資料3‐1 科学技術・学術審議会学術分科会委員等からの主な意見【平成17年5月31日改訂版】

学術分科会
学術研究推進部会(第9回)
平成17年5月31日

 平成16年11月1日に開催された第2期学術分科会(第13回)、同15日に開催した学術研究推進部会(第4回)及び、平成17年4月8日に開催された第3期学術研究推進部会(第8回)において、各会議の委員等に対しアンケート調査への協力を依頼した。
 5月31日までに回答があった主な意見は次のとおり。(◎は今回新たに追加した意見。

分野共通

1.研究費

重点化

○ 各大学で競争的資金獲得を督励する傾向が今後ますます強まると思われるが、分野や研究スタイルによっては学術研究のあり方をゆがめる恐れがある。

○ 第1期および第2期科学技術基本計画のため、従前に比べれば、研究費は全体として大幅に増えている。特に重点4分野に対する研究資金の投入が増えている。重点4分野のみでなく、それ以外の研究分野にも投資していくことは、日本の学術研究のレベルアップに対して大切な施策。

○ 社会的ニーズの高い研究分野への重点的な資源の投入が必要。

デュアルサポートシステム

○ 競争的資金と基盤的資金の両方が必要であり、良いバランスが、学術研究の健全な発達を促進。

○ 教育研究経費から支援職員人件費、光熱費、清掃費等のあらゆる経費をすべて込みにした考え方を改め、運営費交付金の積算根拠として、大学が大学として存立するために必要な諸経費を、一つ一つ積み上げる方式に移行すべき。現在の諸経費を一括する方式は真にデュアルサポート方式を担う実体にない。

○ 教育研究に必要な諸経費についてきっちりした支援を行うプログラム(競争的でよい)をデザインすべき。

○ 基盤研究費が少なく、殆どは競争的資金の枠だけで研究を進めると、大学院生が競争的研究費のプロジェクトに拘束されない研究ができるような自由度が少なくなる。

○ 研究資金の手当ては、基盤的資金と競争的資金の組合せが望ましく、原則的な定率配分比率を定めるべき。基盤的資金も原則的に競争的資金とのマッチングとすべき。各大学等では、競争的資金への申請・採択状況を基盤的資金の配分条件とすべき。

その他

○ 大学における基礎研究に対する配分を多くし、研究を活発化できることが望ましい。

○ 全国共同利用施設等の充実、21世紀COEプログラム終了後の研究教育拠点の継続的育成、我が国が締約する国連条約に対する貢献という視点も加えた当該組織に対する財政支援策の確立が急務。

◎ 多額の研究費を得た者と、得ない者の差が少しずつ目立ち始めている。この傾向の一部は活性化にも繋がっているため、すぐに方策を考えるより少し様子を見るべきだ。

基盤的経費

○ 基盤的資金には、知的資産を維持・伝承し、人を育てるという国としての基礎的な経費が入っていて、研究費分は少ない。基礎研究を推進する経費の確保が必要。

○ 基盤的資金は、法人化前から著しく不足。支援職員の人件費、庁費の増大等により、基盤的資金の大半は費消されてしまい、教育と研究に振り向けられる分は極端に減少している。

○ 基盤的経費の不足が教育に必要な経費の支弁に深刻な影響を与えており、大学院教育の高度化が喫緊の課題となっている現在、そのための経費が極端に乏しいことは、将来の学術研究を担う人材の養成にとって致命的。

○ 法人化後、各研究単位で実際に使用できる「基盤的経費」が減少して、外部経費が獲得できなければ、支障が出ているという声が聞かれる。研究者育成を目的とする大学院生の教育に支障が出ないような観点からも、基盤的経費を考える必要がある。競争的資金の増額だけでなく、基盤的経費の増額が必要。

○ 大学共同利用機関の共同利用研究をサポートするには、競争的資金よりも運営費交付金の一層の充実が必要。

特別教育研究経費

○ 運営費交付金1パーセント減の緩和が困難な場合、特別教育研究経費の基盤経費への取り組み策を積極的に提示してほしい。

○ 特別教育研究経費の申請順位が学長サイドで決定されるため、研究センターなどの小部局要求が取り上げられにくい状況。

○ 学術研究推進の視点から、特別教育研究経費の審査方法を確立すると共に、各大学が付けた要求順位に拘らない評価も加える必要。

競争的資金

○ 競争的資金が増額されていることは実感。しかし、大型予算は研究者間の透明性ある審査に基づいて決められているとはいい難い面もあり、一般の研究者にはわからないところで決められていると受け止められている。今後公明性、真の競争的環境作りを図る必要。

○ 競争的資金が応用・産業指向に振れすぎ、長期的な研究資金への配分が少なくなっている。基礎分野重視への展開が必要。

科学研究費補助金

○ 科学研究費補助金(基盤研究)などは必ずしも十分とはいえない。

○ 科学研究費補助金を増額すべき。

○ 科学研究費補助金の特定領域研究は、学問分野の進展に対応するシステムとしてトップダウンとボトムアップを巧みに組み合わせた日本独自の優れた制度。悪しき事例もあったが、チェック機能は働いている。

○ 科学研究費補助金の特定領域研究では、影響力の大きい研究者の領域の研究分野からなかなか抜けにくいため、研究者の中には、影響力の大きい研究者から独立して十分能力が発揮できないとの話を聞く。

○ 科学研究費補助金は、他の研究費配分システムよりもはるかに巨大なシステムとなっている。巨大システムには、改善だと思ってやったことが思わぬところに影響を及ぼして全体を改悪してしまう危険が付きまとうので、個々人の経験や分野の特殊事情を全体システムに外挿するような議論は危険であり、全体を見た検討が必要。

○ 大型科学研究費補助金でポスドクが雇用できるようになったのはありがたい。研究は格段にやりやすくなった。特に大学附置研究所にとっては革命的。

○ 例えば、科学研究費補助金の基盤Cあるいは基盤Bの採択率を60パーセント程度に引き上げ、しっかり研究しているものにはほぼ定常的に競争的資金が行き渡るようにするなど、基盤的研究領域を継続的に支援する仕組を作り出す必要。

○ 特別推進研究や特定領域研究の採択率を現在の10パーセントからせめて20パーセントにまで高めた方が、科学技術全体の発展がより健康的になり、活性化される。

○ 「JSTさきがけ型」の科学研究費補助金による若手育成支援策が必要。

○ 間接経費は使いやすい資金として重宝。

プロジェクト終了後のフォローアップ

○ 科学研究費補助金等、競争的資金により時限付きで推進されているプロジェクトで顕著な成果を挙げたものへの継続的支援の必要性を感じている。真に継続して支援する必要のあるプロジェクトについては、特別教育研究経費(運営費交付金)により支援する方向で検討できないか。

○ 21世紀COEは優れた研究・教育拠点を選び、国としてその応援を措置している。それらの拠点が数年で終わってしまうのではなく、きちんとした形の更なる発展をするように措置をする必要。

○ 21世紀COE後の文部科学省取り組みの基本方針が必要。

○ 21世紀COEが終了すると大学の支援もなくなると予想され、将来が大いに不安。

○ 長期支援として、下のようなものが必要。
  200万円×(4年+4年) → オリジナル研究養成
  2000万円×(4年+4年) → 持続的COE

○ 世界最先端研究や発展性のある特定領域研究、基盤的研究の継続的、恒常的支援方策が必要。

2.研究環境

老朽化・狭隘化

○ 狭隘・老朽の問題が積み残しのまま。法人化後に国としてどのように対処するのか見えない。

○ 国立大学施設は欧米に比して見劣りがする。

○ 老朽化対策での改修計画に現場の希望を十分に聞いた上で、改修と立て替えの予算面での優劣、往復引っ越しなどでの研究時間のロスによる研究の遅れ、ダブル引っ越し費用などを総合的に判断した上で実施すべき。

○ 競争的資金が増額されるなどで大型、中型の装置が購入されても研究スペースの確保が厳しい状況。狭わい化の是正、建物建設の促進、スペースの拡充が必要。

○ 狭隘化、老朽化対策を早急に。実験系研究室の基準面積を現状の少なくとも2倍は確保すべき。そうしないと、依然として研究者が実験台のそばでデスク仕事をしなければならない危険な状況は改善されない。ドラフトを1人1台設置するスペースも確保できない。

○ 運営費交付金の削減や他目的への充当により、窓枠改修等の小規模老朽化対策が一層後回しになってきた。

○ 内外共同研究、大学院(博士課程学生)研究、研究支援スタッフのスペースが貧弱。

○ 研究スペースが狭隘。大学院学生の研究のためのスペースが狭い。

○ 理工系大学院の学生あたりのスペースの基準をより広くすることが望まれる。

○ 外部資金等の研究費の獲得につとめ、研究用スペースの借用を図るよう努力。

施設・設備

○ 新しく整備するものについては、より精神文化の香り豊かなものとする努力が必要。

○ 大型施設(中性子散乱、軌道放射、スーパーコンピュータ、超強磁場など)の維持・発展に関する先行きが見えない。

○ 研究施設の整備や改善にあたっては、時限的なプロジェクト研究の増加に対応して、組織・専門分野の枠を超えた学内共同研究スペースを大学が設置し、プロジェクトを学内から公募するという基本方針をとるべき。

○ 大学の研究所としての基本的な装置の配備およびその維持に対する基本的施策が、法人化を契機に弱くなった。

○ 法人化に備え、昨年度末に必要最小限の研究環境整備が施され、今年度になってからは積み残しの安全対策、高圧ボンベ設置場所、薬品管理システムの導入などの導入が実施されており進展。特に全学レベルでの薬品管理システムの導入は歓迎。

◎ 安全に配慮したメンテナンスが行われ始めている。

○ 実験室でのスタッフ、学生らの研究環境は完備には程遠く、ドラフトの一人一台導入の実現が望まれる。

○ 施設・設備の更新に際しては、費用対効果を慎重に吟味し、順位付けをして行うのがよい。

○ 最も活発に研究を実施している40才代の研究者が必要とする中・大型の機器・備品は、中規模の研究費では購入や維持が困難。

維持管理

○ メンテナンスが将来厳しくなる。運営費交付金で充填する必要。

○ 大学の施設における基盤的な設備の整備および改善・メンテナンスする施策が必要。メンテナンスに十分配慮すべき。

○ 大型、中型装置の維持などの継続的経費が措置されていない。

○ 保守費が不十分なため、本体装置が活用されていない例が多い。

○ メンテナンスは人の問題も重要。施設・設備を知り尽くした専門職員が減少している。外注で賄うことは将来大きな事故につながるのではないかと懸念。

○ 装置の維持における研究支援者の確保が毎年困難になってきている。(所属機関における)研究支援者の定員減の停止が必要。

共同利用

○ 装置や機器の有効利用という観点から「共同利用」の役割を強化することが必要。特に、大学共同利用機関、全国共同利用の附置研究所等は、全国共有の施設であり、より一層その役割を果たせる様にしていく必要。

○ 現在、汎用性のある大型装置に係る産業界を含めた共用化システムについて検討されていると聞くが、大学共同利用機関等が設置する大型装置の特性を踏まえれば、過度の共用化は本来の研究目的の障害となるため、一概に議論することについては慎重を期すべき。

○ 全国共同利用施設等に関しては、このまま推移すると、全国共同利用という重要任務の遂行に支障を来たす恐れが強く、施設・設備の整備・改善やメンテナンス、特殊技能等を持った非常勤職員等も視野に入れ、文部科学省として別途手当が必要。

研究支援者

○ 技術者が不足。

○ 新しい科学技術を根本的に生み出すには優れた技官(技術系職員)が必要。その数が減りつつあることは、憂慮すべき。

○ 装置の維持における研究支援者の確保が毎年困難になってきている。

○ 研究支援者(研究支援の事務専門職、技術職員)の充実は、研究活動を活性化する上で、不可欠なことである。内部の人材として確保することが必要な業務と業務委託が可能なものとの識別が必要である。

○ 支援職員の専門性が乏しく、数が少ない。特に事務職員の支援能力向上が必要。

○ 研究者は既に国際化に十分対応できる実力があるが、予算当局者の国際化が大変遅れている。

○ 研究者の雑用を少なくする事務体制が必要。研究者と事務という二極体制ではなく、その間に専門家集団(技官も含む)からなる事務部をおき、研究者・専門事務部・通常事務部の三極体制の導入を要望。専門的な内容になると現在の事務部ではまったく対応できないため、全て研究者が対応しており、研究時間が大幅に減っており、このままいけば研究の衰退をもたらすと危惧。特に法人化後は多くのデータが要求されるなど対応に追われている。企業退職者などの専門家を雇用するなどが具体策として考えられる。現在の事務部の整理も必要。

○ 直接的研究費の競争的資金割合を高め、その分軽減される基盤的資金によって研究支援スタッフの大幅な拡充を図るべき。

○ 臨時雇用のできる研究費が必要。

3.大規模プロジェクト・共同研究

○ 大学共同利用によるビッグ・サイエンスは有効に機能している。

○ 大学共同利用機関は、共同利用研究の厳格な査定により、既に十分な競争的環境。

○ 大学共同利用機関はいわば小さなファンディングエージェンシーとしてユニークな役割を担っており、学術研究の効率化の観点からも大学共同利用を一層推進すべき。

○ 大学共同利用機関の再編・統合は、自然、人文、社会科学を融合した「新しい知」の構築の可能性を予感させるもの。機構としての連携事業に大いに期待。また、学術研究推進部会においても、4機構の研究連携の進捗状況を把握しつつ、学術研究全体を見据えて必要な提言をしていくべき。

○ 天文、加速器、核融合など基礎研究のビッグサイエンスに係る経費は最近はむしろ減少傾向。また、宇宙科学研究所のように、従来基礎研究として整理されていたものが学術研究の中で議論されなくなり、経費の削減が進められていることは、極めて憂慮すべき事態。国際協力等によるコストシェアを十分に考えたうえ、我が国の独自性を発揮し、世界との競争を行っているこれら先端大型基礎研究の推進方策についても検討すべき。

○ 高い目標を狙う共同研究が必要。現状では自前の装置に合わせた研究にとどまっているのが、日本の研究レベルを下げている。

○ 税金の有効活用を図るため、国連大学、国際研究機関、他省庁所管の関連研究機関等と連携した研究教育の推進策についても検討する必要。

○ 分野によっては、機関間連携等、大学の枠を超えたネットワークを形成し、推進すべきものもあり、これらについても継続的に支援する方策を検討すべき。

○ 新しい分野の学際的研究を支援し、若手研究者を育成するために、大学を含めた横断的研究推進を進める必要。大学が参加しやすい基礎的研究プロジェクトの新設、支援が望まれる。

○ 将来を俯瞰した学術研究の推進方策の下に、全国共同利用の大学附置研究所・研究センターの設置目的や活動状況等に見合った再編整備(共同利用機関等への統合も視野に入れて)方策について検討する必要があるのではないか。

○ 中型大型施設を用いる研究活動に関しては、当該分野の研究者の全国的な連携を踏まえた広範な議論によって将来戦略が立てられるが、その受け皿である全国共同利用の附置研究所の存立根拠が省令ではなく、各大学の中期目標・中期計画に依拠することになるのは、長期的に見て学術システムの縦糸(大学組織)と横糸(研究者の全国的・国際的ネットワーク)のバランスを崩すことにならないかと危惧。

共同利用に移動

○ 最新設備の共同利用がパフォーマンスをあげる。共同利用センターに人が集まる体制作り(生活も含め)が必要。

○ 共同利用施設・設備の更新が困難。

○ 研究活動に比してマンパワーが恒常的に不足している。運営費交付金は逓減するのでマンパワーを増やすことは不可能であり、多くの外国研究機関との間で共同研究を一層推進し、外国研究機関からマンパワー・研究経費を供給するようにすることが唯一の道か。

○ 法人化後の国内共同研究・国際共同研究と予算の在り方に関する検討が必要。

4.人材

○ 研究者の評価・実績を通じて、研究専念、教育専念、運営専念といった専念すべき職種に時限的にでも分けることができないか。それに応じて年齢別・性別・国籍別等の研究ワークシェアリングを進め、若手・女性・外国人研究者の雇用機会を拡大すべき。

○ 中堅研究者(テニュア)が会議・打合せ屋になっている。

若手研究者

○ ポスドクの概念が未だ曖昧で、状況によって恣意的な扱いがなされている。

○ 任期付研究者(PDを含め)が日本の研究現場を支えている。彼らのテニュアトラックが日本では不明確。

○ 「ポスドク1万人計画」の評価と反省に立って、研究者のキャリアパスの制度設計を再検討すべき。

○ ポスドク制度はできたが、就職する場の代謝がポスドク制度と連携していない。また、ポスドク継続がかえって次期の就職先に支障をきたしている。

○ ポスドクの就職先が限られ、研究の継続が困難な状況。

○ 博士課程の教育と産業ニーズのミスマッチを解消すべき。

○ 博士課程学生、ポストドクターおよびポスト・ポストドクターの産官一体となった就職も含めた有効活用の在り方について検討が必要。

○ 大学院生やポスドクの育成や、彼らに対する就職支援を計画的に推進する方策について早急に検討する必要。

○ ポスドク受け入れ時に宿舎確保などで受け入れ研究者が大変な苦労を強いられる。数年間毎年20億円くらいずつ予算をつけて、毎年1000部屋くらいの宿舎を全国の大学に設置することを要望。

○ 若年人口減少や定年延長から、特に若手研究者の雇用機会が狭められる恐れがある。

○ 良い成果をあげたポスドクから助手を経ないで助教授になる経路を拡充すべき。優れた助教授を独立させる制度が普及すべき。また、独立した助教授のポジションを新設・増加・拡充するべき。

○ 40才前後の働き盛りの研究者が、影響力の大きい研究者から独立して研究するための支援策が必要。具体的には、科学研究費補助金のうち、基盤Aクラス、数年前の特定領域Bクラスの支援を増やすべき。

○ 35歳以上の持続雇用に不安定性があり、少子化、男女格差を助長している。教授、助教授の他に研究員、主任研究員を雇用する必要。

○ 独創的な研究者を育てるために、大学院生には競争的資金とは別枠で大学院生人数あたりの基盤研究費を交付して、学生を支援する制度確立が必要。

○ 大学院生(博士課程)の経済支援の強化が必要。

○ 外部の研究費から、大学院博士課程の学生に対する研究に対する支援(授業料、手当て)をより柔軟に支払えるよう経費支出手続の改正が望まれる。

流動性

○ 国内の研究職全体のレベルアップがポスドクの就職範囲を広げ問題解決につながるので、大学院卒業後は卒業大学以外の全国レベルの研究室でポスドクとして研究するような制度をとるべき。

○ 助手・講師レベルの任期制度導入を早急に進めるべき。

○ 55~60歳以降の研究者に任期制度を導入し、若手研究者の雇用機会を拡大すべき。

○ 全機関で任期付雇用とし、流動性を上げることが必要。

○ 今年度から新たに採用する教員人事には任期制を導入。教授は10年(再任可)、助教授・助手は7年(1回のみ再任可)。研究の活性化が主な目的。

○ 研究者も年齢に応じて家族に対する責任を負っており、競争的環境の名のもとに研究者(特に30代)をいつまでも不安定な身分においておくことは、極めて非生産的。研究者にとって、人生設計が可能となるようなシステムが必要。

○ 民間企業への流動性(交流)が必要。

○ 大学等(研究者)、産業・企業及び行政府との円滑な人事交流の条件整備が必要。

○ (所属機関において)数年間でもよいが、大学と共同利用研究機関との人事交流のような方策をとること必要。

○ 研究者の採用に当たっては、他研究機関等での勤務経験を重視。

女性

○ 女性・外国人の活用という観点よりも、市民としての基本的人権の同位性の認知が必要。学術研究という枠を超えた社会インフラの整備が必要。

○ 女性教員の採用を増やしたいが、人材不足。博士課程進学などを勧めることと、大学内に保育園を設置するなど、支援体制を充実することが先決。男女共同参画はいくら標語を並べても効果はなく、「保育園充実」が最も実効的施策。

外国人研究者・留学生

○ 海外の中堅研究者が魅力を感じるような支援システム(英語学校等)を作ることが必要。

○ 中国などから優秀なポスドクを受け入れることは我が国の研究発展に重要であり、国策として取り組むべき。

○ 留学生を受け入れても、研究する環境に乏しい。留学生は共同研究者として積極的に受け入れる施設の整備、充実が緊要。

5. 国立大学法人化後の状況

改善点

○ 大学が国民の税金によって運営されていることや、それに対する説明責任を果たす義務があることの自覚が高まりつつある。

○ 費目制限が緩和され、より有効に使えるようになった。

○ 効率化のインセンティブが少しずつ出てきた。

○ 特徴ある施策を提案、実行することにより発展できる気運が芽生えてきている。

◎ 競争的資金や奨学寄附金等の獲得など研究費の取得や、特許の取得等などに対する教職員の関心と意欲が高まってきた。

○ 光熱水道費などの節約やスペースの効率的利用、研究組織の設置目的などについて、教職員や学生が強く意識するようになった。

○ 法人化後は特に良い人材確保を最優先課題として、全体の将来構想もにらみつつ人事を進めている。

○ 競争的環境が増してきている。一方では斬新な施策が評価されるという期待感も生まれてきている。しかし、法人化の効率化重視の理念を中心として日本の科学技術全般の在り方を決めてよいのか不安も感じられる。

○ 法人への移行をスムーズに進めるために、多くの点でこれまでのやり方を継続している。徐々に改善されていくと思われるが、職員全体として意識改革が必要である。もう少し時間が必要。

○ 法人としての自由度は増えたが、教職員の意識改革の遅れに新しい任務も加わって、混乱が続いている。

◎ 法人化後あまり時間が経っていないので法人化前後の差について論じることは困難。

新たな論点

効率化係数関係

○ 17年度から実施される運営費交付金の1パーセント減が実体として感じられるようになり、基盤経費および人件費の減が深刻な問題として浮上。

○ 毎年1パーセントの効率化係数がかかり、研究費への削減圧力が強まった。

○ 運営費交付金1パーセントカットの影響は各研究室への基盤校費の大幅減をもたらした。光熱費他の共通経費を引いた改配分額の基準額は1研究室あたり100万円余。研究費どころか、秘書を雇用することは不可能となった。さらに初年度は薬品管理システムの導入などに余分の予算が必要になり、基盤校費を研究費に使える状況ではなくなった。

○ 毎年運営費交付金が1パーセントずつカットされれば、光熱水費すらまかなえなくなると予想される。

○ 基盤経費が毎年1パーセント減少していくことを考えると発展ある将来計画を立てづらい状況。出来る限り早期に運営費交付金の1パーセント減を緩和して研究現場に元気を与えてほしい。

○ 今後、各大学内の定員減政策の継続により研究の基盤である助手層が減少していけば、これまでの取り組みが根底から崩れてしまうことが危惧される。定員減に繋がる運営費交付金の1パーセント減少政策の緩和・変更、あるいは他の対案の早急な提示の可能性が必要。

○ 法人化以後、基盤的経費の削減以上に大学本部の留め置き分が増え、各部局の運営が苦しくなっている。

○ 「学長リーダーシップ」のための「裁量経費」が増大する分、基盤的経費はどんどん減っている。

○ 1法人化に伴う固定費増、2学長の裁量によるトップダウン型研究費への移行、3積み残していた環境整備を学長主導で行うことにより、一教員当たりの校費が減っている(大学により大きな差)。

○ 運営費交付金から支出される基盤的資金の削減により、競争的資金等の得にくい基礎研究や大学院生・ポスドクの発想に基づく自由な研究の推進が困難になりつつある。

○ シーリングにより新企画がしにくくなっている。

○ 特別教育研究経費や他の大型予算、基盤経費等の大学予算の在り方について検討が必要。

○ 大学が「金がすべての世界」に陥りつつある。その結果、本来の使命である国や人類の将来を考究すると共に、それを担う次世代の人材を育成するという視点を忘れつつある。

労働安全衛生法関係

◎ 少しずつではあるが、研究環境の安全についての意識が向上してきている。

○ 労働安全衛生法の適用に伴って各種の対応が必要となっているが、それを担保する人的・予算的基盤が見えない。

○ 法人化により安全衛生上の規制が厳しくなったが、対応する余裕がない。

○ 労働安全衛生法との関連で、常勤の産業医の雇用や各種資格を持った人材の採用等が必要となったが、人件費の算定が移行前を前提にして行われたことから、これら専門職的職員を資格にふさわしい給与で採用することが難しい。

人事関係

◎ 法人化に伴い研究者の雇用も民法に基づくことになったが、任期制と基本的に相容れない点が顕在化している。任期を付すとすれば5年以下(再任1回限り)、そうでなければ任期を付さないポスト、という両極端の選択しか許されなくなった。

○ (所属機関において)業務内容の点検・評価に基づかない、一律的な教員・支援職員の削減が近々実施されようとしている。

○ 大学の実務的運営の多くを非常勤職員に頼っており、常勤事務職員よりも業務ノウハウを蓄えた非常勤職員は増加しているが、法人化に伴い非常勤職員の継続雇用に制限がつくようになったことは極めて影響の大きい問題。

その他

○ 大学運営に関し、トップダウンでものごとが決まる傾向が強くなりつつある。

○ 監査が監督官庁による監査、監査法人による監査、大学の自主監査と何重にもなり、研究教育の現場にとっては非効率。

○ 法人化により大学自身が新たな規則などを数多く作ったため、以前よりも制約が多くなった。人件費の使い方など、一見法人の自由度が増えたようにも見えるが、法人が新たに規則を作り、以前よりかえって使いにくくなった面も否めない。

○ 国立大学は、私立大学における研究経費投入の格差を踏まえつつ、国立大学の独自性を発揮すべき。

6.研究評価・公開

○ 学術研究の評価の在り方について、特に基礎的研究については、その長期性、萌芽性、多様性に配慮した評価はどのようにしたら可能か検討すべき。

○ 研究活動支援と並んで大切なのは、研究成果を発表する健全なフォーラムの維持発展への支援。外国の学術誌に登校することを妨げるものではないが、わが国の研究者が主体性を持って国際発信するためのきちんとしたルートも必要であり、各学会当における努力に対して適切な支援が必要。

○ 電子化が急速に進む中での将来の学術研究成果発表のあり方、ピア・レビューの功罪について、分野間の違いも視野に入れた調査研究が必要。

人文・社会科学分野

○ 特別の情報機器、海外調査旅費等を除けば、直接的な研究費自体が比較的少額で、基盤的資金でおおむねカバーされる傾向にあるため、概して研究資金の著しい不足を指摘する傾向にはないが、間接的な経費、特に資料の収集・整理、情報処理、研究成果の翻訳等に携わる研究支援者等の雇用経費までを研究費に含めると不十分。

○ 直接的研究費が概ね基盤的資金でカバーされるのは一見望ましいが、そのため科学研究費補助金等の外部競争的資金への申請状況が良好でないというモラルハザードが生じている。外部競争的資金への申請を通じ、外部への説明責任を果たしつつ、外部評価の機会に晒される経験が研究の発展に極めて重要な意味を持つことを研究者は自覚すべき。

○ 基盤的経費の減少による弊害として、人文社会系では、特に図書館の体系的整備の面で極端な衰微が目立つ。人文社会科学にとって、代表的な文献を体系的に収集した図書館は、天文学にとっての望遠鏡にも匹敵する必須のツール。なお、競争的資金で購入する文献は当該プロジェクトに必要なものに限られ、競争的資金の拡大によって、図書館の体系的整備は図れない。

○ 図書館の整備にあたっては、全国の拠点大学に分野別の集中整備を図り、全国共同利用の体制を整備すべき。

○ 法律学では、法科大学院の設置に伴い、全体として研究が手薄になることが懸念される。人員、教育補助体制などの支援の充実が必要。

○ 法科大学院は、その理念上、教育に多くの時間をとられることとなるため、研究の時間を十分とることが困難。法科大学院に所属する教員であっても、研究に時間がとれるようなシステムにすることが今後の法律学発展には不可欠。

○ 法科大学院創設に伴って、研究者養成大学院を廃止したところもあり、法律学の研究者養成の担保が課題。

○ 人文・社会系にもプロジェクト・マネージャーの育成が必要。

○ 今後緊急に求められるのは、若手研究者の育成。人文学の研究を継承し発展させるためにも、大学共同利用機関は、さらに全国の大学から受け入れ態勢を積極的に整えるべき。若手研究者のための宿泊施設、夜間の利用、共用室など。

○ 研究の発展には、裾野としての研究者人口が多くなければならない。ただ、基礎的な人文学では、若手研究者のポストが減少し、研究を維持していくのが困難になりつつあり、優秀な若手研究者が人文学から離れていく減少が生じている。留学生を含め、若手研究者が研究を継続できる研究費支援を講じていく必要。

自然科学分野

○ 理工系の国際的レベルは高い。

○ 装置の数で言えば日本は世界のトップだが、成果が見合っていない。コストパフォーマンスが低い。

○ 情報学の研究は機器も必要だが、ソフトウエアの開拓などには大勢の若手研究者(大学院生を含む)が必要。

○ 情報科学技術の分野で人材育成の大幅増と共に、長期的、戦略的支援が必要。

○ 科学研究費補助金特定領域では情報系の大きな枠が少ない。実験系の分野に比較して投資効果が高いのだから、もう少し資金導入があるべき。また、情報系分野の代表者(特に若手)がもう少し審査員に入ってよいのではないか。

○ 情報系分野は設備より人件費の比率が大きな分野であるから、設備はそれほど問題ではないが、大学における情報系定員が欧米比率で1/10程度しかない。高校までの科目も殆どない(情報というとコンピュータリテラシか、コンピュータハードのことで、それ以外のソフトウエア理論(意味論や、プログラムの正当性の検証など)や計算理論が忘れ去られている)。

○ 情報系分野は設備より人件費の比率が大きな分野であるから、設備はそれほど問題ではないが、大学における情報系定員が欧米比率で1/10程度しかない。高校までの科目も殆どない(情報というとコンピュータリテラシか、コンピュータハードのことで、それ以外のソフトウエア理論(意味論や、プログラムの正当性の検証など)や計算理論が忘れ去られている)。

○ 大学における「原子力関係」分野では、施設・設備の老朽化と、維持に必要な経費の不足が見られる。個々の大学の枠にとらわれず、全体として必要な施設・設備の検討、共同で使用する枠組み、原研とサイクル機構の統合でできる新法人の役割と、大学の役割等の明確化が必要。

文理融合分野

○ 認知科学は未だ文部科学省の政策として明確に取り上げられたことはなく、基盤的資金、競争的資金についてもまとまった施策は講じられていない。国公私を問わない競争的資金による認知科学及びその応用の研究充実、ならびに国の施策による国家プロジェクトの推進が必要。

○ 光トポグラフィ等の施設整備はある程度進みつつあるが、認知科学研究者が広く使用できる計測器機等の整備はこれからの課題。

○ 認知科学は、比較的若手、中堅の研究者が国際的に活躍している。女性も多く活躍している。ただし、個別に活躍している研究者が多く、組織的な研究活動はこれからの課題。

○ 国際的に分布している研究組織をネットワーク化して知財権等の支援も行うネットワーク型研究支援体制の構築が必要。

○ 若手・中堅の研究者が国際的に活躍している分野について目を向けていくことが重要。わが国に新しい研究組織や支援体制の受け皿がないことと外国では新しい分野の強化を図っていることとがあいまって、外国で研究を続ける若手・中堅の研究者がいることについて検討する必要がある。

◎ 1次産業をターゲットにした研究が少なくなってきている。農業分野に農業分野が欲するハイテクの導入が望まれている。

その他

○ 先端的・独創的研究を生かすことによってのみ、我が国の学術研究のレベルを持続的に高めることができることを認識することが大切。

○ 学術研究とは何かという議論をライブにやってほしい。特に人文社会系の自信のなさは残念。

○ 基礎科学(学術)に関する限り、研究分野をトップダウンでいじることは多くの場合近視眼的になり害のほうが大きい。自由な発想に基づく研究を担保するような大枠の仕組みだけを堅持して、自由な発展に任せるのが健全なあり方と信ずる。

○ 研究分野の将来の方向性をきくようなアンケートの設問自体に問題があり、研究者の好奇心に答えるファンディングシステムがあれば十分。

○ 研究予算の配分方式や評価の議論は大切だが、思いつきや対症療法で制度をいじくり回さないことが大切。

○ 各分野で多くの研究者が議論した上で分野ごとの意見をまとめることが望ましい。これらの意見を比較検討することにより、各研究分野の活発度、将来性、重要性等が自ずから見えてくるはずである。科学官にアドバイザリーパネルを作らせ、各分野でワークショップ等を開催させて意見集約をはかることも考えられる。学術分科会等は、それらの意見集約結果を相互に参照して学術分野全体の今後について効果的な議論をすることができる。多くの意見を聞くことにより、最高の知恵を見つけることができる。また、各コミュニティが将来の学術方針の決定に関与することでコミュニティが納得できる方針を決めることが可能になる。

○ 専門分野の深化は期待できるものの、全体を見通した観点での施策が欠如しているという危惧を抱いている。

○ 競争的資金により研究教育機関の設置形態を問わずに研究インセンティブの向上が図られていることは高く評価できるが、政策の有効性を左右するのは、研究に専念できる人材・時間が実際どの程度あるかであって、大学(特に私立大学)には、教育・行政負担の大きさが鍵。大学としての見識・政策が問われているが、学術振興行政の観点からも関心を持ってほしい。

○ 法人化後の学長は外部資金確保に力を入れることになり、結果として学術研究が弱くなってしまうことが心配。学長(理事長)に対し、大学経営とは何かのレクチャーをすれば、学術研究の重要性を再認識することになるのではないか。

○ 学術制度の議論において「欧米では」という枕詞は禁句にしたい。

○ 総合科学技術会議から出された「競争的研究資金制度改革について(意見)」は、わが国の学術研究のレベルをより高度にすることを願っての提言であると理解するが、その記述の中には現状に対する認識や基本的考え方に首を傾げざるを得ない点が少なくない。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)