資料3‐3 国立大学法人及び大学共同利用機関法人の法人化を契機とした新たな取り組み

学術分科会
学術研究推進部会(第9回)
平成17年5月31日

1.国立大学法人

経営のイノベーション

学長のリーダーシップによる学内の研究費やポストの戦略的・競争的な配分

 法人化以前は予算は費目別に積算され(「学長裁量経費」という予算区分があり、他区分からの流用はできなかった)、また定員も職種別に定数管理されていたが、法人化後は各法人の裁量に

  • 学長裁量の人件費・定員枠・・・55パーセント※
  • 研究費等の戦略的な重点配分(検討含)・・・91パーセント※

※は国大協アンケート結果による

具体例
  • 全学教育研究基金(評価による配分)、学長裁量経費(学長のリーダーシップによる機動的配分)を措置〔東京大等〕
  • 学長裁量経費の配分の上で若手教員養成に重点〔静岡大、滋賀医科大等〕
  • 学長裁量定員を設定し、全学的な観点から定員を再配置〔山形大、東京工業大、新潟大等〕

学長を中心とした意思決定システムの確立

 法人化により各法人の裁量による学内組織編制が可能に

  • 秘書室の強化・・・66パーセント※
  • 秘書室の強化以外の方策(学長特任補佐、役員補佐、経営政策室等の設置)・・・52パーセント※
  • 役員会とは別に副学長、学長補佐等との会議の設置・・・47パーセント※

※は国大協アンケート結果による

具体例
  • 学内の各種委員会を整理し、理事担当や教員、事務職員等で構成する「室」に再構成 〔北海道大、東京工業大、広島大等〕

学内のスペースや施設に関するマネジメントの確立

  • 施設マネジメントの確立(検討含)・・・99パーセント※
  • スペースチャージの徴収(検討含)・・・55パーセント※

※は国大協アンケート結果による

具体例
  • 学長裁量経費の配分だけでなく、「全学共同利用スペース」の利用についても公募制を実施〔名古屋大〕
  • 「施設有効利用規定」を制定、学内の施設・スペースを一元的に管理〔弘前大〕
  • 全学共通利用スペースについてスペースチャージ(8千円/平方メートル毎秒)を徴収し、教育研究環境の整備に活用〔横浜国立大、長岡科学技術大等〕

学外有識者の積極的な登用と活用

 法人化により学外理事、経営協議会制度を導入。非公務員化により教職員の雇用は各法人の裁量となり、外部の人材の機動的・柔軟な採用が可能となったほか、外国人を幹部に採用することが可能に

  • 学外理事・・・企業関係者(34パーセント)、研究開発法人等の関係者(18パーセント)、他大学等の研究者(16パーセント)、学校法人関係者(7パーセント)、自治体関係者(7パーセント)
  • 経営協議会学外委員・・・企業関係者(35パーセント)、研究開発法人等の関係者(14パーセント)、自治体関係者(12パーセント)、学校法人関係者(10パーセント)
具体例
  • 企業等の人材を副理事等に登用し、広報、産業界・地域との連携、学生支援、知的財産戦略等の中核に〔埼玉大、東京大、電気通信大、富山大、京都大、鳥取大、愛媛等〕
  • 企業から経営分析担当の助教授を招聘し、病院経営機能を強化〔旭川医科大〕
  • 学外理事に元県教育長を招聘し、地元教育界との連携を強化〔宮城教育大〕
  • 全国公募により経営担当理事を採用〔滋賀医科大〕
  • 外国の研究者を理事に採用〔東北大、神戸大〕
  • 積極的な経営支援〔富山医科薬科大〕、学生募集の新展開〔和歌山大〕、幹部研修・学生の就職支援〔愛知教育大〕など監事の積極的な活用

責任ある適切な人件費管理

 法人化以前は予算は国家公務員の定員管理の一方、それに伴う人件費が措置されたが、法人化後は教職員の雇用及び人件費管理は各法人の裁量と責任に

  • 学内定員による人件費管理・・・24パーセント※
  • 人件費総額による人件費管理・・・32パーセント※
  • 両者を併用した人件費管理・・・32パーセント※

※は国大協アンケート結果による具体例

  • 役員報酬の10パーセントカット等による人件費の抑制〔岐阜大等〕

予算編成プロセスの確立

具体例
  • 学長補佐クラスで構成される「大学委員会企画審査小委員会」でヒアリングの上審査〔東京大等〕

増収や経費削減のための積極的な取組み

  • 新たな増収策の検討・・・67パーセント※
  • 附属病院において診療部門別のコスト分析を行うための大学病院管理会計システムをほぼ全大学で導入

※は国大協アンケート結果による

具体例
  • 省エネルギーの意識を徹底し、消費電力量6パーセント削減〔兵庫教育大〕
  • 複数年契約への移行で年間1850万円の経費削減など財務会計制度の弾力化を活用した効率化の推進〔筑波大学〕
  • 郵便関係の業務〔東京工業大〕、旅費業務〔鳥取大〕等をアウトソーシング
  • 附属病院での人間ドックの実施や手術前準備の効率化などの経営努力〔山形大〕
  • 予定よりも収益をあげた診療科に設備費を追加措置〔新潟大〕

柔軟な人事・会計システムの積極的な活用

柔軟な人事システムの確立

 法人化以前は教職員の人事・給与等は国家公務員法制によっていたが(例えば、給与は給与法により一律に規定)、法人化後は各法人において就業規則等により定めることに

  • 教員の任期制の導入・拡大(検討含む)・・・86パーセント※
  • 大学独自の給与体系の導入を検討・・・13パーセント※
  • 年俸制の導入(検討含)・・・19パーセント※
  • 変形労働時間制の導入(検討含)・・・83パーセント※
  • 裁量労働制の導入(検討含)・・・90パーセント※
  • 新たな人事考課制度、評価システムの導入(検討含)・・・84パーセント※
  • 教員の任期制の導入 74人(平成10年)→3546人(平成14年)

※は国大協アンケート結果による

具体例
  • 教員の個人評価の実施、事務職員の目標評価制度を施行〔岡山大〕
  • 期末・勤勉手当ての比率を見直し、勤務成績に基づく給与決定へ〔北見工業大〕
  • 全教員を対象とした任期制の導入〔北見工業大〕
  • 外部資金によって採用する教員について年俸制を導入〔東北大、名古屋大、大阪大〕

柔軟な会計システムの確立

 法人化以前は予算は費目別に積算され、流用も困難であったが、法人化後は予算の使途は特定されておらず。執行は各法人の裁量に

具体例
  • 研究費補助金が支給されるまでの間の学内立替制度の創設〔東京大〕
  • 随意契約範囲の引き上げ、複数年契約、ファームバンキングシステムの導入〔筑波大等〕
  • 各種研究費補助金が交付されるまでの間の立替の実施〔40億円、東京大〕
  • 地元の経営者等を対象としたエグゼクティブ・プログラムなどの実施により生じた収益は実施主体に還元〔小樽商科大〕

兼職・兼業の許可基準弾力化

 人事院規則の基準により原則として文部科学大臣が承認していたが、法人化により、各法人の裁量に

  • 兼職・兼業の許可基準を弾力化・・・32パーセント※

※は国大協アンケート結果による

具体例
  • 技術移転された企業の役員や社外監査役との兼職は原則承認〔東京大〕
  • 法人化後、社外取締役4件、社外監査役3件〔一橋大〕

教育機能の強化

  • 単位上限制(CAP制)の導入
     28大学(平成12年)→59大学(平成15年)
  • GPAの導入
     6大学(平成12年)→27大学(平成15年)

具体例

  • 成績評価基準のガイドラインの作成と成績評価結果の公表〔北海道大等〕
  • 「学習等達成度記録簿」を作成し、アドバイザー教員が学生支援〔東北大〕
  • 異なる学部間で「副専攻プログラム」を実施〔一橋大、新潟大、金沢大〕
  • 受験生確保のための教職員の出身高校訪問など積極的な広報活動〔愛知教育大〕
  • 医学科入試で、地元医療に貢献する人材育成のための地域枠入試〔秋田大、信州大〕
  • 教員主体のNPOが保険薬局を設置し薬学部教育に寄与〔金沢大〕
  • 教養教育と専門教育を有機的に連携した「水準分野表示法(ベンチマークシステム)」と「副専攻制度(オーナーズシステム)」を導入〔新潟大〕

学生サービスの充実

  • 大学独自の奨学金制度の導入(検討含)・・・36パーセント※

※は国大協アンケート結果による

具体例

  • 銀行等のOBが、きめの細かい就職支援や職業意識確立の取組み〔千葉大〕
  • 首都圏の企業を招いた合同企業説明会の開催〔新潟大等〕、人材関連会社と連携した就職支援の充実〔一橋大等〕成績評価基準のガイドラインの作成と成績評価結果の公表〔北海道大等〕
  • 成績優秀学生顕彰等に基づく特別授業料免除制度の導入〔東京海洋大、長岡科学技術大〕
  • 大学院入試上位合格者対象の特待生制度の導入〔奈良先端科学技術大学院大学〕
  • 成績優秀者を対象に返済義務のない奨学金制度を創設〔徳島大〕
  • 成績が優秀な学生の授業料を全額免除する特待生制度を全学部を対象に導入〔山口大〕

研究活動の活性化

  • 我が国の学術論文数のシェア・・・世界第2位、
     被引用回数のシェア・・・世界第4位
    学術論文被引用回数
     物理学・・・東京大学・世界第2位、
    材料科学・・・東北大学・世界第2位
  • 国立大学の教員一人当たりの科研費申請数・採択数
     申請数 0.964(平成14年)→0.985(平成16年)
     採択数 0.408(平成14年)→0.443(平成16年)

※は国大協アンケート結果による

具体例

  • 全学的な研究戦略を審議する「研究カウンシル」を設置〔一橋大〕
  • 拠点分野の国際的ネットワークの形成〔信州大-国際繊維ネットワーク〕
  • 異分野の研究者の交流を目的に「名大サロン」を設置〔名古屋大〕
  • 金融界と連携して「金融センター」を設置。〔東京大〕

地域再生への貢献、産学連携の促進

  • 企業等との共同研究数
     1241件(平成4年)→8023件(平成15年)
  • 企業からの受託研究数
     2189件(平成4年)→6986件(平成15年)
  • 発明実績
     1725件(平成11年)→6787件(平成15年)

※は国大協アンケート結果による

具体例

  • 地元企業の経営者等を対象とした短期の「エグゼクティブ・プログラム」を開催〔小樽商科大〕
  • 市民向けの公開講座の受講料を半額以下にし、受講を促進〔金沢大〕
  • 地元自治体と初等中等教育に関する連携を推進〔お茶の水女子大〕
  • 「過疎社会経営科学研究センター」を設置し、地域の具体的な課題解決に貢献〔鳥取大学〕
  • 経験豊富な県庁職員を地域連携センターの教授に招聘し、地域のニーズに対応した具体的な連携を推進〔広島大〕
  • 地域医療連携・支援のためファックス診療申込システムを導入〔香川大〕
  • 企業へ4ヶ月の派遣を組み込んだ「スーパー修士制度」の創設〔九州工業大〕
  • 企業等と包括連携協定の締結〔北海道大、東北大、東京大、東京工業大、名古屋大、京都大、大阪大、広島大、九州大等〕
  • 知的財産を大学機関帰属とし、取扱いルールを明確化〔東北大、九州工業大等〕
  • 大学発ベンチャーの上場〔東京大、大阪大、熊本大等〕、大学発ベンチャーを支援するための基金を創設〔東大エッジキャピタル〕

国際化

海外事務所の設置

具体例
  • 中国・北京の社会科学最高研究機関である中国社会科学院に海外事務所を設置〔一橋大〕
  • 米国・シリコンバレーのNECラボラトリーズ・アメリカに情報学に関する研究拠点を措置〔京都大〕
  • タイ王国・バンコクのマヒドン大学理学部内に海外共同研究拠点を設置〔大阪大〕
  • 米国ヴィクトリア大学のTLOにイノベーション共同研究センターの北米分室を設置〔神戸大〕
  • ウズベキスタン共和国のタシケント法科大学内に日本法教育研究センターの設置を決定〔名古屋大〕

外国人の登用

具体例
  • アハメド・ゼワイル氏(ノーベル化学賞受賞者)を特別な給与により3ヶ月間、専任教授として招聘〔東北大〕
  • リチャード・B・ダッシャー氏(スタンフォード大学米国・アジア技術経営研究センター長)を産学連携・地域戦略担当理事に〔東北大〕
  • シャトック・マイケル・ルイス氏(ロンドン大学教授)を戦略担当理事に〔神戸大〕

その他

ユニバーシティ・アイデンティティの確立

具体例
  • 大学名、ロゴマーク等を商標登録〔東京大等〕

外国人の登用

具体例
  • アハメド・ゼワイル氏(ノーベル化学賞受賞者)を特別な給与により3ヶ月間、専任教授として招聘〔東北大〕
  • リチャード・B・ダッシャー氏(スタンフォード大学米国・アジア技術経営研究センター長)を産学連携・地域戦略担当理事に〔東北大〕
  • シャトック・マイケル・ルイス氏(ロンドン大学教授)を戦略担当理事に〔神戸大〕

2.大学共同利用機関法人

新規分野の創出

学術研究のダイナミックで総合的な発展

 時代が要請する新たな学問分野創出への戦略的な取組として、各機構において連携事業を実施

具体例
  • 一元的な情報資源共有化を核とした機構内外における連携事業〔人間文化研究機構〕
  • 新領域の創出を目指した海外一線級の研究機関との国際カンファレンスの実施等の国際的な機関間連携事業〔自然科学研究機構〕
  • 人材育成、産学連携、新たな加速器装置開発等による総合的な加速器支援事業〔高エネルギー加速器研究機構〕
  • 大量のデータや統計モデル等に基づく新たな予測学や確率学の構築等、新領域創出に向けた連携融合事業〔情報・システム研究機構〕

既存組織の見直し

機動的・戦略的な研究運営を推進

具体例
  • 機構長直属の企画連携室を設置し、機構長のリーダーシップのもとに共同利用機能を推進、強化〔人間文化研究機構ほか〕
  • 分野を超えた研究体制として、「新領域融合研究センター」を設置〔情報・システム研究機構〕

事務処理体制等の効率化

総合的な研究支援機能を強化

 共通事務の一括処理等により、研究遂行を支援する事務処理体制の効率化、強化を実施

具体例
  • 機構本部事務局による財務・人事等共通事務の一元処理〔人間文化研究機構、自然科学研究機構、情報・システム研究機構〕
  • 全大学共同利用機関法人が連合し「知的財産共有センター」を設置。知的財産を有効に管理・活用
    〔全4機構〕
  • (参考)法人化により可能となった事項の例
  • (参考)国立大学の法人化に係る主な制度変更

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

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(研究振興局振興企画課学術企画室)