研究環境基盤部会(第95回) 議事録

1.日時

平成30年7月4日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 大学共同利用機関の今後の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

稲永忍部会長、松本紘部会長代理、相田美砂子委員、天羽稔委員、井本敬二委員、小林良彰委員、瀧澤美奈子委員、橘・フクシマ・咲江委員、藤井良一委員、松岡彩子委員、観山正見委員、森初果委員、山内正則委員、横山広美委員

文部科学省

磯谷研究振興局長、千原大臣官房審議官(研究振興局担当)、西井学術機関課長、錦学術研究調整官、早田学術機関課課長補佐、高見沢学術機関課課長補佐、吉居学術機関課連携推進専門官、大榊科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐、その他関係者

5.議事録

【稲永部会長】  皆さん、おはようございます。ただいまより、科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会第95回を開催いたします。
 委員の先生方におかれましては、御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 まずは、事務局から、委員の出欠、配付資料の確認をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  それでは、確認をさせていただきます。本日は、勝委員、小長谷委員、伊藤委員、佐藤委員、永田委員、八木委員、龍委員が御欠席でございます。相田委員は、遅れて御出席の予定でございます。
 配付資料の確認をさせていただきます。資料は、議事次第に記載のとおり、資料1から資料9まででございます。参考資料としまして、本日もこの緑色の紙ファイルを配付しております。この参考資料の最後のページに、前回、相田委員、天羽委員から御指摘ございました、各機関の事務職員数について掲載しております。資料等御不足がございましたら、事務局までおっしゃってください。よろしくお願いいたします。
【稲永部会長】  ありますでしょうか。
 本日の基盤部会では、前回に引き続き、大学共同利用機関の今後の在り方について審議したいと思います。
 これまでの議論を踏まえ、本日と次回の基盤部会においては、4機構法人と総研大からお話を伺いたいと思います。
 本日は、そのうち自然科学研究機構、高エネルギー加速器研究機構からヒアリングを行いたいと思います。なお、ヒアリングに当たっては、機構法人に加え、構成する機関からも出席いただいております。
 ヒアリングに入る前に、本日のヒアリング関係の配付資料について、事務局から説明をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  まず、本日配付の資料1についてでございます。こちら、前回提示させていただきました検討課題の論点に沿いまして、皆様から頂戴しました御意見についてまとめたものでございます。これに沿って、きょうのヒアリングでは、資料2にございますように、ヒアリング事項を事前に各機構に対して送付しております。資料3につきましては、こちらは前回の基盤部会で提示させていただきました、検討課題の例についてでございます。
 以上でございます。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 それでは、早速自然科学研究機構からヒアリングを行いたいと思います。御説明お願いいたします。
 どうぞお座りください。本日は、お忙しいところ、おいでいただき、ありがとうございました。それでは、お願いいたします。
【自然科学研究機構(小森)】  おはようございます。自然科学研究機構・機構長の小森です。よろしくお願いいたします。
 それでは、私は紙の資料4に従って御説明させていただきます。
 右下に28分の1とページ数が打ってあります。まず、1ページめくっていただくと、自然科学研究機構の説明があります。右側に中期目標等が書いてありますが、時間がないので飛ばさせていただいて、次のページは、機関がどのように運営されているかについての説明ですが、これも飛ばさせていただきます。
最初は(1)機関における研究の質向上です。
 丸1としまして、機構法人のガバナンスの強化が問われています。まず課題の所在ですが、自然科学研究機構(NINS)本部は、機関に対してガバナンス機能を果たしていると考えています。NINS全体としては、ガバナンス機能の見直しを随時行い、ガバナンスの強化を図っているところです。
 機構長は、ガバナンスの強化に当たり、必要に応じて適切な指示を与えることにより、リーダーシップを発揮しています。
 課題の所在のところに「ガバナンス機能が不明確で」と書かれている、このガバナンスがそもそも何を指しているのかよく分かりませんが、次に「研究の進展や経営環境の変化に対応できる効果的・効率的な運営体制となっていない可能性」と書かれていますので、この点について付け足しの説明をさせていただきます。
各機関は、大学の教員を主とする研究者コミュニティによって運営されており、大学等のニーズや新しい研究の方向性を取り入れて、常に最先端研究を実施しています。機構本部は、これらの研究や研究環境の変化に対応できるよう、各機関の長が参加する研究基盤戦略会議で議論するとともに、URA等の支援を得て各機関の状況を把握し、機構直轄のセンターの設置、改組、予算措置などを機関の要望に応じて臨機応変に行い、現在は、特に、新分野の創成に努めているところです。これらのことから、NINSの運営は効果的・効率的に運営されていると考えています。
 また、NINSは、第三期中期計画目標期間から、研究力強化事業(ほぼ第三期中期計画と同じ内容のもの)の本部長を理事から機構長に変更したため、機構長は研究力強化事業の全てに直接関与可能となっています。このため、具体的な事業として、分野融合・新分野創成、国際交流、内外への情報発信・広報力強化、研究者支援など、機関の行うべき研究事業以外で、共通で行うべきものに対して、機構長がリーダーシップを発揮できる状況にあり、効果的に機能していると言えます。
 次のページ、4ページには、研究基盤戦略会議の構成メンバーの説明があり、各機関の長が入っていることが分かります。月1回定期的に行っており、大きな効果があると考えています。次は、本部長を機構長が務めているという説明です。
 5ページですが、機構直轄のセンターの設置、改組が記載してあり、新分野の創成に努めていることが示されています。下の方の赤枠で囲まれている、新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究センターの3つのセンターを、現在、設置しています。このうち、新分野創成センターと生命創成探究センターが今年度発足又は改組したものです。
 次のページ、6ページですが、今年度立ち上げた生命創成探究センターと新分野創成センターの2分野について説明しています。
 まず生命創成探究センターですが、生命科学を取り巻く状況の変化に対応し、我が国の生命科学研究を底上げし、世界を先導する研究内容を上げることを目的としています。内容、機能、手段についても、切り口を新しくしたこと、「つくる」という新しい手段を加えた「みる、よむ、つくる」で研究を進めることなど、いろいろ説明があります。
 新分野創成センターには、先端光科学研究分野とプラズマバイオ研究分野の2分野を新たに立ち上げています。プラズマバイオは、基礎プラズマ科学と分子生物学を合体させて、新分野を創成させようとするもので、名古屋大学と九州大学のセンターとともに研究コンソーシアムをこの6月に発足させました。これに共同研究を加えて、全日本体制が構築されています。
 次のページに、生命創成探究センターの設立概要の詳しい状況と、8ページに、プラズマバイオコンソーシアムの概念図が示されています。
 9ページに示されているように、機構では、機関・分野の枠を超えた共同利用・共同研究体制の構築を図っています。これまで、機関ごとに共同利用・共同研究を行ってきましたが、これを機構が統一して実施し、どの分野にも容易に参加できるようにして、目的にありますように、異分野融合・新分野創成に自然につながる共同利用・共同研究体制を構築したいと考えています。分野間の壁を全部取り外そうという試みです。
 具体的には、自然科学共同利用・共同研究統括システム(NOUS)によって推進しようと考えており、NOUSの構築を今進めているところです。NOUSには、共同利用・共同研究の成果、評価なども収集し、IRを使って大学への貢献を見える化することも計画しています。
 10ページには、この制度の現状が示されています。NOUSは、平成31年度に完成予定ですが、29年度に研究の実施部分が完成しています。これに評価とか成果の部分を加えると、完成ということになります。現在、研究の実施部分は、バグ出しを兼ねて機構本部、アストロ、核融合で運用を開始しました。これまでの共同利用・共同研究は、研究所、また、同じ研究所の中でも事業所によって、いろいろ異なる形式・方式で実施されてきたことから、各事業所から、なるべく現状に合うようにして欲しいという要望があり、天文の水沢、野辺山とか、岡崎の3研究所で運用に向けたプログラムの調整を行っています。調整できますと、今年度中になるべく全事業所でスタートさせて、後は、成果、評価の部分を構築すれば完成となります。 10ページの上の方には、NOUSの完成にはまだちょっと時間がかかりますので、分野融合を特に目指した共同研究については、既に昨年度から実施したことが記載されています。
 11ページには、国際的先端研究推進の一環として、ボンとプリンストン大に一人ずつ海外駐在型URAを配置していることが記載されています。いろいろ活動をしていますが、例えば、プリンストン滞在型特任研究員を採用し、その活動を支援していることが挙げられています。この制度では、研究員をNINSで雇用して、主にプリンストン大学でプリンストン大と共同研究を実施していただいています。プリンストン大学とNINSで国際共同公募を行い、両者で選考を実施しました。これが斬新だということで、国際的に大きな反響を呼び、多くの応募がありましたが、20人ちょっとですが、その中から1名を採用しました。写真が載っています、イタリア人の女性を採用しました。
 機構では、これを更に進めて、次のページですけれども、国際連携研究センターを設置することを企画しています。天文学とプラズマ物理学の融合分野における、自然科学研究機構と、プリンストン大学及びマックス・プランク協会の3研究機関にまたがる国際研究センターの設立を目指しています。右の方には、10名以内程度の若手を雇用すること、流動化を図ること、それから、国際公募で国際人事委員会が決めることなどが書かれています。国際公募の場合、給料が一番問題となりますが、現地の給与水準で募集することを考えています。国際連携研究センターは、今年の秋から発足させる予定です。
 13ページには、国内外への情報発信・広報力強化が書かれています。これまでのように広報を全体的に漠然と行うのではなくて、ターゲットに合わせて実施しようとしています。今、国際研究者、市民、産業界、大学執行部と、それぞれのセクター向けにパンフレットの作成などを進めており、一部完成・実施していますが、一部はまだ作成・準備中です。
 15ページに行かせていただいて、運営の関係ですが、研究者コミュニティの意向は、機関の場合、運営会議、先ほどちょっと絵がありましたが、人事委員会、共同研究委員会など、様々な仕組みにより運営に反映されています。これらの委員会の委員の過半数が外部の人で構成されています。機構の場合も、教育研究評議会・経営協議会の外部委員に機関推進の委員も選んでいること、そもそも機関の長は研究者コミュニティの意見を代表していることなどから、機構の会議に研究者コミュニティの意向は反映されていると考えています。
 機構長裁量経費ですが、NINSでは、平成26年度から「自然科学研究機構機能強化推進経費」を創設し、機構長のリーダーシップの下、NINSの機能強化を推進する諸施策を展開しています。具体的には、機構長裁量経費等を財源として、NINSにおけるガバナンス維持・強化や研究力強化などの機能強化を推進する事業に対して配分しており、NINSのガバナンス強化に有効に活用されています。配分は、機構長が直接決める事業に加えて、各機関等から提案された対象事業に、機構長が提案書を基に選考の上、行っています。
 機構長の選考方法は、NINSが採用している、委員全員が部外者で構成される機構長選考会議で選ぶ方式が、分野に偏ることなく公平に選出できるものであることから、好ましい方法ではないかと考えています。法人を経営する人材は、機構本部・機関の管理職、幹部URA職員などに、機構本部の各種業務を実際に遂行していただくことにより、育成しています。
 考えられる施策の例の2)の機構長補佐体制は、研究・評価担当の理事を常勤化したほか、副機構長を置き担当分野を割り振るなどして強化しています。更に、機構長の補佐業務は、NINS程度の規模ですと、理事、URA職員、本部職員の中から、最も適切な人を選んで当該業務を個々にしていただくことによって、効果的に果たされていると考えています。NINSでは、機構長のリーダーシップは、機構長の考える施策を実施する実働部隊を充実することによって発揮されています。
 考えられる施策の例の3)ですが、産業界や海外の分野研究者等を役員として参画させることは、アドバイザーとしてであれば賛成ですが、実務実行担当としては、役員の数が少ないことから、混乱を招くおそれがあり賛成できません。
 機構本部の行っている、また、取り組むべき業務は、いわゆる管理・運営と、先ほど述べましたような分野融合・新分野創成、国際交流、内外への情報発信・広報力強化、研究者支援など、機関の行うべき研究事業以外で、共通で行うべきものです。
 次に、丸2の人的資源の改善についてご説明します。課題の所在の認識ですが、特に岡崎では、人事交流、流動が活発に行われていると認識しています。平成28年度の機構の研究者の流動情況は、転入が32人、転出28人で、法人化直後の16年と比較して遜色ないと考えています。また、28年度にポスドクを修了した29名中27人が転出しており、転出できなかった者は2名です。機構本部では、特にポスドクのキャリア支援を行っておりません。
 検討の方向性のところですが、流動性はもちろん必要であると考えています。NINSでは、クロスアポイント制度の活用を図っており、平成29年度は8件でしたが、流動化のきっかけになるものと期待しているところです。
 18ページの丸3の物的資源の改善については、課題の所在として、研究施設・設備の中長期的なマネジメントが困難になっていると認識しています。特に老朽化した大型設備の更新ができていないことが問題です。
 考えられる施策の2)のように、ほかの研究機関との技術支援の連携を促進させることは賛成です。例えば、分子科学研究所は技術研究会をかなり以前から始め、現在では全国規模で開かれるまでになっています。実質的な技術情報の交換は技術を維持する上で必要です。
 NICAと呼んでいますが、NINSは、NINSと13大学の学長あるいは研究担当理事の加わった一種の協議会を立ち上げ、そこで「技術」と「人材育成」等に関する提案を行っており、技術に関する問題は重要であると認識しています。次のページに、自然科学大学間連携推進機構(NICA)の説明が書かれています。NICAは、これまでのボトムアップの運営に大学執行部の意向も取り入れ、共同利用・共同研究全体をバランスよく発展させるための仕組みとして、立ち上げました。平成28年度に立ち上げ、現在、13大学が加入しています。加入大学は、NINSの各機関が実施するネットワーク型共同研究に2つ以上参画している大学です。しかし、現在は、ネットワーク型に限らず、共同利用・共同研究全体の発展のために議論いただいています。平成30年度からは、NINSだけではなく、4機構に拡大することを提案しているところです。次の20ページから3ページほど、タイトルのところがピンク色になっていますが、これらは実際にNICAの議論で使用した技術関係の資料です。
 飛ばしていただいて、23ページの丸4機関の構成の見直しです。現状、NINSの機関は、大学の教員を主とする研究者コミュニティによって運営され、大学研究者等のニーズを適切に取り込んでいると考えています。また、研究の方向性を適切に読み取り常に最先端の研究を推進しています。先ほど述べましたように、機構としても、これらに対応して、センター等の改革・設置を行っており、少なくとも、現在NINSが受け持つ基礎科学の領域の発展、あるいは、新領域の創成のために、NINSに再編が差し迫って必要とは考えていません。
 しかし、4機構全体として機関の再編や新機関の参入が予算を伴って適切に行われれば、学術の更なる発展がもちろん期待できると考えております。
 考えられる施策の例の2)ですが、機関の内部組織、研究内容は、研究者コミュニティによる外部評価等を行い、不断の見直しが重要と考えています。しかし、NINSが受け持つ基礎科学の推進のためには、大きな組織・設備と長期間に及ぶ研究期間が必要であり、機関そのものに存続期間を設定して再編・改廃等を迫る方式はふさわしくないと考えております。
 次は(2)人材育成機能の強化です。
NINSの各機関は研究と同時に大学院生の教育を行っています。研究は機関の仕事、教育は総研大の仕事とされていますが、実際には同じ組織が行っています。したがって、機関と総研大の連携というような言葉遣いは不適切であると考えています。機関が総研大そのものであることから、連携協力が不十分ということは考えられません。
 総研大を連携大学院と比較してどのように評価しているかということですが、機関が、自分の理想とする教育を総合的に行うには、やはり独自の専攻、総研大が必要であると考えております。連携大学院というのは、他大学がそれぞれ理想とする教育の一部を担うだけですから、やはり独自のものが必要です。
 総研大の葉山本部との組織的な連携協力体制を強化する枠組みの導入は、必要であると思います。
 次は、25ページの(3)関係する他の研究機関との連携です。
大学の共同利用・共同研究拠点制度との連携は必要であると思います。これまでネットワーク型と申し上げてきました共同研究は、ここに記載されている連携・協力に近いもので、機関はそれぞれ既に実施しています。
 考えられる施策の例の2)に関連して、特定の大学に属して共同利用・共同研究を実施する共共拠点と、どの大学にも属さず全国の研究者コミュニティの拠点として共同利用・共同研究を実施する大学共同利用機関との位置付けに留意する必要があると考えています。
 丸2の地方創生やイノベーション創出については27ページに記載しています。今、いろいろ試みておりますが、まだ検討中のところもあります。
 最後は、28ページの(4)機構法人の枠組みです。
考えられる施策の例は、よく議論して適切に実施されれば、有効と考えています。
 4機構に法人化したことのメリットは、機構法人内の、例えば、分野融合や新分野創成などの事業が加速できたことであり、デメリットは、機関運営の意思決定システムが複雑化したことではないかと思います。
 これまで4機構長と総研大の学長が頻繁に集まって、在り方について議論を進めてきました。その結果、先日、中教審の大学分科会の部会で「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」が出されましたが、その中に記載されています「大学等連携推進法人」を5法人で設立し、改革を進めていくことが適切だという結論に達しました。本部会でも、この結論を取り上げて御検討いただきたいと思います。
 設立を目指す「大学等連携推進法人」の機能・役割につきましては、中ほどに記載していますが、事務の共通化・簡素化とか、異分野融合・新分野創生とか、いろいろ考えられると思います。我々も、早急に検討を進め、その機能・役割について提案したいと考えております。
 大学等連携推進法人を設立しても、法人としての管理運営は、4機構及び総研大が行い、機関の意思決定システムが更に複雑化することは避けなければいけないと考えています。飽くまでも機関が自由にといいますか、効率的に活躍できる体制を構築することが肝要です。
 機関の構成は、先ほど申し上げましたように、自然科学研究機構に関しては適切と考えています。しかし、4機構全体としては、機関の再編などが予算を伴って適切に行われれば、学術の更なる発展が期待できることから、検討に値すると思います。これについても、4機構長と総研大学長で検討して、この場で提案できればと考えております。
 以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 川合所長もせっかく来られているので、補足することがあればお願いいたします。
【自然科学研究機構(川合)】  機構長から今NINS、自然科学研究機構の在り方の説明はいただいたところでございます。
 今回のディスカッションは、この機構の傘をそのままキープすべきなのか、もう少し違った組織構成があるかということが中心だと聞いておりますので、研究所を運営している立場から、少し申し上げてもよろしいですか。
 研究所、共同利用研の立ち位置というのは、先ほどの説明があったように、研究者のコミュニティがバックアップをしているシステムでございます。それは、旧態依然としたコミュニティという見方をされる場合もあるかもしれませんけれど、大学の方もどんどん変わっておりますので、バックアップしている母集団は、かなり変化をしていると認識しております。
 分野融合が叫ばれますけど、分野融合する前に、各々の分野の立ち位置がきちっとしていなければいけないので、そういう意味で、共同利用研の個々の研究所がしっかりしていることというのは、我が国の学術や研究の基本であろうと思っています。
 共同利用研は、学術の考え方を基に立てられている研究所ですので、長期的な戦略をきちっと任せていただける研究所であるべきだと思っております。中身が変わらなければいけない時代になりますと、研究コミュニティが減ってくるはずですので、それに呼応するように変えていくのが自然の姿かなと思っています。
 今、機構の中にいていいことは、機構長、さっき説明されましたが、我々のコミュニティだけでは思いつかないことを時々チャージいただけますので、あ、そうかと思うことがあるのは非常にありがたいなと思っています。
 一方で、自分たちの研究所で推進してきたものの一部をやはり機構に出していますので、それをもう一回戻してくるときに、我々だけではできなかったというか、我々がこうやりたいと思っていたことを、少し違った形になっていることが当初ございましたけど、小森機構長、その辺はきちっと把握されていて、個々の研究所が一番適切な形で動けるように、システムも柔らかに変えていただいていますので、そういう意味では、大分運営しやすい機構長の下にいるなという気はしております。
 それから、総研大との関係ですが、いいところは、自分たちの専攻が持てていて、例えば、海外と一緒に共同でジョイントディグリーであるとか、ダブルディグリーの話をするときに、我々が主体として動けるというのはメリットだと思っています。
 一方、少子化の時代に入り、学生の数が大変減っておりますので、少人数の学生のために大規模大学と同じ労働が課されているというのは、少し気になっている点です。
 それから、全国の大学を相手にした共同利用研としては、全ての大学と等距離でいろいろな事業を行うのが本来の姿ですので、全ての大学に入り込んで教員になり得る立場がいただけるのであれば、多分、これがベストなのですけれど、現在は総研大を専従している形なので、多くの大学に対して教育を分担することができないデメリットがあります。もうちょっとフレキシブルに複数の大学の教育にかかわれる形を工夫する余地があるかなと考えております。
 それから、もう一つは、大学との関係に関しては、共同利用を通じて大学の研究をサポートはしているつもりでございますが、かつて流動研究部門というものを分子研で運営していました。これは2年間ほど大学から完全に出向して、研究所の職員になっていただいて、そして、この間思う存分研究して帰っていただくというシステムがございました。これをそのまま今動かすことはできないのですけれど、部分的に活用し、特に中堅大学の研究活性化に共同利用研がもっと寄与できるシステムを考えております。流動的なシステムをクロスアポイントと並用してうまく使っていけたらと思っております。
 今、急に指されたので、余りまとまっていないかもしれませんが、以上でございます。
【稲永部会長】  ありがとうございます。非常に具体的に提案もありました。
 それでは、質疑応答に移りたいと思います。御質問、御意見があれば、どうぞ、小林委員。
【小林臨時委員】  何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。
 NICAを作られたり、新しいセンターを次々立ち上げられたり、非常に前向きに活動されていることに敬意を表したいと思います。
 まず第1点ですが、機構長裁量経費については、機構長がイニシアティブを持って決めているという御説明でした。しかし、例えば、新しいセンターを作られても、予算と人員は限られていますので、再配分を行わなければいけない。そこにおける優先順位であるとか、あるいは、大型施設が非常に老朽化している中で、マスタープランを通じてロードマップへ持ってきたりする、そういう提案の優先順位を付けるというのは、機構の中でどういう形で今行われているのか、5ページに機構の組織図がございますので、それでもし御説明いただければと思います。
 2点目ですが、8ページにプラズマバイオコンソーシアム概念図というのが出てきておりますが、特段核融合研の名前が出てはきておりませんが、これはもう書かずもがなで、左上の自然科学研究機構の中の中心としてそこにあるというふうに理解をしていいのかどうかです。そこに研究所の名前が書いてあれば、それで分かったのですけど、特に書いていないのは、何か意味があるのかないのか、書かずもがなだったのかということをお尋ねできればと思います。
 それから、20ページに、技術職員が非常に不足しているというお話でした。その分だけ、場合によっては、例えば、若手の助教に負担が、本来ですと技術職員がやるべきようなことを若手助教がやらざるを得ないというような状況も起きている可能性もあると思うのですが。今現在、若手助教は、御自分の研究と業務の割合、契約上、何十%ずつに、その2つに分けられない分もあると思いますが、ただ、契約上はどういうふうな割合でやっていらっしゃるのかということです。
 最後にお尋ねしたいのは、機構と総研大はもう不可分一体であるというお話でした。そうなると、例えば、葉山で行われる教育というのは、どのようにお考えなのか、あるいは、もう不可分一体であるというのは、例えば、総研大が独自の施設であるとか、そういうものをどのように今後あるべきだとお考えであるのか。これは後で総研大の方にお尋ねすべきことかもしれませんが、自然科学研究機構としてはどのようにお考えなのか。
 以上です。
【自然科学研究機構(小森)】  まず予算の件ですが、予算は、機構長裁量経費とか、いろいろなのを含めて、持っているものをどう分けるかということになりますが。
【小林臨時委員】  機構長裁量経費ではなくて、例えば、新しいセンターを作ると。
【自然科学研究機構(小森)】  新しいセンターを作る場合、予算的には、ビルド・アンド・スクラップ方式を取り入れることになります。全部ではありませんが、やはり予算がありませんので。
【小林臨時委員】  それを、この組織ではどこでお決めになっているのかということをお尋ねしたのですが。
【自然科学研究機構(小森)】  今度のセンターの場合、私が提案し、先ほどの戦略会議、5ページの機構組織図の右側の列の一番上に記載されている研究力強化戦略会議にかけました。この会議には所長さん、機構直轄センターのセンター長さん全員が入っています。予算・施策は、先ずここに提案して議論し、内容・方向性など、基本的なことを了承していただく、あるいは決めることになります。その後、5ページの機構組織図の機構会議、役員会で決める格好です。
 次は、プラズマバイオコンソーシアムのプラズマバイオ分野に核融合研が入っていないのかという御質問です。このコンソーシアムの名古屋大学と九州大学は、基礎プラズマ科学側から研究を進めています。プラズマを、例えば、動植物に当てて影響を調べることが、研究のメインです。
 ただ、基礎的な研究、即ち、分子生物学的な研究がほとんど行われておらず、なぜそうなるのかということがまだ解っていません。世界的に見ても、そういう傾向にあります。そこで、我々としては、むしろ岡崎の生命科学系の研究者に入っていただいて、分子生物学的な基礎研究を行っていただくことを考えています。
 これにより、基礎から応用までの一大新分野を一気に創生できることになります。したがって、このプラズマバイオ分野の私の狙い目は、実は岡崎です、とは言ってもプラズマが必要不可欠ですから、ここには当然核融合研が入っています。
 次の御質問ですが、お尋ねのように、技術職員が不足していることから、研究者も技術的な仕事をかなり行っています。これについては、研究所によって実情が違いますので、どのぐらいのエフォートとかは、今、ここでは何とも言えません。私は核融合研の所長を務めていましたが、核融合研の場合、やはり装置の維持や改造等の技術的なところを研究者が分担しないと動かないところがあります。どのぐらいのエフォートかは、人、仕事によって違いますので、核融合研では、論文等と合わせて総合的な評価を行っていました。評価は、給料、昇格に反映されます。技術的貢献に対する取扱いは、研究所によってかなり異なると思います。
【自然科学研究機構(川合)】  分子科学研究所は、昔から技術職員を非常に大事にしておりまして、今でもそこそこの数の技術職員をキープしております。若手の良い技術職員をこの給料で雇うのは非常に難しくなってきているのが悩みです。
 あと、大きな施設の場合は、当然若手の助教も施設運営に携わるのですけど、これは研究の一部をなすところでございますので、むしろ切り離されてしまうと、その人たちの研究のブラッシュアップにはあまり良くないと思います。
 小さなところは、その技術職員の手助けと、自分たちの共同研究をやっておりますので、若手助教に直接聞かないと、私が思っているほどはいい形になっていない可能性はゼロではないのですけれど、やはりあるバランスで技術職員を置いておかないと、共同利用のシステムは動かないと思います。
【自然科学研究機構(小森)】  総研大は、先ほど申し上げましたように、基盤機関そのものです。多分、皆さんが考えておられる総研大というのは、葉山本部のことだと思います。研究科とか専攻が研究所にあり、そのヘッドクオーター、本部が葉山にあります。大学に本部がないと機能しませんから、葉山は必要であると考えています。
 葉山は、この次に来られると思いますが、全学にわたる共通の授業とかを実施しています。普通の大学ですと、大学本部が直接授業をもつことはあり得ないので、これは葉山の特長と思っています。 
【稲永部会長】  ほかに、御質問、御意見ございますか。どうぞ。
【相田専門委員】  2点お伺いしたいのですが、1つは、クロスアポイントメントで、それから、2点目は、事務職員の件なのですが。クロスアポイントメント、先ほど9人だったかという御説明がありましたけれども、それはどういう形態なのか、それから、どのくらいの期間なのかを具体的に知りたいことと、それから、事務職員なのですけれども、きょうは新たに全体の資料の最後に、機構本部と各機関の事務職員構成というリストをいただいたのですが、だんだんと自然科学研究機構は、機構本部の職員数よりそれぞれの研究所の職員数の方が多くなっているのですけれども、これは、つまり、機構本部としての事務職員の仕事の内容と、それぞれの研究所等での事務職員の仕事の内容や、役割分担等が多分特徴的なのだろうとは思うのですが、ほかの機構と比べて違う部分はどういうものがあるのでしょうか。
【自然科学研究機構(小森)】  まずクロアポですが、クロアポの期間は、基本的に1年で更新して行く格好をとっています。半年という場合もありますが、更新して数年続いているのもあります。
【相田専門委員】  それは、機構の教員が先方に行く割合はどのくらいなのでしょうか。
【自然科学研究機構(小森)】  今、大体半分半分ぐらいだと思います。
 形態としては、相手も大学という場合が最も多いですが、相手が民間企業というのもあります。
【相田専門委員】  つまり、エフォートの半分が機構の中にいて、半分が先方という、そういう意味ですか。
【自然科学研究機構(小森)】  いや、それは違います。人によって異なっており、機構の方を8割にして向こうを2割とか、向こうが8割で機構が2割とか、半分半分とか、いろいろあります。
【相田専門委員】  それはいろいろあるという。
【自然科学研究機構(小森)】  いろいろあります。それは、研究の状況、相手の状況等によって異なってきますから、お互いに話をして、必要な割合を決めています。
 また、外国とも、国立大学以外のところとも実施しています。
【相田専門委員】  はい。では、事務職員の。
【自然科学研究機構(小森)】  今ちょっと資料がないのですけれども、特に意図しているものではありません。
【稲永部会長】  これを見て言われるのですね。
【相田専門委員】  はい、そうです。
【自然科学研究機構(川合)】  私たちは持っていない。
【稲永部会長】  ないですよね。では、どうぞ。
【自然科学研究機構(小森)】  我々の機構では、本部の人数が割と少ないと思います。機関の方は、共同研究者が増えていますので、その対応も含めて増えている可能性があります。
 機構本部の方は、経費の節減に努めていることもありますが、少ない人数で事務を執っており、先ほど申し上げましたように、補佐をつくるより、事務の実働部隊を増やした方がもっと多くの施策を迅速に進められると思っています。しかし、予算的な問題で、できないということです。
【相田専門委員】  この数は、正規の職員の方だけなのですか、それとも。
【自然科学研究機構(小森)】  これは正規の職員だけですか。
【自然科学研究機構(川合)】  これは私たちが作ったものではないので、何が入っているか教えていただかないと分からないです。
【自然科学研究機構(德田)】  これには特任の有期雇用の人も入っていると思います。
【自然科学研究機構(小森)】  有期雇用も入っているようです。
【相田専門委員】  すみません。先ほどのクロスアポイントメント、もう一言だけお聞きしたいのですが。もともと機構の職員だった方が先方にクロスアポに行くのと、もともと向こうの職員だった方がこちらに来られるのと二通りあるではないですか。その割合はどうなのですか。
【自然科学研究機構(小森)】  同じです。
【相田専門委員】  それも半々。
【自然科学研究機構(小森)】  はい。
【相田専門委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  よろしいですか。では、ほかに御質問、御意見。どうぞ、天羽委員。
【天羽臨時委員】  5ページの機構直轄のセンターの設置と改組という形で、先ほどガバナンスの強化ということを随分図っていらっしゃるというコメントがあったのですが。
 この中で、理解ができないところがあるのですが、監査室と内部統制推進室、これ、どうしてこのように分けるのですか。例えば、監査室という形と内部統制というのは、要するに、監査というのは基本的に内部統制と内部監査で部屋を作ればいいことであって、これは、何人がどのようにやっているのでしょうか。監査というのはどういう格好で、例えば、内部統制のシステムが構築されているということをちゃんと監査をしているのか。また、役員会は、それぞれの役員が必要な業務をちゃんと執行しているというようなことを、その役員会に出て、しっかりとプレゼンスを作り上げていっているのか。ここのところがよく分からないのですが、御説明願えればなと思います。
【自然科学研究機構(德田)】  監査室と内部統制室ですが、分けて設置して、それぞれの業務を担当するという形にしていますが、内容的には連携を図りながらやっているというのが現状でございます。
 また、先ほど、この室の人数的なことがありましたけれども、現時点においては、両室とも全て兼任の者がこの室員として業務に当たっているという状況でございます。
 また、この両室の監査結果等につきましては、役員会に報告をして、その場で御議論いただいているという流れになっています。
【天羽臨時委員】  ということは、統制と監査は兼任なのですね。
【自然科学研究機構(德田)】  監査室と統制室を兼任しているということではなく、監査室の室員、内部統制室の室員は職員の中から兼務をしていて、専任の室員は残念ながら置かれていないというのが実態ということでございます。
【天羽臨時委員】  職員の中からやられるのは当然なのですけれども、私は、ちゃんと監査室のロール、それから統制のロール、統制というのは、ここの機構がどのように運営されていて、どのようなファイナンス上になっているか、これは内部統制の一部なのですけれども、監査というのは、基本的には、それぞれの役員の方がいろいろな執行をするときに、それがうまく機能しているかというチェック機構なのですね。非常に重要なチェック機構なので、余計に、本当にそれがちゃんと機能しているのか、それから、例えば、監査計画というのを年間作って、それでちゃんと運営しているのかということを聞きたいのですが。
【自然科学研究機構(小森)】  年間計画を立てて実施していますし、監査室と内部統制推進室は別個に動いています。したがって、監査室が、内部統制推進室がきちんと機能しているか監査しています。別々です。同じ人が両室に携わってはいません。
【天羽臨時委員】  そうですね。同じ人がやっていたら困るのですけど。ですから、そういうことがちゃんと運営されているかというのを御質問したと思うのですが。
【自然科学研究機構(小森)】  それはきちんと実施しております。
【天羽臨時委員】  何名でやっていらっしゃるのですか。
【自然科学研究機構(小森)】  両方とも、正確ではありませんが、5名ぐらいずつだと思います。
【天羽臨時委員】  5人。
【自然科学研究機構(小森)】  5人ぐらいです。
【天羽臨時委員】  そうですか。なるほど。私的なイメージでは、かなり多いですね。
【自然科学研究機構(小森)】  そうですか。
【天羽臨時委員】  ええ。分かりました。ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかに。どうぞ、フクシマ委員。
【フクシマ臨時委員】  どうも御説明ありがとうございました。
 2点伺わせていただきたいのですが、1点は、12ページの国際連携研究センターというのを設立されたということで、大変すばらしい試みをなされていらっしゃると思うのですが。実際に、今から動き出すということなのでしょうか。それとも、すでに動いているということでしょうか。また、この中で、給料の費用負担の点がちょっと出てきていましたけれど、もう少し詳細を教えていただきたいのですが。
【自然科学研究機構(小森)】  国際連携研究センターは、この図にありますように、ブランチの1つをプリンストン大に、もう一つをマックス・プランク協会に置く予定です。
マックス・プランク協会のプラズマと天文に関係する3つの研究所、MPS、MPA、IPPと書いてありますが、この3つの研究所とプリンストン大とは、昨年度末までに、先ほど申し上げました滞在型URAの支援を得まして、個別に協定を結んでいます。今、日独米が一体となって共同研究を進められるよう、プリンストン大とマックス・プランク協会が作っているセンターと協定を結ぼうとしており、協定書案を作成中です。協定書の内容は、この4月に両者のトップと話をして、既に合意しており、今年の夏か秋の初めには協定を締結できる見込みです。国際連携研究センターは、協定締結と同時に設立する予定です。
 また、それと同時に、御質問のありました人事を国際公募します。今年の秋、10月後半か11月頃には人事公募を行えると考えています。
【フクシマ臨時委員】  2名から10名送られると。
【自然科学研究機構(小森)】  はい。今ここに書かせていただいているものの費用については、全額NINSが負担します。
【フクシマ臨時委員】  全額ですか。
【自然科学研究機構(小森)】  はい。いただける予算にもよるのですが、2名というのはちょっと少なすぎるのではないかと考えています。10名程度は何とか配置したいと思います。
【フクシマ臨時委員】  ありがとうございます。他機構の参考にもなるような試みだと思いましたので、質問させていただいたのですが。
 2点目は、民間との関係ですが、今回、このプレゼンテーションをお伺いした中で、2点、民間という言葉が出てきました。16ページの3)で、「産業界や海外の分野研究者等を役員として参加させることは、アドバイザーの立場であれば賛成であるが、業務実行担当としては混乱を招くおそれがあり賛成できない」ということが1つと、それから、18ページに、「大型設備で基礎研究を行っている法人では、民間資金の活用は難しいのではないか」と。この2点、どちらかというと、比較的消極的な印象ですが、民間との連携は余りしたくないというメッセージのようにも受け取れるのですが、その辺の民間との連携についてはどうお考えでいらっしゃいますでしょうか。
【自然科学研究機構(小森)】  決して消極的なわけではありません。我々も、あちこちから民間資金の導入を促されています。岡崎の3研究所は、医薬品系の民間との交流があり、委託研究費等をいただいています。一方、核融合と天文は民間とほとんど連携していません。この2研究所は、国から大きな予算をいただいて非常に大きな設備を建設し、基礎研究を実施しています。それが、所員ほぼ全員の本務ですから、成果が得られる程度の人員を民間の方に向けることはできませんし、研究内容も、半年後に製品となるようなものではありませんから、民間との連携はなかなか難しいと言えます。決してやりたくないと言っているわけではありません。
 実際、今、産学連携研究を促進するため、産業界向けに研究者マップを作成中です。また、ちょっと飛ばしましたけれども、民間と定期的に会合を持つことを計画しています。これらは、14ページに作成中とだけ記載してあります。さらに、三鷹の天文台には三鷹周辺の企業グループが、岡崎の3研究所には中部経済連合会が見学に訪れ、意見交換を行うなど、産業・経済界にNINSの現状を知っていただく上で重要なイベントが実施されています。このように、産学連携には至らなくても、NINSを知っていただくために、いろいろなことを実施しております。
【フクシマ臨時委員】  分かりました。是非、可能なところを積極的にお進めいただければと思います。
【自然科学研究機構(小森)】  それから、先ほどのクロスアポイントは、民間とも実施しております。産学連携はNINSの弱いところですので、今後、促進に努めたいと考えております。
【フクシマ臨時委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  まだあるかと思うのですが、時間が参りましたので、よろしいでしょうか。
 本日は、小森機構長をはじめ、川合所長、ありがとうございました。
 それでは、次に、高エネルギー加速器機構から説明をお願いします。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  それでは、よろしいでしょうか。高エネルギー加速器機構の山内でございます。きょうは、あらかじめ事務局の方からヒアリングのポイントというのをいただいておりますので、それに沿った格好で、私どものKEKのことを御説明させていただきつつ、意見も申し上げる、そういうことをさせていただきたいと思っております。
 まず高エネルギー加速器機構ですが、名前が長いので、KEKと呼びますが、茨城県つくば市と東海村というところ、2つにキャンパスがございまして、加速器という大変大きな研究施設を双方に持っております。これらを使いまして、素粒子から、原子核から、構造物性から、構造生物学といったような幅広い研究を進めております。
 まず私どもの組織とガバナンスですが、組織に関しまして、ちょっとほかの機構さんとは違う特徴的な格好をしておりますので、まずそこから御説明いたします。
 私どもには教員組織というのが4つございまして、素粒子原子核研究所、物質構造科学研究所というのがございますが、この2つのみが大学共同利用機関です。あとの2つ、加速器研究施設、共通基盤研究施設というのは、これは機構法人の機能といたしまして、ここが提供する加速器、あるいは、その周辺の設備等をここが提供して、それを使って、この2つの研究所は共同利用に供すると、そういう仕組みをとっております。
 それから、もう一つは、管理部門、あるいは、研究支援部門というのは、それぞれ機構法人の機能として設けているということが特徴です。
 それから、もう一つなのですが、JAEA(原子力研究開発機構)さんと私どもと一緒にJ-PARCセンターというのを運営しておりまして、ここはセンター長を除いては全員の職員が兼務でございますので、ここにはたくさんの人が更にいるわけではないのですけれども、こういったものがございます。
 私どものガバナンスですが、この機構の全体の特徴に加えまして、2つのポイントがあると思っております。1つは、研究企画をきちんと定めました研究実施計画、私どもはPIPと呼んでいますけれども、これを作ったのは2年前です。ここには研究計画の優先順位がきちんと定義されているだけではなくて、それまでやってきたあれもやめます、これもやめますということもはっきり書いてあります。こういうものを作ると非常に物議を醸すのですが、2年ぐらい経ちますと大分落ち着いてきたかなと。というところで、研究計画というのは、しっかり、ある一定のガバナンスの下で進んでおりますと言っていいと思います。
 それから、もう1点は人件費なのですが、各部局に年2%の人件費削減を求めております。うち1%を実際に削減に、1%は機構による再配分、つまり、機構として手薄になっている部分というのはやはりございますので、そういったところに配分するという仕組みを設けております。といったところによりまして、人件費に対してもガバナンスができているだろうと考えておりまして、KEK全体におきまして機構法人の役割というのは、ここに示しましたとおり明確でございまして、ガバナンスが適切に行われていると考えております。
 それから、企業経営経験者に役員になっていただくということには様々な利点があると私は思いますが、では、一体どういう人を選んでくればいいのかというのは、なかなか難しいかなと。私も、残念ながら、企業経営者の方々に多くの知り合いがいたり、どういった特徴を持った方々がいるのかということもよく存じたりしないものですから、人選は難しいかなという印象は今持っております。
 それから、機構長補佐体制ですが、私ども、自然機構と同じように、アドホックに職員に依頼するということは多くあります。したがいまして、特に補佐体制を別に設けるということは必要ないのではないかと考えております。
 次に、人的資源の改善でございますが、ここに示しましたのは、KEKにおける教員の転出・転入のデータ、平成16年、28年を比較しております。全体の数は非常に少ないということに加えまして、転出・転入の助教の数は増えているのですが、上位職の方に停滞が見られるというところが特徴として見られます。
 ただ、KEKの場合には、大型の研究設備に関する特殊な専門性が求められるという方も相当数おりますので、人事交流を一概にすぐ推奨できないという場合もございます。
 また、流動性を補完することを目的のひとつといたしまして、大学の分室を機構内に設置するということで、実際にそこには大学の先生も来られますし、学生さんもそこを拠点にして活動されるという場所を作っておりまして、既に阪大、京大、九大とは実施しております。こういったことは、流動性を補完する一つのツールになっているかなと思っております。
 それから、ポスドクの方々に活躍してもらうということは大変重要なのですが、科研費でポスドクを採用する場合には、専従義務というのがございますが、私どもでは給料の一部を機関が負担するという制度を作っておりまして、専従義務を外すことができます。ということで、比較的自由な研究にも時間を使うことができるという制度を設けております。
 それから、私ども、特にJAEAと一緒にやっているJ-PARCなんかはそうなのですけれども、異なる機能を持つ研究機関間の連携を進める際には、クロスアポイントメントというのは非常に有効に機能していると思っておりまして、現在、かなりの数がおりますけれども、これを更に増やしていきたいと考えております。
 それから、物的資源の改善、これはなかなか難しいところでございますが、私どもも、研究施設・設備の老朽化、維持・改良が困難になる等々の問題が様々ございまして、頭を悩ませているところでありますが、例えば、老朽化対策といたしましては、ESCO事業というのがありまして、これは御存じかと思いますけれども、民間資金でもって、例えば、空調設備を工事してもらう。そうしますと、電気料は下がりますので、その下がった分で費用を回収していただくという仕組みですけれども、このESCO事業を昨年度から、11.6億円相当を始めております。
 それから、PFIというのは、これも民間資金の活用ですね。これによりまして、研究者宿泊施設の更新というのを今年度から10億円規模で始めております。
 それに加えまして、研究設備の維持・改良に困難があるという点に関しましては、有償による産業利用というのをやっておりますが、これは規模的には年間1.何億円程度です。
 それから、国際共同利用の促進というのをやっておりまして、これは海外からの財政負担というのはかなりたくさん来ておりまして、今年度までの累積でもって85億円、これは期間は長いですので、年間85億円ということではもちろんありませんが、年間に割り算しますと、多分10億円程度だろうと思います。これぐらいのお金は来ております。
 それから、大変頭が痛いのは、放射光施設というのがございまして、これも私どもの非常に重要な施設ですが、ここの老朽化というのは、もう36年経っているということで、かなり待ったなしの状態でありまして、大学の研究者に十分な研究手段を提供できないというような状況にも至りつつあります。
 今度、東北放射光というのが進むのだそうで、これに対しても協力させてもらいたいというふうには思っておりますが、遠くない時期には、この放射光施設の更新というのは必要になるだろうと思っております。
 それから、これらに加えまして、これは私ども自身というよりは、ほかの機関に対する貢献という格好になりますけれども、大学の研究用加速器施設、これ、実は26か所あります。これと協議会を作りまして、共同調達、人材育成、技術協力等を進めております。これは私どもというよりは、先方に対する貢献というふうな位置付けでいいかなと思います。
 というようなことを物的資源の改善ということで進めてはおりますが、なかなかその老朽化には追いつかないというのが率直なところでございます。
 それから、機関の構成の見直しに関してですが、私どもの機関というのは、先ほど申しましたように、2つだけです。素核研、物構研というように略しております。これらが大学共同利用を実施しております。研究だけではなくて、両研究所における共同利用者のうちの約1,800名は大学院生でございますので、先端性の高い研究施設で世界から集まる研究者との切磋琢磨を通して研究を行うという機会を若手の方々に提供しているということを申し上げておきたいと思います。
 こういったことで私ども進めておりますが、この下に書いてあるのは飽くまで一般論ということになります。もちろん、KEKにも当てはまる一般論ですが、学問というのは当然変化するわけです。それに伴いまして、各研究機関が担うべき役割とか、あるいは存在意義というのは当然変化すると。したがいまして、それぞれの機関がこの変化を適切に主導しているか、これに追随しているかではなくて主導しているかを客観的に検証していくということは大変重要だろうと思っております。
 これは国内の専門家のみに評価を委ねたのではなかなかうまくいかない。客観性の高い国際評価制度というのを是非とも導入していただいて、これに基づいて機関の設置状況を検証するということが是非とも必要であると考えております。研究所を作って研究するというのは、もともと欧米の制度を持ってきたものだと思いますけれども、その研究機関を見直すというところに関しても、欧米にはきちんとした制度がございますが、そこも是非とも学んでいくべきではなかろうかと考えております。
 それから、人材育成機能の強化、特に総研大との関係ですが、先ほど小森先生からもお話がございましたけれども、基盤機関(イコール専攻)における教育・研究というのと、総研大の本部機能への参画というのは、少し分けて考えるべきではなかろうかと。基盤機関における教育・研究に関しましては、連携協力という問題は特に出てまいりませんので、この辺は大丈夫なのではないかなとは思いますが、一方、機構から総研大の本部機能への参画というのは、これはちょっと不十分かなというのを率直に思っております。つまり、本部に協力しつつ総研大を運営していくという、それが不十分だったかなというふうに、私は反省を含めて申し上げようと思います。
 ですが、最近これは改善しておりまして、新しく、去年の4月ですか、長谷川先生が学長になられてから、学長・機構長間、あるいは、担当理事同士、機関の所長間等々、様々な協議の場というのが設けられておりまして、機構の総研大本部機能への関与を促進する仕組みというのができ上がりつつあります。
 ただ、ここでちょっと申し上げたいのは、学長さんによってこの在り方が変わると困るわけですね。きちんとした大きな枠組みというのは必要だろう。というところで、最近、骨太の方針とか、あるいは、中教審の将来構想部会からの書き物が出ておりますが、そこで議論されているような大学等連携推進法人というものを作って、その活用によって総研大本部機能への関与を制度化するということはできるのではないかと考えています。
 KEKにおけます総研大教育を簡単にまとめましたが、これまで240名余りのドクターを輩出しております。特に加速器科学、粒子測定器、放射線科学等、他大学では学ぶ機会の少ない分野で人材育成しているというところが特徴であろうと考えております。同時に連携大学院制度というものを持っておりますが、連携大学院というのは、どちらかというと、他大学でも学ぶ機会のある分野になる傾向がありますので、総研大と連携大学院というのは相補的であるというような運営がなされていると言ってよいのではないかと思います。
 総研大と連携大学院、両方を持っていますと、学生が増えるということで、これは単純に切磋琢磨の機会が増える。こういうことによって、教育の質の向上があるということは大変大きなメリットだろうと思っています。
 それから、もう一つ、私どもにおける総研大教育の特徴ですが、留学生が多いというのは、最近どこの大学もそうだと思うのですが、有職者が多いのです。有職者は約2割です。ということで、途中職を休職して大学に入る、あるいは、特別な許可をもらって大学に来るといったような方がかなりいるということで、ちょっと違った側面での大学院教育というのができているのではなかろうかと思っております。
 それから、他機関との連携・協力、これは非常に多く項目がございまして、今これは適当なものを幾つかピックアップしてお見せしておりますが、多分この3倍ぐらいの数はあります。2倍ぐらいかもしれませんけど、たくさん数がありましてね。こういった様々なところと様々な協力関係をつくらせていただいて、成果を上げていると。このうち、下の2つは、ほかの大学共同利用機関法人さんとのフレームワークでの連携・協力です。連携大学院というのは、このほかに8大学10研究科と結んでおります。
 ということで、この他機関との連携・協力におきましては、このように異なる研究設備や専門性を持つ共・共拠点等のほかの研究機関との連携研究をかなり幅広く行っておりまして、これは研究の多様性を高め、研究能力を最大限発揮するという点におきまして非常に効果的であると思っております。
 これを更に有効に機能させるためには、少し拡大いたしまして、国大法人とか機構法人が連携して、そのもとで研究者がなるべく制約のない状況で連携研究を進められる枠組みというのができないものかなということを希望しておりまして、このためにも、先ほど申しました大学等連携推進法人というのは、1つのソリューションを与えるのではなかろうかと思っております。
 現状でも、小規模ですけれども、4機構で資源を配分するような仕組みというのは持っておりますが、これを更に拡大、実質化の手立てを与えるのではなかろうかと考えております。
 それから、これにちょっと補足させていただきたいのですが、私どもの場合は、連携研究というものにとどまらないような、非常に規模の大きな連携事業といったようなことも様々やっておりますという紹介をちょっとさせていただきたいと思いますが、一番大きいのは、JAEAさんとのJ-PARCなのですが、これは例外といたしまして、例えば、外国の25か国と大きな共同事業として、Belle 2実験をやっているとか、ニュートリノ実験をやっています。これも非常に大きい、お金でいったら38億円ですか、お金で非常に大きいところですね。あるいは、民間企業、アステラス製薬さんがビームラインを作ってもらったとか、あるいは、外国政府もビームラインを持っているとか等々の非常に大きな共同事業というのをやっております。
 一方、こちらに来るだけではなくて、日本の研究者が外へ出ていって研究するというためのプラットフォームというものを用意しておりまして、ヨーロッパにはCERNという大きな研究所がございますが、ここの実験には多くの方が、これはKEKだけではなくて、日本の大学からですけれども、多くの方々が参加しているということを行っております。というふうに、共同研究に加えて、こういった規模の大きな共同事業も幾つも行っていますというのが私どもの特徴だろうと思っております。
 機構法人の枠組みですが、まず現4機構法人体制のメリット・デメリットということですが、メリットはかなり享受させていただいたと思っております。1つは、JAEAと共同でJ-PARCを運営するに当たりまして、いろいろな問題がございます。今でもまだ問題はありますけれども、やはり対等な法人同士として丁寧な議論を重ねましてやってまいったと。これには原子力規制庁というなかなか厳しい役所がございまして、その理解を得るということも、その体制を作るためには大変役に立ったと思っております。
 それから、海外の政府機関、あるいは、財政支援機関と折衝しまして、多くの研究者の参加と多くの出資をしていただいたというところにも、自律して意思決定できる法人になったというメリットを生かさせてもらったと思っております。
 それから、後でまた御説明しなくてはいけないのですけれども、加速器科学の発展を担う上で、単なる大学共同利用にとどまらない、産業利用、国際共同利用、あるいは、加速器の社会・産業への応用というのを展開してまいりましたが、他機関との横並びを求められることなしにやれたというのは、これは実はとてもありがたいことだったと思います。
 というようなメリットを享受させていただいてきたわけですが、もちろん、デメリットもあります。これはこれまでも委員の方から御指摘いただいている点でございますが、小さいからやはりスケールメリットがないのではないかということはあると思いますが、こういったことを考えて、メリット・デメリット、どっちが多かったと言えば、私は、率直に申し上げまして、メリットが多かったかなと思っております。
 先ほど、大学等連携推進法人ということを申し上げましたが、総研大プラス4機構でこういったものを作る場合に、どうなるだろうかというのを少しここで述べさせていただいております。
 この法人の中心的な機能は連携研究の促進になるだろうと思いますが、これは資源配分を伴った連携プラットフォームを設けることによって連携研究を推進すると。ただ、4機構プラス総研大だけではちょっと狭いので、5法人にとどまらない、大学とか共・共拠点等々、幅広い連携研究を支援することが望ましいのですが、これはまだ大分知恵が必要かなと思っております。
 それから、この大学との連携推進法人というは、総研大の大学院教育を強化するというところにも非常に役立つのではないかと思っております。
 それで、これもちょっと御紹介、御説明させていただきたいと思いますが、KEKのミッションは、当然、大学共同利用、学術研究における大学共同利用というのが一番大事なミッションであることは、これは申し上げるまでもないことですが、加速器科学というのはどうしてもこうなると思うのですけど、非常に幅広い、広がっていかなければならないという性質が多分あるのだと思います。1つは、ここから出てまいりますビーム、特にX線、中性子、ミュオン、低速陽電子といったようなビームは、材料開発、創薬等に非常に役立つというところから、プローブを提供してビームを使っていただく、ビームの産業利用というふうに大きく広がっているという1つの方向がございます。
 それから、繰り返しになって恐縮ですが、国際共同利用として、世界中から人に集まってもらって、一緒に研究しましょう。だから、例えば、この分の装置は外国から持ってきてくださいねということをやっているわけです。
 素粒子研究においては、世界の3拠点というのができておりまして、これらが協調、競争によりまして人類の知識に貢献しているということをしております。ちょっと地図が見づらいですけれども、KEKに来ているのは、全部で30か国ぐらいからの研究者が来ております。
 という3つが主なのですけれども、それに加えまして、加速器そのものが実は産業等へ非常に役に立つという事例が多く指摘されておりまして、幾つか例を書いておりますが、核医学検査薬、これはテクネチウム-99というのですかね。骨シンチグラムには必ず必要なものだそうで、これは従来カナダの原子炉で作られる例が多かったらしいのですけれども、それができなくなってきた。では、日本でどうやって供給するのだというのが実は大問題だそうで、これは加速器でできます。
 ということができるようになるかとか、あるいは、アスファルトの長寿命化というのは、これは大変おもしろい話で、話し出すと30分ぐらいかかるのですけれども、加速器をトレーラーに積んで道を走ると、アスファルトが固まっていくと。
 というようなこともあるので、そういったことに役立つような加速器を作りたい。それを産業、あるいは、社会へ応用したい。こういう4つの方向性を持って、これから進めてまいりたいと考えておりまして、そうなりますと、17機関が全て横並びになったようなところで、こういったかなり変わった機関があるというのは、恐らくはやりにくくなるのではないかなという懸念を持ちます。私がそこにいるうちは、何とか絶対これはやるのだとがんばると思うのですけれども、ずっと後輩に至るまで、そこで皆さん同質化が求められる中で、頑張れと言い続けるのは非常にきついかなとは思っております。
 ということで、4機構法人の枠組みに関してですが、一法人に統合するメリットというのは、当然これはあります。スケールメリットというのは当然ありますし、例えば、短期間に大規模な投資が可能になる。つまり、何か建物を建てようとしたら4年間かかっていたのが、1年で建つようになりますよというメリットは確かにあります。
 それから、重複部分というのはやはりあるので、それを整理することによって効率化が可能です。ただし、この場合は、例えば、大学の場合ですと、学部を同じものは一個にしちゃうとかいうこともお考えになっているようではありますが、ここでは機関の重複というのは些少です。したがいまして、役員とか一部の事務職員の人件費が縮小可能であろうということになろうと思います。
 それから、機構長のリーダーシップによりまして、機関や研究内容の見直しが可能。実はこれ、とても重要なことだろうと思うのですが、ただし、これには、一法人にしただけでは絶対だめで、機構長の選考方法などを見直すことが必要です。また、場合によっては、法律で各機関がどう定義されているかというところも見直すことが必要だろうと思います。
 したがいまして、これは、実は統合のメリットではないのではないかなと。もう少し機関や研究内容の見直しが可能になるような制度を作るということがポイントであって、統合では必ずしもないのではないのかなという感じはいたします。
 それから、デメリットは様々ございまして、さっき4機構でやらせていただいたメリットというのは幾つか申し上げましたが、それをひっくり返すと、全部これは機構統合のデメリットになるわけです。これは繰り返しませんけれども、こういったデメリットがありますと。
 このメリットとデメリットを慎重に比較・検討した上で、どういう役割が一番いいのかというのを選ぶということになると思います。まだきょう、私どもとしては、こうしたいという明確なことを申し上げる段階ではありませんが、ほかの機構の方々とも相談しつつ、こういった議論を進めているところでございます。
 ただ、先ほど、繰り返しますが、大学等連携推進法人というのは、メリットを殺さずに連携を強くするという点におきまして、非常に興味深いモデルになっているかなと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。
 時間が押していますが、小杉物質構造研究所長も来られていますので、一言お願いいたしたいと思います。
【高エネルギー加速器研究機構(小杉)】  
大体のことは機構長のお話の中に入っているのですが、実は私、物構研の所長になったのはこの4月からで、3か月しかKEKに属しておりません。その前まではずっと分子研にいて、25年以上いましたけれど、非常に違う2つの機構をまたいでいるので、その辺の感想をちょっと述べさせていただきたいと思います。
 KEKの特徴として、同じキャンパスの中で日頃研究者が顔を合わせるというのは結構重要で、やはりそこが自然発生的に新しい分野を創っていくとかの議論ができるというのは非常に重要だと思っています。それは、自然機構では、分子研と天文台と核融合と、割と近いところの分野がいろいろなことをやろうとしても、場所が違うということで非常に難しい。単に受皿や形を作っても、実際、研究をやるのは研究者ですので、研究者同士が交流を持てるような場を設定しないと、なかなか新しい分野が創れないというような印象を持っているので、KEKの特徴というのは、そのあたりにあるかなと思っています。
 昔、先ほど川合所長も言われていましたけれども、分子研では流動部門というのを作って、外の大学の研究者が2年間、あるいは4年間、研究所の中に来て研究をやるというのは、非常に仕組みとしては良かったのですけど、そういうことをやっていくことが新しい分野を創り出す。昔、コミュニティが各機関を作ってきたという経緯はあるのですけど、機関が主導して国際競争、あるいは国際協調の中で、新しい分野なり新しい学問の方向性を引っ張っていくというのが今の研究機関ですので、そういう意味では、研究者を研究機関の中に取り込んでいくという仕組みを持っているというのが非常に重要だと思います。
 物質構造科学研究所というのは、実はコミュニティが作った機関ではなくて、KEKの判断で、機構化するときに、20年前に作られた研究機関です。そういう意味では、ほかの共同利用機関とは違う形を取っていて、大きなミッションとしては、KEKの加速器技術を使った新しいビーム、いろいろなビームが作れますので、そういうところを物質科学に応用するというミッションとか、幾つかのビームを組み合わせて切り込んでいくという、複数のビームが使えるという環境にあるとか、その辺が研究所のミッションで、それぞれのビームにはそれぞれのコミュニティがあるのですけれど、それだけではなかなか新しい分野というのは切り出せないというところで、物構研が作られたということがありますので、そういう環境の中に研究所があるというのは、かなり一体的な運営ができているKEKにいる存在価値があるかなと思っております。
 あと、やはり研究所ですので、単に加速器が作るビームを使うだけということではなくて、試料作りから、KEKのビームを使うというのもありますし、更に、それと組み合わせる周辺の研究環境をしっかり用意できる、例えば、今まではX線構造解析で放射光だけというのが中心だったのですけど、クライオ電顕なんかを組み合わせるというのは世界の流れなのですけど、それが物構研にもクライオ電顕が入っていて、総合的にサイエンスができるという環境が研究所として作れるとか、いろいろなメリットを今感じているところです。
 以上です。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、質問をどうぞ。
【小林臨時委員】  では、2点に絞ってお尋ねします。
 1点目が、13ページで、教育・研究を含めた連携まではあり得るが、一法人は多少消極的な印象をお話からは受けたのですが、一法人イコール横並びであるとか、一法人イコール同質化ということでは全くないと思うのですが、デメリットでお書きになっているJAEAとの関係とか含めて、具体的にどういう独自性が担保されれば、一法人も可能性があるのか、あり得るのかというのがお尋ねしたい1点です。
 2点目ですが、海外との連携の関係で、具体的には、例えば、CERNに対してこれだけの金額と人を出しているということは積極的にやっていらっしゃると思うのですが、全く変な見方をすると、日本の企業からすれば、KEKにお願いするか、あるいは、CERNにお願いをするかというライバル関係でもあるわけで、日本の税金で敵に塩を送るという側面も、私みたいなひねくれた人間から見ると、うがって見えてしまうのですが、例えば、CERNとの関係は、今後発展をさせていくというような方針なのか、それとも、もう現状維持程度にとどめておくという方針なのか、これが2点目です。
 以上です。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  よろしいですか。
 では、まず2点目からお答えしたいと思うのですが、敵に塩を送るという側面は確かにあることはあるのですが、実は、送った塩と同じぐらいの塩は返していただいておりますので、相互貢献というような仕組みで、そういう理解でやっております。
 それから、第1点目ですが、どういう独自性が担保されれば一法人でもよいかということなのですが、1つ例を挙げますと、先生、今おっしゃいましたJ-PARC、JAEAとの関係において、多少難しいことでございまして、原子力規制庁という役所がございまして、ここの許可を得なければJ-PARCは運転できません。そのときに、KEKとJAEAと2つの機関が一緒に申請するということは、普通はないのです。あり得ないのですね。ところが、一応事情を説明しまして、2つの法人がきちんとタッグを組みまして、対等な立場でしっかりコミットしますよと、両方の長、向こうの理事長さんと私がきちんと一緒にやりますよということを御説明して、何とか今許可をいただいているという状況なのです。
 これが、片方が法人格ではなくて、ある意味ダウングレードしますと、これはどちらかに整理した上でまた持ってきなさいという大変厳しいお話が出ると。ということは、私が単に危惧している以上で恐らく起こると思います。ということが、1つの大きなボトルネックだろうと考えています。
【稲永部会長】  では、瀧澤委員、どうぞ。
【瀧澤臨時委員】  ありがとうございます。
 3点お伺いしたいのですけれども、ビームラインを利用できるということで、産業界からの利用があって、5分の1は産業界から利用があるということなのですけれども。そういった方々というのは、5分の1は博士課程なのですね。博士取得者の5分の1は産業界からというお話だったと思いますが。その博士課程を、企業側としては、博士課程を実地に学びながら取った上で、その後のビームラインの利用者になるという、そういうような理解でよろしいのでしょうか。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  申し訳ございません。ちょっと誤解があろうかと思いますけれども、5分の1と申し上げたのは、大学院で学位を取る人の5分の1が企業からの有職者でありますと。ということは、ビームラインを使ってということとは……。
【瀧澤臨時委員】  ではない。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  違います。
【瀧澤臨時委員】  そうすると、具体的には、どういうあれなのですかね。企業のニーズとして、KEKで博士を取るというニーズは。もう少し詳しく教えていただきたい。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  1つだけ例をお話ししますが、粒子測定器という私どものかなり特殊な技術がございまして、それも1つの専門性として、企業が非常に欲しがっている専門性では実はあります。
【瀧澤臨時委員】  すみません、ちょっと今聞き取りにくかったのですが。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  ごめんなさい。粒子測定器という、1個の粒子が通ったときに、それが通りましたよというのを速く、時間も正確に分かりますよという技術がありまして、これは私どもの研究分野での蓄積があって初めて可能になる非常に高い技術だと思っておりますが、こういったものを学びたい、こういった技術を学びたいという需要は、企業の中には結構あります。ですから、例えば、企業を何年間か休職して、私どもの総研大の大学院に入って、その専門家に付いてそういった技術を学ぶという方はおられます。
【瀧澤臨時委員】  分かりました。ありがとうございます。
 2点目なのですが、11ページのメリット・デメリットのところの上の四角の中の2番目で、海外からの研究者の参加と多額の出資を得ることができるという、ちょっと魅力的な、この多額の出資はどういった経緯というか、もう少し詳しく、どれぐらいというようなこともお伺いできればと思います。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  これ、実は何度も御説明に出てきちゃって、重複していて大変恐縮なのですが、その2ページ前を御覧いただけますでしょうかね。他機関との共同事業という説明がありますが、その右側に、例えば、Belle 2実験というのがありますが、ここには実は32.8億円を持って大学院の方が来ましたよという説明がございますが、こういったことです。外国の人たち、政府機関、ファンディングエージェンシーも含めてお願いしまして、こういったことをしていただいている。こういった優れた研究をやるので来てください、ただ、その場合にはお金を持ってきてくださいねということをやっていますというものです。
【瀧澤臨時委員】  大学院生を受け入れるのと同時に、資金も持ってきてくれということですね。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  はい、そうです。大学院生だけではなくて、もちろん教授も来ますし、そこに当然向こうの大学院生もくっついてきますけれども、それと同時にお金もくださいという。
【瀧澤臨時委員】  そうすると、そういった似たような、Belle 2実験とはまた別のプロジェクトでは、こちらから資金と人材を持ち出すというケースもあるのですか。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  はい、そのとおりです。それが先ほどちょっと御説明しましたけれども、CERNにおける実験に塩を持っていったというのがさっきの例です。
【瀧澤臨時委員】  それで行って帰って、プラスマイナスゼロぐらいな、そういうイメージですか。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  ゼロかどうかは申し上げませんけれども。
【瀧澤臨時委員】  相乗効果は、もちろん、内容の面では大きいと思うのですけれども、資金的にはというイメージで。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  そうです。そのとおりです。
【瀧澤臨時委員】  分かりました。
【稲永部会長】  3点目はよろしいですか。
【瀧澤臨時委員】  すみません、今、ど忘れしましたので、また。
【稲永部会長】  では、また。どうぞ。
【横山臨時委員】  御説明ありがとうございます。
 ドイツとの比較でお伺いしたいのですけれども、例えば、ドイツはマックス・プランクを大きく持って、いろいろな研究所がそこに参画しており、機構を統一する議論はそれを参考にしていると思います。一方でドイツはDESYなど、KEKに相当するような施設はマックス・プランクの傘の下には入っていません。ドイツはDESYをマックス・プランクの元になぜまとめていないのか、どうしてそういう判断で運営されていると御理解されているのか。それと比較したときに、KEKと機構の在り方、一機構にまとめる際にするのかどうかという議論がどういうふうに対比して比較できるのかをお伺いできればと思います。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  それに関しては、正直に申し上げると、よく知らないというのが正しいのですけれども、これも半分想像がありますけど、ビッグサイエンスというのとスモールサイエンスというのを混ぜると、やはりどうしてもビッグサイエンスの方に一般の方の目は行ってしまいますし、そのバランスが適切ではないことになるのではないかという懸念があるからではないでしょうか。
 私もドイツのファンディングエージェンシーの方に本当に聞いたことがあるわけではないのですけれども、ドイツの研究者と話をすると、そういう意見があるようです。
【稲永部会長】  ほかに。どうぞ。
【観山専門委員】  大学との関係を少しお聞きしたいのですけど。7ページにありますけれども、様々な機関と連携・協力されている。これは非常に推奨すべきことだと思うのですけれども、KEKもほかの機関も含めて、大学共同利用機関というのは、全国の大学に開かれている機関なので、もちろん、こういうふうに、例えば、東大と宇宙線研と一緒にやるとか、いいと思うのですが、その成果というのは、やはり全体のコミュニティとか、世界も含めてですけれども、連携していくというスタンスでおやりになっていると思うのですけれども、それはそうですよね。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  はい。それは言うまでもないことで、そのとおりですが、やはり近いということはやりやすいとかいうこともありまして、比較的関東地方の方々が多いということになってはいますが、別にそういうのは特に何か限定しているわけではなくて、もちろんオープンです。全てオープンです。
【観山専門委員】  だから、それをオープンするということが、様々な大学の信頼感を得られるということだと思うのですが。そういう意味で、自然の機構長も言われましたけど、新しい大学等連携推進法人というのは、割とポジティブなイメージを持たれていたのですが。その中で、総研大というのが1つの法人の中に入ってしまうということが、つまり、ほかの大学に関して、ある種の危惧を持たれるような仕組みとして捉えられると、今までのいろいろな資産というか、信頼感を損なう面もあるので、もしもそういうときには十分な配慮がないと、なかなかそこは難しい問題がちょっと残るのかということを、多分、機構長はよくお分かりになっていると思います。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  全くおっしゃるとおりで、今ですら、総研大を、深く関わっているということで、非常に注意深くやらないと、ほかの大学から御批判をいただくというようなケースは間々あります。これが、更に一緒の法人を作るとなりますと、それはよほど注意深くやる必要があると。それは全くおっしゃるとおりだと思います。
【観山専門委員】  もう一ついいですか。割と簡単なことなのですけれども、天文台におりましても、大学との交流ですよね。理論とか、そういう分野は割と大学にもありますので、交流は割と盛んなのですが、例えば、高エネルギーの施設に絡んだ部分というのは、大学でも放射光とかあるところはあれかもしれませんけれども、なかなか交流が難しくなるという状況があることは認識するのですが、それはある意味であんまりいいことではないのですが、特に、CERNとか、日本のそういう技術を持った人たちがアメリカなり世界に出ていくという実績とか交流とかというのはどうなのでしょうかね。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  CERNの例ですと、日本は、企業も含めて、超伝導に非常に良い技術を持っている方が多いのですね。ということで、CERNはそれを非常に当てにしてくれていまして、その日本の技術を持った研究者、技術者と一緒にやりたいという希望はいただいています。
 そういった例というのは、ほかにも幾つもあると思いますので、それは外国に対してもそういうことがあります。Fermilab研究所も、アメリカのシカゴにありますが、ここにも、最近新しい研究を始めるというので、日本の技術が欲しいというので、つい最近、そのために人を採用することも決めたのですが、そういった要求もありまして、なるべく応えていきたいというアクションをとっております。
【観山専門委員】  我々の分野でも、欧米は特に非常に交流が活発で、多分、そちらの話だと、CERNにいた人がFNALに行って所長をやったり、研究者や技術者をやったりすることが非常に頻繁に起こるのだけど、なかなか日本の場合にはそれが少ないので、そういう非常にエキスパートがおられるはずなので、そういう人的交流も、グローバル化という面では非常に重要なポイントではないかと思っております。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  ありがとうございます。そのとおりだと思います。
【稲永部会長】  ほかに御意見、御質問、どうぞ。
【相田専門委員】  大学院との関係のことなのですけれども、きょうの資料にはなかったのですが、手元にある資料の中で、そちらの高エネルギーの機構の方の担当理事の方々の担当の所掌範囲の中に大学院関係が入っていないのです。自然科学の機構の方は、大学院教育が担当という理事の方がいらっしゃるのですけど、こちらの機構は、そういうような担当を置かなくて、どういうふうにして動いているのでしょうか。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  教育担当理事というのがおります。
【相田専門委員】  教育担当理事。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  はい。ちょっと名称が違うかもしれませんけど、教育担当理事というのがおります。
【相田専門委員】  ということは、やはりそれを所掌している理事の方がいらして、その教育担当というのは、総研大だけが担当なのですか。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  いえ、総研大だけではありませんで、いろいろな形で大学院生を受け入れたりしていますので、それらを全て担当しております。そういう理事がおります。
【相田専門委員】  遠くの大学の方ももちろん拒否するものではないという話がありましたけれども、例えば、旅費の援助とか、そういうシステムもあるのですか。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  ございますが、実際、なかなか予算が厳しいということもあって、思うに任せないというのが実情ではありますが、制度としては持っております。
【相田専門委員】  ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかに御質問、御意見よろしいでしょうか。
 それでは、本日は、お忙しい中おいでいただきまして、山内機構長、小杉研究所長、それから、石井事務局長、ありがとうございました。
【高エネルギー加速器研究機構(山内)】  どうもありがとうございました。
【稲永部会長】  本日委員の皆様方からいただいた御意見等につきましては、事務局で取りまとめていただき、次回以降の議論の参考にしたいと思います。
 次回の基盤部会では、人間文化研究機構、情報・システム研究機構、加えて、総合研究大学院からお話を伺いたいと思います。
 それでは、次の議事に移りたいと思います。それでは、骨太の方針、成長戦略及び統合イノベーション戦略等について事務局から説明をお願いします。
【高見沢学術機関課課長補佐】  失礼いたします。資料6をお手元に御用意いただきたいと思います。
 骨太の方針、成長戦略、それから、統合イノベーション戦略の中には、今般、大学関係の記述がたくさんございますけれども、それを抜粋した資料でございます。時間も限られておりますので、かいつまんで説明していきたいと思います。
 まず1ページ、おめくりいただきまして、いわゆる骨太の方針というものですけれども、6月15日に閣議決定されております。冒頭、人づくり革命の実現と拡大という中では、国公私立問わず大学改革を進めるといった記述もございまして、きょうのヒアリングでも出てきましたけれども、右側の方には、大学の連携・統合等ということで、一法人の下で複数の大学を運営できる制度を導入するとか、あるいは、一番下ですが、国公私立の枠を超えた大学の連携を可能とする「大学等連携推進法人」の創設を検討するといった方針が示されております。
 また、2ページ目に移っていただきますと、今度は生産性革命の実現と拡大ということで、その中で、特にマル1番というところですけれども、多様なシーズを創出する改革の推進という中では、大学の経営力を高めるための、大学連携・再編の推進ですとか、あるいは、真ん中あたりになりますけれども、下線の中で3行目のあたりですが、適切かつ実効性のある評価に基づく年俸制の導入の拡大を通じた人材流動性の向上ですとか、若手の活躍機会の創出を図る、それから、政府の競争的研究資金について若手研究者の支援に重点化を図るといったような方針も示されているところでございます。
 また、少しページを飛んでいただきまして、4ページ目ですが、こちらは、未来投資戦略2018というものですけれども、こちらも同日、6月15日に閣議決定されておりますが、この中では、もう1ページおめくりいただきまして、5ページを御覧いただきたいと思いますが、5ページの右側、経済構造革新への基盤づくりということで、マル3番とあるように、研究生産性の向上ということがうたわれております。ここでは、若手研究者を中心に新興・融合領域の開拓、あるいは、挑戦的な研究の強化も含めて、研究生産性の高い事業へのリソースの重点投下・制度改革、あるいは、若手研究者を対象とした研究能力の向上、ネットワークの構築にも資する特別研究員の拡充、それから、併せて、共同利用・共同研究体制の強化等を図るということで、研究力向上加速プランを実施するといった方針も示されておるところでございます。
 6ページ、7ページあたりは字が細かいので省きますけれども、総合イノベーション戦略2018ということで、ただいま申し上げたような大学改革の点、あるいは、研究生産性の向上といったことが、左の下の方にまとめて3点ほど記述されておりまして、骨太の方針と同じ方向性でもって研究生産性を高めていくという方針が示されておるところでございます。
 少しその絵をまとめたものが、8ページにございます。研究力向上加速プランというポンチ絵でございますが、10年後を見据えて、若手研究者を中心としたリソースの重点投下ですとか、新興・融合領域を開拓していく取組の強化ということ等々を目指して、大学改革と連動して、若手研究者の活躍促進・研究環境の整備を進めていくという観点で、様々な関連事業を一体的に進めていくというポンチ絵になってございますけれども、特にこの部会、あるいは、大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点を中心とした体制の強化という点について言いますと、一番下の方、大学改革等を通じた研究環境の強化という中で、若手研究者を下支えする体制として、活躍の促進、あるいは、安定かつ自立した研究環境の整備と、併せて体制の強化を図っていくということで、大学の研究力の向上を進めていくということで施策を講じていく必要があるかなと考えております。
 9ページ、10ページは、この流れを踏まえまして、6月21日に、文部科学省から各大学に、31年度の概算要求の方向性についてということで、一定の考え方をお示ししております。ただいま申し上げましたような観点も含めまして、例えば、9ページの左下ですけれども、大学の教育研究組織の整備に関する重点支援という観点でいきますと、研究所・センター等の既設の組織を見直して、新たな研究体制の構築や研究機能の強化を図るなど、今後の学術研究を先導するような取組といったものに対して一定の重点支援をしていく必要があるのではないかといったような点を支援しております。
 また、10ページになりますが、大学、あるいは共同利用機関の共通政策課題についてという中では、真ん中の3)のところですけれども、国内外の研究組織との連携による、研究環境基盤の構築・強化ということで、特にその下支えをするという観点でいきますと、共同利用・共同研究拠点の認定に伴う経費を、各拠点の分野、規模等を踏まえて確保していくということと、この審議会、科学技術・学術審議会における審議の状況を勘案しながら、これから行います、例えば、中間評価ですとか、そういったものを含めまして支援をしていくといったような方針を示させていただいております。
 また、この後御報告あるかと思いますが、右側の方では、学術研究の大型プロジェクトの推進ということで、例えば、2番目のポツですけれども、既存の施設・設備の活用や事業の効率化・見直しによる経費の節減などを図るとともに、国際協力の推進、産業界との連携など、安定的・継続的なプロジェクトの推進に向けた工夫が行われているかといった点も着目しながら進めていくといったような、本日まさにヒアリングをしていただいたような点も含めて、概算要求の下で検討していくということで考えております。
 説明は以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 それでは、次に、学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会における議論の状況について報告があります。作業部会の主査の小林委員から説明をお願いします。
【小林臨時委員】  時間が限られておりますので、概略だけ御報告いたします。資料7-1と7-2を御用意ください。
 私からは、学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会における「ロードマップ」策定の今後の進め方について、現在の議論の状況を御報告させていただきます。
 本件について、3月以降、本作業部会において議論を行っておりますが、5月25日の本部会で一度議論の状況を報告しておりますが、その後、更に行いました議論について報告いたします。
 また、次の「ロードマップ」策定については、日本学術会議が策定する「マスタープラン」の活用が想定されているところから、お互いの議論の状況を把握するために、学術会議の関係分科会と本作業部会の合同会議を、来たる7月10日、日本学術会議において開催する予定です。
 新たに議論を行った内容については、資料7-1に基づいて説明をしたいと思います。なお、資料に記載していることは、いずれも今後とも引き続き検討することとしていることですので、その点、御留意いただきたいと思います。
 資料7-1の1ページの下から2ページにかけて、3ポツ、策定の時期を御覧ください。2ページの時計文字1において、これまで日本学術会議の「マスタープラン」が3年ごとに「策定」又は「改訂」されるたびに、ロードマップを策定し直してきたところですが、ここでは、次回以降ということですが、ロードマップについて、6年ごとに「策定」、3年目に「改訂」として、策定の時期は、法人マネジメントが適切に行われるよう、中期目標期間の開始前、中期計画へ新規プロジェクトについて掲載可能な時期としてはどうかとしております。
 このことについては、新規計画やロードマップに掲載されることにより、有効期間をこれまでの3年から6年間に延長することで、新規計画へ着手する機会を増やして、ロードマップの実効性を確保することにつながるのではないか。また、3年目の改訂を通じて、策定後の学術動向への対応も図られるのではないかという意見が出てきております。
 このため、2ページの下のゴシック体の丸を御覧いただきたいと思いますが、大規模学術フロンティア促進事業による新規プロジェクトへの予算支援の期間についても、これまで原則10年以内としてきたところを、法人の中期目標期間と整合させて、例えば、6年、あるいは、改訂の3年を合わせて9年、あるいは、6年が2回続いて12年などとしてはどうかということについて議論を行っております。
 4ページを御覧いただきたいと思います。フロンティア事業による支援期間と法人の中期目標期間を整合させることのメリット・デメリットをまとめております。これを踏まえて、新規計画へフロンティア事業による着手の時期が財政事情等の関係から、必ずしも中期目標の改正時期に合わないのではないか。あるいは、着手の時期が中期目標期間の途中となった場合、中期計画への位置付けとの関係性から支障が出るのではないのか。また、中期計画へ位置付けを要件化してしまうと、学術動向への迅速な対応に弊害を来すのではないかという意見も出ておりまして、更に審議を必要としているところであります。
 次に、資料7-2を御覧ください。これまでの議論を踏まえて、ロードマップ策定に係るスケジュールのイメージをしたものですので、後ほど御覧いただければと思います。
 以上のとおり、本件については、今後とも、本作業部会を通じて議論を重ねていく予定ですが、現在の状況について、7月10日、日本学術会議との合同会議に示して、意見を交わしていきたいと思います。本部会委員の皆様からも御意見を伺えれば幸いです。
 簡単ですが、これで報告とさせていただきます。以上です。
【稲永部会長】  これに関して、特段の御意見ございますでしょうか。
 よろしいですか。では、小林委員、大変でしょうが、よろしくお願いいたします。
 次に、大強度陽子加速器施設(J-PARC)の中間評価について、事務局から説明をお願いします。
【大榊科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐】  それでは、科学技術・学術政策局量子研究推進室から、資料8につきまして御説明させていただきます。
 本年6月25日に、J-PARCの中間評価報告書を、大強度陽子加速器施設評価作業部会にて取りまとめをいたしましたので、その御報告をさせていただきます。
 1ページ目を御覧いただければと思います。J-PARCの概要でございますけれども、先ほど山内機構長からも御紹介をいただいてございますが、J-PARCは、高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構とが共同で茨城県東海村に設置した複合研究施設でございます。
 1ページ下の方にございますが、本中間評価の位置付けといたしまして、文部科学省において、研究開発のプログラムは、5年ごとを目安に評価を実施することとされてございまして、J-PARCは前回、平成24年に評価をいたしましたので、今回、概ね5年目ということで、評価をするということになっております。
 J-PARCでございますが、運転開始からおよそ10年が経過してございまして、施設の安定運転の達成を見越した先見的な取組を開始していく時期に来ております。
 2ページ目を御覧いただければと思います。2ページ目、上の方でございますが、この評価に当たりまして、研究計画・評価分科会の量子科学技術委員会、原子力科学技術委員会、本部会の下に合同で設置いたしました「大強度陽子加速器施設評価作業部会」で御審議をいただいたものでございます。本日、御出席の横山委員にも御参画をいただいているところでございます。
 報告の詳細につきましては、時間の関係もございますので、申し訳ありません、割愛させていただきまして、評価のまとめ、22ページを御覧いただければと思います。
 22ページ、7ポツに記載をしてございまして、前回の評価作業部会で指摘された事項、今後の課題につきまして、御審議をいただいたものでございます。前回の中間評価から現在までに、基礎から応用に至る数多くの成果が創出されておりまして、今後とも、学術・産業の幅広い研究分野において数多くの利用と成果の創出が期待されるという御評価をいただいたところでございます。
 一方、J-PARCは、運転開始から約10年が経過してございまして、施設の安定運転の達成を見越して先見的な取組を実施していくべき時期に来ているということでございまして、施設全体を通じた今後の展開ということで、以下、留意点につきましても、簡単に御紹介させていただきます。
 施設の整備・運用につきまして、22ページの下段の方にございますが、世界トップの研究成果を創出し続けていくために、十分なビームタイムを確保する必要があるということ、また、初期目標のビーム強度の早期達成を目指すということが期待されているという御評価をいただいたところでございます。
 また、23ページ、上の方でございますが、施設の運営というところ、J-PARCの運営につきまして、安定運転が今後進むということを考え、経営的視点を取り入れて、経年劣化対策や財源の多様化、こういったものについて経営計画をしっかり策定いたしまして、この施設の経営基盤を強化していくべきであると御講評いただいたところでございます。
 また、中段にございますように、中性子・ミュオン利用について、3つ目の四角にございますけれども、質の高い研究成果を効率的に創出していくために、IRによる研究組織の評価や、中性子施設の特徴を適切に評価できるような指標の検討を行い、課題審査等に活用していくべきである、という評価をいただいたところでございます。
 これに加えまして、J-PARCの運営につきまして、事故等がございましたので、安全文化の醸成、安全管理体制の不断の見直しを継続していくべきということも、併せて御評価をいただいたところでございます。
 今後、向こう5年間、この評価を踏まえて、J-PARCとして研究開発成果の最大化を図るということを目標にしていくという評価をいただいたところでございます。また、今後、5年後を目安に、中間評価を行っていただくということを考えているところでございます。
 簡単でございますが、以上でございます。
【稲永部会長】  ありがとうございます。
 何か御意見ございますか。
 それでは、最後に、今後のスケジュールについて、事務局から説明をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  お手元の資料9を御覧ください。
 次回の研究環境基盤部会第96回は、平成30年8月9日木曜日の15時から17時半に開催をしたいと思います。
 また、第97回につきましては、平成30年8月31日金曜日、15時から17時に文科省内の会議室で開催したいと思います。よろしくお願いいたします。
【稲永部会長】  それでは、本日の議事は終了としたいと思います。
 ほかに、事務局から何かありますでしょうか。
【早田学術機関課課長補佐】  本日の資料につきまして、郵送を希望される方がいらっしゃいましたら、いつものように机上にお残しいただければと思います。
 ありがとうございます。
【稲永部会長】  それでは、皆さん、御協力ありがとうございました。本日の会議は、これで終了とします。

―― 了 ――

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電話番号:03-5253-4111(内線4169)