資料3‐2 委員等からの主な意見

学術分科会
学術研究推進部会(第6回)
平成17年1月11日

科学技術・学術審議会学術分科会委員等からの主な意見(抜粋) -「研究費、研究環境・研究基盤の改善」関係-

分野共通

1.研究費

重点化
  • 各大学で競争的資金獲得を督励する傾向が今後ますます強まると思われるが、分野や研究スタイルによっては学術研究のあり方をゆがめる恐れがある。
  • 第1期および第2期科学技術基本計画のため、従前に比べれば、研究費は全体として大幅に増えている。特に重点4分野に対する研究資金の投入が増えている。重点4分野のみでなく、それ以外の研究分野にも投資していくことは、日本の学術研究のレベルアップに対して大切な施策。
  • 社会的ニーズの高い研究分野への重点的な資源の投入が必要。
デュアルサポートシステム
  • 競争的資金と基盤的資金の両方が必要であり、良いバランスが、学術研究の健全な発達を促進。
  • 教育研究経費から支援職員人件費、光熱費、清掃費等のあらゆる経費をすべて込みにした考え方を改め、運営費交付金の積算根拠として、大学が大学として存立するために必要な諸経費を、一つ一つ積み上げる方式に移行すべき。現在の諸経費を一括する方式は真にデュアルサポート方式を担う実体にない。
  • 教育研究に必要な諸経費についてきっちりした支援を行うプログラム(競争的でよい)をデザインすべき。
  • 基盤研究費が少なく、殆どは競争的資金の枠だけで研究を進めると、大学院生が競争的研究費のプロジェクトに拘束されない研究ができるような自由度が少なくなる。
  • 研究資金の手当ては、基盤的資金と競争的資金の組合せが望ましく、原則的な定率配分比率を定めるべき。基盤的資金も原則的に競争的資金とのマッチングとすべき。各大学等では、競争的資金への申請・採択状況を基盤的資金の配分条件とすべき。
その他
  • 大学における基礎研究に対する配分を多くし、研究を活発化できることが望ましい。
  • 全国共同利用施設等の充実、21世紀COEプログラム終了後の研究教育拠点の継続的育成、我が国が締約する国連条約に対する貢献という視点も加えた当該組織に対する財政支援策の確立が急務。
基盤的経費
  • 基盤的資金には、知的資産を維持・伝承し、人を育てるという国としての基礎的な経費が入っていて、研究費分は少ない。基礎研究を推進する経費の確保が必要。
  • 基盤的資金は、法人化前から著しく不足。支援職員の人件費、庁費の増大等により、基盤的資金の大半は費消されてしまい、教育と研究に振り向けられる分は極端に減少している。
  • 基盤的経費の不足が教育に必要な経費の支弁に深刻な影響を与えており、大学院教育の高度化が喫緊の課題となっている現在、そのための経費が極端に乏しいことは、将来の学術研究を担う人材の養成にとって致命的。
  • 法人化後、各研究単位で実際に使用できる「基盤的経費」が減少して、外部経費が獲得できなければ、支障が出ているという声が聞かれる。研究者育成を目的とする大学院生の教育に支障が出ないような観点からも、基盤的経費を考える必要がある。競争的資金の増額だけでなく、基盤的経費の増額が必要。
  • 大学共同利用機関の共同利用研究をサポートするには、競争的資金よりも運営費交付金の一層の充実が必要。
特別教育研究経費
  • 運営費交付金1パーセント減の緩和が困難な場合、特別教育研究経費の基盤経費への取り組み策を積極的に提示してほしい。
  • 特別教育研究経費の申請順位が学長サイドで決定されるため、研究センターなどの小部局要求が取り上げられにくい状況。
  • 学術研究推進の視点から、特別教育研究経費の審査方法を確立すると共に、各大学が付けた要求順位に拘らない評価も加える必要。
競争的資金
  • 競争的資金が増額されていることは実感。しかし、大型予算は研究者間の透明性ある審査に基づいて決められているとはいい難い面もあり、一般の研究者にはわからないところで決められていると受け止められている。今後公明性、真の競争的環境作りを図る必要。
  • 競争的資金が応用・産業指向に振れすぎ、長期的な研究資金への配分が少なくなっている。基礎分野重視への展開が必要。
科学研究費補助金
  • 科学研究費補助金(基盤研究)などは必ずしも十分とはいえない。
  • 科学研究費補助金を増額すべき。
  • 科学研究費補助金の特定領域研究は、学問分野の進展に対応するシステムとしてトップダウンとボトムアップを巧みに組み合わせた日本独自の優れた制度。悪しき事例もあったが、チェック機能は働いている。
  • 科学研究費補助金の特定領域研究では、影響力の大きい研究者の領域の研究分野からなかなか抜けにくいため、研究者の中には、影響力の大きい研究者から独立して十分能力が発揮できないとの話を聞く。
  • 科学研究費補助金は、他の研究費配分システムよりもはるかに巨大なシステムとなっている。巨大システムには、改善だと思ってやったことが思わぬところに影響を及ぼして全体を改悪してしまう危険が付きまとうので、個々人の経験や分野の特殊事情を全体システムに外挿するような議論は危険であり、全体を見た検討が必要。
  • 大型科学研究費補助金でポスドクが雇用できるようになったのはありがたい。研究は格段にやりやすくなった。特に大学附置研究所にとっては革命的。
  • 例えば、科学研究費補助金の基盤Cあるいは基盤Bの採択率を60パーセント程度に引き上げ、しっかり研究しているものにはほぼ定常的に競争的資金が行き渡るようにするなど、基盤的研究領域を継続的に支援する仕組を作り出す必要。
  • 特別推進研究や特定領域研究の採択率を現在の10パーセントからせめて20パーセントにまで高めた方が、科学技術全体の発展がより健康的になり、活性化される。
  • 「JSTさきがけ型」の科学研究費補助金による若手育成支援策が必要。
  • 間接経費は使いやすい資金として重宝。
プロジェクト終了後のフォローアップ
  • 科学研究費補助金等、競争的資金により時限付きで推進されているプロジェクトで顕著な成果を挙げたものへの継続的支援の必要性を感じている。真に継続して支援する必要のあるプロジェクトについては、特別教育研究経費(運営費交付金)により支援する方向で検討できないか。
  • 21世紀COEは優れた研究・教育拠点を選び、国としてその応援を措置している。それらの拠点が数年で終わってしまうのではなく、きちんとした形の更なる発展をするように措置をする必要。
  • 21世紀COE後の文部科学省取り組みの基本方針が必要。
  • 21世紀COEが終了すると大学の支援もなくなると予想され、将来が大いに不安。
  • 長期支援として、下のようなものが必要。
     200万円×(4年+4年)→オリジナル研究養成
     2000万円×(4年+4年)→持続的COE
  • 世界最先端研究や発展性のある特定領域研究、基盤的研究の継続的、恒常的支援方策が必要。

2.研究環境

老朽化・狭隘化
  • 狭隘・老朽の問題が積み残しのまま。法人化後に国としてどのように対処するのか見えない。
  • 国立大学施設は欧米に比して見劣りがする。
  • 老朽化対策での改修計画に現場の希望を十分に聞いた上で、改修と立て替えの予算面での優劣、往復引っ越しなどでの研究時間のロスによる研究の遅れ、ダブル引っ越し費用などを総合的に判断した上で実施すべき。
  • 競争的資金が増額されるなどで大型、中型の装置が購入されても研究スペースの確保が厳しい状況。狭わい化の是正、建物建設の促進、スペースの拡充が必要。
  • 狭隘化、老朽化対策を早急に。実験系研究室の基準面積を現状の少なくとも2倍は確保すべき。そうしないと、依然として研究者が実験台のそばでデスク仕事をしなければならない危険な状況は改善されない。ドラフトを1人1台設置するスペースも確保できない。
  • 運営費交付金の削減や他目的への充当により、窓枠改修等の小規模老朽化対策が一層後回しになってきた。
  • 内外共同研究、大学院(博士課程学生)研究、研究支援スタッフのスペースが貧弱。
  • 研究スペースが狭隘。大学院学生の研究のためのスペースが狭い。
  • 理工系大学院の学生あたりのスペースの基準をより広くすることが望まれる。
  • 外部資金等の研究費の獲得につとめ、研究用スペースの借用を図るよう努力。
施設・設備
  • 新しく整備するものについては、より精神文化の香り豊かなものとする努力が必要。
  • 大型施設(中性子散乱、軌道放射、スーパーコンピュータ、超強磁場など)の維持・発展に関する先行きが見えない。
  • 研究施設の整備や改善にあたっては、時限的なプロジェクト研究の増加に対応して、組織・専門分野の枠を超えた学内共同研究スペースを大学が設置し、プロジェクトを学内から公募するという基本方針をとるべき。
  • 大学の研究所としての基本的な装置の配備およびその維持に対する基本的施策が、法人化を契機に弱くなった。
  • 法人化に備え、昨年度末に必要最小限の研究環境整備が施され、今年度になってからは積み残しの安全対策、高圧ボンベ設置場所、薬品管理システムの導入などの導入が実施されており進展。特に全学レベルでの薬品管理システムの導入は歓迎。
  • 実験室でのスタッフ、学生らの研究環境は完備には程遠く、ドラフトの一人一台導入の実現が望まれる。
  • 施設・設備の更新に際しては、費用対効果を慎重に吟味し、順位付けをして行うのがよい。
  • 最も活発に研究を実施している40才代の研究者が必要とする中・大型の機器・備品は、中規模の研究費では購入や維持が困難。
維持管理
  • メンテナンスが将来厳しくなる。運営費交付金で充填する必要。
  • 大学の施設における基盤的な設備の整備および改善・メンテナンスする施策が必要。メンテナンスに十分配慮すべき。
  • 大型、中型装置の維持などの継続的経費が措置されていない。
  • 保守費が不十分なため、本体装置が活用されていない例が多い。
  • メンテナンスは人の問題も重要。施設・設備を知り尽くした専門職員が減少している。外注で賄うことは将来大きな事故につながるのではないかと懸念。
  • 装置の維持における研究支援者の確保が毎年困難になってきている。(所属機関における)研究支援者の定員減の停止が必要。
共同利用
  • 装置や機器の有効利用という観点から「共同利用」の役割を強化することが必要。特に、大学共同利用機関、全国共同利用の附置研究所等は、全国共有の施設であり、より一層その役割を果たせる様にしていく必要。
  • 現在、汎用性のある大型装置に係る産業界を含めた共用化システムについて検討されていると聞くが、大学共同利用機関等が設置する大型装置の特性を踏まえれば、過度の共用化は本来の研究目的の障害となるため、一概に議論することについては慎重を期すべき。
  • 全国共同利用施設等に関しては、このまま推移すると、全国共同利用という重要任務の遂行に支障を来たす恐れが強く、施設・設備の整備・改善やメンテナンス、特殊技能等を持った非常勤職員等も視野に入れ、文部科学省として別途手当が必要。
研究支援者
  • 技術者が不足。
  • 新しい科学技術を根本的に生み出すには優れた技官(技術系職員)が必要。その数が減りつつあることは、憂慮すべき。
  • 装置の維持における研究支援者の確保が毎年困難になってきている。
  • 研究支援者(研究支援の事務専門職、技術職員)の充実は、研究活動を活性化する上で、不可欠なことである。内部の人材として確保することが必要な業務と業務委託が可能なものとの識別が必要である。
  • 支援職員の専門性が乏しく、数が少ない。特に事務職員の支援能力向上が必要。
  • 研究者は既に国際化に十分対応できる実力があるが、予算当局者の国際化が大変遅れている。
  • 研究者の雑用を少なくする事務体制が必要。研究者と事務という二極体制ではなく、その間に専門家集団(技官も含む)からなる事務部をおき、研究者・専門事務部・通常事務部の三極体制の導入を要望。専門的な内容になると現在の事務部ではまったく対応できないため、全て研究者が対応しており、研究時間が大幅に減っており、このままいけば研究の衰退をもたらすと危惧。特に法人化後は多くのデータが要求されるなど対応に追われている。企業退職者などの専門家を雇用するなどが具体策として考えられる。現在の事務部の整理も必要。
  • 直接的研究費の競争的資金割合を高め、その分軽減される基盤的資金によって研究支援スタッフの大幅な拡充を図るべき。
  • 臨時雇用のできる研究費が必要。

3.大規模プロジェクト・共同研究

  • 分野によっては、機関間連携等、大学の枠を超えたネットワークを形成し、推進すべきものもあり、これらについても継続的に支援する方策を検討すべき。
  • 新しい分野の学際的研究を支援し、若手研究者を育成するために、大学を含めた横断的研究推進を進める必要。大学が参加しやすい基礎的研究プロジェクトの新設、支援が望まれる。
  • 将来を俯瞰した学術研究の推進方策の下に、全国共同利用の大学附置研究所・研究センターの設置目的や活動状況等に見合った再編整備(共同利用機関等への統合も視野に入れて)方策について検討する必要があるのではないか。
  • 中型大型施設を用いる研究活動に関しては、当該分野の研究者の全国的な連携を踏まえた広範な議論によって将来戦略が立てられるが、その受け皿である全国共同利用の附置研究所の存立根拠が省令ではなく、各大学の中期目標・中期計画に依拠することになるのは、長期的に見て学術システムの縦糸(大学組織)と横糸(研究者の全国的・国際的ネットワーク)のバランスを崩すことにならないかと危惧。
共同利用に移動
  • 最新設備の共同利用がパフォーマンスをあげる。共同利用センターに人が集まる体制作り(生活も含め)が必要。
  • 共同利用施設・設備の更新が困難。
  • 研究活動に比してマンパワーが恒常的に不足している。運営費交付金は逓減するのでマンパワーを増やすことは不可能であり、多くの外国研究機関との間で共同研究を一層推進し、外国研究機関からマンパワー・研究経費を供給するようにすることが唯一の道か。
  • 法人化後の国内共同研究・国際共同研究と予算の在り方に関する検討が必要。

5.国立大学法人化後の状況

改善点
  • 費目制限が緩和され、より有効に使えるようになった。
  • 競争的資金や奨学寄附金等の獲得、特許の取得等などに対する教職員の関心と意欲が高まってきた。
  • 光熱水道費などの節約やスペースの効率的利用、研究組織の設置目的などについて、教職員や学生が強く意識するようになった。
  • 競争的環境が増してきている。一方では斬新な施策が評価されるという期待感も生まれてきている。しかし、法人化の効率化重視の理念を中心として日本の科学技術全般の在り方を決めてよいのか不安も感じられる。
新たな論点

〔効率化係数関係〕

  • 17年度から実施される運営費交付金の1パーセント減が実体として感じられるようになり、基盤経費および人件費の減が深刻な問題として浮上。
  • 毎年1パーセントの効率化係数がかかり、研究費への削減圧力が強まった。
  • 運営費交付金1パーセントカットの影響は各研究室への基盤校費の大幅減をもたらした。光熱費他の共通経費を引いた再配分額の基準額は1研究室あたり100万円余。研究費どころか、秘書を雇用することは不可能となった。さらに初年度は薬品管理システムの導入などに余分の予算が必要になり、基盤校費を研究費に使える状況ではなくなった。
  • 毎年運営費交付金が1パーセントずつカットされれば、光熱水費すらまかなえなくなると予想される。
  • 基盤経費が毎年1パーセント減少していくことを考えると発展ある将来計画を立てづらい状況。出来る限り早期に運営費交付金の1パーセント減を緩和して研究現場に元気を与えてほしい。
  • 今後、各大学内の定員減政策の継続により研究の基盤である助手層が減少していけば、これまでの取り組みが根底から崩れてしまうことが危惧される。定員減に繋がる運営費交付金の1パーセント減少政策の緩和・変更、あるいは他の対案の早急な提示の可能性が必要。
  • 法人化以後、基盤的経費の削減以上に大学本部の留め置き分が増え、各部局の運営が苦しくなっている。
  • 「学長リーダーシップ」のための「裁量経費」が増大する分、基盤的経費はどんどん減っている。
  • 1法人化に伴う固定費増、2学長の裁量によるトップダウン型研究費への移行、3積み残していた環境整備を学長主導で行うことにより、一教員当たりの校費が減っている(大学により大きな差)。
  • 運営費交付金から支出される基盤的資金の削減により、競争的資金等の得にくい基礎研究や大学院生・ポスドクの発想に基づく自由な研究の推進が困難になりつつある。
  • シーリングにより新企画がしにくくなっている。
  • 特別教育研究経費や他の大型予算、基盤経費等の大学予算の在り方について検討が必要。
  • 大学が「金がすべての世界」に陥りつつある。その結果、本来の使命である国や人類の将来を考究すると共に、それを担う次世代の人材を育成するという視点を忘れつつある。

人文・社会科学分野

  • 特別の情報機器、海外調査旅費等を除けば、直接的な研究費自体が比較的少額で、基盤的資金でおおむねカバーされる傾向にあるため、概して研究資金の著しい不足を指摘する傾向にはないが、間接的な経費、特に資料の収集・整理、情報処理、研究成果の翻訳等に携わる研究支援者等の雇用経費までを研究費に含めると不十分。
  • 直接的研究費が概ね基盤的資金でカバーされるのは一見望ましいが、そのため科学研究費補助金等の外部競争的資金への申請状況が良好でないというモラルハザードが生じている。外部競争的資金への申請を通じ、外部への説明責任を果たしつつ、外部評価の機会に晒される経験が研究の発展に極めて重要な意味を持つことを研究者は自覚すべき。
  • 基盤的経費の減少による弊害として、人文社会系では、特に図書館の体系的整備の面で極端な衰微が目立つ。人文社会科学にとって、代表的な文献を体系的に収集した図書館は、天文学にとっての望遠鏡にも匹敵する必須のツール。なお、競争的資金で購入する文献は当該プロジェクトに必要なものに限られ、競争的資金の拡大によって、図書館の体系的整備は図れない。
  • 図書館の整備にあたっては、全国の拠点大学に分野別の集中整備を図り、全国共同利用の体制を整備すべき。
  • 法律学では、法科大学院の設置に伴い、全体として研究が手薄になることが懸念される。人員、教育補助体制などの支援の充実が必要。
  • 人文・社会系にもプロジェクト・マネージャーの育成が必要。

自然科学分野

  • 装置の数で言えば日本は世界のトップだが、成果が見合っていない。コストパフォーマンスが低い。
  • 情報学の研究は機器も必要だが、ソフトウエアの開拓などには大勢の若手研究者(大学院生を含む)が必要。
  • 情報科学技術の分野で人材育成の大幅増と共に、長期的、戦略的支援が必要。
  • 科学研究費補助金特定領域では情報系の大きな枠が少ない。実験系の分野に比較して投資効果が高いのだから、もう少し資金導入があるべき。また、情報系分野の代表者(特に若手)がもう少し審査員に入ってよいのではないか。
  • 大学における「原子力関係」分野では、施設・設備の老朽化と、維持に必要な経費の不足が見られる。個々の大学の枠にとらわれず、全体として必要な施設・設備の検討、共同で使用する枠組み、原研とサイクル機構の統合でできる新法人の役割と、大学の役割等の明確化が必要。

文理融合分野

  • 認知科学は未だ文部科学省の政策として明確に取り上げられたことはなく、基盤的資金、競争的資金についてもまとまった施策は講じられていない。国公私を問わない競争的資金による認知科学及びその応用の研究充実、ならびに国の施策による国家プロジェクトの推進が必要。
  • 光トポグラフィ等の施設整備はある程度進みつつあるが、認知科学研究者が広く使用できる計測器機等の整備はこれからの課題。
  • 認知科学は、比較的若手、中堅の研究者が国際的に活躍している。女性も多く活躍している。ただし、個別に活躍している研究者が多く、組織的な研究活動はこれからの課題。
  • 国際的に分布している研究組織をネットワーク化して知財権等の支援も行うネットワーク型研究支援体制の構築が必要。

その他

  • 研究分野の将来の方向性をきくようなアンケートの設問自体に問題があり、研究者の好奇心に答えるファンディングシステムがあれば十分。
  • 研究予算の配分方式や評価の議論は大切だが、思いつきや対症療法で制度をいじくり回さないことが大切。
  • 競争的資金により研究教育機関の設置形態を問わずに研究インセンティブの向上が図られていることは高く評価できるが、政策の有効性を左右するのは、研究に専念できる人材・時間が実際どの程度あるかであって、大学(特に私立大学)には、教育・行政負担の大きさが鍵。大学としての見識・政策が問われているが、学術振興行政の観点からも関心を持ってほしい。
  • 総合科学技術会議から出された「競争的研究資金制度改革について(意見)」は、わが国の学術研究のレベルをより高度にすることを願っての提言であると理解するが、その記述の中には現状に対する認識や基本的考え方に首を傾げざるを得ない点が少なくない。

科学官との懇談での主な意見(抜粋) -「研究費、研究環境・研究基盤の改善」関係-

分野共通

1.研究費

基盤的経費
  • 基盤的経費による継続的な支援が必要。
  • 次期科学技術基本計画においては、競争的資金の重要性ばかりでなく、基盤的経費の必要性、重要性が訴えられるべき。
  • 地味な基礎研究にも予算配分しないと、5~10年後に基礎科学分野において諸外国から遅れをとる恐れがある。
  • 萌芽的段階では多様な研究者に一定期間安定して研究費を支給し、次の段階で資金を集中的に配分すべき。
  • 理工系分野では、基盤的資金は、研究費というより研究室運営費といった性格になりつつあるが、競争的資金が獲得しにくい状況では貴重な研究費でもあり、基盤的資金への配慮は欠かせない。
  • 大型装置の維持、基礎研究の経費や人件費及び優秀な研究補助員の確保について長期展望が計画できるよう基盤的経費の十分な配分が必要。
  • 競争的資金の間接経費を充実したり、運営費交付金の使途から共通経費の割合を減らしていくべき。
競争的資金・科学研究費補助金
  • 競争的資金を増額し、研究活動のアクティビティーの向上や社会への説明責任を果たすことが必要。
  • 競争的資金への依存度が高まると、研究分野が偏る危険性がある。
  • (過去の実績を重視する)実績主義では、過去に大きな資金を得た研究者ほどさらなる資金を獲得する傾向がある。
  • 科学研究費補助金では、重複申請の制限が不都合。
  • 新しい研究領域は、研究費の申請・確保が困難。どんな分野のピアレビュアーを用意するかなどの問題がある。
  • 科学研究費補助金の特別推進研究を獲得すると孤立した感があり、他との交流、グループ研究がしにくい。
  • 競争的資金制度による研究とプロジェクト型研究との適切なバランスを考えることが必要。

2.研究環境

  • 施設の老朽化・狭隘化対策、安全管理が必要。動物実験施設の老朽化が課題。
  • 安全性の国家基準を満たせず放置されている施設・設備があり、自助努力の限界を超えているものは抜本的な国の対応が不可欠。
  • 建物や大型施設の維持管理に向ける予算が減少している。
  • 機関や部局を作るほどの大型設備ではないが、科学研究費補助金では届かないという、1~5億円程度の高級市販機器類の導入が難しくなったのではないか(例:フーリエ変換質量分析装置)。大学院重点化された研究大学では、このような装置が全学レベルで導入されているべき。
  • 共同利用施設を含め、受益者負担の圧力が強まり、施設の維持費の捻出に苦労。
  • 欧米に比べると、実験施設や装置の開発環境が貧弱。
  • 優秀な研究者を育てる大学の研究環境を高レベルに保つことは、実験装置のハードウエアの開発と同等に重要。PDなどの雇用費、基礎研究費など研究力を高めるための経費を充実すべき。
  • 全学共同利用施設や機器分析センター等に機器を集積する形で重点的に予算をつけるなど、利用効率を上げる方策が必要。
  • 研究室面積の算定基準に、海外からの長期滞在研究者の研究スペースを考慮すべき。
  • 限られた人的資源の一層の活用、外部有識者への委託、アウトソーシングの活用等が必要。
  • 大型施設・設備等のハード分野だけでなく、学術情報全般についてのソフトやデータという側面についても目配りをする必要。
  • 助手・研究補助者が不足。
  • 施設のメンテナンスをする人材の整備が必要。
  • 研究施設の建築業者と研究者側とを橋渡しする人材(ラボコンサルタント)が必要。
  • 海外来訪研究者が多い大学等には、事務局に語学に堪能で海外経験のある職員の配置・増員が必要。

3.大規模プロジェクト・共同研究

  • プロジェクトマネージャーの育成が必要(中堅研究者で大プロジェクトをまとめあげた経験のある研究者を、いろんな分野を飛び歩いてまとめるマネージャーへ)。
  • 大規模プロジェクトには、システムエンジニア、研究補助者の確保が必要。
  • 重点分野が生じた場合に、機動的に研究費・人材(助手・PD)を集中する(5年間程度)制度の創設を検討。
  • 重要な国際共同事業に競争的資金で支弁せざるを得ない場合もある。安定的な事業推進のために、新たな枠組みが必要。

5.国立大学法人化後の状況

  • 運営費交付金化により予算の使途の制約が緩和され、研究の進捗状況により柔軟に対応できるようになった。
  • 全学共通経費、部局共通経費、専攻共通経費など共通経費の割合が高くなっており、基盤的資金が相対的に減少している。
  • 基盤的経費の大学本部留保により、研究者個人への研究費が減額している。
  • 競争的資金の中間管理(例:間接経費の3分の2が本部使用)が増え、不都合。
  • 応用研究分野では外部的研究資金の獲得が大きく展開されてきたが、基礎研究においての外部的研究費の獲得が課題。

人文・社会科学分野

  • 人文社会科学は基盤校費が充実していれば、一定の質を保つことができる。
  • 科学研究費補助金の申請の機会を知りつつ、応募をためらう傾向がある。
  • 大学設備の整備は大学の判断だが、理科系に押される可能性があり、共同研究の推進や文化系における施設への優遇措置の検討が必要。
  • 大学図書館の整備が必要。
  • 図書館による学術雑誌のオンライン版の普及が必要。
  • 国際的に活躍するためには、翻訳サービスの提供が必要。
  • 世界から大幅に遅れたアーカイブズ制度の整備が不可欠。

自然科学分野

  • 生命科学全般としては、比較的研究費の環境は恵まれていると思うが、生命情報学やバイオインフォマティックスの資金補給が不十分。
  • 大型のプロジェクトに参加している研究者については、機関に対して十分手当てされているとの誤解が研究費申請に不利に働いていると思われる。

その他

  • 教育・研究機関の大学に経済効率を求めすぎると大学が疲弊し、長期的な科学振興が機能しない恐れがある。
  • 税金をもらう以上、出口を明らかにし国民に夢を与えるものである必要がある。具体的目標を見据えながら、汎用的なものを生み出し技術シーズとして蓄えることが必要。
  • 国際協力、大型実験設備、中規模実験設備、講座レベルの基礎研究という4つの階層に整理し、位置付けを明確にする必要がある。特に基礎研究・教育の活性化のためには真に独創的な研究、厳密性・普遍性を深く追求する研究が安定的に行われる環境が必要。
  • 21世紀COEプログラムの長期的継続が必要。
  • 継続的なサポートを必要とする研究事業(生物系統保存、データベース等)への支援が必要。

日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員からの主な意見(抜粋) -「研究費、研究環境・研究基盤の改善」関係-

分野共通

1.  国立大学法人化後の状況

  • 校費と旅費の区別がなくなるなど、項目間の細かい縛りがなくなり、使途に柔軟性が出た。
  • 基盤的経費が数割減り、光熱費その他を除いた実際に使える部分が極端に減少。
  • 基盤的経費が減少するおそれがあり、人員雇用を含め長期的な計画策定が困難。
  • 競争的資金が基盤的経費の減少を補う状況にあり、競争的資金獲得の必要性が一層高まっている。
  • 基盤的研究費は法人化前から額が少ない。来年度は書籍購入を半減し非常勤講師手当に充てることとしたが、強い反論が起きている。非常勤講師の削減等の対応が必要。
  • 非常勤講師の予算が削られ、やむなく基盤的な研究費を約6パーセント削った例がある。
  • 附置研究所の場合、法人化後は大学の裁量による予算配分となり、教育重視の傾向が強まり研究関係予算が圧迫される可能性(法人化前は学部とは別の配分)。
  • 校費研究費で購入した本を全て図書として登録することになったため、同じ本の重複登録が増え、図書の整理業務も増加。
  • 大学は附置研究所を含め経営の一体性を強めており、大学の枠を超えた共同利用という観念が薄まるのではないかと懸念。

2.研究費

  • 産学連携や科学技術重点項目以外の基礎科学、主に大学において行われている基盤的研究への配分にも十分な配慮が必要。
  • 独自性をもつ研究は、初期段階では、目立ちにくい萌芽として出てくるが、それを見出して支援する体制が不十分。
  • 地味な研究を評価する視点が低い。
  • 助成金が得られたら進展するであろう独自性の高い研究など、潜在的な研究力を啓発する方策の検討をすべき。
基盤的経費
  • 長期的な展望に立って、基本的な研究をカバーしうる研究費が現場にくることが必要。
  • 萌芽的な研究も含めて科学研究費補助金などの競争的資金で賄うべしとの流言飛語があふれている。集積した成果を飛躍させるために必須なビッグプロジェクト経費と共に、日常的な研究の中で芽生える新規の研究端緒を支援する経費の一層の充実をすべき。
  • 科学研究費補助金の申請割合を基盤的経費の配分に影響させている大学等がある。
競争的資金・科学研究費補助金
  • 複数の研究資金源を同時に申請できないのは不条理。米国では可能。
  • 次の研究資金を獲得するまでの間、全く資金が獲得できない場合がある。
  • 科学研究費補助金の使い勝手は向上している。
  • 優れたアイデアがありながら研究費が得られないため高度な成果に結びつかない多くの研究がある。基盤研究の採択率を少なくとも30パーセント以上にすることが大切。
  • 審査基準を(現状のような成果中心でなく)プロジェクトの独自性、新規性、研究推進能力という点から評価すべき。
  • 科学研究費補助金申請を教員各位に強力に呼びかけている大学もある。

3.研究環境

  • 施設・設備維持、更新、老朽化対策は将来的に大きな問題。
  • 研究室が不足、狭い。外国人研究者を招いても研究室がない。
  • 欧米との競争に勝つため、施設の整備状況は依然不十分。
  • 米国では、教育・研究インフラ(有能な事務員・技術職員、完備した図書室と充実した共通汎用機器、法律に適合した快適な研究環境、研究員・学生・留学生の生活保障などの研究基盤)がしっかりしており、良いインフラをもとにはじめて競争力のある研究が行われていることを思い出すべき。基盤的経費を大幅増額すべき。
  • 概算要求の考え方では、メンテナンスという概念が欠落している。
  • 科学研究費補助金で購入した施設・備品は、プロジェクト終了後のメンテナンスが大変。有効活用が継続されない。整備した施設・備品の光熱水料を計上することが必要。
  • 大型資金で得られた機器も、人的な不足のため十分に活用されていない例もある。設備のための経費を広く浅く分配すべき。
  • 各大学にある程度の設備を備えると共に、共同利用可能な施設・設備を備えた拠点大学の増加が必要。
  • 学内で協力して使える補助的設備の更新が遅い。
  • 学外で特別に利用できる設備、共同利用の可能な機関が少ない。
  • マネジメント、編集作業、ネットワーク関連、コンピュータ関係のサポート等のため、複数機関が共有するようなインフラ・センターのようなものの整備が必要。
  • 労働衛生面は一般レベルまで改善すべき。
  • 国立大学法人の事務の定員削減は限界。非常勤では対処しきれない仕事もある。
  • 長期展望の下、効率的事務機構の制度設計が必要。
  • 事務レベルで企業との交流を増やすべき。

人文・社会科学分野

  • 人文社会の研究者は、基盤的経費があれば研究することができる。
  • 研究論文は日本語によるものが多く、国際的影響力は限られる。必要なところに翻訳、校閲の費用を措置すべき。

自然科学分野

  • 生物系の医歯薬では、一部の施設に研究費が偏っている傾向がある。

その他

  • 子供の理科離れを防ぐために、基盤的な研究費の配分が必要。

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