御指摘のように大学院生の確保というのは非常に重要な課題だというふうには思います。しかし、もう少し大局的に見ますと、大学院生全体の減少傾向、理学系で大学院へ行かないという方の影響の方が大きくて、大学共同利用機関だからということではない問題の方がより顕在化しているのではないかと。大学共同利用機関としては、研究内容の魅力を高めて学生さんへの吸引力を高めるというやり方を貫いていくのが正攻法ではないかなと思っております。
【稲永部会長】  ほかに、今の件に関して。どうぞ。
【国立国語研究所(田窪)】  国語研は、総研大に参加していないので、自分の自前の学生というのは、連携大学院2つしかないわけですけれども、我々の役割としては、大学院教育そのものというのを特定の大学で行うというよりも、日本全国の大学と行うということで、出張のチュートリアルというのを毎年複数回、4回から5回やると同時に、それを外国の大学とか研究機関に行ってチュートリアルをやると。だから我々の分野、言語、日本語に関するような分野の全体的な底上げ、それを行うのが我々の役目ではないかと思っています。同時に、我々のところでは、PDフェローみたいな形で、既に博士課程を終わった人たちを集めて再教育をしながら実地トレーニングをするというふうな形で非常にうまくいっております。これを大学の附置研究所みたいなところへ落としてやれるかというと少し難しいのではないか。分野自体が狭くなる危惧がありますし、今のままの方が分野をより広くする、より学際的、国際的に展開することができるような体制がとれているのではないかということを感じています。
【稲永部会長】  総研大には、お入りになるお考えはないということですか。
【国立国語研究所(田窪)】  それは私が決めるわけではなくて、所員の総意に基づかないといけないのですけれども、今のところは、すぐに入って教育を始めるということは思ってない傾向が強いような気がします。
【稲永部会長】  分かりました。地球研も同じような状況だと思いますが、いかがでしょうか。
【総合地球環境学研究所(谷口)】  地球研の場合も総研大に設立以来入ってございません。その理由の大きなものが、教員全員に任期制があるというのがあります。そういう点がありますけれども、国語研のように連携大学院の方はやっていまして、連携大学院を通した人材育成教育には関係しています。
 もう1つは、地球研の場合特徴的なのが、研究プロジェクトをやっておりまして、そのプロジェクトを通して全国の共同利用・共同研究拠点も含めた大学の先生がコアメンバーに入っていただいて、その先生についている大学院生、学生さんの教育に関与しているという意味で、共同利用機関としては、一定の1つの大学だけではなく、先ほどもありましたけれども、広く日本全体の地球環境学の人材育成、教育に関与しているというのが実情です。
 もう1つは、地球研の特徴として、海外での研究が多いので、現状として海外の調査地で博士号を取りたいという、そういう要望が強いとも聞いています。そこの需要といいますか、そういうことはありますので、今後そういうふうなものをどういうふうにして人材育成、教育につなげていくかということは議論したいなと思います。
【稲永部会長】  ありがとうございました。今、1法人化とか、在り方を検討している一番の原因の1つは、ユニークな特徴のある研究、世界的な研究を皆さんがお進めになりたいというお考えはよく分かるのですが、なかなかそうした面に対して、財政的な支援ができにくい状況にあるということで、どうやってその辺の今の体制、あるお金の中で、より世界的に発信できる研究を行っていくかということが問われていると思うのですね。その辺に関してもう少し御発言を頂ければと思うのですが。困っておられないということであれば、もともとこの話はないということになると思うのですが、いかがでしょうか。 では、こちらの委員の方から、では、佐藤委員。
【佐藤臨時委員】  今、部会長さんがおっしゃったことと少しずれてしまっていますが、先ほど八木先生のお話にある程度絡むことで、脱線してしまったら申し訳ないなと思っていますが、ともかく少しお伺いしたいと思います。
 大学共同利用機関というその名前自体が、どうかというのが正直昔からありますが、基本的には、そこは今部会長がおっしゃったように、まさにその研究をどういうふうに世界をリードするように進めていくかと、そこのところが大事なところですし、それに共同利用というのが絡むということだとは思います。
 ただ、同時に、縦糸と横糸のような関係で、人材育成というのは、これは非常に大事で、後継者を育てる、国の中でということではなくて、世界の後継者を育てるという意味でも非常に大事な役割を果たしていただく必要があるということで、1つは、今総研大の話が出ています。照会事項の中にもそれがありましたけれども、それも本当に大事な話ですが、もう一方で、若手の研究者としてどういった方を位置付けているかという問題で、博士研究員の問題というのが一言もどなたからも出てこなかった。私、創設期の分子研におりましたので、そのときのことが、少し考えが古いのかもしれませんけれども、研究をそういう現場で担うのは博士研究員で、それをいろいろな形で採用、雇用して、そこを更にPIになるように育成していく。それは、研究と教育との両方の融合した形だったと思います。その点で、博士研究員に関して、例えば、しばらく前から発足した卓越研究員をどういう形でどのくらい受け入れていらっしゃるかというようなこともお聞きしたいのですが、そのときに、その問題と、総研大の問題というのを同じように考えていらっしゃるのか、それともはっきり分けて考えていらっしゃるのか、そういったことを本当は伺いたいと思います。
 総研大というのは、これは私の記憶が間違っているかもしれませんけれども、大学院の設置審議会を通してはいなくて、法律上設置されたというような経緯があったのではないかと思うのですね。そうすると、大学の教育、大学院では、例えばですけれども、アドミッション、それからカリキュラム、ディプロマの3ポリシーという、これをきちんと掲げて、なおかつ実際にある程度長期的視野に立って教育をしていくということが必要であって、それなくしては大学院教育ではないというふうに考えている方が多いと思います。
 ですから、そこら辺が今現在の総研大、実際にはそれぞれの研究指導をされる方というのは、もう研究機関それぞれにおられるということで、総研大のある意味グリップが効いている状況かどうかという、非常に懸念される状況があるかと思うのですね。ですからその辺を、まさにこれから大学共同利用機関法人をどういうふうに再編成するのかどうかという、そこが一番の問題点になっていると思いますけれども、研究だけではなくて、その人材育成のときに総研大が必要だとおっしゃるところは、単に働き手が欲しいからというような、そういうことではなくて、しっかりした教育の、大学院教育の方向性を持っていらっしゃるかどうかというようなこと、その辺のことをしっかりと、はっきりと教えていただければと思います。少し失礼な言い方になっていたかもしれませんので、その点はどうか御容赦ください。
【稲永部会長】  では、井本所長。
【生理学研究所(井本)】  総研大はカリキュラムもしっかりしていますし、各基盤、かなりしっかりやっていると思います。それと博士研究員の問題とは別の問題だと思います。
【稲永部会長】  少し時間が押してきましたが、フクシマ委員。
【フクシマ臨時委員】  どうも本日は御説明をありがとうございました。
 先ほど少し部会長の方からもお話があったポイント、財政的な支援という御質問があったのですが、私が一番お伺いしたかったのは、こちらでたしか国立国語研究所の田窪所長がおっしゃられた改革の、ここでお書きになっていらっしゃる「改革のための改革であってはならない」というそのポイントから考えて、国立天文台の常田台長からの問合せです。これは資料5の13ページ、質問9の「枠組みの議論の前提として、現在の4大学共同利用機関法人という枠組みが、平成15年の4機構発足時に目指した「将来の学問体系を想定した分野を超えた連合」として足るものだったか否かという総括を行うべきである」と、まさにこれを行わなければいけないと思っていまして、そのために、一番私がお伺いしたかったのは、先ほど少し部会長からもお話がありましたが、財政的支援が十分かとか、今現在実際に所長として日々こうした運営をなされている方たちが、御自分たち自身がこれに足ると思われていらっしゃるのか。つまり、そういう意味では、こういうところも足りないとか、それから、これはきちんとできているけれどもというようなこと、以前の全体のプレゼンテーションの中ではいろいろお伺いをしてはいるのですが、総括として、今これを変えるべきかどうかというところの根本的なお気持ちを伺いたいなと思っていたのです。変えるのであればこの枠組みの幾つ、この3つなり何なりのどういった選択肢が一番良いと思っていらっしゃるのかというのをお伺いしたかったのです。
 本日は時間がありませんので、全体にお伺いすることはできないかと思いますが、もしどうしてもこのままで行きたいと思っていらっしゃる方がどのぐらいいらっしゃるかとか、それよりもむしろこっちの方が良いと思っていらっしゃる方がいらっしゃるか、その辺をお一方でもお聞かせいただければと思います。
【稲永部会長】  では、国語研の田窪所長。
【国立国語研究所(田窪)】  まず、そのメリット・デメリットとそのシミュレーションがどれぐらいきちんとできているのかということに尽きると思います。今困ってないのかと言われると困っています。国語研は、60歳定年だったのが65歳定年になってしまったために、1人につき500万円ぐらいの退職金を準備しないといけないと。当然1人辞めると500万円余計に払わないといけないということは、次の人を雇えないということです。そうすると、今のままであればあと10年ぐらいで国語研は10人減ります。それが、例えば1大学共同利用機関法人になることによって解決できるのであれば、そちらの方に移管しても、少しぐらいの犠牲を払っても良いかもしれない。だけれども、そういうことにならなくて、我々は多分予算規模で一番小さいのですけれども、そこを取ってもっと選択と集中をしようというふうな方向に行くのであれば、身を賭して反対しなければならない。どちらの方向に行くのかということが分からない状態で議論をするのは、適切ではないというのが正直な考えです。何とかしてはほしいです。
【稲永部会長】  分かりました。まだまだ御意見はあると思うのですが、時間が参りましたので、きょうの今回の議論はここで終了させていただきます。次回は残りの10機関からお話を伺いたいと思います。本日は、お忙しいところをどうもありがとうございました。
 次に、共同利用・共同研究体制に係る平成31年度概算要求について、事務局から説明をお願いします。
【高見沢学術機関課課長補佐】  時間も限られておりますので、簡潔に御説明させていただきたいと思います。資料6を御覧ください。
 平成31年度概算要求について、全体像から御説明いたしますけれども、1ページ目、これは文部科学省の中の科学技術予算の総括表であります。科学技術予算としては1兆1,680億円の概算要求ということで、2,050億円増の要求をさせていただいております。特に学術研究の関係で言いますと、左側下のところ、赤文字になっておりますけれども、研究力向上加速プランというパッケージの施策を構成して、科研費あるいは戦略的創造研究推進事業などのパッケージを構成して概算要求をさせていただいているところです。
 一方で、当課が所掌しています大学共同利用機関、あるいは共同利用・共同研究拠点の強化経費というのが運営費交付金の方で予算要求をさせていただいておりまして、それが2ページ目になります。科学技術予算とはまた別の予算として運営費交付金があるわけですけれども、全体額としては、一番上にありますとおり1兆1,286億円の要求をしております。前年度から比べますと、大体300億円の増要求ということでありますけれども、特に附置研究所、あるいは大学共同利用機関の大型プロジェクトの関係で言いますと、下側にあります真ん中と右側の赤囲みがしてあるところが関係しているところでありまして、共同利用・共同研究拠点の強化ということでいきますと、特に若手研究者の支援ですとか環境整備をするということで31億円増の96億円を要求しております。また、学術の大型プロジェクトということでいきますと22億円増の236億円という要求をさせていただいております。
 また、大学全体の関係で言いますと、赤囲みはしてないのですけれども、一番右側の教育研究基盤の確保・強化ということで、特に大学における設備の老朽化、陳腐化というのが進んでおる状況を何とか改善したいということで206億円の増要求をしておりまして、運営費交付金の中の要求増分ということでいきますと、大体この研究関係が中心になっているという状況でございます。
 政策方針、政府の方針との関係で言いますと、冒頭で申しましたような研究力向上加速プランというものが総合イノベーション戦略ですとか未来投資戦略の中でも規定されておりまして、こういった政策方針に基づいて今回要求をさせていただいているということでございます。
 全体のポンチ絵が4ページにありますので御覧いただきたいと思います。研究力向上加速プランというタイトルでついておりますけれども、特に10年後を見据えて生産性の高い事業について、若手研究者の活躍機会を確保していく、そのためのリソースの重点投下ですとか、制度改革を合わせて進めていくということで、共同利用・共同研究体制については、一番下の青い台形にあるとおり、科研費で行うような若手研究者の支援を下支えするといいますか、機能強化によって研究基盤を整備していくという役割を担っておりますので、全体の下支えのための強化という観点でこの加速プランの方に加わっております。
 細かい数字が5ページ目には書いてあるのですけれども、その後ろにポンチ絵で書いておりますので、そちらを使って説明させていただきたいと思います。まず6ページ目ですけれども、共同利用・共同研究体制の強化というタイトルで書いているものですが、特に大学の附置研究所・センターの強化・充実ということでいきますと、左側の枠囲みがしてあるところですけれども、概算要求額としては109億円ということで、現在推進しています各拠点の機能強化に必要な経費、それから、現在その審査が続いておりますけれども、国際共同利用・共同研究拠点の認定とその活動経費。それから、3番目の丸ですけれども、若手研究者の支援ということで、特に若手研究者が自立して研究できる機会を付与するということと、研究設備の整備を併せて進めて、できるだけ整った環境で、若手研究者に活躍の機会を付与するということで要求を組み立てております。
 また、右側の枠囲みですけれども、学術研究の大型プロジェクトの推進ということで、概算要求額は432億円ということで要求をさせていただいております。ここでは、例えばということで、TMT計画を推進する、東京大学のKAGURAの計画、それからSINETSの整備というものを上げておりますけれども、一番後ろのところに飛んでいただきますと、最後の10ページになるのですけれども、大規模学術フロンティア促進事業等一覧ということで並べておりますが、一番右下のところが新たに要求しているものでございまして、高輝度大型ハドロン衝突型加速器による素粒子実験の支援ということで、こちらを追加して概算要求をさせていただいているという状況であります。
 あと、公私立関係の共同利用・共同研究拠点がございまして、そちらの方も3億円程度、全体では500億円弱の概算要求をさせていただいております。以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 最後に、今後のスケジュール等についてあればよろしくお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  お手元の資料7を御覧ください。次回の研究環境基盤部会ですが、来週の10月18日にヒアリングを10機関から行いたいと考えております。その後、11月7日、11月30日におきまして、ヒアリング等も踏まえた今後の在り方についての議論を深めてまいりたいという予定でございます。以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。以上で全ての議事が終了しましたので、本日の会議はこれで終了します。各大学共同利用機関の代表の方々、お忙しい中、本日の御説明をありがとうございました。

―― 了 ――


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