研究環境基盤部会(第96回) 議事録

1.日時

平成30年8月9日(木曜日)15時00分~17時30分

2.場所

文部科学省13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 大学共同利用機関の今後の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

稲永忍部会長、相田美砂子委員、井本敬二委員、勝悦子委員、小林良彰委員、佐藤直樹委員、瀧澤美奈子委員、永田恭介委員、藤井良一委員、松岡彩子委員、観山正見委員、八木康史委員、山内正則委員、横山広美委員

文部科学省

磯谷研究振興局長、西井学術機関課長、渡辺振興企画課長、錦学術研究調整官、早田学術機関課課長補佐、高見沢学術機関課課長補佐、吉居学術機関課連携推進専門官、その他関係者

5.議事録

【稲永部会長】  皆さん、こんにちは。定刻よりちょっと前ですが、御予定の方はお集まりなので、ただいまより、科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会第96回を開催いたします。
 委員の先生方におかれましては、御多用の中、また天候の悪い中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 まずは、事務局から委員の出欠、配付資料の確認をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  本日は御足労いただきまして、誠にありがとうございます。本日は、松本委員、小長谷委員、天羽委員、伊藤委員、フクシマ委員、森委員、龍委員が御欠席でございます。勝委員と横山委員につきましては、後ほどいらっしゃる予定でございます。
 本日から研究環境基盤部会もタブレットを使用した会議を、1回目ということでさせていただいております。お手元にしおりがございますが、上から2つ目の議事次第を御覧ください。こちらの議事次第にございますように、資料1から資料6までと、あと、参考資料につきまして、このタブレットに入っております。しおりのところにございます各資料番号を押していただきますと、そのページに飛ぶ仕様になっておりますので、よろしくお願いいたします。もし操作などで御不明な点がございましたら事務局にお申し付けください。よろしくお願いいたします。
【稲永部会長】  ありがとうございました。本日の基盤部会では前回に引き続き、大学共同利用機関の今後の在り方について審議をしたいと思います。前回は、自然科学研究機構、高エネルギー加速器研究機構からヒアリングを行いましたので、本日は人間文化研究機構、情報・システム研究機構、総合研究大学院大学からヒアリングを行いたいと思います。なお、ヒアリングに当たっては、機構法人に加え、大学共同利用機関からも出席いただいております。
 ヒアリングに入る前に、本日のヒアリング関係の配付資料について事務局から説明をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  簡単ではございますが、説明させていただきます。本日配付の資料1でございますが、こちらは前回と同様、4機構法人及び総合研究大学院大学に対しまして、事前にヒアリング事項として送付をしているものでございます。このヒアリング事項につきましては、資料2にございます「大学共同利用機関を取り巻く課題について」、こちら、6月7日の研究環境基盤部会の配付資料でございますが、こちらにございます背景、基本的な方向性、検討課題の例に沿いましてヒアリング事項を決めたものでございます。きょうは、こちらに基づいてヒアリングを進めていくことになります。どうぞよろしくお願いいたします。
【稲永部会長】  ありがとうございました。それでは、ヒアリングを開始します。
 最初に、人間文化研究機構から説明をお願いします。
【人間文化研究機構(平川)】  本日は、このような機会を設けていただきまして、誠にありがとうございます。出席者を紹介します。私、機構長の平川、窪田理事、キャンベル副機構長兼国文学研究資料館の館長。あらかじめいただいたヒアリング事項に沿って資料を作成していますが、時間の都合で事項を絞って御説明させていただきたいと思います。
 初めに、法人のガバナンスの強化については、2ページをお開きください。機構長のリーダーシップの2つ目の丸のとおり、機構本部と各機関との一体的運営を構築するために、役員と機関の長による、毎月開催の機構会議や役員の機関訪問などにより、各機関の事実認識と問題意識を共有するよう努めています。また、外部有識者の意見をできるだけ取り入れるよう、経営協議会と教育研究評議会の外部委員を中心とする企画戦略会議を設けるなどしています。さらに、機構長裁量経費については、機能強化に資する積極的な取組に重点的に配分しているところです。
 次に、4ページを御覧ください。第3期の初年度である平成28年4月に、総合人間文化研究推進センターと総合情報発信センターの2つのセンターを設置し、各機関の研究力と研究成果の発信を強化しています。研究推進センターでは、機構の6機関と国内外の研究機関や地域社会等との連携を促進し、人間文化の新たな価値体系の創出に向けて、現代的な諸課題の解決に資する組織的な大型国際共同研究「基幹研究プロジェクト」を推進しています。
 この基幹研究プロジェクトは、機関拠点型、広領域連携型、ネットワーク型の3類型、17事業に国内で100以上、国外60以上の大学等と組織的な連携を組んでいます。一例を挙げますと、真ん中の広領域連携型のアジアにおける「エコヘルス」研究の新展開では、従来、医療等の視点で捉えられてきた健康というテーマを生態環境、これは地球研が担当し、食生活、民博が世界各地の食生活を担当し、古典籍、国文学研究資料館が担当と、人文学研究から総合的に探究しようとするものです。これはほんの一例ですけれども、こういった連携によって問題解決に迫ろうという試みです。
 5ページの人的資源の改善については、厳しい財政状況の中、大学等も含めて、ポストの減少と流動性の低下傾向にあり、本機構も例外ではなく、法人化後の教員の減員は、7ページの表に示すとおり、61名削減されています。その対策として、センターからの派遣研究員や各機関での研究者の受入れによる若手研究者の支援、クロスアポイントメント制度の活用など、機構各機関で積極的に実施しています。
 8ページの物的資源の改善については、理系の研究機関と異なり、多様で特色ある図書、標本資料等、膨大な学術資源の有効活用を目指し、デジタル化に積極的に取り組んでいます。
 次に、9ページ、機関の構成の在り方について。本機構は、人間とその文化を総合的に探究する学問と定義される人文学の発展への貢献をミッションとしています。人文学における新しい研究領域の創出に向けた人文機構の包括的研究戦略の上に、各機関はここに示したように、この枠の中に6機関の現在の主たる事業が示されていますが、このような形で研究を推し進めているところであります。
 この機関の構成・在り方で、記述のとおり、各機関はミッションの実現に向け不断の見直し等を実施し、各分野のナショナルセンターとしての役割を果たし、6機関による人間文化研究の総合化と異分野融合研究推進に寄与しています。
 また、学際的・分野融合的領域の創出に向けては、4機構共同研究など、機構の枠組みを超えた新たな研究領域への展開に積極的に取り組んでいます。
 さらなる人文学研究の総合化・発展に向け、人文学の研究特性を踏まえた国際的な外部評価制度や学術の動向等に基づいて、機関の役割・意義、機関の構成、新たな研究領域創出のための組織・制度を常に検証・見直しをすることが必要と考えています。
 それでは、10ページ、人材育成機能の強化を御覧ください。総研大との連携協力については、基盤機関となっている4機関が、文化科学研究科の教育を担い、最先端の研究成果、収蔵資料やデータベース等、学術資源を活用するなど、各機関の特色を生かした教育を行っています。
 11ページの連携大学院制度等の活用では、6機関が各分野の中核拠点として連携大学院制度等を活用し、次世代の人材育成に貢献しています。
 次に、12ページの大学の共同利用・共同研究拠点との連携について。人文機構の研究活動は共同研究が基本であり、各種の共同研究を通じて関係機関との連携を深めています。特徴として、他の3機構と比べて、公立・私立大学の共同研究者の比率が高いことが挙げられます。なお、13ページの3つ目の記載のとおり、大学の共共拠点等から本機構への移行の相談があれば積極的に検討する所存です。
 また、人文系共共拠点等のネットワーク組織を本年、正式に立ち上げる予定です。昨年、準備チームを立ち上げておりますが、本年、正式な立ち上げを考えております。ここでは、大型プロジェクトへの共同企画などを立ち上げ、共同で外部資金獲得を目指す計画などを想定しています。
 14ページをお開きください。機構法人間の連携では、歴博が人文機構としては初めて、高エネ機構の物構研と共同研究を開始するとともに、機構の枠を超えた機関同士の取組も多く行われ、海外の機関との連携も積極的に行っています。
 15ページ、地方創生やイノベーション創出の項目ですけれども、地域との連携では、地震や豪雨などの災害が相次ぐ日本列島各地の現状の中、全国レベルの地方創生事業として、昨年度、歴史文化資料保全大学・共同利用機関ネットワーク事業を立ち上げました。人間文化研究機構と東北大学、神戸大学との間で包括協定を締結し、中心拠点として全国に、今立ち上がってあります大学を中心とした24の歴史資料ネットと連携し、地域の歴史文化研究と資料保全のための全国広域のネットワークを構築しようとするものです。個々の大学等が有する資料情報のデータ化や、災害時の歴史文化資料等の保全活動を相互に支援する体制を確立し、地域における歴史文化の継承と創成に向けて、人文系大学の教育研究機能強化を目指しております。
 16ページには、地方との共同研究の事例や産業界とのイノベーション創出に向けた共同研究をお示ししてあります。
 18ページを御覧ください。機構法人の枠組みについて。現状の4機構法人体制を踏まえて、改革の方向性について検討しました。現在の4機構法人の体制のメリットとして、まず、機関間の連携協力の緊密化による機関・分野を超えた重要な研究プロジェクト形成が可能となり、人文学の総合化に寄与していることが挙げられます。また、機構が人文学分野を包括的に代表することで、国内外の大学等との幅広い協力関係の形成並びに、これからの形成が期待されています。さらに、学術資源について、デジタル化の推進等により、機関を超えて柔軟に活用するようになりました。
 次に、4機関法人の枠組みの在り方については、総研大を含めたネットワーク組織については、組織同士のつながりを強化しており、現在の4機構法人体制のメリットを発展することが可能と考えます。また、異分野融合研究の機構間連携の緊密化も期待されます。
 デメリットとしては、大学分科会等で審議されていますが、ネットワーク組織の制度設計が現段階では不透明であることや、屋上屋をさらに重ねることにより、各機関の存在意義が学術行政上低下することが懸念されます。
 機構法人の統合、一法人化については、機関間連携の拡大の可能性がメリットとして考えられますが、一方で、一法人による学術的マネジメントが適切かどうか不透明であったり、資源配分の偏りの可能性などのデメリットが考えられます。機構法人の枠組みについては、これまで人文機構が人文学の発展に果たしている機能に鑑み、この機能をさらに発展することができる改革を行うべきと考えています。
 最後に、19ページを御覧ください。第4期につなげる人文機構の新たな研究展開をまとめてみました。今後の研究の発展のためには、ネットワークの拡充と活用、デジタル化の促進、異分野融合研究の推進、国際化の推進の大きく4つの視点からアプローチが重要と考え、重点的に取り組みつつあります。これにつきましては、皆様方から、今後、御意見、御指導等を頂戴できれば幸いです。
 以上で私の説明を終わらせていただきます。
【稲永部会長】  ありがとうございます。きょうは、キャンベル国文研館長も来られていますので、追加等があれば御発言ください。
【人間文化研究機構(キャンベル)】  発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。きょうは、一機関の機関長として発言をさせていただきたいと思います。国文学研究資料館のロバート・キャンベルでございます。我々国文学研究資料館では、今年がちょうど10年の間で中間の地点に当たる大型研究プロジェクトを進めております。それと並行して多くの共同研究を進めているわけですけれども、国文学という1分野に閉ざすことなく、当然、広く人文科学をはじめ、そこから理系、様々な異分野の研究機関、あるいは研究者と結び、共同研究を進めているところでございます。ここに書きましたけれども、多くの研究者あるいは研究機関と一緒に、参加機関としては121の機関、参加者はほとんどが館外の研究者として、ここに挙げましたような共同研究を我々の基盤事業として進めているところです。
 「国文研主導共同研究」という項目がここにございますけれども、それは当然粛々と進めるとして、その下にあります機構内連携共同研究、これについて今、機構長からあらまし紹介がなされましたけれども、これは我々にとって、この大型事業を進める上では非常に重要な部分になっております。特に異分野融合による総合書物学というものが人文科学という固まりの中で、機構の中で研究推進センターを中心に企画され、様々な支援、あるいは、我々のアウトプットによってなされている我々の基本的な事業の1つです。
 もう一つ、その下に、「研究開発系共同研究」という項目を掲げましたけれども、これは主として、大型ネットワーク事業の研究を進める中で、今構築しようとしている30万点の古典籍のタグ付けされた画像データベースを、それに即して、どのような新たな検索ができるのか、あるいは、そこに上がってくるテキストを、例えば、OCRによる新たな自動判読の技術ですとか、そういったことを多機関のみならず多機構、特に情報システムの統数研並びにNIIの協力を得て共同研究を進め、成果を出しているところです。私の立場から、この連携が、人文機構、人文科学という1つの枠の中でなされることがなぜ大切であるということを説明するのには、きょう、資料には上げませんでしたけれども、機関間あるいは機構間のみならず、我々は海外の多くの資料保有機関と共同を持ち掛け、あるいは受け入れ、研究をしています。
 今年度から来年度に掛けて、日本の文献を中心とした世界的なコンソーシアムを構想し、構築していく予定を具体的に進めているわけですけれども、海外の機関と交渉するときに、具体的にMOU、協力協定を結ぶわけですけれども、先方にとっては、1分野でもなく、あるいは1つの国でもなく、広い意味での1つの学問領域にはどのような資源があり、該当する機関にとって、結ぶことにどういうメリットがあるのかということを精査します。
 私は今、アメリカのスミソニアン・インスティテュート、その中にフリーアギャラリーというアジアに特化した美術館が、唯一アメリカの連邦の機関としてありますけれども、今、そういった協定の交渉を進めるべく先月からその作業に着手をし、今年度内にできればMOUをワシントンで結びたいと双方で話を進めているわけですけれども、そこで問われることが、日本文学は分かる、そして、我々が今進めようとしている非常にイノベーティブな研究開発系の研究、例えば、絵検索を含めたものは理解できる。その上に、例えば、言語でありますとか歴史でありますとか、あるいは民族でありますとか、どのような資源が背景にあり、そのくくりの中でどういうふうに一機関として国文研が位置付けられているかということに大変熱い関心を持ち、そのことをしっかりと説明することが先方の機関にとっても我々と組むことの大きなメリットになっています。
 逆に申しますと、人文科学という法人格を与えられた単位としてではなく、つまり、学術領域ではなく、国という面として我々のプレゼンテーションをする場合には、私は、それは即不利になるとは申せませんけれども、少なくとも現在のような形ほど有利ではないことを痛感しているところであります。
 人文科学そのものを定義し直す、若手人材の育成を含めて1つの分野、日本の文化発信にとって非常に重要な豊富な文献資料をどのように発言をし、発信をしていくかを考えるときに、緩やかではあるけれども、形として見える人文科学という領域が我々の背景にあり、私たちがそこと歩を合わせて働いている、成果を出しているという形が、私が今預かっている1つの機関にとってはベターだと思っております。
 若干、最後に主観的な話を交えましたけれども、一機関としての立場、以上申し上げたいということでお願いいたします。
【稲永部会長】  ありがとうございます。それでは、委員の方々、御自由に質問をお願いします。
 小林委員、どうぞ。
【小林臨時委員】  5点ほどお尋ねしたいと思います。まず1ページ目のところなのですが、機構図のところを拝見しますと、監事が右上にありますが、どことも線がつながってないところになります。ほかの3機構は常勤の監事ですから、人間文化研究機構も当然、常勤の監事だと思いますが、この監事の方がどことも線がつながってないのでお尋ねをしたいのですけれども、どういう権限と役割を持っているのかというのが1番目のお尋ねしたいことです。
 1つ1つの方がよろしいですか、それとも全部……。
【稲永部会長】  1つ1つの方が。
【小林臨時委員】  では、まずお願いいたします。
【人間文化研究機構(平川)】  4機構の中で、まだ実は人間文化研究機構の監事は非常勤の形を取っております。これは常勤が望ましいわけですけれども、今のところ、そこまで踏み切れていないのが現状です。
 監事の権限が非常に強化されていることは、御承知のとおりだと思います。毎年、6機関を丹念に、学術研究に踏み込んだ形で監査をしていただいております。そして、それは経営協議会等できちっとした報告を外部の委員にもしているところでありますし、監事の進言によって、これまでにも改革を進めた部分も幾つかございます。
【小林臨時委員】  できれば常勤であることが望ましいと思いますが、2番目に、14ページを見ますと、積極的に海外の機関との共同研究を進めていらっしゃいますが、海外との共同研究を行う場合の費用負担はどういうルールでやっていらっしゃるのでしょうか。
【人間文化研究機構(平川)】  これは、それぞれ海外との、例えば、基幹研究プロジェクト等の場合は、当然、協定に基づいて行っております。
【小林臨時委員】  何か協定のルールが、原則みたいのがあれば教えてください。
【人間文化研究機構(平川)】  協定のルールというのは、この場合……。
【小林臨時委員】  それとも全部、人間文化研究機構の方が基本的には出すと。例えば、向こうから来る人の旅費とか会議費用を別にすれば、掛かる直接経費は全部負担されていらっしゃるのでしょうか、それとも、分担されていらっしゃるのでしょうか。
【人間文化研究機構(平川)】  済みません、推進センター長から。
【人間文化研究機構(窪田)】  財務担当から若干補足させていただきます。完全にルールがあるわけではありませんけれども、ケース・バイ・ケースでマッチングファンドのような形で先方に負担していただくケース、あるいは、インカインドといいますか、こちらが向こうで様々な事業を行うときに、そのベースとなる部分を負担していただいたり、そういういろいろなケースがございます。きちんとしたルールがあるわけではございません。
【小林臨時委員】  ルールがないというのは、ちょっと驚きましたけれども、18ページに、一法人化した場合のデメリットとして、「学術的マネジメントが適切か不透明」という1行があるのですが、何をもって適切と定義されていらっしゃるのでしょうか。
【人間文化研究機構(平川)】  これにつきましては、やはり日本の人文学については、我々としては、現在、国内にある人文学の中で最も大きな推進母体になっておりますので、人文学の大きな課題として立ち上げたのが基幹研究プロジェクトです【小林臨時委員】  質問と御回答が少し合わない気もするのですが。
【人間文化研究機構(平川)】  要するに、一法人化になったときに、先ほど、キャンベル機構長も申し上げましたように、やはり人文学としてのスケールとしては、今、適切なスケールになっておりまして、それを生かす形が果たして取れるかどうかが、一法人化のときの一番懸念材料と考えております。
【小林臨時委員】  つまり、マネジメントが適切かどうかというのは、人文学のスケールが減らされないことという意味でおっしゃっているわけでしょうか。
【人間文化研究機構(平川)】  そうですね。法人化になって第3期までを迎えて、少なくとも6機関の基盤的な研究は促進され、さらに、基盤の上に立って基幹研究プロジェクトで先ほど説明しましたように、複数の機関が連携することが可能になり、さらに、機構を超えた異分野融合も可能になってきたという面で、少なくとも人文学の機構というものの意義が大学共同利用機関法人ということで証明されてきておりますので、この法人格をやはり維持していきたいというのが大きな希望であります。
【小林臨時委員】  次の19ページを見ますと、今後、ネットワークの拡充、デジタル化の促進、異分野融合、こういう話になってくると、他機構、例えば、情報・システム研究機構とか、実際に今でもかなり共同でやっていらっしゃると思いますけど、そういうところとより融合してやっていくメリットが大きいのではないかと思うのですが、むしろデメリットの方が大きいというお考えなのでしょうか。
【人間文化研究機構(平川)】  はい。あくまでも異分野融合なり、あるいは現在、人文機構では6機関のうち5機関が情シスとは協定を結んで連携して行っています。それは、それぞれの基盤が学問領域を深めることによって初めて生まれる連携になるわけですから、その研究なくしては異分野融合も、情シスのようなところとのデジタル化の促進等も、そこで必要性を証明できているのではないかと。
 つまり、それぞれの機関がミッションにふさわしい学術研究を、この期間、極めて基盤的なものをしっかりと作り上げたから、次のステップとして異分野融合なり、あるいはたくさんの学術資源のデジタル化が必然になってきて、そこで情シスと連携することによって、それが大きく展開しているということですので、そういう面での人文機構の固有の在り方を大事にしていきたいと思います。
【小林臨時委員】  最後の質問なのですが、日文研でいろいろなジャーナルを発行されていらっしゃいますけれども、それぞれインパクトファクター、どれくらいあるのでしょうか。
【人間文化研究機構(窪田)】  インパクトファクターはまだ準備中です。
【小林臨時委員】  ということは、申請はされてない?
【人間文化研究機構(窪田)】  はい、まだやっておりません。
【小林臨時委員】  なぜですか。
【人間文化研究機構(窪田)】  人文系の分野で、インパクトファクター等をきちんと申請していけば望ましいのですけれども、必ずしもそれになじむような形での論文構成になってないところもあります。
【小林臨時委員】  具体的にどういうことですか。インパクトファクターの構成要素というのは、要するに、2か国、3か国の人間が書いているというのは、実際、ジャパンレビューでもお書きになられていますよね。
【人間文化研究機構(窪田)】  はい。これから検討したいと思います。
【小林臨時委員】  以上です。
【稲永部会長】  ほかの方。観山委員。
【観山専門委員】  今のこととも関係するかと思うのですが、19ページに「国際化の推進」と書かれていて、先ほどキャンベル先生から、国文学資料館に関しての国際化の例を聞いて非常に安心したところですが、人間文化機構全体としてどのような将来像なのかということを聞きたいと思っておりまして、まさに人文系の、大学でもそうですけれども、評価という面で、さっきのインパクトファクターもありますけれども、国際的な中の評価になかなか乗ってないという面が日本の学術を評価するときの非常に不完全なところだと思うのですよね。国際的な市場の中では、なかなか日本の大学とか研究所が評価されてない部分があろうかと思うので、是非国際化を推進していただいて、たくさんの国際協力の研究成果を出していただいて、なおかつ、もしも日本語とかそういうことで書けるのであれば、新たに人間文化機構として評価の基準みたいなものをしっかりと出されて、そして、国際的なスタンダードの中に、いろいろな会社にアピールしていくことができればすばらしいなと思うのですが、そこら辺については何かお考えがあるのでしょうか。
【人間文化研究機構(平川)】  それでは、2点で申し上げたいのですが、1つは、先ほどの機関の構成の在り方のところで強調しましたように、我々としては、指摘されています国際的な外部評価制度を導入することを大きな方針にしております。それから、人文学の独自の評価システムというのを、この機構が一番大きなプロジェクトをたくさん持っていますので、ここで確立する以外、国内では無理だろうということで、これは3期の間に1つの大きな目標にしているところであります。
 国際化の問題については、御承知のように、本機構の場合は、日本研究を4機関で主として行っています。それは、日本文学研究、日本語研究、日本歴史研究、日本文化研究という形で、大きくは文化でくくれると思うのですが、この研究が幸い、大学共同利用機関法人のこれまでで基盤がしっかりと作り上げられ、それから、膨大な学術資料を、いわばデジタル化して発信もでき、国文学研究資料館の大型のフロンティア事業が最近では一番典型になるわけですけれども、こういった事業を通じて日本文化研究の新構築を行って、それから、日本独自の日本文化に関わる国際発信をもっと積極的に本機構を中心にして行う。これは大学との連携で行っていきたいというのが機構の大きな方針で、今御質問にありました、人文機構の新たな研究展開にあえて「国際化の推進」というのを挙げているのは、民博とか地球研は、これはもう世界的な展開を元から実践しているわけですけれども、これから4つの機関の日本文化研究というものを新たに構築して国際発信したい、そういう機構としての方針を今回は明らかにしたところであります。
【観山専門委員】  ありがとうございます。まず、評価の指標について今期末までに発信したいということは非常に心強いことだと思いますし、日本文化研究は非常に重要ですから、世界の中でどういう位置付けにあるのかをしっかりと示していただくことが非常に重要だと思います。よろしくお願いします。
【人間文化研究機構(平川)】  はい、ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかにございますか。
【人間文化研究機構(窪田)】  ちょっと補足させていただいてよろしいでしょうか。
【稲永部会長】  結構ですよ。
【人間文化研究機構(窪田)】  先ほど、英文雑誌等についてインパクトファクターをきちんと求めるべきだと小林先生から意見をいただきました。それはそのとおりだと思います。ただし、人文機構のやっている研究の中で、公表の仕方が、例えば、日本語の書籍とかそういうふうになっている場合には、どれだけの引用があったというのはなかなか測りにくい。特に海外でのインパクトを測りにくいところがございます。
 その辺も含めて、著作等については全てリポジトリを作成しながら、どういうところでどういう形で引用されてくるのかというのをできるだけ広く調べる作業を今進めていまして、そういう意味では、できる限り人文研究も、理系等々と同じような物差しを、同じようなって完全に同じにはならないと思いますけれども、そういうのを進めていきたいと考えています。
【小林臨時委員】  1つ補足しますと、同じ文系でも社会科学の場合は、Social Sciences Citation Indexでやっています。
【人間文化研究機構(窪田)】  はい、存じ上げています。
【小林臨時委員】  それが人文学でできないことはないと思います。自然科学とSSCIの違いは、要するに、サイテーションのピークが違うわけです。社会科学の場合は5年が一番ピークになるので、5年で取っているというものが世界的な基準でやっています。人文学の場合は、場合によっては、もっと長いのかもしれませんね。それはそういうふうに変えればいいわけで、それはそんなに難しいことではないと思います。
【人間文化研究機構(窪田)】  ありがとうございます。その辺も存じておりますので、研究を進めていきたいと思います。ありがとうございました。
【稲永部会長】  ほかにございますか。横山委員。
【横山臨時委員】  御説明ありがとうございます。今のことにちょっと関連してなのですが、やはり理系分野でも当然、統一的な評価は大まかにできてはいても、分野によってかなり状況が違いまして、例えば数学分野などは、インパクトファクターによってきっちりとは測れないと。多様な文献に、それぞれいい研究が掲載されている。その中で評価されていることもありまして、理系に即したというところは、それぞれの先生方の御意見もあり、大変重要なポイントだと思うのですが、人文系のよさを失わない評価軸を是非御検討し続けていただけたらと思っております。
 以前、著作を章ごとに割って、それぞれのインパクトを測るというようなことも試みられていたと思うのですが、それが人文系にとってよいのかどうか、そういうところも慎重に、人文系のよさをそがないようなやり方で、是非全国を率いていただきたいと感じました。これはコメントです。
 1つ質問は、同時に、プレゼンスを上げていくという意味におきまして、先生方のプレゼンスが当然大変重要になってきますが、新たな試みとして、人文知を伝えるコミュニケーターの育成も頑張っておられると思います。特に国際発信については、日本語研究ということもあって大変重要だと思うのですが、キャンベル先生のプレゼンスももちろんございますけれども、人文知コミュニケーターの活躍について少し補足をお願いしたいと思います。
【人間文化研究機構(平川)】  人文知コミュニケーターにつきましては、この第3期に入って、試みとしてスタートさせました。それに並行して、事業としては、人文機構の6機関に2つの博物館が、民博と歴博がございまして、学術を可視化して、それが研究の高度化につながるんだということから、例えば、国語研の方言研究等においても、こういったものをモバイル展示のような形で、必ずしも博物館のようなところでなくても、離島のコミュニティのセンターでも、大学の図書館でもできるようなものを今、歴博と国語研で開発をして、今年度、それの実践に入るのですが、そういった可視化・高度化事業というのが、これから人文学研究の研究成果を広く、社会だけでなく、学術全般に広げるためにも必要だろう。人文知コミュニケーターは易しく成果を発信して、社会から今度はそれを受信する。そして、それを研究の現場に伝えるという、そういうサイエンスコミュニケーターではなく、人文知独自のコミュニケーターを養成するということで、今、4人まで採用しました。
【横山臨時委員】  是非応援しております。国内はもちろんそうなのですが、海外に波及することも大変重要だと思います。例えば、日本外国特派員協会には、日本についての取材を主な任務とされる海外記者が集積していますので、こちらへのアピールを通して国際的なメディアに波及するなどそういった戦略も御検討いただければと思いました。
 以上です。
【人間文化研究機構(平川)】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかに。
 では、最後の質問として、相田委員、よろしくお願いします。
【相田専門委員】  簡単に2点お伺いしたいのですけれども、1つは、企画戦略会議という御説明がありましたけれども、そのメンバーはどういう方々なのかということと、もう1点は、クロスアポイントメント、確か9人だったという資料はあったと思うのですけれども、こちらの機構の方々が、外のほかの大学にクロスアポイントメントに行っているのは、どのくらいの件数があるのかなと。
【人間文化研究機構(平川)】  クロアポの方は、国語研が東京外大で行っているのが実例で、あとは地球研を中心にしてクロアポを積極的に進めております。
【相田専門委員】  こちらの教員、研究者が外に行くのと、外から来るのとどちらが多いのですか。
【人間文化研究機構(平川)】  外から招いている方が多いです。それでも、やはり流動性は推進できていると評価しております。
 それから、企画戦略会議につきましては、これは教育研究評議会と経営協議会、この中から外部委員を選びまして、外部委員に限って企画戦略に入っていただいて、第3期に入って、一番問題だったのは、6機関の長の意見が十分に反映できてないということで、この4月から、各機関の長、東西、この機構は3、3で関西と関東ですので、1機関ずつ選んでいただいて、機関の長に入って。それから、キャンベルさんが機関の長ですので、副機構長という形で企画戦略会議にも入り、ちょうど6機関のうち半分はその会議に入って、我々が一番抱えている人文学のこれからを考えるという意味で、かなり本質的な議論を行い、そこを大きな最終的な方針決定にも役立てております。
【相田専門委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  大学共同利用機関法人等についての中間まとめの中で、なぜ見直しを検討するのかという理由の1つに、大学共同利用機関法人ができて以来、その機関構成が変わっていないことが挙げられています。また、きょうの資料13ページでは、人間文化研究機構に移行したい共同利用・共同研究拠点があれば相談に応ずると書かれています。このことに関して具体的打診があるのか、逆に、機構を構成する大学共同利用機関の中で大学の方に移りたいというところはないのかという点に関してお伺いしたいと思います。特に大学院教育を注視しますと、総研大に入ってないところが2つありますよね。この場合、何か特別なことを考えられているのではないかと想像しますので。
【人間文化研究機構(平川)】  総研大の方は、地球研と国語研が現在はまだ加盟してないのですが、1つは、国語研の方は、この共同利用機関の機構に入ったのが2009年で、途中からだったのです。もうそのときに連携大学院を一橋大と東京外大に持っておりましたので、それをまずはきちっと推進するという形で、独立行政法人から大学共同利用機関に移った国語研、当初、やはりきちっとした日本語研究の体系化が第1番でしたので、教育まで余裕がないこともあって、今のところは連携大学院で行っています。それから、地球研の方は、御承知のように任期制ですので、いろいろ困難な部分があるということで見送られてきたということになります。
 それから、今回提示しました共共拠点で申出があった場合には、我々としてはきちっと検討いたしますということで、今のところはそういう申出はないのですけれども、先ほど紹介しましたように、人文系の共共拠点のネットワーク事業をこれから本格的に立ち上げていきますので、そういったものを通じて、現在の大学に置かれている共共拠点の実情等も見計らいながら進めていければということと、それから、先ほど、機関の構成の在り方の最後の締めくくりで申し上げました、人文学研究の、いわば新たな研究領域の創出のための組織、制度、機関の役割、意義、機関の構成の在り方、これらをこれからきちっと外部の評価も含めて検証し、見直しながら考えていますので、必ずしも絶対に現在の6機関だけという方針ではなく、常に機構として自己点検し自己改革をしていきたいと考えています。
【稲永部会長】  ありがとうございました。時間が来たので、また別の機会にお願いします。きょうはありがとうございました。
【人間文化研究機構(平川)】  どうもありがとうございました。
【稲永部会長】  それでは、次に、情報・システム研究機構から説明をお願いいたします。
【情報・システム研究機構(藤井)】  情報・システム研究機構の機構長の藤井でございます。本日は、統計数理研究所の所長で理事であります樋口所長と津田理事で発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
 基盤部会からいただきましたヒアリング事項について考えを述べさせていただきます。この順番でさせていただきます。1ページ目でございます。
 各事項について述べる前に、まず、情報・システム研究機構、情シスのミッションについて簡単に説明させていただきます。2ページを御覧ください。
 情シスは、極地研究所、情報学研究所、統計数理研究所、遺伝学研究所が2004年に結集しまして、大学共同利用機関法人として設置されたわけでございます。ミッションは、現代の解決すべき重要課題であります生命、地球・環境、人間・社会などの複雑な問題を、第4の科学と言われます様々な大規模データベースを統合的に用いたデータ駆動型科学によりまして解明、予測・制御、意思決定を目指すというもので、そのための方法の研究、研究基盤の整備及び融合研究による新分野の開拓を行うことを目指しております。
 このミッションの実現のために4研究所が結集いたしまして、法人化後の第1期に、新領域融合研究センターと生命科学のデータベースでございますDBCLS、第2期にはデータ中心科学リサーチコモンズ事業を実施しまして、データ統合とオープンデータ、データサイエンスを促進して、その発展の結果といたしまして、第3期の2016年に本部にデータサイエンス共同利用基盤施設を創設して、現在に至っております。
 次のページ、3ページでございますけれども、情シスのアクションアイテムでございますが、3本柱の1つとして、データサイエンス共同利用基盤施設の活動の強化によるデータサイエンスの振興を挙げておりまして、これが1つの大きな柱となっております。
 次の4ページに移りまして、データサイエンス共同利用基盤施設の構成図でございますけれども、今まで別々に利用されてきました生命・遺伝子、地球環境、人間社会、人文学に関する多様で大規模なデータベースにメタデータの付与やRDF化などのデータ共有支援を行いまして、さらにデータ同化などのデータ解析支援を行って、大規模データを統合して相互利用を可能にして、データの利活用を格段に高めようというものでございます。
 統合されましたデータは全ての大学で利用可能となり、さらにここで開発しましたシステムを学術界、産業界に展開して実装することによりまして、オープンデータ、オープンサイエンスを推進し、大学の研究力強化や産業界の発展に貢献するとともに、異分野融合や新分野創成を目指しているということでございます。
 次のページ、5ページでございますが、DS施設は教員数が57名おりまして、そのうちの46名はDSに所属する研究者で、DSのみに所属する研究者はそのうち29名をもう既に占めております。そのほかの17名は研究所を兼任しておりますけれども、この兼任はデータを有効に利用して、確実に役立つシステムを開発するためには、その分野の学術の専門性と研究能力を持つことが非常に重要であることから、研究所とつながっている必要があるということで兼任となっております。この46名というのは、機構全体の研究者の12%を占めているということでございます。
 それでは、ヒアリングの質問事項について述べさせていただきます。6ページを御覧ください。機構法人のガバナンスでございます。これは、機構の組織図を示させていただいております。小さくて恐縮ですけれども、基本的には組織は、ほかの組織と同様でございます。後で述べさせていただきますけれども、戦略企画本部と機構全体の情報セキュリティーを扱うROIS CSIRTが特徴と言えると思います。
 機構長のリーダーシップの仕組みを7ページに示させていただきます。機構における中長期計画、年度計画、研究計画、共同利用、概算要求、運営上の重要案件の立案と提案は、左側に示しますように、機構長の諮問によりまして、28年度に設立いたしました戦略企画本部が行っております。ここの中心であります戦略企画会議には、本部長、副本部長のほかに、4研究所の副所長と事務部長が構成員となっておりまして、この副所長は各自の研究所の代表であるとともに、機構全体を俯瞰する立場が要求されているということでございます。
 一方、審議と決定のプロセスは、右側に示してございますけれども、原則週に1回開催されます役員・所長懇談会で、機構長から提案された重要案件の議論と情報共有が行われ、その後、研究所長会議の協議、経営協議会、教育研究評議会のサジェスチョンも考慮して、役員会の審議を経て、機構長により決定されて実施されております。
 なお、戦略企画会議のメンバーの副所長は各研究所の実情を理解し、しかも、機構全体を俯瞰して運営に関与いたしますので、次代のリーダーの候補として訓練されていることにもなります。
 研究者コミュニティの意向の研究所運営への反映でございますが、8ページにお示ししましたように、機構の経営協議会、教育研究評議会はもとより、情シスの4研究所及び施設の運営会議、共同利用委員会等で、学術コミュニティで見識が高く評価されている大学等の研究者に委員を委嘱して、コミュニティの将来の方向性やニーズを機構の将来計画や運営に十分取り入れるという方策を取っております。
 また、国際戦略アドバイザー制度というのを設けておりますが、それと機関に設置されているアドバイザリーボードを利用して、国際的なニーズや動向も取り入れております。さらに、研究所のシンポジウム等の集会を通して、学術コミュニティの意見や要望を取り入れまして、将来計画に反映させる努力を行ってきております。
 1つ、コミュニティから期待されている大学等の研究実施の支援の一例として、学術会議の大型研究計画2017年について述べさせていただきますと、採択されました28件の重点大型研究計画の4分の1の7件が機構が主、又は共同提案機関でありまして、コミュニティのために働くという期待に応えている証左ではないかと考えているところでございます。
 機構長裁量経費が、ガバナンスの観点から有効に利用されているかどうかということについて、9ページに示させていただいております。10ページに、さらに詳しい情報が入っております。機構長が策定しました予算配分方針、これは次のページの上にありますけれども、それにのっとりまして、機関、機構本部の事業計画のうち、重要性、緊急性の高いプロジェクトを公募等を行いまして採択及び査定を行っております。機関やDS施設の重点課題支援のほかに、機構全体で支援することが効果的な人材育成やクロアポを含めた人材循環の支援、概算要求では採択が非常に難しい一方、研究の基盤として重要な機器や設備の更新費用等の支援につきまして行っておりまして、機関の運営費交付金が経年的に減少する中で、機構長裁量経費の必要性と本部の支援の重要性が増加してきていると感じております。
 下の方に示しましたが、予算規模から見た裁量経費の重要性でございますけれども、運営費交付金のうち、常勤職員の人件費を除いた比較的自由に使用できる予算、物件費でございますが、これは機構全体で約38億円でございます。機構長の裁量経費5.2億円が占める割合は12%となっておりまして、無視できない重要な予算源であることが分かっていただけるのではないかと思います。
 10ページが機構長裁量経費の配分状況になっております。御参考になさっていただきたいと思います。
 機構長裁量経費で支援している重要な項目の1つに、人材育成がございます。これは11ページと12ページに示してございますけれども、4研究所と施設でハンズオン、ハッカソン、データコンペ、アウトプットキャンプ等、様々な人材育成のプログラムを、裁量経費を使い、機構全体でパッケージ化して支援させていただいています。そして、より効率的で組織的な取組が可能になっていると考えております。これは現在続けております。
 次に、人的資源の改善でございますが、13ページを御覧ください。平成16年と28年に比べますと、16年の転入、転出がおのおの12名、計24名。28年の転入、転出が25名と9名の34名で、流動性は僅かながら増えているように思われます。内訳については、13、14を御覧ください。
 一方、機構及び機関で雇用されているポスドクの転出先ですが、15ページでございますが、28年度について、任期満了後に常勤職に就いた者は10名おりまして、その転出先をここにお示ししておりますけれども、多様な研究機関に就職していることが分かっていただけるかと思います。
 キャリア支援としては、毎年クロストーク等を開催いたしまして、ポスドクの横のつながりの強化と情報共有を行っておりますが、この点については今後さらに強化をしていく課題であると認識しております。
 物的資源の改善ということでございますが、16ページにお示ししますように、知的財産としてのデータベースを保持し、その活用に向けてデータサイエンスを推進しております当機構において物的資源に該当するものは、年々急増する遺伝子情報、DDBJとか全国の国公私立大学の学術情報基盤でありますSINETの維持や更新・拡充等々様々ございまして、これらに対する予算措置が緊急で困難な課題となっております。また、一部の機関では建屋やライフラインが老朽化しておりまして、計画的な措置が必要であります。さらに、研究機器の高性能機器への更新が学術コミュニティから求められておりますけれども、これも予算措置がなかなか困難な状態でございます。
 これに対応する第一歩としまして、本年度中にキャンパスマスタープランを整備して、それを基に概算要求するとともに、機構長裁量経費等で計画的にできる限り措置することを考えているところでございます。
 機関の構成の見直しでございますが、これは17ページを御覧ください。新規機関の参入、既存機関の改廃は学術の進展に合わせて重要で、必要な場合には学術コミュニティと連携して実施すべきであると考えます。新規機関の参入や既存機関の改廃では、候補となり得るのは共共拠点やWPIと思われますけれども、その参入の道筋を明らかにして、必要があるときに速やかに実施できる体制を取ることと、機関となる要件の明確化が必要となります。
 さらに、機関法人の枠組みに入ることを希望する共共拠点等があるのか具体的に調査して、どのような財政的・人的な措置や教育に関してどのような条件、メリットがあればよいのかということを検討する必要があると思います。
 それから、御提案されております機関の検証についてでございますけれども、新たな検証の仕組みを設ける場合には、国際レビューとするか、新たに厳格な評価を導入するか等々あると思いますが、いずれの場合も、現在行われている評価と一本化するべきであると考えます。
 評価によって機関の改廃を行う場合は、学術コミュニティの議論を基に、産業界も含めた有識者の意見を広く聞いた上で評価項目の選定を行うなど、公平性と透明性のある方式が求められると思います。
 このような機関の参入等が必要であれば積極的に進むべきでありますけれども、一方、既存の機関では、名称は変わっておりませんけれども、国際的な学術動向や大学や社会のニーズにおいて実は絶えず構成の見直しを行い、改革を実施してきているところでございます。
 18ページに、統計数理研の例を示させていただきますけれども、ここに示しますように、時代時代の様々な喫緊の課題について、大学、共共拠点、研発法人とコンソーシアムを組みまして、これはネットワーク・オブ・エクセレンスと呼んでおりますけれども、学術界や企業や社会のニーズに応えてきているのがここで見ていただけるのではないかと思います。
 一番最近では、本年立ち上げました医療健康データ科学NOEがございます。この方法は効率的で実効性も高く、タイムリーな対応が可能でございますので、求められている変革のかなりの部分はこの方式で対応できると思われます。今後、さらに積極的に進めていく方針でございます。ほかの3研究所、遺伝研、情報研、極地研については19ページにお示ししましたが、ここでも様々な組み換えが行われていることが見ていただけるかと思います。
 人材育成の機能の強化でございますけれども、20ページにお示ししますように、機構における大学院教育は総研大が主でございます。総研大では、教員数が学生数よりも多いために、他の大学に比べてより密な教育や研究指導ができることと、情報研や統数研では社会人のリカレント教育の比重が高く、ユニークな教育と社会への貢献ができていること。それから、総研大では最先端研究を行う教員に指導を受けながら、大学ではなかなか整備ができない最先端機器や大型データベースを用いておりまして、学生にとり大変魅力的な場を提供していると考えております。
 総研大と機構を一体化する大学等連携推進法人を利用した場合は、機構と総研大双方の運営に対する責任意識の向上とより強い協力関係が期待できるのではないかと考えています。もし他大学の参加も得られれば、高度基礎教育の強化等の教育の質の向上が期待されるとともに、参加される大学の連携大学院も強化され、より多くの他大学の学生が参加できることが期待されます。
 次に、共共拠点との連携でございますけれども、これについては21ページに示しますように、かなりの規模で多様な連携が図られてきているところでございます。ここには示してございませんが、このほかに、理研、物材研、JAXAなど6研究開発法人と13の連携協定や覚書による連携が実施されております。
 地方創生、イノベーションについては22ページにお示ししましたが、産業界や自治体との連携が積極的に行われておりまして、これが情シスの大きな強みになっているとともに、Society5.0への貢献が期待されるところでございます。
 機構法人の枠組みでございますが、メリットとデメリットを23ページにお示ししました。メリットとしましては、法人化直後から、先ほど御説明いたしましたけれども、機構が4研究機関を結集しまして、新領域融合研究センターやデータ中心科学リサーチコモンズ事業を実施して、第3期にデータサイエンス共同利用基盤施設へ発展させることができましたが、これはやはり機構なしにはなし得なかったことだと思っております。これはメリットと考えております。また、機構長裁量経費等によりまして、個々の研究所ではなかなか手が回らない重要課題を支援して、機構として組織的な取組ができつつあることもメリットであると考えております。
 一方、デメリットとしましては、機構本部と研究所の事務機能の切り分けが難しい部分がございまして、また、異なる運営体制を持つ4研究所を取りまとめる役割を持っておりますが、本部事務組織が比較的少人数であることもありまして過負荷となっているところが問題点として挙げられるのではないかと考えております。
 最後に、機構法人の統合についてどう考えるかということでございますが、24ページにお示ししました。全国の大学の多様な学術分野における共同利用の支援は、4機構の機関、現在17機関でございますが、とともに、大学に所属する共共拠点、現在107、双方によりカバーされているのが現状でございます。このことを踏まえますと、共同利用者の研究領域の変化や拡大に柔軟に対応して、全国の大学の多様な分野における研究機能強化を支援するためには、大学共同利用機関と共共拠点全体、さらに必要あれば研発法人も加えてアライアンスを組んで、全学術分野をカバーする共同利用支援のラインアップを構成することが必要であると考えます。
 このようなグランドデザインを想定した場合、大学共同利用機関が機関間や共共拠点との間でより柔軟な連携を促進するためには、現在の機構間の壁をでき得る限り低くして、一体化を目指していくことが必要であると考えます。
 そのための第一歩として、現在の4機構と総研大を大学等連携推進法人のような形で一体化して、機関間の壁を積極的に下げ、研究と運営の連携、事業の共有化を促進することは1つの現実的かつ建設的な方策ではないかと考えます。
 これによりまして、具体的には、事務の共通化の促進、異分野の融合の加速、共同利用の一体的運用、より柔軟な機関をまたぐ再編、総研大とのより強い連携と運営、ガバナンスの強化が図れると考えております。
 以上でございます。
【稲永部会長】  ありがとうございました。もう時間が来ておりますが、せっかく樋口統数研所長も来られているので、研究機関の代表として一言いただければと思います。
【情報・システム研究機構(樋口)】  せっかくですので、2点ほどお話しさせていただきたいと思います。
 18ページに、既に機構長から説明がありましたが、統計数理研究所は、統計数理という特徴、非常に学際的であること、また、問題設定を適切にすることによって喫緊の課題に対応できるということで、方法、いわゆる基礎的な研究を横軸、また、ドメインを縦軸とする2軸体制を取っております。その縦軸の戦略を実際的に動かす組織が、この戦略センター、また、それをコア、核としてネットワーク形成をするのが先ほどのNOEとなっております。
 この10年間、学術を取り巻く状況は産業界とともに大激変しておりまして、一言で言うと、デジタルトランスフォーメーションだと思います。このデジタルトランスフォーメーションによって、この縦軸、横軸、2軸体制が産業界では「マトリックス戦略」と呼ばれておりますけれども、学術分野は当然ですが、産業界でも、非常に現代的なアプローチであると考えられています。我々統計数理研究所は、それを活用しまして、時代とともに、いろいろなニーズに応えながらセンターの改廃を行ってきました。
 もう1点は、もう一つの大きい事業でありますが、統計思考力事業で12ページになると思います。これも先ほど機構長からありましたけれども、情報・システム研究機構はOJT的なデータコンペ、ハンズオン等々のいろいろなデータ、あるいはデータ基盤を使った人材育成をやっております。統数研ももちろんやっておりますが、一番右側にありますように、データサイエンスのニーズが非常に高まっている中、様々なステークホルダーに対して様々なプログラムをやっているということです。ちょっとお時間を頂戴して宣伝させていただきました。
 以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。それでは、委員の方、御質問があれば。
 松岡委員。
【松岡専門委員】  御説明、どうもありがとうございます。実際にその機構の中でいろいろな体制を非常にフレキシブルに変えながら、その時々の研究に対応されているという18ページで御説明いただきました。一方、ほかの拠点との連携、21ページで御説明いただいたような、こういうこともフレキシブルにやっていくということで、組織として、その時々のサイエンスに対応していくことが大事だと思います。
 ちょっと気になりましたのが、締結日が比較的最近に固まっていて、時期も結構固まっているということで、このことの意味と、こういうシステムが今どういうふうに変わっているかを伺いたいと思います。これは、昔やったけれども、やめちゃったようなものがあったりするので、最近のものだけあるから、こういうふうに見えているのか、それとも、昔は余りこういうことがされていなかったけれども、最近盛んになってきて、ここ3年くらい、非常に件数が上がっているとか、こういうもの、締結するシステムというものを機構として最近、だんだん改良していっているとか、そういうことがもしあれば教えていただければありがたいです。
【情報・システム研究機構(藤井)】  どうもありがとうございます。この件でございますけれども、例えば統数研ですと、先ほどお示ししましたように、NOEの中で非常にたくさんの研究機関と一緒にやっていくというのが進行しておりますので、そういうものを反映していると。それから、遺伝研につきましては比較的新しいのですけれども、これはやはりDDBJとかデータベースが非常に発展してきていて、おのおの、例えば、阪大の蛋白研とかそういうところと共有する必要が生じてきたのが最近ということだと思います。ですから、これは遺伝研の情報学的なデータの進展と思われます。極地研につきましては、これは昔から南極観測を通じてやってきておりますので、非常に古いというのが現状でありまして、そういう事情になっております。
【松岡専門委員】  どうもありがとうございました。
【稲永部会長】  よろしいですか。観山委員。
【観山専門委員】  簡単な質問なのですけれども、データサイエンス共同利用基盤ってなかなかすばらしいものだと思いますが、現在、57名ということですが、4つの研究所に兼務されている方もおられると思うのですが、その内訳というか、詳細な数はあれかもしれませんけれども。
【情報・システム研究機構(藤井)】  先生、5ページをおっしゃっていると思いますが、研究所の兼務をしております人間は、極地研究所と情報研と統数研でございます。遺伝研もおりますけれども、大体散らばっております。
【観山専門委員】  等分ぐらいに……。
【情報・システム研究機構(藤井)】  大体そういう感じになっております。研究所の兼務をしている者が17名で、それ以外の29名はデータサイエンス共同利用基盤施設を本務として、そこで専任でやっている人間でございます。
【観山専門委員】  データサイエンスというのは、横串はよく分かるのですけれども、具体的に何をしているんですか。それぞれの分野での実際的なデータに関しての解析とかソフトだとかデータマイニングだとかがあろうかと思うのですが、これを作って、どういう横串になっているのかがちょっと。
【情報・システム研究機構(藤井)】  完全に全てのものを統合できるような状態ではまずないわけですけれども、例えば環境のデータで言いますと、様々なデータがあって、おのおのデータベースとして存在しております。それについて、例えば、メタデータが付いていないとかいうことで、実際にはほかのところからそれを利用することはできないのが現状です。コミュニティの中では利用できるわけですけれども。ですから、今やっていますのは、メタデータならメタデータで一般的なメタデータをどうやって作るかということで展開しておりまして、恐らく今年中にできると思いますので、基本的なメタデータをほかの分野にも展開することをやっています。
 通常の物理的データだけではなくて、私たちのところが非常に恵まれているのは、例えば、サンプリングデータとか生物のデータとか様々な異なるデータのケースがございますので、それをこういうところで一括してメタデータを作る、RDF化することができるということを非常に効率的に進められる、そういう体制になっているということでございます。
【稲永部会長】  八木委員、どうぞ。
【八木専門委員】  今のにも関連してですが、この機構の中で言うと、今の、何でしたっけ……。
【情報・システム研究機構(藤井)】  データサイエンス共同利用基盤施設。
【八木専門委員】  データに関する共同利用施設としては、統数研と国立情報ともに、関連する施設があるかと思います。例えば、医療データも両研究所に持たれたりとか、それ以外にも、ものづくりデータも持たれたりしていますけれども、この間の連携とか、どういう考え方で進めておられるのか、また、すみ分けはどういう考えでやっておられるのか教えていただけますでしょうか。
【情報・システム研究機構(藤井)】  これにつきましては、統数研の樋口所長が来られておりますので、樋口先生からお答えいただけますか。
【情報・システム研究機構(樋口)】  すみ分けに関しましては、うちの研究所と機構のDS基盤施設の関係になりますけれども、本研究所のNOEセンターである程度成熟したもの、あるいは形が整ったものはデータサイエンス共同利用基盤施設に発展的に移行するなどして、そちらで活動するというすみ分けをしております。
 あと、国立情報学研究所と統計数理研究所に関しては、まず、昨年度、ものづくりに関して、あと、昨年度および今年度、医療関係に関しまして両研究所で新しいセンターを設立しました。これは、偶然ではなくて必然だと思います。時代の要請に適切に応えたいということの結果だと思います。
 ただ、情報学研究所はデータ基盤、あるいは情報基盤というところです。我々の研究所は解析、あるいは、それを応用していくときの制度の問題とのすり合わせ等々の、おのおの強みとするところがありまして、そこは完全に重なるところがないとは言いませんけれども、皆様方もすぐにお分かりのように、基盤と解析は明らかに違うメソドロジー、わざ、あるいはハードが要求されますので、そういう点に関しましては、すみ分けできると思います。
 ただ、すみ分けしながら、喜連川所長とは、例えば、この前、医療に関係して、いろいろ一緒にできるところはありますよねということで、早速いろいろな情報共有、あるいは対談までをして、いろいろなメディア等々にも、両研究所の対談ということで発信しています。そこでもちろん、情報・システム研究機構の中で情報学あるいは統計数理といったことで、おのおの強みを発揮しながら日本全体のために貢献していくという、そのような考えを持っています。
【稲永部会長】  では、小林委員。
【小林臨時委員】  4ページのデータサイエンス共同利用基盤施設のところになります。プラットフォームをお作りになるのは、もちろん得意分野だと思いますし、それから、統数研がデータ解析も得意分野だと思います。ただ、1つ抜けているのはコンテンツだと思います。コンテンツがなければ、いくらプラットフォームがあっても解析ができないわけで、4ページを見ると、ゲノムのところはデータが入ってきているような感じがしますけれども、例えば、右2つ、人文学とか社会データとかというのは、今、どの程度のコンテンツをお持ちなのか。これは非常に簡単な話ではなくて、公的統計ミクロデータというと、省庁によって測地系が違うことがあります。それから、自治体コードも違う場合があります。なぜ違うのかよく分からないのですけれども、とにかく日本は統一されていない。それを揃えるだけでも大変なこと。ここにそういうものが、あまり地域データのことが書いてなくて、社会調査データだったら、もうSSJDAがありますし、今、JSPSが確か、一昨日ぐらいで締め切って、集めています。だから、そういうものがもうほかにできているのに、そういうものとどういう位置関係にあるのか。つまり、ほかの機構とのハードルをもっと下げて、そういうものを集めるおつもりなのか、それとも、もうほかにそういうものはあるから、それは手を出さないのか、どちらのお考えなのでしょうか。
【情報・システム研究機構(藤井)】  まず、今のほかの機関のデータベースについてどう考えるかについてお話ししたいと思います。かなりの機関では自分たちでデータを集めていて、それがその財産になっているわけです。一方で、ある小さな研究グループ等ではデータの維持・管理が大変な現状になっているということです。データサイエンス共同利用基盤施設の考え方は、もともとデータベースはどこかにあって、また、この機構の中にもあるわけですけれども、それをいかに統合するかという部分をここで担うということであります。ということで、データは分散してあるわけですけれども、それを使うということです。
 ただ一方で、今、先生が言われたみたいに、非常に困っているところもございますので、そういうところを何らかの形でデータベース構築、維持について、この機構が貢献できればとは考えております。
 それから、人文学のオープンデータセンターについては、先ほどお話がありましたように、非常に膨大なデータベースがございまして、それは人間文化の方にあるわけですけれども、それを使いながら、それをどういうふうに解析、解釈するかというところで、当機構のエクスパティーズを使わせていただきたいと思っています。
 それから、社会データ関係については樋口先生の方がふさわしいかと思いますが、例えばミクロデータですと、総務省関係で、私たちのところにデータがあるわけではなくて、非常にセキュリティーの高いデータをこちらから見に行って解析とか処理とかができるというようなシステムになっております。ということで、私たちが提供しておりますのは、そのデータを見ることができる、ほかのところにあるデータを非常に安全に見るということがやられているところです。あと、例えば、銀行のデータとか、そういうものは、そういう会社等と契約を結びながら、守秘義務を守りながら使わせていただいているというのが現状です。
 樋口先生から。
【小林臨時委員】  ちょっとよろしいですか。研究者コミュニティが求めているのは、多分そういうことではないと思うのです。何を求めているかというと、例えば財務省のデータと経産省のデータと旧経企庁が別々のコーディングでやっていて、1つ1つは皆さんを通さなくても我々は入手できるのです。ところが、それを統一して分析することができないことが日本の最大の問題になっているのです。それをメタに統合することが、恐らくここに一番期待をしている、日本人の研究者コミュニティが期待している点だと思うのです。そのことをお聞きしたかったのです。
【情報・システム研究機構(藤井)】  今のお答え、すぐにできるという状態ではないと思いますので、もう少し調べさせていただきたいと思います。
【稲永部会長】  ほかに。
 横山委員、どうぞ。
【横山臨時委員】  まず、24ページの機構法人の枠組みで、統合についてどのように考えるかというスライドについてお伺いしたいと思います。御説明ありがとうございました。こちらのスライドでは、大学の共共拠点と4機構を一緒にして考えて、グランドデザインをすべきだというようなお考えを述べられております。しかしながら、例えば、北極に関することでは極地研は北大とJAMSTECと一緒に、既にネットワークの共共拠点を組んでおられます。すでに動いているネットワーク拠点と、4機構統合の強みはどのように異なるのでしょうか。具体的な事例を持って、1つ、2つ御説明いただくとイメージがしやすく御説明をいただければと思いました。
【情報・システム研究機構(藤井)】  まず、こういう考えに至ったというのは、ここのところでも随分議論されてきておりますけれども、この4機構の研究所が所掌する学術分野は非常に限られておりまして、学術分野全体をカバーしているわけではないということです。そういうものの間を埋めていくことを考えたときに共共拠点があるわけですが、共共拠点はもともと非常に重要な学術分野ごとに、余りオーバーラップしない形で学術会議等が作ってきたということですので、基本的に重要な分野については共共拠点でカバーされているのが現状かと思います。
 おっしゃるように、例えば極地研究所を挙げてみますと、今言ったようなコンソーシアムを組みますけれども、それに加えまして、ある分野ですと低温研と一緒になりますし、それとコンプリメンタリーな形の長所がございます。それから、大気科学なんかですと、生存圏研究所とかそういうところと、所掌しているところは少しずつ違うのですが、そういうところを併せると、例えば、非常に低い大気から高い大気まで全部カバーできるとか、そういうような非常にいいコンビネーションがあるということから、ほかの分野も含めて、人文社会も含めて、恐らくこういう形のアライアンスを組むと、大学等で必要とされている支援がどこかではカバーできるのではないかということで、こういう形を作らせていただきました。
【横山臨時委員】  ありがとうございます。ネットワークの共共拠点というのは、まさにそうしたためにあるものだと理解しておりまして、それに4機構としてそれぞれお入りになるということではなくという御提案ということですか。
【情報・システム研究機構(藤井)】  ではないです。
【横山臨時委員】  そうすることで、重要なところがカバーされているのがもちろん大変重要だと思うのですけれども、要するに、余力がない中で、ますます幅を広げていくようなイメージをこちらの文章からは拝見したものですから、それが現実的かという点についてお伺いしたいと思いました。
【情報・システム研究機構(藤井)】  私たちの力はもちろん限られておりますので、むしろ全体でカバーすることによって学術全体をカバーしようということで、私たちの所掌範囲を必ずしも広げるわけではございません。ただ、恐らく連携することによって私たちの範囲も少しずつ変わってくるとは思いますので、そういう意味での拡大はあり得るのではないかと思っております。
【稲永部会長】  では、次に永田委員、お願いします。
【永田臨時委員】  機構の目的は、前聞いたときよりもずっとよく分かり、すばらしいと思います。それから、各研究所の研究の目的もよく分かりました。マクロ経済学ではないのだけども、2つ制度があるから2つ目的があることになるわけです。ですから、機構の目的を最適化しようとすると、研究所の目的が最大化されない。逆も真。それをどこかでどちらかをいじらないと、いつまで経っても結局は目的が最大化されないだろうと思います。
 どれが悪いと言っているわけではなくて、機構という体制で運営している苦しさと、それから、各研究所の個性という良さは全部良いのだけれども、最終目標に両方とも至らないという。目的が2つあれば、絶対、それを実証する制度が2つないといけない。それを何とか1つでやろうとしているところに、聞いていて、とても難しさを感じます。何とかなりませんか。
【情報・システム研究機構(藤井)】  今、先生、そういうふうにおっしゃったわけですけれども、オプティマイズできるのではないかと考えています。というのは、例えば遺伝学も含めて、遺伝学は遺伝学の発展があるわけですが、今、情報学そのものの状態になっているわけですね。ですから、そこだけで開発する部分というのではなくて、全体で開発できる部分をここで抽出して、それを発展させようというのが本部での仕事です。ですから、例えば遺伝学で言いますと、DDBJのデータを作る部分については遺伝研がやり、それを解析していくツール、高度な解析の部分については本部でやる、データサイエンス共同利用基盤施設でやるような形で抽出するようにしています。ですから、それがオーバーラップすると、今先生がおっしゃったみたいに、二兎で1つも得られないという形になると思いますので、それについては十分配慮して進めていきたいと考えているところです。
【稲永部会長】  では、勝委員、どうぞ。
【勝委員】  2点ほどお伺いしたいのですけれども、22ページのところで、イノベーションであるとか地方創生というところなのですが、特にこれから情報と統計数理ということで非常に重要な分野であるわけですけれども、例えば、最初のところで国立情報学研究所等が三井住友アセットマネジメントとか日本IBMであるとかLINEとかと共同でセンターを作っていらっしゃると思うのですが、予算の規模感がどれぐらいのものなのか。それから、これによって新たな価値が生まれた場合に、それから得られるリターンが何がしかあるのか、その辺を教えてほしいのが1点。
 それから、先ほども、ちょっと質問が出ていたと思うのですけれども、共共拠点とのより柔軟な連携を促進するとあるわけですけれども、これは、例えば、メタデータとかそういった意味での連携なのか、あるいは人的流動が非常に重要だと先ほどおっしゃっておられたのですけれども、先ほどの人文研の方々は、共同研究者が非常に増えているというような数値を示されたと思うのですが、そういったものが、こちらの機関でもあるのかという2点を教えていただきたいと思います。
【情報・システム研究機構(藤井)】  まず、イノベーションの創設の方でございますけれども、おのおのによって少しずつ規模が変わっておりますが、例えば、コグニティブ・イノベーションセンターというようなものは毎年数千万の規模で、3年とか4年というような、そういう契約状況になっております。
 それから、例えば、医療健康データ研究センターというようなものは、樋口先生のところですけれども、これ自体、概算要求でお金を付けていただいてやっております。それから、NOEに関しては、様々なコンソーシアムでたくさんの研究所が入っておりますが、その予算的な実情については樋口先生からお願いできますか。
【情報・システム研究機構(樋口)】  各NOEで基盤となる予算はいろいろ違うのですが、医療健康の方は、先ほどの概算要求。又は、ものづくりの方は、外部資金プラス民間との共同研究が非常に活発でして、半年でも10件を超えるぐらいのということで、民間との共同研究等々が中心です。また、ほかの部分は所長裁量経費を基盤とするようなものです。基盤経費プラス、基本は外部資金を獲得していくところで活動しております。
【情報・システム研究機構(藤井)】  それから、共共拠点とのより柔軟なというところでございますけれども、私たちが考えております1つは、共共拠点に限らないわけですけれども、例えば、人的な流動性は非常に重要かと思っています。必ずしも全部オーバーラップしておりませんけれども、その人たちが入ってくることによって私たちの共同利用も非常に広がっていきますので、例えばクロアポの発展とか、そういうものも含めて、より流動性を高めていきたいと考えております。
【稲永部会長】  では、観山委員で最後にしたいと思います。よろしくお願いします。
【観山専門委員】  先ほど、永田先生が言われた質問は非常に重要な視点で、なおかつ、これは多分、情報・システム研究機構だけに限った質問ではないと思いまして、非常によく分かる、機構によった使途として分かるのですが、ただ、各機関と機構が同じ方向を向いていると、そういう分野もあろうかと思いますが、マトリックスというか、ある程度、機構は機構の在り方。特に私が感じるのは、法人化という1つの対応をしなければいけない。これは機構の大きな役割であって、それぞれの機関がそれに対応しようと思ったら大変な労力を費やしていたと思うのですね。
 法人化の対応というのは様々な分野があろうかと思いますけれども、それを社会に対して1つの法人として、その機構が動いていくという部分と、各機関はその分野、コミュニティを大事にして、それを発展するという部分があって、ただ、それは非常にうまくやっていかなければいけないわけで、どうして最初に、こういう4つの組み合わせになったとか、そういうところまで考えると、いろいろな研究をしましたし、例えば、海外でもマックス・プランクだとか、いろいろな研究所が1つの機構の中にいるというものもあって、常に考えなければいけない問題だと認識しました。
【情報・システム研究機構(藤井)】  どうもありがとうございます。私もそういうふうに考えております。
【稲永部会長】  それでは、まだあろうかと思いますが、時間が参りましたので、本日はどうもありがとうございました。
【情報・システム研究機構(藤井)】  どうもありがとうございました。
【稲永部会長】  それでは、次に、総合研究大学院大学から説明をお願いします。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  総合研究大学院大学の長谷川でございます。よろしくお願いします。
 きょうの資料はこちらで、お手元にもあるかと思いますが、まず1ページ目、画面は非常に小さくなってしまいますね。取り上げるべき御質問というのは2つありました。1つは、課題の所在というところで、機構法人と総研大の連携協力の状況はどうなっているか、余りよくないのではないかということに関する御質問です。それと、もう一つ、検討の方向性として、組織的な連携協力体制を強化するにはどうしたらいいか、どういう枠組みであるべきかということでした。この2点が問題点ですので、この2点についてお話をしたいと思います。
 こちら側の上の方に組織の模式図が描いてありますけれども、もちろん総研大は、総研大側から見ますと、研究科というのがあって、研究科の下に専攻というのがあって、作られています。しかし、その研究科というよりは、A、B、C、Dと並んでいる専攻というのがそれぞれ基盤機関と呼ばれる研究所なわけです。その研究所が一番右側にあるような機構に組織されておりますので、そして、専攻が幾つかがリンクされて研究科となっている。そこの下に専攻がある。しかし、その専攻が研究所であり、研究所側から見ると、機構というところにくくられているという構造なので、こちら側から見たときのくくりと、こちら側から見たときのくくりが必ずしも一致はしておりません。
 ということでありますし、連携協力協定を結んでありますが、そこの第3条の「総研大法人は、研究科の各専攻の教員組織、教育課程、学生定員その他研究科及び専攻の運営に関する重要事項については、各専攻を担当する大学共同利用機関の意見に基づく当該機構法人の意見を尊重する」ということの下に行われているわけです。この書き方から見ましても、機構という組織を中心に据えて大学院を運営していくことは現実的ではありません。機構というのは物すごく大きな組織であり、研究が主体の組織であり、それに沿って研究を成り立たせていくために、組織的にガバナンスなどを働かせる作りになっているところがこちら側にはありますが、それと研究科というものは必ずしも合致しているわけではなく、そして、JAXAというような、ちょっと別のもので、しかも、JAXAの全体ではなく、宇宙科学研究所というものだけが物理科学研究科に入っているということなので、機構という大きなくくりの立場から、それぞれの専攻、研究科の研究を運営していくことは現実的ではありません。
 そこで、普通言われるところの教学マネジメントというのは、研究科があり、研究科長が自分の研究科に属する専攻に責任を持ち、その専攻がそれぞれ仕事をしていて、そういうラインが通っているものなのですけれども、研究科自体は、いわばバーチャルと言ってしまったらいけないのですけれども、研究科というものは普通の大学での研究科のような専攻を束ねて、専攻から選出されて、研究科長が全体に責任を持つという、そういうことはできないわけですね。各専攻であるところの基盤機関は非常にオートノミーがありますし、そこの中からいろいろな学務関係、学生関係に関して、何かを束ねるときの1つの意思疎通のルートとして研究科というのはありますし、研究科長は研究科の教授会を開きますが、教授会は年に2回しか開けないし、それは主に学位授与に関することであると。
 つまり、いわゆる大学の研究科、専攻等の組織体系を通じて教学マネジメントを行うのはかなり困難な状況です。ですので、今、実際にどうしてうまくできているかというのは、基本的に各基盤機関であるところの専攻、研究所と一致している。専攻そのものに対して教学マネジメントを、そことの1対1の関係でうまくいくことをやっているということですので、黒丸のところに書いてありますように、機構法人を介して教学マネジメントは実際にはやってないし、そういう作りにもなっていない。
 それから、普通の大学の、いわゆる大きな流れの組織である研究科・専攻ということで、組織体系を通じて教学マネジメントを行うこともかなり難しいので、共同利用機関と各研究所と専攻の現場とのやりとりが今までうまく動いてきたことです。
 労働条件とか給与につきましても、結局、担当教員というのは総研大とは雇用関係にはないわけですね。雇用関係から言うと、法人が違いますから、大学側、総研大側に担当教員の就業規則とか服務規定としては存在しない。懲戒関連のことも、私が何かをしてやることはできません。それとプラス、教員の給与の体系とかいうのも、専攻運営費という全体の事業費と物件費と人件費をまとめたものを各専攻にお配りしておりますから、その中で各法人の給与規則に従って支払われています。
 1ページめくっていただくと、その次のところに大きく書いてありますが、このように総研大というところが本当に密接に連絡を取り合いながら、こちらのガバナンスをどうやって効かせていくかということに関しては、研究科というものも1つ飛ばして、それぞれの専攻というところで、各専攻のお考え、各専攻に入試もあればオープンキャンパスもあればというところの、そこをどうしていくかというところの現場対総研大のやりとりが最も効率的ですし、現実的ですし、実際に行っていることです。
 この後ろにある機構というのは、大きなマークがいろいろあるように、本当に大きな組織でありますし、このそれぞれの機構が抱えているミッションにとって、共同利用研究を進め、世界最先端の研究を進めることに物すごく寄与されているし、大きな努力をされているし、お金もそちらにすごく大きく使いながらやっている1つの大きな組織ですので、その中で各機構のミッションとして明確に、次世代の研究者を育てていくことはもちろんあるのですけれども、次世代の研究者を育てていくことのミッションとしての機構全体に対する割合として見れば、機構はそのほかに本当に最先端の研究を進めていく大きなプロジェクトを抱えているという面では、物すごく大きなものがあるわけです。
 そういうものを一生懸命、どうやって回していくかというところが機構の一番大きな仕事でありますしミッションでありますし、その組織そのものの回り方を利用して次世代の研究者を育てていく。そのうちの1つが総研大であるわけです。
 1つ、また戻っていただきまして、下の方に行きますが、そういう中で私たち総研大というのは、86ある国立大学法人の1つなのですけれども、国立大学法人1つ横並びにして、いろいろなことを比べられたときに、私たち、どういう立場かといいますと、本当にユニークな変わった組織であり、横並びに全部同じことを要求されると困ることがたくさんあります。
 しかも、こういう法人が違うところを、その研究所のよさを土台にして次世代の研究者を育てようという大学院大学なのだというときには、多分、ほかの大学の大学院でやれることと同じようなことをやっていても無駄なのだと思います。その意味で、同じように横並びにKPIとか困ると思っていますけれども、それを超えて、そういうネガティブな、それでは困るんだみたいなことではなくて、もっとよくするにはどうしようと考えたときに、連携協力体制を強化することの目的は、人材育成の機能の強化でしょう。そうすると、そのときに、人材育成の目的は、我々総研大としてはどう取るか。普通の大学の大学院ではないということで、この研究環境を生かしたときに、ほかとは違う、どういう人材を育成することが目的なのかを明確にする必要があると思います。そこに対する合意形成がまずは必要だと思います。
 そうすると、その次の提案のところに小さく書いてありますが、大学共同利用機関に設置するという非常にユニークな体系を作るわけですから、下のピンク色のところ、個々の大学の研究活動と同じような研究活動の中で、大学院課程として国際社会へ博士人材を供給するというところは今や連携大学院も可能ですし、併任講座もありますし、特別共同研究学生という制度もありますし、既にいろいろ受け入れているわけです。その部分で賄うことは十分にできていると思うのですけれども、そして、少しは紫っぽくオーバーラップするところはあるのでしょうけれども、一番左端の水色のところは、共同利用機関が実施する研究という大きな共同研究にのっとって、そして、そこにしかない装置、そこにしかない人材、そこにしかない資料を使いながら、ほかではできないことをする。そういうSOKENDAI学位プログラムというのがあっていいのではないかと。そうすると、人材を供給するべき分野とか輩出する人材の特性という点で、一般と相違ないのなら、ここまでいろいろ法人を超えて、苦労して、独自の大学院課程を設置しなくてもいいのではないかと、30年たった今。そうではなくて、本当にユニークな人材を輩出する、そのユニークさをみんなで共有した上で、特異的な大学院教育をすることによって、こちら側のピンクのところの連携大学院その他による人材育成成果と違いを出せるのではないか、機能分化を図れるのではないか、また、そうしていくべきではないかと思っています。
 そうすると、組織的な連携協力体制を強化する枠組みをどうやって導入するかといいますと、人材育成の目的に即して、特殊な環境で、ちょっと変わった人材育成をするという、その目的に即して、学位プログラムをどんなものが設置できるか、そういう設置できる分野や領域はどこにあるか、教員組織をどのように作るか、教育課程をどうするか、そのときの学生定員をどうするか、運営をどのようにやっていくかの設計を、今の機構という枠組みを超えた形で話ができるようなものを作っていく必要があると思います。研究科単位と機構単位が食い違っているとか、JAXAの宇宙研がちょっと入っているとか、いろいろあるので、横の縦割りを超えて、教育プログラムと人材育成に関して一括した話ができるような組織体制が必要でしょう。
 それがどこでできるか、どういう形であるかということは、今後、早急にいろいろなことを考えていくべきだと思っています。それに関して、そうなりますと、総研大側が抱えている独自の事務職員と教員がいますが、それがどういう人材であるべきか。総研大として、こういう学位プログラムを支えるために必要な事務を回したり、教育プログラムを作ったりするためにどんなタイプの教員と職員をそろえておくべきか、それは何人必要かということも今後見直していくべきではないかと思います。
 教職員といっても、教員はいいのですが、職員は法人が違うところで、各共同利用機関の研究所の職員の一部が総研大の学務関係を兼任してやってくださっているのですね。総研大独自の事務職員を各基盤機関に派遣はしておりません。そうなったときに、法人が違う事務職員の意思疎通とか命令系統とか結構複雑なので、現場としては時々ぎくしゃくしています。それをどういうふうにうまくやらせるかということも、今後のもっと大きな枠組みを考えるときに重要な視点だと思っています。
 総研大側からは以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。それでは、委員の質問を受けたいと思います。
 どうぞ、井本委員。
【井本臨時委員】  8月2日に大学共同利用機関協議会、これは大学共同利用機関の所長、機関長が集まった会合ですけれども、そこで4機構体制とか総研大に関して割に自由な意見交換会が行われました。どういう体制がいいかに関しては、いろいろな意見が出て、まとまらない、予想したとおりだったのですが、総研大に関しては、総研大は絶対必要であるということで本当に意見が一致しました。データによる、データが本当にそうなのかという意見まであるのですが、連携大学院があるから総研大は要らないのではないかという意見があることは承知していますが、やはり総研大は必要であるという強い意見が出ていました。
 以上です。
【稲永部会長】  ほかに。
 観山委員、その次に、永田委員お願いします。
【観山専門委員】  ありがとうございます。私も総研大の所属であったこともあるのですが、そのときも盛んに言っていたことは、総研大というのは共同利用機関を基盤としているので、普通の大学ではできないような装置だとかデータベースだとか、そういうものを活用して研究に役立てるという部分、これは事実であって、なおかつ、それは非常に豊富な研究環境だとは思うのですけれども、各研究機関、基盤機関というのは、その分野の非常に中心的な分野なわけですね。そうすると、その分野の非常に立派な研究者を育てられると思うのですが、今、もう一つ求められているのは、新たな学際的な分野を若い人からどんどん盛り立てていくということで言うと、やっぱりユニバーシティーというものの中に所属してない部分は結構デメリットとしてあると思うのですよね。
 つまり、例えば天文台だったら天文台で、天文学の物すごい最先端の装置を使って、データベースを使って中心的な研究はできますが、ただ、これからはそれだけではなくて、統計だとか、非常に幅広いところの研究、教育が非常に重要で、それが日本の研究を世界に推し進める1つの原動力になるかと思うのですが、そういう面で非常に特殊な研究ができるという面と、今の、90度違うかもしれませんが、違う分野との連携教育という部分をどうやって確保していくかが大きな問題だと思うのです。名前は「総研大」ということで、もともとの学長、非常に高邁な思想の下に造られたわけでありますが、実際には各機関は非常に離れていますし、年に数回、葉山で一緒に研究活動をすることもできるのですが、それぞれの分野で真ん真ん中のところでの教育という部分と違う学際的な分野をどう確保していくのかというのが、私、大きな課題だと思っているのですが、そこら辺はどう思われますか。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  そういう考え方に基づいて、ここに書いた学位プログラムというのは、専攻の1つの分野に限らず、分野を超えて、専攻も超えて、国際的にも超えて、何かの課題、何かの問題を新たに、何でもいいのですけど、やりたいという人に対して、本当にカスタムメイドに個別的に、この研究をしたいのだったら、ここのこの人とここのこの人と国際的なあそこのあの人とというようなことを全部まとめて、個別の指導体制を作り、その人たちのためにはどんなものが必要かということを、教育課程としてどんなものが必要かも設計する。そういう設計をすることを、今までの研究科とか専攻とかということではなくて、学位プログラムとして設定することができれば、特に国際的な共同研究の流れの中で、コチュテルみたいなことでそういうことができるようになれば、非常に自由度が高く、新しいことがどんどんできていけると思います。そういう方向を目指したいと思っています。
【観山専門委員】  全く同感なので、それを具体的にどう進めるかが非常に重要な課題だと思うのですよね。だから、デュアルに多方面に、非常にいいメンターとかそういうものを付けてあげて、各機関での集中的なその分野での研究や指導と、それともうちょっと離れた分野に広がる方向性みたいなものがうまく確保、それは本部の非常に大きな役割だとは思うのですけれども、そこら辺は非常に期待しております。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  本部がそういうことができる人材を集めてこなかったので、本部にいる人間がどう雇われているか、本当に少ない数しかいませんし、先導科学研究科というのは別の独立した研究科になってしまっておりますし、そのほかに名前がころころ変わった、教育研究交流センター、葉山高等研究センター、学融合推進センター、今の教育開発センター、ここで雇われている人たちもほんのちょっとしかおりませんし、ですから、最後に言ったように、そのために本部がどういう教職員人材を集めておくべきなのかも再調整しないといけないと思っております。
【稲永部会長】  ありがとうございます。
 では、永田委員、どうぞ。
【永田臨時委員】  初めて闘う学長が生まれたかなと思いました。先生がここにお書きになったとおりおやりになれば、価値はあります。ただし、それをやるのはとても大変だと思います。それは普通の大学でも同じなのですけど、大変なのです。でも、観山先生が今おっしゃったことは、もう普通の大学で普通にやっているわけです。我々だったらローレンス・バークレー研究所に行って、その後、シリコンバレーにも学生は行って、物理学の研究室に戻ってきてということは当たり前です。それができてないのだったら、それはやっぱり価値がないわけです。ようやく、それで普通の大学の価値だと思うのです。問題は、その普通のことが機構内では非常にやりにくいのだろうと思います。
 でも、考え方を変えると、とてもすっきりはしていて、各研究所が、要は、教員組織だと考えればよい。だから、教員組織と教育組織が分離して初めからできている、まれな例なのです。だから、あとは学長が強い意思を持てば、今、教教分離しているところは珍しくなくなってきていて、教育側のデマンドと教員側のデマンドなんていうのはありません。教員側は大学においては教える側だからです。つまり、学生のデマンドしかないわけですから、学生のニーズに合わせなければいけないわけです。学長が替わって、それをできるチャンスが来たわけです。僕も総研大にいたから分かりますけど、各研究所は学位授与権というものが持てることに非常に熱い思いを持っていると思うのです。ただし、それは間違いです。違うのです。
 どういう学生を育てるか、学生が何を学びたいかによって教育のプログラムは作られなければいけないし、そこを満足したときに学位授与をするわけです。だから、先ほども、みんなが総研大がないと困るというのは、中には若干エゴイスティックな思惑も多分あるのだと僕は思います。それを払拭する学長が出たというのなら大いに応援したいと思います。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかにございますか。
 どうぞ。
【相田専門委員】  今の続きで、私も完璧なる教育組織と教員組織の分離でいいなと思ったのですけれども、普通の大学というのは、いくら教員組織で大学全体のバランスを取ろうと思っても、それぞれの教育組織が絶対これは変えられないとかというのがあるので、なかなか変えられない部分があるのですけど、逆にこちらは、それぞれの研究所で研究者を雇用してしまうわけだから、こういうような教育をしたいと思っても、なかなかできないですよね。いつの間にか勝手に教員がいなくなってしまったりして。そうすると、カリキュラムは一体どうやってキープしているのだろうなという素朴な疑問を感じた点を教えていただきたいのと、もう一つ、今、永田先生が、学位授与権は各研究所にあるみたいなことをおっしゃったのですけど、それ、本当なのですか。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  いえいえ、そんなことは。学位授与権は総研大に、大学にしかありませんので、ですから、研究所が総研大の専攻であるということで、総研大という傘を通じて、研究所の先生方が学位授与をできる、学位研究を見られるわけです。そのことは非常に大事だと、皆さん思っていらっしゃると。連携大学院とかではなくて、学生を独自の教育方法で博士を取らせることができることのメリットはとても感じておられるというのは、皆さん、そうおっしゃいます。
【相田専門委員】  なるほど。
【稲永部会長】  どうぞ。
【総合研究大学院大学(永田)】  今のお話、大変あれですが、やはり設立した当時、大学共同利用機関が大学院教育をすべきというところから物が発出しているので、当時は国の中で一体化していた。それが、いつの間にか法人化されて分断されてきたものが、半ば形式だったものが、意識も含めて、だんだん分かれてきちゃっているのが現状だと思います。
 だから、今おっしゃったとおり、教員組織を作ろうとしたときに、我々の手の届かないところで研究者組織が動く、そういう状況の中で一体どうやって共共教育をやろうかと。ただ、幸いなことに、学士課程ではなくて大学院課程なのでフレキシビリティーは高い。だから、突き詰めて言えば、きちんと学位論文を書いて、厳正な学位審査を通れば学位は与える、それだけでいいはずなのです。それがちゃんとできればいい。そのときに、どういう学位プログラムを組んでやるかというところが多分これから先の問題で、今はおっしゃったとおり、各研究所に専攻が置かれて、そこに特化したものが学位プログラムを作っている。それをもしマージできて、学位プログラムとしていろいろなものが、いろいろなところから教員が、例えば、共同指導で入ってこられるようなものが本当にできたら、かなりユニークな大学院教育ができます。そういうところで研究者を、だから、ある意味では、総合大学の博士人材の供給とは違う意味で、本当に研究領域で働ける人たちを出していかなければいけない。それは多分、共同利用機関の持っている使命だろう、人材育成の使命だろうと思います。
 それと今、我々が考えて、あるいは、今動かしている仕組みが余りうまくマッチしてないと思っています。国立大学法人の総研大と、それを重ねた形の共同利用機関。それを何とか整理しなければいけないので、その整理のためには一度ガラガラポンをしてもいいのではないかというぐらいの感覚を持っています。
【稲永部会長】  ほかに御質問ありませんか。
 ちょっと質問ですが、今、学長がおっしゃられたこと等も考えると、総研大というのは、大学院の大学共同利用機関版というイメージに捉えたのですが、いかがでしょうか。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  研究に関して共同利用ができるのなら、教育に関しても共同利用しようではないかというような感覚です。というのも、若い人たちの人口がだんだん減っていくこととか研究者の将来が余り明るく見えないとか、いろいろなことがあったりして、研究者の次世代を引き付ける力がなかなか日本が発揮できなくなってくるような状況の中で、ほかの優秀な国立大学と共同利用機関で研究しようという学生とが足を引っ張り合ったり、お互い取りっこしたりしているのは、ちょっとばかばかしいと思います。
 いろいろな共同利用機関の特色がありますし、本当に観山先生がおっしゃったような研究のその分野の中心であるし、それがマージできたり共同指導ができたりしたら、別にそこに閉じることもなく、もう一人、副指導教員に北大の人でも何でもということを、その分野の特化した人たちと組んで共同利用の教育をして研究をして、学位にどう書くかということのあとは、そこのアグリーメントの問題だと思います。
【稲永部会長】  ありがとうございます。ほかに御質問はございますか。
 どうぞ。
【相田専門委員】  ということは、学内のほかの大学とジョイントディグリーとかダブルディグリーとかというのは今まであるのですか。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  学内はないです。
【相田専門委員】  ごめんなさい、国内。
【総合研究大学院大学(永田)】  国内はないです。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  ないです。
【相田専門委員】  国外はあるのですか。
【総合研究大学院大学(永田)】  国外は作りつつあります。
【相田専門委員】  そういうのがうまく動くようになると、とても魅力的ですよね。それぞれの大学で、いろいろな分野の教育を全部することは困難なので、こちらは本当にリソースはそろっているのですから、是非それを活用していただけるといいかなと思います。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  つまり、そういうことを本気で、総研大という特殊な大学の人材育成の目的だということをみんなが本気でアグリーすれば、本当にそれを動かすための、それをサポートする人材を本部が抱えて、そういうプログラムを回すような教育開発センターとして、そういう作りにしてしまえばいいと思うのです。今までいろいろと、研究と教育をどういうふうにバランスを取るかとか、基盤機関の研究をマージさせて新しい研究を作ってくれというのをこちら側からいろいろ言ったりとか、多分、余り正しい方向ではなかったのだと思うのです、お金と人材の掛け方が。それをもう一回こういうふうに原点に戻って、どういう人材を作りたい、どういうサポートが必要かという方から攻めたときに、どんな組織作りが最高かということを見つけるべきだと思っています。
【稲永部会長】  かなりイメージが湧いてきたと思うのですが、ガラガラポンをどうやってやるかという大きな問題もあります。そうではありますが、実際にやらなければいけないときはやるべきだと思います。
 ほかに御意見は特によろしいでしょうか。どうもありがとうございます。非常にすっきりした御説明、ありがとうございました。
【総合研究大学院大学(長谷川)】  どうもありがとうございました。
【稲永部会長】  本日予定しましたヒアリング3件は、以上をもって終わりたいと思います。本日いただきました御意見につきましては事務局にて取りまとめていただき、次回の議論の参考にしたいと思います。
 次回の基盤部会では、これまでのヒアリング等を踏まえ、大学共同利用機関の今後の検討の方向性について議論したいと思います。
 最後に、今後のスケジュールについて事務局から説明をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  資料6を御覧ください。次回の研究環境基盤部会でございますが、8月31日金曜日15時から17時に開催したいと思っております。場所は省内の会議室を確保いたしますので、また追って御連絡をさせていただきます。
 以上で説明を終わります。
【稲永部会長】  ありがとうございました。本日の議事はこれで終了したいと……。
【相田専門委員】  済みません、質問があるのですけど。資料なのですけれども、これはつまり、ここのタブレットにあるだけであって、私たちは持って帰ることができないということですか。
【早田学術機関課課長補佐】  もし紙で御必要ということがありましたら、別途郵送させていただきます。
【相田専門委員】  そうすると、紙になるのですか。このまま電子ファイルを送ってもらう……。
【早田学術機関課課長補佐】  文科省のホームページに掲載しておりますので。
【相田専門委員】  それを自分で取れということですね。
【早田学術機関課課長補佐】  はい。申し訳ございません。
【相田専門委員】  そういうことですか。
 このファイルの作り方なのですけれども、せめて最後の参考資料は別のPDFにはできないのですか。資料の本体と、最後の参考資料を一緒に見たいときが多々あり、今回、それができないために、かなり不便でした。
【早田学術機関課課長補佐】  分かりました。改善させていただきます。
【相田専門委員】  お願いします。
【稲永部会長】  それでは、本日の議事はこれで終了します。
 最後に、事務局から何かほかにあれば。
【早田学術機関課課長補佐】  いえ、大丈夫です。
【稲永部会長】  いいですか。それでは、どうもありがとうございました。

―― 了 ――


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電話番号:03-5253-4111(内線4169)