生物系

専門分野 特性・特色 方向性・課題等
基礎生物学 マクロ生物学 ○ この数十年、生物系全体としては、一般的には研究費の配分が増えているといえる。
○ 我が国でもこの分野の研究は高レベルにあり、国際雑誌への投稿数も多い。
○ 日本で発行しているマクロ生物学の国際誌には、日本と欧米のみならず、インド、インドネシア、中国からも投稿がある。
● マクロ生物学は、環境問題に関する地球規模の問題に対応する大型プロジェクトは認められても、小規模の生態学的研究、行動学的研究、博物学的研究、人類学的研究には相対的に日が当たらない。
● 今後、地球環境の悪化と共に、生態学、生態人類学、行動人類学、保全生態学、資源物理学などの分野の人々がもっと必要になるだろう。
● また、人文社会系との連携も必要になるだろう。
生物科学 化学 構造生物化学 ○ 構造生物化学は、機能生物学、水の中の反応化学、分子進化生物学の分野の間に位置し、物質の機能という面から、酵素反応と生体物質間の相互作用の分子化学的側面を統一的に明らかにする。
○ 国際的に分担して協力して研究することが本来あるべき姿。国際的に協力していくので、日本の独自性は出てこないはず。
● ゲノム解析の情報を使ってアミノ酸配列から3次構造の予測へとつながるような研究、生体物質の立体構造が分かったとき、それを総合的に解析し、生体物質というマクロな分子を取り扱う分子構造学の分野、分子の構造を形成する過程の分子機構を研究する分野分子構造の形成過程を考慮し、アミノ酸の置換による立体構造変化の予測等の研究が分子的進化科学の分野にも発展する。
生物科学 分子生物学 ○ 総体的な国際競争力はかなり高く、欧米先進国と肩を並べているといえる。大学院教育がしっかりしており、質のよいデータを出せるため。
○ 生物学分野で未だ大きな空白のある分野はゲノムの機能解析。ゲノム情報やDNAアレイによる解析は、その入り口を与えるだけで、発現制御機構と、そのネットワークの解析には多くの人材を必要とする。これは、医学や薬学との大きな接点を持つものであり、日本のバイオの盛衰とも関わってくる。
● アジア諸国、例えばシンガポールや韓国など研究環境が整いつつあり、データの質がどんどん向上している。これらの国がどのような独自性を出してくるかにもよるが、近い将来手ごわい競争相手となるかもしれない。
● マウスやショウジョウバエなど実験動物などを管理維持してその利用法について研究している分野は、米国や英国に比べて日本が立ち遅れていると感じる。
● 感染症の基礎研究も、大事な割に研究者が少ない様子。
分子進化学   ● 生命情報学やバイオインフォマティックスという分野での長期的立案(戦略性)が急がれる。
● ハイテク等の国際的優位性を生命科学に活かす機会がこのままではなくなってしまい、欧米諸国からの遅れの取り戻しや中国・インド・ロシア等との競争力低下を大いに危惧している。
● 研究分野の将来の方向性:生命情報学(情報生物学)やバイオインフォマティックス、生物の多様性と進化に関する研究を通じた統合化生物学やシステムズバイオロジーの確立。ゲノムや遺伝子発現・プロテオーム等に基づく医学研究。
農学 農学 ○ 農学は総合科学であるが、非医学系の応用生物学的な側面があり、これまで、その成果が産業にも応用されてきた実績がある。応用微生物学などは、日本がほこる科学のひとつ。
○ 近年は、農業生産を中心にした産業面ばかりでなく、生態系の環境保全の立場からも、重要な学術を担っている。
○ 農学の基礎的分野は、医学や理学の基礎的分野と基盤を共有する。
○ 農学分野の展望を見据えた上での、教育システム、学問領域の再検討は必要に思う。
○ 農学内部での自主的な将来計画委員会のようなものは必要かもしれない。
● 成果が出るまでに時間がかかる科学であること、データ、資料などを継承していくべき科学であること等が特徴。
● 農学領域は、研究者数は少なくともそれぞれの分野が必要な分野である。
● これからの世紀を考えるとき、植物科学分野(植物バイオ)などは、これからの環境問題、資源問題、食糧問題のために、理学の分野と協力し、さらに支援発展させる必要がある。
● 微生物バイオについても、これからの発展が期待される分野。
● 動物分野は、医学部の基礎科学のモデル生物を扱う分野と協力体制をとることが必要。
● 医学以前の、健全な生活、健康な生活を築くには、非医学の生物学も重要。
作物学※ ○ 世界的な人口増に見合う食糧生産と地球温暖化・異常気象にみるような緑の惑星の疲弊・機器に対処するための環境保全と相反するグローバルな課題に、農学は真摯にコミットしている。
○ 食糧生産・環境保全など人類の衣食住を支える分野としての農学は21世紀になってますます重要度を加えている。両者の調和は難しいが、長期的なスタンスでの研究の積み重ねが必要な分野である。
○ 研究者の関心が深い分野であり、大学関係者だけでなく、産業官庁の研究機関もまた、世界横断的に取り組んでいる。
○ 各人、各大学・研究機関がそれぞれの資源を生かして、競争的でなく、むしろ協力して取り組んでいる。
● グローバルな取組如何で成果が左右される場合が多く、分野間の国際的な連携が必要。
● 先端的な分野のみならず、こうした問題解決型研究課題にも大いに関心を持つ必要がある。
○ 生物系、理工系、人文・社会系を融合させて、乾燥地の砂漠化防止と開発利用に関する基礎的研究を行う、環境科学の分野に所属している。
○ 当該分野に係る基礎的研究や人材育成に関しては国際的に高く評価されている。
○ 国連砂漠化対処条約に対する我が国の貢献義務、とくに科学技術面や人材養成面での貢献義務に関して、重要な役割を担っていると評価されている。
● 乾燥地の砂漠化は進行しており、その対処が世界的急務となっている。そのためには、砂漠化に悩む人々の支援に欠かせない自然科学や人文社会科学について、総合的に研究を進める必要がある。したがって、分野全体が伸びる可能性を有しているといえる。
● 砂漠化対処と生物多様性の保全などとを連携・融合させた生態系の修復・保全に係る大分野の育成が必要である。
● 研究者数は少ないが、乾燥地を対象とした社会医学分野や人文社会科学分野は重要である。
基礎医学 生化学 細胞情報学 【生物系で特に脂質生物学について】
○ この分野は糖鎖生物学とならび、ポストゲノム時代の大きな研究課題。
○ 脂質生物学の課題は4つあり、
(1)エネルギー源としての脂質の活用と疾病予防、
(2)生体膜成分としての脂質の動態解析、
(3)生体制御分子としての脂質メディエーター解析、
(4)脂質ライブラリーと脂質データベース作成。
○ 一部を除き、どの分野でも日本は世界をリードしており、多くの先駆的業績は日本で行われた。
● 昨年、米国のNIHがグルーグラントで脂質解析に40億を投じたことに危機感を持っている。
● 脂質は水に溶けず、分子生物、電気生理で取扱いの難しい分野だったが、これから重要となる。データベース構築と検索エンジン作成が重要。
● 脂質生物学研究センターの構築
● バイオインフォーマティックス
● 神経では行動薬理学、心理学などの分野、教育-心理-哲学-神経科学の統合分野など
● メタボローム解析と情報データベース
基礎医学 医学 ○ 医学の分野では、治療も含めて組織の再生や修復の研究が注目されている。 ● 最近、リーディングプロジェクトとして再生医療研究が開始されたが、幹細胞を中心としたTR的な要素が強く、組織特異的な分化誘導環境や組織の分化・再生開始局在、組織特異的分化誘導因子の発現等の基礎的研究が必要である。
● これまでの発生生物学の分野では、ショウジョウバエに代表されるより原始的生物を利用しての初期発生学に偏りがちであったように思われる。そこでは、初期発生に必要とされる遺伝子産物を同定することは比較的容易に解明してきたが、個体成熟後の細胞や組織修復において、あるいはその後の分化段階で再度必要とされる因子の研究、腸管の上皮細胞のように常時分化再生している細胞、あるいはそれら因子の機能を解析する領域をカバーしていなかった。従来の発生生物学領域とほ乳類での組織分化や再生・修復機構を繋げて分子レベルで研究できる領域が必要。
● 分化発生誘導に関わる微小環境研究領域も研究者人口は少ないが、今後重要な領域になる。
● ポストゲノムの分野で、負あるいは抑制発現の領域に光があたることが望まれる。
内科系臨床医学 消化器内科学※ ○ 生物系の医歯薬であるが、臨床分野であり基礎医学分野と異なり実社会との関わりが大きく、研究環境、目的など大きく異なる点が多い。消化器内科的領域の研究では、胃癌など我が国に多い腫瘍の研究、内視鏡診断、治療などアジア諸国はもとより、欧米に対して優位に立っている研究も多い。 ● 今後伸びる可能性のある分野として、新しい医療機器の開発(医療工学)、栄養制御(肥満、癌、血圧など)、病院運営のためのシステムエンジニアリング、医療経済、医療安全工学など。

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