研究環境基盤部会(第88回) 議事録

1.日時

平成29年5月31日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. 今後の共同利用・共同研究拠点の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

稲永忍部会長、勝悦子委員、小長谷有紀委員、松本紘委員、天羽稔委員、伊藤早苗委員、井本敬二委員、小林良彰委員、瀧澤美奈子委員、永田恭介委員、藤井良一委員、山内正則委員、相田美砂子委員、加藤百合子委員、観山正見委員、森初果委員、龍有二委員

文部科学省

関研究振興局長、板倉大臣官房審議官、寺門学術機関課長、早田学術機関課課長補佐、坂場学術機関課課長補佐、高見沢学術機関課課長補佐、藤川学術機関課連携推進専門官、錦学術機関課専門官、その他関係者

5.議事録

【稲永部会長】  皆さん、おはようございます。ただいまより、科学技術学術審議会学術分科会研究環境基盤部会第88回を開催いたします。
 委員の先生方におかれましては、御多忙の中、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 まずは、事務局に人事異動がありましたので、紹介をお願いいたします。
【早田学術機関課課長補佐】  4月1日付で、佐々木補佐の後任で参りました早田清宏と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 また、もう一名、学術機関課の補佐として、髙見澤補佐が就かれております。
【髙見沢学術機関課課長補佐】  よろしくお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  どうぞよろしくお願いいたします。
【稲永部会長】  御紹介ありがとうございました。
 引き続き、事務局から委員の出欠、配付資料の確認をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  それでは、本日は佐藤委員、橘委員、横山委員、松岡委員、八木委員が御欠席でございます。
 配付資料の確認をさせていただきます。資料は議事次第のとおり資料1から4、及び参考資料1から3を配付しております。もし不足等がございましたら、事務局までお申し付けください。なお、今回から参考資料2につきましては、ファイルに挟みまして机上資料とさせていただいております。
【稲永部会長】  資料、ございますか。
 さて、第8期の研究部会では共同利用・研究体制の中・長期的在り方について意見をまとめました。そこで本日は、第9期になりますが、8期の意見の具体化を進めていきたいと考えています。
 まずは共同利用・研究拠点制度について、第9期から委員を務められている先生方もおられることから、現状の共同利用・共同研究拠点制度について、委員間で共通認識を図ることが大切と思います。そこで、まずは10分程度、事務局より共同利用・共同研究拠点制度について説明をお願いいたします。
【早田学術機関課課長補佐】  それでは、資料1に沿って説明させていただきます。
 まず、1ページ目をごらんください。我が国の共同利用・共同研究体制につきましては、大きく分けて大学共同利用機関法人、また国公私立大学に附置された研究所のうち共同利用・共同研究拠点として認定されたもの、2種類がございます。
 2ページ目をごらんください。共同利用・共同研究拠点制度につきましては、研究者が共同で研究を行う体制の整備を通じて、学術研究の発展に貢献することを目的として、平成20年度からスタートしております。特徴としましては、国公私立大学を対象とした制度であること、また単独の研究所のみならず、複数の研究所がネットワークを組んで一つの拠点となることも可能であることでございます。
 1枚おめくりください。平成29年度の共同利用・共同研究拠点一覧です。現在、国立大学につきましては77、公私立大学につきましては28の拠点がございます。
 1枚おめくりください。共同利用・共同研究拠点数の推移でございます。平成29年度現在は今申し上げたとおりの数字ですが、国立大学につきましては平成22年以降、大体70台で推移してございます。また公私立大学の方につきましては、平成25年度以降、徐々に増えつつあるというところでございます。
 1枚おめくりください。認定・評価のスケジュールでございます。認定は、これは無期限ではございません。国立大学につきましては、中期目標・中期計画期間が認定期間となります。第3期につきましては、平成28年から33年までの6年でございます。3年目に中間評価、6年目に期末評価をします。また、中途で公募し認定するということもしておりまして、平成29年度、30年度において公募をするというところでございます。
 1ページおめくりください。公私立大学につきまして認定期間は6年でございます。こちらは毎年度認定審議を実施しております。例えば平成30年度の認定でございますと、前年度の12月から2月にかけて審議を行います。3年目に中間評価、6年目に期末評価がある点につきましては、国立大学と同様でございます。
 1枚おめくりください。共同利用・共同研究体制の強化・充実としまして、認定された拠点に対しては、運営費交付金を配付しております。大きく2種類ございます。拠点の認定に伴い必要な運営費、人件費を全ての拠点に対して配分しております。それが丸1の拠点活動基盤経費というものでございます。2つ目としては、大学全体の機能強化に資するとともに、我が国の研究モデルとなるような特徴的な取組に対して、重点支援をしております。それが丸2にある共同利用・共同研究拠点の機能強化というところでございます。平成29年度につきましては、この丸1と丸2を合わせて60億というところでございます。
 1枚おめくりください。運営費交付金の予算の推移につきましては、ごらんのような状況となっております。平成23年度以降、徐々に減少傾向というところであり、平成27年度に下げ止まったというところでございます。この限られた予算を今後どのような形で配分をするかというところが、ポイントの一つとなってまいります。
 1枚おめくりください。公私立大学に対しても補助金を措置しております。こちらは、前半の3年間につきましてはスタートアップとして、1拠点あたり4,000万円以内、後半の3年間につきましては機能強化支援として、1拠点当たり3,000万円以内の支援となってございます。
 1ページおめくりください。本日はこの後永田委員より、国際共同利用・共同拠点構想について御発表を頂きます。その中には、国際的な共同利用・共同拠点制度に求められる新たな認定基準についての御発表もございます。その議論をするに当たりまして、まず現状の認定基準、認定の仕方がどのようになっているかというところを皆様に御紹介させていただきたいと思います。
 ちょっと細かい資料となって恐縮でございますが、1ページおめくりください。共同利用・共同研究拠点の新規認定に関する要項がございます。こちらが現在の認定をするに当たっての考え方になります。認定に当たっての観点としては、丸1から丸11までの全部で11項目ございます。項目ごとにそれぞれS・A・B・Cという評価をしており、最終的に認定の決定という形になっております。評価項目について、順に簡単に御紹介させていただきます。
 まず、丸1です。申請施設が、大学の学則その他これに準ずるものに記載されているか。
 丸2としまして、申請施設が研究実績、研究水準、研究環境等に照らし、中核的な研究施設であることが認められるか。
 3つ目としまして、共同利用・共同研究に必要な施設、設備、資料等を備えているか。
 4つ目としまして、こちらは共同利用・共同研究のために、その拠点の中に運営委員会を置く。その運営委員会のメンバーとして、関係者のみならず外部委員の方が半数以上入っているかどうかというところでございます。
 1ページおめくりいただきまして、5番目でございます。5番目については課題を広く全国の研究者から募集し、拠点の中に設けた組織の議を経て採択を行っているかどうか。
 丸6としまして、参加する関連研究者に対して、利用に関する技術的な支援や情報の提供、支援を行うために必要な体制を整備しているかどうか。
 丸7番としまして、全国の関連研究者に対して、情報提供を広くきちんと行っているかどうか。
 1ページおめくりください。8番目としまして、共同利用・共同研究に多数の関連研究者が参加することが見込まれるか。また、その分野の関連研究者から拠点として認定するような要請があるか。
 丸9番としまして、国立大学の機能強化へ貢献するかどうか。
 丸10番としまして、その拠点として中期目標・中期計画期間内における方向性について、どのようになっているか。
 丸11番としては、以上の観点を総合的に考慮して、当該分野において中核的な拠点として認められるか。
 以上の項目について審査をしているところでございます。
 共共拠点制度の概要、予算状況等の基本情報につきましては、以上となります。
 続きまして、資料2をごらんください。こちらは前回の研究環境基盤部会におきまして、委員の皆様からあった発言内容をまとめております。これは、第8期の意見のまとめの時に、4つの視点に整理されております。その4つの視点に沿って、皆様の御発言をこのような形でまとめさせていただいております。後ほどお目通しいただき、もし修正点や追加、削除の点等がございましたら、事務局まで御連絡ください。
 以上で、説明を終わります。
【稲永部会長】  ありがとうございました。
 これから共同利用・共同研究拠点の進むべき方向について議論をするわけですが、前回の会議において、永田委員より、国際共同利用・共同研究拠点という、共同利用・共同研究拠点を高度化する枠組みを考えるべきではないかという御発言がありました。また、先ほど御紹介がありました現在の評価基準の中にも、国際化ということが丸9のところで、各国立大学の特色・強みとしての国立大学の機能強化への貢献に関して、国際化へどう貢献していくかということが入っていますので、それを深める必要があります。そこで、本日は永田委員より、具体的なお考え・御提案を伺いたいと思います。約30分程度御説明いただいた後、先ほどの事務局より資料の紹介がありましたが、それなども含めて意見交換を行いたいと思います。
 それでは、永田委員、説明をお願いいたします。
【永田臨時委員】  お時間ありがとうございます。
 今、ちょうど御紹介がありました資料2の中で、国際共同利用・国際共同研究拠点にシフトアップして、高いレベルのインセンティブを付与しつつ厳しい評価でやっていったらどうかということを前回この会議で申し上げました。
 実際にはそのアイデア自身は、例えば日々大学で研究評価について考えている中で、自然の道筋として我々の大学の中では出てきている内容でもあったわけであります。実際、今年に入って1月、4月に学内向けに所信を述べましたが、その中でこの国際共同利用・国際共同研究拠点化について国の施策とは別に、大学でやろうということを既に述べているわけです。
 どうしてかというと、研究所や研究センターはそれぞれの生い立ちがあって、ある部局、あるいは分野に特化してそこを強めようというのもあるし、学内で共通に利用しながら、学内の研究強化に資するというのもあります。当然ながら、共共拠点のように我が国の中のその分野の中心として引っ張るものもある。
 その大学の中のセンターはたくさんあるわけですけれども、それらを見ていくと、それを超えている枠組みのものがやはりだんだん出てくることになります。そうすると、それを大学として支援する際に、当然ながらほかの枠組みとは変えて支援しない限り、著しい強化は図れないということに気づくわけであり、大学の中で自立的にそれを考えなければいけないということに、我々の大学ではなっていたわけであります。
 1つだけ例を申しますと、ちょうど今日、参考資料3というのがあって、その60ページのところを見ていただきたいのです。これは基礎科学力の強化に向けての議論で、基礎科学力の強化に関するタスクフォースから出ているものの参考資料の60ページ。ここの日本の大学の質・量の構造というスライド2枚のうちの上を見ていただくと、その下にマトリックスがありますけれども、これは縦軸が質です。横が量なのですが、左上の角っこに質も量もいい大学、それから質はいいけれども量がまだもう少し頑張ってほしい、量は結構多いのだけれどももう少し質を頑張ってほしい、こう読めるわけであります。
 そうして見てみると、この表は物理分野中心大学群についてのものなのですけれども、このカテゴリーというのはMIT、ハーバード、オックスフォードなどの多くの大学がこの物理分野型のマトリックスに入ってくる大学になります。我々の大学もそこにあるわけですね。質はいいけれども、量がまだ足らないとなるわけであります。
 実際にそうすると、量・質というこういう問題を研究の中身でやっていこうとすると、例えばほかの大学の似たような機能を持った研究センターとの共同ということは当然考えられるわけであります。実際に昨年12月に、東京大学の情報基盤センターと我々の計算科学研究センターの共同で、RIKENの「京」の2.2倍速のスーパーコンピューターをラウンチできました。そうなると、この研究センターをそういうレベルのものに持っていった時に、では、どうやってもう一段上げていくかと考えざるを得なくなってきたわけであります。そこで、大学の中で考えていた内容を、今日、若干御紹介をしたいということです。
 1ページ見ていただきますと、今日の話の内容の目次になっておりまして、最初に法令とか、それから歴史を若干振り返ってみたいと思います。なぜかというと、当初は実は全部組織に根差した体系になっています。途中から、よく見てみると機能に着目して強化をしようという方向に若干変わりつつある。この機能を強化しようというものを更に強化しようとするとどうなるかということで、述べさせていただきたいと思います。 そこで次のページですが、現在の共同利用・共同研究体制の概要ということで、そこにどういったものがその体制に含まれているかということで、大学共同利用機関法人、それから共同利用・共同研究拠点と書いてあります。総じて上の赤字で書いてあるところは、それぞれのスライドのまとめになっているわけですけれども、我が国の学術研究の中核システムとして、我が国の学術研究の基盤強化や新たな学術研究の展開に貢献するという名目でできているわけであります。
 ご存じのとおり、大学共同利用機関というのはそこにあるようなものでありまして、現在、平成29年度で4機構、17大学共同利用機関があります。それから、共共拠点と呼ばれているものは先ほど御紹介があったとおり、国立大学で77拠点、公私立大学で28拠点あるというのが現状であります。
 そこに経緯・取組としては、我が国全体の学術研究の発展の観点から、国として重点的に整備するということ。それからもう一つ大切なのは、その分野の研究者コミュニティからの要望が高いということ。それから、いろいろな研究機関から参画が可能であるといったことがそこにあって、様々な研究分野において大型プロジェクトをはじめとする、国際的に通じる先端的な研究を実施するということ。
 ここが「通じる」ではいけないわけでありまして、国際的にその分野を「牽引する」となっていなければいけないのですが、「通じる」というまだ引き気味の言葉になっています。これは大学の国際強化のところでも必ず出てくるのは国際通用性ということですけれども、我々が作ったものを国際的に通用させるという何となく下から上を見ている感じなので、国際互換性というのが正しいのではないかと思いますが、対等の立場でお互いに供与できるという意味合いでは、国際的に通じるという文言が出てくるところがちょっと情けないわけであります。
 次のページを見ていただきますと、これは先ほど資料1でもう出ていたかと思います。そういう資料が用意されるかどうか分からなかったので、一応その国立大学77拠点、公私立大学28拠点というものをマップの上に置いております。先ほど御説明のあった図であるので、これは省略をさせていただきます。
 次のページに歴史を年表にいたしました。これは共共拠点及び大学共同利用機関の位置付けの変遷というものを、縦になっていますが、昭和28年から平成22年まで縦で見ていただいて、左側が共共拠点で右側が大学共同利用機関ということになっております。
 附置研究所の全国共同利用化というのは、昭和28年(1953年)に既にそこに施行されている国立学校設置法の法令によって新たに規定されて、そういう機能を発揮しなさいということになっています。
 その後、昭和46年になって、研究施設の全国共同利用化ということで、当初は学内措置で設置されていた研究施設が、その後、その設置が国立学校設置法の法令で規定され、さらに全国共同利用化について規定されたというふうに変わっていくわけであります。
 平成16年にまた大きな変化がありますが、その平成16年の大きな変化の直前、平成15年には附置研究所のうち、全国共同利用附置研究所というのが19あって、研究施設の方はそのうち全国共同利用研究施設というのが25あったということです。
 そこで、平成16年になりますと、附置研究所は国立大学法人化に伴い、ここが重要なのですが、国立大学設置法が廃止され、法令上もう特段の規定がないということになっております。つまり、法令上はどうってことはないというふうにここで変わっているのですが、中期目標上は配慮されておりまして、中期目標の別表に位置付けられることとなり、さらにそのうち全国共同利用の機能を有する附置研究所には「米印が付く」となっています。
 これは大学で6年ごとの中期目標期間に携わっていると、今から10年ぐらい前に携わった時には「何だ?この米印」と思っていましたが、よくよく勉強してみると、ここにあるように文部科学大臣が定める中期目標の別表、学部、研究科等とともに、教育研究上の基本組織において位置付け、全国共同利用機能を有する附置研究所は米印を付して表すというふうになってきているわけであります。「附置研究所」と言っていますけれども、法令上、どうでしょう、それまでのイメージの附置研究所はもうこの時点でなくなっている。つまり一般の任意に作った研究センターみたいなものだということに、法令上なっているのです。
 研究施設についても同様なのですが、これは法令上特段の規定なしということで、法人化後は各大学の判断で設置改廃が可能になっています。全国共同利用機能を有する研究施設については、中期計画中に共同利用を目的としていることが明確になるように書いておきなさい、計画を立てておけということになります。
 そして、平成20年に共共拠点は省令に基づいて、文部科学大臣により認定するという、先ほどの認定のプロセスになったということであります。
 そして平成22年、中期目標の別表において共共拠点を位置付けるようになっている。
 一方右側の青字の方は、これが大学共同利用機関であります。昭和46年、名前が体を表すとおり、国立大学共同利用機関という名前になっておりまして、国立学校設置法に基づいて規定されている。特定大学に附置しない大学の共同利用の機関として最初にできたのは、山内先生がいらっしゃるKEK(高エネ研)であるということでございます。
 それから、平成元年になりますと、大学共同利用機関ということになります。これはそこを読めば分かるとおり、国立大学設置法を改正し、公私立大学の研究者の一層の利用を促進するということで、ここでようやく従前の国立大学中心から公私立の研究者もより一層明確に利用ができるという体制に変わっております。
 平成16年、左側で附置研究所・研究施設が法令上どういう位置になったか御説明した時に、大学共同利用機関は国立学校設置法が廃止されたのとともに、同時に今度は国立大学法人法の法令で規定をするということになっていて、つまり、これはもう国立大学法人法の下ということでございます。
 これを見てみると、現在いろいろな大学が元附置研究所と言っているもの、それから研究施設と呼んでいるものは、それぞれこういう位置付けに変わっているということでございます。ですから、財政的な支援に関してもそれに準じて行われるわけだというふうになります。
 そこで、次のページをごらんください。その内容をもう少し説明をさせていただきます。それで、最初にできた時の国立学校設置法制定以前の体制というのはどうだったかというと、要約すれば、国の目的のための組織としての位置付けが非常に強かったと私は解釈をしています。附置研究所というのは、戦前に設置された研究所は当時の国の目的遂行のために役立つ研究を直接の目的として、設立される傾向が強かった。研究施設と呼ばれているものの大半は農場・演習林、病院、こういったものが施設なのだということになっていたわけであります。
 やがて先ほど御説明した大改革ですけれども、国立学校設置法設定から、その後のまた大きな改革である国立大学法人化までの間というのを見てみると、そこに書いてあるように附置研究所、それから研究施設というのは、それぞれ組織に着目した支援の充実強化を財政的にも図られてきたと考えています。
 附置研究所はそこにあるとおりでございます。「特定の研究領域に特化して」から始まって、最後のところで「更に全国共同利用の附置研究所は、当該分野の研究者コミュニティのための中核的研究拠点としても位置付けられていた」。既にもうこの時点でこういう位置付けになっていたというわけであります。研究施設についてはそこにあるとおりで、こっちは省略させていただきます。
 次のページなのですが、国立大学法人化後の体制で、まずは第1期中期目標期間です。中期目標期間というのは6年ずつで、今第3期に入った2年目ですけれども、この中でどのように位置付けられていくかということです。サマリー(要約)は、附置研究所を教育研究上の基本組織とした。それから、全国共同利用機能に着目をした支援が始まったということになります。
 法人化後の国立大学の教育研究組織については、各大学の自主的な判断で柔軟かつ機動的に編制することにより、学術研究の動向や社会の要請等に適切に対応し、大学の個性化を図るため、各大学の予算の範囲内で随時設置改廃を行うとされた。これらを踏まえ、科学技術・学術審議会学術分科会国立大学附置研究所等特別委員会において、法人化後の附置研究所や研究施設に求められる役割や機能については、まとめると以下のようになっており、附置研究所は継続的かつ安定的に研究活動を展開し、我が国の学術研究を推進する役割が極めて重要であり、我が国の学術研究の中核的研究拠点であると位置付けられています。研究施設についてはそこに書いてあるとおりであります。
 そこで、右下のところに別表が出てくるわけですが、先ほど申し上げた別表でありまして、中期目標の中では当然ながら最初に概要があって、最後の方にはこういう研究教育をつかさどる組織が並んだ一覧表が出るわけですが、その中に「別表(学部、研究科等)」となっておりまして、例えば学部で法学部、医学部、研究科で云々とあったところで、附置研究所というのがそこにあって、注記にあるとおり、全国共同利用の機能を有する附置研究所は米印が付されているというふうになっております。これらは研究所も大学の別動隊ではなくて、学部・研究科と同じような教育研究上の組織の一つであるという位置付けであります。当時、平成21年度末の全国共同利用の附置研究所・研究施設は49であったということでございます。
 次のページにいっていただきますと、第2期中期目標期間、そこで初めて共同利用・共同研究拠点制度というものが創設をされてきます。このスライド全体をまとめると、1行で言えば、今度は共共拠点の機能に着目して、支援の充実や機能強化を図っていくということです。先ほどは組織をどのように位置付け、どうやって組織を支援するかでありましたが、今度はその組織が果たす役割、その機能をどうやって支援していくかという考え方に、このあたりから変わってきたと見てよいのではないかと考えています。
 共共拠点についてはそこにあるとおりですが、一応少し共通理解のために一部読ませていただくと、共共システムは、大学共同利用機関のほか、国立大学の全国共同利用型の附置研究所等に限られていたけれども、公私立大学にも人文学・社会科学分野を中心にすぐれた研究実績を有する大学が決して少なくないことから、平成20年7月に新たに国公私立を通じたシステムとして、文部科学大臣が大学の附置研究所等を共同利用・共同研究拠点として認定する制度、それが先ほど申し上げた制度ということで、ここにあるとおり、学校教育法施行規則を改正して出来上がっているということです。これまでの原則であった1分野につき1拠点の設置を、分野の特性に応じて複数設置することや、複数の研究所等から設置されるネットワーク型の拠点形成も可能になりました。
 また、平成28年度からは、ネットワーク型拠点の形成をより促進するために、従前認定の対象外であった大学共同利用機関法人、独立行政法人等が設置する研究機関を拠点の連携施設として制度上位置付け、連携ネットワーク型拠点として拠点活動の活性化等を図っている。これで文言を拾ってくると、オールジャパンの体制ができたと書いてあるのですが、本当にそうなっているといいなと思います。現在の共共拠点数がそこに書いてあります。
 最後――ここからが重要なのですが――というところで、全体の歴史を簡単に見ましたが、共共拠点制度の創設により、私のサマリーとしては、組織から機能に着目した支援を行うことが明確になり、より大学の枠を越えた組織的連携による、ここは文科省から文言を借りまして、オールジャパンの学術研究体制及び連携ネットワーク型拠点による大学以外も含めたオールジャパンの学術研究ネットワークの構築が可能になってきましたが、更なる機能強化には一体どうしたらいいか。これは世界水準の学術研究体制をどのように構築していくかということが、課題の一つであろうと考えているわけです。
 そこで、次のページは目次ですが、今度は少し何枚かのスライドを使って、共共拠点制度が果たした役割を私の方で勝手にサマリーをさせていただきました。結論は大変結構な成果を上げていらっしゃると、外形的にはそのように見ています。
 次のページに我が国の研究力の状況、これはもう先生方ご存じのとおりですが、文章にするとこんな感じになっておりまして、「学術研究・基礎研究の成果を示す指標の一つである論文指標が他国は拡大している中、我が国は横ばい傾向であり、相対的に低下傾向である」。Top10%論文の場合は、この過去10年間で4位から一気に10位に下がっているということであります。
 それは10ページの下のところに実際のデータが書いてございますけれども、その上の方は論文数の変化を書いておりまして、日本はライトブルーで示されています。それから、上段の右側には主要国のTop10%補正論文数の変化を示していて、もう耳にタコというか目にタコのグラフだと思いますが、こういう具合に明らかに伸び率が下がっていて、下を見るとパーセンテージで、つまりシェア率で考えてみると非常に悪いことになっております。2002年から2004年の平均を見ると日本は7.2%で第4位であったものが、2012年から2014年、10年たちますと、そこにありますようについにスペインにも抜かれてしまいまして、世界ランク10位という状況になっています。
 9ページの文章のその続きですけれども、「特にその構造を分野ごとに大学別で見ると、日本の研究活動を牽引している大学群よりも」、これももうご存じでしょうけれども、「その層の厚みを増加させる潜在力を持つ大学群が著しく弱体化している」。トップは何とか頑張っているけれども、その次の支えなければいけないところの弱体化が激しい。世界で国際共著論文数の増加など、研究活動の国際化が進む中で、日本の存在感は明らかに後退をしているであろうということでございます。研究力強化に向けた研究拠点のあり方に関する懇談会でも、同様なことが指摘されているということです。
 次に、我が国の学術研究における研究力強化の検討状況ですが、いろいろな検討について見てみると、そこにあるように、そこら中に比較的「世界トップレベルの」とか、「世界に伍する」、「国内外から第一線の」、「国際共同研究の促進や」、「世界に通用する」という、こういう文言が相当散りばめられたいろいろな報告、提言等がなされているということでございます。
 それで、先ほどの世界の各国と我が国の論文数の変遷の次のページに移っていただきますと、ここから共共拠点、大学共同利用機関のことを数字的な意味でのサマリーをしようとしているわけであります。
 最初に11ページには、国公私立大学等の機関区分ごとの論文数の変遷というのを示しております。上段の左には全分野の論文数を今の形で分けたものでありまして、国立大学がそこの50%ぐらいのところを推移していて、それから特殊法人・独立行政法人が25%ぐらいを推移しています。右側のTop10%の方を見ていただくとほぼ横ばいの感じになっていて、若干ライトブルーの特殊法人・独立行政法人がやや上がってはおりますが、例えば企業なんかも著しく減少をしているということが見て取れると思います。
 その下に具体的な数字を振っておりまして、各セクター別の国公私立大学、特殊法人・独立行政法人、企業、日本全体ということで、それぞれの論文のシェア、伸び率等をまとめているところであります。いずれにしても、どのセクターを見ても危惧をせざるを得ない状況にあるなということが分かると思います。
 そこで、大学共同利用機関の論文数について、12ページにまとめております。これは、そこにありますように長期間にわたっておりませんが、23年から26年の間にどのぐらい頑張ったかということなのですが、外形的に言えば平成23年に3,898という値が、平成26で4,521になっているということで、ここは右肩上がりにかろうじてなっていて、ほかのセクターに比べれば、ここだけまとめてみると頑張っているということが見て取れるというわけです。あと、法人別に調べたのが下でございまして、高エネ研、自然科学研究機構、人間文化研究機構、情報・システム研究機構、それぞれにこういった数字を今示しているということです。これはいい悪いという問題ではなくて、こういう事実があるということです。
 更にもう一枚めくっていただきますと、そのほかの観点から見たところの共共拠点の研究力の状況ということで、拠点数は上段の左側に先ほども既にお示しをしましたが、平成22年から26年にかけて70拠点が77拠点に増えていると。
 それから、関わる研究者数を見てみますと、そこにありますように、これも当然ながら拠点が増えているわけでありますから、若干増えているのだということが見て取れるかと思います。
 次に、研究成果論文数の観点から見た時に、もう一度詳しく見てみると、そこにありますように研究成果論文数が3,000本増えていて、国際学術誌掲載論文数というところもそこにあるように伸びているということです。
 それから、その下段の右側は、大学院生がこういう研究機関を通じて、研究を通じて育成されていくわけでありますが、若干伸び率が低いかもしれませんが、右肩上がりになっているということでありまして、共共拠点制度の創設によって、共共研究者数、論文数、国際学術雑誌に掲載された論文数等は、拠点数の増加を考慮したとしても、平成22年に比べて増加をしているという判定で、制度の創設による一定の成果はあるであろうと考えられます。
 そこで、「しかしながら……」と振って14ページになっているわけでありますけれども、では、国際的にもう一度比較をしてみようと。国際的に論文の質及び生産性について、比べるところがなかなかないのですが、ある意味で人文社会系も含んでいるという意味で、しかも規模もある意味でサイズが似ているというところで、ドイツのマックスプランク学術振興協会と比較をしてみようということでございます。その2つ、共共拠点とマックスプランク学術振興協会、比べるのが本当にいいかどうか別として、見てみるのは悪くはないと考えました。
 拠点数として、あるいは研究所の数として、そこにお示ししたように我が国77拠点、それからマックスプランクが83研究所。分野はそこにあるように、我が国は理工系38、医学・生物29、人文・社会科学系10。マックスプランクは化学・物理・工学32、バイオ・ライフサイセンス29、人文・社会科学22。若干人社が多いかなという気がしますが、バランスとしては実は非常に似た全体の組織体になっているわけであります。
 研究者数というのは、これは若干負けておりまして、所属研究者数を見ると、我が国では5,000という値なのですが、ここは共共拠点で一緒に共同利用・共同研究をやっている方々も全部含めてみれば3万いるのだというちょっと強がりな数字も出せないことはないということです。一方、マックスプランクの方は同じようなカテゴリーで、これは博士課程や若干ゲストも含んでおりますけれども、8,000という値が出ております。
 その下に、国際学術誌掲載論文数ということで、我が国の方は平成26年の数字ですが6,577。それから、マックスプランクが1万2,241。研究者の数が違いますけれども、研究所あるいは分野を考えた時には、似たような規模でこういう数字の差。これを研究者数で割ると、マックスプランクは1.5でございます。我が国の方は、先ほど言ったように共共拠点の共同利用・共同研究者も入れてしまうと0.2、こういうものを入れないと1.3という状況にあるということで、これを見てどのようにお感じになるかということでございます。
 これ自身、率直なところ自分でこれを見てみて、健闘はしているなというのが実はファーストインプレッションでありますけれども、卓越はしていないなというのももう一つの感想であります。
 そのためにはどうしたらよいのか。そこの下にありますが、国際ステージでの共同利用・共同研究を推進し、国際共著論文の増加をはじめ、より高いレベルの研究を実施し、もって我が国の研究力を強化し、プレゼンスの一段の向上のためには、国内外に「見える化」を図るとともに、現行の共共拠点の国際ステージの研究力をさらに上げる必要があるのではないだろうかと。
 仮に先ほどのデータがそこそこ頑張っていることも示しているのだとすれば、もっと頑張っていただければ、マックスプランクを突き抜けた良い研究総体になるであろうし、余り頑張っていないのであれば、それこそ追い付け、追い越せではありませんけれども、そういう集中的な投資ということの在り方を考えてもいいかもしれないという中で、その集中的な投資の一例として、私自身が提案を申し上げたいのは、共共拠点にそれぞれ「国際」が付いておりまして、国際共同利用・共同研究拠点制度の創設を考えてみてはどうでしょうかということです。一応英語名も私は考えていて、ICOEとなるわけですが、International Center of Excellenceとなるわけで、自分たちが世界の中心になるのだというつもりで考えてみませんか。
 次のページ見ていただきますと、これは第87回の本部会で配られた資料の中からコピー・アンド・ペーストをしておりますけれども、研究の国際化の推進については既に第8期でここにあるようなことが語られていて、当該分野における我が国のCOEたる大学共同利用機関及び共共拠点が、更なる研究力の強化に向け、国際的な研究環境を整備するための取組に重点的に支援してはどうか。大学共同利用機関の活動に関する国際的な観点からの評価体制も構築したらどうかということで、こういう意見の整理の中に、御紹介する意見が出てくるということでございます。
 そこで16ページ、ここからは勝手に共共拠点の新規認定に関する要項を赤字で書き換えておりますが、国際共同利用・共同研究拠点(ICOE)に求められる基準を考えてみました。考えてみたので、こうしてくれと言っているわけではありませんけれども、このあたりが変わるのかなということで、次のページを開いて見ていただきます。
 そうすると、左側が現状で、これは結論としては、まず学内において一定のというか、高いレベルの独立性を付与すべきであろうと。そこに学則に準ずるものに書いてあるか、明確に位置付けられているかと書いてあるわけですけれども、新たな観点として、大学の学則に国際共同利用・共同研究ということで、学内において一定の独立性を保っているか。それから、明確に位置付けられているか。学内において一定の独立性というのは、当該拠点の人事権やガバナンス体制というものが国際的にも通用する形になっているかということが要件になるかなと考えています。
 それから、違う項目で考えると、次の18ページですが、意思決定機関において国際的な研究者コミュニティの意向を反映する形にしていくのがよろしいのではないかということで、左が現状ですけれども、右側、もしこの共共拠点のこのルールを考えるとすると、例えば関連研究者のところに、海外の研究機関に所属する外国籍の関連研究者を含むべきではないか。マネジメントにおいてですけれども、例えばです。
 次のページをごらんください。その次に、共共研究課題を国際的に公募し、国際的な研究者コミュニティの意向を踏まえて採択をしていくと。これも今国内でやっていることを、自分たちがICOEになるからにはこういう立場が必要ではないかというわけで、そこに書いたような「全国の」ではなくて、「世界の」関連研究者からというようなことになるであろうと考えています。
 それから、次の20ページを見ていただくと、現状で左側にあるような観点が示されているわけですけれども、新たな観点ではそこにあるようなことになるだろうということです。
 最後に21ページになりますけれども、ここでサマリー、ルールの方は国際的な研究コミュニティからの要望を踏まえた拠点になることをということで、今の現在の国内の共共拠点から、国際的な共共拠点に世界の研究者が必ず参加することが必要であるというようなことです。
 そのためには、その下にあるように共共拠点に求められる基準が必要であろうということで、例えばKPIをどう設定するかというのは、これは議論が必要かもしれませんけれども、明確なものが国際標準として必要だろうと思います。
 それから人事制度においても、国際共同研究をやるのはもちろん、国際的な研究機関の間でやるのも当然だとしても、当然ながら研究者が積極的に、特に著名な研究者がその拠点の中に入ってきて研究をすること自体が刺激とともに研究力の向上につながるということで、そうなると、そこにあるようにクロス・アポイントメントの拡充とか、外国人の生活環境の整備なども含めて、我々としては考えていかなければいけないのではないかなということになります。
 以上、私的なアイデアですので、決してこのとおりになるとは思わないし、もっともっと良いアイデアが生まれることを希望しております。一方で我が国にとってはこういう高度化されたものができてくるのは大変結構だと思いますが、こういうことの中で、イントロで若干述べさせていただいたところにもう一度留意をしていただきたいのは、それを支える次の層の大学が弱くなっていますという部分です。それは忘れてはならなくて、同等に大学であれ研究所であれ、仮にICOEではなくても、いかにしたらその中から更に引き上げていくものができるかということを十分留意しないといけないだろうと思い、これは今日の提言とは別で全体像を見た中で考えなければいけないことであって、私は、それは大変重要な観点であろうと考えています。
 よく繰り返し申し上げる有名なグラフは、横軸に研究者数、縦軸に論文数を取ると、それはリニア(直線)な関係にあります。更に、横軸に論文数、縦軸にすぐれた論文数を取ると、これまたリニアになります。だから研究者が増えない限り、どんなに個々の研究者が頑張っても研究者が増えない限り論文数は増えません。論文数が増えないと、すぐれた論文は増えません。その関係は世界中崩せない絶対の経験則になっているのです。ただし、これを変えるというのは大変難しいと思います。
 人間、あるいは社会工学的に考えても、優秀な人を集めても、それまた違う観点で次の何年かたつと正規分布するという心理学があります。必ず優秀な者は優秀なまま保たれる法則はない。必ず再分布されていく。それを考えると、やはり全体の層を上げないと、全体を上げないと、正規分布の優秀だという研究所あるいは研究者の層は増えない。ここに是非とも根本的な留意をした上で、こういう高いレベルのインセンティブを持った者が戦う環境を整えるのがいいのではないか。
 今日、私もお示ししようと思っていたらデータも資料の中にあったので、後でごらんいただければいいのですが、WPIについていろいろな御批判や賛成もあるでしょう。しかし、すぐれているのはその研究成果でありまして、WPIだけの論文、その中の数と、それから質を並べると、世界の大きな研究所や大学の平均値をもう本当に凌駕する、ベスト10に入るような状況になっている。これはそういう選択と集中を行った結果だと。
 そうすると、既存の大学や我が国の中にある独立行政法人も含めて、研究力強化の中で、我々はもう一段上の水準を目指した支援というのが今ほど万遍なくはできないでしょうけれども、努力をすべきであろうということで、一応発表を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
【稲永部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明と、先ほど事務局から紹介がありました現行の共同利用・共同研究体制等を踏まえて、これから意見交換をしたいと思います。どうぞ御自由に御発言願います。
 はい、どうぞ。
【小林臨時委員】  永田先生、大変ありがとうございます。私も非常に先生のお考えに賛成で、この薄い方のファイルございますけれども、エビデンスデータがありますけれども、私は人文社会のことしか分かりませんが、43ページに人文学・社会科学系のいろいろな数字が出ています。研究者コミュニティから見ると、特にこれは国際共同研究件数というのと、研究者コミュニティの評価はかなりリニアだろうと思います。やはり京大の東南アジア研は強いし、東外大のAA研は強いし、北大のスラ研は強いし、でもちょっとそれが遅れているところは、正直言って研究所コミュニティの間でも、何であそこは共同拠点なのっていう意見もあると思います。
 永田先生のお考えはもっと多くの方が共有して、多くの方が危機感を持つべきだろうと思います。例えば、先生のお話の中の何ページでしたでしょうか、順位の話が出てきましたが、10ページですが、日本が何でスペインに負けたのかというのが、それはスペインに失礼かもしれませんが、多分多くの方が疑問に思うかもしれません。アメリカやイギリスやドイツやフランスが上に行くのは分かるけれども、何でスペイン。
 これはスペインのポンペウファブラ大がEUの社会調査センターを誘致して、そこを起爆に国際共同拠点化したのです。やはりそれぞれ何か理由があってやっているわけです。
 ですから、先生のお考えをもし実現するならば、先生のお考えどおりICOE、国際共同利用・国際共同拠点制度というのが新たにできて、財務当局がそこに理解を示していただければ非常にありがたいと思いますが、もしその厳しい財政状況の中でそれが難しければ、それを狙いながらも現実的な次善の策としては、共同利用・共同拠点の評価について、私はもう少しめり張りを付けて、事実上共共拠点の中に、制度ができたらICOEに採択されてもいいようなところと、とてもそうではないところとあるのです。でも、評価的には比較的横並びになっています。せいぜい1段階ぐらいしか違わない。これを私はやはりきちんとめり張りを付けてやるべきではないのかなと。
 この制度ができるまでは、例えばめり張りを付けて、これに近いところにはより多くの特別加算をして、いやそうでもないところは、正直に言って、運営費交付金の1%カット分の補填をしているようなところも正直言ってあります。あるいはデータを公開するといっても、自分のところでやった調査データしか公開しない。ほとんどそのお金が調査経費に使われていると。それは本来のミッションと違うところがあると思って、そういうところをもっとはっきりと分けていかなければいけないと思います。
 あるいは先生のお話の14ページのところで、論文は意外に頑張っているということなのですが、私はもう少し厳しい見方をしていて、インパクトファクター(文献引用影響率)で言うと、かなりマックスプランクの学術振興協会と違います。これ、国際学術誌の定義が曖昧で、共共拠点である自分の研究所で国際学術誌を3つも4つも発行して、そこにどんどん載せて、やはりもう数字を出すことが自己目的化してしまって、それが、数はあるのだけれども、実はインパクトファクターを調べてみたらほとんど0にちかいというようなものが結構出ているのです。
 私は本当の国際学術誌の編集委員を3つぐらいやっていますけれども、非公開で申し上げれば、落としたものが随分あります。著者名は分かりません。しかし、いつの間にか同じものが共共拠点のある国際学術誌に載っているということも見ています。
 ですからそういう意味で、これを狙いながらも、当面中間評価をもう少しめり張りを付けるというところで、具体的に言うと、例えば評価区分が現在S・AA・A・B・Cぐらいまででしょうか。例えばS・A・B・C・Dぐらいにして、もうCは拠点としての活動が不十分なので大幅に減額するとか、あるいはDは拠点としての認定を取り消すとか、そういうところまでやってもいいのではないかなと。
 あるいは論文というものを、1点はみんな1点なのだけれども、学内の雑誌で出すものと、学外の雑誌、本当の国際的なものに出すものを同じにカウントするのではなくて、それは人事、雇う時でも、学内雑誌の方は査読が付いていても別にカウントしています。やはりそこは分けるべきだと思うのです。
 それから、ミッションはあくまでも共同利用・共同拠点なので、KEKは本当に理想的にやっていると思います。その課題設定も大学側が課題設定したもので施設を使わせてあげるという、これが本来の在り方だと思うのです。でも実は、共共拠点の中にはそうではなくて、彼らの方が課題を設定して参加させてあげますよと。それを公募する。そうでなければ、大学が共共拠点に貢献しているように、ミッションが逆ではないかと思うようなところも随分とあるのです。
 だから、結論として永田先生のおっしゃるこの制度を目指しながらも、そこに近付けていくために、すぐ来年財務当局が予算を認めるかどうか分かりませんので、少し中間評価のやり方を今までよりもめり張りを付けてやって、少しでも永田先生のこの考えに近付けていくというのが私は必要ではないかと思います。
 以上です。
【稲永部会長】  ほかに。どうぞ、伊藤委員。
【伊藤臨時委員】  ちょっと質問させてください。
 先生がおっしゃった国際性という中に、研究の国際性と組織の国際性が混ざっているのですね。もちろん私は理科系ですので、国際性は普通であり絶対に必要な基準だと思うのですけれども、そこをどのようにお考えなのか。
 もう一つ、二つ、ICOEとおっしゃった時に、そういう共共拠点としての特区を作る、別種の何かラベルをつけたICOEみたいなものを作ろうというようなことを暗に考えていらっしゃるのか。
 そういう時の指標として、次に1つ質問というか提言なのですが、いわゆる国際性と言うと外国だけですけれども、研究者数を増やすと言った時に、組織としてはダイバーシティ(多様性)が必要だと思うのですね。ですから、ダイバーシティなりインクルーシブネス(包括性)なり、そういうような評価及び評価指標を、小林先生のおっしゃったことももっともだと思うので、どのようにお考えなのだろうと思うので、教えてくださればと思います。
【永田臨時委員】  ここにお示ししているのは外形なので、そういうポイントを一つずつこれから皆さんで詰めていくべきと思うのです。分かりやすい順番に言えば、国際性と言っているのは研究において。国際的な本当に中核研究拠点になれるかどうか。これがないと、世界のこの分野は進まないよなというぐらいの研究拠点になってほしいという意味なのです。
 そうなるためにはどうしたらいいかということで考えてみると、例えばダイバーシティの問題も多分やはり入ってくると思うのです。それこそ世界的な観点から見れば、日本は随分偏っている部分がありますよね。それは、言い方はダイバーシティを推進するというよりは、才能のある人であれば誰でも、という言い方。
 それを支えるシステムとなると、例えば保育園を作るということになるのかもしません。【伊藤臨時委員】  欧州のホライズン2010と2020だと、インクルーシブネスですね。
【永田臨時委員】  インクルーシブについても同じですね。それを例えば発達障害の中で天才的な方がいらっしゃるかもしれない。そうしたらそれでいいと思います。そういうものが今のところ何もないので、あくまでも研究力の高さという意味合いで、そこにハンパーするものがあっても、それは乗り越えましょうという意味で言っているわけであります。
 それから、ICOEというのは一般名詞として僕は使えばいいと思っていて、センター・オブ・エクセレンスというのは、今度は日本では国際的なセンター・オブ・エクセレンスというのを、例えば共共拠点という形で作りますというのが答えであって、どちらかというと固有名詞として言っているわけではなくて、一般名詞として、この我が国の中に胸を張ってこの分野の研究の中核である、だからたくさんなんかはできっこないとは思いますけれども、それでいいのですが、胸を張れる研究拠点であるといいなという意味で使っています。これを特別な固有名詞として考えるつもりは余りありません。
【伊藤臨時委員】  ということは、今の国内の全国共同利用というのがICOEに変換が可能?
【永田臨時委員】  それは我々で枠組みを決めていけばいいと思いますが、既にそういう意味合いで世界の拠点になっているものとしてあれば、それは当然ウエルカムなのだと思います。
 自分でそういうふうに見直してみると、いろいろなマネジメント上、今までの研究体制に何が付加されたらこの国の研究を進めるかというのが余り検討されていなくて、そこにはさっきのダイバーシティもありましたけれども、日本人だけで考えてはいけないこともたくさん私は入っていると思う。だからそういう観点も、それはこれから議論の中で、研究力だけではなくて、研究者だけではなくて、それを支えるマネージャーたちも国際ステージの人じゃなくてはだめというような、きつい基準は何でも作れますけれども、それこそそれは我々で。もしこういう考え方がいいとすればですが。
 いろいろなものを作っていって、歴史を見た時に組織があって、機能が少しずつ拡充していった。それを更に一段今度は最大限の機能を引き出す。では、その次に何があるのかという問題が、今唯一残っている自分に対しての疑問なのですが、それにしても機能強化をする時の分け目としては、やはり高いレベルの義務感と、高いレベルの権利を持つべきだろうと思っていて、言っているわけであります。
【稲永部会長】  ほかに。どうぞ。
【天羽臨時委員】  永田先生、どうもありがとうございます。一企業を経験した人間としては、ここで言っている国際共同利用なんていうのは、私に言わせればもう当然のことなので、はるかに遅れているのではないかなという。やはり本当にナンバー1というか、すばらしいいろいろな研究をするためには、やはりいろいろな世界各国とかいろいろな人種、それを乗り越えていろいろな地域の人たちをどのように集めてきて、それで形あるものを作っていくかという、先ほど伊藤先生がおっしゃったような多様性なんていうのはもう本当に当然あるべきで、今までないのが不思議かなと。当然、リーディング大学の方のいろいろなプログラムの中ではあると思うのですが、やはりそういうのは当然あっていいことだと思います。
 ただ、一つ私が懸念をしているところというのは、やはり予算も当然こういうふうに少しずつ下がり気味で限度があると。そういった形の中で、本当にそういう形を運営するためにどのようにして、いろいろ日本国内だけではなくて海外の方からもいろいろな競争的なお金というのをどのように集めてくるのか。やはりそのバジェッティング(予算案)という形のシステムを少しずつ変えていかないと、これはなかなか難しいのではないのかなと。
 そういうことで考えていくと、先ほど小林先生がおっしゃったような、やはりスクラップ・アンド・ビルドということをどのようにして積極的に進めていくかというのが恐らくこの9期――私は前回初めて出させてもらったのですが――そこでそのような具体的な議論を進めていかないと、やはり目指しているゴールというのはなかなか達成できないのではないのかなとは、ちょっと私なりには感じています。
【稲永部会長】  小長谷委員。
【小長谷委員】  御発表ありがとうございました。全くその必要、そのとおりだと思っております。一般に遅れていると思われているような人文系の私どもの機構でも、全てではないですけれども、人事は国際公募しておりますし、それから共同研究の採択の評価委員会というのも国際的なボードでやっているとか、それから一部のプロジェクトに関しては国際的に評価する体制を整えているなど、多分全ての共共拠点がそれなりに国際的なことを取り組んでいらっしゃると思います。
 ただし、それが今まで規則的に明示されていなかったので、それを今回全てのところに文言を「国際的」という項目を入れることによってはっきりとさせていくという、そこにおいて制度として国際化自体を可視化していくということが、今日の御提案の趣旨だったかと思います。それを言われても、多分本当にしっかりやっている拠点はどぎまぎしないと思います。平常心で対応できるのではないかと思います。
 だから、そうであるならば、それをいつのタイミングでするかということが次の選択肢になってきて、小林先生の御提案のように中間評価を厳しくめり張りするというのは分かるのですが、もうそこで持ってくるのか、しかしそれはちょっとルール違反的になるから、期末のところでそれを実施して、期末イコール新規の申請ですから、もう申請のところできれいにクリーンアップして国際共同研究拠点というふうに持っていくのか、それより前に持っていくのかということは、ひとつ決めていただくことになるのかなと思います。
 ただし、さっきおっしゃいましたように、その予算的な枠組みが全然変わらないままで、そこだけを自助努力で国際化するのかというと、やはりもう少し別の方法も考えることがあるかなというのが、私の今のポイントです。例えば、非常によく似た研究を競争し合うなら、共同研究を競争し合うなら、最初の企画段階から一緒にやって集積の効果ですね。それぞれの大学、研究所の集積の効果を上げて、共同利用・共同研究拠点としてはそれぞれ独立で独自の強みを生かすけれども、もう少しそれらが最初に企画の段階からネットワークを組んで国際ファンドを取りに行くとか、そういうソフトプログラムのためにお金を用意するのではなくて、自分で取ってこいみたいな仕組みでもう放し飼いにするというか、戦場に出すというようなこともあり得るかなと聞いていて思いました。
 以上です。
【稲永部会長】  ありがとうございます。国際ファンドを取るという御経験のある委員の方おられるので、では、観山委員。
【観山専門委員】  永田先生、どうもありがとうございます。非常にいい提案だと思います。
 問題は、先生もちょっと言われていたと思うのですが、ターゲットをどういう研究所にするということを理想像とするかということをまず議論しておいた方がよく分かると思うのです。マックスプランクということを例に出されましたので、私は天文・宇宙物理分野ですが、確かにファクター2か3ぐらいまで出ます。それは研究者の数、マックスプランクの中の天文をやっているグループ、研究所というのは3つぐらいあるのですが、基本的に世界から優秀な人間を集めるような環境を作っている。つまり、ドイツ、それからドイツ州政府のお金で運営されているわけですけれども、別にドイツ人が運営するということが考えられていない。
 例えば所長だって日本人でやった人もいますし、マネジメントとかそういうレベルから非常に考えられていると。つまり世界からそこに集まってきて研究をするという、優秀な人材を集めることができる。公用語はもちろん英語でありますし、それから人事に対しても完全にオープン。つまり世界中で一番優秀な人をそこに集めるのだというシステムが作られている。
 だから、例えば今あるような日本人が所長をやって、外国人が三、四割ぐらい得ようとするような研究所を当面は考えるのかもしれませんけれども、ある程度システムを変えないと、例えば天文とか宇宙分野でアストロ・ルーマーとよく言うのですが、世界中の研究所の所長選考に関するルーマー、うわさが載っているところがあって、日本の研究所といえば宇宙研、天文台も載っていません。それはなぜかというと、所長とか教授とかがどうやって決められているから分からないから。
 つまり、共同利用システムの中において運営委員会で外部の人が決まっているのだけれども、それは外から見たらどうやって決めているのか分からないし、それから選考基準も英語で書かれていないし、多くの場合は今までは人事に関する規程というのは英語化されていないので、そういうふうな分野があって、やはり残念ながら3割、4割ぐらいを集めてこようとすると、給料を中国みたいにものすごく高くすればまた別かもしれませんけれども、だから目標としてやはりそういうレベルを考えないと、国際的に拠点としての日本の中にハブができないのではないか。
 では、すぐそれができるかといったら、それはWPIみたいにものすごいお金を投資すればもちろんできると思うのですが、そこにどうやって近付けていくかというのを方法論としてはよくよく考えないと、なかなか難しいところがあるかなと思います。基本的にこういう発想は非常に賛成ですし、ただ、私が思っている理想の方向に近付けていくには、どのようにシステムを変えていくかというところから含めて検討しないと、単純に任せておいたらできないし、それから大学の中での理解が非常に必要ですね。つまり、そこは完全に公用語を英語にしようと言ったら、事務組織だって資料だって全部英語にしなければいけないわけなので、だからそういう部分をどうって作っていくかということが、結構大きな課題ではないかと思っています。
【稲永部会長】  森委員、さっき手を挙げておられたね。どうぞ。
【森専門委員】  永田先生、どうもありがとうございました。
 共共拠点の物性研究所なのですが、先生が先ほど歴史的俯瞰をおっしゃったように、うちも60年ということで還暦を迎えるような研究所なのですが、1年間に1,000件ぐらい国内でも共同研究の応募があります。
 共同研究の対象となる中大型の装置として、約80テスラの強磁場、レーザー光電子分光、超高圧などがあり、世界に一つしかない装置を利用したいということで、国内ばかりでなく世界からも研究者が集まってこられますので、国際化というのは必然性があります。先ほど小長谷先生がおっしゃられましたように、今、拠点の項目の中には国際化がないのですが、評価の中にはあり、我々も自助努力で、国際共同研究を行っております。その中で、ボトムアップの国際共同研究がスタートしているのですが、それを太いパイプにしていくということが大切かなと思います。また、国際共同研究も、個々に閉じているのではなくて、コミュニティに波及効果を持たせることが必要だと考え、研究集会を開催し、共同研究の成果を広げることも行っております。
 伊藤先生がおっしゃったダイバーシティというのは、人的ダイバーシティと研究のダイバーシティの両方を多分おっしゃっておられたと思います。国際化を行うときにも、研究の「多様性」と、研究のターゲットをはっきりと決める「選択と集中」のバランスがとても大事かなと思っております。ある程度ビジブル(可視)に国際拠点の活動を行い、「選択と集中」で目標を決めて進める方向もあります。一方、世界から研究者が集まって、先端的な装置を利用し、自由な発想で共同研究をしたい、議論をしたいと集まってこられる先生と、研究のダイバーシティを確保することも大切だと思います。また、個々の国際共同研究に終わることなく、そのコミュニティとの連携を考えながら国際化を実現するのがミッションだと考えております。以上が現場の者からの意見です。
【稲永部会長】  山内委員。
【山内臨時委員】  大変すばらしい御提案をお聞きしたと思っておりまして、研究におけます日本の存在感が低下しているというところはいろいろなところで問題になるわけですが、それは予算が減ってきているからだと片付けてしまうのは、私は少し短絡的ではないかと思っております。
 そこには様々な理由があると思うのですが、1つはやはり国際性が十分ではないというところにあるのではなかろうか。研究でいい成果を出そうと思いましたら、やはり大勢のすぐれた研究者が集まって、そこで切磋琢磨してもらうということがどうしても必要でありまして、それを国内だけから100人集めるよりは、世界から100人集めた方がそれはいいに決まっているわけですね。そういうことを積極的にやってこなかったというのが、一つの理由なのではなかろうかと私は思っております。
 それで、国際化する上での様々な難しい問題あろうかと思います。永田先生も御指摘されていますが、意思決定でありますとか、研究課題の選択とか等々、人事もありますね。私は非常に難しい問題というのは、研究支援体制ではなかろうかと思っておりまして、日本は残念ながらこの点におきましては、やはり国際的標準とは少し出遅れているといいますか、遠いところがあるのではなかろうかと思います。
 支援体制は様々ありますけれども、事務支援でありますとか技術支援、それから生活の面での支援というのがあります。こういったところをやはり充実させていくという、これは非常にお金も実は掛かりまして、お金だけではなくて例えばその事務職に対して多言語化といいますか、こういったことも図っていかなくてはいけないというような、お金では単に解決できないような難しい問題もあります。ですが、そういったことを克服していってでも国際化して、ということはその研究における日本の存在感を高めていくというところに非常に役に立つのではなかろうかと思います。
 それから、もう一点申し上げたいのはお金の問題なのですが、大学共同利用機関とか共共拠点というのは、日本の研究者が使う上ではこれは無料であるというのは、多分大原則だろうと思います。ですが、それは日本の研究者だからということだろうと思うのですが、それを外国の研究者にもそのまま当てはめてよいのかどうかというのは、これは少し議論が必要かなと思います。外国では実際にそういったところにお金を払って、例えば設備を使いに行くということが制度上認められているところが多いので、そこからお金を頂くというのも場合によってはあり得るかなと思います。
 以上です。
【稲永部会長】  ほかに御意見。では、加藤委員。
【加藤専門委員】  初めて参加させていただきます。私はまるで民間の農業事業を営んでいる加藤と申します。よろしくお願いします。あえて言うなら信州大学の客員教授をしております。
 いろいろお聞きしていて、今ごろこの議論ですかというのは持った印象なのですけれども、やはり国の人数が減る中で、豊かさは失われていくというのは民間もすごくひしひしと感じていまして、対長期的な投資というのは、国からの投資というのは非常に難しくなっていくのだろうというのは感じています。その中でどうやって研究を盛り上げていくか、非常に難しいのではないかなというのは俯瞰した時に感じているところです。
 ただ、民間はかなりお金が余っていまして、いろいろなところで投資、投資と。でも投資先がないのだというので、浮ついたお金がいっぱいあります。特に農業なんていうのは出遅れた産業で、今ごろ火が着いていまして、ちょっとバブル的にいろいろな研究・開発投資が行われているところです。
 そんな中で、ひとつDMMメーカーズみたいなのが共共拠点なのかな、なんて勝手に軽く理解したのですが、御存じですか。DMMという会社が秋葉原でメーカーズたち、ものづくりの方たちに場を提供して、3Dのモックとかが作れるようなものづくり拠点を作っています。いろいろな人たちが、ものづくりでベンチャーを立ち上げて上場するのだという猛者たちが集まっては、いろいろ情報交換しながらいろいろなものを作って、そこから生まれてくる事業に対して、DMMがまた出資をして育てていくという循環が生まれています。
 ここがうまく回っている理由としては、やはりイノベーションの基本だと思うのですが、人と金ですよね。やはりおもしろい人が集まればお金も集まる。お金が集まるからおもしろい人が集まるという、卵とニワトリの関係なのですが、やはりここは切っても切れない関係で、共共拠点も、国際は全部国際化って付けてしまえばいいと思うのですが、その時にお金が集められるかどうか。それってやはりすごい表現力の問題で、英語かどうかというのはあるのでしょうが、そもそもその魅力をどうやって表現をして、お金を集めてくるのだというのができないような組織は、私はやはり運営上大きな問題があると思います。
 ですので、国に対してPRする。60億という予算しかありませんというところであれば、60億の中の競争をみんながすればいいし、世界を見れば、色マスクがあれだけお金を集めている世の中ですので、そういう意味ではお金を集めようと思えば幾らでもお金は集まる世の中ですので、孫さん一人で10兆ですものね。なので、そういう意味では集める気があるのか、集めるためのプロセスをきちっとこの共共拠点の中にも入れなければいけないのではないかなというのが感じたところです。
 ありがとうございます。
【稲永部会長】  ほかに。
【藤井臨時委員】  恐らく国際化というのは、今まで議論があったように研究所、それから学部も含めて求められていることで、現在それを軸にやっているのではないかなと思います。観山先生が言われた体制の問題なのですけれども、現在大学は国際化を進めていて、例えば外国人教員とか、それから留学生を増やそうとしているということで、国際的な対応についてはかなり力を入れてきているのではないかと思います。ということで、例えば附置研なら附置研だけを切り離してやるというよりも、全体でそういう努力をしている中で、やはり国際化は進めていかないと非常に効率が悪いのではないかなと思います。
 それから、WPIというのは国際化が進んでいるわけですけれども、そういうものが終わった後にどのように大学の中に根付いていって、それがこういうような附置研とかそういう組織的なものに移っていくのか、生かされるかという観点も必要なので、是非、何か新たに作るということも重要かもしれませんけれども、今やっていることをより効率的にすることが重要で、こういうことをしっかりとやっていく方が、より長期的にはいいのではないかという気がいたします。
【稲永部会長】  はい、どうぞ。
【相田専門委員】  永田先生のお話の最後の方に、数値目標を幾つか掲げてしっかり評価するというのがあったと思うのですが、それで机上配付された中で、今までの評価指標はどのようなものがあったのかと思って、今、ずっと見ていたのですが、でも評価をするために、S・A・B・Cを付けるための評価が、結構これは定性的だなとちょっと感じます。特に国際性だとか。
 とにかく日本全体が活発化するための拠点形成なので、それをさっきどなたかがおっしゃられたような、とにかく民間からもいっぱいお金が入って、それをみんなが使えるようになるということは必要とは思うけれども、やはり適切に評価することが一番重要だと思うので、その評価の指標がここに書いてあるものだと、論文が何本あったとか、何人が使ったとかそういうもので、なおかつ例えば物性研みたいに非常に規模が大きいところと、そうではないところと、評価の文言は同じようなことが書いてあって、S・A・B・Cを付けるというのは本質的な評価ができないのではないかと思うのです。
 ですので、こういうふうに国際的も大事だし、いろいろなものが本当に大事なので、その大事なことを進めるためには、同時に評価指標も具体的に検討しながらやった方がいいのではないかなと思います。
【稲永部会長】  どうぞ、永田委員。
【永田臨時委員】  今日の説明を大体皆さんにも御理解いただいたというか、僕のしゃべり方が悪かったかもしれませんけれども、国際という単語なのですが、研究環境、マネジメントとか、それからそれを支える国際性を上げましょうと言っているわけですね。研究のコンテンツは、国際基準どころか、ここが国際基準になるような研究内容を持ってほしい。
 例えば計算機科学で言えば、今回やったアメリカのバークレーの研究所と並べて比較しても遜色ない程度のやはり研究力がないとだめだろうと言っているわけですね。適当に国際化しているから国際拠点ではなくて、バークレーがなかったら僕ら計算科学は困るというのと同等ぐらいに実力のあるものに上がっていかなければいけないだろう。
 だから先生がおっしゃるように、何かえらく小さいものも大きいものも同じ基準で評価したら、それは違うかなと思います。だからガバナンスやマネジメントに関わる国際化の推進というのは、それの上で全部がやればいいと思うのです。
 その時にやはり明確な指標を置かないといけないので、何かさっきの規制緩和もいいのですが、やっていないけれどもここまではやりましたから国際化しましたではなくて、ここのレベルまで行きましょうよというようなのは明快に必要かなと思うのです。
 ちょっと国際という単語の置き場所がよくなかったかもしれませんが、マネジメント、ガバナンスの国際性は強化をするとともに、どこに持っていっても、国際基盤の中でこの領域のこの研究拠点は本当にないと困る、世界が頼りたいというふうになってほしいのだと思っている。
【稲永部会長】  お願いします。
【松本部会長代理】  済みません。理研の松本です。この委員会で何を検討するかということは大変重要で、2点ほど申し上げたいと思います。
 1つは、永田先生がおっしゃったような国全体の研究力のレベルを上げる。それは当然国際的なレベルでなければならない。そういうことを一つおっしゃったと思うのです。それをこの共共拠点に一つの新しい要素として付け加えると。これは大変重要なことで、私はもちろん賛成なのですが、比較するときに全国のいろいろな共共拠点とか全国共同利用研究機関とか大学、学部、研究科にも優秀な方もおられます。
 それから、ここには挙がっておりませんが、理化学研究所は大学とほとんど変わらない組織でありまして、教育はやっておりませんが、この中の数字で言いますとマックスプランクよりもちょっと下ぐらいです。ですから、国内では一番高い比率で、永田先生のKPIで言いますとTop1%、10%輩出率はそれぞれ5.6%、25%ぐらい出ていますので、恐らく国際的には高いレベルの人が集まってきていると思うのですね。
 それは長い歴史があってそうなってきたわけで、先ほど来言われているように優秀な人をどうやって集めるかというのは大変難しい問題で、これ、インターナショナルな組織でないと優秀な人は集まりませんし、評価も国際的な評価に耐えながら、歯を食いしばりながらやってきたから、理研だとここまで来たと。
 ところが大学の場合は、特色はダイバーシティだと思うのです。いろいろな新しい芽が、次々いろいろな学部からもこういう研究機関からも出てくると。これを大切にしないといけないのですが、今のようにトップの研究者を引き上げるという観点だけの要素だけで全てを見てしまっていいのだろうかというのは、若干気になります。
 例えば、先ほど大小の研究機関をどう比べるかというお話がありましたけれども、永田先生はそこをよくお考えで、輩出率という分母の研究者数で割っているのですね。これは正しいフェアなやり方だと思いますが、これで一つはクリアできると思いますが、そういうことだけやっていると、新しいトレンド、新しい社会の変化に対して、大学の中から、多様性の非常に豊かな大学からそういう研究センターのような小さなものができる、研究者が上がっていくというプロセスを、初めから芽を摘んでしまわないかという危惧を持っています。
 そういう人をどうやって引き上げていくかということも、この仕組みの中に取り込んでほしいと思うのです。さもなければ、既存のものをどうやって絞っていくかという程度の議論になってしまうので、予算も60億という話ですから大変しんどいのですが、その中で常に新しい物を引き上げるような仕組みも、別の評価基準として必要だろうと思います。
 世界のトップレベルの研究機関はたくさん国内にもあると思いますが、そういうところ、いずれ芽を出すのでしょうけれども、その一番基本にある共同で一緒にやりましょうよと、大学の学部の垣根を越えてやりましょう、大学間の垣根を越えてやりましょうというのがこの仕組みだと思うのです。そこを忘れてしまっては、恐らく議論が単に優秀な研究機関を作るということだけになってしまって、ちょっとずれるかなという気がいたしております。
 以上です。
【稲永部会長】  はい。どうぞ。
【龍専門委員】  今の松本委員のお話、同じような意見になるのですが、永田委員の御発表の中でトップの方は頑張っていると、研究活動を牽引していくけれども、その次の層、ここがかなり弱体していると。そこをいかに強くしていくかというのが非常に重要だという話も、御発表の中にあったと思います。
 やはりこの基盤部会のこれまでのいろいろな資料を見ますと、国立大学からの共同利用・共同研究というのは、かなり人数、利用者も多いけれども、私立・公立というのはなかなか数が増えないと。先ほど平成元年から共同研究機関が利用を促進するというふうに変わったという話でしたけれども、もうそれから29年たっているわけですけれども、全然増えていないというところで、情報提供を共共拠点も含めて、いかにこういう情報を提供するのか。公立私立の研究者をプロジェクトの中に入れるのか。そういう工夫が本当に必要ではないかと思っております。
【稲永部会長】  では、勝委員。
【勝委員】  ありがとうございます。今までいろいろ議論がございましたけれども、スライドの12、13、こちらに研究力の状況というのがあると思うのですが、こちらを見て非常に明らかなのは、大学の共同利用機関、それから共共拠点、双方ともに論文数は非常に大きく増えていると。国際学術誌の掲載論文数も増えているということ、実績成果はかなり上がってきているということがあると思うのですが、特にこの共同利用・共同研究拠点につきましては、やはりその大学のリソースを使っているということで、非常に合理的な制度ではないかなと思うのですが、どなたか先ほどおっしゃっていましたけれども、その評価という点。
 これは多くが国立大学なので、例えば国立大学の法人の評価委員会等でも共同利用・共同研究拠点について評価をしているのですが、それがやはり非常に定性的になってしまっていて、論文数等が必ずしもその評価の視点にはなっていないという現状がありますので、この辺は教育の方とも絡めて考えていく必要があるのではないかなと思います。
 それから、マックスプランクとの比較の表があるのですが、共同利用・共同研究拠点はでの研究者数、所属の研究者数が3万2,000人あって、スライドの13で見ても研究者数は非常に増えていると。ただ、推測しますに、この所属研究者数、こちらはテニュアがあって、それ以外はやはり任期付の任用が非常に多いのではないかと思うのですが、この辺についてやはり企業との連携、人材の流動というものも考えたものに移行をしていくべきですし、それからその運用についても、そういった方たちの裾野を広げていくというのが重要だというのはここでもいろいろ議論されていると思うのですが、それらがやはりテニュアを持った研究者になれるような、そういう整備をしていく必要があるのだろうなと。
 これはただ、研究者、特に大学の研究者のポジションというのは非常に限られているので、これは非常に厳しいかもしれないのですが、既にいる教員も様々な形でその成果が評価されて、そこでの流動が進むような形にシステム全体として考えていく必要があるのではないかと思います。
 それから、先ほどどなたかおっしゃっていましたけれども、こちらの共同利用・共同研究拠点についても、やはりもっとフレキシブル(柔軟)に競争原理を働かせて、その成果を競うというような形にしていくということも非常に重要なのかなと。
 といいますのも、やはりこちらがその基盤、特に日本の科学力の増進において、その基盤を担うという意味で、論文数等から見ても非常に大きなシェアを維持しているので、そういったように思いました。
 以上でございます。
【稲永部会長】  井本委員、どうぞ。
【井本臨時委員】  国際拠点、国際共同の話というのは、前期の時に確か鳥取の乾燥地研でしたか、2つほど発表していただいて、国際性と言ってもいろいろな考え方があるのですねというような話があったと思います。
 今回はどちらかと言うと、永田先生の提案、トップの研究を目指すというカテゴリーの話をされたと思うのですが、中長期的に国際戦略を考えると、優秀な人材をいかに取り込むかという観点が非常に必要になってくると思うのですが、その観点で多分日本の多くの大学、研究所はアジアに向けてかなり力を入れていると思うのですけれども、そのあたりを本当にどのように考えていくのかというのは私自身もよく分からないのですけれども、一つの論点にすべきところかなと考えております。
【稲永部会長】  ありがとうございます。ほかにございませんか。
 では、私も一言。今日、議論しています大学の共同利用・共同研究拠点のほか、大学を離れた大学共同利用機関、それから皆さんご存じの研究独法というのがありますし、松本委員のところの理研のようなのがありますので、そういう全体の中で共同利用・共同研究拠点というものをどのように位置付けて考えていくのかということが大事だと思います。
 私は先ほど松本委員が言われたことに大賛成です。トップ集団がずっとトップを走っているとは限らないというお話をされた委員がおられましたが、共同利用・共同教育拠点とか大学というのは、トップへ向かう層を供給している組織と思います。大変申し訳ないですけれども、松本委員の理研はその中で光ってきた研究者や組織をどんどん引き入れて、科学技術研究を牽引していると思います。これは我が国としては非常にいいことだと思います。限られた科学技術予算の中では、より一層、全体の中での共同利用・共同研究拠点の位置付けを十分考えなくてはならないと思います。
 先ほど来いろいろなご意見がありますが、トップの研究組織というのは、WPI等に見られるように世界に伍す、あるいは世界を牽引していいます。ところがその次の層が弱体化しているのではないか、というご意見を最近いろいろなところでよく聞きます。その次の層をどうするかという時に、その層の教員がどのような状況に置かれているかということをよく考えなければいけないと思います。地域貢献や教育にもっとエフォートを注ぐ必要があったり、研究費が少なくなってきたりして、なかなか研究に専念できないという状況があると思います。
 その層の活性化に、国としてお金が今までのように潤沢にない時にこそ、共同利用・共同研究拠点とか大学共同利用機関というものの意義を見つめて、そこの機能を高めさせることが大事と思います。機能強化の一つとして、共同利用・共同研究拠点の国際化は極めて重要と思います。今日の永田委員のご説明は、大変そういう意味で参考になりましたし、松本委員の言われたことも非常に大事だと思います。
 はい、どうぞ、観山委員。
【観山専門委員】  全く賛成で、松本先生が言われたようにダイバーシティ、大学からの発信というのは非常に重要であります。ただ一方で、共共拠点というのは一応テーマが決まったコミュニティに支えられた研究グループなので、そのテーマが決まったところでコミュニティ、何か仲よしグループが適当にやっているというのではやはり困るわけで、それは国際性の中で評価されて位置付けられるべきなので、それはある意味では永田先生が言われるような形で目指すべき一つの方向性と私は思います。
 そういうことをやはり国際性というか、同じように研究というかコミュニティ、大学の先生方と一緒に共同研究をやってたくさんの成果を出すということは非常に重要で、それで日本の学術基盤の組織は大学が縦串だとすると、これは横串の経費だったわけで、それで非常にうまくいってきていると思いますが、多くの研究者は十分考えられていると思いますが、国際的な場の中でどのようなコミュニティであるのかとか、どういう研究グループであるのかというのを常に考えるという面では、一つのアイデアではないかと思います。
【稲永部会長】  松本委員。
【松本部会長代理】  ありがとうございました。せっかく永田先生がKPIの例えばインターナショナルな視点から言うとこういうものがあるという御提案がありましたけれども、その共共拠点、大学共同利用機関を含めて、それぞれ目指しているものがあると思うのです。それはここを見てほしいというのは多分あるはずなのです。そういうもの、KPIを全部洗い出すという作業を一度是非やってほしいなという気がしております。
 いろいろなここを見てほしいという特色をそれぞれ持っているわけですから、それを平場に並べてみて、どういう評価をしたらいいでしょうかという議論をここでやって、かなり数字に出てくるようなものにすると、この共共拠点の対象になっている機関の特色というものが多分分類できていくと思うのですね。それを、その同じような分類の中で、同じようなキーパラメーターで比較したらどうなるかということができるような基準を、是非部会長とかで御検討いただければと思っております。
【稲永部会長】  はい、どうぞ。
【永田臨時委員】  松本先生も大学がずっと長かったので、同じような感じになるわけですが、ダイバーシティに富んでいる大学っていうのは、各部局はめちゃくちゃ統一的な評価を嫌うわけですよね。当たり前ですよ。それはやはり芸術の部分と人文社会と医学が同じ基準で評価なんかできるわけがないわけですよね。ですから、今言われたように評価の視点というのはやはり大切で、それぞれの研究分野に特性のあるものを生かすようにやらないといけない。
 ちなみに、実は我々にはスポーツ科学、体育という学部があるわけで、こんなの他にないので、トムソンと組んで実は世界ランキングを作りました。新しい指標で現場の人たちが入れたいもの、いわゆるスポーツ科学体育科学に関する自然科学系、人文科学系、アスリート系も全部入れた評価軸を作って、実際公表して世界中に使っていただこうということです。ただ作るのなら、世界のその分野の人がみんなアグリーできるようなものは作ってねと言って、各部局に評価基準を持ってこさせています。ですから、人文は全然違う評価基準できています。それから医学はもうこちらの医学の評価の基準できているし、自然科学系は比較的似たようなのが来るのですけれども、それでいいのかと思います。
 松本先生が言われたのを、大学の多様性というのはそこまでやはり考えて、各部局の評価をもうやっているところはやっているということなので、是非ともやはり特徴をうまく引き出せる評価基軸にするのが大切だと思うのです。
【稲永部会長】  今日まだ発言されていない瀧澤委員、もし御意見があれば。
【瀧澤臨時委員】  先生方の御意見、いちいちなるほどと思いながら幅広い議論をされているのを伺っていたのですが、一つ、先ほどから私、参考資料3の46ページの基礎科学力の揺らぎということで、日本で算出される論文の状況で、3回にわたって2年間の論文の数の変化と、Top10%補正論文数の国際比較をずっと見ていたのですが、これ、国ごとに多分その科学研究分野の発達段階というのがあって、例えば韓国なんかは最近の2002年から2004年の期間と直近の期間を比べると、論文数は2.5倍、そしてシェアTop10%論文数は3倍というように驚異的に伸びている。
 一方で、英国とかドイツの論文数は1.4倍なのですが、シェアも結構高くて1.7倍とか1.8倍とかいう数なのですね。またカナダも高いということで、日本はどちらかというとそちらの従来基礎科学力の高いグループに入ると思うのですが、明らかにやはり皆さん先生方指摘されているように、グローバル化に乗り遅れたのだろうなと思います。
 一方でイギリスとかドイツなどは、トップ集団でありながらシェアも伸ばし続けているところには、先ほどから御意見ありますように第二集団の層が厚い。第二、第三集団がどんどん実力を伸ばしてきているような構造があると思いますけれども、実態が実際どうなのかというのを、各国の研究者の人材の流動性も含めたその生態系みたいなものをどのように還流させているのか。
 ヨーロッパだとEUの中で完全にもう一体化されているのかもしれないのですが、各層の依存状態ですとか、組織ごとのレベルの違いを超えてどういった全体の底上げみたいなものが機能として働いているのかなというようなこと、今お話ししていても漠然としているものですからなかなか手を挙げられなかったのですが、そういった実際に起きていることがもう少し海外についてもよく分かると、国内の議論にも生かされるのではないかなと思いました。
【稲永部会長】  では、小林委員。
【小林臨時委員】  ちょっと永田先生の先ほどのお話に戻りますと、永田先生のこのパワーポイントですと12ページになりますが、本来私ではなくて、お隣の小長谷先生がおっしゃるべきことだと思いますが、人間文化研究機構の論文数が自然科学研究機構の4分の1ぐらいになっていますが、4分の1しか仕事していないのではなくて、論文で数えるとこうなるということで、トムソンロイターのソーシャルサイエンスの定義が、ちょっと日本の社会科学とは違うかなという気がしていますけれども。
 やはり人文社会科学というのは一つではなくて、経済学、経営学、商学、会計学と、それ以外。法学と文学でまた違うのですが、経済学はやはり論文になります。本はやはり教科書です。法律は、実は判例解釈と本が大事になってきて、論文も大事でないとは言いませんが、それ以外の政治学とか文学系というのは本が大事になります。国際共著著書が大事になります。それが、共共拠点の実績で書く欄がないというのが私は非常に不満で、それ以前に前からないのですが、COEの時もなかったし、それはやはりちゃんとそれで評価できるようにしていただかないと、多分人間文化研究機構は困るかなという気がします。
 それともう一つ、今、瀧澤先生からお話がありましたけれども、参考資料3の46ページを見ていただくと、例えばそのTop10パーセンテージの韓国見ていただくと、2倍以上に増えているのですが、台湾見ていただくと、これも2倍以上に増えているわけです。日本と比べると、韓国は人口が半分以下なのです。台湾は日本の5分の1しかいないのです。でも、この差しかないのです。とても追い上げています。具体的にはかなり強引に国際化をしています。
 ですから韓国の場合は、日本で言うところの21COEとかグローバルCOEって、向こうはBKコリアとかBKコリア・プラスですけれども、やる時に強引にアメリカのプログラムを入れる。それから、台湾であれば台湾を含めて3か国以上の共同研究に限って認めるという形で、これは科技庁でそういうことをやっています。ですので、かなり強引に国際共著論文、国際共著をやらせています。
 審査員をずっとやっていますので、かなり強引にそのランキングの指標に合わせてやった。それがいいかどうかはちょっとかなり問題はあると思いますが、日本は少し――これはちょっと言い過ぎかもしれませんが――全てにおいてみんなを大切にする。護送船団で行く、平等で行くというやり方だし、韓国は何でも一極集中でやっていくと。ソウルと京畿道に人口の半分が住んでいますから、とにかく空港と言えば仁川空港だし、港と言えば釜山港です。台湾は多極分散でやるのです。台北市って実は台湾の人口で言うと4番目なのです。多極分散でやるのです。日本のその護送船団でやっていくならば、やはり予算が相当な右肩上がりでないと維持はできないのではないかなという気がします。
 ですから言いたいことは、今は日本がアジアではトップのように見えて、どんどん抜かれています。香港とか中国とか、アジアのトップ100で、日本の大学数と韓国の大学数がほぼ同じです。アジアのトップ100にいる日本の大学数と台湾の大学数が大して違わないです。人口は5分の1ですけれども。今はそういう状態です。
【稲永部会長】  ほかに。はい。
【相田専門委員】  この共同利用・共同研究拠点の在り方になっていると思うのですが、つまり先ほどからのお話にありましたように、私は余り第二集団という表現は好きではないですけれども、とにかく多くの大学があって、とがった山のような感じになっているわけです。この裾野がなかったら、やはり日本全体としてぽきっと折れてしまうわけですから、裾野を全体的に高めるのが必要で、一方運営費交付金がどんどん削減しているから、地方の大学はもう人件費はどんどんなくなるし、研究費もなくなる。その時に、この共同利用・共同研究拠点の在り方はすごく重要なわけです。
 ですので、評価ももちろん数値評価はすごく大事なのですが、どのような研究内容、研究の装置があるものを置いた方が日本全体の底上げに関係するかとか、そういう視点も入れて、地方にある移動しにくいところにも大学はあって、そういうところの研究者が学生さんと一緒に利用しやすくする。そういう視点も大事だと思うのです。だから、とんがりも大事だし、裾野も大事。今日の永田先生のお話は、とんがりのところをもっととんがらせるというお話だと思うのです。とんがるためには、裾野がなかったらとんがれないので、だから両方とも必要だと思うので、その視点がすごく重要だと思います。
 もう一点だけ確認したいのですが、今日の資料1の最後の方のページに、新規認定に関する要項のところの丸6のところに、「支援業務に従事する専任職員が配置されているか」という文言がありますが、この支援業務に従事する専任職員の定義というのはどういうものなのでしょうか。
 つまり、今、多くの大学が教員組織と教育組織、研究組織を分離して、専任教員の定義が結構崩れてきていると思うのですね。こういうところの書き方も、適切に実態に合うような表現がある方が、いろいろな大学のところでこういうものを考えた時に乗っかりやすいというか、利用しやすいというのもあるのではないかと思います。
【稲永部会長】  それも検討事項だと思いますけれども、加藤委員。
【加藤専門委員】  短くちょっとだけ、問題提起です。私、実務畑にいるものですから、大学卒業の前に優秀な論文とかを書いている子たちがどこへ就職するかというと、もう研究職ではないですよね。コンサルタントとか、もうすぐに年収1,000万みたいなところにどんどん卒業して行ってしまっているというところで、そもそもその研究者になりたい人たちを、こういう仕組みを作ることでどうやって醸成するか、世の中の雰囲気を作っていくかというのは、仕組みを考える上でも非常に重要かなと思っております。
【稲永部会長】  では、松本委員、お願いします。
【松本部会長代理】  先ほどちょっと言い洩らしたことがありまして。この全国共同利用システムというのは、ヒストリーを先ほど永田先生がざっとサーベイ(調査)してくださいましたが、大変いいシステムを日本国は持っていたと思うのですね。いわゆる大型設備のようなものは各大学で持っているはずがないので、どこか特色のある大学に置いて、それをみんなで使おうと。一種の連携ですよね。連携は非常にうまくやって世界の先を行っていたと思うのですが、今は全体が予算の問題と人口減の問題、両方あって、今は何となく世界の中で落ちていっていると。
 もう一度、各大学が競い合うというよりも、各大学がどう連携を取るか。我々のような国研も含めて、日本の研究組織を再編成するぐらいのつもりで、この共共拠点は、その中でどのような連携の役割を果たすかということを是非検討していただきたいなと思っております。
【稲永部会長】  ありがとうございました。まだまだあるかもしれないのですが、時間が来ましたので、今日の審議はここで終了させていただきます。頂いた御意見は事務局にて取りまとめていただいて、次回以降の議論の参考にさせていただきたいと思います。
 それでは、最後に今後のスケジュールについて、事務局から説明をお願いします。
【早田学術機関課課長補佐】  資料4に次回の今後のスケジュールを示させていただいております。次回89回につきましては、6月28日水曜日の10時から12時で開催させていただきたいと考えております。場所については調整中ですので、また改めて御連絡させていただきます。
 以上です。
【稲永部会長】  それでは、本日の議事は終了としたいと思います。



―― 了 ――

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