資料4‐1 第3期科学技術基本計画に盛り込まれるべき学術研究の推進方策について (意見のまとめ)(案)

学術分科会
学術研究推進部会(第6回)
平成17年1月11日

平成17年1月 日
科学技術・学術審議会学術分科会
<学術研究推進部会案>

 学術研究は、研究者の自由な発想に基づき、新しい法則・原理の発見、独創的な理論の構築、未知の現象の予測・発見などを目指すものであり、人類の知的資産の拡充に貢献し、世界最高水準の研究成果や経済を支える革新的技術などのブレークスルーをもたらすものである。
  このような学術研究は、国家的・社会的課題に対応した研究開発推進の基盤をもなすものであり、両者は、いわば車の両輪としての重要性を持つ。積極的な投資が短期的に大きな成果を挙げる分野もあり、速やかな対応が必要とされる国家的・社会的課題に対応した分野に重点的に投資していくことも重要であるが、中長期的な観点から幅広い分野に研究費を十分確保することが、新たな発展のための知のフロンティアを拡大し、偶発的な事態に即応できる知のセーフティーネットを構築する意味においても極めて重要である。このような学術研究から生み出される新たな知識や知恵が世界に向けて常に発信されていることによって、世界に貢献する国としての地位を確立することができる。したがって、第3期科学技術基本計画においては、大学等(大学及び大学共同利用機関)において基礎から開発・応用まで幅広く行われている学術研究への研究費配分の重要性が明確に位置付けられることが必要である。
 また、独創的・先端的で多様性に富んだ研究は、日常的に研究活動を行う中から偶発的に生まれることも多い。大学等は、独立行政法人研究機関等とは異なり、教育と研究が一体に行われる独自の場であり、世界的な活躍が期待される研究者の養成や次世代の最先端分野の醸成が日々行われている。大学等における学術研究活動に対する資源配分の在り方は科学技術基本計画の成否をも左右する重要性を持つ。
 
 科学技術・学術審議会学術分科会及び同分科会学術研究推進部会では、平成13年7月24日の「学術研究の重要性について」(学術分科会見解)、平成16年6月30日の「これからの学術研究の推進に向けて」(学術分科会基本問題特別委員会報告)等や様々な審議を通じて学術研究の推進の必要性を繰り返し提言してきたところであるが、第3期科学技術基本計画において学術研究の推進の重要性を明確化し、大学等に対する研究費の配分を抜本的に拡充する必要があるとの立場から、以下の事項が盛り込まれるべきであると考える。

 第3期科学技術基本計画の策定に当たっては、平成16年10月から科学技術・学術審議会基本計画特別委員会において調査検討がなされ、同年12月には総合科学技術会議基本政策専門調査会での調査・検討も開始されたところである。
  本分科会としては、これらの場において、本分科会の意見が適切に反映されることを期待する。

 物的資源に乏しい我が国において、独創的・先端的な学術研究活動により知を創造し、重厚な知的基盤を構築していくことは国家存立の基本である。
 我が国の研究開発における国際競争力をさらに強化し、我が国が持続的な発展を遂げるためには、既成の学問構造にとらわれずに独創的・先端的な研究が次々と生み出され、多様性に富んだ豊かな研究ストックが常に存在する、ダイナミックな研究環境の構築が不可欠である。また、そのような研究環境においては、国際的な協力と競争が活発に繰り広げられることが必要である。
 そのためには、知的基盤としての学術研究に対する十分な研究費の配分を確保し、多くの萌芽的な研究が、発展していくようなファンディングシステムの構築、国際競争力のある優れた研究拠点の整備、学際・融合領域の推進、主体性のある国際活動の展開、学術研究の推進を支える基盤の充実が必要である。

1.多様性に富んだ知的基盤としての学術研究への十分な研究費の確保

○ 学術とは、科学や技術のみならず、文化や芸術をも対象とする、人類の幸福に資するための知の体系であり、国の知的・文化的基盤であるとともに、中長期的な視点から人類共通の知的資産を築くものである。
 このような学術研究への継続的な研究費の確保は、知を基盤とする国の実現の基本であり、一層推進する。

2.多様性に富んだ研究を生み出すファンディングシステムの構築

(1)大学等への研究開発投資の拡充

○ 世界最高水準の研究を実現していくためには、まず大学等そのものの国際競争力を高めることが必要であり、競争の基礎的な条件を等しくする観点から、第3期科学技術基本計画の期間中に高等教育に対する公財政支出を欧米諸国並みに近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある。

○ 大学等においては、高度な人材養成や競争的資金の獲得にいたるまでの揺籃期にある研究など、日常的な教育研究活動を支える基盤的経費と、優れたものを優先的・重点的に助成するための競争的資金との二本立て(デュアルサポートシステム)によって研究体制が構築されることが必要である。
このため、国立大学法人・大学共同利用機関法人に関しては運営費交付金を確実に措置するとともに、私立大学に関しては私学助成の充実を図る。

○ 大学等が自ら財政基盤の強化を図ることができるよう、大学等に対する寄付金控除額を米国並に高めることを目指す。

(2)競争的資金の拡充

○ 創造的で質の高い研究活動を創出するためには、研究機関の内外で競争原理が働き、研究者の能力が最大限に発揮されるシステムの構築が不可欠であり、このようなシステムの根幹をなす競争的資金についてはその効率的な運用を図りつつ、引き続き拡充する必要がある。特に、間接経費は大学等における研究機能の向上に資するものであり、引き続き着実に拡充する必要がある。

○ 研究分野や研究の段階等に応じて多様な競争的資金制度の中から研究者が最適な制度を自ら選択できる環境の整備、公正で透明性の高い評価システムの確立、プログラムオフィサー(PO)やプログラムディレクター(PD)の配置や配分機関の体制整備等による競争的資金のマネジメントの強化などの制度改革に積極的に取り組む必要がある。

○ 競争的資金のうち、科学研究費補助金は、研究者の自由な発想に基づく研究を支える基幹的な研究経費であり、年齢を問わず、少額の萌芽的な研究から大規模な研究チームによるプロジェクトまで、様々な段階・規模の研究を支え、競争的資金の中核をなしている。このような科学研究費補助金がより多くの優れた研究に配分されることは、研究の多様性を確保する上で欠くことができない。
 科学研究費補助金については、第2期科学技術基本計画中の数値目標を確実に達成するため、第3期科学技術基本計画の期間中に平成12年度予算額の倍増を目指す。また、間接経費を必要とするすべての研究種目に間接経費を配分することを目指す。
 その際、これを実施するため、科学研究費補助金の審査・評価体制の一層の効率化・透明性の確保のため、審査・評価体制の将来像及びその実現のための年次計画を策定するとともに、科学研究費補助金総額のうち一定割合を事務体制の抜本的強化のため確保できるよう措置し、十分な数の審査員の確保や業務の電子化を進める。

○ 競争的資金により実施された研究成果の公開を促進するため、各研究者が研究成果を公開できるようなインターネット上のポータルサイトや研究成果の検索サイトの構築が必要である。

3.国際競争力のある優れた研究拠点の整備

○ 国際競争力のある大学づくりを推進し、世界に伍する教育研究を積極的に展開するため、高度な学術研究の中で、創造性・柔軟性豊かな質の高い研究者の養成が期待される卓越した教育研究拠点に対する重点支援を一層強力に推進することが重要である。
 このような観点から、現在、国公私立大学を通じて、世界的な拠点形成を重点支援する「21世紀COEプログラム」が展開されているが、本プログラムの今後のあり方、具体的には平成19年度以降のいわゆる「ポストCOE」の計画を検討し、より充実・発展した形で具体化していく必要がある。

○ 国際競争力のある優れた研究拠点としてさらに発展させるため、大学や大学共同利用機関において、機動的に中・大型プロジェクトを実施できるような仕組みについて検討する。

○ 大学共同利用機関や大学の全国共同利用の附置研究所等は、大学等の研究者による共同利用を前提とした組織であり、このような大学共同利用機関、大学附置研究所等の連携強化による全国共同利用体制の発展充実を図り、新たな知の創造に向けた機動的・戦略的な研究体制を構築する。

4.優秀な若手研究者の養成

○ 大学院における教育研究活動を活性化し、若手の大学教員が、教授等になるためのキャリアパスについての見通しを持てるようにする観点から、各大学院において「新職」を積極的に活用するとともに、教育研究拠点の形成を通じた「新職」等の若手教員の活躍の場の確保、「新職」等の若手教員の競争的資金(研究費)の確保、「新職」等の若手研究員のスタート・アップも含めた研究教育活動のために必要な環境(研究費、研究スペース等)の整備を図ることができるよう促進していく必要がある。

5.学際・融合領域の推進

○ 地球環境問題や生命倫理問題等の現代的諸課題の解決に向け、自然科学と人文・社会科学とが学際的・学融合的に取り組む研究を一層推進する。

○ 科学研究費補助金の審査において、学際・複合・新領域の研究分野の発展と既存分野の再編等を進めるため、科学研究費補助金の審査において、学際・複合・新領域の審査体制の充実を図る。

6.主体性のある国際活動の展開

○ 世界中から優秀な研究者を惹きつけ、我が国が世界に先駆けて、最先端の国際共同研究プロジェクトに取り組めるような体制づくりを推進する。

○ 特に若手研究者が新たな知と出会う場として、国際的な研究活動を推進する。

○ アジアにおいては、アジアの科学技術大国として日本のリーダーシップを十分発揮し、主体性をもって研究コミュニティを構築する。

7.学術研究の推進を支える研究基盤の充実

○ 大学等における学術研究を推進し、優れた人材と研究成果を生み出すためには、これを支える施設設備等の研究基盤の充実を図り、魅力に富んだ研究環境を実現する必要がある。このため、施設設備等の着実な整備を図るとともに、共同利用も含めた施設設備の有効活用を図るなど戦略的な運営に取り組む必要がある。

○ 大学等において基本的に整備すべき設備については、共同利用のみならず、重点配置、競争的資金による研究終了後の設備の再利用等の観点から、効率的・効果的な導入・活用の在り方を検討する。

○ 私立大学においては、独自の建学精神に基づく個性豊かな研究活動を展開するため、その研究施設や設備の整備を積極的に進められるよう、財政支援の質的充実を図ることが必要である。

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